説明

シールド掘進機の後方台車

【課題】 油槽上に余剰スペースがなくとも全長を大幅に短縮できるシールド掘進機の後方台車を提供する。
【解決手段】シールド掘進機本体の各種油圧機器17、18、19、20を駆動する油圧ポンプを備えたシールド掘進機の後方台車Dにおいて、上記油圧ポンプを、複数のポンプ要素12を共通の駆動装置9で駆動するように連結した多連ポンプ7とし、該多連ポンプ7の各ポンプ要素12を上記各油圧機器17、18、19、20に接続したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機本体の後方に配置されシールド掘進機本体の各種油圧機器に油圧を供給するシールド掘進機の後方台車に係り、特に台車全長の短縮を図ったシールド掘進機の後方台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、シールド掘進機Sは、シールド掘進機本体60と、シールド掘進機本体60の各種油圧機器に油圧を供給する後方台車61とを備えて構成されている。図8及び図10に示すように、一般的な後方台車61は、シールド掘進機本体60に連結され操作盤62を有するオペレーション台車63と、オペレーション台車63に連結されシールド掘進機本体61の各種油圧機器を駆動する油圧ポンプ64、65、66、67を備えた第1ポンプ台車68と、第1ポンプ台車68に連結され油槽16を備えた油槽台車69と、油槽台車69に連結されシールド掘進機本体60のカッタ70を駆動する油圧ポンプ71を備えた第2ポンプ台車72と、第2ポンプ台車72に連結され油圧ポンプ64、65、66、67、71等に電力を供給する起動盤73を備えた起動台車74とを備えて構成されている。
【0003】
ところで、図9に示すように、シールド掘進機Sを発進立坑T内から発進させるとき、後方台車61は上述のように各種台車63、68、69、72、74を多数数珠つなぎに連結するものであるため、狭小な発進立坑T内には配置せず、地上に仮置きし、仮の油圧配管75等を介してシールド掘進機本体60側に油圧を送るようにしている。
【0004】
そして、図10に示すように、シールド掘進機本体60が、後方台車61を地上に残したまま仮発進してその後方に後方台車61の配置スペースを形成したら、この配置スペースに後方台車61を移動してシールド掘進機本体60に連結し、シールド掘進機Sを完成させている。
【0005】
このため、都市部等地上に十分なスペースがない場合、後方台車61の仮置きスペースを確保するのが困難である一方、仮発進中は仮の油圧配管75等を順次継ぎ足して延長しなければならず、通常掘進時のように掘進スピードを上げることができないという問題があった。
【0006】
かかる問題を改善する発明としては、特許文献1記載のものが知られている。この発明は、油槽の上にポンプユニットを配置することで後方台車の断面スペースを有効に活用し、台車全長の短縮を図るものである。これによれば、後方台車の仮置きスペースを短くできると共に、仮発進の距離を短くできる。
【0007】
【特許文献1】特開平10−153088号公報
【特許文献2】特開2001−329797号公報
【特許文献3】特開2001−329784号公報
【特許文献4】実開平1−121701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、断面スペースの有効活用によって台車全長を短縮するものであり、油槽上の余剰スペースに収まるポンプユニット台数分しか短縮できないものであるため、台車全長を短縮する効果としては不十分であり、後方台車の仮置きスペース削減の効果と、掘進スピードが低下する仮発進長を削減する効果は不十分であった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、油槽上に余剰スペースがなくとも全長を大幅に短縮できるシールド掘進機の後方台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、シールド掘進機本体の各種油圧機器を駆動する油圧ポンプを備えたシールド掘進機の後方台車において、上記油圧ポンプを、複数のポンプ要素を共通の駆動装置で駆動するように連結した多連ポンプとし、該多連ポンプの各ポンプ要素を上記各油圧機器に接続したものである。
