説明

シールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置及び密閉方法

【課題】防音ハウス内のセグメントシール貼り作業(有機溶剤作業)領域において、作業者が有機溶剤を吸入することによる健康障害の防止に寄与できる密閉装置を提供する。
【解決手段】密閉装置20は、壁パネル側の領域に配置され、基部を壁パネルに回動可能に連結し壁パネル側から回動した状態で前記有機溶剤作業領域の上部を覆う上部覆体22と、上部覆体22の前部に取り付けた基軸体30と、この基軸体30から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群と、上部覆体22の両側部に取り付けた基軸体30aと、この基軸体30aから床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群と、上部覆体22の後部に取り付けた基軸体30cと、この基軸体30cから床に至るまで垂下したシート29aと、前記上部覆体22を壁パネル側と、セグメントシール貼り作業3の上部を覆う側とにわたって回動駆動する上部覆体駆動手段24とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音ハウス内のセグメントシール貼り作業(すなわち「有機溶剤作業」)領域において、作業者が有機溶剤を吸入することによる健康障害を防止することができるシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置及び密閉方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルシールド、推進工事の発進立坑基地に設けられる防音ハウス内では、各種の作業、設備が存在する。例えば、泥水式、土圧式シールド工法ではシールドトンネルの覆工に用いる鉄筋コンクリート製、および鋼製の部材で分割されたセグメントのシール貼り作業領域がある。
【0003】
トンネルは地下水以下に構築される場合が多いので、セグメントの継手面には地下水圧に耐え得る防水工が必要で、一般には水膨張系のシールが貼られる。このシール貼りにはトルエン、キシレン、スチレン等の有機溶剤が使用されることから有機ガスを伴う有機溶剤作業となる。
【0004】
このような防音ハウス内の換気方法は、通常全体換気として吸気ダクトと排気ダクトが単一方向に設けられ、有機溶剤の蒸気を混合希釈しながら換気する方法が採用される。
全体換気では混合希釈した汚染空気を防音ハウス内に拡散してしまうのと部分的な汚染空気の濃淡が発生する。また、換気効率が劣り、シール貼りの有機溶剤作業の換気としては不適切な場合がある。
【0005】
この種の防音ハウス内における換気装置の従来例を、図23乃至図26を参照して概説する。
【0006】
同図に示す防音ハウス151の換気装置は、前後左右四方の側壁、及び天井付きで、全体として大型直方体箱型状で防音構造を施したハウス本体152の前側の側壁に同一の高さで例えば11個の排気ダクト154を列設し、また、後側の側壁に同一の高さで例えば11個の吸気ダクト153を列設し、各吸気ダクト153、各排気ダクト154を略同列配置としている。
【0007】
前記後側の側壁に設けた11個の吸気ダクト153は、この側壁の下位位置に配置している。また、前側の側壁に設けた11個の排気ダクト154は、この側壁の上位位置に配置している。
【0008】
従来の防音ハウス151の換気装置は、全体換気として吸気ダクト153と排気ダクト154とが単一方向に設けられ、また、動力ファンは通常排気ダクト154にのみ設けられる。
【0009】
なお、図23において、符号155は電動重量シャッタ、符号156は作業者用の開閉ドアであり、図24において、符号157は天井走行クレーンである。
【0010】
このような従来の防音ハウス151の換気装置の構成においては、防音ハウス151内において、個々の作業で発生する有害ガス、粉塵、坑内換気を行う送気空気、機械設備の発生熱、気流の流れ等への換気対策が必ずしも十分ではない。
【0011】
特に、上述した従来の全体換気方式による防音ハウス151の換気装置の構成では、例えば防音ハウス151内におけるセグメントシール貼り作業領域158で発生する有機溶剤に基づく汚染空気を防音ハウス151内に拡散してしまうのと部分的な汚染空気の濃淡が発生するという問題がある。また、換気効率が劣り、セグメントのシール貼りの有機溶剤作業領域の密閉対策、換気対策としては不十分である。
【0012】
特許文献1には、掘削土砂を堆積して一時的に収容する土砂ピット、移動式バックホウが走行するためのガイドレール等を設けた防音ハウスを含む構成としたシールド工事の施工現場に設けられる掘削土砂の集積搬出設備が提案されている。しかし、特許文献1の場合も密閉対策、換気対策が必ずしも十分ではないものと推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−204590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする問題点は、シールドトンネルの発進立坑基地に設けられる防音ハウス内のセグメントシール貼り作業(有機溶剤作業)領域において、作業者が有機溶剤を吸入することによる健康障害の防止の改善に寄与することができるような当該領域の密閉装置、密閉方法が存在しない点である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る装置は、シールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置であって、有機溶剤作業領域は防音ハウス内における壁パネル側の領域に配置され、基部を壁パネルに回動可能に連結し壁パネル側から回動した状態で前記有機溶剤作業領域の上部を覆う上部覆体と、上部覆体の前部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群と、上部覆体の両側部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群と、上部覆体の後部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで垂下したシートと、前記上部覆体を壁パネル側と、前記有機溶剤作業領域の上部を覆う側とにわたって回動駆動する上部覆体駆動手段と、を有することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、シールドトンネルの発進立坑基地に設けられる防音ハウス内の有機溶剤作業領域において、この有機溶剤作業領域を密閉でき、換気装置との組み合わせを行うことにより、作業者が有機溶剤を吸