説明

シールド工法用セグメント

【課題】 隣接配置されるセグメント間を、確実に充填して内面平滑性を確保することを可能にし、安定した止水性および良好な施工性を備えたものとする。
【解決手段】 セグメント本体2は、その湾曲外面を構成し内面側が開放形状とされた鋼製の鋼殻部21と、この鋼殻部21に中詰めされるコンクリート構造部22とを備える。セグメント本体2の端縁部にはコーキング材3が設けられ、このコーキング材3には、コンクリート構造部22との付着面にアンカー部31が突設されている。アンカー部31は、屈曲部311を有し、コンクリート構造部22内に埋設されてセグメント本体2に一体化されている。また、コーキング材3は内部に中空部32が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法に用いられるセグメントに関し、特にシールドトンネルの曲線部に好適な構造を備えたシールド工法用セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
道路や鉄道等のトンネルあるいは下水道管渠築造用のトンネルなどを構築する場合、シールド工法が広く採用されている。シールド工法は、先端に掘削刃を備えたシールドマシンを地中で推進させながらトンネル穴を掘削していくものである。そして、このシールドマシンで地盤を掘進しつつ、掘削部の周囲内壁面に沿ってセグメントを順次組み立てることによってトンネルの壁体を構築する。
【0003】
また、近時では、シールド工法において、所要数のセグメントを組み立てると同時に、トンネル内面が平滑になるセグメントを用いる手法が採用されるようになっている。これは、内壁面をコンクリートや樹脂にてコーティングする二次覆工の工程を省略するとともに、トンネル断面が縮小してしまうことによる経済的・工期的なデメリットを解消しようとするものである。
【0004】
セグメントは、例えばトンネル内の内周を複数に分割する大きさであり、内周方向およびシールドトンネルの進路方向に順次接合されていく。このような目的に適合するセグメントとしては、コンクリート製セグメント、鋼板のみで製造された鋼製セグメント、あるいは鋼殻部にコンクリートを充填した鋼殻中詰めセグメントなどがある(例えば、特許文献1等参照。)。
【0005】
これらのうち、シールドトンネルの進路における曲線部には、その曲線に沿った形状の多種類のセグメントを用意する必要があることから、一般に寸法を調整することの容易な鋼製セグメントが用いられてきた。
【0006】
しかし、鋼製セグメントでは、トンネル内面が鋼板を組み合わせた構造となるため、平滑となりにくく、水路トンネル等では流下機能を確保するためにコンクリートを打設(二次覆工)して内面の平滑性を確保するようにしなければならない。したがって、セグメント組立(一次覆工)とコンクリート打設(二次覆工)の二工程を必要とし、工期短縮の支障となる。これを解決するために、鋼製セグメントにコンクリートをあらかじめ打設した鋼殻中詰めセグメントを用いることが試みられるようになってきている。
【0007】
また、このような二次覆工を省略したシールド工法では、内面仕上げを施したコンクリート二次覆工一体型のセグメントのみでトンネルの壁体を構成することができ、コーティング仕上等が施工されないため、下水管渠などを構築する場合、地下水等のトンネル内部への浸入を阻止(止水)しなければならないことに加えて、トンネル内部を流れる下水などの外部への浸出を防止することも要求される。
【0008】
そこで、シールド工法によって下水管渠などを構築するにあたり、セグメント同士の接合部において、トンネル内外の浸水を防止可能なコーキング材を配設することも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−220999号公報
【特許文献2】特開2004−137874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、シールドトンネルの進路における曲線部で、特に曲率半径の小さい急曲線部においては、必然的にセグメント同士の間に隙間が生じることがあり、曲率によっては、この隙間が比較的広くなる箇所や狭くなる箇所ができてしまう。また、鋼製セグメントの寸法精度によっても、形成されたセグメント同士の間隔にばらつきを生じるおそれがあり、このようにして生じた隙間を、トンネル進路の急曲線部においても確実に充填できるような構造を備えたセグメントが求められていた。
【0010】
