説明

シールド掘進機及びそのカッタ駆動用電動機の制御方法

【課題】カッタヘッドを複数の電動機で駆動するタイプにおいて、切羽の切削抵抗の変動に拘わらず、各電動機を定格出力に近い状態で運転させることができ、以て各電動機の効率を向上させて消費電力の改善を図る。
【解決手段】カッタヘッド4を切羽の切削抵抗の変動に拘わらず一定回転数で駆動させて切羽を切削しているときに、電動機51の全数の使用電力を検出する電力検出手段9と、電力検出手段9で検出された使用電力の変動に応じて、電動機51の使用台数を変化させる制御手段11とを備えた。使用電力が小さくなっていくときには、電動機51の使用台数を、カッタヘッド4を切羽の切削抵抗に打ち勝って一定回転数で駆動させることができる範囲で減少させていき、電動機51の使用台数が全数ではない状態で、使用電力が大きくなっていくときには、カッタヘッド4が切羽の切削抵抗に負けて停止する前に電動機51の使用台数を増加させていく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッタヘッドを複数の電動機で駆動するシールド掘進機及びそのカッタ駆動用電動機の制御方法に係り、特に、消費電力の低減を図ったシールド掘進機及びそのカッタ駆動用電動機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切羽を切削するカッタヘッドを、複数の電動機で駆動するようにしたシールド掘進機が知られている(特許文献1、2等)。通常この種のシールド掘進機は、常に全ての電動機を使用し、カッタヘッドを切羽の切削抵抗の変動に拘わらず一定回転数(rpm)で駆動させて切羽を切削している。
【0003】
このようにカッタヘッドの駆動速度を切羽の切削抵抗の変動に拘わらず一定回転数で制御した場合、切羽の切削抵抗が小さくなると、カッタヘッドを駆動するために必要なトルクが小さくなって各電動機に供給される電力が小さくなり、切羽の切削抵抗が大きくなると、カッタヘッドを駆動するために必要なトルクが大きくなって各電動機に供給される電力が大きくなる。
【0004】
【特許文献1】特開平7−102885号公報
【特許文献2】特開2001−200688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動機は、一般に、定格出力に近い出力(大出力)で使用する方が、定格出力から離れた出力(小出力)で使用するよりも、効率が高いという特性を有する。
【0006】
ここで、上述のように全ての電動機を常に使用し、カッタヘッドを切羽の切削抵抗の変動に拘わらず一定回転数で駆動させて切羽を切削する場合、切羽の切削抵抗が小さくなってカッタヘッドを上記一定回転数で駆動するために必要な力が小さくなると、各電動機が定格出力よりも小さい小出力で運転される状態となる。このため、効率が悪化し、必要以上に電力を消費してしまう。
【0007】
切羽の切削抵抗は、切羽の土質、掘削速度等の施工条件で変動し、特に地盤改良区間通過時、大礫出現時、障害物の出現時等の地山を掘削するときに必要なトルクは、通常の地山を掘削するときに必要なトルクよりも遙かに大きくなる。その結果、地盤改良区間等で必要とされる電動機の出力は、通常地山を掘削するときに必要な電動機出力よりも遙かに大きくなる。よって、シールド掘進機に装備される電動機の定格出力と台数は、地盤改良区間等の大きな出力を必要とする場合を想定して算出された所用出力に、所定の割増係数(安全率)を乗じて決定されている。
【0008】
すなわち、シールド掘進機に装備される電動機の定格出力と台数は、掘削経路上における通常地山(平均的な切削抵抗の切羽)を掘削するときに必要な出力よりも、遙かに大きな値となるように設定されている。よって、かかる電動機は、掘削経路にて通常地山を切削するときには、定格出力よりも遙かに小さい出力で運転される状態となる。この結果、効率が悪化し、必要以上に電力を消費してしまうことになる。