入することによる健康障害を防止することができ、また、重ね暖簾式の透明シートの採用により有機溶剤作業領域に対する作業者の出入が極めて容易で作業能率が向上するとともに、透明シートの採用により有機溶剤作業領域内の作業者を外部から視認することもでき、労働安全面でも優れ、更に、防塵効果をも発揮するシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置を実現し提供することができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、防音ハウス内の有機溶剤作業領域に適用して請求項1記載の発明と同様な効果を奏するとともに、上部覆体の前部に取り付けた伸縮可能な基軸体の採用により、有機溶剤作業領域のサイズの大小にも対応可能なシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置を実現し提供することができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、シールドトンネルの発進立坑基地に設けられる防音ハウス内の有機溶剤作業領域において、請求項1記載の発明と同様な効果を奏するとともに、上部覆体支持・移動手段により前記上部覆体の壁パネル側の辺部を支持し、壁パネル壁面に沿って移動駆動することができ、有機溶剤作業領域が広い場合にも対応できるシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置を実現し提供することができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、シールドトンネルの発進立坑基地に設けられる防音ハウス内の有機溶剤作業領域において、請求項1記載の発明と同様な効果を奏するとともに、枠体支持・移動手段の回転輪により前記枠体を支持しつつ有機溶剤作業領域の床に敷設したレール上を移動させることができ、有機溶剤作業領域が広い場合にも対応できるシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置を実現し提供することができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、請求項1記載の発明に係る密閉装置の構成の基に、防音ハウス内の有機溶剤作業領域において、有機溶剤作業領域を密閉でき、換気装置との組み合わせを行うことにより、作業者が有機溶剤を吸入することによる健康障害を防止することができ、また、作業能率の向上、労働安全性の向上、更には、防塵効果も期待できるシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉方法を実現し提供することができる。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、請求項2記載の発明に係る密閉装置の構成の基に、防音ハウス内の有機溶剤作業領域において、有機溶剤作業領域を密閉でき、換気装置との組み合わせを行うことにより、請求項5記載の発明と同様な効果を奏するとともに、有機溶剤作業領域のサイズの大小にも対応可能なシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉方法を実現し提供することができる。
【0022】
請求項7記載の発明によれば、請求項3記載の発明に係る密閉装置の構成の基に、防音ハウス内の有機溶剤作業領域において、有機溶剤作業領域を密閉でき、換気装置との組み合わせを行うことにより、請求項5記載の発明と同様な効果を奏することに加えて、有機溶剤作業領域が複数箇所に存在する場合にも対応できる防音ハウス内の有機溶剤作業領域の換気方法を実現し提供することができる。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、請求項4記載の発明に係る密閉装置の構成の基に、防音ハウス内の有機溶剤作業領域において、有機溶剤作業領域を密閉でき、換気装置との組み合わせを行うことにより、請求項5記載の発明と同様な効果を奏することに加えて、有機溶剤作業領域が複数箇所に存在する場合にも対応できる防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉方法を実現し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は本発明の実施例1に係る密閉装置を含む防音ハウスの天井を除いた状態の概略平面図である。
【図2】図2は本実施例1に係る密閉装置を含む防音ハウスの概略正面図である。
【図3】図3は本実施例1に係る密閉装置を含む防音ハウスの概略背面(後面)図である。
【図4】図4は本実施例1に係る密閉装置を含む全体の制御系の概略ブロック図である。
【図5】図5は本実施例1に係る密閉装置を含む防音ハウス内の昼間作業時における側壁下位位置の換気流を示す説明図である。
【図6】図6は本実施例1に係る密閉装置を含む防音ハウス内の昼間作業時における側壁中位位置の換気流を示す説明図である。
【図7】図7は本実施例1に係る密閉装置を含む防音ハウス内の昼間作業時における側壁上位位置の換気流を示す説明図である。
【図8】図8は本実施例1に係る防音ハウス内の立坑換気設備領域、セグメントシール貼り作業領域の昼間作業時における換気流を示す説明図である。
【図9】図9は本実施例1に係る防音ハウス内の密閉装置を配置したセグメントシール貼り作業領域及び立坑換気設備領域の昼間作業時における換気流を示す拡大説明図である。
【図10】図10は本実施例1に係る換気装置の構成を示す概略斜視図である。
【図11】図11は本実施例1に係るセグメント片の平面、正面、側面を示す図である。
【図12】図12は本実施例1に係る組み立て状態のセグメントを示す平面図である。
【図13】図13は有機溶剤の管理濃度を示す表形式の図である。
【図14】図14は有機則における設備の設置の概略を示す表形式の図である。
【図15】図15は適用除外の概略を示す図である。
【図16】図16は本発明の実施例2に係る防音ハウス内の密閉装置を配置したセグメントシール貼り作業領域及び立坑換気設備領域の昼間作業時における換気流を示す拡大説明図である。
【図17】図17は本実施例2に係る防音ハウス内の密閉装置を配置したセグメントシール貼り作業領域の概略側面図である。
【図18】図18は本発明の実施例3に係る防音ハウス内の密閉装置を配置したセグメントシール貼り作業領域の概略拡大側面図である。
【図19】図19は本発明の実施例4に係る防音ハウス内の密閉装置を配置したセグメントシール貼り作業領域の概略側面図である。
【図20】図20は本実施例4に係る防音ハウス内の密閉装置を構成する枠体のみ配置したセグメントシール貼り作業領域の概略側面図である。
