説明

シールド掘進機のテールシール

【課題】テールシールの止水性能を維持しつつ、耐久性を向上させる。
【解決手段】シールド掘進機1を構成する筒状のテールプレート4に設けられ、テールプレート4の内部に配置されたセグメント覆工体6とテールプレート4との間の隙間をシールする、シールド掘進機のテールシール11であって、テールシール11は、隙間をシールするためのシール本体17、及びシール本体17が取り付けられたベース部材18からなるシール部材12と、シール部材12をテールプレート4に取り付けるための取付部材16とを備え、 前記シール本体17を、独立気泡を有するゴム材料により形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機を構成するテールプレートと該シールド掘進機の中で組み立てられたセグメント覆工体との間をシールするためのテールシールに関する。
【背景技術】
【0002】
地山にトンネルを築造する工法の一つとして、シールド工法が従来から知られている。シールド工法は、シールド掘進機を用いてトンネルなどを築造する工法である。一般に、シールド掘進機は、前面にカッターヘッドを備え、カッターヘッドよりも後方に円筒状のシールドフレーム及びテールプレートを備えており、シールド掘進機内で作業者が作業をすることができるように構成されている。シールド掘進機は、トンネルを築造する場合には、カッターヘッドを回転させて掘削を行い、シールドフレーム及びテールプレート内で複数のセグメントを組み上げて、セグメント覆工体を形成する。
【0003】
通常は、セグメント覆工体は、外径がシールドフレーム及びテールプレートの内径よりも小径に形成されるため、シールドフレーム及びテールプレートとセグメント覆工体との間には隙間が生じ、この隙間からシールド掘進機の内部に地下水や土砂、泥水等が浸入するおそれがあった。そのため、従来のシールド掘進機は、地下水や土砂、泥水等がシールド掘進機の内部に浸入することを防止するためのテールシールをテールプレートに設けている。
【0004】
テールシールは、シールドフレームとセグメント覆工体との間の隙間から地下水や泥水等が浸入することを防止するためのものであり、可撓性を有する保護板の間に多数本のワイヤーを植え込んだワイヤーブラシからなるものが従来から広く知られている。例えば、特許文献1には、ワイヤーブラシにグリースなどの半固体状の止水剤を湿潤させて、先端をセグメント覆工体の外周面に当接させることで、地下水などの浸入を防止するものが開示されている。また、特許文献2には、ワイヤーブラシのワイヤー部分に発泡樹脂を注入したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−4383号公報
【特許文献2】特開平9−78990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のテールシールは、ワイヤーブラシの先端がセグメント覆工体の外周面と摺接する際、地山とセグメント覆工体との隙間に介在する細砂、土砂又は裏込材等(以下、単に裏込材等という。)をワイヤーブラシ中に取り込みやすく、一定量の裏込材等をワイヤーブラシ中に取り込んだ後は、該ワイヤーブラシ中に裏込材等が取り込まれなくなり、ワイヤーブラシの外部に裏込材等が蓄積されやすかった。また、裏込材等を取り込んだワイヤーブラシは、全体として変形しにくくなりやすかった。そのため、特許文献1に記載のテールシールは、掘進時にセグメント覆工体の外周面とテールプレートとの間の隙間が小さくなった場合には、隙間の変化に追随して変形することができず、外部に蓄積されたゴミとテールプレートの内周面との間で挟まってしまい、該ワイヤーブラシに過大な力が作用して切断するという事態が生じていた。また、特許文献1に記載のテールシールは、ワイヤーブラシが地下水等に直接触れるため、該地下水等の酸性成分等によって錆が発生してワイヤーが腐食しやすく、欠けやすかった。このように、特許文献1に記載のテールシールは、ワイヤーが切断されやすく、又は欠けやすいので、一つのテールシールによる掘進距離を長くすること難しいという問題がある。
【0007】
また、止水性能が低下したテールシールは、新しいものと交換してシールドフレーム内での作業の安全性を確保しなければならないが、特許文献1に記載のテールシールは、この交換頻度が多くなってしまい、交換作業の手間がかかるのみならず、交換に要するコストも増加してしまうという問題がある。
【0008】
特許文献2に記載のテールシールは、ワイヤーブラシのワイヤー部分に発泡樹脂を注入することで、耐久性を向上させることができる可能性はあるものの、ワイヤーブラシのワイヤー部分に発泡樹脂を注入しなければならないので、コストが大幅に増加してしまうという問題がある。また、特許文献2に記載のテールシールは、ワイヤーブラシが保護板で挟まれている部分はワイヤーが密集しており、注入した発泡樹脂がワイヤーブラシの根本部分まで完全に行き渡らないおそれがある。そのため、特許文献2に記載のテールシールは、ワイヤーブラシの根本部分が地下水等に直接触れて錆びてしまい、ワイヤーが根元から欠けてしまうおそれがあるという問題もある。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、耐久性に優れ、かつ製造時及び交換時のコストを低く抑えることができ、さらに作業者の作業負担を軽減することが可能な、シールド掘進機のテールシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(1)シールド掘進機を構成するテールプレートに設けられ、該テールプレートの内部に配置されたセグメント覆工体と該テールプレートとの間の隙間をシールする、シールド掘進機のテールシールであって、前記テールシールは、前記隙間をシールするためのシール本体、及び該シール本体が取り付けられたベース部材からなるシール部材と、前記シール部材を前記テールプレートに取り付けるための取付部材と、を備え、前記シール本体は、独立気泡を有するゴム材料により形成されていることを特徴とするシールド掘進機のテールシール、
(2)シール本体が基端部から先端部へ行くにつれて厚肉になるように形成されている上記(1)記載のシールド掘進機のテールシール、
(3)ベース部材がシール本体よりも幅広に形成されている上記(1)又は(2)記載のシールド掘進機のテールシール、
(4)ベース部材がシール本体の幅方向一方側に延出するように形成されている上記(3)記載のシールド掘進機のテールシール、
(5)シールド掘進機のテールシールは、複数のシール部材が積層されて構成されており、互いに重なり合うシール部材の間にシール材が注入されている上記(1)〜(4)のいずれかに記載のシールド掘進機のテールシール、
(6)シール本体は、該シール本体の先端が階段状に形成されている上記(1)〜(5)のいずれかに記載のシールド掘進機のテールシール、
を要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シール本体が独立気泡を有するゴム材料により形成されているので、地下水等の酸性成分等による影響を受けることがなく、またシール本体が裏込材等を内部に取り込まずに変形しやすい状態で掘進させることができるので、シール本体の耐久性を大幅に向上させて、一つのテールシールによる掘進距離を長くすることが可能になる。また、一つのテールシールによる掘進距離を長くすることにより、テールシールの交換頻度を少なくすることができ、交換に要するコストを低減することが可能になるとともに、交換時の手間を低減して作業者の作業負担を軽減することが可能になる。さらに、本発明によれば、独立気泡を有するゴム材料でシール本体を形成することで、製造コストをも低くすることが可能になる。
また、本発明によれば、シール本体をセグメント覆工体と接触する先端部へ行くにつれて厚肉になるように形成したので、地下水等によって付与される力に対するテールシールの強度を向上させることができる。そのため、地下水等がシールドフレーム内に浸入することをより確実に防止することができ、シールドフレーム内における作業者の安全性を確保することが可能になる。また、テールプレートに対してテールシールを複数段設けた場合に、これらテールシール同士の間に注入するシーリング剤の注入量を少なくすることができるので、コストを低減することも可能になる。
また、本発明によれば、ベース部材がシール部材よりも幅広に形成されているので、テールシールをテールプレートに取り付ける際に、互いに隣接するシール部材同士を一体化することができる。そのため、止水性能をさらに向上させることが可能になる。
また、本発明によれば、複数のシール部材を積層してテールシールを構成し、互いに重なり合うシール部材の間にシーリング材を注入することでテールシールの止水性能をさらに向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るテールシールが取り付けられるシールド掘進機の概略構成を表した断面図である。
【図2】本実施の形態に係るテールシールの外観構成を表す外観斜視図である。
【図3】(a)はテールシールの正面図であり、(b)はテールシールの側面図である。
【図4】テールシールの分解斜視図である。
【図5】テールシールをテールプレートに取り付ける手順を説明するための説明図である。
【図6】(a)は、第1の変形例に係るテールシールの構成を表した斜視図であり、(b)は、本変形例のテールシールの正面図である。
【図7】第1の変形例に係るテールシールをテールシールプレートに取り付ける手順を説明するための説明図である。
【図8】(a)は、第2の変形例に係るテールシールの構成を表した斜視図であり、(b)は、本変形例に係るテールシールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
シールド掘進機1の構成の概略を図1に基づいて説明する。図1は、本発明に係るテールシール11が取り付けられたシールド掘進機1の概略構成を表した断面図である。なお、以下に説明するシールド掘進機1の構成は一例であり、本発明に係るテールシールを使用することができるものであれば、この構成に限定されるものではない。
【0014】
本実施の形態に係るシールド掘進機1は、カッターヘッド2と、カッターヘッド2の後端に配置されたシールドフレーム3と、シールドフレーム3の後端に配置されたテールプレート4と、これらカッターヘッド2、シールドフレーム3及びテールプレート4を掘削時に前方向へ掘進させるためのシールドジャッキ5とを備えている。なお、図1中の符号6は、複数のセグメント6aを組み上げて形成されたセグメント覆工体である。
【0015】
カッターヘッド2は、地中に掘削抗を創成するためのものである。このカッターヘッド2は、従来から公知のものを任意に選択して使用することができる。例えば、カッターヘッド2としては、中間支持タイプ、センター支持タイプ又は外周支持タイプのいずれをも用いることができ、また支持軸が単軸であるもの又は多軸であるもののいずれをも用いることができる。また、カッターヘッド2は、植込み式のカッターのみならず、ディスクカッターやフィッシュテール等が設置されているものを用いることもできる。また、カッターヘッド2の構成は、これら以外の構成であってもよい。
【0016】
シールドフレーム3は、創成するトンネルの大きさに合わせて任意の大きさに形成されており、先端側にカッターヘッド2が取り付けられている。このシールドフレーム3は、従来から公知のものを任意に選択して使用することができる。例えば、シールドフレーム3としては、前面が密閉された密閉式でもよいし、前面が開放された開放式であってもよい。また、シールドフレーム3は、中折機構を有し、複数の筒状体が屈折自在に直接配置されたものでもよいし、複数の筒状体が並列配置されたものであってもよい。また、これら以外の構成であってもよい。
【0017】
テールプレート4は、シールドフレーム3の後端側に設けられており、所定の大きさで形成された板材で円筒状に形成されている。テールプレート4は、複数のセグメント6aを用いてセグメント覆工体6を組み立てるための空間を内部に有している。また、テールプレート4には、テールシール組立体7が設けられている。テールシール組立体7は、テールプレート4の内周面とセグメント覆工体6の外周面6bとの間に存在する隙間をシールして、外部に存在する地下水、土砂又は裏込め材等がシールドフレーム3内に浸入しないようにするためのものである。テールシール組立体7は、複数のテールシール11をテールプレート4の内部にリング状に取り付けて構成されており、シールドフレーム3に近い側に設けられている前側テールシール組立体7aと、この前側テールシール組立体7aよりも後端側に設けられている後側テールシール組立体7bとから構成されている。これら前側テールシール組立体7aと後側テールシール組立体7bとの間には、テールグリス等のシーリング材8が充填されている。なお、本実施の形態では、テールシール組立体7は前側テールシール組立体7aと後側テールシール組立体7bから構成される例について説明するが、テールシール組立体7を設ける段数はこれに限定されず、任意の数のテールシール組立体7を設置してもよい。
【0018】
シールドジャッキ5は、シールドフレーム3内において、後端面がセグメント覆工体6の先端面6cと当接する位置に設けられており、セグメント覆工体6に対して、該セグメント覆工体6を後端側に押し出す方向に力を付与するように構成されている。シールドジャッキ5がこの方向に力を付与すると、該シールドジャッキ5に作用する反力により、シールドフレーム3が前方に進み、掘削が行われる。
