説明

シールド掘進機のテールシール構造およびシールド掘進機

【課題】 ワイヤブラシシールの倒伏や起立が保証され、且つ、一対のワイヤブラシシールの間の空間に充填されたシール材が流れ出さず、さらに、該空間に裏込材が吸い込まれないようにするシールド掘進機のテールシール構造、およびシールド掘進機を得る。
【解決手段】 セグメント筒状体7の外面に摺動自在なワイヤブラシシール12aがテールプレート9の内面に環状に設置され、ワイヤブラシシール12aの後端側の側面とテールプレート9の後端の内面9aとの間に発泡ウレタン11が充填され、ワイヤブラシシール12a、12b、12cの間にそれぞれ発泡ウレタン21、22が充填されている。さらに、発泡ウレタン11、21、22に発泡ウレタンを補給する発泡材補給経路32a、32b、32cが設けられている。したがって、ワイヤブラシシール12aの起伏範囲と、ワイヤブラシシール12a、12b間の空間とに裏込材が浸入することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中にトンネルや下水道等(以下「掘削坑」と総称する)を構築する際に使用されるシールド掘進機のテールシール構造およびシールド掘進機に係り、特に、掘削坑に設置されるセグメント筒状体とシールド掘進機のテール部との隙間をシールする、シールド掘進機のテールシール構造、および該テールシール構造を有するシールド掘進機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド掘進機は、地山(地盤に同じ)を掘削して掘削坑を創成する掘削手段と、該掘削手段が一端(以下「前端」と称す)に設置された筒状の本体部と、本体部の後端に延設された筒状のテール部と、円弧状のセグメント部材を筒状のセグメント筒状体に組み立てるセグメント組立手段(セグメントエレクタまたはエレクター装置に同じ)と、組み立てられたセグメント筒状体を後方に向かって押し、その反力によって本体部を前進させる押出手段(シールドジャッキに同じ)と、セグメント筒状体とテール部との隙間をシールするテールシール手段と、セグメント筒状体と掘削坑との隙間に裏込材を注入する裏込材注入手段と、掘削した土砂を機外に排出する排土手段とを有している。
【0003】
なお、以下の説明において、シールド掘進機が掘削坑を創成しながら進む方向を「前」「前方」または「前端」とし、これと反対の方向を「後」、「後方」または「後端」とする。また、筒状体である本体部を形成する板材をスキンプレートと、筒状体であるテール部を形成する板材をテールプレートと称す。
【0004】
テールシール手段は、地下水、土砂、あるいは裏込材等の本体部への浸入を防止するものであって、複数のワイヤブラシをテールプレートの内面に環状に設置したもの(以下「ワイヤブラシシール」と称す)が多用され、ワイヤブラシシールにはグリース(テールシールグリース)が詰め込まれたり、グリースが継続的に間欠注入されたりしていた。
このようなワイヤブラシシールのワイヤブラシは、テールプレートの内面に斜め後方に向かって設置され、ワイヤブラシの先端がセグメント筒状体の外面に摺動するものである。したがって、掘削坑が曲がっている場合(曲率が変動するに同じ)など、前テールプレートの内面がセグメント筒状体の外面に接近してその隙間が小さくなった場合、ワイヤブラシは斜め後方に倒れることになる。
【0005】
そして、シール効果を増すため、ワイヤブラシシールのワイヤブラシ層に半流動性シール材(炭化水素油の中に液状油脂、アスベスト及び合成繊維が混和されてなる)を充填する技術や、所定の間隔を配して一対のワイヤブラシシールを設置し、該一対のワイヤブラシシールの間に流動性の高いグリースを充填する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、グリースがセグメント筒状体の外面に付着して持ち去られることに対処するため、グリースに代えて、発泡樹脂をワイヤブラシのワイヤ部分に注入する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−190280号公報(9〜10頁、図1)
【特許文献2】特開平6−347407号公報(3〜4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および2に開示された技術は、セグメント筒状体と掘削坑との隙間に注入された裏込材が、最後端に設置されたワイヤブラシシール(以下「最後端ワイヤブラシシール」と称す)に到達しているものであって、最後端ワイヤブラシシールが裏込材のスキンプレート内への浸入を阻止するもの、換言すると、最後端ワイヤブラシシールの後面には裏込材が付着、すなわち、最後端ワイヤブラシシールの後面と掘削坑の内面との隙間には裏込材が略楔状に浸入しているものである。