そこで本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、隣接配置される他のセグメントとの間の隙間を、シールドトンネルの進路形態や施工精度、あるいはセグメントの寸法精度によらずとも、セグメント間を確実に充填して内面平滑性を確保することを可能にし、安定した止水性および良好な施工性を備えたシールド工法用セグメントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するため、本発明は、シールドマシンで地盤を掘進しつつ、シールドマシンの後方で掘削部の周囲内壁面に沿って湾曲形状のセグメント本体を順次組み立てることにより壁体を構築するシールド工法用のセグメントであって、前記セグメント本体は、内面側が開放形状とされて外面側がセグメント本体の湾曲外面を構成する鋼殻部と、この鋼殻部に中詰めされてセグメント本体の湾曲内面を構成するコンクリート構造部とを備え、前記セグメント本体の端縁部には、隣接配置される他のセグメント本体との間の緩衝領域を充填するとともに圧縮変形を許容しうるコーキング材が設けられ、前記コーキング材には、コンクリート構造部との付着面にアンカー部が突設されており、該アンカー部がコンクリート構造部内に埋設されてセグメント本体が形成されていることを特徴とする。
【0012】
このような発明により、コーキング材がセグメント本体に作用する応力に対応して変形しつつ隣接するセグメント本体との間の緩衝領域を充填するので、セグメント間における止水性を確保し、セグメント間の後埋め作業も不要となって、セグメントの組み立てと同時に平滑な内面を形成することが可能になる。また、かかるコーキング材にはアンカー部が突設されてコンクリート構造部内に埋設されているので、このアンカー部がコンクリート構造部との付着性を高め、コーキング材とコンクリート構造部との一体化を図ることができる。
【0013】
また、本発明において、前記アンカー部は屈曲部を有することが好ましい。これにより、コーキング材とコンクリート構造部との付着力が高められ、セグメント本体に応力が作用しても一体性を保つことができる。
【0014】
また、本発明では、前記鋼殻部はセグメント本体の湾曲外面を形成する外板部と、この外板部の四周端縁部に立設された縁板部とを備え、前記コーキング材は、鋼殻部の縁板部に延設されるとともに、コンクリート構造部の側縁部を覆うように配設されていることを特徴とする。
【0015】
このように構成されることにより、内面仕上げを施したコンクリート二次覆工一体型のセグメントとすることができ、セグメント本体を隣接配置することで自ずとコーキング材がセグメント本体の間に配置されて、隙間を充填可能となる。
【0016】
さらに、本発明においては、前記コーキング材の内部に、セグメント本体の端縁部に沿う方向に中空部が設けられていることを特徴としている。
【0017】
このように中空部が設けられることで、セグメント本体に作用する応力によってコーキング材が変形するときの逃げ部となり、コーキング材がセグメントの湾曲内面側に突出することなく圧縮変形することを可能にする。したがって、セグメント組み立て後の内面の平滑性を確保することができる。
【0018】
また、本発明では前記構成において、中空部がセグメント本体の湾曲内面寄りに形成されていることが好ましい。
【0019】
これにより、コーキング材がセグメント本体の湾曲内面側に突出するのを防ぐことができ、コーキング材を効果的に圧縮変形させることができる。
【0020】
また、本発明は前記構成において、前記コーキング材が、隣接配置される他のセグメント本体と対向する対向面を凹凸状に形成していることを特徴する。
【0021】
このような発明により、セグメント本体に作用する応力によってコーキング材が変形するときの逃げ部となり、コーキング材がセグメントの湾曲内面側に突出することなく、スムーズに圧縮変形して、変形対応性を高めることができる。また、これにより、セグメント組み立て後の内面の平滑性を確保することができる。
【0022】
また、本発明において、前記コーキング材は、異なる硬度の材料を用いて一体成形されており、セグメント本体の湾曲外面寄りに配置される部分よりも湾曲内面寄りに配置される部分を低い硬度に設定して形成されてもよい。
【0023】
このように構成されることにより、セグメント本体の湾曲外面寄りに配置される部分のコーキング材の止水性を高めることができる。
【0024】
また、本発明において、前記コーキング材には、弾性を有して硬度の高い材料からなる止水部が、前記鋼殻部との境界部に備えられてもよい。
【0025】
これにより、止水部がセグメント本体の湾曲内面寄りに配置されて隣接配置されたセグメント本体同士の間の止水性を高めることができる。
【0026】
さらに、前記止水部は、断面略V字状に形成されていることが好ましく、これにより、当該止水部および止水部近傍におけるコーキング材の圧縮変形にスムーズに対応させることが可能になる。
【0027】
また、本発明は前記構成において、前記コーキング材が所定寸法の圧縮しろをもって形成されており、セグメント本体の端縁部に対して前記圧縮しろ分だけ外側に突設されていることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、隣接配置されたセグメント本体同士の間に隙間を生じることなくコーキング材を充填することが可能になり、止水性を確保することができるとともに、セグメント間の後埋め作業も不要とすることができる。
【発明の効果】
【0029】