【0011】
上記多連ポンプは、3個以上のポンプ要素を連結して形成され、これらポンプ要素を3個以上の油圧機器に接続するとよい。
【0012】
また、各種油圧機器は、高速から低速掘進まで常時駆動される主油圧機器と、低速掘進時にのみ駆動される副油圧機器とからなり、上記多連ポンプを駆動する駆動装置の最大定格出力は、主油圧機器が高速掘進時に最大出力となる能力に設定されると共に、低速掘進時に主油圧機器が駆動される能力と副油圧機器が最大能力で駆動される能力の和が、上記主油圧機器を駆動する最大能力以上のとき上記和の能力に設定されるとよい。
【0013】
上記主油圧機器は、シールドジャッキ、スクリュコンベアを駆動する油圧モータからなり、上記副油圧機器は、コピーカッタを駆動する油圧シリンダ、スクリュコンベアに接続された油圧開閉弁からなり、これら主油圧機器と副油圧機器が上記多連ポンプで駆動され、その多連ポンプと独立してカッタを駆動するカッタモータのカッタ油圧ポンプが備えられるとよい。
【0014】
また、上記主油圧機器は、シールドジャッキ、アジテータを駆動する油圧モータからなり、上記副油圧機器は、コピーカッタを駆動する油圧シリンダ、送排泥管を開閉する送排泥開閉弁からなり、これら主油圧機器と副油圧機器が上記多連ポンプで駆動され、その多連ポンプと独立してカッタを駆動するカッタモータのカッタ油圧ポンプが備えられるものであってもよい。
【0015】
上記多連ポンプの各ポンプ要素はそれぞれ等しい吐出能力に形成され、上記主油圧機器に接続されるポンプ要素はその能力に合わせて複数組み合わされるとよい。
【0016】
各ポンプ要素から油圧機器に至る油圧配管には、その油圧機器が不作動のときポンプ要素から吐出される油を油槽に戻す手段が設けられるとよい。
【0017】
上記多連ポンプのポンプ要素は、油槽内に浸漬されて設けられるとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、油槽上に余剰スペースがなくとも台車全長を大幅に短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好適実施の形態を添付図面を用いて説明する。なお、図9及び図10に示すシールド掘進機本体60及び発進立坑Tについては上述と同様であるため、同符号を付し、以下で用いる。
【0020】
図4はシールド掘進機の後方台車の側面図である。図1は後方台車の要部拡大側面図であり、具体的には、後方台車を構成する第二台車の側面図である。
【0021】
図4に示すように、後方台車Dは、第一台車1、第二台車2、第三台車3及び第四台車4を切羽側から順に連結して構成されており、図10に示すシールド掘進機本体60に連結されるようになっている。
【0022】
第一台車1は、操作盤5を有するオペレーション台車である。操作盤5は、シールド掘進機本体60の各種油圧機器を制御するためのものである。
【0023】
第二台車2は、シールド掘進機本体60の各種油圧機器を駆動する油圧ポンプ6、7を備えたポンプ台車である。図1及び図2に示すように、第二台車2は、カッタ70を駆動するカッタモータ(図示せず)のカッタ油圧ポンプ6と、電動モータからなりカッタ油圧ポンプ6を駆動する第一駆動装置8と、他の各種油圧機器を駆動する多連ポンプ7と、多連ポンプ7を駆動する電動モータからなる第二駆動装置9とを備える。カッタ油圧ポンプ6は、専用の第一駆動装置8で駆動されることで常時大きな出力に対応できるように形成されている。カッタ油圧ポンプ6とカッタモータとを接続するカッタ系油圧配管10にはカッタモータの回転方向を切り換えると共に回転速度を調節するためのカッタ用バルブユニット11が設けられている。カッタ用バルブユニット11は、操作盤5に電気的に接続されており、操作盤5からの操作で作動されるようになっている。
【0024】
