説明

シールド掘進機の到達施工方法及び到達部構造

【課題】 2重の筒構造によらない簡易な構成によって、坑口リング部に取付けられたエントランスシール部材を効果的に保護してシールド掘進機を到達立坑に到達させる。
【解決手段】 坑口14の周縁部に、エントランスシール部材15が取付けられる坑口リング部16を到達立坑12の内方に突出して設けておき、坑口リング部16の内側にシールド掘進機11の先端部分を覆う大きさの筒体17を、外周面にエントランスシール部材15を密着させて設置すると共に、蓋部材18によって端面を閉塞し、且つ蓋部材18を伸縮ジャッキ19によって坑内側から支持した状態とする。坑口14を貫通させて蓋部材18までシールド掘進機11を前進させ、伸縮ジャッキ19を収縮させつつ筒体17と共にさらに前進させて、筒体17から外れた後方でエントランスシール部材15をシールド掘進機11の外郭体11bの外周面と密着させ、坑口リング部16の内側をシールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機の到達施工方法及び到達部構造に関し、特に到達立坑に到達するシールド掘進機を到達立坑の坑内に進入させる際のシールド掘進機の到達施工方法、及び該到達施工方法において用いるシールド掘進機の到達部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネル工法は、発進立坑から到達立坑に向けて、後方に順次設置したセグメントから掘進反力を得ながらシールド掘進機による掘進作業を行うことにより、発進立坑と到達立坑との間に連設配置した多数のセグメントによるトンネルを形成する工法である。またシールドトンネル工法を行うためのシールド掘進機は、泥土圧式シールド掘進機、泥水式シールド掘進機等の種々のシールド掘進機が公知である。
【0003】
シールドトンネル工法においては、シールド掘進機を到達立坑に到達させる際に、到達立坑の周囲に連続壁等によって構築された土留壁に開口形成した坑口を貫通させて、シールド掘進機を坑内に進入させることになるが、例えば坑口の周囲の地盤に地盤改良等を施すことにより、開口形成した坑口や、これを貫通するシールド掘進機の外周面と当該坑口との隙間から土砂や水が坑内に流入しないようにする工夫がなされている。また、坑口が形成される部分の土留壁を例えば貧配合のコンクリート等を用いて切削可能に形成し、シールド掘進機によって坑口部分の土留壁を直接切削させながら到達立坑に進入させる工法が採用される場合もある。さらに、トンネルの深度が深かったり地下水の水位が高い地盤においては、到達立坑の内部に水を充填しておき、これの水圧によって坑口の周囲の地盤を安定させつつシールド掘進機を到達立坑に進入させる工法が採用される場合もある。さらにまた、坑口の周縁部に支持させて、坑口を坑内側から覆う筒体を取り付けておき、この筒体の坑内側の端面を封止すると共に内部に圧気や圧力水等を充填して、坑口の周囲の地盤を安定させつつシールド掘進機を到達立坑に進入させる工法が採用される場合もある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、上記いずれのシールド掘進機の到達施工方法においても、坑口にシールド掘進機を貫通させた後に、シールド掘進機の外周面と坑口の内周面との間に介在してこれらの隙間をシールするエントランスシール部材が、例えば坑口の周縁部に沿って設けた坑口リングに支持させて取り付けられているのが一般的である。
【0005】
一方、坑口の周縁部に取り付けられたエントランスシール部材は、好ましくは内部に圧気や圧力水等の加圧流体を注入充填して膨張変形可能なゴム性の加圧チューブや、ゴム板式のパッキン等からなるものであり、シールド掘進機が改良地盤や土留壁を切削しながら坑口を貫通して行く際に、切削刃がエントランスシール部材に接触したり、掘削土砂や切削ガラがエントランスシール部材上に堆積したりするすることによって、損傷や破損を生じやすく、また土砂やガラがエントランスシール部材の内側に噛み込まれてシールド掘進機の外周面と十分に密着できなくなる場合がある。このようなことから、エントランスシール部材の損傷や破損を効果的に回避できるようにすると共に、確実なシール性が得られるようにした、シールド掘進機の到達部分に設けられるエントランス装置も開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−74292号公報
