説明

シールド掘進機におけるテールシールブラシ

【課題】本発明はグリースの挿入を容易にし、該グリースによる止水材層を健全に形成し、止水機能を遺憾なく発揮せしめるようにしたシールド掘進機におけるテールシールブラシを提供する。
【解決手段】平ブラシ束1を複段に平重ねした平重ねブラシ束の平重ね界面に織布又は合成樹脂シートから成る平シート7と平ネット8の重合体を介在し、平ネット8とは反対側の平シート7の表面に沿い止水材9を充填し同シート表面に止水材層9′を形成する構成としたシールド掘進機におけるテールシールブラシ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシールド掘進機のテール胴の内周面に環状に取り付けられるテールシールブラシ、殊に該テールシールブラシにおける止水構造の改善に係る。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はシールド掘進機のテール胴の内周面の前段と後段にテールシールブラシを環状且つ並列して取り付け、前段と後段のテールシールブラシ間に繊維入りグリースを充填して止水を図り、更にバンドで結束したブラシ束の内側保護板として布を用いつつ、同ブラシ束の中間に同布の延長部を介在し、止水効果を高めるとしている。
【0003】
上記布としては織布、不織布を用い、適性材としてデュポン社製のアラミド繊維の織布から成るケブラー(登録商標)を挙げている。
【0004】
この特許文献1のブラシ束の中間に介在する布は、同布自身に止水効果を期待したものであり、布をグリース(止水材)のバックアップ手段として機能せしめ、止水材と布とが協働して止水層を形成する思想は皆無である。
【特許文献1】特開平5−187194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然しながら上記特許文献1においては、ブラシ束を形成する集積ブラシ材内部に布を配在する構造であり、ブラシ束の積み重なったブラシ材を仕分けして布を介在する方法では、該布をブラシ束の中間部に適切に配在できず、布によって仕分けられる上側ブラシ材と下側ブラシ材に量のばらつきを生じがちであり、これにより布が厚み方向に屈曲し平面性が確保できず、又集積ブラシ材内に布を介挿し組み立て製造する際の作業性に欠ける問題点を有している。
【0006】
又ブラシ束の中間、即ち集積ブラシ材内部に布を介挿することによって止水効果を高めるとしているが、織布、不織布の何れも通水性と通気性を有し、止水手段としては殆ど無力である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はテールシールブラシを、平ブラシ束を複段に平重ねし、該平重ねブラシ束を外側ばね板と内側ばね板で挟持した構造にする。
【0008】
そして上記平重ねブラシ束の平重ね界面、即ち平ブラシ束と平ブラシ束の間に、織布又は合成樹脂シートから成る平シートと平ネットの重合体を介在し、該平ネットとは反対側の平シートの表面に沿い止水材を充填し同シート表面に止水材層を形成する構成としたものである。
【0009】
又は上記平シートとは反対側の平ネットの表面に沿い止水材を充填し同シート表面に止水材層を形成する構成としたものである。
【0010】
何れの場合も上記平ネットは平シートのバックアップ手段として機能し、平シートは繊維入りグリースに代表される止水材(止水材層)のバックアップ手段として機能し、平シートの表面に均一な厚みのムラのない止水材層を形成し、健全なる止水機能を発揮せしめる。
【0011】
加えて止水材を充填する際に、上記平ネットと平シートの重合体を手掛かりにして上下平ブラシ束の毛先からの仕分け拡開が容易に行え、止水材充填の作業性を向上する。
【0012】
上記平ネットと平シートは重合し且つ該重合体の周縁部をステップル等で止着し貼り合わせ構造にする。又は平ネットと平シートを接着剤を介し貼り合わせ構造にする。又は平ネットと平シートを縫着して貼り合わせ構造にする。