多連ポンプ7は、複数のポンプ要素12を共通の駆動装置9で駆動するように連結して構成されており、第二駆動装置9で全てのポンプ要素12を同時に駆動するようになっている。ポンプ要素12は、ラジアルピストンポンプからなり、それぞれ等しい吐出能力に形成されている。多連ポンプ7は、1つの吸込口13を有すると共にポンプ要素12と同じ数の吐出口14を有し、吸込口13から吸い込まれる油を複数のポンプ要素12で分配すると共に、それぞれのポンプ要素12から吐出される油をポンプ要素12ごとの吐出口14からそれぞれ吐出するように形成されている。
【0025】
図1及び図3に示すように、多連ポンプ7は、吸込口13を吸入配管15を介して油槽16に接続されると共に、吐出口14をそれぞれシールド掘進機本体60の各種油圧機器17、18、19、20に接続されている。各種油圧機器17、18、19、20は、高速から低速掘進まで常時駆動される主油圧機器17、18と、低速掘進時にのみ駆動される副油圧機器19、20とからなり、これら主油圧機器17、18と副油圧機器19、20とを組み合わせることで一方の油圧機器が最大出力のとき他方の油圧機器の出力が小さくなるようにし、多連ポンプ7を駆動する第二駆動装置9の最大定格出力を各油圧機器17、18、19、20の最大定格出力の総和より小さくしている。多連ポンプ7を駆動する第二駆動装置9の最大定格出力は、主油圧機器17、18が高速掘進時に最大出力となる能力に、或いは低速掘進時に主油圧機器17、18が駆動される能力と副油圧機器19、20が最大能力で駆動される能力の和が、主油圧機器17、18を駆動する最大能力以上のとき上記和の能力に設定される。具体的には、主油圧機器17、18は、シールドジャッキ17、スクリュコンベア(図示せず)を駆動する油圧モータ18からなり、副油圧機器19、20は、コピーカッタ(図示せず)を駆動する油圧シリンダ19、スクリュコンベアに接続された土量調整用の油圧開閉弁20からなる。主油圧機器17、18に接続されるポンプ要素12はその能力に合わせて複数組み合わされるようになっている。
【0026】
また、多連ポンプ7は、コピーカッタの油圧シリンダ19に油圧を供給するコピー系油圧配管21と、シールドジャッキ17に油圧を供給する推進系油圧配管22と、スクリュコンベアの油圧モータ18に油圧を供給するスクリュ系油圧配管23と、スクリュコンベアに接続された土量調整用油圧開閉弁20に油圧を供給するゲート系油圧配管24とにそれぞれ接続されている。
【0027】
コピー系油圧配管21には、コピーカッタの油圧シリンダ19の伸張、縮退又は不作動を切り替えるためのコピー用切替弁25が設けられている。コピー用切替弁25は、不作動に切り替えられることで油圧シリンダ19側の油圧配管26、27をそれぞれ塞ぐと共に、ポンプ要素12側の油圧配管28を戻し配管29に接続するようになっており、不作動に切り替えられたとき、コピーカッタの油圧シリンダ19をその長さを固定して不作動にすると共にポンプ要素12から吐出される油を油槽16に戻す手段として機能するようになっている。
【0028】
推進系油圧配管22には、シールドジャッキ17の伸張、縮退又は不作動を切り替えるための推進用切替弁30が設けられている。推進用切替弁30は、不作動に切り替えられることでシールドジャッキ17側のそれぞれの油圧配管31、32を戻し配管29に接続すると共にポンプ要素12側の油圧配管33を戻し配管29に接続するようになっており、不作動に切り替えられたとき、シールドジャッキ17を不作動にすると共にポンプ要素12から吐出される油を油槽16に戻す手段として機能するようになっている。また、それぞれのシールドジャッキ17の伸張側の油圧配管31には推進用開閉弁34が設けられている。推進用開閉弁34は、それぞれ独立して開閉できるようになっており、閉じることで任意のシールドジャッキ17の長さを固定できるようになっている。
【0029】