【特許文献2】特開2004−92233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のエントランス装置によれば、到達立坑の内壁面に、坑内側を閉塞した筒状のエントランス室を坑口の周縁部に支持させて取り付けると共に、エントランス室内の坑口に近接する位置に、膨張したシール作動状態と縮小した待機状態とに切換え可能なリング状のエントランスシール部材と、このエントランスシール部材の内側に配置される保護筒体とを設けたものである。そして、エントランス室の内部に圧力流体を充填した状態でシールド掘削機が坑口を通過する際に、シールド掘削機の先端を保護筒体の先端内側面に当接させてシールド掘削機と共に前進させることにより、当該保護筒体をエントランスシール部材の領域から外れた位置までスライド移動させてエントランスシール部材を露出させ、露出したエントランスシール部材を膨張させてシールド掘削機の外周面に弾接させるものである。
【0007】
特許文献1のエントランス装置によれば、坑口を貫通した後に、シールド掘削機は保護筒体によって先端部分が覆われた状態でエントランス室の内部で前進することにより、エントランスシール部材が保護筒体から外れるまでの間、保護筒体によってエントランスシール部材の切削刃や掘削土砂等との接触を効果的に回避することが可能になるが、その一方で、シールド掘削機の略全体を収容する大きさを有し、内部に圧力流体を封入する筒状のエントランス室と、これの内部に設置される保護筒体とからなる2重の筒構造を備える必要があるため、その構造や取り付け作業が複雑になると共に、施工コストが嵩むことになる。
【0008】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであり、2重の筒構造によることなく、簡易且つ安価な構成によって、坑口リング部に取り付けられたエントランスシール部材を効果的に保護しながらシールド掘進機を到達立坑に到達させることができると共に、エントランスシール部材によって坑口リング部の内側を安定した状態でシールすることのできるシールド掘進機の到達施工方法、及び該到達施工方法において用いるシールド掘進機の到達部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、到達立坑に到達するシールド掘進機を前記到達立坑の坑内に進入させる際のシールド掘進機の到達施工方法であって、前記シールド掘進機が到達する坑口の周縁部に沿って、坑口とトンネル外周面との間の隙間をシールするエントランスシール部材が取り付けられる坑口リング部を、土留壁の内側面から前記到達立坑の内方に突出して設けておき、前記坑口リング部の内側に、回転カッターを含む前記シールド掘進機の先端部分の外周面を覆う大きさの筒体を、当該筒体の外周面に前記エントランスシール部材を密着させつつ設置すると共に、該筒体の坑内側の端面を蓋部材によって閉塞し、且つ該蓋部材を伸縮ジャッキによって坑内側から押圧可能に支持した状態とし、前記坑口を貫通させて先端が前記蓋部材に当接するまで前記シールド掘進機を前進させ、前記伸縮ジャッキを収縮させつつ前記シールド掘進機を前記筒体と共にさらに前進させて、前記筒体から外れた後方で前記エントランスシール部材を前記シールド掘進機の外郭体又はセグメントの外周面と密着させることにより、前記エントランスシール部材によって前記坑口リング部の内側の隙間をシールするようにしたシールド掘進機の到達施工方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
また、本発明のシールド掘進機の到達施工方法によれば、前記シールド掘進機が前記到達立坑に到達するのに先立って、前記坑口の部分の前記土留壁をはつり取り、はつり取った部分にかかるように配置して前記エントランスシール部材よりも前記坑口側に前記筒体を取り付けた後に、当該筒体を坑内側に引き寄せて、前記坑口リング部の内側に前記筒体を設置するようにすることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明のシールド掘進機の到達施工方法によれば、前記伸縮ジャッキを収縮させつつ前記シールド掘進機を前記筒体と共にさらに前進させて、前記筒体から外れた後方で前記エントランスシール部材を前記シールド掘進機の外郭体又はセグメントの外周面と密着させたら、前記伸縮ジャッキ及び前記蓋部材が取り付けられた前記筒体を撤去した後に、前記シールド掘進機をさらに前記到達立坑の坑内に押し出すようにすることができる。
【0012】
また、本発明は、上記シールド掘進機の到達施工方法において用いるシールド掘進機の到達部構造であって、前記シールド掘進機が到達する到達立坑の坑口の周縁部に沿って、土留壁の内側面から到達立坑の内方に突出して設けられる坑口リング部と、該坑口リング部に取り付けられるエントランスシール部材と、該エントランスシール部材を外周面に密着させつつ前記坑口リング部の内側に設置され、回転カッターを含む前記シールド掘進機の先端部分の外周面を覆う大きさを有する筒体と、該筒体の坑内側の端面を閉塞する蓋部材と、該蓋部材を坑内側から押圧可能に支持する伸縮ジャッキとによって構成されるシールド掘進機の到達部構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0013】
