説明

シールド掘進機、ロータリジョイントおよびシールド掘進機の運転方法

【課題】新品カッタビットを本体部からカッタスポークに装着することができるカッタビット交換手段を具備し、カッタビット交換作業を迅速かつ容易にすることができるシールド掘進機これに用いるロータリジョイントおよびシールド掘進機の運転方法を得る。
【解決手段】シールド掘進機100は、本体部10と、回転掘削部20と、本体部10から回転掘削部20に油圧を供給するためのロータリジョイント(RJ)40と、RJ40のステータ41を支持するステータ支持手段50と、ステータ支持手段50の位置を固定するステータ固定手段60と、RJ40のロータ42に回転掘削部20の回転を伝達するロータ回転手段70とを有している。ステータ支持手段50のステータ支持レバー52は支持レバー支点51を揺動中心として揺動自在であって、かかる揺動によって、RJ40の中心軸は回転掘削部20の回転中心に一致したり、回転中心から偏位したりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中にトンネルや下水道等(以下「掘削坑」と総称する)を構築する際に使用されるシールド掘進機これに用いるロータリジョイントおよびシールド掘進機の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド掘進機は、地山(地盤に同じ)を掘削して掘削坑を創成する回転掘削部と、回転掘削部が設置された筒状の本体部と、本体部の後端に延設された筒状のテール部と、円弧状のセグメント部材を筒状のセグメント筒状体に組み立てるセグメント組立手段(セグメントエレクタまたはエレクター装置に同じ)と、組み立てられたセグメント筒状体を後方に向かって押し、その反力によって本体部を前進させる押出手段(シールドジャッキに同じ)と、セグメント筒状体とテール部との隙問をシールするテールシール手段と、セグメント筒状体と掘削坑との隙間に裏込材を注入する裏込材注入手段と、掘削した土砂を機外に排出する排土手段とを有している。
【0003】
回転掘削部は、本体部に回転自在に支侍されたセンタシャフトと、センタシャフトに放射状に配置されたカッタスポークと、カッタスポークの前面に設置されたカッタビットと、カッタスポークに設置されその外周に向かって進退自在なコピーカッタと、カッタスポークに設置されコピーカッタを進退させる油圧シリンダとを有している。
そして、かかる油圧シリンダに油圧を供給するために、本体部にロータリジョイントの固定部(以下「ステータ」と称する)が設置され、センタシャフトの本体部側の端部にロータリジョイントの回転部(以下「ロータ」と称する)が設置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
近年、シールドトンネルの長距離化に伴い、掘進工事の途中で一時掘進を中断して、摩耗ないし破損したカッタビットを新品のカッタビットに交換したいという要請がある。かかる要請に対応して、発明者等は既に、低コストで迅速かつ容易にカッタビットを交換することができるカッタビット交換手段およびカッタビット交換方法の開発に成功し、これを開示している。
【0005】
かかるカッタビット交換手段は、カッタスポークが設置されている筒状回転体(センタシャフトに相当する)と、筒状回転体の内周面に摺動するカッタビット収納室と、カッタビット収納室に収納された新品カッタビットをカッタスポークに押し出すカッタビット押出手段とを有している。したがって、シールド掘進機の前方に作業用の立坑等を構築する必要がなく、掘進を一時中断するだけで、シールド掘進機の本体部から新品カッタビットをカッタスポークに装着することができるという顕著な効果を奏するものである(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平7-2224596号公報(3〜4頁、図1)
【特許文献2】特開2003−232192号公報(6〜7頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献2に開示された発明は、装着された新品カッタビットをカッタスポークに固定するために油圧シリンダを用いている。該油圧シリンダは掘進中(カッタスポークが回転している問に同じ)においてもカッタビットを押圧し続けるものであるから、筒状回転体には本体部からロータリジョイントを介して油圧が常時供給されている。
このとき、筒状回転体の回転中心とロータリジョイントの中心軸とは一致するものであるところ、筒状回転体は、その内部に設置されたカッタビット収納室に新品カッタビットを収納する必要から、本体部側が広く開口しているため、特許文献1に開示されたセンタシャフトのような、ロータリジョイントのロータを設置するのに好適な端部が存在しない。すなわち、ロータリジョイントを設置するためには、本体部にステータを支持するステータ支侍手段を設置すると共に、回転掘削部にロータを支持しかつロータに回転を伝達するロータ支持手段を設置する必要がある。
このため、かかるステータ支持手段およびロータ支持手段が、カッタビット収納室に新品カッタビットを収納する際の障害物となって、作業を複雑にしたり、作業能率を低下させたりするおそれがあった。尤も、これらは、ロータリジョイントを備える各種シールド掘進機において改善が望まれる共通の課題であり、発明者等が開発に成功したカッタビット交換手段を備えるシールド掘進機やその運転方法に限られるものではない。
【0008】
本発明は、上記の問題や課題を解決するためになされたものであり、ロータリジョイントの位置を容易に変更することができるシールド掘進機これに用いるロータリジョイントおよびシールド掘進機の運転方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の第1の形態に係るシールド掘進機は、本体部と、該本体部の前端に設置されて回転しながら地山を掘削する回転掘削部と、該回転掘削部と前記本体部と間にあって少なくとも油圧配管の連結を行うロータリジョイントとを有するものであって、
前記回転掘削部が停止しているとき、前記ロータリジョイントが前記回転掘削部の回転中心の位置から移動可能であることを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、本発明の第2の形態に係るロータリジョイントは、本体部と、該本体部の前端に設置されて回転しながら地山を掘削する回転掘削部とを有するシールド掘進機に取り付けられ、前記本体部と前記回転掘削部との間にあって少なくとも油圧配管の連結を行うものであって、
前記回転掘削部が停止しているとき、前記回転掘削部の回転中心の位置から移動できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