スクリュ系油圧配管23には、油圧モータ18の正転、逆転又は不作動を切り替えるためのスクリュ用切替弁35が設けられている。スクリュ用切替弁35は、不作動に切り替えられることで油圧モータ18側のそれぞれの油圧配管36、37を戻し配管29に接続すると共にポンプ要素12側の油圧配管38を戻し配管29に接続するようになっており、不作動に切り替えられたとき、スクリュコンベアの油圧モータ18を不作動にすると共にポンプ要素12から吐出される油を油槽16に戻す手段として機能するようになっている。
【0030】
ゲート系油圧配管24には、土量調整用油圧開閉弁20の開、閉又は不作動を切り替えるための開閉弁用切替弁39が設けられている。開閉弁用切替弁39は、不作動に切り替えられることで土量調整用油圧開閉弁20側の油圧配管40、41をそれぞれ塞ぐと共に、ポンプ要素12側の油圧配管42を戻し配管29に接続するようになっており、不作動に切り替えられたとき、土量調整用油圧開閉弁20をその開度を固定して不作動にすると共にポンプ要素12から吐出される油を油槽16に戻す手段として機能するようになっている。土量調整用油圧開閉弁20は、具体的にはスクリュゲートからなる。
【0031】
図4に示す第三台車3は、油槽16を備えた油槽台車であり、第四台車4は油圧ポンプ等に電力を供給する起動盤43を備えた起動台車である。
【0032】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0033】
図9に示す発進立坑Tからシールド掘進機Sを発進させる場合、シールド掘進機本体60を発進立坑T内に設置すると共に、図4に示す後方台車Dを地上の仮置きスペースに配置し、シールド掘進機本体60と後方台車Dとを仮の油圧配管75等で接続する。図1及び図3に示すように、後方台車Dは多連ポンプ7の複数のポンプ要素12でシールド掘進機本体60の各種油圧機器17、18、19、20を駆動するようになっており、複数のポンプ要素12を共通の第二駆動装置9で駆動するようになっているため、各種油圧機器17、18、19、20がそれぞれ別の油圧ポンプで駆動される場合と比べて駆動装置の数を減らすことができ、それぞれの油圧ポンプに接続される吸入配管の数も減らすことができ、油圧ポンプを起動する起動盤43の数も減らすことができ、台車全長を短くできる。このため、比較的容易に仮置きスペースを確保することができる。
【0034】
この後、第一台車1の操作盤5を操作し、シールド掘進機本体60を発進立坑Tから発進させる。具体的には、カッタ油圧ポンプ6を駆動してカッタモータを回転駆動すると共に、多連ポンプ7を駆動してシールドジャッキ17を伸張させ、スクリュコンベアの油圧モータ18を駆動させる。このとき、多連ポンプ7を構成するポンプ要素12は全て同時に駆動され、使用しない油圧機器の油圧配管にも油圧が供給されることとなるが、切替弁25、30、35、39を不作動に切り替えておくことでポンプ要素12からの油を戻し配管29に流して油槽16に戻すことができ、任意の油圧機器17、18、19、20を容易に不作動にできると共に多連ポンプ7を駆動する第二駆動装置9に余計な負荷がかかるのを防ぐことができる。
【0035】
図10に示すように、シールド掘進機本体60が所定距離掘進されたら図4に示す後方台車Dを発進立坑T内に降ろし、シールド掘進機本体60に連結する。仮発進中は、シールド掘進本体60と後方台車Dとを接続する仮の油圧配管75等を順次継ぎ足す必要があるため、速度は通常の掘進速度より落ちる。しかし、後方台車Dの全長が従来より短くなっているため仮発進の距離が短く、仮発進の速度が低いことによる能率の低下を軽減できる。
【0036】
このように、油圧ポンプを、複数のポンプ要素12を共通の第二駆動装置9で駆動するように連結した多連ポンプ7とし、多連ポンプ7の各ポンプ要素12を各油圧機器17、18、19、20に接続するため、複数のポンプを別々の駆動装置で駆動する場合と比べて駆動装置やその起動盤の数を減らすことができ、ポンプに接続する配管の数を減らすことができ、油槽16上に余剰スペースがなくとも後方台車Dの全長を短くすることができ、仮発進時の地上の仮置きスペースを容易に確保でき、仮発進中の能率の低下を軽減できる。
【0037】