【図21】図21は本実施例4に係る防音ハウス内の密閉装置の移動状態を示す説明図である。
【図22】図22は本実施例4に係る防音ハウス内の密閉装置の概略正面図である。
【図23】図23は従来の換気装置を含む防音ハウスの天井を除いた状態の概略平面図である。
【図24】図24は従来の換気装置を含む防音ハウスの概略縦断面図である。
【図25】図25は従来の換気装置を含む防音ハウスの概略正面図である。
【図26】図26は従来の換気装置を含む防音ハウスの概略背面(後面)図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、シールドトンネルの発進立坑基地に設けられる防音ハウス内のセグメントシール貼り作業(有機溶剤作業)領域において、作業者が有機溶剤を吸入することによる健康障害の防止に寄与することができるシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置及び密閉方法を実現し提供するという目的を、シールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置であって、有機溶剤作業領域は防音ハウス内における壁パネル側の領域に配置され、基部を壁パネルに回動可能に連結し壁パネル側から回動した状態で前記有機溶剤作業領域の上部を覆う上部覆体と、上部覆体の前部に取り付けた伸縮可能な基軸体と、この基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群と、上部覆体の両側部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群と、上部覆体の後部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで垂下したシートと、前記上部覆体を壁パネル側と、前記有機溶剤作業領域の上部を覆う側とにわたって回動駆動する上部覆体駆動手段と、を有する構成により実現した。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明の実施例1に係るシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置及び密閉方法について図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1は本実施例1に係るシールド工事における防音ハウス1の有機溶剤作業領域(セグメントシール貼り作業領域)の密閉装置20を含む全体の換気系を示すものであり、この換気系は、前後左右四方の側壁(側壁パネル)、及び天井付きで全体として大型直方体箱型状で防音構造を施した図1乃至図3に示す防音ハウス1のハウス本体2に設置され、このハウス本体2内の強制排気を行うように構成している。
【0028】
なお、図1において、ハウス本体2についての前後左右の位置関係を同図に示すように定義して以下の説明を行う。
【0029】
前記防音ハウス1のハウス本体2内には、その内部に、有機溶剤混入によるセグメントシール貼り作業領域3、大型トラック等の運搬車が出入する資器材、掘削土搬出入作業領域4、改質材混入による掘削土改質作業領域5、及びハウス本体2の前側外方位置の立坑10に連通させて坑内送気、坑内排気を行う送気装置、排気装置を備える立坑換気設備領域6、各種機械設備を設置する機械設備設置領域7、泥水式シールドに必要な泥水処理の水槽群設置領域8を有している。
【0030】
すなわち、前記セグメントシール貼り作業領域3はハウス本体2の図1において左後隅部に、前記資器材、掘削土搬出入作業領域4はハウス本体2の図1において略中央部の前側、後側の両側壁にわたる位置に、前記掘削土改質作業領域5は前記資器材、掘削土搬出入作業領域4の右隣りで後側の側壁に近い位置に、前記立坑換気設備領域6はハウス本体2の図1において左前隅部に、前記機械設備設置領域7はハウス本体2の図1において右後隅部に、前記水槽群設置領域8はハウス本体2の図1において右前隅部に、各々設置している。
【0031】
前記ハウス本体2の前側の側壁には、図2にも示すように、その略中央部地面側に位置して運搬車が出入するための電動重量シャッタ9を設け、その隣に作業者用の開閉ドア11を設け、また、前記ハウス本体2の右側の側壁には、図1に示すように、作業者用の開閉ドア11を設けている。図3は前記ハウス本体2の後面の概略を示すものである。
【0032】
次に、全体の換気系について詳述する。
この換気系は、図1に示すように、前記ハウス本体2の少なくとも三方の各側壁、すなわち、前側、後側、及び左側の三方の各側壁に、上下三段、各側壁幅方向複数列にわたって、かつ、同段同列対向配置に多数の吸気手段である吸気扇(吸気ファン)21、排気手段である排気扇(排気ファン)31を設けることにより構成している。
【0033】
更に詳述すると、前記ハウス本体2の前側、後側の各側壁には、幅方向に合計14個構成の吸気扇21、及び排気扇31を各々列設している。
【0034】
すなわち、前記ハウス本体2の前側の側壁には、9個の吸気扇21と、5個の排気扇31とを列設している。
【0035】
また、前記ハウス本体2の後側の側壁には、5個の吸気扇21と、9個の排気扇31とを列設している。
【0036】
これら14個構成の吸気扇21、及び排気扇31の設置状態について上述した各領域に応じて以下に個別に説明する。
【0037】
前記立坑換気設備領域6と前記セグメントシール貼り作業領域3とを挟んで対向する前側、後側の両側壁(図1において前記資器材、掘削土搬出入作業領域4よりも左側の前側、後側の両側壁)には、5個の排気扇31と、本実施例に係る換気装置20を構成する3個の吸気扇21及び2個の排気扇31を列設している。
【0038】
この内、前側の側壁には、5個の排気扇31をハウス本体2の側壁上位位置(これを図1において八角枠付きC:大文字Cを八角枠で囲んだ形態で表す:以下同様)に列設している。
【0039】
一方、後側の側壁には、3個の吸気扇21と2個の排気扇31とを、左側から順に交互配置に列設している。この内、左から一番目、三番目、五番目の吸気扇21は、側壁上位位置(八角枠付きC)に配置し、二番目、四番目の排気扇31は側壁下位位置(八角枠付きA)に配置している。
【0040】
この結果、前記立坑換気設備領域6と前記セグメントシール貼り作業領域3とを挟んで対向する前側、後側の両側壁間においては、前側の側壁における左から一番目、三番目、五番目の各排気扇31と、後側の側壁における左から一番目、三番目、5番目の各吸気扇21とが同段同列で対向するようになっている。
【0041】
次に、前記資器材、掘削土搬出入作業領域4を挟んで対向する前側、後側の両側壁においては、各々3個の吸気扇21又は排気扇31を列設している。