上述のように構成される本発明のシールド工法用セグメントによれば、トンネル等の進路に急曲線部を有する場合や、セグメントの施工精度や寸法精度にばらつきがある場合であっても、セグメント同士の間に隙間を生じることなくコーキング材で確実に充填して内面平滑性を確保しつつ、安定した止水性および良好な施工性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係るシールド工法用セグメントを実施するための最良の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1および図2はシールド工法によるセグメント構築工程を示す説明図であり、図3はセグメント本体の鋼殻部を示す斜視図である。また、図4は本発明のセグメントの一例を示す断面図であり、図5は図4のセグメントの製造過程における部分拡大図である。また、図6〜図8はセグメント同士を隣接配置する場合について説明する部分拡大図である。
【0032】
例示の形態に係るセグメント1は、シールドマシンSで地盤を掘進しつつ、このシールドマシンSの後方で掘削部の周囲内壁面に沿って湾曲形状のセグメント本体2を、順次組み立てることにより壁体を構築するシールド工法において用いられるものである。
【0033】
また、本発明のセグメント1は、図2に示すように、トンネルTの進路に急曲線部を有する場合においても好適に用いることができるように構成されている。ここで、急曲線部は曲率半径Rが小さく、L1よりもL2の方が大きくなるようなトンネル進路をいうものとする。
【0034】
セグメント本体2は、その湾曲外面を構成し内面側が開放形状とされた鋼製の鋼殻部21と、この鋼殻部21に中詰めされてセグメント本体2の湾曲内面を構成するコンクリート構造部22とを備えている。
【0035】
図3に例示するように、鋼殻部21は、略円弧状に湾曲してセグメント本体2の湾曲外面を構成する外板部211と、この外板部211の四周端縁部に立設された縁板部212とを備えている。
【0036】
縁板部212のうち、長辺側の縁板部212は、その前面側がシールドジャッキJが当接する当接面となり、後面側が既設のセグメント本体との接合面となる。また、短辺側の縁板部212は、トンネルTの周方向に組み立てられるセグメント本体との連結端面となる。
【0037】
このような鋼殻部21の開放形状の内側には、対向する長辺側の縁板部212に対して、短辺方向に架け渡された複数の補剛板部213が備えられている。また、これらの各補剛板部213の片側側面には、緩衝材214が添着されている。この緩衝材214により、荷重負荷時の応力を緩和することができ、コンクリート構造部22を打設するときの倒れ防止性能を確保することができる。
【0038】
そして、鋼殻部21の湾曲内側にコンクリートが中詰めされてコンクリート構造部22が形成される。鋼殻部21全体へのコンクリートの流動性を確保するため、補剛板部213の辺縁は、外板部211から離隔した状態で対向する縁板部212に連結されていることが好ましい。
【0039】
このように構成されるセグメント本体2は、前記のように、掘削部の内壁面に沿って順次組み立てられるが、この組み立て時にセグメント本体2の端面同士が突き合わせられて両者間に緩衝領域が形成される。本実施形態においては、セグメント本体2は、このように隣接配置される他のセグメント本体との間の緩衝領域にコーキング材3を設けて、隙間なく充填されるように構成されている。
【0040】
コーキング材3は、図4に示すように、セグメント本体2の端縁部に、コンクリート構造部22の側縁部を覆うように配設されている。また、例示の形態においては、コーキング材3は、セグメント本体2の鋼殻部21の縁板部212に延設されている。
【0041】
すなわち、セグメント本体2の鋼殻部21の縁板部212の高さよりも、湾曲内面方向にコンクリート構造部22が迫り出して形成されるが、この縁板部212から迫り出した部分のコンクリート構造部22の側面にコーキング材3が配設されることになる。
【0042】
より具体的には、コーキング材3は、図5,6に示すような断面形状で帯状に形成されている。このコーキング材3は、一方の側面にアンカー部31が突設されている。例示の場合、アンカー部31はコーキング材3の側面に2条設けられ、コーキング材3と一体形成されている。
【0043】
コーキング材3のアンカー部31は、どのような形状で形成されてもよいが、例示のような屈曲部311を有することが好ましい。屈曲部311は、突設されたアンカー部31が湾曲内面または外面方向に屈曲されて鉤状に成形されている。また、屈曲部311の反対面は、屈曲部311の形状に沿う傾斜面となっている。セグメント本体2に作用する圧縮力を考慮すれば、図示するような屈曲形状にアンカー部31が形成されていると効果的であり、圧縮力を許容しつつコンクリート構造部22との付着力を高めるようにすることができる。
【0044】