また、各種油圧機器17、18、19、20は、高速から低速掘進まで常時駆動される主油圧機器17、18と、低速掘進時にのみ駆動される副油圧機器19、20とからなり、多連ポンプ7を駆動する第二駆動装置9の最大定格出力は、主油圧機器17、18が高速掘進時に最大出力となる能力に設定されると共に、低速掘進時に主油圧機器17、18が駆動される能力と副油圧機器19、20が最大能力で駆動される能力の和が、主油圧機器17、18を駆動する最大能力以上のとき上記和の能力に設定されるようにしたため、第二駆動装置9の最大定格出力を各種油圧機器17、18、19、20の最大能力の総和より小さくすることができ、第二駆動装置9を小さくすることができる。そしてこれにより、後方台車Dの全長を更に短くすることができる。
【0038】
主油圧機器17、18は、シールドジャッキ17、スクリュコンベアを駆動する油圧モータ18からなり、副油圧機器19、20は、コピーカッタを駆動する油圧シリンダ19、スクリュコンベアに接続された油圧開閉弁20からなり、これら主油圧機器17、18と副油圧機器19、20が多連ポンプ7で駆動され、その多連ポンプ7と独立してカッタを駆動するカッタモータのカッタ油圧ポンプ6が備えられるものとしたため、カッタに必要な駆動力を確保しつつ、シールドジャッキ17、スクリュコンベアを駆動する油圧モータ18、コピーカッタを駆動する油圧シリンダ19及び土量調整用油圧開閉弁20を駆動する油圧ポンプ(ポンプ要素12)を多連化でき、後方台車Dの全長を短くすることができる。
【0039】
多連ポンプ7の各ポンプ要素12はそれぞれ等しい吐出能力に形成され、主油圧機器17、18に接続されるポンプ要素12はその能力に合わせて複数組み合わされるものとしたため、比較的大きな流量を必要とする主油圧機器17、18と、主油圧機器17、18より流量が小さな副油圧機器19、20とを容易に組み合わせて多連ポンプ7に接続することができる。
【0040】
各ポンプ要素12から油圧機器17、18、19、20に至る油圧配管21、22、23、24には、その油圧機器17、18、19、20が不作動のときポンプ要素12から吐出される油を油槽16に戻す手段(切替弁25、30、35、39)が設けられるものとしたため、ポンプ要素12で駆動される任意の油圧機器17、18、19、20を容易に不作動にできると共に、多連ポンプ7を駆動する第二駆動装置9に余計な負荷がかかるのを防ぐことができる。
【0041】
次に他の実施の形態について述べる。
【0042】
本実施の形態は、上述の実施の形態の第二台車2と第三台車3とを合体したものである。上述と同様の構成については説明を省き同符号を付す。
【0043】
図6に示すように、後方台車50は、第一台車1、第二台車51及び第三台車4(上述の第四台車4と同様)を切羽側から順に連結して構成されている。図5に示すように、第二台車51は、上述のカッタモータ及び各種油圧機器17、18、19、20を駆動する油圧ポンプ6、7と、油槽52とを備えたポンプ兼油槽台車である。具体的には、第二台車51は、油槽52と、油槽52内に浸漬されて設けられたカッタ油圧ポンプ6と、油槽52外に設けられカッタ油圧ポンプ6を駆動する第一駆動装置8と、油槽52内にポンプ要素12を浸漬して設けられた多連ポンプ7と、油槽52外に設けられ多連ポンプ7のポンプ要素12を一括して駆動する第二駆動装置9とを備える。カッタ油圧ポンプ6と多連ポンプ7は、それぞれ油槽52内の油を取り込んでカッタモータや他の各種油圧機器17、18、19、20に油圧を供給するように構成されている。
【0044】
このように、多連ポンプ7のポンプ要素12を油槽52内に浸漬して設けることにより、台車全長を更に短くすることができる。
【0045】
また、掘削土をスクリュコンベアにて排土する土圧式シールド掘進機について述べたが、シールド掘進機は送排泥管で排土する泥水式シールド掘進機であってもよい。
【0046】
シールド掘進機が泥水式シールド掘進機である場合の他の実施の形態について述べる。上述と同様の構成については説明を省き、同符号を付す。
【0047】