【0042】
この内、前側の側壁には、3個の吸気扇21をハウス本体2の側壁下位位置(八角枠付きA)、側壁中位位置(八角枠付きB)、側壁上位位置(八角枠付きC)に配置している。
【0043】
一方、後側の側壁には、1個の吸気扇21と2個の排気扇31とを、左側から排気扇31、吸気扇21、排気扇31の順に列設するとともに、1個の吸気扇21は側壁上位位置(八角枠付きC)に、2個の排気扇31は側壁下位位置(八角枠付きA)に配置している。
【0044】
この結果、前記資器材、掘削土搬出入作業領域4を挟んで対向する前側、後側の両側壁間においては、前側の側壁における左側の吸気扇21と、後側の側壁における左側の排気扇31とが同段同列で対向し、前側の側壁における中央の吸気扇21と、後側の側壁における中央の吸気扇21とが同段同列で対向するようになっている。
【0045】
次に、前記掘削土改質作業領域5を挟んで対向する前側、後側の両側壁においては各々3個の吸気扇21又は排気扇31を列設している。
【0046】
この内、前側の側壁には3個の吸気扇21を列設している。3個の吸気扇21の内、一番目と三番目の吸気扇21はハウス本体2の側壁下位位置(八角枠付きA)に、二番目の吸気扇21はハウス本体2の側壁中位位置(八角枠付きB)に配置している。
【0047】
一方、後側の側壁には、図示しないが風向カバー付きの1個の吸気扇21と2個の排気扇31とを、左側から排気扇31、吸気扇21、排気扇31の順に列設するとともに、1個の吸気扇21は側壁上位位置(八角枠付きC)に、2個の排気扇31は側壁下位位置(八角枠付きA)に配置している。
【0048】
この結果、前記掘削土改質作業領域5を挟んで対向する前側、後側の両側壁においては、前側の側壁における一番目、三番目の吸気扇21と、後側の側壁における一番目、三番目の排気扇31とが同段同列で対向するようになっている。
【0049】
次に、前記水槽群設置領域8、及び機械設備設置領域7を挟んで対向する前側、後側の両側壁においては、各々3個の吸気扇21又は3個の排気扇31を列設している。
【0050】
この内、前側の側壁には3個の吸気扇21を列設している。3個の吸気扇21の内、一番目と三番目の吸気扇21はハウス本体2の側壁下位位置(八角枠付きA)に、二番目の吸気扇21はハウス本体2の側壁中位位置(八角枠付きB)に配置している。
【0051】
一方、後側の側壁には、3個の各排気扇31を列設している。当該3個の排気扇31の内、一番目と三番目の排気扇31はハウス本体2の側壁上位位置(八角枠付きC)に、二番目の排気扇31はハウス本体2の側壁中位位置(八角枠付きB)に配置している。
【0052】
この結果、前記水槽群設置領域8、及び機械設備設置領域7を挟んで対向する前側、後側の両側壁においては、前側の側壁における中央の吸気扇21と、後側の側壁における中央の排気扇31とが同段同列で対向するようになっている。
【0053】
前記ハウス本体2の左側の側壁には、幅方向に合計4個の各吸気扇21を列設している。4個の吸気扇21の内、前記立坑換気設備領域6に臨む2個の吸気扇21は、側壁下位位置(八角枠付きA)に配置している。
【0054】
また、前記セグメントシール貼り作業領域3に臨む左の側壁側の本実施例に係る換気装置20を構成する2個の各吸気扇21は、側壁中位位置(八角枠付きB)に配置している。
【0055】
次に、本実施例1に係る密閉装置20について、図8、図9及び図10を参照して更に詳述する。
【0056】
本実施例に係る密閉装置20は、図9に示すように、前記セグメントシール貼り作業領域3に配置している。
【0057】
この密閉装置20は、天井走行クレーン32の下方で、前記セグメントシール貼り作業領域3の上部を覆う上部覆体22と、この上部覆体22の突出端側辺部に基軸体30を介して着脱可能に取り付けられ前記セグメントシール貼り作業領域3の前側側面(前部)を覆う帯状の透明シート29を重ね暖簾状に配置し垂下して透明シート群として形成した第1の側面覆体23と、前記上部覆体22の両側部に取り付けた基軸体30a、30bと、この基軸体30a、30bから各々床に至るまで透明シート29を重ね暖簾状に垂下して帯状の透明シート群として形成した第2、第3の側面覆体23a、23bと、前記上部覆体22の後部に取り付けた基軸体30cと、この基軸体30cから床に至るまで垂下した例えば透明のシート29aと、前記上部覆体22を回動駆動する上部覆体駆動手段24と、を有している。
【0058】
前記密閉装置20の周囲には、前記左の側壁に取り付けられ、前記上部覆体22、側面覆体23により囲まれる前記セグメントシール貼り作業領域3の上部側で、かつ、前端側及び後端側の2箇所に側方から吸気する2個の吸気扇21と、前記セグメントシール貼り作業領域3に対応する後の側壁下部に取り付けられ、有機溶剤作業に伴い発生する有機溶剤ガスを後の側壁下部で、かつ、セグメントシール貼り作業領域3の中央左寄り及び中央右寄りの2箇所からハウス本体2の後方外部に排気する2個の排気扇31と、を配置している。
【0059】
前記上部覆体22は、軽量形鋼フレームを採用し、矩形状に形成した基端側フレーム25を具備し、この基端側フレーム25を軸支部28により後の壁に回動可能に軸支するとともに、前記基端側フレーム25の突出端側辺部に前記基軸体30を取り付け前記透明シート27を張設している。また、前記基端側フレーム25の両側部に基軸体30a、30bを取り付け、各々透明シート29を張設している。更に、前記基端側フレーム25の基部に基軸体30cを取り付け、シート29aを張設している。
【0060】
前記上部覆体駆動手段24は、セグメントシール貼り作業領域3における後の側壁側の床面(又は地面)に設置した電動ウィンチ34と、セグメントシール貼り作業領域3の後の側壁の上部に配置した滑車35と、一端側を前記電動ウィンチ34に巻回して、滑車35の外周に掛け回した後前記基端側フレーム25の突出端側に他端側を係止した吊ワイヤ36とを具備し、操作スイッチ37の操作に基づく電動ウィンチ34の回転により前記吊ワイヤ36を巻き込み又は繰り出すことによって、前記上部覆体22の基端側フレーム25を図9に示すように、後の側壁に添う位置と、前記セグメントシール貼り作業領域3の上部を覆う位置とにわたって略90度回動させるように構成している。
【0061】
なお、図9、図10において、38は、後の側壁に固着した基端側フレーム25用のストッパである。
【0062】
前記第1の側面覆体23は、略90度回動状態の前記基端側フレーム25の突出端側辺部に例えばフック(図示せず)掛けのような態様で着脱可能に取り付けた棒状の基軸体30から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群であって、帯状の各透明シート29を隣り合う長辺同士を重合させ、透明シート群の前側、後側の空気を遮断するように構成している。