(3)また、本発明の第3の形態に係るシールド掘進機の運転方法は、本体部と、該本体部の前端に設置されて回転しながら地山を掘削する回転掘削部と、該回転掘削部と前記本体部と間にあって少なくとも油圧配管の連結を行うロータリジョイントとを有するシールド掘進機の運転方法であって、
前記ロータリジョイントを前記回転掘削部の回転中心と同軸上に設置する工程と、前記ロータリジョイントが前記回転掘削部の回転中心と同軸上に設置された状態で、前記回転掘進部を回転する工程と、前記回転掘削部が停止している状態で、前記ロータリジョイントが前記回転掘削部の回転中心の位置から移動させる工程と、を有することを特徴とするものである。
【0012】
(4)また、本発明の第4の形態に係るシールド掘進機は、スキンプレートによって筒状に形成された本体部と、該本体部の掘進方向側の端部に設置された回転掘削部と、該回転掘進部と前記本体部とを回転自在に接続するロータリジョイントとを有するものであって、
前記ロータリジョイントのステータが、前記回転掘削部の回転中心を横切るように揺動自在に前記本体部に支持されたステータ支持手段に設置され、
前記回転掘削部が回転しているとき、前記回転掘削部の回転中心と前記ロータリジョイントのロータの中心軸が一致し、前記回転掘削部が停止しているとき、前記回転掘削部の回転中心から前記ロータリジョイントが偏位自在であることを特徴とするものである。
【0013】
(5)また、本発明の第5の形態に係るシールド掘進機は、第4の形態に係るものにおいて、ロータリジョイントが、前記本体部分から前記回転掘削部に、空気圧又は液圧を供給する圧力供給機能、電気動力を供給する電気供給機能、又は電気信号を送受信する信号送受信機能の何れか一つ以上を具備することを特徴とするものである。
【0014】
(6)また、本発明の第6の形態に係るシールド掘進機は、第4又は第5の形態に係るものにおいて、前記回転掘削部の回転中心に前記ロータリジョイントのロータの中心軸が一致する位置で、前記ステータ支持手段の揺動を固定するステータ中心固定手段、または前記回転掘削部の回転中心から前記ロータリジョイントが偏位した位置で、前記ステータ支持手段の揺動を固定するステータ偏心固定手段の一方または両方が、前記本体部に設置され、
さらに、前記回転掘削部が回転しているとき、前記ロータリジョイントのロータに前記回転掘削部の回転を伝達し、前記回転掘削部が停止しているとき、前記回転掘削部の回転中心から前記ロータリジョイントを偏位自在にするロータ回転手段が、前記回転掘削部に設置されてなることを特徴とするものである。
【0015】
(7)また、本発明の第7の形態に係るシールド掘進機は、第4乃至第6のいずれかの形態に係るものにおいて、前記回転掘削部にカッタビットが着脱自在に設置され、前記回転掘削部が停止しているとき、前記本体部から前記回転掘削部にカッタビットが装着されることを特徴とするものである。
【0016】
(8)さらに、本発明の第8の実施形態に係るシールド掘進機の運転方法は、スキンプレートによって筒状に形成された本体部と、該本体部の掘進方向側の端部に設置された回転掘削部と、該回転掘進部と前記本体部とを回転自在に接続するロータリジョイントと、該ロータリジョイントのステータを前記回転掘削部の回転中心を横切るように揺動自在に支持するステータ支持手段とを有するものにおいて、
前記回転掘削部の回転が停止している状態で、前記ステータ支持手段を揺動して、前記ロータリジョイントの回転軸を前記回転掘削部の回転中心に一致させる工程と、
該回転掘削部の回転中心とロータリジョイントの回転軸とが一致した状態で、前記回転掘削部を回転する工程と、
前記回転掘削部の回転が停止している状態で、前記ステータ支持手段を揺動して、前記ロータリジョイントの回転軸を前記回転掘削部の回転中心から偏位させる工程とを有することを特徴とする。
【0017】
(9)本発明の第9の形態に係るロータリジョイントは、本体部と、該本体部の前端に設けられて回転しながら地山を掘削する回転掘削部とを有するシールド掘進機に取り付けられて、前記回転掘削部と前記本体部との間にあって少なくとも油圧配管の連結を行うロータリジョイントであって、前記回転掘削部が回転していない状態において前記本体部の内壁側へ移動できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
(10)また、本発明の第10の形態に係るロータリジョイントは、本体部と、該本体部の前端に設けられて回転しながら地山を掘削する回転掘削部とを有するシールド掘進機に取り付けられて、前記回転掘削部と前記本体部との間にあって少なくとも油圧配管の連結を行うロータリジョイントであって、前記回転掘削部側に連結されるロータと、前記本体部側に支持されるステータと、該ステータを前記本体部側に支持するステータ支持手段と、を備え、該ステータ支持手段が、前記回転掘削部が回転していない状態において前記ステータを前記本体部の内壁側へ移動できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
(11)また、本発明の第11の形態に係るロータリジョイントは、第10の形態に係るものにおいて、ステータ支持手段が、一端側がロータリジョイントのステータ側に連結され、他端側が本体部側に取り付けた状態で掘進方向に垂直な平面内で回動可能になるように構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
(12)また、本発明の第12の形態に係るロータリジョイントは、第10又は第11の形態に係るものにおいて、一端側が回転掘削部側に連結可能に構成され、他端側がロータリジョイントのロータ側に着脱可能連結されて、前記回転掘削部の回転を前記ロータ側に伝達するロータ回転手段を備えたことを特徴とするものである。
【0021】
(13)また、本発明の第13の形態に係るシールド掘進機は、第9乃至第12の形態に係るいずれかのロータリジョイントを備えたことを特徴とするものである。
【0022】
(14)また、本発明の第14の形態に係るシールド掘進機の運転方法は、本体部と、該本体部の前端に設けられて回転しながら地山を掘削する回転掘削部と、該回転掘削部と前記本体部との間にあって少なくとも油圧配管の連結を行うロータリジョイントと、一端側が回転掘削部側に連結され、他端側が前記ロータリジョイントのロータ側に着脱可能連結されて前記回転掘削部の回転を前記ロータ側に伝達するロータ回転手段と、一端側が前記本体部側に回動可能に連結され、他端側が前記ロータリジョイントのステータ側に連結されて前記ステータを支持するステータ支持手段と、を備えてなるシールド掘進機の運転方法であって、
