説明

シールド掘削機によるトンネル曲線部の施工方法

【課題】 セグメントの組立てながらシールド掘削機によりトンネル曲線部を築造する際に、余掘り部や曲線掘削部の掘削壁面から地山が崩壊したり変動するのを防止しながら能率よく且つ正確にセグメントを施工し得るようにする。
【解決手段】 余掘り部に非硬化性充填材を充填することによって地山を支持すると共にシールド掘削機から送りだされるセグメントと曲線掘削部の掘削壁面との間のテールボイドに硬化性裏込注入材を充填することによってその掘削壁面の地山を支持し、且つ、曲線用セグメントと注入袋付セグメントとを交互に送り出して注入袋付セグメントの注入袋内に硬化性注入材を充填することによって該注入袋を膨脹させ、これらのセグメントを注入材の硬化によって地山に強固に固定してセグメントに推進反力を確実に支持させてシールド掘削機を能率よく正確に掘進させながらトンネル曲線部を施工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘削機によって余掘り部を掘削、形成しながらトンネル曲線部を能率よく施工するトンネル曲線部の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シールド掘削機によって地山を掘削しながらシールド掘削機の後方のトンネル掘削壁面にセグメントを組み立てることによってトンネルを築造する際に、急カーブのトンネル曲線部を施工する場合には、シールド掘削機のカッタ板の外周面からコピーカッタを突出させてこのコピーカッタにより余掘りし、この余掘り部の存在によってシールド掘削機をトンネル曲線部の計画線上に沿う湾曲方向に掘進させている。しかしながら、このようにシールド掘削機によるトンネル曲線部の施工を可能にするために余掘り部を掘削すると、その掘削壁面が弛緩して崩落や地山の変動等が発生する虞れがあり、余掘り部が大きなる程、その虞れが増大することになる。
【0003】
このため、例えば、特許文献1に記載されているように、シールド掘削機のスキンプレートの前端部に内外周面間に亘って貫通した注入孔を設けておき、機内からこの注入孔を通じて上記余掘り部に非硬化性充填材を充填することによって余掘り部の掘削壁面の崩壊や地山の変動を防止すると共に、シールド掘削機の掘進に従って後方側に相対移動する該余掘り部によって形成されたトンネル曲線掘削部においても、該トンネル曲線掘削部で囲まれたトンネル空間部内に曲線用セグメントを順次リング状に施工してこのセグメントとトンネル曲線掘削部の掘削壁面間で形成されたテールボイドに非硬化性充填材を充填することによって掘削壁面の崩壊や地山の変動を防止している。
【0004】
一方、シールド掘削機をトンネル曲線部の計画線に沿って正確に掘進させるには、シールド掘削機のスキンプレートの後端部内に装着している複数本のシールドジャッキの推進反力をセグメントの前端面に受止させてこれらのシールドジャッキの推進力を制御することによって行われているが、上記のようにテールボイドに非硬化性充填材を充填している状態では、セグメントは掘削壁面に支持されていないから、シールドジャッキの伸長によるシールド掘削機の推進時にセグメントの位置がずれて、シールド掘削機の掘進方向を正確に制御できなくなると共にトンネル曲線部の築造位置もずれる虞れがある。
【0005】
このため、上記特許文献1においては、曲線用セグメントと共に外周面に注入袋を装着しているセグメントを使用し、トンネル曲線掘削部内にこれらの曲線用セグメントと注入袋付セグメントとを互いに前後方向に連結しながら交互に施工すると共に、注入袋付セグメントの注入袋内に硬化性注入材を充填することにより該注入袋を膨脹させて掘削壁面に圧着させ、硬化性裏込注入材の硬化によりこの注入袋付セグメントを掘削壁面に固定してシールド掘削機の推進反力を支持させるようにしている。
