説明

シールド掘進機

【課題】掘進時のチャンバ14内の圧力を適切に保持して切羽面を常に安定させることが可能なシールド掘進機1を提供する。
【解決手段】シールドフレーム11と、その先端で地山Gを掘削するカッタフェイス12と、その背面に形成され掘削土砂が取り込まれるチャンバ14と、このチャンバ14内から前記掘削土砂を排出する排土管15と、前記チャンバ14内の圧力を維持するチャンバ内圧維持装置17を備え、このチャンバ内圧維持装置17は、排土管15に設けられた膨張膜171と、この膨張膜171を膨らませ、又は収縮させる流体圧力を印加する圧力源173と、チャンバ14内の圧力を常時検出する圧力センサ174を備え、圧力源173による膨張膜171への印加圧力が、予め設定された基準圧力と、圧力センサ174による検出圧力との偏差に基づいて制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法によるシールドトンネルの施工に用いられるシールド掘進機に関し、特に、掘進時のチャンバ内の圧力を安定させることを可能としたものに関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法によるトンネルの施工には、シールド掘進機が用いられる。図6は、従来のシールド掘進機を示す施工状態の鉛直断面図である。すなわち、図6に示されるように、シールド掘進機100は、略円筒形のシールドフレーム101の先端で、前面に多数のカッタビットを有するカッタフェイス102を、油圧モータ等からなるカッタ駆動装置103によって回転させ、これによって地山Gを掘削し、発生する掘削土砂(ズリとも呼ばれる)を、カッタフェイス102に形成されたスリットからその背面に形成されたチャンバ104内に取り込むと共に、このチャンバ104に給水管105を介して泥水などを加圧供給し、これによってカッタフェイス102の背圧(切羽土圧)を、地山Gの地下水圧とバランスする加圧状態に保持し、前面の泥土の噴発を防止しながら、掘削土砂の取り込みに伴い、排土管105を介して連続的に排出している。
【0003】
また、シールド掘進機100の後部内周では、掘削された坑内壁に、不図示のエレクタによって円弧状の複数の一次覆工用セグメント201を環状に組み立てて、地山Gの土圧に耐えるための覆工体200を施工すると共に、既に組み立てられた覆工体200の先端に推進用油圧ジャッキ106を当てて後方へ押圧し、その反力で、シールド掘進機を、カッタフェイスによる掘削を伴いながら推進させるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−49392号公報
【0004】
上述のように、土圧式のシールド掘進機100は、切羽面の崩壊を防止するために、カッタフェイス102の背面のチャンバ104内を常時泥土で充満させ、地山Gの地下水圧と拮抗し得る加圧状態に保ちながら、掘削土砂の取り込みに伴って生じるチャンバ104内の泥土の余剰分が、排土管105を通じて連続的に排出される。
【0005】
しかしながら、チャンバ104内の土圧(切羽土圧)は、掘進に伴ってチャンバ104に取り込まれる掘削土砂の流動性や、その他の種々の原因によって変化するのに対し、排土管105の開口部に設けられたシャッタゲート105aの開度や、排土バルブ105bの開度などを、チャンバ104内の土圧変化に応じてリアルタイムで調整することができず、このため、チャンバ104内の土圧を適切に保持することは難しかった。特に、シールド掘進機100の発進(初期掘進)時には、チャンバ104内に充満させた泥土が、シャッタゲート105a及び排土バルブ105bの開放と同時に排土管105へ流動するため、適正な切羽土圧を維持できなくなることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、掘進時のチャンバ内の圧力を適切に保持して切羽面を常に安定させることが可能なシールド掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るシールド掘進機は、シールドフレームと、その先端で地山を掘削するカッタフェイスと、前記シールドフレームの先端部とカッタフェイスの背面との間に画成され掘削土砂が取り込まれるチャンバと、このチャンバ内から前記掘削土砂を排出する排土管と、前記チャンバ内の圧力を維持するチャンバ内圧維持装置を備え、このチャンバ内圧維持装置は、前記排土管に設けられた膨張膜と、この膨張膜を、前記排土管内の土砂通路を狭めるように膨らませ、又は前記土砂通路を広げるように収縮させる流体圧力を印加する圧力源と、からなることを特徴とするものである。