【0013】
上記平ネットと平シートの貼り合わせ体を上記平重ねブラシ束の平重ね界面に介在する。これにより平ブラシ束の平重ね界面に平シートを介在する際の同シートの折り込みや、偏在、シワ生成を有効に防止し、平ブラシ束間に平面状態に適正に介在することができる。
【0014】
上記平ネットと平シートは両者の重合体に更に中間ばね板を重ね合わせ、三者の重合体を平重ねブラシ束の平重ね界面に介在することができる。
【0015】
平シートは平ネットと中間ばね板間に介在され、上記平シートの表面に充填した止水材は平シートと中間ばね板間において圧縮されて上記止水材層を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明を実施するための最良の形態を図1乃至図8に基づいて説明する。
【0017】
図1,図2に示すように、ワイヤーブラシ材又は合成樹脂製ブラシ材等から成るブラシ材の集積材の基部をブラシホルダーにて把持し、一定の厚みの平ブラシ束1を形成する。
【0018】
具体例として、ブラシ材の集積材の基部をチャンネル材(ブラシ植装手段)2にて把持し、上記平ブラシ束1を形成する。
【0019】
上記平ブラシ束1を複段に平重ねし、即ち上記チャンネル材2を上下に重ねて平ブラシ束1を複段に平重ねし、該平重ねブラシ束を外側ばね板3と内側ばね板4で挟持した構造にする。
【0020】
即ち平ブラシ束1の重合体の一方の外表面に外側ばね板3を重ね、更に他方の外表面に内側ばね板4を重ね、両ばね板3,4間に平重ねブラシ束を挟持する。
【0021】
更に上記外側ばね板3と内側ばね板4の基端を肉厚の取り付け用上下押え金物(ブラシホルダー)5,5′で加圧挟持し、ボルト又は鋲6により上下押え金物5,5′を締結し、両金物5,5′間に平ブラシ束1の重合体(平重ねブラシ束)を把持せしめる。
【0022】
上記ボルト又は鋲6は上下押え金物5,5′と内外側ばね板4,3と平重ねブラシ束を貫通し、ボルト又は鋲6一端のヘッドを上押え金物5に係止し、ボルト又は鋲6の他端を下押え金物5′に溶接して平重ねブラシ束の締結状態を保ち、平重ねブラシ束の毛先を上下押え金物5,5′の端部開口部から先方へ延出せしめる。
【0023】
上記内外側保護板4,3は上下押え金物5,5′の開口部から下方へ向け、即ち取り付け時においては内方へ向け腰折りし、該腰折り部を支点として弾性変位可能とする。
【0024】
上記テールシールブラシはシールド掘進機のテール胴の周面に沿い押え金物5,5′を以って環状に多数取り付け、ブラシ材の毛先を掘進機から押し出されるセグメント組立体の外周面に内外側ばね板4,3の弾力により加圧接触せしめ、泥砂や泥水、裏込め材の掘進機内への流入を阻止する。
【0025】
上記シール効果を補完する手段として、上記平重ねブラシ束の平重ね界面、即ち平ブラシ束1と平ブラシ束1の間に、織布又は合成樹脂シートから成る平シート7と平ネット8の重合体を介在し、該平ネット8とは反対側の平シート7の表面に沿い繊維入りグリースに代表される止水材9を充填し、使用時の圧縮によって余分な止水材9を押し出しつつ、同シート表面に薄く均一に延伸し同シート表面に粘土状に固められた止水材層9′を形成する構成とする。
【0026】
上記平ネット8は金属製ネット又は合成樹脂製ネットである。又上記平シート7を形成する織布は、前記特許文献1で教示するアラミド繊維の織布(デュポン社製のケブラー)が適性である。
【0027】
具体例として図1A,図3Aに示すように、上記平ネット8と平シート7は両者の重合体に更に中間ばね板10を重ね合わせ、即ち平シート7の平ネット8とは反対側の表面に中間ばね板10を重ね合わせ、三者の重合体を平重ねブラシ束の平重ね界面に介在する。
【0028】
平シート7は平ネット8と中間ばね板10間に介在され、止水材9を上記平シート7の表面、即ち平シート7と中間ばね板10間に充填する。