【0009】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、カッタヘッドを複数の電動機で駆動するシールド掘進機及びそのカッタ駆動用電動機の制御方法において、切羽の切削抵抗の変動に拘わらず、各電動機を定格出力に近い状態で運転させることができ、これにより各電動機の効率が向上して電力消費量を改善できるシールド掘進機及びそのカッタ駆動用電動機の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために第1の発明は、カッタヘッドを複数の電動機で駆動して切羽を切削するシールド掘進機であって、上記電動機の使用電力の総和を検出する電力検出手段と、該電力検出手段で検出された上記使用電力の変動に応じて、上記電動機の使用台数を変化させる制御手段とを備えたものである。
【0011】
上記制御手段は、上記電力検出手段で検出された上記使用電力が小さくなっていくときには、上記電動機の使用台数を、上記カッタヘッドを切羽の切削抵抗に打ち勝って駆動させることができる範囲で減少させていき、上記電動機の使用台数が全数ではない状態で、上記使用電力が大きくなっていくときには、上記カッタヘッドが切羽の切削抵抗に負けて停止する前に上記電動機の使用台数を増加させていくものであってもよい。
【0012】
上記制御手段は、上記カッタヘッドを始動させる際に上記電動機を全数使用し、その後、所定の制御時刻ごとに、その制御時刻から過去に所定の検出時間遡ってその検出時間内における上記使用電力の最大値を求め、その最大値を基準として上記制御時刻における上記電動機の使用台数を変化させるものであってもよい。
【0013】
第2の発明は、カッタヘッドを複数の電動機で駆動して切羽を切削するシールド掘進機のカッタ駆動用電動機の制御方法であって、上記電動機の使用電力の総和を検出し、検出された上記使用電力が小さくなっていくときには、上記電動機の使用台数を、上記カッタヘッドを切羽の切削抵抗に打ち勝って駆動させることができる範囲で減少させて、上記カッタヘッドの駆動を確保しつつ個々の電動機の掘削出力を個々の電動機の定格出力に近付け、上記電動機の使用台数が全数ではない状態で、上記使用電力が大きくなっていくときには、上記カッタヘッドが切羽の切削抵抗に負けて停止する前に上記電動機の使用台数を増加させて、上記カッタヘッドの駆動を確保しつつ個々の電動機の掘削出力を個々の電動機の定格出力に近付けるようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カッタヘッドを複数の電動機で駆動するシールド掘進機及びそのカッタ駆動用電動機の制御方法において、切羽の切削抵抗の変動に拘わらず、各電動機を定格出力に近い状態で運転させることができ、これにより各電動機の効率が向上して電力消費量を改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の好適実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るシールド掘進機の概略説明図である。このシールド掘進機には、後述するように、本発明に係るカッタ駆動用電動機の制御方法を実施する装置が組み込まれている。
【0017】
シールド掘進機1は、筒状のシールドフレーム2と、シールドフレーム2内に設けられた隔壁3と、隔壁3に回転可能に支持されたカッタヘッド4と、カッタヘッド4を回転駆動するための複数のモータユニット5とを有する。カッタヘッド4にはセンターシャフト6が設けられ、センターシャフト6は隔壁3に回転可能に支持され、隔壁3よりも後方のセンターシャフト6にはカッタギヤ7が設けられている。カッタギヤ7には、モータユニット5のピニオン54が噛合されている。
【0018】
モータユニット5は、電動機51と、電動機51にクラッチ52を介して接続された減速機53と、減速機53の出力軸に設けられたピニオン54とで構成され、減速機53がシールドフレーム2の図示しない部位に固定されている。電動機51の出力軸の回転は、クラッチ52を切ったときには減速機53及びピニオン54に伝達されることはなく、クラッチ52を繋いだときに減速機53で減速されてピニオン54に伝達される。なお、上記クラッチ52を省略し、電動機51に減速機53を直結してもよい。
【0019】
電動機51とそれを駆動する電源8との間には、電動機51の使用電力の総和を検出する電力検出装置(電力検出手段)9が設けられている。電源8には一定電圧(例えば400V)のものが用いられ、電力検出装置9には例えば電流計が用いられる。各電動機51にはそれぞれ起動回路10が接続されており、各電動機51は個々に使用又は停止ができるようになっている。