そして、本発明のシールド掘進機の到達部構造によれば、前記エントランスシール部材は、前記坑口リング部の内周面に沿って円環状に配置され、内部に加圧流体が注入されて膨張変形する加圧チューブと、該加圧チューブの坑口側に隣接して円環状に配置される止水シール板とからなることが好ましい。
【0014】
また、本発明のシールド掘進機の到達部構造によれば、前記蓋部材の中央部分に、前記シールド掘進機の回転カッターのフィシュテール部を収容する先端突出凹部が設けられていることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明のシールド掘進機の到達部構造によれば、前記シールド掘進機の先端部分には、これの外周面から径方向外方に突出して補助ビットが設けられており、前記筒体は、該補助ビットと対応した位置に周面突出凹部を有する断面形状を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のシールド掘進機の到達施工方法、又はシールド掘進機の到達部構造によれば、2重の筒構造によることなく、簡易且つ安価な構成によって、坑口リング部に取り付けられたエントランスシール部材を効果的に保護しながらシールド掘進機を到達立坑に到達させることができると共に、エントランスシール部材によって坑口リング部の内側を安定した状態でシールすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の到達施工方法は、例えば泥土圧式シールド掘進機によるシールドトンネル工法において、図1に示すように、到達立坑12に向かってトンネル掘進するシールド掘進機11を坑口14を介して到達立坑12に到達させた後に、好ましくは到達立坑12の坑内にシールド掘進機11を引き抜いて反転させてから、当該到達立坑12を発進立坑として例えば先行形成された上り線のシールドトンネルに併設して、下り線のシールドトンネルを新たに掘進形成する際に採用されたものである。
【0018】
また、本実施形態の到達施工方法は、到達立坑12の周囲を囲んで例えばSMW(セメント・ミキシング・ウォール)工法による連続壁によって構築された土留壁13に開口形成した坑口14を貫通させて、シールド掘進機11を到達立坑12の坑内に進入させる際に、坑口14の内周面とシールド掘進機11の外周面との間の隙間から土砂や水が坑内に流入するのを防止すると共に、このような隙間からの土砂等の流入を防止するエントランスシール部材15が、シールド掘進機11の切削刃や掘削土砂等と接触して損傷したり破損したりするのを回避して、そのシール機能を効果的に発揮させることができるようにするために採用されたものである。
【0019】
そして、本実施形態のシールド掘進機の到達施工方法は、到達立坑12に到達するシールド掘進機11を到達立坑12の坑内に進入させる際の施工方法であって、シールド掘進機11が到達する坑口14の周縁部に沿って、坑口14とトンネル外周面との間の隙間をシールするエントランスシール部材15が取り付けられる坑口リング部16を、土留壁13の内側面から到達立坑12の内方に突出して設けておき、坑口リング部16の内側に、回転カッター11aを含むシールド掘進機11の先端部分の外周面を覆う大きさの筒体17を、当該筒体17の外周面にエントランスシール部材15を密着させつつ設置すると共に、筒体17の坑内側の端面を蓋部材18によって閉塞し、且つ該蓋部材18を伸縮ジャッキ19によって坑内側から押圧可能に支持した状態とする。かかる状態から、坑口14を貫通させて先端が蓋部材18に当接するまでシールド掘進機11を前進させ(図10参照)、伸縮ジャッキ19を収縮させつつシールド掘進機11を筒体17と共にさらに前進させて、筒体17から外れた後方でエントランスシール部材15をシールド掘進機の外郭体(スキンプレート)11b又はセグメント20の外周面と密着させることにより(図11参照)、エントランスシール部材15によって坑口リング部16の内側の隙間をシールするようにしたものである。
【0020】
本実施形態によれば、シールド掘進機11が到達立坑12に到達するのに先立って、図2及び図3にも示すように、坑口14が形成される部分の周縁部に沿って、土留壁13の内側面に坑口リング部16を取り付けると共に、取り付けた坑口リング部16の内方領域の土留壁13をはつり取って鏡切りを行い、坑口14を形成する。なお、鏡切を行うのに先立って、坑口12が形成される部分及びこれの周囲の外周地盤には、CJG(コラムジェット)工法等による地盤改良を行うことによって、改良地盤21を形成しておく。また、図3に示す段階では、坑口12部分の土留壁13の全厚さに亘って鏡切りを行うことなく、土留壁13の外表部分を例えば30mm程度の厚さで残してはつり取るようにする。これらによって、坑口14部分の鏡切りを例えば人力作業で行う際に、より十分な安全性が確保されることになる。