【0029】
図1B,図3Bに示すように、上記充填された止水材9は平シート7と中間ばね板10間において圧縮されて上記止水材層9′を形成する。
【0030】
上記平シート7と平ネット8と中間ばね板10は平重ねブラシ束の毛先端面に到達するまで延在する。図3Aに示すように、上記平シート7と平ネット8の重合体と中間ばね板10間を平重ねブラシ束の毛先側から拡開し、該拡開間隙内へ上記止水材9を充填する。
【0031】
図1Bに示すように、上記止水材9は押え金物5,5′の拘束が解かれた押え金物開口部から平重ねブラシ束の先端に亘る領域13に充填される。
【0032】
上記平ネット8と平シート7は重合し且つ該重合体の周縁部をステップル14等で止着し貼り合わせ構造にする。又は平ネット8と平シート7を接着剤を介し貼り合わせ構造にする。又は平ネット8と平シート7を縫着して貼り合わせ構造にする。上記平ネット8と平シート7の貼り合わせ体に中間ばね板10を重合し三者の重合体を形成する。
【0033】
上記ボルト又は鋲6は上記平シート7と平ネット8と中間ばね板10の基端を貫通し、上下押え金物5,5′間に平重ねブラシ束及び内外側ばね板4,3と一体に共締めする。
【0034】
又は図2A,図4Aに示すように、中間ばね板10を用いずに、織布又は合成樹脂シートから成る平シート7と平ネット8の重合体を平重ねブラシ束の重ね合わせ界面に介在し、該平ネット8とは反対側の平シート7の表面に沿い止水材9を充填する。
【0035】
図2B,図4Bに示すように、上記充填された止水材9は平シート7とこれに接する一方の平ブラシ束1間において圧縮されて上記止水材層9′を形成する。
【0036】
図4Aに示すように、上記平シート7と平ネット8の重合体と平ブラシ束1間を毛先側から拡開し、該拡開間隙内へ上記止水材9を充填する。
【0037】
図1Bに示すように、上記止水材9は押え金物5,5′の拘束が解かれた開口部から平重ねブラシ束の先端に亘る領域13に充填される。
【0038】
上記平ネット8と平シート7は重合し且つ該重合体の周縁部をステップル14等で止着し貼り合わせ構造にする。又は平ネット8と平シート7を接着剤を介し貼り合わせ構造にする。又は平ネット8と平シート7を縫着して貼り合わせ構造にし、二者8,7の重合体を形成する。
【0039】
上記ボルト又は鋲6は平シート7と平ネット8の基端を貫通し、上下押え金物5,5′間に平重ねブラシ束及び内外側ばね板4,3と一体に共締めする。
【0040】
図1乃至図4の例示において、図5A(止水材9の圧縮前)、図5B(止水材9の圧縮後)に示すように、上記平シート7とは反対側の平ネット8の表面に沿い止水材9を充填し、同シート7の表面に止水材層9′を形成することができる。この止水材9は平ネット8の網目内へ押し込まれて平シート7の表面に押し付けられ、同表面に均一な止水材層9′を形成する。
【0041】
図6に示すように、上記止水材層9′を形成する止水材9は織布又は不織布から成る平シート7の表層部に含浸されて含浸層11を形成し、止水機能を向上する。
【0042】
又図7に示すように、上記織布又は不織布から成る平シート7は、防水剤中にドブ付けする等して同防水剤を含浸せしめると共に、周面を被覆する防水層12を形成し、これを上記平ネット8や中間ばね板10と一緒に平重ねブラシ束の重ね合わせ界面に介在する。
【0043】
上記図1乃至図5に示す何れの止水構造においても、上記平ネット8は平シート7のバックアップ手段として機能し、平シート7は繊維入りグリースに代表される止水材9(止水材層9′)のバックアップ手段として機能する。よって平シート7の表面に均一な厚みの、ムラのない止水材層9′を形成し、健全なる止水機能を発揮せしめることができる。
【0044】
加えて止水材9を充填する際における、上記平ネット8と平シート7の重合体を手掛かりにして上下平ブラシ束1の毛先からの仕分け拡開が容易に行え、止水材を作業性良く充填できる。