図7に示すように、主油圧機器17、80は、シールドジャッキ17、アジテータ(図示せず)を駆動する油圧モータ80からなり、副油圧機器19、81a、81bは、コピーカッタ(図示せず)を駆動する油圧シリンダ19、送泥管(図示せず)を開閉する送排泥開閉弁81a、81bからなる。送排泥開閉弁81a、81bは、送泥管を開閉する送泥側開閉弁81aと、排泥管を開閉する排泥側開閉弁81bとからなる。送泥側開閉弁81aと排泥側開閉弁81bとは、同一の油圧配管89、90に並列に接続されており、常に同じ開度となるように形成されている。
【0048】
多連ポンプ7は、コピーカッタの油圧シリンダ19に油圧を供給するコピー系油圧配管21と、シールドジャッキ17に油圧を供給する推進系油圧配管22と、アジテータの油圧モータ80に油圧を供給するアジテータ系油圧配管82と、送泥管を開閉する送排泥開閉弁81a、81bに油圧を供給する送排泥開閉弁系油圧配管83とにそれぞれ接続されている。
【0049】
アジテータ系油圧配管82には、油圧モータ80の回転、不作動を切り替えるためのアジテータ用切替弁84が設けられている。アジテータ用切替弁84は、不作動に切り替えられることで油圧モータ80側のそれぞれの油圧配管85、86を戻し配管29に接続すると共にポンプ要素12側の油圧配管87を戻し配管29に接続するようになっており、不作動に切り替えられたとき、アジテータの油圧モータ80を不作動にすると共にポンプ要素12から吐出される油を油槽16に戻す手段として機能するようになっている。
【0050】
送排泥開閉弁系油圧配管83には、送排泥開閉弁81の開、閉又は不作動を切り替えるための送排泥開閉弁用切替弁88が設けられている。送排泥開閉弁用切替弁88は、不作動に切り替えられることで送排泥開閉弁81側の油圧配管89、90をそれぞれ塞ぐと共に、ポンプ要素12側の油圧配管91を戻し配管29に接続するようになっており、不作動に切り替えられたとき、送排泥開閉弁81をその開度を固定して不作動にすると共にポンプ要素12から吐出される油を油槽16に戻す手段として機能するようになっている。
【0051】
このように、主油圧機器17、80は、シールドジャッキ17、アジテータを駆動する油圧モータ80からなり、副油圧機器19、81a、81bは、コピーカッタを駆動する油圧シリンダ19、送排泥管を開閉する送排泥開閉弁81a、81bからなり、これら主油圧機器17、80と副油圧機器19、81a、81bが多連ポンプ7で駆動され、その多連ポンプ7と独立してカッタ70を駆動するカッタモータのカッタ油圧ポンプ6が備えられるものとしても、カッタに必要な駆動力を確保しつつ、シールドジャッキ17、アジテータを駆動する油圧モータ80、コピーカッタを駆動する油圧シリンダ19及び送排泥開閉弁81a、81bを駆動する油圧ポンプ(ポンプ要素12)を多連化でき、後方台車(図示せず)の全長を短くすることができる。
【0052】
なお、主油圧機器17、80は、シールドジャッキ17と、アジテータを駆動する油圧モータ80からなるものとしたが、土質が流動性に富む等の場合、アジテータとその油圧モータ80を省略しても良い。この場合、多連ポンプは、最低3個のポンプ要素を連結して形成されるとよく、それぞれのポンプ要素12は、シールドジャッキ17と、コピーカッタを駆動する油圧シリンダ19と、送排泥開閉弁81a、81bとに3系統の油圧配管21、22、83を介して接続されるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の好適実施の形態を示すシールド掘進機の後方台車の要部拡大側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】後方台車の多連ポンプとシールド掘進機本体の各種油圧機器とを接続する油圧回路図である。
【図4】シールド掘進機の後方台車の側面図である。
【図5】他の実施の形態を示すシールド掘進機の後方台車の要部拡大側面図である。
【図6】図5に係る後方台車の側面図である。
【図7】他の実施の形態を示す油圧回路図である。