【0021】
ここで、坑口リング部16は、図14に拡大して示すように、その一方のフランジ部22aが土留壁13の内側面に固定されて、坑口12の周縁部に沿ってリング状に取り付けられるI形断面の鋼製部材22と、鋼製部材22の外側を覆うようにして横長の略長方形断面のリング状に打設形成されるコンクリート部23とからなる。鋼製部材22のリブ部22bの内側面には、坑口リング部16の内周面に沿って円環状に配置され、内部に加圧流体として例えば圧気が注入されて膨張変形する加圧チューブ24と、この加圧チューブ24の坑口側に隣接して円環状に配置される止水シール板25とからなるエントランスシール部材15が、ボルト等による固定金具26を介して取り付けられる。また、コンクリート部23には、一端が当該コンクリート部23の坑内側の端面に開閉可能に開口し、他端がエントランスシール部材15よりも坑口側において鋼製部材22のリブ部22bに開口する流動化処理土注入管27や、コンクリート部23の切欠き部分23aにおいて一端が鋼製部材22の他方のフランジ部22cに開閉可能に開口し、他端が加圧チューブ24の内部と連通するように鋼製部材22のリブ部22bに開口する圧気注入管28が、周方向の所定の位置に各々埋設設置されている。
【0022】
加圧チューブ24と止水シール板25とからなるエントランスシール部材15は、可撓変形可能な止水シール板25によって加圧チューブ24を内側から包み込むようにして、その内側面を筒体17の外周面やシールド掘進機11の外周面、或いはセグメント20の外周面に、加圧チューブ24や止水シール板25を弾性変形させつつ段階的に密着させて、これらの外周面と坑口12の内周面や坑口リング部16の内周面との間の隙間を効果的にシールする。また各外周面に密着させる際に、圧気注入管28を介して加圧チューブ24の内部に圧気を供給することにより、加圧チューブ24をさらに膨張変形させて、エントランスシール部材15による一層強固なシール性を確保することができるようになっている。
【0023】
坑口12の周縁部に沿って坑口リング部16を設置すると共に、外表部分を残して坑口12部分の土留壁13をはつり取ったら、例えば図4及び図5に示すように、坑口リング部16の内側に筒体17を配置する作業を行う。すなわち、好ましく筒体17を周方向に複数に分割した分割ピース部材を、坑口12のはつり取った部分にかかるように配置して、エントランスシール部材15よりも坑口14側でリング状に組み立てて筒体17を形成する(図4参照)。しかる後に、例えばチェーンブロック29を用いて組み立てた筒体17を到達立坑12の坑内側に引き寄せることにより、坑口リング部16の内側に筒体17を設置する(図5参照)。これによってエントランスシール部材15は、筒体17の外周面と加圧チューブ24との間に坑内側に曲折した止水シール板25を介在させつつ、筒体17の外周面に密着して配置されることになる。
【0024】
ここで、本実施形態によれば、坑口リング部16の内側に配置される筒体17は、図15に示すように、その内径がシールド掘進機11の外郭体11bの外径よりも例えば200mm程度大きくなった、略円形リング形状に形成される。また筒体17は、例えば1200mm程度の長さで形成されることにより、シールド掘進機11の先端部分において、回転カッター11aの外周面と、回転カッター11aと外郭体11bとの間の隙間部の外周と、径方向外方に突出する補助ビット30(図1参照)が設けられた外郭体11bの先端部の外周面とを、連続して覆うことが可能な長さを備えることになる。
【0025】
なお、補助ビット30は、例えばシールド掘進機11の後方部分の外周面に、裏込め注入管を配設するための配管用帯状凸部31(図1参照)がトンネルの軸方向に延設して設けられている場合に、この配管用帯状凸部31に対応する部分をシールド掘進機11の外側に食い込ませて先行して掘削しておくために、外郭体11bの先端部に径方向外方に突出して設けられる切削刃である。このような補助ビット11cがシールド掘進機11の外周面から突出して設けられている場合には、筒体17は、好ましくは補助ビット30と対応する上部の所定の位置に、周面突出凹部17aを有する断面形状を備えるように形成される(図15参照)。
【0026】
坑口リング部16の内側に筒体17を設置したら、図6に示すように、筒体17の坑内側の端面を蓋部材18によって閉塞すると共に、蓋部材18を伸縮ジャッキ20によって坑内側から押圧可能に支持した状態とする。ここで、蓋部材18は、筒体17の断面形状と略合致する正面形状を備えており、例えば筒体17の先端フランジ部17b(図15参照)とのフランジ合わせを行った後に、溶接やボルト等を用いて接合することにより、筒体17の坑内側の端面を封止した状態で筒体17に一体として取り付けられる。また蓋部材18の中央部分には、坑内側に突出する円形断面の先端突出凹部18aが設けられている。先端突出凹部18aは、到達立坑12に到達したシールド掘進機11が後述するように先端の回転カッター11bを蓋部材18の内側面に当接させるまで前進した際に、回転カッター11bのフィシュテール部11cを収容する(図10参照)。先端突出凹部18aの先端は、開閉可能な封止蓋32によって密閉封止されている。なお、封止蓋32を適宜開放して、例えば作業員が先端突出凹部18aから筒体17や坑口14の内部に立ち入ることができるようになっており、また封止蓋32を閉塞して、筒体17や坑口14の内部を密閉空間とすることができるようになっている。