【0020】
これら電動機51は、カッタヘッド4を切羽の切削抵抗の変動に拘わらず一定回転数で駆動する。よって、切羽の切削抵抗が小さくなると、カッタヘッド4を上記一定回転数で駆動するために必要な力が小さくなって各電動機51に供給される電力が小さくなり、逆に、切羽の切削抵抗が大きくなると、カッタヘッド4を上記一定回転数で駆動するために必要な力が大きくなって各電動機51に供給される電力が大きくなる。
【0021】
このシールド掘進機1は、電力検出装置9で検出された上記使用電力(全電動機51の使用電力)の変動に応じて、電動機51の使用台数を変化させる制御手段11を備えている。制御手段11は、本実施形態においては、各電動機51に夫々接続された起動回路10と、これら起動回路10に接続された制御回路12とから主に構成される。制御回路12は、モータユニット5のクラッチ52を断接するアクチュエータにも接続されている。
【0022】
制御手段11(制御回路12)は、電力検出装置9で検出された上記使用電力が経時的に小さくなっていくときには、電動機51の使用台数を、カッタヘッド4を切羽の切削抵抗に打ち勝って上記一定回転数で駆動させることができる範囲で減少させる。詳しくは、運転停止対象となる電動機51のクラッチ52を切った後、その電動機51を停止する。クラッチ52を切ることで、使用を停止した電動機51がカッタヘッド4の回転によって連れ回されることがなくなり、引き摺りトルクの発生や使用停止された電動機51で発電された電流が起動回路10に悪影響を与える事態を回避できる。
【0023】
また、制御手段11は、電動機51の使用台数が全数ではない状態で、電力検出装置9で検出された上記使用電力が経時的に大きくなっていくときには、カッタヘッド4が切羽の切削抵抗に負けて停止する前に、停止されていた電動機51を起動して電動機51の使用台数を増加させていく。詳しくは、増加使用する電動機51を起動した後にその電動機51に連なるクラッチ52を繋ぐ。ここで、停止されていた電動機51を起動した後、その出力軸の回転数がカッタヘッド4の回転によって連れ回されている減速機53の入力軸の回転数と略同じになった後にクラッチ52を繋ぐことで、接続時のショックが軽減される。
【0024】
なお、上記クラッチ52を省略した場合には、制御手段11は、電力検出装置9で検出された上記使用電力が経時的に小さくなっていくときには、電動機51の使用台数を、カッタヘッド4を切羽の切削抵抗に打ち勝って上記一定回転数で駆動させることができる範囲で減少させていき、電動機51の使用台数が全数ではない状態で、逆に、上記使用電力が経時的に大きくなっていくときには、カッタヘッド4が切羽の切削抵抗に負けて停止する前に電動機51の使用台数を増加させていくことになる。
【0025】
ところで、シールド掘進機1のカッタヘッド4を一定回転数で駆動するためのトルク(カッタトルク)は、既述のように、地盤改良区間や大礫出現時等の高トルクを必要とする場合を想定して所用トルクを算出し、それに割増係数を乗じた形で装備トルクが決定される。従って、地盤状態が良好な場合には、掘削トルクは装備トルクよりも少なくなる。一方、上記装備トルクを達成するためにカッタモータ(電動機51)を選定するが、機内スペースの関係で複数の電動機51を搭載することが一般的である。
【0026】
ここで、
カッタの装備トルク Ts
カッタの掘削トルク Tc
装備トルクに対する掘削トルクの比 η(但し 0<η<1)
電動機の装備台数 Mn(但し Mnは自然数)
電動機の削減台数 a(但し aは自然数)
電動機1台当たりの定格トルク Tms
電動機1台当たりの掘削トルク(全数使用時) Tmc(但し Tmc≦Tms)
電動機1台当たりの定格出力 Qs
電動機1台当たりの掘削出力(全数使用時) Qc(但し Qc≦Qs)
電動機1台当たりの掘削トルク(台数削減時) Tmca(但し Tmca≦Tms)
電動機1台当たりの掘削出力(台数削減時) Qca(但し Qca≦Qs)
とすると、シールド掘進機が装備トルク未満で掘削している場合、TsとTcとの間に以下の関係が成立する。
【0027】
Tc=η・Ts …(1)
電動機を全て使用した場合、式(1)はη、Mn、Tmc、Tmsを用いて
Mn・Tmc=η・Mn・Tms …(2)