このようなアンカー部31は、セグメント本体2の短辺方向(または長辺方向)に沿って、コンクリート構造部22との付着面側に配設される。そして、かかるアンカー部31がコンクリート構造部22内に埋設されて、コンクリート構造部22との一体化を図っている。
【0045】
また、コーキング材3の内部には、中空部32が設けられている。図示するように、断面円形状で、セグメント本体2の湾曲内面寄りに配置形成されている。そして、中空部32は、コーキング材3の長尺方向に、すなわちコーキング材3が設けられるセグメント本体2の端縁部に沿う方向に、連続的に形成されている。
【0046】
この中空部32は、コーキング材3に圧縮力が作用したとき、それをコーキング材3の材質にて許容するのみならず、この中空部32において圧縮力を受けもつことができるので、コーキング材3の変形性能を向上させる効果がある。なお、中空部32は、図示するような断面円形状のものに限らず、コーキング材3の内部に納まる形状であれば、長円形や楕円形など、どのような断面形状で形成されていてもよい。
【0047】
さらに、コーキング材3には、隣接配置される他のセグメント本体と対向する対向面が凹凸状に形成されている。すなわち、前記アンカー部31が突設された面の反対面が凹凸状となされている。
【0048】
図6に例示するものでは、コーキング材3の各アンカー部31のちょうど反対側に位置するように凹条33がそれぞれ形成されている。凹条33は、断面形状が凹部状に形成されていればよく、どのような凹部形状であってもよい。例示の形態では、凹条33は、断面が略台形状に切欠成形されており、コーキング材3の長尺方向に連続的に配設されている。
【0049】
このような断面形状を有するコーキング材3は、セグメント本体2の湾曲内面側と湾曲外面側とで、異なる硬度の材料を用いて形成されている。
【0050】
図示するコーキング材3では、鋼殻部21の縁板部212との境界部に止水部34が形成されており、この止水部34がコーキング材3の湾曲内面側を構成する材料よりも弾性を有する硬度の高い材料からなる。止水部34を構成する材料には、例えば非発泡EPDM、SBR、または水膨張性材料等を用いることができる。これに対し、コーキング材3の他の部分は、例えば発泡EPDM等により形成されていることが好ましい。
【0051】
このように異なる硬度の材料を用いたコーキング材3は、例えば止水部34を構成する樹脂と、コーキング材3の他の部分を構成する樹脂とを、ともに押出成形することにより一体化させて形成することができる。あるいは、コーキング材3の各部を異なる硬度の樹脂ごとに個別に押出成形した後、接着または熱融着することにより、止水部34を一体化したコーキング材3を形成するようにしてもよい。
【0052】
また、かかる止水部34は、断面略V字状に形成されている。この止水部34は、その上部のコーキング材3が同様の断面略V字状に形成されて、互いに密着して形成されている。このように止水部34が断面略V字状に形成されていることにより、止水部34を含むコーキング材3に圧縮力が作用したとき、コーキング材3の内部方向(圧縮方向)に応力が働き、圧縮力を許容するとともに、柔軟に変形に対応することができる。
【0053】
したがって、セグメント本体2に設けられたコーキング材3が、連続的に隣接配置されて突き合わせられたセグメント本体2同士の端縁部で、互いに密着して配設されることになり、両者の緩衝領域を充填するとともにセグメント間の目地を形成する。
【0054】
これにより、セグメント本体2の寸法精度や施工精度によらず、構築されたシールドトンネルにおいて平滑な内周面を形成し、セグメント本体2に作用する応力をコーキング材3が受け持つことで圧縮変形を許容するので、安定した止水性と耐久性を確保することが可能になる。
【0055】
上記のようなコーキング材3を備えるセグメント1は、次のようにして製造されることが望ましい。すなわち、図5に拡大して示すように、セグメント本体2の鋼殻部21にコンクリートを打設する際、鋼殻部21の周囲にスペーサ5を介して型枠4を配置する。鋼殻部21の縁板部212には、止水部34を含むコーキング材3が延設されるので、このコーキング材3の配置形態を考慮してその外側位置に型枠4が配置される。
【0056】
ここで、コーキング材3の設計寸法について説明すると、コーキング材3は、セグメント1の許容するばらつき寸法や、想定される隙間寸法に応じて、適宜、所定寸法の圧縮しろをもって形成されている。
【0057】
例えば、300mm幅(短辺方向)で形成されているセグメント1である場合において、製品寸法のばらつきの許容範囲を−1.5mm〜+1.5mmとすれば、セグメント1間の隙間寸法の想定範囲を−3mm〜+3mmと設定することができる。コーキング材3は、この想定される隙間寸法を、コーキング材3が圧縮変形しつつ充填することで止水性を確保しうるように圧縮しろWの設定がなされている。
【0058】
この条件の下、セグメント1同士の密着によるコーキング材3の通常の圧縮寸法2mmに加えて、前記隙間寸法3mmの1/2の負担分(一方のセグメントによる隙間)を勘案すれば、3.5mmの圧縮が想定される。したがって、設計上、コーキング材3の圧縮しろは、この3.5mmの圧縮寸法を安全側で許容しうる約4mmとすることが必要とされる。