【特許文献1】特開2000−220384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、注入袋付セグメントの注入袋内に充填した硬化性裏込注入材は早期に硬化してこの注入袋付セグメントを掘削壁面に支持させることができても、前後に隣接する注入袋付セグメントの膨脹した注入袋間における掘削壁面と曲線用セグメントの外周面間のテールボイドには非硬化性充填材が充填されているため、セグメント列全体は完全に固定することはなく、特に、地山の強度が低い場合には、注入袋付セグメントだけではシールド掘削機の推進反力を強固に支持することができない事態が発生するといった問題点がある。さらに、曲線用セグメントを掘削壁面に固定させるには、テールボイド内に充填された上記非硬化性充填材を硬化性裏込注入材に置換する作業を必要とし、トンネル曲線部の施工が煩雑化して工期が長期化するといった問題点があった。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、トンネル曲線部の施工時において、シールド掘削機を計画線に沿って正確に掘進させることができて精度のよいトンネル曲線部の施工を可能にすると共に、その施工も円滑に行えて工期の短縮を図ることができるシールド掘削機によるトンネル曲線部の施工方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のシールド掘削機によるトンネル曲線部の施工方法は、請求項1に記載したように、シールド掘削機により余掘り部を掘削して該余掘り部に機内から非硬化性充填材を充填しながらトンネル曲線掘削部を掘進していくと共に、シールド掘削機の掘進に従って該シールド掘削機の後方のトンネル曲線掘削部内に曲線用セグメントと、外周面に注入袋を備えた注入袋付セグメントとを前後に対向するセグメント同士を接合させながら施工し、トンネル掘削壁面とセグメントとの間のテールボイドに硬化性裏込注入材を充填、硬化させると共に注入袋付セグメントの注入袋内に硬化性注入材を充填して該注入袋を膨脹させることによりトンネル掘削壁面に圧着させたのち、該注入袋内の硬化性注入材を硬化させるトンネル曲線部の施工方法において、シールド掘削機のスキンプレートの後端部に後方に向かって開口した注入口を設けてこの注入口から上記硬化性裏込注入材をシールド掘削機の掘進に従って発生するテールボイドに充填する一方、上記スキンプレートのテール部内でリング状に組み立てられた注入袋付セグメントをシールド掘削機の掘進に従ってスキンプレートのテール部から後方に送り出した時にその注入袋内に硬化性注入材を充填して該注入袋を膨脹させ、テールボイド内に充填した上記未硬化のゲル状硬化性裏込注入材を分断しながらその外周面を掘削壁面に圧着させることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、上記トンネル曲線部の施工方法において、注入袋付セグメントの注入袋内に硬化性注入材を充填する圧力をP1とし、テールボイドに硬化性裏込注入材を充填する圧力をP2とし、余掘り部に非硬化性充填材を充填する圧力をP3として、P3≦P2≦P1となるように充填圧力を制御することを特徴とするものであり、請求項3に係る発明は、上記シールド掘削機の掘進によるテールボイドの形成速度をQとし、注入袋付セグメントの注入袋内に充填する硬化性材注入材の充填流量をq1とし、テールボイドに充填する硬化性裏込注入材の充填流量をq2として、Q=q1+q2となるように充填流量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、シールド掘削機によって地山を余掘りしながら計画線に沿ってトンネル曲線部を施工する際に、上記余掘り部に機内から非硬化性充填材を充填するので、非硬化性充填材によって余掘り部の掘削壁面を支持させて該掘削壁面の崩壊や地山の変動を該非硬化性充填材によって確実に防止することができるのは勿論、シールド掘削機の掘進に従って後方に相対的に移動する上記余掘り部によるシールド掘削機後方のトンネル曲線掘削部内に曲線用セグメントと、外周面に注入袋を備えた注入袋付セグメントとを施工しながらシールド掘削機のスキンプレートの後端部に設けている注入口からトンネル曲線掘削部の掘削壁面とセグメント間で形成されたテールボイドに硬化性裏込注入材を充填するので、この未硬化のゲル状硬化性裏込注入材によってテールボイド側の掘削壁面を支持させて該掘削壁面の崩壊や地山の変動を確実に防止することができる。
【0011】
さらに、シールド掘削機のスキンプレートのテール部内でリング状に組み立てられた注入袋付セグメントをシールド掘削機の掘進に従ってスキンプレートのテール部から後方に送り出した時にその注入袋内に硬化性注入材を充填して該注入袋を膨脹させ、テールボイド内に充填した上記未硬化のゲル状硬化性注入材を分断しながらその外周面を掘削壁面に圧着させた状態にして注入袋内の硬化性注入材を硬化させるので、注入袋付セグメントを掘削壁面に強固に固定、支持させることができると共に、この注入袋付セグメントと既に注入袋内の硬化性裏込注入材が硬化している後方側の注入袋付セグメント間の曲線用セグメント上の硬化性裏込注入材も硬化しているから、この硬化した注入材によって曲線用セグメントも掘削壁面に強固に固定、支持させることができる。
【0012】
従って、セグメントの前端面にシールド掘削機の推進反力を確実に且つ安定した状態で受止させることができてシールド掘削機をトンネル曲線部の計画線に沿って正確に掘進させることができると共にセグメントがずれることなく精度のよいトンネル曲線部を施工することができ、その上、テールボイドに非硬化性充填材などを充填することなく硬化性裏込注入材を充填して硬化させるものであるから、非硬化性充填材との置換作業などを不要にしてトンネル曲線部の施工期間を短縮し、能率よく施工することができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、注入袋付セグメントの注入袋内に硬化性注入材を充填する圧力をP1とし、テールボイドに硬化性裏込注入材を充填する圧力をP2とし、余掘り部に非硬化性充填材を充填する圧力をP3として、P3≦P2≦P1となるように充填圧力を制御しているので、余掘り部に充填する非硬化性充填材をテールボイド側に流入させることなく、余掘り部内に常にその体積に応じた量の非硬化性充填材を充填させた状態で該余掘り部の掘削壁面を抑えて崩落等の発生を防止することができると共に、テールボイド内に充填される硬化性裏込注入材の圧力に抗して注入袋付セグメントの注入袋をその内部に充填する硬化性注入材によって膨脹させてテールボイド内の硬化性裏込注入材を前後に区画しながら掘削壁面に確実に圧着させることができる。
【0014】
さらに、請求項3に係る発明によれば、シールド掘削機の掘進によるテールボイドの形成速度をQとし、注入袋付セグメントの注入袋内に充填する硬化性材注入材の充填流量をq1とし、テールボイドに充填する硬化性裏込注入材の充填流量をq2として、Q=q1+q2となるように充填流量を制御するので、曲線掘削部の地山を未硬化のゲル状硬化性裏込注入材によって確実に支持させながら、シールド掘削機を停止させることなく掘進させることができ、トンネル曲線部の施工を能率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、シールド掘削機1は、図1に簡略的に示すように、スキンプレート1aの前端開口部にカッタ板2を回転自在に配設していると共にスキンプレート1aの後部内周面に周方向に所定間隔毎に複数本のシールドジャッキ3を装着してあり、このシールドジャッキ3のピストンロッド3aの先端に取付けているスプレッダ3bをシールド掘削機1の後方に組み立てているセグメントの前端面に押し付けて、これらのシールドジャッキ3のピストンロッド3aを伸長させることにより、セグメントに反力を支持させた状態で推進させるように構成している。
【0016】
さらに、上記カッタ板2の外周部にカッタ板2の拡径方向に突出する余掘り部掘削用コピーカッタ2aを出没自在に装着している。なお、カッタ板2はスキンプレート1aの前端部内に張設している隔壁1bに回転自在に軸支されていると共にこの隔壁1bの背面側に配設した駆動モータ4によって回転させられるように構成している。また、スキンプレート1aを前胴部と後胴部とに分割し、これらの前後胴部間を中折れジッャキ(図示せず)によって屈折自在に連結した構造を採用してもよい。
【0017】
スキンプレート1aの適所、好ましくは前端部には、図2に示すように、該スキンプレート1aの内外周面間に亘って貫通した非硬化性充填材Aの注入孔5が設けられていると共にスキンプレート1aの後端部外周面には後方に向かった開口した硬化性裏込注入材Bの注入口6が設けられてあり、これらの注入孔5と注入口6にそれぞれ供給管7、8を連結、連通させていると共に供給管7、8の中間部に圧送ポンプ9、10をそれぞれ介装させ、該圧送ポンプ9、10を駆動させることによって、非硬化性充填材Aと硬化性裏込注入材Bとの供給源から供給管7、8を通じて上記注入孔5と注入口6に非硬化性充填材Aと硬化性裏込注入材Bをそれぞれ圧送、供給するように構成している。
【0018】
また、上記シールド掘削機1におけるスキンプレート1aの後端部内にはエレクタ等のセグメント組立装置(図示せず)が配設されていて、トンネルの周方向に円弧状に湾曲したセグメントをリング状に組み立てたのち、シールド掘削機1の掘進に従ってスキンプレート1aの後端から後方のトンネル掘削部内に送り出すようにしている。この際、トンネル直線部を施工する場合には、前後方向の幅が全周に亘って一定幅となるように複数個のセグメントをリング状に組み立て、このリング状のセグメントをシールド掘削機1の掘進に従って順次、接合しながら後方に送り出すが、トンネル曲線部を施工する場合には、図1に示すように、複数個のセグメントによってリング状に組み立てた時に、前後方向の幅がシールド掘削機1の屈曲方向の外側において広く、内側において狭くなるように組み立てられる曲線用セグメントS1を使用する。
【0019】
さらに、この曲線用セグメントS1と共に外周面に注入袋11を備えた注入袋付セグメントS2が使用される。この注入袋付セグメントS2は図3〜図5に示すように、トンネルの周方向に湾曲した前後枠材12、13の両端間を一定長さを有する平帯板形状の連結枠材14、15によって連結して前後幅が前後枠材12、13の全長に亘って同一幅を有する矩形枠に形成されていると共にこの矩形枠の内底部に円弧状に湾曲した固定板16を張設してこの固定板16の外周面上にゴム製の上記注入袋11を偏平状に折り畳んだ状態で配設して矩形枠内に収納してあり、矩形枠の開口端に注入袋11の膨脹圧によって破壊が可能なカバー17を取付けた構造を有している。
【0020】
また、上記注入袋11の底部に設けている注入口18を固定板17を貫通して底部外に突出させてあり、この突出端にトンネル内から硬化性注入材B'の注入管19を着脱自在に連結させるように構成している。なお、この注入管19も圧送ポンプ20を介して硬化性注入材B'の供給源(図示せず)に連結、連通させている。
【0021】
次に、上記シールド掘削機1によってトンネル曲線部を施工する具体的な方法について説明する。まず、シールド掘削機1が築造すべきトンネル曲線部にまで達すると、カッタ板2の外周面からコピーカッタ2aを拡径方向に突出させた状態にして該カッタ板2を回転させることによってカッタ板2の周囲の地山を余掘りし、この余掘り部21によってシールド掘削機1を計画線に向けながら掘進させ、該シールド掘削機1の掘進に従って相対的に後方に移動する余掘り部21により形成されたシールド掘削機1の後方の曲線掘削部21' 内に、リング状に組み立てられた内外径が同一径の曲線用セグメントS1と注入袋付セグメントS2とを互いに対向する前後端面を接合、連結させながら交互に送り出す。
【0022】
この際、圧送ポンプ9の駆動によって供給管7を通じて非硬化性充填材Aをシールド掘削機1のスキンプレート1aの前端部に設けている注入孔5から余掘り部21内に所定の注入圧と流量でもって充填し、余掘り部21の掘削壁面を該非硬化性充填材Aによって抑えて掘削壁面からの地山の崩落や変動を防止する一方、シールド掘削機1後方の曲線掘削部21' 側においては、シールド掘削機1の掘進に従ってスキンプレート1aの後端からこの曲線掘削部21' 内に相対的に送り出されるリング状に組み立てられた曲線用セグメントS1や注入袋付セグメントS2の外周面と曲線掘削部21' の掘削壁面との間のテールボイド内に、圧送ポンプ10の駆動によって供給管8を通じて硬化性裏込注入材Bをスキンプレート1aの後端部外周面に設けている注入口6から所定の注入圧と流量でもって充填し、この未硬化のゲル状硬化性裏込注入材Bによって曲線掘削部21' の掘削壁面を抑えて掘削壁面からの地山の崩落や変動を防止する。
【0023】
なお、余掘り部20内に充填する非硬化性充填材Aとしては、ベントナイト系、セルロース系、ポリアクリルアミド系等の高粘性の充填材が使用され、テールボイド内に充填する硬化性裏込注入材Bとしては、2液タイプの瞬結性硬化材が使用される。
【0024】
上記曲線用セグメントS1と注入袋付セグメントS2とは、シールド掘削機1のスキンプレート1aの後端部内におけるシールドジャッキ3の後方側空間部内でそれぞれのセグメントを複数個、周方向に順次連結することによってリング状に組み立てられ、組み立てられた同一外径を有する曲線用セグメントS1や注入袋付セグメントS2は、先にリング状に組み立てられたセグメントの前端面にその後端面を接合、連結させた状態にしてその前端面に上記シールドジャッキ3のスプレッダ3bを受止させ、シールドジャッキ3のピストンロッド3aを伸長させることによって最前部のセグメントに反力をとってシールド掘削機1を推進させる。この際、トンネル曲線部の計画曲線における外側曲線部に対応したシールドジャッキ3の推進力を大きくすることによってシールド掘削機1を計画曲線に沿って掘進させる。
【0025】
注入袋付セグメントS2は、その内底面に張設している固定板16の外周面上に配設した注入袋11を折り畳んで矩形枠内に収納した状態でリング状に組み立てられ、この状態で図6に示すように、その外周面をスキンプレート1aのテール部内周面に装着しているテールシール22に摺接させ、テールボイド内の充填された硬化性裏込注入材Bがこのテールシール22によってスキンプレート1a内に浸入するのを防止しながらシールド掘削機後方の曲線掘削部21' 内に送り出される。
【0026】
このように、リング状に組み立てられた注入袋付セグメントS2がスキンプレート1aの後端から送り出されると、各注入袋付セグメントS2の注入袋11の注入口18に接続した注入管19を通じて圧送ポンプ20の駆動により、上記硬化性裏込注入材Bと同一材料である硬化性注入材B'を注入袋11内に充填し、図7に示すように注入袋11を膨脹させてテールボイド内に充填している未硬化のゲル状硬化性裏込注入材B内に突入させる。
【0027】
この際、この注入袋11内に充填される硬化性注入材B'の充填圧力をP1パスカル(Pa)とし、テールボイドに充填される硬化性裏込注入材Bの充填圧力をP2パスカル(Pa)とし、上記余掘り部21に充填される非硬化性充填材Aの充填圧力をP3パスカル(Pa)とした場合、P3≦P2としてテールボイド内に非硬化性充填材Aが浸入するのを阻止して硬化性裏込注入材Bのみが充填されるようにし、また、テールボイド内の未硬化のゲル状硬化性裏込注入材B内に注入袋11を硬化性注入材の充填によって膨脹させながら突入させるには、P2≦P1とする必要がある。
【0028】
さらに、テールボイド内への硬化性裏込注入材Bの充填と注入袋11内への硬化性注入材B'の充填とは、シールド掘削機1の掘進に従って同時に行われるが、シールド掘削機1の掘進に従ってセグメントと曲線掘削部21' の掘削壁面との間に発生するテールボイドの形成速度をQ(m3/min)とし、注入袋11内への硬化性注入材B'の充填流量をq1(m3/min)、テールボイド内への硬化性裏込注入材Bの充填流量をq2(m3/min)とすると、曲線掘削部21' の地山を支持しながら未硬化のゲル状硬化性裏込注入材Bの中で注入袋11を膨脹させるにはQ=q1+q2となるように充填流量を制御する必要がある。
【0029】
こうして、注入袋付セグメントS2の注入袋11が硬化性注入材B'の充填によってテールボイド内の未硬化のゲル状硬化性裏込注入材B内で膨脹して図8に示すように、その外周面がスキンプレート1aの後方近傍部における曲線掘削部21' の掘削壁面に圧着すると、テールボイド内に充填された未硬化のゲル状硬化性裏込注入材Bがこの注入袋11によって前後に分断、区画され、この状態で該注入袋11内に充填している硬化性注入材B'が硬化すると共に、該注入袋11とこの注入袋付セグメントS2よりも先に曲線掘削部21' 内に送り出して外周面を掘削壁面に圧着させた後方側の注入袋付セグメントS2の注入袋11との間のテールボイド部分に充満している硬化性裏込注入材Bも硬化してこれらの前後注入袋付セグメントS2、S2間に介在、連結させている曲線用セグメントS1を該硬化した注入材を介して曲線掘削部21' の掘削壁面に注入袋付セグメントS2と共に強固に固定させる。
【0030】
従って、トンネル曲線部を形成するこれらの一連のセグメント列は、曲線掘削部21' の掘削壁面に全面的に且つ正確に固定された状態となり、シールド掘削機1のシールドジャッキ3により最前端のセグメントの前端面に偏った反力を取ってもセグメントはずれることなく、精度のよいトンネル曲線部を能率よく施工することができる。なお、上記実施の形態においては、シールド掘削機1から曲線掘削部21' 内に曲線用セグメントS1と注入袋付セグメントS2とを1リングずつ、交互に送り出しているが、2リングの曲線用セグメントS1、S1を送り出す毎に1リングの注入袋付セグメントS2を送り出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】トンネル曲線部を施工している状態の簡略横断面図。
【図2】セグメントを施工している状態の要部の簡略縦断側面図。
【図3】注入袋付セグメントの一部切欠簡略斜視図。
【図4】その縦断側面図。
【図5】注入袋を膨脹させた状態の縦断側面図。
【図6】注入袋付セグメントを送り出している状態の一部切欠簡略縦断側面図。
【図7】その注入袋を膨脹させている状態の一部切欠簡略縦断側面図。
【図8】その注入袋を掘削壁面に圧着させた状態の一部切欠簡略縦断側面図。
【符号の説明】
【0032】
1 シールド掘削機
3 シールドジャッキ
5 注入孔
6 注入口
7、8 供給管
9、10、20 圧送ポンプ
11 注入袋
18 注入口
19 注入管
21 余掘り部
S1 曲線用セグメント
S2 注入袋付セグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘削機により余掘り部を掘削して該余掘り部に機内から非硬化性充填材を充填しながらトンネル曲線掘削部を掘進していくと共に、シールド掘削機の掘進に従って該シールド掘削機の後方のトンネル曲線掘削部内に曲線用セグメントと、外周面に注入袋を備えた注入袋付セグメントとを前後に対向するセグメント同士を接合させながら施工し、トンネル掘削壁面とセグメントとの間のテールボイドに硬化性裏込注入材を充填、硬化させると共に注入袋付セグメントの注入袋内に硬化性注入材を充填して該注入袋を膨脹させることによりトンネル掘削壁面に圧着させたのち、該注入袋内の硬化性注入材を硬化させるトンネル曲線部の施工方法において、シールド掘削機のスキンプレートの後端部に後方に向かって開口した注入口を設けてこの注入口から上記硬化性裏込注入材をシールド掘削機の掘進に従って発生するテールボイドに充填する一方、上記スキンプレートのテール部内でリング状に組み立てられた注入袋付セグメントをシールド掘削機の掘進に従ってスキンプレートのテール部から後方に送り出した時にその注入袋内に硬化性注入材を充填して該注入袋を膨脹させ、テールボイド内に充填した上記硬化性裏込注入材を分断しながらその外周面を掘削壁面に圧着させることを特徴とするシールド掘削機によるトンネル曲線部の施工方法。
【請求項2】
注入袋付セグメントの注入袋内に硬化性注入材を充填する圧力をP1とし、テールボイドに硬化性裏込注入材を充填する圧力をP2とし、余掘り部に非硬化性充填材を充填する圧力をP3として、P3≦P2≦P1となるように充填圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載のシールド掘削機によるトンネル曲線部の施工方法。
【請求項3】
シールド掘削機の掘進によるテールボイドの形成速度をQとし、注入袋付セグメントの注入袋内に充填する硬化性材注入材の充填流量をq1とし、テールボイドに充填する硬化性裏込注入材の充填流量をq2として、Q=q1+q2となるように充填流量を制御することを特徴とする請求項1に記載のシールド掘削機によるトンネル曲線部の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−299723(P2006−299723A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125879(P2005−125879)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】