【0027】
筒体17の端面を覆って設置された蓋部材18の前面には、さらに、先端突出凹部18aを除いたこれの周囲に、押圧補助部材33を適宜介在させて、バランス良く配置された複数の伸縮ジャッキ19が、蓋部材18を押圧可能に支持した状態で取り付けられる。伸縮ジャッキ19は、例えば油圧ジャッキからなり、仮設用のH形鋼等の鋼材によって簡易且つ強固に組み立てられた支持架台(図示せず。)によって支持されて、例えば坑口14と対向する部分の到達立坑12の土留壁13から支持反力を得ながら、蓋部材18を相当の押圧力で安定して支持することができるようになっている。
【0028】
また、本実施形態によれば、坑口リング部16の内側に取り付けらて筒体17の外周面に密着しているエントランスシール部材15の加圧チューブ24に、圧気注入管28を介して圧気を供給することにより、加圧チューブ24を膨張変形させて、径方向内方への付勢力を生じさせつつ、さらに強固且つ安定させた状態で筒体17の外周面に密着させるようにする。
【0029】
これらによって、本実施形態の到達施工方法を行うためのシールド掘進機の到達構造10が、シールド掘進機11が到達する到達立坑12の坑口14の周縁部に沿って、土留壁13の内側面から到達立坑12の内方に突出して設けられる坑口リング部16と、坑口リング部16に取り付けられるエントランスシール部材15と、エントランスシール部材15を外周面に密着させつつ坑口リング部16の内側に設置され、回転カッター11bを含むシールド掘進機11の先端部分の外周面を覆う大きさを有する筒体17と、筒体17の坑内側の端面を閉塞する蓋部材18と、蓋部材18を坑内側から押圧可能に支持する伸縮ジャッキ19とによって構成されて、到達立坑12に設置されることになる。
【0030】
また、本実施形態によれば、図7及び図8に示すように、設置された到達構造10の蓋部材18によって封止された筒体17及び坑口14によるの内部の空間には、好ましくは硬化性流動化処理土34を充填することにより、シールド掘進機11が到達立坑12に到達するまでの間(図9参照)、及びシールド掘進機11が坑口14を貫通して蓋部材18と当接するまでの間(図10参照)、坑口14に面した改良地盤21が崩壊しない安定した状態となるように押え付けておく。すなわち、例えば蓋部材18の先端突出凹部18aを封止する封止蓋32を開放して作業員が筒体17の内部に入り込み、鏡切りされた坑口14部分の土留壁13の残置された外表部分を、下方から上方に向けて順次はつり取ってゆく(図7参照)。好ましくは上下方向に複数分割した所定の高さまではつり取ったら、作業員がその都度筒体17の外に出て退避した後に、坑口リング部16の上端部に配置した流動化処理土注入管27から内部の空気抜きを行いつつ、坑口リング部16の下部に配置した流動化処理土注入管27から硬化性流動化処理土34を所定の高さまで注入する。注入した硬化性流動化処理土34が硬化したら、再び作業員が内部に入り込み、坑口12部分の土留壁13の上方の外表部分をはつり取った後に、作業員が退避して硬化性流動化処理土34を筒体17及び坑口14の内部に注入充填して硬化させる(図8参照)。これによって、坑口14に面した改良地盤21を、硬化した硬化性流動化処理土34により安定した状態で押え付けておくことが可能になる。
【0031】
ここで、硬化性流動化処理土34としては、好ましくは、例えば貧配合のモルタルを混合して流動化状態とした混合処理土を用いることができる。このような硬化性流動化処理土34は、流動化処理土注入管27を介して注入するのに十分な流動性を備えると共に、注入後に速やかに硬化して、人が乗るのに十分な圧縮強度と、シールド掘進機11の回転カッター11bによって容易に切削可能な切削強度とを備えるものである。なお、坑口14に面した改良地盤21を安定した状態で押え付けておくには、蓋部材18によって封止された筒体17の内側に、圧気や圧力水等の加圧流体を注入充填しておく方法を採用することもできるが、筒体17の内側に硬化性流動化処理土34を充填して硬化させておくことにより、さらに強固且つ安定した状態で坑口14に面した改良地盤21を押え付けておくことが可能になる。
【0032】