【0008】
(イ)このため、テールプレートの内面がセグメント筒状体の外面に接近したとき、最後端ワイヤブラシシールを形成するワイヤブラシは、流動性の悪い裏込材あるいは固結を開始した裏込材に阻止されて倒れ難くなり、裏込材とセグメント筒状体の外面との間で挟圧(正確には挟圧されて摺動)されるという問題がある。
【0009】
(ロ)すなわち、かかる挟圧によって、ワイヤブラシシールのワイヤブラシ層に充填された半流動性シール材が押し出されて流逸するから、テールプレートの内面とセグメント筒状体の外面との距離が元に戻った際のシール性が低下していた。
(ハ)また、かかる挟圧によって、ワイヤブラシが損傷するから、テールプレートの内面とセグメント筒状体の外面との距離が元に戻った際、起立する力(復元力に同じ)が弱まりシール性が低下していた。
【0010】
(二)さらに、かかる挟圧によって、セグメント筒状体の外面はワイヤブラシによって強く引っ掻かれるから、特に、セグメント筒状体の外面が樹脂類の防水被膜によって被覆された場合には、防水被膜が破損するという問題があった。
(ホ)また、かかる挟圧によって、セグメント筒状体がシール部を通過する際の推進抵抗が増大する原因になっていた。
(ヘ)また、前記シール性の低下によって、裏込材が最後端ワイヤブラシシールの前方に浸入して、最後端ワイヤブラシシールの前方に配置されたワイヤブラシシールについても、前記(イ)〜(ニ)と同様の問題が生じていた。
【0011】
さらに、特許文献1および2に開示された技術は、ワイヤブラシシールが2条以上設けられ、一対のワイヤブラシシールの間には、流動性の高いグリースが充填されているから、テールプレートの内面がセグメント筒状体の外面に接近したとき、一対のワイヤブラシシールの間に充填されていた流動性の高いグリースは、ワイヤブラシが倒れる方向、すなわち、後端に向かって流出する。そして、再度、テールプレートの内面とセグメント筒状体の外面との距離が元に戻った際、一対のワイヤブラシシールの間の空間には周囲から、裏込材や土砂水が流れ込もうとする。
【0012】
(ト)このように、最後端ワイヤブラシシールの前面側に、裏込材が吸い込まれるように流れ込むという問題があった。
(チ)すなわち、かかる裏込材の流れ込みによって、最後端ワイヤブラシシールよりも前方に設置されたワイヤブラシシールにおいても、前記(イ)〜(二)と同様の問題が生じていた。
【0013】
(リ)さらに、最後端ワイヤブラシシールよりも前方に流れ込んだ裏込材が固結した状態で、テールプレートの内面がセグメント筒状体の外面に接近すると、セグメント筒状体の外面はかかる固結した裏込材によって強く引っ掻かれるから、特に、セグメント筒状体の外面が樹脂類の防水被膜によって被覆された場合には、防水被膜が破損するというおそれがあった。
【0014】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、テールプレートの内面がセグメント筒状体の外面に接近したときでも、ワイヤブラシが容易に倒れ、また、一対のワイヤブラシシールの間の空間に設置された潤滑剤も兼ねたシール材が流れ出さず、さらに、再度、テールプレートの内面とセグメント筒状体の外面との距離が元に戻ったとき、ワイヤブラシが容易に起立(復元)し、また、一対のワイヤブラシシールの間の空間に裏込材が吸い込まれないようにするシールド掘進機のテールシール構造、および該テールシール構造を有するシールド掘進機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明に係るシールド掘進機のテールシール構造、前端に掘削手段が設置されている本体部と該本体部の後端に延設された筒状のテールプレートとを有するシールド掘進機における、前記テールプレートの内面と前記テールプレートの内部に配置されるセグメント筒状体の外面との隙間をシールするものであって、
前記セグメント筒状体の外面に摺動自在なブラシが前記テールプレートの内面に環状に設置され、該ブラシの後端側の側面と前記テールプレートの内面との間に圧縮性部材が充填されていることを特徴とする。
【0016】
(2)また、前端に掘削手段が設置されている本体部と該本体部の後端に延設された筒状のテールプレートとを有するシールド掘進機における、前記テールプレートの内面と前記テールプレートの内部に配置されるセグメント筒状体の外面との隙間をシールする、シールド掘進機のテールシール構造であって、