前記第2、第3の側面覆体23a、23bも同様な構成となっている。
【0063】
また、前記第1の側面覆体23は、上述のように重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群を採用することにより、セグメントシール貼り作業領域3の外部からその内部の作業者を視認し得るとともに、作業者が各透明シート29の間を掻き分けて自由にセグメントシール貼り作業領域3に出入し得るようになっている。前記第2、第3の側面覆体23a、23bも同様な作用、効果を発揮する。
【0064】
次に、図4を参照して全体の換気系に関する制御系について説明する。
【0065】
全体の換気系は、シールド、推進工事における防音ハウス1内の昼間作業モード、夜間作業モード、天井換気モードを設定するキーボード、タッチパネル等からなる入力部41と、本実施例に係る換気装置の昼間作業モード、夜間作業モード、天井換気モードに関する動作プログラムを予め格納したプログラムメモリ42と、合計32個の吸気扇21、排気扇31と、全体で32個のオンオフ駆動部43と、各種文字情報等を表示する表示部44と、前記入力部41にて設定される各モードに応じた動作プログラムの基に前記各オンオフ駆動部43を個別に制御する制御部40と、を有している。
【0066】
全体の換気系は、更に、本実施例1に係る密閉装置20を構成する電動ウィンチ34をオンオフ操作する操作スイッチ37を有している。
【0067】
次に、前記防音ハウス1における密閉装置20を含めた全体の換気方法について、例えば昼間作業モードを例にとり、図5乃至図7をも参照して説明する。
【0068】
作業者が前記入力部41を操作し、昼間作業モードを設定すると、制御部40は、設定された昼間作業モードに応じた動作プログラムの基に前記各オンオフ駆動部43を個別に制御し、前記吸気扇21、排気扇31を図5乃至図7に示す態様でオン動作させ、防音ハウス1内の各領域の換気を以下のように実行する。
【0069】
すなわち、この場合の防音ハウス1内における側壁下位位置(八角枠付きA)の各吸気扇21、排気扇31による換気流(八角枠付きA層換気流)は、図5に示すように行われる。
【0070】
具体的には、立坑換気設備領域6では図5に示すように左側の側壁に配置した2個の吸気扇21からの吸気が供給され、前記セグメントシール貼り作業領域3では後側の側壁に設けた2個の排気扇31による排気が実行され、前記資器材、掘削土搬出入作業領域4では後側の側壁に設けた2個の排気扇31による排気が実行され、前記掘削土改質作業領域5では前側の側壁に設けた1個の吸気扇21による吸気と後側の側壁に設けた2個の排気扇31による排気が実行され、前記水槽群設置領域8では前側の側壁に設けた2個の吸気扇21による吸気が実行される。
【0071】
また、防音ハウス1内における側壁中位位置(八角枠付きB)の各吸気扇21、排気扇31による換気流(八角枠付きB層換気流)は、図6に示すようになる。
【0072】
具体的には、前記セグメントシール貼り作業領域3では左側の側壁に配置した2個の吸気扇21による吸気が実行され、前記掘削土改質作業領域5では前側の側壁に配置した1個の吸気扇21による吸気が実行され、前記機械設備設置領域7、及び前記水槽群設置領域8では前側の側壁に配置した1個の吸気扇21による吸気と、後側の側壁に設けた1個の排気扇31による排気が実行される。
【0073】
更に、防音ハウス1内における側壁上位位置(八角枠付きC)の各吸気扇21、排気扇31による換気流(八角枠付きC層換気流)は、図7に示すようになる。
【0074】
具体的には、前記立坑換気設備領域6、及びセグメントシール貼り作業領域3では、後側の側壁に配置した3個の吸気扇21による吸気と、前側の側壁に配置した5個の排気扇31による排気とが実行され、前記資器材、掘削土搬出入作業領域4では、前側の側壁に配置した3個の吸気扇21による吸気と、後側の側壁に配置した1個の吸気扇21による吸気とが実行される。
【0075】
前記掘削土改質作業領域5では後側の側壁に配置した1個の排気扇31による排気が実行され、前記機械設備設置領域7では後側の側壁に配置した2個の排気扇31による排気が実行される。
【0076】
上述した図5乃至図7に示す八角枠付きのA、B、C各層換気流の内、前記立坑換気設備領域6、及び前記セグメントシール貼り作業領域3の上述した各層換気流の状態(前記上部覆体22、側面覆体23を使用しない場合)は図8に示すようになる。
【0077】
すなわち、坑内からの坑道排気は立坑上部に排気されるので、前記立坑換気設備領域6における立坑10からの排気流は前側の側壁下位位置(八角枠付きA)の排気扇31により速やかに排気できる。
【0078】
また、シールド坑内へは、左側の側壁の側壁下位位置(八角枠付きA)に設けた吸気扇21から立坑換気設備領域6を経て新鮮な空気を供給する。
【0079】
更に、前記セグメントシール貼り作業領域3におけるセグメントシール貼り作業に伴って発生する有機溶剤ガスは空気より重く沈降することから、後側の側壁下位位置(八角枠付きA)の排気扇31により拡散させないで最短気流域で排気することができる。
【0080】
更にまた、防音ハウス1内の側壁上位位置(八角枠付きC)には、同段同列の吸気扇21、排気扇31による気流域が形成されるので、有機溶剤ガスを防音ハウス1内の下位位置に封じ込めながら排気することが可能となる。
【0081】
次に、本実施例に係る密閉装置20を含めた前記セグメントシール貼り作業領域3の換気方法について、図9を参照して詳述する。
【0082】
この換気方法は、前記上部覆体22を、電動ウィンチ34、滑車35及び吊ワイヤ36を用いた上部覆体駆動手段24により後の側壁側から略90度回動した状態で前記セグメントシール貼り作業領域3の上部を覆う。
【0083】
次に、略90度回動した状態の前記上部覆体22の突出端側辺部に前記基軸体30を着脱可能に取り付け、多数の透明シート29を重ね暖簾状とした帯状の透明シート群を床に至るまで垂下する。また、前記上部覆体22の両側部に基軸体30a、30bを取り付け、多数の透明シート29を重ね暖簾状とした帯状の透明シート群を床に至るまで垂下する。更に、前記基端側フレーム25の基部に基軸体30cを取り付け、シート29aを床に至るまで垂下する。
【0084】
これにより、前記透明シート29及びシート29aにより前記セグメントシール貼り作業領域3の上部、前側側面、両側面、後面を囲む状態の密閉空間が形成され、前記セグメントシール貼り作業領域3からその上方及び前方、側方、後方への気流の流れが遮断される。
【0085】