前記ステータ支持手段の前記一端側を基点として前記ロータリジョイントを回動させて該ロータリジョイントの回転軸を前記回転掘削部の回転中心に一致させる工程と、
該回転掘削部の回転中心と前記ロータリジョイントの回転軸とが一致した状態で、前記回転掘削部を回転する工程と、
前記回転掘削部の回転が停止している状態で、前記ステータ支持手段を回動させて前記ロータリジョイントを前記本体部の内壁側に移動させる工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
よって、本発明によれば、回転掘削部が停止しているとき、回転掘削部の回転中心の位置から移動させる、又は偏位させることができるから、本体部の前端近傍における作業スペースが確保される。従って、この空間において行う必要がある種々の作業、例えば、回転掘削部に装着されているカッタビットの交換(回転掘削部へのカッタビットの装着を含む)が容易、迅速又は能率的になるという顕著な効果を奏する。このことは、小さな作業空間を余儀なくされるシールド掘進機、特に小型のシールド掘進機において特に有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[実施の形態1]
(シールド掘進機)
図1〜図3は、本発明の実施形態に係るシールド掘進機の前端部を示すものであって、図1は側面視の断面図、図2は正面図、図3は部分拡大図である。
図1〜図3において、シールド掘進機100は、筒状の本体部10と、本体部10の前端(図中、左側)にあって地山を掘削して掘削坑を創成する回転掘削部20と、回転掘削部20を回転駆動するための回転駆動部30と、本体部10から回転掘削部20に油圧を供給するためのロータリジョイント(以下「RJ」と称する)40と、RJ40の固定部41(以下「ステータ41」と称する)を支持するステータ支持手段50と、ステータ支持手段50の位置を固定するステータ固定手段60と、RJ40の回転部42(以下「ロータ42」と称する)に回転掘削部20の回転を伝達するロータ回転手段70とを有している。
【0025】
さらに、本体部10から回転掘削部20にカッタビットを装着するためのカッタビット交換手段80、掘削された土砂を排出するためのスクリューコンベア90と、セグメントを環状のセグメント筒状体に組み立てるためのエレクター装置(図示しない)と、セグメント筒状体を後方に押圧してその反力でもって本体部10を掘進(前進に同じ)させるシールドジャッキ(図示しない)と、セグメント筒状体と掘削坑との隙間に裏込材を注入する裏込材注入手段(図示しない)等を有している。
【0026】
(本体部)
本体部10は、スキンプレート11によって形成された筒状体であって、その一方の端部(以下「前端部」と称する)に、バルクヘッド12が設置されて水密構造になっている。
バルクヘッド12の中央に開口する中央開口部13が設けられ、中央開口部13の内縁に沿って、回転掘削部20を回転自在かつ水密的に支持する回転掘削部支持機構14が設置され、中央開口部13から外周側に偏位したスキンプレート11に近い位置に排土用開口部15が設けられ、排土用開口部15にそってスクリューコンベア90の土砂取り込み口が設置されている。
【0027】
(回転掘削部)
回転掘掘削部20は、回転端部21と回転円筒部22と回転円錐部23と回転基部24と、回転円筒部22に放射状に設置されたカッタスポーク25a、25b、25c、25d、25e(以下、まとめて「カッタスポーク25」と称する)と、カッタスポーク25の間に設置された補助スポーク28a、28b、28c(以下、まとめて「補助スポーク28」と称する)とを有している。
【0028】
カッタスポーク25は、断面略矩形の箱体であって、前板(掘進方向側)に溝状のカッタビット装着溝88が形成されている。カッタビット装着溝88は前方で狭く、後方で広がった略凸宇状であって、内周側の端部から外周側の端部にわたって前長に形成されている。
【0029】
カッタビット1は断面略凸字状であって、カッタビット1の幅の狭い中央突出部がカッタビット装着溝88から前面に突出し、カッタビット1の幅の広い装着部がカッタビット装着溝88の広がった奥部に収納されている。
そして、カッタビット装着溝88に供給されたカッタビット1を移動不能に固定するためのカッタビット固定板26が、カッタビット装着溝88に配置され、カッタビット固定板26を進退させるカッタビット固定シリンダ27が設置されている。
したがって、カッタビット固定板26を前進させると、カッタビット1は、その後面がカッタビット固定板26に当接し、その装着部(正確には、幅の狭い中央突出部と幅の広い装着部との問の段差部)がカッタビット装着溝88に押し付けられる。一方、カッタビット固定板26を後退させると、カッタビット固定板26はカッタビット1から離隔し、カッタビット1は、前記押し付けから開放される、カッタビット装着溝88内を移動自在になる。
【0030】
補助スポーク28a、28b、28cには、外周に向かって進退自在に設置されたコピーカッタ2と、コピーカッタ2を進退させるコピーカッタ進退シリンダ29a、29b、29cとが設置されている。すなわち、コピーカッタ2を進出させて掘進すれば、カッタビット1が掘削した掘削坑の内径(カッタスポーク25の外周端部が描く円の直径に相当する)は僅かに拡大する。
さらに、回転端部21の前面には、フッシュテールと呼ばれる回転カッタ3が設置されている。すなわち、回転中心を含む所定範囲は、回転カッタ3によって掘削されている。
また、回転カッタ3には複数の掘削ビット301が進出自在に埋め込まれ、摩耗した掘削ビット301については、油圧シリンダ302によって摩耗量に相当する量だけ前方に押し出されるから、回転カッタ3の掘削性能が維持される。このとき、油圧シリンダ302は、複数の掘削ビット301のうち摩耗した掘削ビット301の本体側に設置されるものであるから、当該押し出し作業をする掘削ビット301に限って設置するようにすればよく、全ての掘削ビット301の本体側に常時設置しておく必要はない。
【0031】
(回転駆動部)
回転駆動部30は、バルクヘッド12に設置されたモータ31および駆動ギア32と、回転掘削部20の回転基部24に設置された従動ギア33とを有し、小径の駆動ギア32と大径の従動ギア33とが噛み合って減速機構を形成し、回転掘削部20の高トルク回転を実現している。
【0032】
(ロータリジョイント)
RJ40は、円筒体からなるステータ41と、ステータ41の内周面に液密的に回転摺動する円柱体からなるロータ42とを有する。そして、ステータ41には、本体部10内に設置された図示しない油圧供給手段からステータ41に油圧を供給する本体側油圧配管4が接続され、ロータ42には、ロータ42から回転掘削部20に油圧を供給する回転側油圧配管5が接続されている。なお、回転側油圧配管5は、各カッタスポーク25のカッタビット固定シリンダ27、各補助スポーク28(28a、28b、28c)ごとのコピーカッタ進退シリンダ29(29a、29b、29c)にそれぞれ接続されるものであるが、簡略化して図示している。