【0008】
すなわち、この構成によれば、チャンバ内の圧力が所要の圧力より低くなった場合には、膨張膜に印加する圧力源からの流体圧力を増圧し、すなわち膨張膜の背面に作動流体を加圧供給すれば、これに伴って膨張膜が排土管内の土砂通路を狭めるように、直ちに膨張するため、掘削による掘削土砂の取り込みに伴う排土管内の土砂の移動が抑制されて、チャンバの内圧が上昇する。逆に、チャンバ内の圧力が所要の圧力より高くなった場合には、前記膨張膜に印加する圧力源からの流体圧力を減圧し、すなわち膨張膜の背面から作動流体を排出すれば、これに伴って膨張膜が排土管内の土砂通路を広げるように、直ちに収縮するため、掘削による掘削土砂の取り込みに伴う排土管内の土砂の移動が容易になって、チャンバの内圧が低下する。そして、このような膨張膜の膨張・収縮動作は、印加される流体圧力に対する応答性に優れているので、シャッタゲートや排土バルブの開度制御ではなし得なかったリアルタイムでの制御を行うことができる。
【0009】
また、請求項2の発明に係るシールド掘進機は、請求項1に記載の構成において、チャンバ内圧維持装置が、チャンバ内の圧力を常時検出する圧力センサを備え、圧力源による膨張膜への印加圧力が、予め設定された基準圧力と、前記圧力センサによる検出圧力との偏差に基づいて制御されるものである。
【0010】
すなわち、この構成によれば、チャンバ内圧維持装置によって、チャンバ内の圧力を、予め設定された基準圧力に維持するような制御が行われる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明に係るシールド掘進機によれば、流体圧力によって応答性良く動作するチャンバ内圧維持装置によって、掘進に伴う切羽土圧の変化を抑制して切羽面を安定させることができ、また、シールド掘進機の発進(初期掘進)時に、排土管のシャッタゲート等を開放することによるチャンバ内の圧力の急激な低下を防止することができる。このためチャンバ内の圧力低下による切羽面からの土砂の噴発や、チャンバ内の圧力上昇によるカッタフェイスの掘削抵抗の増大を有効に防止して、施工効率を向上することができる。
【0012】
請求項2の発明に係るシールド掘進機によれば、請求項1の構成による効果に加え、チャンバ内の圧力を常時検出する圧力センサからの検出圧力の変化に応じて、チャンバ内圧維持装置による圧力制御動作がリアルタイムで行われるので、チャンバ内の圧力を、ほぼ一定に維持することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るシールド掘進機の構成を、本線トンネルから分岐する分岐トンネルを掘削するために用いられる分岐シールド掘進機に適用した、好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施の形態に係る分岐シールド掘進機を、分岐発進前の状態で示す鉛直断面図、図2は、分岐発進時の状態で示す鉛直断面図、図3は、チャンバ内圧維持装置の構成及び動作を概略的に示す説明図、図4は、チャンバ内圧維持装置の更に具体的な例を示す説明図、図5は、実施の形態に係る分岐シールド掘進機を、分岐発進後の状態で示す鉛直断面図である。
【0014】
すなわち図1及び図2に示されるように、本発明の実施の形態に係る分岐シールド掘進機1は、筒状のシールドフレーム11と、その先端で地山を掘削するカッタフェイス12と、このカッタフェイス12を回転駆動させるカッタ駆動装置13と、カッタフェイス12の背面に形成され掘削土砂(ズリ)が取り込まれるチャンバ14と、このチャンバ14内から前記掘削土砂を排出する排土管15と、チャンバ14内へ水を供給する給水管16と、チャンバ14内の圧力を維持するためのチャンバ内圧維持装置17を備える。
【0015】
シールドフレーム11は、図2に示されるように、前方(カッタフェイス12側)の前部鋼殻111と、その後方に円周方向複数の中折れ用油圧ジャッキ113を介して互いに角変位可能に連結される後部鋼殻112とからなる。すなわちこの分岐シールド掘進機1は、カーブしたトンネルの掘削に対応するために、シールドフレーム11が中折れ式になっており、後部鋼殻112の前端部は、外周面が球面状に形成されて、前部鋼殻111の後端部の内周に遊挿されており、両者の間は、外周の地山Gから土砂や地下水が機内へ侵入することのないように、密封装置114で密封される。
【0016】
カッタフェイス12は円盤状であって、前面に多数のカッタビット121を備え、また地山Gの掘削によって生じた掘削土砂を取り込むための不図示のスリットが形成されており、シールドフレーム11における前部鋼殻111の前端に配置されている。前部鋼殻111の前端近傍には、カッタフェイス12の背面との間にチャンバ14を画成する隔壁115が設けられており、油圧モータ等からなるカッタ駆動装置13は、隔壁115の内周を貫通した状態で取り付けられている。
【0017】
排土管15は、チャンバ14内の掘削土砂を排出するもので、隔壁115の下部でチャンバ14に開口されて、そこから後方かつ斜め上方へ延びている。また、チャンバ14内へ水を供給するための給水管16は、隔壁115の上部でチャンバ14に開口されている。この排土管15は、当該掘進機1の運転時には、泥水等が常時充満した状態にある。
【0018】
排土管15におけるチャンバ14側の端部には、シャッタゲート151が設けられ、吐出側の端部には、バルブ駆動装置153で開閉駆動されるボールバルブ152が設けられている。
【0019】
チャンバ内圧維持装置17は、図3に示されるように、シャッタゲート151とボールバルブ152の間に位置して排土管15内に設けられたゴム状弾性材料からなる袋状の膨張膜171と、この膨張膜171の背面(内部空間)にアキュムレートタンク172を介して流体圧力(例えば油圧)を印加する圧力源173と、シールドフレーム11における前部鋼殻111の隔壁115に取り付けられてチャンバ14内の泥土の圧力を検出する圧力センサ174とを備える。
【0020】
また、チャンバ内圧維持装置17における圧力源173としては、例えば図4に示されるように、ポンプ175や圧力方向切換弁176を有し、圧力方向切換弁176は、ソレノイド176aによって切換位置176b〜176dのうちいずれかへ変位し、ポンプ175からの圧力方向を切り換えるものを適用することができる。そしてこの圧力源173は、圧力センサ174による検出値が、予め設定された基準圧力よりも低圧となった場合に、圧力方向切換弁176が切換位置176bに切り換わることによって、ポンプ175からの作動流体がアキュムレートタンク172を介して膨張膜171内に送られてこの膨張膜171を膨張させ、圧力センサ174による検出値が、前記基準圧力を超えて上昇した場合に、圧力方向切換弁176が切換位置176dに切り換わることによって、前記膨張膜171内の作動流体を排出して膨張膜171を収縮させるように、ポンプ175及びソレノイド176aが制御装置177を介して制御されている。
【0021】
シールドフレーム11における後部鋼殻112内には、掘削されたトンネル坑内壁面に、セグメントリング21を順次組み立てて円筒状の覆工体2を施工していくための不図示のエレクタと、円周方向に多数配置されて、覆工体2の先端を後方へ押し出すように動作することによって掘進方向への推力を得る推進用油圧ジャッキ18とを有する。また、後部鋼殻112の後端部内周には、前記覆工体2の外周面に摺動可能に密接されることによって、地山Gからの土砂や地下水がトンネル内及びシールドフレーム11内へ流入するのを防止するための、複数段のシールリップからなるテールシール116が設けられている。
【0022】
一方、図1及び図2における参照符号3は、図示の断面と直交する方向へ掘進する本線シールド掘進機で施工された本線トンネルであり、この施工に用いられた不図示の本線シールド掘進機は、基本的には上述した分岐シールド掘進機1と同様、中折れ用油圧ジャッキを介して互いに角変位可能に連結されたいくつかの鋼殻からなるシールドフレームと、その先端で地山を掘削するカッタフェイス及びこのカッタフェイスを回転駆動させるカッタ駆動装置と、カッタフェイスの背面に形成されたチャンバと、このチャンバ内から掘削土砂を排出するスクリュコンベアと、チャンバ内へ水を供給する給水管と、シールドフレームの後部内周で、本線トンネルの坑内壁に一次覆工のためのセグメントリングを組み立てるエレクタと、組み立てられた本線トンネル覆工体の先端を後方へ押圧してその反力で掘進方向への推進力を得る推進用油圧ジャッキを備えている。
【0023】
分岐シールド掘進機1は、その発進前においては、図1に示されるように、シールドフレーム11に後部鋼殻112が接続されておらず、本線トンネル3の中に収容されており、その側壁部に設けられた分岐発進口32を開口させて、本線トンネルと略直角方向へ発進するものである。また、本線トンネル3の覆工体31における分岐発進口32と反対側の内面には、分岐シールド掘進機1の発進の際の反力を受ける反力受け33が取り付けられるようになっており、分岐発進口32の内側には、分岐シールド掘進機1の発進方向を案内する案内筒34が設けられ、その内周には、分岐シールド掘進機1のシールドフレーム11又はその後ろに組み立てられる覆工体2の外周と密接され、地山Gからの土砂や地下水が流入するのを防止する密封装置35が設けられている。