【図8】従来のシールド掘進機の後方台車の側面図である。
【図9】発進立坑内から仮発進するシールド掘進機の側面説明図である。
【図10】仮発進を完了したシールド掘進機の側面説明図である。
【符号の説明】
【0054】
D 後方台車
6 カッタ油圧ポンプ
7 多連ポンプ
9 第二駆動装置(駆動装置)
12 ポンプ要素
16 油槽
17 シールドジャッキ(主油圧機器、油圧機器)
18 油圧モータ(主油圧機器、油圧機器)
19 油圧シリンダ(副油圧機器、油圧機器)
20 油圧開閉弁(副油圧機器、油圧機器)
21 コピー系油圧配管(油圧配管)
22 推進系油圧配管(油圧配管)
23 スクリュ系油圧配管(油圧配管)
24 ゲート系油圧配管(油圧配管)
25 コピー用切替弁(手段)
30 推進用切替弁(手段)
35 スクリュ用切替弁(手段)
39 開閉弁用切替弁(手段)
52 油槽
60 シールド掘進機本体
80 油圧モータ(主油圧機器、油圧機器)
81a 送泥側開閉弁(副油圧機器、油圧機器)
81b 排泥側開閉弁(副油圧機器、油圧機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機本体の各種油圧機器を駆動する油圧ポンプを備えたシールド掘進機の後方台車において、上記油圧ポンプを、複数のポンプ要素を共通の駆動装置で駆動するように連結した多連ポンプとし、該多連ポンプの各ポンプ要素を上記各油圧機器に接続したことを特徴とするシールド掘進機の後方台車。
【請求項2】
上記多連ポンプは、3個以上のポンプ要素を連結して形成され、これらポンプ要素を3個以上の油圧機器に接続した請求項1記載のシールド掘進機の後方台車。
【請求項3】
各種油圧機器は、高速から低速掘進まで常時駆動される主油圧機器と、低速掘進時にのみ駆動される副油圧機器とからなり、上記多連ポンプを駆動する駆動装置の最大定格出力は、主油圧機器が高速掘進時に最大出力となる能力に設定されると共に、低速掘進時に主油圧機器が駆動される能力と副油圧機器が最大能力で駆動される能力の和が、上記主油圧機器を駆動する最大能力以上のとき上記和の能力に設定される請求項1又は2記載のシールド掘進機の後方台車。
【請求項4】
上記主油圧機器は、シールドジャッキ、スクリュコンベアを駆動する油圧モータからなり、上記副油圧機器は、コピーカッタを駆動する油圧シリンダ、スクリュコンベアに接続された油圧開閉弁からなり、これら主油圧機器と副油圧機器が上記多連ポンプで駆動され、その多連ポンプと独立してカッタを駆動するカッタモータのカッタ油圧ポンプが備えられる請求項3記載のシールド掘進機の後方台車。
【請求項5】
上記主油圧機器は、シールドジャッキ、アジテータを駆動する油圧モータからなり、上記副油圧機器は、コピーカッタを駆動する油圧シリンダ、送排泥管を開閉する送排泥開閉弁からなり、これら主油圧機器と副油圧機器が上記多連ポンプで駆動され、その多連ポンプと独立してカッタを駆動するカッタモータのカッタ油圧ポンプが備えられる請求項3記載のシールド掘進機の後方台車。
【請求項6】
上記多連ポンプの各ポンプ要素はそれぞれ等しい吐出能力に形成され、上記主油圧機器に接続されるポンプ要素はその能力に合わせて複数組み合わされる請求項3〜5いずれかに記載のシールド掘進機の後方台車。
【請求項7】
各ポンプ要素から油圧機器に至る油圧配管には、その油圧機器が不作動のときポンプ要素から吐出される油を油槽に戻す手段が設けられる請求項1〜6いずれかに記載のシールド掘進機の後方台車。
【請求項8】
上記多連ポンプのポンプ要素は、油槽内に浸漬されて設けられる請求項1〜7いずれかに記載のシールド掘進機の後方台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−46368(P2007−46368A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233098(P2005−233098)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】