【0019】
次に、テールシール組立体7を構成するテールシール11の構成について、図2から図4に基づいて詳細に説明する。図2は、本実施の形態に係るテールシール11の外観構成を表した外観斜視図、図3は、テールシール11の外観構成を表した図で、(a)は、テールシール11の正面図、(b)は、テールシール11の側面図、図4は、テールシール11の分解斜視図である。なお、説明の便宜上、図3(b)は、後述する第1シール部材12と第2シール部材13とを離して、網体14が見えるように記載した。
【0020】
本実施の形態のテールシール11は、第1シール部材12、第2シール部材13、網体14、保護板15及び取付部材16を備えており、上から順に重ねた保護板15、第1シール部材12、網体14及び第2シール部材13を取付部材16で取付固定して構成されている。このとき、第1シール部材12と第2シール部材13とは、該第1シール部材12を構成する第1ベース部材18と第2シール部材13を構成する第2シール本体27とを対向させて、網体14を介して重ねられている。なお、本実施の形態では、シール部材が、第1シール部材12及び第2シール部材13から構成されている例について説明をするが、シール部材の数はこれに限定されず、任意の数を適宜選択して構成してもよい。
【0021】
第1シール部材12は、第1シール本体17、第1ベース部材18及び第1スペーサー部材19から構成されており、第1ベース部材18の先端寄りに第1シール本体17が配置され、第1ベース部材18の基端寄りに第1スペーサー部材19が配置されている。第1シール部材12は、基端部12aから先端部12bに向けて所定距離離れたところに屈曲部12cが形成されている。この屈曲部12cでの垂直線Vに対する屈曲角度aは、先端がセグメント覆工体6の外周面6bと接触していない時は15°〜45°の範囲で屈曲するように構成されており、先端がセグメント覆工体6の外周面6bと接触している時は、10°〜50°の範囲で屈曲するように構成されている。なお、先端がセグメント覆工体6の外周面6bと接触していない場合の屈曲角度aは、20°〜40°であるのが好ましく、さらには25°〜35°であるのがより好ましい。
【0022】
第1シール本体17は、先端部17bがセグメント覆工体6の外周面6bと接触するように構成されている。この第1シール本体17は、基端部17aから先端部17bへ行くにつれて、該第1シール本体17の肉厚が厚くなるように形成されている。また、第1シール本体17は、屈曲部12cから先端部17bまでの長さがL1となるように形成されており、後述する第2シール部材13を構成する第2シール本体27の、該第2シール部材13の屈曲部13cから第2シール本体27の先端部27bまでの長さL2よりも短くなるように形成されている。
【0023】
また、第1シール本体17は、下面の中央部が第1ベース部材18の上面に接着剤等によって接着固定されており、中央部に隣接する左右両端部は第1ベース部材18との間に隙間が形成できるように構成されている。これは、複数のテールシール11をテールプレート4に取付固定する際に、互いに隣接するテールシール11の第1ベース部材18´,18´´(図5参照)の端部を該第1シール本体17と第1ベース部材18との間に侵入させることができるようにするためである。なお、この隙間は、第1シール本体17と、互いに隣接する第1シール本体17´,17´´(図5参照)とが密着する位置まで第1ベース部材18´,18´´の端部が侵入できればよく、接着剤により接着固定されない部分の幅は任意に選択することができる。なお、第1シール本体17は、予め所定の形状に成形したものを接着剤等により第1ベース部材18に接着してもよいし、加硫成型時に第1ベース部材18に対して直接取り付けてもよい。また、これら以外の方法で第1シール本体17を第1ベース部材18に取り付けてもよい。
【0024】
この第1シール本体17は、独立気泡を有するゴム材料で形成されている。このゴム材料は、発泡材及び架橋剤を混練して構成されており、発泡材の作用により、ゴム材料中に独立気泡が形成されるように構成されている。この独立気泡を有するゴム材料としては、例えばスポンジゴムが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、第1のシール部材に使用可能なゴム材料としては、天然ゴム、クロロプレンゴム(CRゴム)、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ネオプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム等の合成ゴムからなる通常のゴム材料のいずれでもよい。このゴム材料には、従来から公知の発泡材、加硫剤等が添加配合される。なお、本発明で使用するゴム材料は、摺動時に摩耗しにくく、耐久性に優れているものであれば、適宜選択してよい。また、第1シール本体17に使用するゴム材料は、第2シール本体27と同じものを使用してもよいし、第2シール本体27とは異なるものを使用してもよい。
【0025】
ゴム材料に添加配合される発泡材としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、N・N´−ジメチルN・N´−ジニトロソテレフタールアミド、N・N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p,p´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、ヒドラジルカルボンアミド等が挙げられる。この発泡材の配合量は特に限定されないが、ゴム材料に亀裂や変形が生じない程度にするのが好ましい。なお、発泡材としては、通常ゴム用として使用される発泡材であれば、上記した以外のものを任意に選択して使用してもよい。また、第1シール本体17に使用する発泡材は、第2シール本体27と同じものを使用してもよいし、第2シール本体27とは異なるものを使用してもよい。
【0026】
また、ゴム材料に添加配合される架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2・4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエード、2・5−ジメチル−2・5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイドなどがあり、これらは場合によりその2種以上を併用してもよい。この架橋剤の添加量は、発泡時の架橋効果反応が十分で、ゴム材料の品質を維持又は向上させることができれば、適宜設定することができる。なお、架橋剤としては、通常ゴム材料に添加配合されるものであれば、上記した以外のものを任意に選択して使用してもよい。また、第1シール本体17に使用する架橋剤は、第2シール本体27と同じものを使用してもよいし、第2シール本体27とは異なるものを使用してもよい。