【0045】
又上記平ネット8と平シート7の貼り合わせ構造により、平重ねブラシ束の平重ね界面に平シート7を介在する際の同シート7の折り込みや、偏在、シワ生成を有効に防止し、平ブラシ束1間に平面状態に適正に介在し、上記止水材9と協働した止水効果を有効に発揮せしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】A,Bはシールド掘進機におけるテールシールブラシの第1実施形態を示す縦断面図であり、Aは止水材充填状態、Bは同充填後の止水材圧縮状態を示す。
【図2】A,Bはシールド掘進機におけるテールシールブラシの第2実施形態を示す縦断面図であり、Aは止水材充填状態、Bは同充填後の止水材圧縮状態を示す。
【図3】A,Bはシールド掘進機におけるテールシールブラシの図1に示す第1実施形態における横断面図であり、Aは止水材充填状態(拡開状態)、Bは同充填後の止水材圧縮状態を示す。
【図4】A,Bはシールド掘進機におけるテールシールブラシの図2に示す第2実施形態における横断面図であり、Aは止水材充填状態(拡開状態)、Bは同充填後の止水材圧縮状態を示す。
【図5】上記第1、第2実施形態における止水材の他の充填例を示し、Aは止水材充填状態、Bは同充填後の止水材圧縮状態を示す。
【図6】平シート表面に形成した止水材層の含浸状態を示す要部断面図。
【図7】防水剤を含浸し被覆した平シートを示す断面図。
【図8】Aは平ネットと平シートの貼り合わせ重合体を一部切欠して示す平面図、Bは同断面図。
【符号の説明】
【0047】
1…平ブラシ束、2…チャンネル材、3…外側ばね板、4…内側ばね板、5…上押え金物、5′…下押え金物、6…鋲、7…平シート、8…平ネット、9…止水材、9′…止水材層、10…中間ばね板、11…含浸層、12…防水層、13…止水材層形成領域、14…ステップル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平ブラシ束を複段に平重ねし、該平重ねブラシ束を外側ばね板と内側ばね板で挟持した構造を有するシールド掘進機におけるテールシールブラシにおいて、上記平重ねブラシ束の平重ね界面に織布又は合成樹脂シートから成る平シートと平ネットの重合体を介在し、平ネットとは反対側の平シートの表面に沿い止水材を充填し同シート表面に止水材層を形成する構成としたことを特徴とするシールド掘進機におけるテールシールブラシ。
【請求項2】
平ブラシ束を複段に平重ねし、該平重ねブラシ束を外側ばね板と内側ばね板で挟持した構造を有するシールド掘進機におけるテールシールブラシにおいて、上記平重ねブラシ束の平重ね界面に織布又は合成樹脂シートから成る平シートと平ネットの重合体を介在し、平シートとは反対側の平ネットの表面に沿い止水材を充填し同シート表面に止水材層を形成する構成としたことを特徴とするシールド掘進機におけるテールシールブラシ。
【請求項3】
上記平ネットと平シートの重合体を貼り合わせ構造にして上記平ブラシ束の平重ね界面に介在したことを特徴とする請求項1又は2記載のシールド掘進機におけるテールシールブラシ。
【請求項4】
上記平重ねブラシ束の平重ね界面に平ネットと平シートと中間ばね板の重合体を介在したことを特徴とする請求項1又は2記載のシールド掘進機におけるテールシールブラシ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−207289(P2006−207289A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21897(P2005−21897)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(591084872)昭和工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】