前記セグメント筒状体の外面に摺動自在なブラシが、前記テールプレートの内面に複数の環状に設置され、一方の環状に設置されたブラシの側面と、該ブラシに対峙する他方の環状に設置されたブラシの側面との間に圧縮性部材が充填されていることを特徴とする。
【0017】
(3)また、前記ブラシを形成するブラシ素材の間に圧縮性部材が充填されていることを特徴とする。
【0018】
(4)また、前記本体部から前記圧縮性部材が充填された位置に、前記圧縮性部材を補給するための補給経路が設けられていることを特徴とする。
【0019】
(5)さらに、本発明に係るシールド掘進機は、地盤を掘削する掘削手段と、該掘削手段が前面に設置された筒状の本体部と、該本体部の後端に延設された筒状のテールプレートと、該テールプレートの内部に配置されるセグメント筒状体との隙間をシールするシール手段とを有するものであって、
前記シール手段が、前記(1)乃至(4)の何れかに記載のシールド掘進機のテールシール構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
よって、本発明においては、ブラシが倒れようとする範囲に圧縮性部材が充填され、該範囲への裏込材の浸入が阻止されるから、テールプレートの内面がセグメント筒状体の外面に接近したときでも、ブラシが裏込材とセグメント筒状体の外面との間で挟圧されることがなく、ブラシは容易に倒れる。
また、一対の環状に設置されたブラシ同士の間に圧縮性部材が充填され、一対の環状に設置されたブラシと、テールプレートの内面と、セグメント筒状体の外面とによって形成される空間には常に圧縮性部材が充満しているから、テールプレートの内面がセグメント筒状体の外面に接近した後、離隔する際、該空間に裏込材が吸い込まれることがない。
【0021】
さらに、ブラシ内にも圧縮性部材が充填されているから、ブラシ内に裏込材が吸い込まれることがなく、劣化や損傷が防止される。
さらに、圧縮性部材が充填されている位置に、圧縮性部材が掘進中に供給自在であるから、圧縮性部材が摩耗した場合であっても、上記効果を維持することができる。
【0022】
よって、ブラシの損傷防止、シール性の向上、防水被膜の保護、およびセグメント筒状体の推進抵抗の軽減が図られる。
なお、本発明において「圧縮性」とは、加圧された際に見掛け上の体積が収縮し、一方、加圧が開放された際に見掛け上の体積が元の体積に膨張(復元するに同じ)し、該膨張の際、周囲の液体等を吸い込まない特性を言い、たとえば、加圧された際に内在する気泡が収縮し、一方、加圧が開放された際に該気泡が元の体積に戻り、このとき、気泡からの液体の流出や気泡への液体の流入がない、発泡ウレタン等の発泡樹脂が具備する特性を言う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、まず、本発明の実施形態に係る「シールド掘進機」の全体構成を概説し、その後、「シールド掘進機のテールシール構造」について、それぞれ図を参照して説明する。なお、各図において同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0024】
(シールド掘進機)
図1は、本発明の実施形態に係るシールド掘進機の全体構成を概説するための断面図である。図1において、シールド掘進機100は、筒状の本体部1と、本体部1の前端(図中、左側)にあって地山を掘削して掘削坑を創成するカッターヘッド2と、本体部1を掘進(前進に同じ)させるためのシールドジャッキ4と、カッターヘッド2によって掘削された土砂を排出するためのスクリューコンベア5と、セグメントを環状のセグメント筒状体7に組み立てるためのエレクター装置6と、図示しない裏込材注入手段とを有している。
【0025】
そして、シールドジャッキ4は、セグメント筒状体7を後方に押し出す反力でもって本体部1を前進(掘進に同じ)させるものであるため、本体部1の前進に伴って、セグメント筒状体7は掘削坑(図示しない)に押し出される。このとき、セグメント筒状体7の外面と掘削坑の内面との間には所定の隙間があるため、該隙間に裏込材注入手段によって裏込材(図示しない)が注入されるものである。
また、地下水、土砂、あるいは裏込材が本体部1に浸入しないようにするために、シール手段10、20または30(以下「テールシール構造」と称す、これについては別途詳細に説明する)が設けられている。
したがって、テールシール構造10、20または30が後記効果を奏するから、シールド掘進機100は、長距離の掘進においても良好なシール性が維持され、セグメント筒状体7の推進抵抗が増大することがない。
【0026】
なお、図示するシールド掘進機100は一例であって本発明はこれに限定するものではない。
たとえば、カッターヘッド2は図示する中間支持タイプの他に、センター支持タイプや外周支持タイプ、あるいは図示する単軸の他に多軸であってもよい。また、カッターヘッド2には植え込み式のカッタの他に、地山の特性(複合地盤等)に対応して、ディスクカッタ(回転する)やフィッシュテール(回転中心に突設される)等が設置されてもよく、一方、コピーカッタ2c(側面に向かって進退する)が撤去されてもよい。
なお、カッターヘッド2が撤去された手掘式のシールド掘進機にも、本発明の「シールド掘進機のテールシール構造」は設置されるものである。
【0027】
また、本体部1は、前面が密閉された密閉式あるいは開放された開放式であっても、複数の筒状体が屈折自在に直列配置されたもの(中折機構を有するもの)、あるいは複数の略筒状体が並列配置されたもの(たとえば、断面略8字状)であってもよい。
また、土砂の排出機構5は図示するスクリューコンベアタイプの他に、泥水式シールドタイプであってもよい。
さらに、形成されたセグメント筒状体7を所定の形状(たとえば、真円)に保持する保持手段を設けたものであってもよい。
【0028】
(テールシール構造その1)
図2は、本発明の実施形態に係るシールド掘進機のテールシール構造その1を模式的に示す部分断面図であって、(a)は掘進前、すなわち、セグメント筒状体7が配置される前の状態を、(b)および(c)は、掘進中であって、それぞれテールプレート9の内面とセグメント筒状体7の外面とが接近した場合および離隔した場合を模式的に示している。なお、かかる接近や離隔は、セグメント筒状体7の押出方向と、本体部1の前進方向(掘進方向に同じ)が相違する場合、すなわち、掘削坑の曲率半径が変動する場合等に発生するものである。
【0029】
図2の(a)において、シールド掘進機のテールシール構造10(以下「テールシール構造10」と称す)は前記シールド掘進機100に設置されたものであって、掘進前、すなわち、セグメント筒状体7が配置される前の状態を示している。なお、参考のため、掘削中のセグメント筒状体7の平均的な位置を一点鎖線にて示す。
【0030】
テールシール構造10は、筒状の本体部1を形成する板材であるスキンプレート3の後端に延設された筒状のテールプレート9と、テールプレート9の内面に設置された3条のワイヤブラシシール12a、12b、12c(以下まとめて「ワイヤブラシシール12」と称する場合がある)と、ワイヤブラシシール12のうち最後端(図中、右側)に配置されたワイヤブラシシール12a(以下「最後端ワイヤブラシシール12a」と称す)の後方(図中、右側)に充填された発泡ウレタン11(図中、梨地にて示す、以下「最後端発泡ウレタン11」と称す)とを有している。
したがって、最後端ワイヤブラシシール12aの後端側の側面とテールプレート9の後端部の内面9aとの間には、最後端発泡ウレタン11が楔状に設置されているから、当該範囲に裏込材が浸入することがない。
【0031】
ワイヤブラシシール12a、12b、12cは、それぞれ図示しない複数のワイヤブラシ(ブラシ素材であるワイヤ(短尺の線材)が束になっている)が環状に設置されたものであって、ワイヤブラシ相互の間およびワイヤブラシを形成するワイヤの間の双方に発泡ウレタン13a、13b、13c(図中、梨地にて示す、以下「ブラシ内発泡ウレタン13a、13b、13c」と称し、まとめて「ブラシ内発泡ウレタン13」と総称する場合がある)が充填されている。
【0032】
したがって、ブラシ内発泡ウレタン13はセグメント筒状体7の外面に付着して持ち去られることもなく、最後端ワイヤブラシシール12a内への裏込材の浸入を防止するから、最後端ワイヤブラシシール12aは、可撓性が維持され(自由な倒伏および起立が持続されるに同じ)容易に倒れるため、セグメント筒状体7の外面を過剰な力でもって引っ掻くことがない。なお、最後端ワイヤブラシシール12a内のブラシ内発泡ウレタン13aと、その後方に設置された最後端発泡ウレタン11とは略一体的に挙動することになる。
【0033】
ワイヤブラシをテールプレート9に設置する要領、すなわち、ワイヤブラシシール12a、12b、12cを形成する要領は、ワイヤを束ねている金具14a、14b、14c(以下「束ね金具14a、14b、14c」と称す)を、テールプレート9に固定された設置用部材15a、15b、およびスキンプレート3の後端3cにそれぞれ溶接接合するものであるが、本発明はこれに限定するものではなく、束ね金具14a、14b、14cを機械的に設置(たとえば、テールプレート9に固定用隙間を設けてこれに嵌挿、あるいはボルトにより固定等)してもよい。
なお、本発明において、所定の本数のワイヤ(ブラシ素材に同じ)を束ねたものをワイヤブラシと称しているから、ワイヤブラシ毎に束ね金具がない場合には、所定量のワイヤブラシを集めてより大きいワイヤブラシを形成する金具、あるいは、所定量のワイヤブラシを集めてリング状に形成する金具を、束ね金具と読み替えるものである。
【0034】
また、ワイヤブラシシール12やこれを形成するワイヤブラシの構造は限定するものではなく、ワイヤブラシシール12(ワイヤブラシに同じ)の側面または中間に薄板材や網材を配置してもよく、ワイヤブラシシール12の長さ(半径方向で内側への突出量)や幅(掘進方向に平行な厚さ)、あるいは、倒れ量(テールプレート9の内面に垂直または該内面に対して傾斜する量)は適宜選定されるものである。
さらに、ワイヤブラシを形成するブラシ素材は文字通りワイヤ(短尺の線材)に限定するものではなく、可撓性を有する短冊状素材やコイル状素材等であってもよい。
【0035】
図2の(b)において、ワイヤブラシシール12は後方に向かって倒れている。すなわち、図2の(a)において、最後端ワイヤブラシシール12aの後端側の側面とテールプレート9の後端部の内面9aとの間に、最後端発泡ウレタン11が楔状に設置されて、当該範囲に裏込材が浸入することがないから、最後端発泡ウレタン11は、裏込材(固結すると圧縮不能になる)に阻まれることなく収縮している。また、テールプレート9は設置用部材15aよりも後端に向かって延長され、後端部に内面9aが形成されているから、圧縮された最後端発泡ウレタン11がテールプレート9から外れて、掘削坑の内面に摺動(当接に同じ)することがない。
【0036】
このとき、最後端ワイヤブラシシール12aは倒伏すると共に、最後端発泡ウレタン11とセグメント筒状体7の外面とに挟まれて圧縮されている。すなわち、最後端発泡ウレタン11と最後端ワイヤブラシシール12a内のブラシ内発泡ウレタン13aとは、同時に圧縮されている。
したがって、最後端ワイヤブラシシール12aの側面または先端は、セグメント筒状体7の外面に過剰な力でもって押圧されることがなく、且つ、良好なシール性が維持されることになる。
【0037】
図2の(c)において、ワイヤブラシシール12は立ち上がり、最後端発泡ウレタン11が元の形状に膨張(復元)している。すなわち、最後端ワイヤブラシシール12aの後端側の側面とテールプレート9の後端部の内面9aとの間(正確には、筒状のテールプレート9の円周方向のかかる位相における円周方向の所定範囲、図中、紙面奥行き方向の所定範囲に同じ)は拡大しているものの、当該部分には最後端発泡ウレタン11が楔状に充填されているから、当該範囲に裏込材が浸入することがない。
【0038】
すなわち、最後端発泡ウレタン11に内在する気泡は、かかる復元の際、周囲から液体等を吸い込まないから、当該部分に裏込材が浸入することがない。また、同様に、最後端ワイヤブラシシール12a内にも裏込材が浸入することがない。
よって、最後端ワイヤブラシシール12aは可撓性が維持され、容易に立ち上がるため、ワイヤブラシシール12aの側面または先端はセグメント筒状体7の外面に当接し続け、良好なシール性が維持されることになる。
【0039】
さらに、再度、テールプレート9の内面とセグメント筒状体7の外面とが接近した場合、前述のように最後端発泡ウレタン11は圧縮性を維持し、最後端ワイヤブラシシール12aは可撓性を維持し、さらに、最後端ワイヤブラシシール12aが倒れる範囲には裏込材が浸入していないから、最後端ワイヤブラシシール12aは容易に倒れ(図2の(b)参照)、良好なシール性が維持されると共に、最後端ワイヤブラシシール12aの損傷防止およびセグメント筒状体7の外面の引っ掻防止が図られる。
【0040】
なお、以上の説明において、最後端発泡ウレタン11およびブラシ内発泡ウレタン13は掘進前、すなわち、セグメント筒状体7が配置される前に充填されているが、本発明はこれに限定するものではなく、セグメント筒状体7が配置された後、すなわち、掘進が開始され、セグメント筒状体7が本体1から後方に押し出され状態で充填されてもよい。
また、かかる充填の要領は限定するものではなく、最後端発泡ウレタン11については、吹き付け、流し込み、塗布、あるいは貼り付け等、ブラシ内発泡ウレタン13については、注入、浸漬等何れであってもよい。
さらに、圧縮性部材として発泡ウレタンを採用しているが、本発明はこれに限定するものではなく、加圧された際に見掛け上の体積が収縮し、一方、加圧が開放された際に見掛け上の体積が元の体積に膨張(復元)し、該膨張に際して周囲の液体等を吸い込まない特性(本発明において「圧縮性」と称している)を具備するものであれば何れであってもよい。
【0041】
(テールシール構造その2)
図3は、本発明の実施形態に係るシールド掘進機のテールシール構造その2を模式的に示す部分断面図であって、(a)は掘進前、(b)掘進中にテールプレート9の内面とセグメント筒状体7の外面とが接近した場合、(c)は掘進中にテールプレート9の内面とセグメント筒状体7の外面とが離隔した場合を模式的に示している。
【0042】
図3の(a)において、シールド掘進機のテールシール構造20(以下「テールシール構造20」と称す)は前記シールド掘進機100に設置されたものである。
テールシール構造20は、スキンプレート3の後端に延設された筒状のテールプレート9と、テールプレート9の内面に設置された3条のワイヤブラシシール12a、12b、12c(以下まとめて「ワイヤブラシシール12」と称する場合がある)と、最後端(図中、右側)に配置されたワイヤブラシシール12a(以下「最後端ワイヤブラシシール12a」と称す)と、最後端ワイヤブラシシール12aの前方のワイヤブラシシール12b(以下「中間ワイヤブラシシール12b」と称す)との間に設置された発泡ウレタン21(図中、梨地にて示す、以下「中間発泡ウレタン21」と称す)とを有している。
【0043】
図3の(b)において、ワイヤブラシシール12は後方に向かって倒れている。
すなわち、テールプレート9の内面とセグメント筒状体7の外面との接近によって、中間発泡ウレタン21(中間ワイヤブラシシール12bの近くにあるもの)は、中間ワイヤブラシシール12bの後端側の側面とテールプレート9の中間の内面9bとによって楔状に圧縮され、中間発泡ウレタン21(中間ワイヤブラシシール12bから遠くにあるもの)は、セグメント筒状体7の外面と最後端ワイヤブラシシール12aの束ね金具14aとによって略矩形状に圧縮(圧縮量が略均等に圧縮)されている。
【0044】
このとき、中間ワイヤブラシシール12b内のブラシ内発泡ウレタン13bも、中間発泡ウレタン21と略一体的に圧縮されている。
したがって、中間ワイヤブラシシール12bの側面または先端がセグメント筒状体7の外面に過剰な力でもって押圧されることがなく、中間ワイヤブラシシール12bの側面または先端および中間発泡ウレタン21と、セグメント筒状体7の外面との当接によって良好なシール性が維持される。
【0045】
図3の(c)において、ワイヤブラシシール12は立ち上がり、中間発泡ウレタン21は再度膨張(復元に同じ)している。すなわち、テールプレート9の内面とセグメント筒状体7の外面との離隔によって、最後端ワイヤブラシシール12aの前端側の側面と、テールプレート9の中間の内面9bと、中間ワイヤブラシシール12bの後端側の側面と、セグメント筒状体7の外面とによって形成される空間(正確には、筒状のテールプレート9の円周方向のかかる位相における円周方向の所定範囲、図中、紙面奥行き方向の所定範囲に同じ)は拡大するものの、当該空間には中間発泡ウレタン21が設置されているから、当該空間に裏込材が吸い込まれることがない。
【0046】
すなわち、中間発泡ウレタン21に内在する気泡は、かかる復元の際、周囲から液体等を吸い込まないから、当該部分に裏込材が浸入することがない。また、同様に、ワイヤブラシシール12内にもブラシ内発泡ウレタン13が充填されているから、これに裏込材が浸入することもない。
よって、ワイヤブラシシール12の可撓性が維持され、かかる立ち上がりや復元が裏込材によって阻害されることがないから、ワイヤブラシシール12は容易に立ち上がり、且つ、中間発泡ウレタン21は再度膨張するため、ワイヤブラシシール12aの前面または先端はセグメント筒状体7の外面に当接し、且つ、中間発泡ウレタン21もセグメント筒状体7の外面に当接し、当該部分においてシール性が維持される。
【0047】
さらに、再度、テールプレート9の内面とセグメント筒状体7の外面とが接近した場合ワイヤブラシシール12およびワイヤブラシシール12同士の間の空間に、裏込材が浸入していないことから、ワイヤブラシシール12の可撓性および中間発泡ウレタン21の圧縮性が維持されるため、継続して良好なシール性が維持され、且つ、ワイヤブラシシール12およびセグメント筒状体7の損傷が防止される(図3の(b)参照)。
なお、ワイヤブラシシール12同士の間の空間に裏込材が浸入し、これが固結した場合、かかる固結した裏込材はセグメント筒状体7に強く押し付けられ、その外面を引っ掻いていたところ、本発明によって、かかる強圧や引っ掻きが解消するから、ブラシ等の保全や防水被覆(ラッピング)の保護に顕著な効果が得られる。
【0048】
なお、以上は、最後端ワイヤブラシシール12aと中間ワイヤブラシシール12bとの間にのみ、中間発泡ウレタン21を充填しているが、本発明はこれに限定するものではなく、中間ワイヤブラシシール12bの前方に配置されたワイヤブラシシール12c(以下「前端ワイヤブラシシール12c」と称す)と中間ワイヤブラシシール12bとの間にも発泡ウレタン(以下「前端発泡ウレタン」と称する場合がある)を充填してもよい。
また、ワイヤブラシシール12を4条以上配置する場合には、同様に、ワイヤブラシシール12同士の間に発泡ウレタンを充填してもよい。
なお、テールシール構造20に前述のテールシール構造10(最後端発泡ウレタン11を充填する)を併用すれば、さらにシール性が向上することは明らかである。
【0049】
(テールシール構造その3)
図4は、本発明の実施形態に係るシールド掘進機のテールシール構造その3を模式的に示す部分断面図であって、(a)は掘進前、(b)掘進中にテールプレート9の内面とセグメント筒状体7の外面とが接近した場合、(c)は掘進中にテールプレート9の内面とセグメント筒状体7の外面とが離隔した場合を模式的に示している。図4において、シールド掘進機のテールシール構造30(以下「テールシール構造30」と称す)は前記シールド掘進機100に設置されたものである。
テールシール構造30は、スキンプレート3の後端に延設された筒状のテールプレート9と、テールプレート9の内面に設置された、最後端ワイヤブラシシール12aと、中間ワイヤブラシシール12bと、前端ワイヤブラシシール12cと、最後端発泡ウレタン11と、中間発泡ウレタン21と、前端発泡ウレタン22とを有している。
【0050】
そして、テールプレート9の後端の内面9a(最後端発泡ウレタン11が充填されている)には発泡ウレタンを噴出自在な発泡材補給口31aが設けられ、発泡材補給口31aに向けて本体1(スキンプレート3に同じ)内から発泡ウレタンを補給するための発泡材補給経路32aが設けられている。
したがって、本体1内に設置された図示しない発泡材圧送手段によって、発泡ウレタンが最後端発泡ウレタン11に補給されるから、最後端発泡ウレタン11がセグメント筒状体7との摺動(図4の(a)、(b)参照)によって、摩耗した場合であっても補給されるから、裏込材の浸入防止効果やシール効果が低下することがない。よって、長距離におよぶ掘削坑であっても、シール性が維持されることになる。
なお、発泡材補給口31aはテールプレート9の円周方向に通常複数箇所設けられるものであって、シール性が低下した際、あるいは所定の時間毎に間欠的に補給されるものである。
【0051】
さらに、テールプレート9の中間の内面9b(中間発泡ウレタン21が充填されている)、およびテールプレート9の前端の内面9c(前端発泡ウレタン22が充填されている)に、それぞれ発泡ウレタンを噴出自在な発泡材補給口31b、31cが設けられ、発泡材補給口31b、31cに向けて本体1(スキンプレート3に同じ)内から発泡ウレタンを補給するための発泡材補給経路32b、32cが設けられている。
したがって、前述の最後端発泡ウレタン11と同様に、中間発泡ウレタン21および前端発泡ウレタン22が摩耗した場合でも発泡ウレタンが補給されるから、長時間にわたって裏込材の浸入防止効果やシール効果が維持されるものである。
【0052】
なお、発泡材補給口31a、31b、31cの配置形態(形状、大きさ、個数等)および発泡ウレタンの補給要領は限定するものではなく、発泡材補給口31a、31b、31cごとに同様でも相違してもよい。また、最後端発泡ウレタン11、中間発泡ウレタン21および前端発泡ウレタン21の全てに発泡ウレタンを補給する代わりに、何れか1または2に限って選択的に補給してもよい。
さらに、ワイヤブラシシールの数量は3条に限定するものではなく、4条以上であってもよく、前述のテールシール構造10またはテールシール構造20(4条以上のワイヤブラシシールが配置、または2箇所以上に中間発泡ウレタンが充填される場合を含む)に対しても、かかる発泡ウレタンの補給手段は設置されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように本発明によれば、各種シールド掘進機におけるテールシール構造として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係るシールド掘進機の全体構成を概説する断面図。
【図2】本発明の実施形態に係るシールド掘進機のテールシール構造その1を模式的に示す部分断面図であって、(a)は掘進前、(b)は接近時、(c)は離隔時。
【図3】本発明の実施形態に係るシールド掘進機のテールシール構造その2を模式的に示す部分断面図であって、(a)は掘進前、(b)は接近時、(c)は離隔時。
【図4】本発明の実施形態に係るシールド掘進機のテールシール構造その3を模式的に示す部分断面図であって、(a)は掘進前、(b)は接近時、(c)は離隔時。
【符号の説明】
【0055】
1 シールド掘進機
2 カッターヘッド
2c コピーカッタ
3 スキンプレート
3c 後端
4 シールドジャッキ
5 スクリューコンベア
6 エレクター装置
7 セグメント筒状体
9 テールプレート
9a 後端の内面
9b 中間の内面
9c 前端の内面
10 テールシール構造その1
11 最後端発泡ウレタン
12a 最後端ワイヤブラシシール
12b 中間ワイヤブラシシール
12c 前端ワイヤブラシシール
13 ブラシ内発泡ウレタン
13 ブラシ内発泡ウレタン
13a ブラシ内発泡ウレタン
13b ブラシ内発泡ウレタン
14a 束ね金具
14b 束ね金具
14c 束ね金具
15a 設置用部材
15b 設置用部材
20 テールシール構造その2
21 中間発泡ウレタン
22 前端発泡ウレタン
30 テールシール構造その3
31a 発泡材補給口
31b 発泡材補給口
31c 発泡材補給口
32a 発泡材補給経路
32b 発泡材補給経路
32c 発泡材補給経路
100 シールド掘進機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端に掘削手段が設置されている本体部と該本体部の後端に延設された筒状のテールプレートとを有するシールド掘進機における、前記テールプレートの内面と前記テールプレートの内部に配置されるセグメント筒状体の外面との隙間をシールする、シールド掘進機のテールシール構造であって、
前記セグメント筒状体の外面に摺動自在なブラシが前記テールプレートの内面に環状に設置され、該ブラシの後端側の側面と前記テールプレートの内面との間に圧縮性部材が充填されていることを特徴とするシールド掘進機のテールシール構造。
【請求項2】
前端に掘削手段が設置されている本体部と該本体部の後端に延設された筒状のテールプレートとを有するシールド掘進機における、前記テールプレートの内面と前記テールプレートの内部に配置されるセグメント筒状体の外面との隙間をシールする、シールド掘進機のテールシール構造であって、
前記セグメント筒状体の外面に摺動自在なブラシが、前記テールプレートの内面に複数の環状に設置され、一方の環状に設置されたブラシの側面と、該ブラシに対峙する他方の環状に設置されたブラシの側面との間に圧縮性部材が充填されていることを特徴とするシールド掘進機のテールシール構造。
【請求項3】
前記ブラシを形成するブラシ素材の間に圧縮性部材が充填されていることを特徴とする請求項1または2記載のシールド掘進機のテールシール構造。
【請求項4】
前記本体部から前記圧縮性部材が充填された位置に、前記圧縮性部材を補給するための補給経路が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のシールド掘進機のテールシール構造。
【請求項5】
地盤を掘削する掘削手段と、該掘削手段が前面に設置された筒状の本体部と、該本体部の後端に延設された筒状のテールプレートと、該テールプレートの内部に配置されるセグメント筒状体との隙間をシールするシール手段とを有するシールド掘進機であって、
前記シール手段が、請求項1乃至4の何れかに記載のシールド掘進機のテールシール構造であることを特徴とするシールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−118237(P2006−118237A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307865(P2004−307865)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】