上述のようにして到達構造10を設置したら、図9に示すように、到達立坑12に向けてシールド掘進機11を前進させ、その先端部分が坑口14を貫通することにより、シールド掘進機11を到達立坑12に到達させる。すなわち、本実施形態によれば、シールド掘進機11は、先端の回転カッター11aによって改良地盤21を切削すると共に、シールドジャッキ11dを伸張して後方に組み立てたセグメント20から掘進反力を得ながら前進し(図10参照)、さらに坑口14及び筒体17の内部に充填された硬化性流動化処理土34を切削しながら坑口14を貫通して、図10に示すように、その回転カッター11aの先端が蓋部材18の内側面に当接するまで前進する。
【0033】
シールド掘進機11の先端が蓋部材18の内側面に当接したら、回転カッター11aの回転を止め、図11に示すように、蓋部材18の前方に配置した伸縮ジャッキ19を収縮させつつシールドジャッキ11dを伸張して、エントランスシール部材15が筒体17の外周面の後方に外れる位置まで、シールド掘進機11を筒体17と共にさらに前進させる。これによって、筒体17の外周面に密着していたエントランスシール部材15は、径方向内方への付勢力によってその断面形状を内側に拡大させながらシールド掘進11の外郭体11bの外周面に密着し、坑口リング部16の内側の外郭体11bとの間の隙間をシールする。また外郭体11bの外周面に密着しているエントランスシール部材15の加圧チューブ24に、圧気注入管28を介して圧気を供給することにより、加圧チューブ24をさらに膨張変形させて、径方向内方への付勢力を生じさせつつ、さらに強固且つ安定させた状態で外郭体11bの外周面に密着させるようにする。
【0034】
本実施形態によれば、筒体17から外れた後方でエントランスシール部材15をシールド掘進機11の外郭体11bの外周面と密着させたら、図12に示すように、伸縮ジャッキ19及び蓋部材18が取り付けられた筒体17を撤去した後に、シールド掘進機11を到達立坑12の坑内に押し出すようにしてさらに前進させる。ここで、筒体17から外れた後方でエントランスシール部材15を外郭体11bの外周面に密着させた後は、エントランスシール部材15は、シールド掘進機11の切削刃や掘削土砂等と接触して損傷したり破損したりすることがないので、従来の到達方法と同様にして、シールド掘進機11を到達立坑12の坑内に引き抜くことが可能になる。
【0035】
すなわち、シールド掘進機11の外郭体11bの内部で組み立てたセグメント20から反力を得ながら、シールドジャッキ11dを伸張してシールド掘進機11を坑内に押し出すことにより、図13に示すように、シールド掘進機11は、後方にセグメント20を残置した状態で、到達立坑12の坑内に引き抜かれることになる。また、シールド掘進機11が前進して外郭体11bの後方に外れたエントランスシール部材15は、径方向内方への付勢力によってその断面形状を内側に拡大させながら後方に設置されたセグメント20の外周面に密着し、坑口リング部16の内側のセグメント20との間の隙間をシールする。さらに、セグメント20の外周面に密着しているエントランスシール部材15の加圧チューブ24に、圧気注入管28を介して圧気を供給することにより、加圧チューブ24をさらに膨張変形させて、径方向内方への付勢力を生じさせつつ、さらに強固且つ安定させた状態でセグメント20の外周面に密着させるようにする。また、セグメント20の外周面に密着したエントランスシール部材15の後方部分には、裏込め材35が充填されることになる。
【0036】
なお、本実施形態によれば、到達立坑12の坑内に引き抜かれたシールド掘進機11は、上述のように反転された後に、当該到達立坑12を発進立坑として、好ましくは先行形成された上り線のシールドトンネルに併設して下り線のシールドトンネルを新たに掘進形成するべく再使用されることになる。また、シールド掘進機11を到達立坑12の坑内に押し出す際に、坑口リング部16に取り付けられたエントランスシール部材15は、シールド掘進機11の後方部分の外周面に延設する配管用帯状凸部31に乗り上げて行くことになるが、加圧チューブ24や止水シール板25の弾性によってこのような段差部分の変位を吸収して、エントランスシール部材15による強固なシール性を保持することが可能になる。
【0037】
そして、上述のような本実施形態の到達施工方法によれば、2重の筒構造によることなく、簡易且つ安価な構成によって、坑口リング部16に取り付けられたエントランスシール部材15を効果的に保護しながらシールド掘進機11を到達立坑12に到達させることができると共に、エントランスシール部材15によって坑口リング部16の内側を安定した状態でシールすることができる。すなわち、本実施形態によれば、エントランスシール部材15が取り付けられる坑口リング部16と、シールド掘進機10の先端部分の外周面を覆う筒体17と、筒体17の坑内側の端面を閉塞する蓋部材18と、蓋部材18を坑内側から押圧可能に支持する伸縮ジャッキ19とによって構成される到達構造10を設置し、坑口14を貫通させて蓋部材18に当接するまでシールド掘進機11を前進させ、伸縮ジャッキ19を収縮させつつシールド掘進機11を筒体17と共にさらに前進させて、筒体17から外れた後方でエントランスシール部材15をシールド掘進機11の外郭体11bの外周面と密着させることにより、エントランスシール部材15によって坑口リング部16の内側の隙間をシールするようにしたので、仮設用のH形鋼等の鋼材によって簡易且つ容易に設置できると共に、強固に組み立て可能な支持架台によって伸縮ジャッキ19を支持しつつ、2重の筒構造によることなく、簡易且つ安価に施工することが可能になる。