【0024】
すなわち、上述の構成において、本線シールド掘進機は、まず不図示の発進用竪坑から発進して、本線トンネルを施工する。本線シールド掘進機による掘進においては、良く知られているように、シールドフレームの掘進方向前端で、カッタフェイスを回転させて図示の断面と直交する方向へ地山Gを掘削し、これによって発生した掘削土砂を、カッタフェイスに形成されたスリットから、その背面のチャンバ内に取り込み、スクリュコンベア等の排土装置を介して連続的に排出し、更にそこから適宜搬送手段を介して外部へ排出する。また、本線シールド掘進機の掘進方向後端では、掘削された坑内壁に、セグメントリングの組み立てによる一次覆工が行われ、既設覆工体の前端に推進用油圧ジャッキを当てて後方へ押圧することによって、その反力で本線シールド掘進機を推進させる。
【0025】
次に、本線シールド掘進機によって、本線トンネル3が所定の地点まで施工されたら掘進を終了し、分岐シールド掘進機1の発進のために必要な種々の作業を行った後、分岐発進口32を開口させ、分岐シールド掘進機1を本線トンネル3から分岐発進させる。
【0026】
分岐シールド掘進機1の分岐発進においては、排土管15のシャッタゲート151及びボールバルブ152を予め閉塞しておく。そして、チャンバ14内へ給水管16を介して水(又は泥水や他の充填材)を圧入することにより、チャンバ14内を地山Gの圧力と拮抗する圧力に加圧した後、不図示の開口手段によって本線トンネル3の覆工体31に分岐発進口32を開口する。そして、分岐シールド掘進機1のカッタフェイス12をカッタ駆動装置13によって回転駆動させると共に、排土管15のシャッタゲート151及びボールバルブ152を適切な開度で開き、本線トンネル3の覆工体31に取り付けられた反力受け33を、分岐シールド掘進機1に仮設した不図示の油圧ジャッキ等で後方へ押し出すことによって、分岐シールド掘進機1は案内筒34で案内された発進方向への推力を得て、地中への掘進を開始する。
【0027】
ここで、分岐シールド掘進機1の発進時には、予めチャンバ14内に充満させた水(又は泥水や他の充填材)が、シャッタゲート151及びボールバルブ152の開放と同時に排土管15へ流動するため、チャンバ14内の圧力が急激に低下することがある。そしてこのような場合は、地山Gの土質によっては、カッタフェイス12による切羽面から土砂が噴発して、切羽面が崩壊するといったおそれがある。
【0028】
しかしながら、本発明の実施の形態である図示の分岐シールド掘進機1は、チャンバ14内の圧力が、圧力センサ174によって常時検出されており、その検出値が、予め適正な圧力値として設定された基準圧力より低くなると、不図示の制御装置を介して駆動が制御されているチャンバ内圧維持装置17は、直ちに膨張膜171の内部空間に圧力源173からの作動流体を圧送し、前記基準圧力と検出圧力との偏差データを制御値として、これに比例する圧力で膨張膜171を加圧するように動作する。このため、図3(A)に示されるように、膨張膜171が直ちに膨らんで、排土管15内の排土通路を狭めるので、排土管15内における土砂の流動抵抗が増大して、切羽面からチャンバ14内に掘削土砂が連続的に取り込まれることにより排土管15内を流動する排土の流量が減少して、チャンバ14内の圧力が上昇する。
【0029】
また、カッタフェイス12による地山Gの掘削によってチャンバ14内に掘削土砂が連続的に取り込まれるのに伴って、チャンバ14内の圧力が、予め設定された基準圧力を超えて上昇した場合は、これを検出する圧力センサ174からの検出値と前記基準圧力との偏差データを制御値として、チャンバ内圧維持装置17が、直ちに前記膨張膜171の内部空間から作動流体を排出するように動作するので、図3(B)に示されるように、膨張膜171が収縮して排土管15内の排土通路を広げる。このため、排土管15内における土砂の流動抵抗が減少し、切羽面からチャンバ14内に掘削土砂が連続的に取り込まれることにより排土管15内を流動する排土の流量が増大するので、チャンバ14内が減圧され、カッタフェイス12の掘削抵抗の異常な増大を防止することができる。
【0030】
したがって、このようなチャンバ内圧維持装置17の動作によって、本線トンネル3から分岐シールド掘進機1が分岐発進する時の切羽土圧の変動を抑制して適切な圧力値に保持することができる。
【0031】
なお、分岐シールド掘進機1が、図1の位置から分岐発進した後、図2に示されるように、所定の距離だけ推進されたら、本線トンネル3の覆工体31内に、内部にエレクタや推進用油圧ジャッキ18等を有する後部鋼殻112を搬入して、前部鋼殻111の後方に、円周方向複数の中折れ用油圧ジャッキ113を介して連結する。したがって、その後は、前記エレクタによって後部鋼殻112の後部内周にセグメントリング21を組み立てた覆工体2(又は別途組み立てられた不図示の支保体)を、推進用油圧ジャッキ18で後方の反力受け33へ押圧することによって、その反力で掘進方向への推進力を得ることができる。
【0032】
そして更に、図5に示されるように、覆工体2を例えば1リング分だけ組み立てたら、これに推進用油圧ジャッキ18を当てて後方へ押し出すことによって、その反力による推進力を得ながら、カッタフェイス12によって地山Gを掘削し、これによって発生した掘削土砂をチャンバ14内を介して排土管15により排出する一連の動作によって、前記1リング分の軸方向幅Wに相当する距離だけ掘進してから、次の1リング分のセグメント組み立てを行うといった掘進サイクルが繰り返される。
【0033】
この掘進過程では、掘削される地山Gの土質などに起因する掘進速度の変化や、その他の種々の原因によって、チャンバ14内の土圧が変化するが、このような土圧変化も、基準圧力と圧力センサ174による検出圧力との偏差に基づいて、チャンバ内圧維持装置17が上述と同様に動作することによって抑制され、切羽面を安定させることができる。
【0034】
なお、図示の実施の形態は、本願発明の構成をトンネルの分岐施工に用いられる分岐シールド掘進機1に適用したものとして説明したが、本線シールド掘進機や、あるいは分岐施工用以外の、通常のシールド掘進機においても、同様に実施することができる。
【0035】
また、圧力源173としては、ポンプと圧力方向切換弁との組み合わせによるもののほか、例えばシリンダとピストンからなる油圧シリンダ装置なども適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るシールド掘進機の好ましい形態としての分岐シールド掘進機を、分岐発進前の状態で示す鉛直断面図である。
【図2】本発明に係るシールド掘進機の好ましい形態としての分岐シールド掘進機を、分岐発進時の状態で示す鉛直断面図である。
【図3】チャンバ内圧維持装置の構成及び動作を概略的に示す説明図である。
【図4】チャンバ内圧維持装置の更に具体的な例を示す説明図である。
【図5】本発明に係るシールド掘進機の好ましい形態としての分岐シールド掘進機を、分岐発進後の状態で示す鉛直断面図である。
【図6】従来のシールド掘進機を示す施工状態の鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 分岐シールド掘進機(シールド掘進機)
11 シールドフレーム
115 隔壁
12 カッタフェイス
14 チャンバ
15 排土管
151 シャッタゲート
152 ボールバルブ
17 チャンバ内圧維持装置
171 膨張膜
173 圧力源
174 圧力センサ
18 推進用油圧ジャッキ
2 覆工体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシールドフレームと、その先端で地山を掘削するカッタフェイスと、前記シールドフレームの先端部とカッタフェイスの背面との間に画成され掘削土砂が取り込まれるチャンバと、このチャンバ内から前記掘削土砂を排出する排土管と、前記チャンバ内の圧力を維持するチャンバ内圧維持装置を備え、このチャンバ内圧維持装置は、前記排土管に設けられた膨張膜と、この膨張膜を、前記排土管内の土砂通路を狭めるように膨らませ、又は前記土砂通路を広げるように収縮させる流体圧力を印加する圧力源と、からなることを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
チャンバ内圧維持装置が、チャンバ内の圧力を常時検出する圧力センサを備え、圧力源による膨張膜への印加圧力が、予め設定された基準圧力と、前記圧力センサによる検出圧力との偏差に基づいて制御されることを特徴とする請求項1に記載のシールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−138475(P2008−138475A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327910(P2006−327910)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】