説明

シールド室用前室及びシールド室

【課題】高い遮蔽性能のシールド扉を必要としないシールド室用前室を提供する。
【解決手段】シールド室12と第1側壁14を共有してシールド室用前室10が設けられている。第1側壁14には第1出入口16が設けられ、第2側壁20には第2出入口22が設けられ、いずれも扉は設けられていない。シールド室用前室10の内部には仕切壁26が設けられ、仕切壁26の端部には開口部24が設けられている。このとき、仕切壁26の壁部は、第1出入口と第2出入口の間であり、シールド室12から第1出入口16を通して第2出入口22を見たとき、仕切壁26で第2出入口22を隠す位置に配置されている。シールド室用前室10を構成する第1側壁14、第2側壁20、天井壁、及び仕切壁26の内部には、導電性の材料で形成されたシールド層が設けられ、シールド室用前室10の室内側の表面には、電波吸収体28が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド室用前室及びシールド室に関する。
【背景技術】
【0002】
室内で発生する電波を室外へ出したくない場合、若しくは室外からの電波を室内へ入れたくない場合には、床、壁、天井等を電磁シールドし、室内と室外を電磁的に遮蔽したシールド室が利用されている。また常時シールド性能を維持する必要がある施設では、人の出入りの際にも性能を保持するために前室が設けられている。
【0003】
このとき、シールド室の出入口に設けられるシールド扉は、シールド室としての遮蔽性能を維持するために、シールド室と同等以上の遮蔽性能が要求される。
【0004】
高いシールド扉の遮蔽性能は、扉を扉枠に強く押し付けて、シールド扉と扉枠の電気的な接触を担保している。このため、一般に、遮蔽性能の高いシールド扉は頑丈な構造となり、高価になるのみでなく、扉の開閉操作に大きな力が必要となるという問題がある。
【0005】
開閉操作に大きな力を必要とするシールド扉は、特に高齢者や女性にとっては負担が大きく、使い勝手が悪い。また、人の出入りに時間がかかり、不経済でもある。
そこで、電気式のシールド室用回転扉が提案されている(特許文献1)。
【0006】
図14に示すように、特許文献1に記載のシールド室用回転扉80は、出入口に枠体88を有し、枠体88の側壁には、シールド室側に開口した開口部82と、室外側に開口した開口部83が設けられている。枠体88の内部には、回転軸を中心に放射状に複数の扉体84が取付けられ、図示しないモータにより扉体84が回転軸の回りに回転される。
【0007】
隣り合う扉体84との間には、人が入れる空間86が形成され、扉体84の回転により、空間86が順次開口部82に面する位置に移動し、シールド室への出入りが可能となる。
このとき、いずれかの扉体84で、室内側と室外側が常に仕切られた状態となる。扉体84には、枠体88と摺接する導電体90が設けられており、扉体84が室内と室外を仕切る位置にある場合には、扉体84の周縁が導電体90を介して枠体88と接触し、遮蔽性能が確保される。
【0008】
しかし、シールド室用回転扉80は、停電時に使用できないこと、可動部分が多く機械的なトラブルが発生しやすいこと、更には高い頻度でメンテナンスを必要とする等の問題がある。
一方、シールド室の出入口に前室を設け、前室のシールド扉の位置を工夫することで、低コストで高い遮蔽性能を確保する技術が提案されている(特許文献2)。
【0009】
図15に示すように、特許文献2に記載のシールド室用前室92は、シールド室94に隣接し、出入口を囲んで外側に設けられている。これにより、電気式のシールド扉を必要とせず、人の出入りの際にも常時シールド性能が確保される。
【0010】
即ち、シールド室用前室92は、電波吸収材を内部に有する壁面98で外部と仕切られ、内部が電磁シールド空間96とされている。シールド室用前室92の側壁101は、シールド室94と共有され、シールド室94に出入りする側壁101の出入口103には、電磁シールド内部用扉102が設けられている。
【0011】
また、シールド室用前室92の、側壁101と直交する側壁99の出入口104には、電磁シールド外部用扉100が設けられている。即ち、出入口104と出入口103は対面しない位置に配置されている。
【0012】