【0038】
また、シールド掘進機11の回転カッター11a等が坑口リング部16を通過するまでの間、エントランスシール部材15は筒体17によって覆われて、切削刃や掘削土砂、切削ガラ等との接触が遮断されるので、エントランスシール部材15に損傷や破損が生じたり、土砂やガラがエントランスシール部材の内側に噛み込まれてシールド掘進機10の外周面と十分に密着できなくなることによりシール性が損なわれるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明は泥土圧式シールド掘進機に限定されることなく、泥水式シールド掘進機等の、その他の種々のシールド掘進機を到達立坑に到達させるべく採用することができる。また到達立坑に到達したシールド掘進機は、反転させて再びトンネル掘進を行うものに限定されることなく、到達立坑から撤去されるものであったり、到達立坑を挟んだ反対側に向けて新たにトンネル掘進を行うものであっても良い。さらに、坑口リング部に取り付けられるエントランスシール部材は、加圧流体が注入されて膨張変形する加圧チューブと止水シール板とからなるものである必要は必ずしもなく、例えば伸縮ジャッキ等を用いて径方向内方への付勢力を生じるものであったり、リング状のゴムパッキンの内方縁部に増締め用のワイヤーを取り付け、このワイヤーを締め上げることによりシールド掘進機等の外周面にゴムパッキンを密着させてシール機能を発揮させるもの等の、公知の種々のエントランスシール部材を用いることもできる。さらにまた、蓋部材の中央部分に先端突出凹部を設けたり、筒体の外周面に周面突出凹部を設ける必要は必ずしもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の到達施工方法を説明する略示断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の到達施工方法の一工程を説明する略示断面図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の到達施工方法の一工程を説明する略示断面図である。
【図4】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の到達施工方法の一工程を説明する略示断面図である。
【図5】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の到達施工方法の一工程を説明する略示断面図である。
【図6】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の到達施工方法の一工程を説明する略示断面図である。
【図7】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の到達施工方法の一工程を説明する略示断面図である。
【図8】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の到達施工方法の一工程を説明する略示断面図である。
【図9】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の到達施工方法の一工程を説明する略示断面図である。
【図10】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の到達施工方法の一工程を説明する略示断面図である。
【図11】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の到達施工方法の一工程を説明する略示断面図である。
【図12】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の到達施工方法の一工程を説明する略示断面図である。
【図13】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の到達施工方法の一工程を説明する略示断面図である。
【図14】坑口リング部及びエントランスシール部材の拡大断面図である。
【図15】シールド掘進機の外郭体と筒体の位置関係を説明する正面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 シールド掘進機の到達構造
11 シールド掘進機
11a 回転カッター
11b 外郭体
11c フィシュテール部
11d シールドジャッキ
12 到達立坑
13 土留壁
14 坑口
15 エントランスシール部材
15a シールドトンネルの先端部
16 坑口リング部
17 筒体
18 蓋部材
19 伸縮ジャッキ
20 セグメント
21 改良地盤
22 鋼製部材
23 コンクリート部
24 加圧チューブ
25 止水シール板
26 固定金具
27 流動化処理土注入管
28 圧気注入管
29 チェーンブロック
30 補助ビット
31 配管用帯状凸部
32 封止蓋
33 押圧補助部材
34 硬化性流動化処理土
35 裏込め材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
到達立坑に到達するシールド掘進機を前記到達立坑の坑内に進入させる際のシールド掘進機の到達施工方法であって、
前記シールド掘進機が到達する坑口の周縁部に沿って、坑口とトンネル外周面との間の隙間をシールするエントランスシール部材が取り付けられる坑口リング部を、土留壁の内側面から前記到達立坑の内方に突出して設けておき、前記坑口リング部の内側に、回転カッターを含む前記シールド掘進機の先端部分の外周面を覆う大きさの筒体を、当該筒体の外周面に前記エントランスシール部材を密着させつつ設置すると共に、該筒体の坑内側の端面を蓋部材によって閉塞し、且つ該蓋部材を伸縮ジャッキによって坑内側から押圧可能に支持した状態とし、
前記坑口を貫通させて先端が前記蓋部材に当接するまで前記シールド掘進機を前進させ、前記伸縮ジャッキを収縮させつつ前記シールド掘進機を前記筒体と共にさらに前進させて、前記筒体から外れた後方で前記エントランスシール部材を前記シールド掘進機の外郭体又はセグメントの外周面と密着させることにより、前記エントランスシール部材によって前記坑口リング部の内側の隙間をシールするようにしたシールド掘進機の到達施工方法。
【請求項2】
前記シールド掘進機が前記到達立坑に到達するのに先立って、前記坑口の部分の前記土留壁をはつり取り、はつり取った部分にかかるように配置して前記エントランスシール部材よりも前記坑口側に前記筒体を取り付けた後に、当該筒体を坑内側に引き寄せて、前記坑口リング部の内側に前記筒体を設置する請求項1に記載のシールド掘進機の到達施工方法。
【請求項3】
前記伸縮ジャッキを収縮させつつ前記シールド掘進機を前記筒体と共にさらに前進させて、前記筒体から外れた後方で前記エントランスシール部材を前記シールド掘進機の外郭体又はセグメントの外周面と密着させたら、前記伸縮ジャッキ及び前記蓋部材が取り付けられた前記筒体を撤去した後に、前記シールド掘進機をさらに前記到達立坑の坑内に押し出す請求項1又は2に記載のシールド掘進機の到達施工方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のシールド掘進機の到達施工方法において用いるシールド掘進機の到達部構造であって、
前記シールド掘進機が到達する到達立坑の坑口の周縁部に沿って、土留壁の内側面から到達立坑の内方に突出して設けられる坑口リング部と、該坑口リング部に取り付けられるエントランスシール部材と、該エントランスシール部材を外周面に密着させつつ前記坑口リング部の内側に設置され、回転カッターを含む前記シールド掘進機の先端部分の外周面を覆う大きさを有する筒体と、該筒体の坑内側の端面を閉塞する蓋部材と、該蓋部材を坑内側から押圧可能に支持する伸縮ジャッキとによって構成されるシールド掘進機の到達部構造。
【請求項5】
前記エントランスシール部材は、前記坑口リング部の内周面に沿って円環状に配置され、内部に加圧流体が注入されて膨張変形する加圧チューブと、該加圧チューブの坑口側に隣接して円環状に配置される止水シール板とからなる請求項4に記載のシールド掘進機の到達部構造。
【請求項6】
前記蓋部材の中央部分に、前記シールド掘進機の回転カッターのフィシュテール部を収容する先端突出凹部が設けられている請求項4又は5に記載のシールド掘進機の到達部構造。
【請求項7】
前記シールド掘進機の先端部分には、これの外周面から径方向外方に突出して補助ビットが設けられており、前記筒体は、該補助ビットと対応した位置に周面突出凹部を有する断面形状を備えている請求項4〜6のいずれかに記載のシールド掘進機の到達部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−307582(P2006−307582A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133132(P2005−133132)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(000252207)六菱ゴム株式会社 (41)
【Fターム(参考)】