【0059】
そこで、図5に示すように、セグメント本体2の縁板部212に対して、コーキング材3は約4mmの圧縮しろWだけ外側に突出するように配設される。4mmの圧縮しろWは、型枠4の内側のスペーサ5の厚みにより調整することが可能である。型枠4とコーキング材3とは、コンクリート充填時の位置ずれを防止するため、接着テープなどを用いて仮固定されていることが望ましい。
【0060】
型枠4およびスペーサ5を備え付けた鋼殻部21に、コンクリートを打ち込み、十分硬化するまで養生してコンクリート構造部22を形成する。コーキング材3のアンカー部31は、コンクリート構造部22の内部に埋設される。そして、一定の養生期間(28日間程度)を経てコンクリート構造部22が所期の強度に達すると、型枠4およびスペーサ5を取り外すことにより、セグメント本体2の成形が完了する。
【0061】
上記のように形成されるセグメント1を用いて、シールドトンネルTの壁体を構築するとき、図2に示したように、まず、先端に掘削刃を備えたシールドマシンSを地中に推進させ、シールドマシンSの後方にセグメント1を環状に組み立てていく。この工程を順次繰り返しながら、トンネルの壁体を構築し、二次覆工を行うことなくシールドトンネルを形成していくことができる。
【0062】
セグメント1同士の間は、双方のコーキング材3が対向して配置され、互いに密着して隙間無く充填される。図6に示すように互いに隣り合うように対向配置されたセグメント1,1は、矢符A方向に押圧されて組み立てられる。このとき、セグメント1,1間に位置するコーキング材3,3はそれぞれ圧縮変形しつつ、セグメント本体2に作用する押圧力を許容する。
【0063】
図7は、前記のようにコーキング材3の圧縮しろWを確保してセグメント1が形成されている場合に、コーキング材3がそれぞれ、圧縮しろWよりも小さい寸法で圧縮変形した様子を模式的に示している。このように、コーキング材3にそれぞれ圧縮力が作用することにより、コーキング材3は圧縮変形するとともに、中空部32が押圧されて変形している。また、コーキング材3の凹条33も、凹部形状が浅く変形している。また、コーキング材3の止水部34には曲げ応力が働いて、略V字状の形状がより深く屈曲して変形している。
【0064】
また、図8は、図7よりもさらに圧縮力が作用した場合を示し、コーキング材3の圧縮しろWが最大限圧縮されて変形した例である。この場合には、コーキング材3が圧縮変形するとともに、中空部32は圧潰されて閉塞変形している。また、コーキング材3の凹条33も凹部形状が圧潰されて、隣接したコーキング材3に密着している。止水部34も前記と同様により深く屈曲して変形している。
【0065】
このようにコーキング材3が変形することにより、セグメント1,1同士の間が確実に充填され、セグメント1,1間に目地が形成されるとともに止水性が確保される。また、コーキング材3は中空部32や凹条33を備えているので、圧縮変形したコーキング材3の逃げ部となり、コーキング材3の変形を許容しつつも、コーキング材3がセグメント1の湾曲内面側へ突出するのを防いで、トンネルTの壁体内面の平滑性が保たれることとなる。
【0066】
また、コーキング材3がこのような変形をしても、アンカー部31を備えることにより、コンクリート構造部22との一体性は保たれ、安定的に保持されるものとなる。さらに、止水部34により止水性を高めるだけでなく、その形状がコーキング材3の圧縮対応性をスムーズにし、反発することなく追従させることができる。
【0067】
したがって、トンネルTの進路に急曲線部を有する場合や、セグメント1の施工精度や寸法精度にばらつきがある場合であっても、セグメント1,1同士の間の緩衝領域の大きさにかかわらず、これを隙間無く確実に充填して内面平滑性を確保しつつ、安定した止水性および良好な施工性を実現することができる。
【0068】
以上、本発明の最良の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0069】
すなわち、前記セグメント1では、トンネルの周方向に複数の湾曲形状のセグメント1を、他のセグメント1と環状を呈するように組み立てる構成のものについて説明してきたが、本発明は特にこれに限られず、例えば、平板形状、矩形版状、多角形版状のセグメント等、側面の円弧が一定角度で屈曲されるか、あるいは直線状のセグメントで立坑もしくはトンネル等の地中に埋設される構造体の壁体を構成するものであれば、断面形状は、断面矩形状等の多角形形状、楕円形形状若しくは長円形形状に構築されるもの等、どのような形状のセグメントであってもよい。本発明は、いずれの壁体の構成であっても、上記の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係るシールド工法用セグメントは、下水用管渠、上水用管渠、道路や鉄道等のトンネル、あるいは電力・エネルギー用のトンネル等、各種のトンネルを構築するシールド工法において好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】シールド工法によるセグメント構築工程を一部省略して示す説明図である。
【図2】シールド工法によって構築されるトンネルの急曲線部を示す説明図である。
【図3】本発明におけるセグメント本体の鋼殻部を示す斜視図である。
【図4】本発明のセグメントの一例を示す断面図である。
【図5】図4のセグメントの製造過程における部分拡大図である。
【図6】本発明に係るセグメント同士を隣接配置する場合について模式的に示す部分拡大図である。
【図7】前記セグメントのコーキング材が圧縮された様子を模式的に示す部分拡大図である。
【図8】前記セグメントのコーキング材がさらに圧縮された様子を模式的に示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0072】
1 セグメント
2 セグメント本体
21 鋼殻部
211 外板部
212 縁板部
213 補剛板部
214 緩衝材
22 コンクリート構造部
3 コーキング材
31 アンカー部
311 屈曲部
32 中空部
33 凹条
34 止水部
4 型枠
5 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドマシンで地盤を掘進しつつ、シールドマシンの後方で掘削部の周囲内壁面に沿って湾曲形状のセグメント本体を順次組み立てることにより壁体を構築するシールド工法用のセグメントであって、
前記セグメント本体は、内面側が開放形状とされて外面側がセグメント本体の湾曲外面を構成する鋼殻部と、この鋼殻部に中詰めされてセグメント本体の湾曲内面を構成するコンクリート構造部とを備え、
前記セグメント本体の端縁部には、隣接配置される他のセグメント本体との間の緩衝領域を充填するとともに圧縮変形を許容しうるコーキング材が設けられ、
前記コーキング材には、コンクリート構造部との付着面にアンカー部が突設されており、該アンカー部がコンクリート構造部内に埋設されてセグメント本体が形成されていることを特徴とするシールド工法用セグメント。
【請求項2】
前記アンカー部は屈曲部を有することを特徴とする請求項1に記載のシールド工法用セグメント。
【請求項3】
前記鋼殻部はセグメント本体の湾曲外面を形成する外板部と、この外板部の四周端縁部に立設された縁板部とを備え、
前記コーキング材は、鋼殻部の縁板部に延設されるとともに、コンクリート構造部の側縁部を覆うように配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシールド工法用セグメント。
【請求項4】
前記コーキング材の内部には、セグメント本体の端縁部に沿う方向に中空部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシールド工法用セグメント。
【請求項5】
前記中空部はセグメント本体の湾曲内面寄りに形成されていることを特徴とする請求項4に記載のシールド工法用セグメント。
【請求項6】
前記コーキング材は、隣接配置される他のセグメント本体と対向する対向面が凹凸状に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のシールド工法用セグメント。
【請求項7】
前記コーキング材は、異なる硬度の材料を用いて一体成形されており、セグメント本体の湾曲外面寄りに配置される部分よりも湾曲内面寄りに配置される部分を低い硬度に設定して形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のシールド工法用セグメント。
【請求項8】
前記コーキング材には、弾性を有して硬度の高い材料からなる止水部が、前記鋼殻部との境界部に備えられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のシールド工法用セグメント。
【請求項9】
前記止水部は、断面略V字状に形成されていることを特徴とする請求項8に記載のシールド工法用セグメント。
【請求項10】
前記コーキング材は、所定寸法の圧縮しろをもって形成されて、セグメント本体の端縁部に対して前記圧縮しろ分だけ外側に突設されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のシールド工法用セグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−240292(P2008−240292A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79913(P2007−79913)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(502341247)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】