RJ40のステータ41の内周面には、1条または複数条のリング状凹部(図示しない)が形成され、RJ40のロータ42の外周面には、該リング状凹部に対応する位置に開口している油圧開口孔(図示しない)が形成され、該油圧開口孔に連通してロータ42の端面に至る油圧経路(図示しない)が形成されている。したがって、ステータ41に供給された油圧は、ロータ42が回転している問も、リング状凹部を経由して連続してロータ42に供給されることになる。
【0033】
なお、RJ40の円筒体または円柱体の何れを、固定側(または低速回転側)あるいは回転側(または高速回転側)にするかは任意であるから、円筒体を本体部10に配置した場合は、これがロータ42に、円柱体を回転掘削部20に配置した場合は、これがステータ41となる。
さらに、RJ40は、ステータ41の内周面またはロータ42の外周面の一方に、1条または複数条のリング状電気接点が形成され、ステータ41の内周面またはロータ42の外周面の他方に該リング状接点に短絡して摺動する摺動接点が形成されたスリップリング機構を具備するものであってもよい。
【0034】
(ステータ支持手段)
図4は、図3における矢視A−A断面図であり、本発明の実施形態に係るシールド掘進機のステータ支持手段、ステータ固定手段およびロータ回転手段を背面から見た状態を示す図である。
図4の(a)において、ステータ支持手段50は、RJ40のステータ41が設置されたロータリジョイント揺動腕52(以下「ステータ支持レバー52」と称する)と、ステータ支持レバー52の一方の端部を揺動自在に支持する支持レバー支点51と、後記する支持レバー固定用ピン64が挿入される支持レバー固定用孔53とを有している。
なお、支持レバー支点51は、バルクヘッド12に設置された(実質的にスキンプレート11に設置されたに同じ)支点ピンと、ステータ支持レバー52に設置された支点孔または支点軸受け(支点ピンに摺動自在)によって構成されているが、バルクヘッド12に支点孔または支点軸受けを設置して、ステータ支持レバー52に支点ピンを設置してもよい。
【0035】
したがって、ステータ支持レバー52は支持レバー支点51を揺動中心として揺動自在であって、該揺動によって、RJ40の中心軸(ロータ42およびステータ41の中心軸に同じ)は、回転掘削部20の回転中心に一致したり、該回転中心から偏位したりする。
なお、かかる揺動は、回転掘削部20の回転中心に対して垂直な面内で実行される態様が示されているが、本発明はこれに限定するものではなく、揺動によってRJ40の中心軸が回転掘削部20の回転中心に一致する限り、回転掘削部20の回転中心に対して垂直でない(傾斜した)面内で実行されてもよい。
【0036】
(ステータ固定手段)
図4の(a)において、ステータ固定手段60は、ステータ支持手段50の後方側に配置されるものであって(図3参照)、ステータ固定レバー62と、ステータ固定レバー62の一方の端部を揺動自在に支持する固定レバー支点61と、支持レバー固定用ピン64が挿入される固定レバー固定用孔63a、63b、63cとを有している(図4(a)では、固定レバー固定用孔63bに挿入しているが、後述のように図6では、63aや63cにも挿入している)。
なお、固定レバー支点61は、バルクヘッド12に設置された(実質的にスキンプレート1に設置されたに同じ)支点ピンと、ステータ支持レバー52に設置された支点孔または支軸受け(支点ビンに摺動自在)によって構成されているが、バルクヘッド12に支点孔または点軸受けを設置して、ステータ固定レバー62に支点ピンを設置してもよい。
【0037】
そして、ステータ固定レバー62は固定レバー支点61を揺動中心として揺動自在であて、ステータ支持レバー52が揺動する面に略平行する面内で揺動する。
また、ステータ支持レバー52およびステータ固定レバー62がそれぞれ揺動する問に、テータ固定レバー62の固定レバー固定用孔63a、63b、63cは、ステータ支持レパー52の支持レバー固定用孔53に一致するように配置されている。
【0038】
さらに、ステータ支持レバー52の支持レバー固定用孔53とステータ固定レバー62の固定レバー固定用孔63bとが一致したとき、RJ40の中心軸(ロータ42およびステータ41の中心軸に同じ)が回転掘削部20の回転中心に一致するようになっている。
したがって、かかる状態において、ステータ支持レバー52の支持レバー固定用孔53とステータ固定レバー62の固定レバー固定用孔63bとに支持レバー固定用ピン64を挿入して、ステータ支持レバー52とステータ固定レバー62とを連結すれば、RJ40の中心軸は回転掘削部20の回転中心に一致した状態に維持され、中心固定手段が形成されることになる(図4はかかる状態を示している)。
【0039】
一方、ステータ固定レバー62の固定レバー固定用孔63aまたは63cに、ステータ支持レバー52の支持レバー固定用孔53がそれぞれ一致したとき、RJ40は回転掘削部20の回転中心から偏位するようになっている。
したがって、かかる状態において、ステータ固定レバー62の固定レバー固定用孔63aまたは63cとステータ支持レバー52の支持レバー固定用孔53とに支持レバー固定用ピン64挿入して、ステータ固定レバー62とステータ支持レバー52とを連結すれば、RJ40は回転掘削部20の回転中心から偏位した状態に維持され、偏心固定手段が形成されることになる。
【0040】
なお、ステータ固定レバー62とステータ支持レバー52とを連結すれ要領は前記したものに限定するものではなく、固定孔および固定用ピンに代えてネジ孔およびボルトを用いたり、ステータ固定レバー62またはステータ支持レパー52の一方に固定用孔を形成して、他方にあらかじめ固定用ピンを設置したり、一方に設けた被係止部(凸部または凹部等)に他方に設けた係止部(凹部または凸部)が係止するようにしたり、一方が他方を移動不能に把持するようにしたり、両者を移動不能に把持する把持手段を別途設けるようにしたりしてもよい。
【0041】
(ロータ回転手段)
図4の(a)において、ロータ回転手段70は、ステータ支持手段50の前進側に配置されるものであって(図3参照)、ロータ回転レバー72と、ロータ回転レバー72の一方の端部を揺動自在に支持する回転レバー支点71と、回転レパー固定用ピン74が挿入される回転レバー固定用孔73と、RJ40のロータ42が貫通しているロータ案内溝75とを有している。
回転レパー支点71は、回転掘削部20の回転円錐部23に設置された支点ピンと、ロータ回転レバー72に設置された支点孔または支点軸受け(支点ピンに摺動自在)によって構成されているが、回転円錐部23に支点孔または支点軸受けを設置して、ロータ回転レバー72に支点ピンを設置してもよい。