次に、前記左の側壁に取り付けた2個の吸気扇21により、密閉された前記セグメントシール貼り作業領域3の外側から上部側に向けて吸気するとともに、後の側壁に取り付けた2個の排気扇31により、有機溶剤作業に伴い発生する有機溶剤ガスを後の側壁下部で、かつ、密閉されたセグメントシール貼り作業領域3の前記シート29aの後部から外部に排気する。
【0086】
これにより、密閉された前記セグメントシール貼り作業領域3からわずかに漏れ出る有機溶剤ガスを外部に排気することができる。
【0087】
以上説明した本実施例1に係る前記セグメントシール貼り作業領域3の密閉装置20及びこの密閉装置20を使用した密閉方法と、換気系による換気との組み合わせによって、セグメントシール貼り作業領域3の換気効率が向上するとともに、作業中の作業員への有機溶剤ガスのばく露時間を少なくすることができる。
【0088】
また、前記密閉装置20及びこの密閉装置20を使用した密閉方法によれば、上部覆体22、第1の側面覆体23、第2、第3の側面覆体23a、23b及び前記シート29aによる密閉空間を設置することで、防音ハウス1内の他の作業領域への有機溶剤ガスの拡散を防止し、他作業の作業員への有機溶剤ガスによる影響を防止することもできる。
【0089】
また、前記密閉空間からの集中排気により、防音ハウス1外における排気場所、希釈、除去等の排気対策が容易になるという利点もある。
【0090】
更に、前記密閉装置20は、上部覆体22、第1の側面覆体23、第2、第3の側面覆体23a、23b及び前記シート29aの使用済み後の撤去作業、収納作業を容易に行うことができ、取り扱い性が簡便である利点もある。
【0091】
更にまた、前記密閉装置20は、上部覆体22の透明シート27、第1の側面覆体23、第2、第3の側面覆体23a、23bの重ね暖簾式の透明シート29及び前記シート29aによって、セグメントシール貼り作業領域3内への塵の侵入防止を図ることができる防塵効果を発揮できる。
【0092】
加えて、重ね暖簾式の透明シート29の採用によりセグメントシール貼り作業領域3に対する作業者の出入が極めて容易で作業能率が向上するとともに、前記透明シート29の採用によりセグメントシール貼り作業領域3内の作業者を外部から視認することもでき、労働安全面でも優れる利点がある。
【0093】
図11、図12は、本実施例に係る前記セグメントシール貼り作業領域3にて有機溶剤を用いてシール貼りを行う円弧状で5分割型のスチールセグメント片45及び該スチールセグメント片45を5個用いた直径2000mm、幅1000mmの円筒状のセグメント46の組立図を示すものである。
【0094】
図13は、本実施例に係る前記セグメントシール貼り作業領域3にて使用する各種有機溶剤の管理濃度の一例を示すものである。
【0095】
次に、本実施例に係る前記セグメントシール貼り作業領域3におけるシール貼り作業(有機溶剤業務)の具体例を挙げると、以下の通りである。
すなわち、シール貼り作業の適用法令は、労働安全衛生法、有機溶剤中毒予防規則(有機則)、(区分:第2種有機溶剤)であり、図14に有機則における設備の設置の概略を、図15に適用除外の概略を各々示す。
【0096】
(1)シール接着剤としては、例えばクロロプレンゴム系溶剤形接着剤(混合物)、例えばトルエン、ヘキサン(n−ヘキサン)、酢酸エチル、シクロヘキサン等から選定される接着剤を使用する。
【0097】
(2)有機溶剤消費量(標準)
シールドの標準最小径で検討する。径が大きくなれば、作業効率も向上するためシールを貼るリング(Ring)数は減少するが消費量は増加する。
イ.セグメントの一例
スチールセグメント
・外径 直径2000mm(5分割)
・幅 1000mm
ロ.消費量
・シール貼り使用量:20g/m
・シール貼り延長: 12.28m/Ring
・1Ring当たり使用量W1=20×12.28=245.6g
ハ.1日当たりシール貼りセグメント数
方番8Ring 両番16Ring 2日分(32Ring)(通常 2日分 用意)
使用量W2=245.6×32=7859.2g
ニ.作業時間(通常1人)6〜8時間(作業場所、熟練度)
ホ.時間消費量Wh=7859.2/6=1309.9g/h
【0098】
(3)有機則の適用除外許容消費量W(g)(有機則 第3条)
・W=2/5×A=2/5×150=60g
ここに、A:作業場の気積(m)、気積が150mを超える場合は150mとする。
【0099】
(4)有機則の適用、適用除外
・Wh=1309g/h
・W=60g
・Wh>Wより適用される。
【実施例2】
【0100】
次に、本発明の実施例2に係るシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置20A及びこの密閉装置20Aを使用した密閉方法について図16、図17を参照して説明する。
【0101】
本実施例2に係る密閉装置20Aは、基本的構成は実施例1の密閉装置20と同様であるため、同一要素には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0102】
本実施例2に係る密閉装置20Aは、前記上部覆体22の前部に取り付けた基軸体30の構造を基端側フレーム25に対する伸縮式とし、基軸体30から床に至るまで帯状の透明シート29を重ね暖簾状に配置し垂下して透明シート群として形成した第1の側面覆体23を配置したことが特徴である。
【0103】
前記基軸体30の部分の構成例としては、例えばこの基端側フレーム25に対して矩形状の伸縮フレーム26をスライド可能な二重構造とし、伸縮フレーム26にも透明シート27を張り、その突出端側から透明シート29を重ね暖簾状に垂下する例等を挙げることができる。
【0104】
なお、図17は、前記第2の側面覆体23aの領域に斜線を付して示すものである。
【0105】
本実施例2に係る密閉装置20A及びこの密閉装置20Aを使用した密閉方法によれば、実施例1の場合と同様な作用、効果を発揮するとともに、前記伸縮フレーム26の伸縮位置の調整により、前記セグメントシール貼り作業領域3のサイズの大小の相違に応じて密閉範囲を調整することができる利点がある。
【実施例3】
【0106】
次に、本発明の実施例2に係るシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置20B及びこの密閉装置20Bを使用した密閉方法について図18を参照して説明する。
【0107】
本実施例3に係る密閉装置20Bは、基本的構成は実施例1の密閉装置20と同様であるため、同一要素には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0108】
本実施例3に係る密閉装置20Bは、実施例1の密閉装置20における軸支部28に替えて、前記密閉装置20B自体を構成する上部覆体22の後の壁面側の辺部を、上部覆体支持・移動手段47により支持し、かつ、壁面に沿って移動駆動するように構成したことが特徴である。
【0109】
すなわち、上部覆体支持・移動手段47は、壁面に上下に、かつ、横(水平)方向に配置したレール51に移動ガイド輪48a、48bを係合させて上部覆体22を取り付けた移動架台を図示しない連結機構を用いて移動架台49を横(水平)方向に駆動するようになっている。
【0110】
また、移動架台49に一端を取り付けたサポート部材50により上部覆体22を回動可能に支持するようになっている。
【0111】
本実施例3に係る密閉装置20B及びこの密閉装置20Bを使用した密閉方法によれば、実施例1の場合と同様な作用、効果を発揮するとともに、上部覆体22、従って密閉装置20B自体を前記セグメントシール貼り作業領域3が広い場合に分割してシール貼り作業、およびセグメントの搬入、搬出が同時にできる利点がある。
【実施例4】
【0112】
次に、本発明の実施例4に係るシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置20C及びこの密閉装置20Cを使用した密閉方法について図19乃至図22を参照して説明する。
【0113】
本実施例4に係る密閉装置20Cにおいて実施例1の密閉装置20と同一要素には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0114】
本実施例4に係る密閉装置20Cは、実施例1の密閉装置20の構造に替えて、前記セグメントシール貼り作業領域3の周りを囲む直方体形状を呈する枠組み構造の枠体61を採用し、枠体61の上端面に前記上部覆体22を取り付け、枠体61の前部に第1の側面覆体23を配置し、枠体61の両側部に第2の側面覆体23a、第3の側面覆体23bを取り付け、更に、枠体61の後部に既述した場合と同様なシート29aを配置している。
【0115】
更に、前記枠体61を構成する四本の支柱62の底部に回転輪63を取り付け、これらにより枠体支持・移動手段65を構成している。枠体支持・移動手段65は、図22に示すように駆動モータ66を具備し、この駆動モータ66の動作で密閉装置20Cを自動動力で移動させるものである。
【0116】
また、前記セグメントシール貼り作業領域3の床には、図20、図21に示すように、2条のレール64が敷設され、このレール64上に回転輪63を乗せて密閉装置20C自体を図21に示す矢印方向に移動可能としている。
【0117】
本実施例4に係る密閉装置20C及びこの密閉装置20Cを使用した密閉方法によれば、実施例1の場合と同様な作用、効果を発揮するとともに、枠体支持・移動手段65によって密閉装置20C自体を前記セグメントシール貼り作業領域3に敷設したレール63上を任意に移動させることができるので、セグメントシール貼り作業領域3が複数箇所に存在する場合にも容易に対応できる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の密閉装置、密閉方法は、上述したセグメントシール貼りを行う作業領域に適用する場合の他、有機溶剤を使用する各種作業場所を内部に有する建造物の密閉用として広範に適用可能である。
【符号の説明】
【0119】
1 防音ハウス
2 ハウス本体
3 セグメントシール貼り作業領域
4 掘削土搬出入作業領域
5 掘削土改質作業領域
6 立坑換気設備領域
7 機械設備設置領域
8 水槽群設置領域
9 電動重量シャッタ
10 立坑
11 開閉ドア
20 密閉装置
20A 密閉装置
20B 密閉装置
20C 密閉装置
21 吸気扇
22 上部覆体
23 第1の側面覆体
23a 第2の側面覆体
23b 第3の側面覆体
24 上部覆体駆動手段
25 基端側フレーム
26 伸縮フレーム
27 透明シート
28 軸支部
29 透明シート
30 基軸体
30a 基軸体
30b 基軸体
30c 基軸体
31 排気扇
32 天井走行クレーン
34 電動ウィンチ
35 滑車
36 吊ワイヤ
37 操作スイッチ
38 ストッパ
40 制御部
41 入力部
42 プログラムメモリ
43 オンオフ駆動部
44 表示部
45 スチールセグメント片
46 セグメント
47 上部覆体支持・移動手段
48a 移動ガイド輪
48b 移動ガイド輪
49 移動架台
50 サポート部材
51 レール
61 枠体
62 支柱
63 回転輪
64 レール
65 枠体支持・移動手段
66 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置であって、
有機溶剤作業領域は防音ハウス内における壁パネル側の領域に配置され、
基部を壁パネルに回動可能に連結し壁パネル側から回動した状態で前記有機溶剤作業領域の上部を覆う上部覆体と、
上部覆体の前部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群と、
上部覆体の両側部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群と、
上部覆体の後部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで垂下したシートと、
前記上部覆体を壁パネル側と、前記有機溶剤作業領域の上部を覆う側とにわたって回動駆動する上部覆体駆動手段と、
を有することを特徴とするシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置。
【請求項2】
シールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置であって、
有機溶剤作業領域は防音ハウス内における壁パネル側の領域に配置され、
基部を壁パネルに回動可能に連結し壁パネル側から回動した状態で前記有機溶剤作業領域の上部を覆う上部覆体と、
上部覆体の前部に取り付けた伸縮可能な基軸体と、この基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群と、
上部覆体の両側部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群と、
上部覆体の後部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで垂下したシートと、
前記上部覆体を壁パネル側と、前記有機溶剤作業領域の上部を覆う側とにわたって回動駆動する上部覆体駆動手段と、
を有することを特徴とするシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置。
【請求項3】
シールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置であって、
有機溶剤作業領域は防音ハウス内における壁パネル側の領域に配置され、
前記有機溶剤作業領域の上部を覆う上部覆体と、
上部覆体の前部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群と、
上部覆体の両側部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群と、
上部覆体の後部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで垂下したシートと、
前記上部覆体の壁パネル側の辺部を支持するとともに、壁パネル壁面に沿って移動駆動する上部覆体支持・移動手段と、
を有することを特徴とするシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置。
【請求項4】
シールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置であって、
有機溶剤作業領域の周りを囲む直方体形状を呈する枠組み構造の枠体と、
この枠体の上端面に取り付けた前記有機溶剤作業領域の上部を覆う上部覆体と、
枠体の前部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群と、
枠体の両側部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群と、
枠体の後部に取り付けた基軸体と、この基軸体から床に至るまで垂下したシートと、
前記枠体を構成する支柱の底部に取り付けた回転輪と、前記有機溶剤作業領域の床に敷設したレールとを有し、前記枠体をレールの敷設方向に移動可能とした枠体支持・移動手段と、
を有することを特徴とするシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉装置。
【請求項5】
シールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉方法であって、
有機溶剤作業領域は防音ハウス内における壁パネル側の領域に配置され、
基部を壁パネルに回動可能に連結した上部覆体を上部覆体駆動手段により壁パネル側から回動した状態で前記有機溶剤作業領域の上部を覆う工程と、
上部覆体の前部に取り付けた基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群により有機溶剤作業領域の前部を覆う工程と、
上部覆体の両側部に取り付けた基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群により有機溶剤作業領域の両側部を覆う工程と、
上部覆体の後部に取り付けた基軸体から床に至るまで垂下したシートにより前記有機溶剤作業領域の上部を覆う工程と、
を有することを特徴とするシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉方法。
【請求項6】
シールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉方法であって、
有機溶剤作業領域は防音ハウス内における壁パネル側の領域に配置され、
基部を壁パネルに回動可能に連結した上部覆体を上部覆体駆動手段により壁パネル側から回動した状態で前記有機溶剤作業領域の上部を覆う工程と、
上部覆体の前部に取り付けた伸縮可能な基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群により有機溶剤作業領域の前部を覆う工程と、
上部覆体の両側部に取り付けた基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群により有機溶剤作業領域の両側部を覆う工程と、
上部覆体の後部に取り付けた基軸体から床に至るまで垂下したシートにより前記有機溶剤作業領域の上部を覆う工程と、
を有することを特徴とするシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉方法。
【請求項7】
シールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉方法であって、
有機溶剤作業領域は防音ハウス内における壁パネル側の領域に配置され、
前記有機溶剤作業領域の上部を上部覆体支持・移動手段により移動駆動される上部覆体により覆う工程と、
上部覆体の前部に取り付けた基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群により有機溶剤作業領域の前部を覆う工程と、
上部覆体の両側部に取り付けた基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群により有機溶剤作業領域の両側部を覆う工程と、
上部覆体の後部に取り付けた基軸体から床に至るまで垂下したシートにより有機溶剤作業領域の両側部を覆う工程と、
前記上部覆体の壁パネル側の辺部を支持するとともに、壁パネル壁面に沿ってと、
を有することを特徴とするシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉方法。
【請求項8】
シールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉方法であって、
有機溶剤作業領域の周りを囲む直方体形状を呈する枠組み構造の枠体の上端面に取り付けた上部覆体により前記有機溶剤作業領域の上部を覆う工程と、
枠体の前部に取り付けた基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群により前記有機溶剤作業領域の前部を覆う工程と、
枠体の両側部に取り付けた基軸体から床に至るまで重ね暖簾状に垂下した帯状の透明シート群により前記有機溶剤作業領域の両側を覆う工程と、
枠体の後部に取り付けた基軸体から床に至るまで垂下したシートにより前記有機溶剤作業領域の後部を覆う工程と、
前記枠体を構成する支柱の底部に取り付けた回転輪と、前記有機溶剤作業領域の床に敷設したレールとを有する枠体支持・移動手段により、前記枠体をレールの敷設方向に移動させる工程と、
を有することを特徴とするシールド工事における防音ハウス内の有機溶剤作業領域の密閉方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−137326(P2011−137326A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297497(P2009−297497)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(591167898)ヤクモ株式会社 (18)
【Fターム(参考)】