と表すことができる。式(2)の両辺に電動機の回転数を乗じ、Mnを除せば
Qc=η・Qs …(3)
と表すことができる。
【0028】
従って、各電動機の掘削(使用)出力は、定格出力のη倍となる。
【0029】
さて、
1≦a<(1−η)・Mn
という条件を満たす自然数aが存在する場合、装備された電動機のうちa台を停止させて掘削を行うとする。この場合、式(1)はη、Tmca、Tms、Mnを用いて
(Mn−a)・Tmca=η・Mn・Tms …(4)
と表すことができる。さらに、式(4)を変形して
Tmca=η・{Mn/(Mn−a)}・Tms …(5)
となる。式(5)の両辺に電動機の回転数を乗じれば
Qca=η・{Mn/(Mn−a)}・Qs …(6)
式(6)より、各電動機の掘削(使用)出力Qcaは、定格出力Qsのη・{Mn/(Mn−a)}倍となる。
【0030】
また、初期条件より、Qca<Qsなので、式(6)を変形すると
η・{Mn/(Mn−a)}=Qca/Qs<1 …(7)
となる。
【0031】
ここで、ηは初期条件より0<η<1であり、{Mn/(Mn−a)}>1は自明なので、式(7)を整理すると
0<η<η・Mn/(Mn−a)<1 …(8)
と表すことができる。式(8)の各辺にQsを乗じれば
0<η・Qs<η・{Mn/(Mn−a)}・Qs<Qs
となり、式(3)、式(6)より
0<Qc<Qca<Qs
となる。
【0032】
よって、各電動機の掘削(使用)出力は、電動機を一部停止した場合の出力Qcaが、電動機を全数使用した場合の出力Qcよりも大きく、定格出力Qsに近い値となる。よって、電動機を一部停止することにより全数使用した場合よりも効率を向上させることができる。
【0033】
式(6)を考察すると、
Qca=η・{Mn/(Mn−a)}・Qs
にて、台数削減時の電動機の掘削出力Qcaは、電動機の定格出力Qsを上回ることはできず、且つ、効率アップのために台数削減時の掘削出力Qcaを定格出力Qsに近付けたいという要求がある。この要求を満足するためには、η・{Mn/(Mn−a)}≦1で、且つ、η・{Mn/(Mn−a)}をなるべく1に近付ければよい。
【0034】
ここで、η=Tc/Tsのうち、装備トルクTsは定数であるが、掘削トルクTcは、切羽の切削抵抗に応じて変動する変数である。よって、掘削トルクTcが小さくなってηが小さくなった場合、削減台数aを増やす(使用台数を減らす)ことで、η・{Mn/(Mn−a)}を1に近い状態に保持することができる。
【0035】
また、こうして電動機の使用台数が何台か削減された状態で、掘削トルクTcが大きくなってηが大きくなった場合、削減台数aを減らす(使用台数を増やす)ことで、カッタヘッドが切羽の切削抵抗に負けて停止する事態を回避し、η・{Mn/(Mn−a)}を1に近い状態に保持することができる。
【0036】
図2は、電動機の装備台数Mnが10のときのη・{Mn/(Mn−a)}の値を示す表である。図2にて、縦欄は10台の電動機のうちの削減台数a(使用を停止する台数)であり、横欄は装備トルクTsに対する掘削トルクTcの比ηである。
【0037】
η=1の状態のとき、電動機の削減台数aは0であり、このとき、η・{Mn/(Mn−a)}は1となっている。これを、式(6)に基づき考察すると、Qca=Qsとなり、電動機の効率が最高となる。
【0038】
この状態から掘削トルクTcが下がってη=0.9となると、a=0のままでは、η・{Mn/(Mn−a)}も0.9となって電動機の効率が下がってしまう。そこで、電動機を1台停止してa=1とすることで、η・{Mn/(Mn−a)}が1となって、電動機の効率が最高となり、且つカッタヘッドの駆動を確保できる。
【0039】
更に、掘削トルクTcが下がってη=0.8となると、a=1のままでは、η・{Mn/(Mn−a)}も0.89となって電動機の効率が下がるが、電動機を更に1台停止してa=2とすると、η・{Mn/(Mn−a)}が1となって、電動機の効率を最高にすることができる。
【0040】
以下、同様に掘削トルクTcが下がって、η=0.7、0.6、0.5となるに連れて、電動機の削減台数aを3台、4台、5台と増やしていくことで、η・{Mn/(Mn−a)}を1に維持することができる。
【0041】
逆に、η=0.5、a=5で掘削しているとき、掘削トルクTcが上がってη=0.6となると、a=5のままでは、η・{Mn/(Mn−a)}が1を超えてしまい、カッタヘッドが切羽の切削抵抗に負けて停止してしまうので、電動機の使用台数を1台増やし(削減台数を1台減らし)、a=4とする。これにより、η・{Mn/(Mn−a)}が1となり、電動機の効率が最高となる。
【0042】
以下、同様に掘削トルクTcが上がって、η=0.7、0.8、0.9、1.0となるに連れて、電動機の削減台数aを3台、2台、1台、0台と減らしていくことで、η・{Mn/(Mn−a)}を1に維持でき、電動機の効率を最高とできる。
【0043】
このように、本実施形態によれば、電動機の使用台数(削減台数a)を、切羽の切削抵抗の変動、即ち掘削トルクTcの変動、即ちηの変動に応じて、上述のように変更することで、電動機を常時90%以上の出力で使用できる。この結果、各電動機の効率が向上して消費電力を改善できる。
【0044】
これに対し、切羽の切削抵抗が変動して掘削トルクTcが変動しηが変動しても、従来のように電動機の使用台数を減らすことなくa=0のままとすると、例えば、切羽の切削抵抗が徐々に小さくなってηが1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5と低下するに連れて、η・{Mn/(Mn−a)}の値が1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5と低下してしまうため、電動機の掘削出力Qcaが電動機の定格出力Qsに対して徐々に小さくなり(式(6)参照)、電動機の効率が悪化していってしまう。
【0045】
以上述べたように、本実施形態によれば、切羽の切削抵抗の状態に拘わらず、常に電動機の発生出力を定格出力近傍で使用できるので、効率が向上し、消費電力を低減することが可能となる。
【0046】
また、使用が停止される電動機を順位付けして定めておくことで、特定の電動機に負荷を集中させ、他の電動機を予備装備的に使用することが可能となる。この結果、全ての電動機が同時に寿命を迎えることはなく、長期間使用の場合のメインテナンススケジュールが立て易くなる。
【0047】
また、使用が停止される電動機を全電動機に順番に割り当て、負荷電動機をローテーションさせて各電動機を均等に使用すれば、各電動機の負荷時間が減少するので、シールド掘進機全体の寿命向上に繋がる。
【0048】
なお、本実施形態においては、ηの変動に対して電動機の削減台数aを、η・{Mn/(Mn−a)}の値が1となるような台数にしたが、η・{Mn/(Mn−a)}が1を超えずに1に近い値(例えば1.0〜0.8のいずれかの値、0.8〜0.7のいずれかの値)となるようなaを選択してもよい。これにより、電動機の効率は多少落ちるものの、掘削トルクに多少の余裕が生じるので、カッタヘッドが切羽の切削抵抗に負けて停止する事態を回避できる可能性が高まる。
【0049】
図3は、上述したカッタ駆動用の電動機の制御方法が適用された場合の、電動機の使用電力と使用台数との関係を表したグラフである。
【0050】
図1に示す制御手段(制御回路、起動回路等)は、図3に示すように、カッタヘッドを始動させる際に電動機を全数使用し、その後、所定の制御時刻tnごとに、その制御時刻tnから過去に所定の検出時間ts遡ってその検出時間ts内における全電動機の使用電力の最大値tniを求め、その最大値tniを基準として上記制御時刻tnにおける上記電動機の使用台数を変化させる。
【0051】
すなわち、図3に示すように、カッタヘッドを始動させる際(制御時刻t0)に電動機を全数(10台)使用し、t0から所定の制御間隔tmだけ時間が経過した後の制御時刻t1時に、t1から過去に所定の検出時間ts遡ってその検出時間ts内における上記使用電力の最大値t1iを求め、そのt1iを基準として制御時刻t1における電動機の使用台数を既述のように求め8台とする。
【0052】
その後、制御時刻t1から制御間隔tmだけ時間が経過した後の制御時刻t2時に、t2から過去に検出時間ts遡ってそのts内における上記使用電力の最大値t2iを求め、そのt2iを基準として制御時刻t2における電動機の使用台数を既述のように求め9台とする。
【0053】