しかし、シールド室用前室92の構成では、出入口104と出入口103が対面していなくても、2つの出入口の間には電波の遮蔽物がないため、例えば、2つの扉を室94より低い遮蔽性能の扉とした場合、人の出入りの際に1つの扉が開くともう一方の扉から漏れた電波が電磁シールド空間96を通過して、外部に漏れる可能性がある。
【0013】
このため、人の出入りの際でもシールド性能を確保するには2つの扉を高い遮蔽性能の扉とする必要があり、低コストで高い遮蔽性能を確保することはできない。この結果、操作性を良くすることもできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−169744号公報
【特許文献2】特開平6−177576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記事実に鑑み、高い遮蔽性能のシールド扉を必要としないシールド室用前室及びシールド室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明に係るシールド室用前室は、シールド室に隣接して設けられたシールド室用前室であって、前記シールド室と前記シールド室用前室を仕切る第1側壁に設けられた第1出入口と、前記シールド室用前室と外部を仕切る第2側壁に設けられた第2出入口と、前記シールド室用前室内を仕切り一端に通路となる開口部が設けられた、少なくとも1つの仕切壁と、を有し、前記仕切壁は、前記シールド室から前記第1出入口を通して前記第2出入口を見たとき、前記第2出入口を隠す位置に設けられ、前記第1側壁、前記第2側壁、前記シールド室用前室の天井壁、及び前記仕切壁には、導電性の材料で形成されたシールド層が設けられ、前記第1側壁、前記第2側壁、前記天井壁、及び前記仕切壁の表面には、電波を吸収する電波吸収体が設けられていることを特徴としている。
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、少なくとも1つの仕切壁が、シールド室から第1出入口を通して第2出入口を見たとき、第2出入口を隠す位置に設けられている。これにより、第1出入口から第2出入口に向かう電波が、途中に設けられた仕切壁で遮られ、シールド室用前室を通過して、直接外部へ出ることはない。
【0018】
また、シールド室用前室を構成する第1側壁、第2側壁、及び天井壁、更には仕切壁に設けられた電波吸収体が、衝突した電波の一部を吸収し残りを反射させる。反射した電波は、他の電波吸収体で一部が吸収され残りが反射される。このように、順次、電波吸収体で吸収、反射を繰り返すことで、シールド室用前室の内部で電波が減衰する。
これにより、高い遮蔽性能のシールド扉を使用しなくても、シールド性能を確保することができる。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1に記載のシールド室用前室において、前記電波吸収体は、電波吸収特性が異なる複数種類の前記電波吸収体を組合せていることを特徴としている。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、電波吸収特性の異なる複数種類の電波吸収体を組合せて電波吸収体が構成されている。これにより、シールド室用前室において、電波を広い周波数帯域に渡り吸収できる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のシールド室用前室において、前記電波吸収体が表面に設けられた平板を、前記第1側壁、前記第2側壁、又は前記天井壁に対し、傾斜させて設置したことを特徴としている。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、電波吸収体が第1側壁、第2側壁、又は天井壁に対して傾斜して設置されている。この平板で電波が反射されると、電波は室内全体に反射する。
この結果、シールド室用前室における電波の減衰率を大きくできる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3に記載のシールド室用前室において、前記第1出入口、前記第2出入口、及び前記開口部の少なくとも1つに、前記シールド層及び前記電波吸収体を備えたシールド扉を設けたことを特徴としている。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、第1出入口、第2出入口、及び開口部の少なくとも1つに、必要に応じ設けたシールド扉が電波を遮蔽する。
このとき、シールド室に要求される遮蔽性能のうち、シールド室用前室が負担する遮蔽性能分を差し引き、残りをシールド扉で負担させることができる。
【0025】
請求項5に記載の発明に係るシールド室は、シールド層が設けられた側壁及び天井壁でシールド空間を構成し、前記シールド空間を構成する前記側壁及び前記天井壁の表面には電波吸収体が備えられ、出入口の外側には請求項1〜4のいずれか1項に記載のシールド室用前室が設けられていることを特徴としている。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、シールド室の出入口には、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシールド室用前室が設けられ、シールド室用前室が電波を吸収し、減衰させる。
これにより、高い遮蔽性能のシールド扉を必要としないシールド室が提供できる。この結果、シールド扉の押し付け力が小さくなり、シールド扉の開閉操作が容易となる。また、低コストで、使い勝手のよいシールド室が提供できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、上記構成としてあるので、高い遮蔽性能のシールド扉を必要としないシールド室用前室が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシールド室用前室の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るシールド室用前室の仕切壁位置を説明する図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るシールド室用前室の仕切壁位置を説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るシールド室用前室の仕切壁の数を増した構成を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るシールド室用前室の基本構成を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係るシールド室用前室の基本構成を示す図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係るシールド室用前室の基本構成を示す図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係るシールド室用前室の基本構成を示す図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係るシールド室用前室の、シールド扉の構成を示す図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態に係るシールド室用前室の他の構成を示す図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態に係るシールド室用前室の基本構成を示す図である。
【図12】本発明の第7の実施の形態に係るシールド室用前室の基本構成を示す図である。
【図13】本発明の第8の実施の形態に係るシールド室の基本構成を示す図である。
【図14】従来例のシールド室用前室の基本構成を示す図である。
【図15】従来例のシールド室用前室の基本構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、第1の実施の形態に係るシールド室用前室10は、シールド室12と第1側壁14を共有して設けられている。
第1側壁14には、シールド室12に出入りするための第1出入口16が設けられ、第1出入口16を囲んでシールド室用前室10の第2側壁20が設けられている。
【0030】
シールド室用前室10は、第2側壁20及び図示しない天井壁で外部18と仕切られ、第2側壁20の第1側壁14と平行な壁面には、シールド室用前室10に出入りするための第2出入口22が設けられている。
第1出入口16と第2出入口22には、いずれも扉は設けられていない。
【0031】
また、シールド室用前室10の内部には、仕切壁26が第1側壁14と平行な方向に設けられ、シールド室用前室10を2つに分割している。
【0032】
仕切壁26は、第1出入口と第2出入口の間であり、シールド室12から第1出入口16を通して第2出入口22を見たとき、仕切壁26で第2出入口22を隠す位置に配置されている。
即ち、図2に示すように、第1側壁14に設けられた第1出入口16は、開口部の上面16U、左側面16L、右側面16R及び下面16Dで囲まれた範囲とされ、第2側壁20に設けられた第2出入口22は、開口部の上面22U、左側面22L、右側面22R及び下面22Dで囲まれた範囲とされている。
【0033】
このとき、図3(A)(B)に示すように、シールド室10の内部には、上面16U、上面22U、及び上面16U及び上面22Uの対向する両端部同士を結ぶ2本の直線で囲まれた平面である上面平面PUと、左側面16L、左側面22L、及び左側面16L及び左側面22Lの対向する両端部同士を結ぶ2本の直線で囲まれた平面である左側面平面PLと、右側面16R、右側面22R、及び右側面16R及び右側面22Rの対向する両端部同士を結ぶ2本の直線で囲まれた平面である右側面平面PRと、下面16D、下面22D、及び下面16D及び下面22Dの対向する両端部同士を結ぶ2本の直線で囲まれた平面である下面平面PDの4つの平面で空間を区画することができる。
【0034】
この4つの平面で区画された空間を、第1側壁14と平行な方向に設けられた仕切壁26が遮断している。
このように、シールド室12から、矢印Sで示す方向に第1出入口16を通して第2出入口22を見たとき、仕切壁26が視界を遮り(斜線部分)、第2出入口22を見ることができない構成とされている。
仕切壁26の端部には通路となる開口部24が設けられている。なお、開口部24には扉は設けられていない。
【0035】
シールド室用前室10を構成する第1側壁14、第2側壁20、天井壁、及び仕切壁26の内部には、例えば鉄板やアルミ箔等の導電性の材料で形成されたシールド層が設けられている(図示せず)。これにより、シールド室用前室10はシールド空間とされている。
【0036】
更に、第1側壁14、第2側壁20、天井壁、及び仕切壁26のシールド室用前室10の室内側の表面には、破線で示す電波吸収体28が設けられている。電波吸収体28は入射された電波の一部を吸収し、残りを反射する部材であり、それぞれの壁面の全面、又は一部を覆っている。
【0037】
このような構成とすることにより、シールド室用前室10の内部で、電波を遮断し減衰させることができる。
例えば、シールド室12の内部で発生し、第1出入口16から第2出入口22に向かう電波Kは、一旦、仕切壁26で遮られるため、シールド室用前室10を通過して直接外部18へ出ることはできない。
【0038】
また、電波Kは、電波吸収体28で吸収され減衰する。即ち、仕切壁26に衝突した電波Kは、一部が電波吸収体28に吸収され残りが反射される。反射された電波Kは第1側壁14に衝突する。そして、第1側壁14で一部が吸収され、残りが反射される。このように、順次、シールド室用前室10の内部の電波吸収体28で吸収、反射を繰り返すことで、電波Kは減衰してゆく。
【0039】
このように、第1出入口16、第2出入口22、及び開口部24にシールド扉を使用しなくても、シールド室用前室10で、電波を遮断し減衰させることができる。
これにより、例えば、ホール、スタジオ、会議室等のように要求される電波の遮蔽性能が比較的低く(20dB程度)、人の出入りが多い場所では、人の出入りに支障をきたさずシールド性能を発揮することができる。
【0040】
電波吸収体28としては、フェライト吸収体、ウレタン吸収体、若しくは超広帯域電波吸収フィルムなどがある。
【0041】
なお、図示は省略するが、床面にもシールド層が用いられ電波を遮断している。さらに、床面に電波吸収体を取付けることもできる。
例えば、下層から、コンクリート床、シールド層、緩衝材、電波吸収体、OAフロアーの構成とすれば、床面に電波吸収体を取付けることができる。
また、OAフロアーを使用しない場合でも、下層から、コンクリート床、シールド層、緩衝材、電波吸収体、緩衝材、床仕上げフロアーの構成とすれば、床面に電波吸収体を取付けることができる。
これにより、シールド性能を向上させることができる。
【0042】
なお、仕切壁26が1つの場合について説明したが、これに拘束されることはなく、図4に示すように、設置スペースが確保される場合には、シールド室用前室34を大きくし複数の仕切壁26A、26B、26Cを配置してもよい。
このとき、仕切壁26A、26B、26Cの各開口部24A、24B、24Cは同一直線状に設けるのではなく、交互に位置をずらし、第1出入口16側から第2出入口22側を見たとき、順次、前の仕切壁の開口部を次の仕切壁の壁部で塞ぐ配置とする。
これにより、シールド室用前室34の内部での電波の減衰量をより大きくできる。
【0043】
(第2の実施の形態)
図5に示すように、第2の実施の形態に係るシールド室用前室30は、仕切壁26の両側の表面に電波吸収体32が設けられ、シールド室用前室30の他の壁面には、第1の実施の形態で説明した電波吸収体28が設けられている。
電波吸収体32は、電波吸収体28より膜の厚さが厚く形成されており、電波吸収体28より低い周波数帯の電波を吸収する特性を有している。
【0044】
シールド室用前室30で減衰させたい電波Kには、一般に広い周波数帯域の電波が含まれている。一方、電波吸収体28は、効率よく吸収できる周波数帯がその構造から決定され、1つの種類の電波吸収体28で効率よく吸収できる周波数帯には限界がある。そこで、電波吸収特性が異なる複数種類の電波吸収体を組合せることで、広い周波数帯域の電波を吸収し減衰できるようになる。
【0045】
即ち、シールド室用前室30に、電波吸収体28と電波吸収体32を設けることで、電波Kを広い周波数帯域に渡り、吸収し減衰できる。
【0046】
なお、電波吸収体32の位置は、仕切壁26の位置に限定されることはなく、他の壁面であってもよい。また、電波吸収特性が異なる複数種類の電波吸収体を組合せは、2種類に限定されることはなく、3種類以上の電波吸収体を組み合わせてもよい。
他の構成は、第1の実施の形態と同じであり説明は省略する。
【0047】
(第3の実施の形態)
図6に示すように、第3の実施の形態に係るシールド室用前室40は、第2側壁20の1つの壁面の前に平板42が設置されている。
【0048】
平板42は、内部にシールド層を有する壁材であり、表面には電波吸収体28が設けられている。平板42は、第2側壁20に対し傾斜させて設置されている。
【0049】
この平板42で電波Kが反射されると、平板42が第2側壁20に対し傾斜しているため、電波Kは、第2側壁20で反射する場合とは異なる方向に変えられ、室内全体に広げられる。この結果、シールド室用前室40における電波吸収体28を有効に活用でき、電波の減衰率を大きくできる。
【0050】
なお、平板42の位置は、第2側壁20の壁部に限定されることはなく、他の第1側壁14又は天井壁の壁面等であってもよい。
【0051】
また、平板42の表面は、電波吸収体28に限定されることはなく、電波吸収体32等の他の電波吸収体を用いてもよい。
他の構成は、第1の実施の形態と同じであり説明は省略する。
【0052】
(第4の実施の形態)
図7に示すように、第4の実施の形態に係るシールド室用前室44は、第2側壁20の壁面のうちの第1側壁14と直交する壁面に、第2出入口22が設けられている。
第1出入口16と第2出入口22の間には、第1側壁14と直交する方向に仕切壁26が設けられている。
【0053】
開口部24は、第1出入口16と第2出入口24の間に配置され、シールド室12から第1出入口16を通して第2出入口22を見たとき、仕切壁26で第2出入口22が隠されている。仕切壁26の端部には、通路となる開口部24が設けられている。なお、開口部24にはシールド扉が設けられていない。
【0054】
これにより、第1出入口16から第2出入口24に向かう電波Kは、仕切壁26で反射される。また、反射された電波Kは、電波吸収体28で一部が吸収され残りを反射する。この結果、シールド室用前室において電波Kが順次減衰される。
他は、第1の実施の形態と同じであり説明は省略する。
【0055】
(第5の実施の形態)
図8に示すように、第5の実施の形態に係るシールド室用前室46は、第1出入口16に第1シールド扉48が、第2出入口22に第2シールド扉50が設けられている。
【0056】
第1シールド扉48と第2シールド扉50は、いずれもシールド層を有し、性能に応じ必要な場合には、扉の表面に電波吸収体28を設けることができる。
これにより、第1出入口16及び第2出入口24の位置で電波を遮蔽することができ、シールド室用前室46遮蔽性能を高くできる。
【0057】
例えば、シールド室が要求される遮蔽性能が40dB〜60dB程度の場合、上述したように、シールド室用前室46の遮蔽性能が20dB程度であるから、不足する分を補うべく、第1シールド扉48及び第2シールド扉50を遮蔽性能が20dB〜40dB程度のシールド扉とすればよい。これにより、出入り時に、いずれか一方の扉の開放を考慮しても、常に要求性能を満足できる。
【0058】
このように、シールド室用前室46を利用し、シールド扉に要求される遮蔽性能を低くすることで、使い勝手やメンテナンスがより簡単な扉を採用することができる。
【0059】
次に、シールド扉について説明する。
図7に示すように、シールド扉は、要求される遮蔽性能が低いほど、構造が簡便で操作し易いものとなる。
【0060】
即ち、図9(A)に示す高性能のシールド扉36は、シールド扉36を扉枠38に押し当てた後ハンドル37で加圧してシールドするタイプである。ハンドル37を回転させ3箇所の爪部39A、39B、39Cを連動してスライドさせ、爪部39A、39B、39Cを扉枠38に設けた止め金具に差し込むことで、シールド扉36を扉枠38に圧力をかけて締め付けることができる扉本体と扉枠との電気接触を良好にするものである。
【0061】
これにより、ハンドル37の操作に多少力を必要とするが、80dB〜100dB程度の遮蔽性能が期待できる。
【0062】
図9(B)は、シールド扉56を扉枠59に押さえつけ、上下連動レバー58の加圧力で上下部をシールドするタイプである。ハンドル57を回転させれば、上下連動レバー58が連動して上下に移動して扉枠59に差し込まれ、シールド扉56を扉枠59に圧力をかけて締め付けることができる。
これにより、最大遮蔽性能はシールド扉36より低下し、60dB〜80dB程度となるが、操作に要する力は軽減される。
【0063】
図9(C)は、シールド扉72の一般的なドアノブによる開閉のみでシールド扉72を扉枠75に押さえつける力を付与しているタイプである。締付力が低いため遮蔽性能は20〜40dBとなるが開閉操作が簡単である。
【0064】
これにより、最大遮蔽性能はシールド扉56より低下するが、引き手73の操作に要する力は、更に軽減される。
【0065】
これらのシールド扉36、56、72は、一般的にシールド室用前室46がない場合に要求される、大きな遮蔽性能を備えた本格的なシールド扉(図示せず)に比べ、安価であり、操作が容易とされている。
【0066】
この簡易なシールド扉36、56、72を、要求される遮蔽性能に対応させて選定すれば、多様な要求に対応できる。
【0067】
例えば、図10(A)に示すように、第1出入口16にのみ第1シールド扉48を取り付ける構成としてもよい。第2出入口22の遮蔽効果は期待できないが、第1シールド扉48とシールド室用前室46における遮蔽性能が期待でき、第1シールド扉48の開閉時の遮蔽性能の低下が問題とならない場合に適用できる。
【0068】
また、図10(B)に示すように、第1出入口16及び第2出入口22に加え、仕切壁26の開口部24にも第3シールド扉52を取り付けることができる。これにより、より高い遮蔽性能の要求に対応できる。
他の構成は、第1の実施の形態と同じであり、説明は省略する。
【0069】
(第6の実施の形態)
図11に示すように、第6の実施の形態に係るシールド室用前室54は、仕切壁53が、透明のシールドガラス55で形成されている。
【0070】
シールドガラス55は、内部に接地されたシールド層を有し、シールドガラス55の表面には、透明な電波吸収体29が設けられている。
【0071】
仕切壁53が透明とされているので、シールド室用前室54を開放感のある空間とすることができる。また、第2出入口の第2シールド扉50にシールド層を有する覗き窓78を設ければ、シールド性能を保持したままで、シールドガラス56を透過して第1出入口の開閉状態を目視で直接確認できる。
他は、第1の実施の形態と同じであり、説明は省略する。
【0072】
(第7の実施の形態)
図12に示すように、第7の実施の形態に係るシールド室用前室66は、内部に階段67が設けられている。
【0073】
階段67を下りた所に第1出入口16が開口し、第1出入口16の奥がシールド室12とされている。また、階段67を上がった所に第2出入口22が設けられている。第1出入口16と第2出入口22には、シールド扉は設けられていない。このとき、シールド室12から第1出入口16を通して第2出入口22を見たとき、階段67で第2出入口22が隠されている。即ち、階段67が、第1の実施の形態〜第6の実施の形態で説明した仕切壁26と同様の作用をする。
【0074】
また、シールド室用前室66を構成する第1側壁14、第2側壁20、天井壁68には、導電性の材料で形成されたシールド層が設けられ、シールド構造とされている。
これにより、第1出入口16から第2出入口22に向かう電波Kは、階段67で遮られ、反射する。反射された電波Kは、第1側壁14、第2側壁20、天井壁68で一部が吸収され、残りが反射するため、第2出入口22から直接外部へ出ることはない。
この結果、シールド室用前室66の内部で、電波を遮断し減衰させることができる。
なお、天井壁68に、内部にシールド層を有し、表面に電波吸収体28を設けた垂壁77を設けることもできる。これにより、電波をより減衰させることができる。
また、シールド室12を、階段67を下りた位置でなく、階段67を上がった位置に配置してもよい。他は、第1の実施の形態と同じであり、説明は省略する。
【0075】
(第8の実施の形態)
図13に示すように、第8の実施の形態に係るシールド室12は、シールド層が設けられた側壁62及び天井壁(図示せず)でシールド空間64が構成されている。
【0076】
シールド空間64を構成する側壁62、第1側壁14、及び天井壁の表面には、第1の実施の形態で説明した電波吸収体28が設けられている。
【0077】
第1側壁14に設けられた第1出入口16の外側には、第1の実施の形態で説明したシールド室用前室10が設けられ、シールド室用前室10が電波を吸収し減衰させる。
他の構成は、第1の実施の形態と同じであり、説明は省略する。
これにより、高い遮蔽性能のシールド扉を必要としないシールド室12が提供できる。
【0078】
なお、シールド室用前室10は、第1の実施の形態で説明したシールド室用前室10に限定されることはなく、第2の実施の形態〜第6の実施の形態で説明したシールド室用前室30、40、44、46、54のいずれでもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 シールド室用前室
12 シールド室
14 第1側壁
16 第1出入口
18 外部
20 第2側壁
22 第2出入口
24 開口部
26 仕切壁
28 電波吸収体
29 電波吸収体
32 電波吸収体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド室に隣接して設けられたシールド室用前室であって、
前記シールド室と前記シールド室用前室を仕切る第1側壁に設けられた第1出入口と、
前記シールド室用前室と外部を仕切る第2側壁に設けられた第2出入口と、
前記シールド室用前室内を仕切り一端に通路となる開口部が設けられた、少なくとも1つの仕切壁と、
を有し、
前記仕切壁は、前記シールド室から前記第1出入口を通して前記第2出入口を見たとき、前記第2出入口を隠す位置に設けられ、
前記第1側壁、前記第2側壁、前記シールド室用前室の天井壁、及び前記仕切壁には、導電性の材料で形成されたシールド層が設けられ、前記第1側壁、前記第2側壁、前記天井壁、及び前記仕切壁の表面には、電波を吸収する電波吸収体が設けられているシールド室用前室。
【請求項2】
前記電波吸収体は、電波吸収特性が異なる複数種類の前記電波吸収体を組合せて構成されている請求項1に記載のシールド室用前室。
【請求項3】
前記電波吸収体が表面に設けられた平板を、前記第1側壁、前記第2側壁、又は前記天井壁に対し、傾斜させて設置した請求項1に記載のシールド室用前室。
【請求項4】
前記第1出入口、前記第2出入口、及び前記開口部の少なくとも1つに、前記シールド層及び前記電波吸収体を備えたシールド扉を設けた請求項1〜3に記載のシールド室用前室。
【請求項5】
シールド層が設けられた側壁及び天井壁でシールド空間を構成し、前記シールド空間を構成する前記側壁及び前記天井壁の表面には電波吸収体が備えられ、出入口の外側には請求項1〜4のいずれか1項に記載のシールド室用前室が設けられているシールド室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−219431(P2010−219431A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66769(P2009−66769)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】