【0027】
第1スペーサー部材19は、金属材料からなる板状の部材である。第1スペーサー部材19は、第1ベース部材18において第1シール本体17の基端側に隣接配置されるもので、取付部材16を構成する位置決めピン25が挿通可能な位置決め孔19aが4箇所に開口形成されている。第1スペーサー部材19に用いられる金属材料としては、従来から知られているものを適宜選択して用いることが可能であるが、入手及び加工のしやすさ及び製造コストの面からは、JIS−G3101に規定される一般構造用圧延鋼材(SS材:SS400)若しくはJIS−G3141に規定される冷間圧延鋼板(SPCC)、又はJIS−G4304に規定される熱間圧延ステンレス鋼板(SUS304)若しくはJIS−G4305に規定される冷間圧延ステンレス鋼板(SUS304)を用いることが好ましい。
【0028】
第1ベース部材18は、薄板状の部材を所定の大きさに形成したものである。第1ベース部材18は、基端寄りに第1スペーサー部材19が溶接等の適宜な方法で取り付けられ、第1スペーサー部材19の先端側に第1シール本体17が接着剤等の適宜な方法で取り付けられて、隣接配置されるように構成される。第1ベース部材18は、第1スペーサー部材19が取り付けられている箇所が該第1スペーサー部材19と同じ幅になるように形成され、第1シール本体17が取り付けられている箇所が該第1シール本体17よりも幅広に形成されている。第1ベース部材18には、第1スペーサ部材19が取り付けられた時に、該第1スペーサー部材19の位置決め孔19aが位置する箇所に、位置決め孔が開口形成されている。
【0029】
第1ベース部材18に用いられる金属材料としては、テールプレート4とセグメント覆工体6との隙間の変動に伴って塑性変形しない程度の強度を有するものであれば、従来から知られているものを適宜選択して用いることが可能であるが、入手のしやすさ及び製造コストの観点からは、JIS−G4401に規定される炭素工具鋼(SK材:SK5)若しくはJIS−G4802に規定されるばね用冷間圧延鋼帯(SK5−CSP)、又はJIS−G4313に規定されるばね用ステンレス鋼帯(SUS304−CSP,SUS631−CSP)を用いることが好ましい。
【0030】
第2シール部材13は、第2シール本体27、第2ベース部材28及び第2スペーサー部材29から構成されており、第2ベース部材28の先端寄りに第2シール本体27が配置され、また第2ベース部材28の基端寄りに第2スペーサー部材29が配置されている。第2シール部材13は、基端部13aから先端部13bに向けて所定距離離れたところに屈曲部13cが形成されている。この屈曲部13cでの水平線Hに対する屈曲角度bは、先端がセグメント覆工体6の外周面6bと接触していない時は35°〜65°の範囲で屈曲するように構成されており、先端がセグメント覆工体6の外周面6bと接触している時は、30°〜70°の範囲で屈曲するように構成されている。なお、先端がセグメント覆工体6の外周面6bと接触していない場合の屈曲角度bは、40°〜60°であるのが好ましく、さらには45°〜55°であるのがより好ましい。
【0031】
第2シール本体27は、第1シール本体17を支持するように構成されている。この第2シール本体27は、基端部27aから先端部27bへ行くにつれて、該第2シール本体27の肉厚が厚くなるように形成されている。また、第2シール本体27は、屈曲部13cから先端部27bまでの長さがL2となるように形成されており、第1シール本体17における長さL1よりも長くなるように形成されている。
【0032】
また、第2シール本体27は、下面の中央部が第2ベース部材28の上面に接着剤等によって接着固定されており、中央部に隣接する左右両端部は第2ベース部材28との間に隙間が形成できるように構成されている。これは、複数のテールシール11をテールプレート4に取付固定する際に、互いに隣接するテールシール11の第2ベース部材28´,28´´(図5参照)の端部を該第2シール本体27と第2ベース部材28との間に侵入させることができるようにするためである。なお、この隙間は、第2シール本体17と、互いに隣接する第2シール本体27´,27´´(図5参照)とが密着する位置まで第2ベース部材28´,28´´の端部が侵入できればよく、接着剤により接着固定されない部分の幅は任意に選択することができる。なお、第2シール本体27は、予め所定の形状に成形したものを接着剤等により第2ベース部材28に接着してもよいし、加硫成型時に第2ベース部材28に対して直接取り付けてもよい。また、これら以外の方法で第2シール本体27を第2ベース部材28に取り付けてもよい。
【0033】
この第2シール本体27は、独立気泡を有するゴム材料で形成されている。このゴム材料は、発泡材及び架橋剤を混練して構成されており、発泡材の作用により、ゴム材料中に独立気泡が形成されるように構成されている。この独立気泡を有するゴム材料としては、例えばスポンジゴムが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、第2のシール部材に使用可能なゴム材料としては、天然ゴム、クロロプレンゴム(CRゴム)、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ネオプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム等の合成ゴムからなる通常のゴム材料のいずれでもよい。このゴム材料には、従来から公知の発泡材、加硫剤等が添加配合される。なお、本発明で使用するゴム材料は、摺動時に摩耗しにくく、耐久性に優れているものであれば、適宜選択してよい。また、第2シール本体27に使用するゴム材料は、第1シール本体17と同じものを使用してもよいし、第1シール本体17とは異なるものを使用してもよい。
【0034】
ゴム材料に添加配合される発泡材としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、N・N´−ジメチルN・N´−ジニトロソテレフタールアミド、N・N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p,p´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、ヒドラジルカルボンアミド等が挙げられる。この発泡材の配合量は特に限定されないが、ゴム材料に亀裂や変形が生じない程度にするのが好ましい。なお、発泡材としては、通常ゴム用として使用される発泡材であれば、上記した以外のものを任意に選択して使用してもよい。また、第2シール本体27に使用する発泡材は、第1シール本体17と同じものを使用してもよいし、第1シール本体17とは異なるものを使用してもよい。
【0035】
また、ゴム材料に添加配合される架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2・4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエード、2・5−ジメチル−2・5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイドなどがあり、これらは場合によりその2種以上を併用してもよい。この架橋剤の添加量は、発泡時の架橋効果反応が十分で、ゴム材料の品質を維持又は向上させることができれば、適宜設定することができる。なお、架橋剤としては、通常ゴム材料に添加配合されるものであれば、上記した以外のものを任意に選択して使用してもよい。また、第2シール本体27に使用する架橋剤は、第1シール本体17と同じものを使用してもよいし、第1シール本体17とは異なるものを使用してもよい。
【0036】
第2スペーサー部材29は、金属材料からなる板状の部材である。第2スペーサー部材29は、第2ベース部材28において第2シール本体27の基端側に配置されるもので、取付部材16を構成する位置決めピン25が挿通可能な位置決め孔29aが4箇所に開口形成されている。第2スペーサー部材29に用いられる金属材料としては、従来から知られているものを適宜選択して用いることが可能であるが、入手及び加工のしやすさ及び製造コストの面からは、JIS−G3101に規定される一般構造用圧延鋼材(SS材:SS400)若しくはJIS−G3141に規定される冷間圧延鋼板(SPCC)、又はJIS−G4304に規定される熱間圧延ステンレス鋼板(SUS304)若しくはJIS−G4305に規定される冷間圧延ステンレス鋼板(SUS304)を用いることが好ましい。
【0037】
第2ベース部材28は、薄板状の部材を所定の大きさに形成したものである。第2ベース部材28は、基端寄りに第2スペーサー部材29が溶接等の適宜な方法で取り付けられ、第2スペーサー部材29の先端側に第2シール本体27が接着剤等の適宜な方法で取り付けられて、隣接配置されるように構成される。第2ベース部材28は、第2スペーサ部材29が取り付けられている箇所が該第2スペーサ部材29と同じ幅になるように形成され、第2シール本体27が取り付けられている箇所が該第2シール本体27よりも幅広に形成されている。また、第2ベース部材28には、第2スペーサ部材29が取り付けられた時に、該第2スペーサ部材29の位置決め孔29aが位置する箇所に、位置決め孔が開口形成されている。
【0038】
第2ベース部材28に用いられる金属材料としては、テールプレート4とセグメント覆工体6との隙間の変動に伴って塑性変形しない程度の強度を有するものであれば、従来から知られているものを適宜選択して用いることが可能であるが、入手のしやすさ及び製造コストの観点からは、JIS−G4401に規定される炭素工具鋼(SK材:SK5)若しくはJIS−G4802に規定されるばね用冷間圧延鋼帯(SK5−CSP)、又はJIS−G4313に規定されるばね用ステンレス鋼帯(SUS304−CSP,SUS631−CSP)を用いることが好ましい。
【0039】
網体14は、ステンレス等の線材を網状に編み上げるか、又は鋼板などに多数の通孔を穿設して構成されているもので、第1シール部材12と第2シール部材13との間に設けられている。網体14には、位置決めピン25が挿通可能な位置決め孔14aが4箇所に開口形成されている。この網体14は、テールシール11をテールプレート4に取り付けた後、これら第1シール部材12と第2シール部材13との間にシール材を充填した際、このシール材の保水力を向上させるためのものである。特に、シール材に短繊維が混合されている場合、この短繊維が網体14に絡まることで目止めとなり、泥水等による止水力と、シール材の保水力をともに高めることができる。網体14の先端部14bは、第1シール部材12及び第2シール部材13とともに、自在に撓むことができるように構成されている。
【0040】
保護板15は、セグメント覆工体6等の外周面6bに付着した裏込材等によって第1シール部材12が破損しないように保護するためのもので、金属材料で形成された薄板で形成されている。この保護板15は、第1スペーサ部材19及び第1シール部材12と同じ幅に形成されるとともに、該第1シール部材12よりも先端部15aの位置が屈曲部12c寄りに位置するように形成されている。また、保護板15には、基端部15bに位置決め孔15cが4箇所に形成されている。保護板15に用いられる金属材料としては、テールプレート4とセグメント覆工体6との隙間の変動に伴って塑性変形しない程度の強度を有するものであれば、従来から知られているものを適宜選択して用いることが可能であるが、入手のしやすさ及び製造コストの観点からは、JIS−G4401に規定される炭素工具鋼(SK材:SK5)若しくはJIS−G4802に規定されるばね用冷間圧延鋼帯(SK5−CSP)、又はJIS−G4313に規定されるばね用ステンレス鋼帯(SUS304−CSP,SUS631−CSP)を用いることが好ましい。
【0041】
取付部材16は、上押え板36及び下押え板37を有する。上押え板36は、保護板15の上端側に配置される板状部材であり、保護板15の上に配置されたときに、第1シール部材12、第2シール部材13、網体14及び保護板15に形成された各位置決め孔と同じ位置に、位置決め孔36aが設けられている。下押え板37は、第2シール部材13の下端側に配置される部材であり、水平方向に延びる水平板部37aと、水平板部37aから垂直方向に延びる垂直板部37bと、水平板部37aから垂直方向に延出する4本の位置決めピン25とからなる。これら4本の位置決めピン25は、上記した第1シール部材12、第2シール部材13、網体14、保護板15及び上押え板36の位置決め孔を挿通可能に形成されており、これらを全て挿通したときに、該位置決めピン25の上端が上押え板36の上面と略同一となるような長さに形成されている。これら上押え板36と下押え板37とは、第2シール部材13、網体14、第1シール部材12、保護板15及び上押え板36が順次位置決めピン25に挿通した後に、位置決めピン25の上端と上押え板36とを溶接することで、第1シール部材12等が取付部材16から外れないように構成される。なお、図3(a)において、符号36bは上押え板36の基端部,符号36cは上押え板36の右端部、符号36dは上押え板36の左端部を表し、図3(b)において、符号37cは下押え板37の水平板部37aの先端部を表している。
【0042】
これら上押え板36、下押え板37に用いられる材料としては、従来から知られているものを適宜選択して用いることが可能であるが、加工及びシールド掘進機1への取り付けのしやすさの観点から、JIS−G3101に規定される一般構造用圧延鋼材(SS材:SS400)若しくはJIS−G3141に規定される冷間圧延鋼板(SPCC)、又はJIS−G4304に規定される熱間圧延ステンレス鋼板(SUS304)若しくはJIS−G4305に規定される冷間圧延ステンレス鋼板(SUS304)を用いることが好ましい。
【0043】
次に、本実施の形態に係るテールシール11の組立及びシールド掘進機1への取り付け方法を図5に基づいて説明する。図5は、テールシール11をテールプレート4へ取り付ける手順を説明する説明図であり、図3(b)に示すA方向からテールプレート11を見た状態を示したものである。なお、図3(b)では、第1シール部材12と第2シール部材13との間に隙間を設けて記載しているが、図5では、テールシール11単品の場合にはこの隙間がなく、複数のテールシール11が組み合わされた時に、第1シール部材12と第2シール部材13との間に隙間が形成されるものとして記載する。
【0044】
テールシール11をテールプレート4へ取り付ける場合には、まず第1シール部材12及び第2シール部材13を準備する。第1シール部材12の準備に際しては、第1ベース部材18に第1スペーサー部材19を溶接等によって取付固定する。そして、第1スペーサー部材19の先端側の面に合わせて、第1シール本体17を第1ベース部材18に接着固定する。第2シール部材13も、同様の方法で準備を行う。
【0045】
次に、下押え板37の位置決めピン25に第2シール部材13の位置決め孔19aを挿通させる。その後、網体14、第1シール部材12、保護板15及び上押え板36の各位置決め孔に、位置決めピン25を挿通する。そして、溶接により、位置決めピン25と上押え板36とを接合して、テールシール11を組み立てる。なお、本実施の形態では、テールシール11の組み立ては位置決めピン25と上押え板36とを溶接して接合することで行っているが、上記した通りにテールシール11が組み上げられれば、ボルトとナットを用いて組み立ててもよい。
【0046】
次に、テールシール11をテールプレート4の内周面に取り付ける(図5(a))。テールシール11をテールプレート4に取り付ける時は、まず下押え板37の底面をテールプレート4の内周面と対向させながら、これら下押え板37とテールプレート4とを重ね合わせ、その後下押え板37の先端面37cとテールプレート4、及び上押え板36の基端部36bとテールプレート4とを溶接により接合する。このとき、下押え板37を形成する金属材料とテールプレート4を形成する金属材料とを同じものにすることで、容易に溶接することができる。
【0047】
次に、先に取り付けたテールシール11と隣接するテールシール11´、11´´を取り付ける。この場合は、既にテールプレート4に取り付けられているテールシール11が存在するので、新たに取り付けるテールシール11´、11´´を図5(b)中のB方向へ移動させて、第1ベース部材18´、18´´のそれぞれを、既に取り付けられているテールシール11の第1シール本体17と第1ベース部材18との間に侵入させ、また第2ベース部材28´、28´´のそれぞれを、既に取り付けられているテールシール11の第2シール本体27と第2ベース部材28との間に侵入させる。そして、第1シール本体17に対して第1シール本体17´、17´´が密着し、第2シール本体27に対して第2シール本体27´、27´´が密着する位置に配置して、互いに突き合わされた上押え板36の左右両端部36b,36cを溶接により接合して取り付ける(図5(c))。なお、本実施の形態では、テールシール11とテールプレート4との接合、及び互いに隣接するテールシール11,11´,11´´同士の接合を溶接により行っているが、溶接以外の方法で取付固定してもよい。例えば、ボルトとナットとを螺合させて取付固定してもよいし、これ以外の方法で取付固定してもよい。
【0048】
このようにして、テールシール11を順次テールプレート4の内周面に接合して、最終的にリング状のテールシール組立体7を形成する。テールプレート4の内周面に形成されたテールシール組立体7は、各テールシール11の第1ベース部材18及び第2ベース部材28が一体化された状態になり、止水性能を向上させることが可能になる。
【0049】
次に、テールシール組立体7の第1シール部材12と第2シール部材13との間に、テールグリス等のシール材41を注入する。これにより、テールシール組立体7の止水性能を向上させることができる。また、第1シール部材12と第2シール部材13との間には、網体14が存在するので、シール材41の保水力を飛躍的に向上させることが可能になる。このようにして、シール材41を注入したテールシール組立体7は、さらにより止水性能を向上させることが可能になる。
【0050】
このようにして組み立てられたテールシール組立体7は、掘進時には先端部がセグメント覆工体6の外周面6bと確実に接触しながら移動する。そのため、シールドフレーム3における止水性能を飛躍的に向上させることが可能になる。また、このテールシール組立体7を構成するテールシール11は、シール本体17が独立気泡を有するゴム材料で形成されているので、地下水等の影響を受けて欠けることがない。そのため、第1シール本体17及び第2シール本体27の摩耗を低減することができ、掘進時における耐久性もより向上させることが可能になる。さらに、シール本体17を、独立気泡を有するゴム材料で形成することにより、シール本体17が変形しやすい状態を維持しながら掘進することができる。そのため、掘進時に堆積する裏込材等とテールプレート4の内周面との間でシール本体17が挟まって、該シール本体17に過大な力が作用して切断する事態が発生せず、一つのテールシールによる掘進距離を長くすることが可能になる。
【0051】
また、本実施の形態に係るテールシール11は、第1シール本体17及び第2シール本体27の形状が、先端部へ行くにつれて厚肉になるように形成されているので、テールシール11が地下水等の圧力によって反転し、地下水がシールドフレーム内に浸水するおそれを確実に防止することが可能になる。また、本実施の形態のようにテールシール組立体を複数段に亘って設け、これらテールシール組立体の間にグリス等のシーリング材8を注入する場合における該シーリング材8の注入量を少なくすることができ、設備のコストを抑えることも可能になる。
【0052】
また、本実施の形態に係るテールシール11は、第1ベース部材18が第1シール本体17よりも幅広に形成され、第2ベース部材28が第2シール本体27よりも幅広に形成されているので、テールシールを組み立てた時に、互いに隣接するテールシール11に形成された第1ベース部材同士、及び第2ベース部材同士を重なり合わせることができる。そのため、テールシール組立体として各テールシール11を組み立てたときに、各テールシールをより強固に一体化することができ、より止水性能を向上させることが可能になる。また、このときに、第1シール部材と第2シール部材との間にグリス等のシール材41を止水剤として注入することで、さらにより止水性能を向上させることも可能になる。
【0053】
次に、本実施の形態に係るテールシールの第1の変形例について、図6に基づいて説明する。図6は、本実施の形態に係るテールシールの変形例の構成を表した図で、(a)はテールシールの外観斜視図、(b)はテールシールの正面図である。なお、本変形例においては、先に説明したと同様の構成については説明を省略し、符号も同一のものを使用する。
【0054】
本変形例のテールシール51は、第1シール部材52と第2シール部材53とを備えており、第1シール部材52は、第1シール本体54、第1スペーサ−部材55及び第1ベース部材56を有している。また、第2シール部材53は、第2シール本体57、第2スペーサ−部材58及び第2ベース部材59を有している。
【0055】
このうち、第1ベース部材56は、第1スペーサ−部材55が取り付けられている箇所は、第1スペーサ−部材55と同じ幅になるように形成されており、第1シール本体54が取り付けられている箇所は、該第1シール本体54よりも幅広に形成されており、第1シール本体54の片側(図6(b)においては右側)から突出するように形成されている。また、図7(a)に示すように、第1シール本体54は、先端側から見た断面形状が矩形状になるように形成されており、底面が第1ベース部材56に接着固定されるように構成されている。
【0056】
第2ベース部材59は、第2スペーサ−部材58が取り付けられている箇所は、第2スペーサ部材58と同じ幅になるように形成されており、第2シール本体57が取り付けられている箇所は、該第2シール本体57よりも幅広に形成されており、第2シール本体57の片側(図6(b)においては右側)から延出するように形成されている。また、図7(a)に示すように、第2シール本体57は、先端側から見た断面形状が矩形状になるように形成されており、底面が第2ベース部材59に接着固定されるように構成されている。
【0057】
次に、本変形例に係るテールシール51の組立及びシールド掘進機1への取付方法を図7に基づいて説明する。図7は、テールシール51をシールド掘進機1のテールプレート4へ取り付ける手順を説明する説明図である。なお、本変形例に係るテールシールを組み立てる手順は先に説明したのと同様であるから、ここでは説明を省略する。
【0058】
まず、図6(a)に示すように組み立てられたテールシール51をテールプレートの内周面に取り付ける(図7(a))。テールシール51をテールプレート4に取り付ける時は、まず下押え板37の底面をテールプレート4の内周面と対向させながら、これら下押え板37とテールプレート4とを重ね合わせ、その後下押え板37の先端面37cとテールプレート4、及び上押え板36の基端部36bとテールプレート4とを溶接により接合する。このとき、下押え板37を形成する金属材料とテールプレート4を形成する金属材料とを同じにすることで、容易に溶接することができる。
【0059】
次に、先に取り付けたテールシール51と隣接するテールシール51´を取り付ける。この場合は、既にテールプレート4に取り付けられているテールシール51が存在するので、新たに取り付けるテールシール51´を図7(b)中のC方向へ移動させて、第1ベース部材56´を第1ベース部材56の上に配置し、第2ベース部材59´を第2ベース部材59の上に配置して、溶接によりテールプレート4の内周面に接合して取り付ける(図7(c))。
【0060】
同様の手順により、複数個のテールシールをテールプレート4の内周面に順次接合して、最終的にリング状のテールシール組立体7を形成する。そして、テールシール組立体7の第1シール部材52と第2シール部材53との間に、テールグリス等のシール材41を注入する。これにより、テールシール組立体7の止水性能を向上させることができる。また、網体が存在することにより、シール材41の保水力を飛躍的に向上させることが可能になり、止水性能をさらにより向上させることが可能になる。
【0061】
また、本変形例に係るテールシールは、第1シール本体54が第1ベース部材56に接着する接着面積、及び第2シール本体57が第2ベース部材59に接着する接着面積を広く確保することができる。そのため、掘進時等にテールシールに作用する力によって、第1シール本体54の第1ベース部材56からの剥離、又は第2シール本体57の第2ベース部材59からの剥離をより効果的に防止することができ、テールシールの耐久性をさらにより向上させることが可能になる。また、これにより、一つのテールシールにより可能な掘進距離を長くすることが可能になり、テールシールの交換頻度を少なくすることができ、交換時のコストを低減することが可能になるとともに、交換時の手間を低減して作業者のり軽減することが可能になる。
【0062】
次に、本実施の形態に係るテールシールの第2の変形例について、図8に基づいて説明する。図8は、本実施の形態に係るテールシールの第2の変形例の構成を表した図で、(a)はテールシールの外観斜視図、(b)はテールシールの側面図である。なお、本変形例においては、先に説明したと同様の構成については説明を省略し、符号も同一のものを使用する。
【0063】
本変形例のテールシール71は、第1シール部材72と第2シール部材73とを備えており、第1シール部材72は、第1シール本体74、第1スペーサ部材75及び第1ベース部材76を有している。また、第2シール部材73は、第2シール本体77、第2スペーサ部材78及び第2ベース部材79を有している。
【0064】
第1シール本体74には、先端の一部が切り欠かれた階段状の第1段部81が1段形成されている。第1段部81は、第1階段面81aと第1後退面81bとを有しており、これら第1階段面81aと第1後退面81bとが略直角に交わるように形成されている。第1シール本体74には、該第1シール本体74の先端面74aと第1階段面81aとの境に第1頂部82が形成され、該第1シール本体74の上面74bと第1後退面81bとの境に第2頂部83が形成されている。これら第1頂部82及び第2頂部83は、セグメント覆工体6の外周面6bと接触し、止水性能を確保するためのもので、該テールシール71をテールプレートに取り付けた時に、セグメント覆工体6の外周面6bと対向する位置に形成されている。
【0065】
第2シール本体77には、第1シール本体74と同様に、先端の一部が切り欠かれた階段状の第2段部85が1段形成されている。第2段部85は、第2階段面85aと第2後退面85bとを有しており、これら第2階段面85aと第2後退面85bとが略直角に交わるように形成されている。第2シール本体77には、該第2シール本体77の先端面77aと第2階段面77bとの境に第3頂部86が形成され、該第2シール本体77の上面77bと第2後退面85bとの境に第4頂部87が形成されている。これら第3頂部86及び第4頂部87は、第1頂部82及び第2頂部83と同様、セグメント覆工体6の外周面6bと接触し、止水性能を確保するためのもので、該テールシール71をテールプレート4に取り付けた時に、セグメント覆工体6の外周面6bと対向する位置に形成されている。
【0066】
このように構成されたテールシール71は、上記したと同様の方法によりテールプレート4に取り付けられて、テールシール組立体7となる。テールシール組立体7は、掘進時にセグメント覆工体6とテールプレート4とのクリアランスの変動に追随しながら地下水等がシールド掘進機1の内部に浸入しないようにシールしている。ここで、本変形例に係るテールシール71は、該クリアランスに応じて、セグメント覆工体6の外周面6bに対して、保護板15が接触する場合、第1シール本体74の上面74bが接触する場合、第1シール本体74の上面74b及び第1頂部82が接触する場合、第1頂部82のみが接触する場合、第1頂部82及び第2頂部83が接触する場合、というように、セグメント覆工体6の外周面6bに対してテールシール71が接触する箇所が変化する。このとき、本変形例に係るテールシール71によれば、第1シール本体74に第1段部81を形成することで第1頂部82、第2頂部83が形成されるので、複数の頂部でシールすることができ、頂部でシールする場合のシール面積をより多く確保することができる。そのため、本変形例のテールシール71によれば、該クリアランスの変化に伴う止水性能のバラつきをより低減させ、かつ止水性能をさらにより向上させることが可能になる。
【0067】
なお、本変形例に係るテールシール71では、第1段部81及び第2段部82を1段の段で形成する例について説明したが、これら第1段部81及び第2段部82の段数は1段に限定されるものではなく、任意の段数を適宜選択してよい。また、第1段部81は、第1階段面81a及び第1後退面81bが直角に交わり、第2段部85は、第2階段面85a及び第2後退面85bが直角に交わるように形成されているが、これら第1段部81及び第2段部82の形状はこれに限定されるものではない。また、本変形例のテールシールは、第1ベース部材76が第1シール本体74の左右方向両側に延出し、第2ベース部材79が第2シール本体77の左右方向両側に延出するように形成されているが、第1ベース部材76の幅を第1シール本体74の幅と同じにし、同様に第2ベース部材79の幅を第2シール本体の幅と同じにしてもよい。また、第1ベース部材76を第1シール本体に対して一方の側にのみ延出させ、第2ベース部材79を第2シール本体に対して一方の側にのみ延出させるように形成してもよい。
【0068】
本実施の形態では、第1シール部材と第2シール部材との間に網体14を設けているが、網体14は注入されるシーリング材が第1シール部材及び第2シール部材の間に留まらせる趣旨で設けているものであり、該シーリング材が第1シール部材及び第2シール部材の間に留まらせることができれば、網体14を設けなくてもよい。
【0069】
また、本実施の形態では、テールシールを第1シール部材及び第2シール部材から構成しているが、シール部材の数はこれに限定されるものではなく、適宜の数からなるシール部材によりテールシールを構成してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 シールド掘進機
6 セグメント覆工体
6a セグメント
4 テールプレート
7 テールシール組立体
8 シーリング材
11,51,71 テールシール
12,52,72 第1シール部材
13,54,73 第2シール部材
16 取付部材
17,53,74 第1シール本体
18,56,76 第1ベース部材
27,55,77 第2シール本体
28,59,79 第2ベース部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機を構成するテールプレートに設けられ、該テールプレートの内部に配置されたセグメント覆工体と該テールプレートとの間の隙間をシールする、シールド掘進機のテールシールであって、
前記テールシールは、前記隙間をシールするためのシール本体、及び該シール本体が取り付けられたベース部材からなるシール部材と、前記シール部材を前記テールプレートに取り付けるための取付部材と、を備え、
前記シール本体は、独立気泡を有するゴム材料により形成されていることを特徴とするシールド掘進機のテールシール。
【請求項2】
シール本体が基端部から先端部へ行くにつれて厚肉になるように形成されている請求項1記載のシールド掘進機のテールシール。
【請求項3】
ベース部材がシール本体よりも幅広に形成されている請求項1又は2記載のシールド掘進機のテールシール。
【請求項4】
ベース部材がシール本体の幅方向一方側に延出するように形成されている請求項3記載のシールド掘進機のテールシール。
【請求項5】
シールド掘進機のテールシールは、複数のシール部材が積層されて構成されており、
互いに重なり合うシール部材の間にシール材が注入されている請求項1〜4のいずれかに記載のシールド掘進機のテールシール。
【請求項6】
シール本体は、
シール本体の先端が階段状に形成されている請求項1〜5のいずれかに記載のシールド掘進機のテールシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−154043(P2012−154043A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11856(P2011−11856)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(306013636)東北大島工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】