また、ロータ案内溝75はロータ42の外径に略等しい幅であって、RJ40の揺動範囲を規制している。
なお、ロータ42におけるロータ案内溝75との連結部は、該連結部がロータ案内溝75内を摺動できるが回転は出来ないようになっている。つまり、ロータ72における前記連結部の軸方向に直交する断面形状は円形ではなく、長丸状になっている。
【0042】
そして、ロータ回転レバー72は回転レバー支点71を揺動中心として、ステータ支持レバー52が揺動する面に略平行する面内で揺動自在である。
また、かかる揺動している間で、RJ40の中心軸が回転掘削部20の回転中心に一致しているとき、ロータ42に形成されたロータ固定用孔(図示しない)とロータ回転レバー72の回転レバー固定用孔73とが一致するように配置されている。
したがって、ロータ42のロータ固定用孔とロータ回転レバー72の回転レバー固定用孔73とを一致させて、かかる両固定用孔に回転レパー固定用ピン74を挿入して、ロータ回転レバー72とロータ42とを連結すれば、回転掘削部20の回転がロータ42に伝達されることになる。
【0043】
なお、ロータ回転レバー72とロータ42とを連結する要領は前記したものに限定するものではなく、前述したステータ支持レバー52とステータ固定レバー62との連結要領に準じるため、説明を省略する。また、ロータ回転レバー72に設置されたロータ案内溝75の設置を省力してもよい。すなわち、ロータ回転レバー72の回転レバー支点71、あるいはロータ回転レバー72またはロータ42の一方または両方に、ロータ回転レバー72の揺動を案内する手段(揺動範囲を規制する手段に同じ)を設けてもよい。
【0044】
また、ステータ固定レバー62やロータ回転レパー72の構造も、前記したものに限定するものではなく、前者はステータ支持レバー52の中心固定機能および偏心固定機能を、後者は回転伝達機能と回転遮断機能(ロータ回転レバー72を揺動自在にする機能)を具備していればよい。
【0045】
図4の(b)において、ステータ固定レバー62には固定レパー固定用孔63bのみが設けられ、一方、バルクヘッド12には固定レバー支点61a、61b、61cが設けられている。そして、ステータ固定レバー62は、固定レバー支点61a、61b、61cの何れかの位置に着脱自在に支持され、固定レバー固定用孔63bおよび支持レバー固定用孔53とが一致する位置における支持レバー固定用ピン64の両孔への挿入により位置決めされ、ステータ支持レバー52と傾動自在に(回転掘進部20の回転軸を中心として、2つのレバー62、52が時計の針のように相互に開閉自在に移動するように)連結される。
また、RJ40のロータ41は3本のロータ回転レバー72a、72b、72cによって、放射方向から支持されている。すなわち、回転掘削部20の回転円錐部23に、ロータ回転レバー72a、72b、72cの一方の端部を着脱自在に連結するための回転レバー支点71a、71b、71cが設置され、ロータ41には、ロータ回転レバー72a、72b、72cの他方の端部を着脱自在に連結するための着脱手段が設置されている。
【0046】
よって、ステータ固定レバー62を固定レバー支点61bの位置で支持すれば、ステータ41の中心軸は回転掘削部の回転中心に一致し、ロータ回転レバー72a、72b、72cでもって、ロータ41を回転円錐部23に連結すれば、回転掘削部20の回転がロータ42に伝達されることになる。
また、回転掘削部20の回転を停止して、ロータ回転レバー72a、72b、72cを撤去すれば、ステータ支持レパー52およびステータ固定レバー62がそれぞれ支持レパー支点51および固定レバー支点61bを中心として揺動する間に、RJ40を回転掘削部20の回転中心から退避させることができる。このとき、ロータ回転レバー72a、72b、72cは可撹性を具備してもよく、回転レバー支点71a、71b、71cの構造や、ロータ41の前記着脱手段は限定されるものではない。
【0047】
(カッタビット交換手段)
図5は、本発明の実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換手段を示す側面視の部分断面図である(尚、このカッタビット交換手段及び装置については、特許文献1により詳しく記載されている)。
図5において、回転円筒部22には、各カッタスポーク25a、25b…(図示しない)の位置に対応して、カッタビット1を挿通自在なカッタビット供給孔87a、87b…(図示しない)(以下、まとめて「カッタビット供給孔87」と称する)が形成されている。
【0048】
また、回転円筒部22の内部には、回転円筒部22の内周面に水密的に摺動するカッタビット交換用内筒81が設置され、カッタビット交換用内筒81にカッタビット収容室82が設置されている。
また、カッタビット交換用内筒81の内側には、リングギア(内歯歯車、図中、断面を実線で、側面を破線で示している)811が形成され、一方、回転円筒部22の内側には油圧モータ202が設置され、油圧モータ202の出力軸に固定されたピニオン(外歯歯車)201がリングギア811に係合している。すなわち、リングギア811と、ピニオン221と、油圧モータ202とによって内筒駆動装置89が形成されている。
したがって、シールド掘進機100が掘進している間は、油圧モータ222が停止しているから、カッタビット交換用内筒81と回転内筒部22(回転掘削部20に同じ)とは一体的に回転する。他方、掘削を停止している場合、必要に応じて、カッタビット交換用内筒81の内側に設けられたリングギア811を、これに係合するピニオン201を油圧モータ222で駆動することにより回転させる。これにより、カッタビット交換用内筒81は止まっている回転内筒部22に対して摺動する。
【0049】
カッタビット収容室82の後面側にはカッタビット1を掘進方向に向かって収納するための収納用開口部83が設けられ、収納用開口部83にはこれを水密的に封鎖する開閉扉84が設けられている。また、カッタビット収容室82の外周側にカッタビット1を外周方向に向かって押し出すための押出用開口部85(図3参照)が設けられている。さらに、カッタビット収容室82の内周側には、カッタビット1を外周方向に向かって押し出すためのカッタビット押出シリンダ86が設置されている。
したがって、以下の要領で、シールド掘進機100の掘進を中断して、回転掘削部20の回転を停止すれば、本体部10から回転掘削部20に新品カッタビット1を装着することが可能になる。
【0050】
(シールト掘進機の運転方法)
(i)カッタビット交換用内筒81を回転して、押出用開口部85を新品カッタビット1(説明の便宜上「新品カッタビット1n」と称する)を装着しようとするカッタスポーク25の位置に合わせる。このとき、たとえば、カッタスポーク25aについて、カッタビット収容室82の押出用開口部85と回転円筒部22のカッタビット供給孔87aとカッタスポーク25aのカッタビット装着溝88aとは一直線状に連通している。
(ii)そして、カッタビット固定シリンダ27を縮めて、カッタビット固定板26を後退させる。
【0051】
(iii)そうすると、カッタスポーク25のカッタビット装着溝88に装着されていたカッタビット1(説明の便宜上「カッタビット1a」と称し、最も内周に配置されたものを破線で示す)は移動自在になるから、カッタビット押出シリンダ86を伸ばして、あらかじめカッタビット収容室82に収容されていた新品カッタビット1nを、押出用開口部85を通過させて、カッタビット装着溝88内に押し出す。このとき、カッタビット装着溝88の最も外周側に配置されていたカッタビット1aはカッタビット装着溝88(カッタスポーク25に同じ)から外れて、地中に押し出されることになる。
(iv)そこで、カッタビット固定シリンダ27を伸ばして、カッタビット固定板26を前進させると、カッタスポーク25に装着された全てのカッタビット1(新品カッタビット1nおよびカッタビット1a)は固定され、掘削自在な状態になる。
この間、新品カッタビット1nを装着しようとするカッタスポーク25以外のカッタスポーク25(たとえば、カッタスポーク25b、25c、・・・)においては、カッタビット供給孔87(たとえば、カッタビット供給孔87b、87c、・・・)がカッタビット交換用内筒81によって水密的に封鎖されているから、本体部10に水等が浸入することがない。
【0052】
(v)次に、カッタビット押出シリンダ86を縮めて、カッタビット交換用内筒81を僅かに回転すれば、全てのカッタビット供給孔87がカッタビット交換用内筒81によって水密的に封鎖される。
(vi)そこで、開閉扉84を開けて、別の新品カッタビット1nを、収納用開口部83を経由してカッタビット収容室82に収納し、開閉扉84を閉めてカッタビット収容室82を水密的に封鎖する。
(vii)さらに、カッタビット交換用内筒81を回転して、次に新品カッタビット1nを装着しようとするカッタスポーク25(たとえば、カッタスポーク25b)の位置に、押出用開口部85を合わせ、前記工程を実施すれば、カッタスポーク25においても、新品カッタビットを装着することができる。
【0053】
(カッタビット交換時のロータリジョイントの位置)
図6は、本発明の実施形態に係るシールド掘進機のロータリジョイントの揺動を説明する部分背面図である。
【0054】
図6の(a)は、カッタスポーク25aについてカッタビットを交換する場合を示している。すなわち、回転掘削部20を回転して、カッタスポーク25aが鉛直下方を向く位置(いわゆる約6時の位置)で回転を停止する。そして、カッタビット交換用内筒81を回転して、押出用開口部85をカッタスポーク25aの近くにまでもってくる。
このとき、回転円筒部22のカッタビット供給孔87とカッタビット交換用内筒81の押出用開口部85とは重なっていない。すなわち、回転円筒部22がカッタビット供給孔87を水密的に閉塞しているから、カッタビット収容室82の水密性が維持されている。そして、回転レバー固定用ピン74が撤去されているから、ロータ回転レバー72の回転レバー支点71は左側略水平位置(いわゆる約9時30分の位置)にあって、ロータ回転レバー72は略水平の姿勢になるまで揺動している。
【0055】
また、支持レバー固定用ピン64は、ステータ支待レバー52の支持レバー固定用孔53とステータ固定レバー62の固定レバー固定用孔63bから撤去され、ステータ41は、図中、右方向に揺動されている。そして、ステータ支持レバー52の支持レバー固定用孔53aとステータ固定レバー62の固定レバー固定用孔63aとが一致した位置で、かかる固定用孔53a、63aに支持レバー固定用ピン64が挿入され、揺動が固定されている。
したがって、RJ40は、回転掘削部20の回転中心から離れ(いわゆる約9時の位置にあるに同じ)、ステータ支特レバー52およびロータ回転レバー72が、回転掘削部20の上方に退避している。よって、カッタビット収容室82に新品カッタビット1を収容するための作業スペースが確保されている。
【0056】
図6の(b)は、鉛直下方に向かうカッタスポーク25bについてカッタビットを交換する場合を示している。すなわち、回転掘削部20を回転して、カッタスポーク25bが鉛直下方を向く位置(いわゆる約6時の位置)で回転を停止する。そして、カッタビット交換用内筒81を回転して、押出用開口部85をカッタスポーク25bの近くにまでもってくる。このとき、ロータ回転レバー72の回転レバー支点71は下方近く(いわゆる約7時の位置)にあって、回転レバー固定用ピン74が撤去されているから、ロータ回転レバー72は揺動自在である。そして、以下に説明するステータ41の揺動によって、略鉛直に起立している。
【0057】
すなわち、支持レバー固定用ピン64が、ステータ支持レバー52の支持レバー固定用孔53とステータ固定レバー62の固定レバー固定用孔63bから撤去されて、ステータ41は、図中、左方向に揺動されている。そして、支持レバー固定用孔53cと固定レバー固定用孔63cとが一致した位置で、かかる固定用孔53c、63cに支持レバー固定用ピン64が挿入され、揺動が固定されている。
したがって、RJ40は、回転掘削部20の回転中心から離れ(いわゆる約9時の位置にあるに同じ)、ステータ支持レバー52およびロータ回転レバー72が、回転掘削部20の左側に退避している。よって、カッタビット収容室82に新品カッタビット1を収容するための作業スベースが確保されている。
【0058】
図6の(c)は、鉛直下方に向かうカッタスポーク25cについてカッタビットを交換する場合を示している。すなわち、前述と同様に、カッタスポーク25cおよびカッタビット交換用内筒81が略鉛直下方の位置(いわゆる約6時の位置)で、ロータ回転レバー72の回転レバー支点71は下方近く(いわゆる約5時の位置)にあって、回転レバー固定用ピン74が撤去されているから、ロータ回転レバー72は、ステータ41の揺動によって略鉛直に起立している。
また、ステータ支持レバー52は、図中、右方向に揺動されて、支持レバー固定用ピン64によって揺動が固定されている。
したがって、RJ40は、回転掘削部20の回転中心から離れ(いわゆる約3時の位置にあるに同じ)、ステータ支持レバー52およびロータ回転レバー72が、回転掘削部20の右側に退避している。よって、カッタビット収容室82に新品カッタビット1を収容するための作業スペースが確保されている。
【0059】
図6の(d)は、鉛直下方に向かうカッタスポーク25dについてカッタビットを交換する場合を示している。すなわち、前述と同様に、カッタスポーク25dおよびカッタビット交換用内筒81が略鉛直下方の位置(いわゆる約6時の位置)で、ロータ回転レバー72の回転レバー支点71は右側略水平位置(いわゆる約2時30分の位置)にあって、回転レバー固定用ピン74が撤去されているから、ロータ回転レパー72は、ステータ41の揺動によって略水平に倒れている。
また、ステータ支持レバー52は、図中、左方向に揺動されて、支持レバー固定用ビン64によって揺動が固定されている。
したがって、RJ40は、回転掘削部20の回転中心から離れ(いわゆる約9時の位置にあるに同じ)、ステータ支持レバー52およびロータ回転レバー72が、回転掘削部20の上側に退避している。よって、カッタビット収容室82に新品カッタビット1を収容するための作業スペースが確保されている。
【0060】
以上、本発明のロータリジョイント揺動腕52(図4の(a))について、カッタビット1を交換する作業を例に作業スベースが確保されることを説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、回転掘削部20の内部におけるその他の作業に際しても作業スペースが確保されることは明らかである。
【0061】
[実施の形態2]
図7は本発明の実施の形態2に係るロータリジョイント101および該ロータリジョイント101を取り付けたシールド掘進機の前端部の説明図である。図7において実施の形態1に示したものと同一または相当部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態に係るロータリジョイント101は、ステータ103、ロータ105、ロータ105に回転掘削部20の回転を伝達することによってロータ105を回転させるロータ回転手段107、ステータ103を本体部10側に揺動可能に支持するステータ支持手段121、ステータ支持手段121の揺動を止めると共にステータ103を所定の位置に固定するステータ固定手段129、を備えている。
ステータ103およびロータ105の構成については実施の形態1で説明したものと同様である。以下においては本実施の形態の特徴である他の構成について詳細に説明する。
【0062】
1.ロータ回転手段
図8は図7の矢視B−B断面図である。以下、図7、図8に基づいてロータ回転手段107の詳細を説明する。
ロータ回転手段107は一端部が回転掘削部20側に回動可能に連結され、他端部がロータ105に着脱可能に連結される回転伝達軸からなる。
ロータ回転手段107の一端部は、図8に示されるように、円形の膨出部となっており、その中央部に回動のための孔110が設けられ、また周縁部には4つのボルト孔が設けられている。そして、鉛直方向を時計の6時としたときに周縁部において4時と8時の位置には前記周縁部から外方に突出する突出部が形成され、この突出部にボルト孔111a、111bが設けられている。
【0063】
ロータ回転手段109の一端部は、回転掘削部20側に設けられた固定板113に挟まれるようにして4本のボルト115a、115b、115c、115dによって固定板113に固定されている。また、孔110には回動軸117が挿入され、ロータ回転手段109は掘進方向に直交する面内で回動できるようになっている。
ロータ回転手段109の他端部は複数のボルト119によってロータ105に着脱可能に連結されている。
【0064】
上記のように構成されたロータ回転手段109は、図8の実線で示す状態において、回転掘削部20が回転することにより、ロータ回転手段109が回転掘削部20の回転をロータ105に伝達し、ロータ105が回転掘削部20と共に回転する。
【0065】
カッタビットの交換の際などの場合には、ボルト119を外して、ロータ回転手段109とロータ105の連結を切り離す。そして、ボルト115を外してロータ回転手段109を回動軸117を中心に図8の一点鎖線で示す状態まで回動させる。この状態でボルト孔111aにボルト120を挿入して固定板113に固定する。このように、ロータ回転手段109を一点鎖線で示す状態にすることで、カッタビット交換のための作業スペースを確保することができる。
【0066】
2.ステータ支持手段
図9は図7の矢視C−C断面図である。以下、図7、図9に基づいてステータ支持手段121の詳細を説明する。
ステータ支持手段121は、軸部材からなり、その一端部がシールド掘進機の本体部10側に回動軸125を介して掘進方向に直交する面内で回動できるように連結され、他端部が複数のボルト127によってステータ103に着脱可能に連結されている。
【0067】
3.ステータ固定手段
ステータ固定手段129は、ステータ支持手段121の軸中央部から両側(掘進方向に直交する方向)に延出する第1リンク部材131a、131bと、ステータ支持手段121を挟んでその両側(掘進方向に直交する方向)に設けられ、一端側がシールド掘進機の本体部10側に固定されて他端側が鉛直下方に延びる第2リンク部材133a、133bと、第1リンク部材131aと第2リンク部材133aを連結する第3リンク部材135とから構成されている。
【0068】
図9に示す状態は、ロータリジョイント101のロータの中心軸と回転掘削部20の回転中心が一致した状態を示しており、この状態で回転掘削部20を回転させることができる。
なお、図9の一点鎖線で示した状態は、ステータ支持手段123を回動軸125回りに回動させて、ロータリジョイント101を本体部10の内壁側に移動させた状態を示している。
【0069】
図9における実線で示した状態から一点鎖線で示した状態にする手順は以下のようにする。第3リンク部材135と第1リンク部材131aの連結および第3リンク部材135と第2リンク部材133aの連結を外して、ステータ支持手段123を、回動軸125を中心に回動させ、第1リンク部材131bの端部と第2リンク部材133bを連結する。
このようにすることで、ロータリジョイントを本体部10の内壁側に移動させた状態で保持でき、カッタビットの交換のための作業スペースを確保できる。
【0070】
次に、上記のように構成された本実施の形態のロータリジョイント101を搭載したシールド掘進機について、カッタビット交換時においてロータリジョイント101を移動する動作について説明する。
図7および図8、図9の実線で示した状態では、ロータリジョイント101のロータの中心軸と回転掘削部20の回転中心が一致しており、この状態で回転掘削部20を回転させることができる。したがって、この状態で地山の掘削を行うことができる。
【0071】
次に、カッタビット交換時においては、ボルト119を外して、ロータ回転手段109とロータ105の連結を切り離す。さらに、ボルト115を外してロータ回転手段109を回動軸117を中心に図8の一点鎖線で示す状態まで回動させる。この状態でボルト孔111aにボルトを挿入して固定板113に固定する。
次に、ステータ固定手段23における第3リンク部材135と第1リンク部材131aの連結および第3リンク部材135と第2リンク部材133aの連結を外す。これによって、ステータ支持手段123は回動可能となる。そこで、ステータ支持手段123を、回動軸125回りに回動させ、第1リンク部材131bの端部と第2リンク部材133bを連結する。
これによって、ロータリジョイント101を本体部10の内壁側に移動させた状態で保持でき、カッタビットの交換のための作業スペースを確保できる。
【0072】
このとき、ロータリジョイント101、ロータ回転手段107、ステータ支持手段123およびステータ固定手段129のすべてが本体部10の内壁側に配置され、本体部10の中央部には広い空間が確保されるので、カッタビット交換等の作業効率を大幅に向上させることができる。
【0073】
カッタビット交換等の作業が終了したら、上記と逆の手順によって、図7および図8、図9の実線で示した状態、すなわちロータリジョイント101のロータの中心軸と回転掘削部20の回転中心が一致する状態にもどす。この状態で、回転掘削部20を回転させて地山の掘削を行う。
【0074】
なお、上記の実施の形態においては、ロータ回転手段107およびステータ支持手段123を図中反時計回りに回動させて本体部10の内壁側に移動させる例を示したが、ロータ回転手段107およびステータ支持手段123を時計回りに回動させて本体部10の内壁側に移動させることもできる。この場合においては、ロータ回転手段107に関しては、ロータ回転手段107を時計回りに回動させてボルト孔111bにボルトを挿入して固定板113に固定すればよい。また、ステータ支持手段123に関しては、第3リンク部材135を取外し、第1リンク部材131aと第2リンク部材133aを連結すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように本発明によれば、回転掘削部の内部に作業スペースを確保することができるため、当該位置における作業、特に、カッタビットを交換するための作業が、容易かつ迅速になるから、本体部と回転掘削部との間で油圧や電気信号等の受け渡しがある各種シールド掘進機およびその運転方法として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態に係るシールド掘進機の前端部を示す側面視の断面図。
【図2】本発明の実施形態に係るシールド掘進機の前端部を示す正面図。
【図3】本発明の実施形態に係るシールド掘進機の前端部を示す部分拡大図。
【図4】図3の矢視A−A断面図であり、本発明の実施形態に係るシールド掘進機のステータ支持手段、ステータ固定手段およびロータ回転手段を背面から見た状態を示す図。
【図5】本発明の実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換手段を示す側面視の部分断面図。
【図6】本発明の実施形態に係るシールド掘進機のロータリジョイントの揺動を説明する部分背面図。
【図7】本発明の実施の形態2に係るロータリジョイントおよび該ロータリジョイントを取り付けたシールド掘進機の前端部の説明図。
【図8】図7の矢視B−B断面図。
【図9】図7の矢視C−C断面図。
【符号の説明】
【0077】
1 カッタビット
2 コピーカッタ
3 回転カッタ
4 本体側油圧配管
5 回転側油圧配管
10 本体部
11 スキンプレート
12 バルクヘッド
13 中央開口部
14 回転掘削部支持機構
15 排土用開口部
20 回転掘削部
21 回転端部
22 回転円筒部
23 回転円錐部
24 回転基部
25 カッタスポーク
26 カッタビット固定板
27 カッタビット固定シリンダ
28 補助スポーク
29 コビーカッタ進退シリンダ
30 回転駆動部
31 モータ
32 駆動ギア
33 従動ギア
40 ロータリジョイント(RJ)
41 ステータ
42 ロータ
50 ステータ支持手段
51 支持レバー支点
52 ステータ固定レバー(ロータリジョイント揺動腕)
53 支持レバー固定用孔
60 ステータ固定手段
61 固定レパー支点
62 ステータ固定レバー
63 固定レバー固定用孔
64 支持レバー固定用ピン
70 ロータ回転手段
71 回転レバー支点
72 ロータ回転レバー
73 回転レバー固定用孔
74 回転レバー固定用ピン
75 ロータ案内溝
80 カッタビット交換手段
81 カッタビット交換用内筒
82 カッタビット収容室
83 収納用開口部
84 開閉扉
85 押出用開口部
86 カッタビット押出シリンダ
87 カッタビット供給孔
88 カッタビット装着溝
89 内筒駆動装置
90 スクリューコンベア
100 シールド掘進機
101 ロータリジョイント
103 ステータ
105 ロータ
107 ロータ回転手段
121 ステータ支持手段
129 ステータ固定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、該本体部の前端に設置されて回転しながら地山を掘削する回転掘削部と、該回転掘削部と前記本体部と間にあって少なくとも油圧配管の連結を行うロータリジョイントとを有するシールド掘進機であって、
前記回転掘削部が停止しているとき、前記ロータリジョイントが前記回転掘削部の回転中心の位置から移動可能であることを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
本体部と、該本体部の前端に設置されて回転しながら地山を掘削する回転掘削部とを有するシールド掘進機に取り付けられ、前記本体部と前記回転掘削部との間にあって少なくとも油圧配管の連結を行うロータリジョイントであって、
前記回転掘削部が停止しているとき、前記回転掘削部の回転中心の位置から移動できるように構成されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項3】
本体部と、該本体部の前端に設置されて回転しながら地山を掘削する回転掘削部と、該回転掘削部と前記本体部と間にあって少なくとも油圧配管の連結を行うロータリジョイントとを有するシールド掘進機の運転方法であって、
前記ロータリジョイントを前記回転掘削部の回転中心と同軸上に設置する工程と、
前記ロータリジョイントが前記回転掘削部の回転中心と同軸上に設置された状態で、前記回転掘進部を回転する工程と、
前記回転掘削部が停止している状態で、前記ロータリジョイントが前記回転掘削部の回転中心の位置から移動させる工程と、を有することを特徴とするシールド掘進機の運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate