説明

シールド掘進機の微速掘進制御装置

【課題】大幅なコストアップなしで、高精度の微速掘進制御を実現する。
【解決手段】通常速度で掘進するときには、速度切換弁29によりオイル導入ライン30をメインライン25に接続し、シールドジャッキ1の押し側室3に通常の流量のオイルを導く。微速掘進するときには、速度切換弁29によりオイル導入ライン30をサブライン26に接続し、絞り27で流量が絞られたオイルをシールドジャッキ1の押し側室3に導く。絞り27によって流量が絞られたオイルは、以降、オイル漏れが生じない逆止弁32及び開閉弁8を通ってシールドジャッキ1の押し側室3に導入される。よって、速度切換弁29や押引切換弁12においてオイル漏れが生じたとしても、シールドジャッキ1は、絞り27で絞られたオイル流量が的確に反映された速度(微速)で伸長される。従って、掘進機本体15を、高精度で微速掘進させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドジャッキをセグメント等の反力受け部材に押し当てることで推進反力を得て掘進機本体を前進させるシールド掘進機に係り、特に、掘進機本体を微速で掘進させる制御を行うシールド掘進機の微速掘進制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシールド掘進機のシールドジャッキの油圧回路を図2に示す。
【0003】
シールドジャッキ1は、切羽を切削するカッタを備えた掘進機本体内に複数配設されている。これらシールドジャッキ1は、掘進機本体内に取り付けられたシリンダ2と、シリンダ2内に収容されシリンダ2内を押し側室3と引き側室4とに仕切るピストン5と、一端がピストン5に接続され他端がシリンダ2から突出したロッド6とを有し、ロッド6の端部に設けられたシューをセグメント等の反力受け部材に押し当てることで推進反力を得て、掘進機本体を前進させるものである。
【0004】
各シールドジャッキ1の押し側室3には、押し側ライン(管、ホース等)7が夫々接続されており、各押し側ライン7には、開閉弁8が夫々設けられている。これら押し側ライン7は、押し側集合ライン9に集合されている。また、各シールドジャッキ1の引き側室4には、引き側ライン10が夫々接続されており、これら引き側ライン10は、引き側集合ライン11に集合されている。
【0005】
押し側集合ライン9と引き側集合ライン11とには、押引切換弁12を介して、オイルポンプPにより加圧されたオイル(加圧オイル)が供給されるオイル供給ライン13と、オイルをオイルタンクTに戻すためのオイル戻しライン14とが、接続されている。押引切換弁12は、オイル供給ライン13内の加圧オイルを押し側集合ライン9に導入して引き側集合ライン11から排出されるオイルをオイル戻しライン14に導く押しモードと、オイル供給ライン13内の加圧オイルを引き側集合ライン11に導入して押し側集合ライン9から排出されるオイルをオイル戻しライン14に導く引きモードとを切り替える機能を有する。
【0006】
特定のシールドジャッキ1を伸長させるときには、押引切換弁12を押しモードとし、伸長させる特定のシールドジャッキ1に接続された開閉弁8のみを開き、他の開閉弁8を閉じる。特定のシールドジャッキ1を収縮させるときには、押引切換弁12を引きモードとし、収縮させる特定のシールドジャッキ1に接続された開閉弁8のみを開き、他の開閉弁8を閉じる。
【0007】
ところで、掘進機本体が発進立坑の内部から掘削可能壁を掘り抜いて発進する場合や、掘進機本体が掘削可能壁を掘り抜いて到達立坑に進入する場合や、掘進中に地山の土質が変化して礫等からなる掘削し難い地山を掘進する場合や、掘進中に杭等の障害物が出現した場合等においては、掘進機本体を通常掘進時よりも遅い速度で掘進させると共に、その掘進速度を高精度で制御する必要が生じる。
【0008】
従来、微速掘進を行うときには、押引切換弁12を押しモードとし、オイルポンプP(可変容量タイプ)の吐出量を通常よりも減少させるようにしたり、或いは、オイルポンプPに並列に吐出量の小さな小型ポンプ(図示せず)を接続しておき、微速掘進時にはこの小型ポンプに切り替えていた。これにより、シールドジャッキ1の押し側室3に導入されるオイルの流量が通常掘進の場合よりも少なくなり、シールドジャッキ1の伸長速度が遅くなって微速掘進となる。
【0009】
しかし乍ら、従来は、上述した微速掘進時に、掘進速度を高精度で制御することが困難であった。その理由を述べる。
【0010】
掘進機本体を所定の微速掘進速度で掘進させる場合、オイルポンプPや小型ポンプの吐出量を、掘進機本体が所定の微速掘進速度となる所定の吐出量に設定する。ここで、オイルポンプP又は小型ポンプから押し側室3までの流路の途中に介在された押引切換弁12は、構造上、弁12のケーシングとその内部のスプールとの隙間から或る程度のオイル漏れが生じることが避けられない。このため、掘進機本体の掘進速度が、オイルポンプP又は小型ポンプで設定した吐出量に基づく速度とは異なってしまい、高精度の微速掘進制御が困難となる。
【0011】
特に、微速掘進中に、切羽の土圧や土質が変化してシールドジャッキ1に加わる切羽からの反力が変動すると、押し側室3から押引切換弁12に加わるオイルの圧力が変動し、押引切換弁12でのオイルの漏れ量も変動する。このため、オイルポンプP又は小型ポンプを一定の吐出量に設定しても、押引切換弁12でのオイルの漏れ量が変動するために、シールドジャッキ1の押し側室3に導入されるオイルの流量が変動し、シールドジャッキ1の伸長速度が変動してしまう。
【0012】
そして、このようにシールドジャッキ1の伸長速度が変動すると、それに応じて切羽からシールドジャッキ1に加わる反力も変動することになり、押し側室3から押引切換弁12に加わるオイルの圧力が変動し、押引切換弁12でのオイルの漏れ量が変動し、シールドジャッキ1の伸長速度が更に変動してしまうという、負の連鎖が生じる。このため、高精度の微速掘進制御が困難であった。
【0013】
また、掘進機本体を高精度で微速掘進させることができる発明として、掘進機本体内に、油圧式のシールドジャッキの他に、ネジ送り機構が内蔵された機械式のシールドジャッキを設けておき、微速掘進時には、油圧式のシールドジャッキを用いずに、機械式のシールドジャッキを用いるようにした発明が知られている(特許文献1参照)。
【0014】
【特許文献1】特開2003−82980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この発明によれば、微速掘進時には、機械式のシールドジャッキのネジ送り機構を電動モータで作動させて伸縮させており、油圧を用いないので、上述した押引切換弁12におけるオイルの漏れに基づく種々の問題は生じない。しかし乍ら、通常の油圧式のシールドジャッキの他にネジ送り機構を有する機械式のシールドジャッキを設ける必要があるので、大幅なコストアップが避けられない。
【0016】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、大幅なコストアップが生じることなく、高精度の微速掘進制御が可能なシールド掘進機の微速掘進制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、掘進機本体内に、セグメント等の反力受け部材に反力を取って上記掘進機本体を前進させるシールドジャッキを複数設け、該シールドジャッキは、内部がピストンによって押し側室と引き側室とに仕切られたシリンダを有するシールド掘進機の微速掘進制御装置であって、上記各シールドジャッキの押し側室に夫々接続された押し側ラインと、各押し側ラインに夫々開閉可能に設けられた開閉弁と、各押し側ラインを集合する押し側集合ラインと、一端が上記押し側集合ラインに接続されたメインラインと、一端が上記メインライン又は上記押し側集合ラインに接続されたサブラインと、該サブラインに設けられた絞りと、加圧オイルが導入されるオイル導入ラインと、該オイル導入ラインを上記メインラインの他端に接続する通常速度モードと、上記オイル導入ラインを上記サブラインの他端に接続する微速掘進モードとを切り替える速度切換弁とを備えたものである。
【0018】
上記サブラインに、上記押し側室から上記速度切換弁への方向のオイルの流れを妨げる逆止弁を設け、上記メインラインに、上記押し側室から上記速度切換弁への方向のオイルの流れを妨げる逆止弁を設けてもよい。
【0019】
上記絞りが、可変絞りであってもよい。
【0020】
上記サブラインの内部を流れるオイルの流量を表示する表示部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るシールド掘進機の微速掘進制御装置によれば、大幅なコストアップが生じることなく、高精度の微速掘進制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の好適実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係るシールド掘進機の微速掘進制御装置を具備したシールドジャッキ1の油圧回路の概略図である。図3は、上記シールド掘進機が地山を掘進している様子を示す側断面図である。
【0024】
図1、図3に示すように、本実施形態に係る微速掘進制御装置が具備されたシールド掘進機は、切羽19を切削するカッタを有する掘進機本体15と、掘進機本体15内に設けられ、セグメント20等の反力受け部材に反力を取って掘進機本体15を前進させる複数のシールドジャッキ1とを有する。
【0025】
これらシールドジャッキ1は、掘進機本体15内に取り付けられたシリンダ2と、シリンダ2内に収容されシリンダ2内を押し側室3と引き側室4とに仕切るピストン5と、一端がピストン5に接続され他端がシリンダ2から突出したロッド6とを有し、ロッド6の端部に設けられたシュー21を、立坑からの発進時には立坑に設けられた反力受け部材に押し当て、通常掘進時にはセグメント20に押し当てることで推進反力を得て、掘進機本体15を前進させる。
【0026】
本実施形態に係る微速掘進制御装置の油圧回路は、各シールドジャッキ1の押し側室3に夫々接続された押し側ライン7と、各押し側ライン7に夫々開閉可能に設けられた開閉弁8と、押し側ライン7を集合させた押し側集合ライン9と、各シールドジャッキ1の引き側室4に夫々接続された引き側ライン10と、これら引き側ライン10を集合させた引き側集合ライン11とを備えている。
【0027】
また、この油圧回路は、一端が押し側集合ライン9に接続されたメインライン25と、一端がメインライン25(又は押し側集合ライン9)に接続されたサブライン26と、サブライン26に設けられた絞り27とを備えている。サブライン26には、その内部を流れるオイルの流量を検出するセンサが設けられ、センサには、検出した流量を表示する表示部28が接続されている。なお、絞り27は、本実施形態では可変絞りとなっているが、可変機構は備えていなくても構わない。また、上記センサ及び表示部28は省略してもよい。
【0028】
メインライン25の端部とサブライン26の端部とは並列されており、それら端部は、速度切換弁29を介して、オイル導入ライン30に接続されている。速度切換弁29は、オイル導入ライン30をメインライン25に接続する通常速度モードと、オイル導入ライン30をサブライン26に接続する微速掘進モードとを切り替える機能を有し、掘進機本体15の掘進速度を通常速度と微速とに切り替えるものである。
【0029】
メインライン25には、シールドジャッキ1の押し側室3から速度切換弁29への方向のオイルの流れを妨げる逆止弁31が設けられ、同様に、サブライン26には、押し側室3から速度切換弁29への方向のオイルの流れを妨げる逆止弁32が設けられている。
【0030】
また、この油圧回路は、オイルポンプPにより加圧されたオイルが供給されるオイル供給ライン13と、オイルをオイルタンクTに戻すためのオイル戻しライン14と、押引切換弁12とを備えている。押引切換弁12は、並列されたオイル供給ライン13及びオイル戻しライン14の端部と、並列されたオイル導入ライン30及び引き側集合ライン11の端部との間に、介設されている。
【0031】
押引切換弁12は、オイル供給ライン13をオイル導入ライン30に接続すると共に引き側集合ライン11をオイル戻しライン14に接続する押しモードと、オイル供給ライン13を引き側集合ライン11に接続すると共にオイル導入ライン30をオイル戻しライン14に接続する引きモードとを切り替えることが可能な電磁切換弁からなり、シールドジャッキ1の伸長(押し)、収縮(引き)を制御するものである。
【0032】
また、この油圧回路は、一端が押し側集合ライン9に接続され、他端がオイル導入ライン30に接続されたオイル返却ライン33を有する。オイル返却ライン33には、ライン33内を開閉する開閉弁34が設けられている。開閉弁34は、押引切換弁12が押しモードのときに閉じられ、押引切換弁12が引きモードのときに開かれる。
【0033】
なお、開閉弁8は、漏れのない電磁切換弁であってもよい。
【0034】
また、速度切換弁29のシンボルを変え、逆止弁31をパイロットチェック弁(パイロット油圧が加わると逆止機能が解除されるチェック弁)にすることで、シールドジャッキ1の収縮時におけるオイル返却ライン33、開閉弁34の代用とすることができるので、オイル返却ライン33及び開閉弁34を省略できる。
【0035】
本実施形態の作用を述べる。
【0036】
掘進機本体15を通常の速度で掘進させるときには、図1に示す押引切換弁12を押しモードとし、速度切換弁29を通常速度モードとし、開閉弁34を閉じる。
【0037】
これにより、オイル供給ライン13内の加圧オイル(オイルタンクTから吸い上げられてオイルポンプPで加圧されたオイル)は、押しモードとされた押引切換弁12を介してオイル導入ライン30に流入し、通常速度モードとされた速度切換弁29を介してメインライン25に流入し、押し側集合ライン9、押し側ライン7を通り、シールドジャッキ1の押し側室3に流入する。この結果、ピストン5が図1の上方に通常の速度で押し出され、ロッド6が通常の速度で突出され、掘進機本体15が通常の速度で掘進する。
【0038】
このとき、開閉弁34が閉じられているので、押し側集合ライン9内のオイルがオイル返却ライン33を通ってオイル導入ライン30に逆流することはない。また、逆止弁32は、メインライン25内のオイルがサブライン26の絞り27に逆流することを防止する。
【0039】
また、ピストン5が図1の上方に移動するに伴って、引き側室4内のオイルが引き側ライン10に押し出される。このオイルは、引き側ライン10、引き側集合ライン11を通って、オイル戻しライン14に排出され、オイルタンクTに戻される。
【0040】
掘進機本体15を微速で掘進させるときには、押引切換弁12を押しモードとし、速度切換弁29を微速掘進モードとし、開閉弁34を閉じる。
【0041】
これにより、オイル供給ライン13内の加圧オイルが、押しモードとされた押引切換弁12を介してオイル導入ライン30に流入し、微速掘進モードとされた速度切換弁29を介し、絞り27が設けられたサブライン26に流入し、絞り27によって流量が制限された後、押し側集合ライン9、押し側ライン7を通り、シールドジャッキ1の押し側室3に流入する。この結果、ピストン5が図1の上方に微速で押し出され、ロッド6が微速で突出され、掘進機本体15が微速掘進される。
【0042】
すなわち、微速掘進モードにおいては、押し側室3に流入するオイルの流量が絞り27で制限されているため、押し側室3に流入するオイルが絞り27を通過しない通常速度モードと比べると、ロッド6の突出速度が小さくなり、掘進機本体15の微速掘進が達成される。
【0043】
ここで、押し側ライン7に設けられた開閉弁8は、ライン7内を開閉する単純な構造の弁であってオイル漏れが生じない。また、逆止弁32も構造上、オイル漏れが生じない。よって、絞り27によって流量が絞られたオイルは、以降、オイル漏れが生じない逆止弁32及び開閉弁8を通ってシールドジャッキ1の押し側室3に導入されることになり、シールドジャッキ1は、絞り27で絞られたオイル流量が的確に反映された速度(微速)で伸長される。この結果、掘進機本体15を、高精度で微速掘進させることができる。
【0044】
すなわち、絞り27によって流量が絞られる前のオイルが流れる押引切換弁12、速度切換弁29は、複数のライン(流路)を繋ぎ変える弁であるため、弁12、29のケーシングとその内部のスプールとの隙間からのオイル漏れが不可避である。これに対し、絞り27によって流量が絞られた後のオイルが流れるサブライン26の逆止弁32は、構造上オイル漏れが生じることはなく、また、この逆止弁32を通過した後のオイルが流れる押し側ライン7の開閉弁8は、流路を開閉するのみであるのでオイル漏れが生じない。
【0045】
このため、絞り27によって流量が絞られたオイルは、逆止弁32を通過する際にオイル漏れによる流量減少が生じず、且つ開閉弁8を通過する際にオイル漏れによる流量減少が生じず、絞られた流量の全てが的確にシールドジャッキ1の押し側室3に導かれる。よって、掘進機本体15を微速掘進させる際に、押引切換弁12や速度切換弁29にてオイル漏れが生じたとしても、シールドジャッキ1は、絞り27で絞られたオイル流量が的確に反映された速度(微速)で伸長され、掘進機本体15を絞り27の絞り度合いに応じた高精度で微速掘進させることができる。
【0046】
このようにシールドジャッキ1を微速で伸長させる場合、絞り27から押し側室3に至るオイル流路においてはオイル漏れが生じない。よって、絞り27(可変絞り)の絞り度合いを、作業員が表示部28に表示されるサブライン26を流れるオイル流量を見ながら調節することで、押し側室3に導かれるオイルの流量を表示部28に表示された流量に的確に制御でき、ロッド6の突出速度(微速突出速度)、すなわち掘進本体15の掘進速度(微速掘進速度)を高精度で制御できる。
【0047】
また、本実施形態においては、高コストとなるネジ送り機構が内蔵された機械式のシールドジャッキを用いることなく、一般的な油圧式のシールドジャッキ1のみを用いて、掘進機本体15を高精度で微速掘進制御できるので、機械式のシールドジャッキを用いたものと比べると大幅にコストダウンできる。
【0048】
なお、上述のようにシールドジャッキ1を微速で伸長させる場合には、図1に示す開閉弁34が閉じられているので、押し側集合ライン9内のオイルがオイル返却ライン33を通ってオイル導入ライン30に逆流することはない。また、逆止弁31は、サブライン26内のオイルがメインライン25を介して速度切換弁29に逆流することを防止する。
【0049】
また、シールドジャッキ1の引き側室4から引き側ライン10に押し出されたオイルは、引き側集合ライン11を通って、オイル戻しライン14に排出され、オイルタンクTに戻される。
【0050】
次に、シールドジャッキ1を収縮させる手順を述べる。
【0051】
シールドジャッキ1を収縮させるときには、押引切換弁12を引きモードとし、開閉弁34を開く。なお、このとき速度切換弁29には、逆止弁31、32の逆止機能によってオイルが通過しない。よって、速度切換弁29は通常速度モードとなっていても微速掘進モードとなっていてもよい。
【0052】
押引切換弁12を引きモードとし、開閉弁34を開くことより、オイル供給ライン13内の加圧オイルは、引きモードとされた押引切換弁12を介して引き側集合ライン11に流入し、引き側ライン10を通ってシールドジャッキ1の引き側室4に流入する。この結果、ピストン5が図1の下方に押し出され、ピストン5に接続されたロッド6が没入される。
【0053】
ここで、特定の開閉弁8(1個でも2個以上でもよい)を開き、他の開閉弁8を閉じておくことで、特定の開閉弁8に接続されたシールドジャッキ1のピストン5のみが図1の下方に移動してそれに接続されたロッド6のみが没入される。よって、そのロッド6の端部に設けたシュー21と既設のセグメント20との間に、新たなセグメントを組み付けるためのスペースが形成されることになる。
【0054】
シールドジャッキ1のピストン5が図1の下方に移動すると、押し側室3内のオイルが押し側ライン7に押し出される。押し出されたオイルは、押し側集合ライン9、開かれた開閉弁34、返却ライン33を通って、オイル導入ライン30に至り、引きモードとされた押引切換弁12を介してオイル戻しライン14に排出され、オイルタンクTに戻される。
【0055】
以上述べたように本実施形態に係るシールド掘進機の微速掘進制御装置によれば、高コストとなる機械式(ネジ送り式)のシールドジャッキを用いることなく、一般的な油圧式のシールドジャッキ1のみを用いて、掘進機本体15を高精度で微速掘進制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係るシールド掘進機の微速掘進制御装置を具備したシールドジャッキの油圧回路の概略図である。
【図2】従来例に係るシールド掘進機のシールドジャッキの油圧回路の概略図である。
【図3】図1に示すシールド掘進機が地山を掘進している様子を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 シールドジャッキ
2 シリンダ
3 押し側室
4 引き側室
5 ピストン
7 押し側ライン
8 開閉弁
9 押し側集合ライン
15 掘進機本体
20 セグメント
25 メインライン
26 サブライン
27 絞り
28 表示部
29 速度切換弁
30 オイル導入ライン
31 逆止弁
32 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘進機本体内に、セグメント等の反力受け部材に反力を取って上記掘進機本体を前進させるシールドジャッキを複数設け、
該シールドジャッキは、内部がピストンによって押し側室と引き側室とに仕切られたシリンダを有するシールド掘進機の微速掘進制御装置であって、
上記各シールドジャッキの押し側室に夫々接続された押し側ラインと、
各押し側ラインに夫々開閉可能に設けられた開閉弁と、
各押し側ラインを集合する押し側集合ラインと、
一端が上記押し側集合ラインに接続されたメインラインと、
一端が上記メインライン又は上記押し側集合ラインに接続されたサブラインと、
該サブラインに設けられた絞りと、
加圧オイルが導入されるオイル導入ラインと、
該オイル導入ラインを上記メインラインの他端に接続する通常速度モードと、上記オイル導入ラインを上記サブラインの他端に接続する微速掘進モードとを切り替える速度切換弁と
を備えたことを特徴とするシールド掘進機の微速掘進制御装置。
【請求項2】
上記サブラインに、上記押し側室から上記速度切換弁への方向のオイルの流れを妨げる逆止弁を設け、
上記メインラインに、上記押し側室から上記速度切換弁への方向のオイルの流れを妨げる逆止弁を設けた請求項1に記載のシールド掘進機の微速掘進制御装置。
【請求項3】
上記絞りが、可変絞りである請求項1又は2に記載のシールド掘進機の微速掘進制御装置。
【請求項4】
上記サブラインの内部を流れるオイルの流量を表示する表示部を備えた請求項3に記載のシールド掘進機の微速掘進制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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