爾後、掘削を停止した場合、掘削再開時には電動機を全数(10台)使用し、制御間隔tm及び検出時間tsの決定に際して掘削停止時間を削除して、制御時刻t2からtm1+tm2=tmだけ時間が経過した後の制御時刻t3時に、t3から過去に検出時間ts1+ts2=ts遡ってそのts内における上記使用電力の最大値t3iを求め、そのt3iを基準として制御時刻t3における電動機の使用台数を既述のように求め8台とする。
【0054】
なお、検出時間tsは、制御間隔tmと同じかそれ以上でなければならない。ts<tmであると未検出期間が発生してしまうため、それを回避するためである。
【0055】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0056】
電動機の台数は10台に限られず、5〜6台程度の小口径シールドにも、20台程度の大口径シールドにも、本発明を適用できる。また、カッタヘッドの支持方式は、図1に示すようにセンターシャフト支持方式に限られず、中間ビーム支持方式や、外周リング支持方式であってもよい。また、カッタヘッドの駆動方式は、回転駆動方式に限られず、所定範囲で回転方向が反転する往復駆動方式や、平行リンクを用いてカッタヘッドを自転させることなく公転させる駆動方式であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係るシールド掘進機の概略説明図である。
【図2】電動機の装備台数Mnが10のときのη・{Mn/(Mn−a)}の値を示す表である。
【図3】本実施形態に係るカッタ駆動用の電動機の制御方法が適用された場合の、電動機の使用電力と使用台数との関係を表したグラフである。
【符号の説明】
【0058】
1 シールド掘進機
4 カッタヘッド
5 モータユニット
12 制御回路
51 電動機
52 クラッチ
53 減速機
54 ピニオン
9 電力検出装置(電力検出手段)
10 起動回路
11 制御手段
12 制御回路
tn 制御時刻(n=0、1、2、3…)
ts 検出時間
tni 最大値(n=1、2、3…)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッタヘッドを複数の電動機で駆動して切羽を切削するシールド掘進機であって、
上記電動機の使用電力の総和を検出する電力検出手段と、
該電力検出手段で検出された上記使用電力の変動に応じて、上記電動機の使用台数を変化させる制御手段と
を備えたことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
上記制御手段は、
上記電力検出手段で検出された上記使用電力が小さくなっていくときには、上記電動機の使用台数を、上記カッタヘッドを切羽の切削抵抗に打ち勝って駆動させることができる範囲で減少させていき、
上記電動機の使用台数が全数ではない状態で、上記使用電力が大きくなっていくときには、上記カッタヘッドが切羽の切削抵抗に負けて停止する前に上記電動機の使用台数を増加させていく
請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項3】
上記制御手段は、
上記カッタヘッドを始動させる際に上記電動機を全数使用し、その後、所定の制御時刻ごとに、その制御時刻から過去に所定の検出時間遡ってその検出時間内における上記使用電力の最大値を求め、その最大値を基準として上記制御時刻における上記電動機の使用台数を変化させる
請求項1又は2に記載のシールド掘進機。
【請求項4】
カッタヘッドを複数の電動機で駆動して切羽を切削するシールド掘進機のカッタ駆動用電動機の制御方法であって、
上記電動機の使用電力の総和を検出し、
検出された上記使用電力が小さくなっていくときには、上記電動機の使用台数を、上記カッタヘッドを切羽の切削抵抗に打ち勝って駆動させることができる範囲で減少させて、上記カッタヘッドの駆動を確保しつつ個々の電動機の掘削出力を個々の電動機の定格出力に近付け、
上記電動機の使用台数が全数ではない状態で、上記使用電力が大きくなっていくときには、上記カッタヘッドが切羽の切削抵抗に負けて停止する前に上記電動機の使用台数を増加させて、上記カッタヘッドの駆動を確保しつつ個々の電動機の掘削出力を個々の電動機の定格出力に近付ける
ことを特徴とするシールド掘進機のカッタ駆動用電動機の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate