説明

シールド掘進機

【課題】
掘進機本体と台車群とをワイヤ等の屈撓部材で連結した場合の台車群の逸走を防止する様にしたシールド掘進機を提供する。
【解決手段】
掘進機本体1と該掘進機本体に牽引されレール16を走行可能な台車群2と、該台車群の先頭台車12と前記掘進機本体とを連結する屈撓自在な牽引部材21と、前記レールを支持する枕木17と、前記先頭台車に設けられ、自重で下方に突出し前記枕木に係合可能となる逸走防止ストッパ28とを具備し、該逸走防止ストッパは前記牽引部材に作用する牽引力で引上げられ、前記逸走防止ストッパが前記枕木と非干渉状態となる様構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトンネルを掘削する為のシールド掘進機に関し、特に下り傾斜のトンネルを掘進する場合の台車逸走防止装置を具備するシールド掘進機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機は、掘進機本体と該掘進機本体に牽引され複数の台車からなる台車群により構成されている。
【0003】
掘進機本体は、カッタが多数設けられた円盤状のカッタヘッドを回転させて地中を掘削し、掘削した土砂はスクリューコンベアにより後方に排出する。又、掘削機本体には前記台車群が連結手段を介して連結され、前記掘進機本体の掘進の進行と共に前記台車群が追従する様になっている。
【0004】
前記台車群を構成する台車には、バルブユニットを搭載したバルブユニット台車、操作盤を搭載すると共に作業者が搭乗する操作台車、ポンプユニットを搭載したポンプユニット台車等が含まれており、各台車間は連結バーにより連結され、更に先頭の台車と前記掘進機本体とは、屈撓自在なワイヤにより連結されている。
【0005】
シールド掘進機が水平方向に掘進している場合は、台車群自体には推進力が作用しないので台車群が逸走することはない。又、登り方向にシールド掘進機が掘進している場合は、台車群自体には重力により後進方向の推進力が作用するが前記掘進機本体に台車群が連結されているので、やはり、逸走することはない。
【0006】
ところが、下り方向に掘進する場合は、重力により前記台車群に前進方向の推進力が作用する。下り傾斜が僅かな下り勾配であると、台車の走行抵抗により台車が逸走することはないが、下り勾配が大きくなり台車の推進力が前記走行抵抗を越える場合は逸走が発生する状態となる。
【0007】
台車群の前進方向の逸走を防止する方法としては、掘進機本体と台車群とを剛性のあるロッド等により連結すれば、台車群の前進方向の逸走を防止できる。
【0008】
一方、連結手段として、簡便なワイヤを用いた場合、前記台車群の前進方向の規制はないので、下り勾配が大きい場合は逸走が起るという問題を有している。
【0009】
【特許文献1】特開平10−61386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は斯かる実情に鑑み、掘進機本体と台車群とをワイヤ等の屈撓部材で連結した場合の台車群の逸走を防止する様にしたシールド掘進機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、掘進機本体と該掘進機本体に牽引されレールを走行可能な台車群と、該台車群の先頭台車と前記掘進機本体とを連結する屈撓自在な牽引部材と、前記レールを支持する枕木と、前記先頭台車に設けられ、自重で下方に突出し前記枕木に係合可能となる逸走防止ストッパとを具備し、該逸走防止ストッパは前記牽引部材に作用する牽引力で引上げられ、前記逸走防止ストッパが前記枕木と非干渉状態となる様構成したシールド掘進機に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記逸走防止ストッパは昇降可能な棒状部材であり、前記牽引部材の牽引力により上昇されるシールド掘進機に係り、又前記逸走防止ストッパは回転可能な部材であり、自由状態で一部が前記枕木より下方に突出し、前記牽引部材の牽引力により回転され前記一部が前記枕木の上方迄上昇されるシールド掘進機に係るものである。
【0013】
又本発明は、前記掘進機本体と前記先頭台車間に屈撓自在な逸走防止部材が設けられ、該逸走防止部材は前記先頭台車に設けられた滑車を介して垂下され、垂下した前記逸走防止部材に前記逸走防止ストッパが取付けられたシールド掘進機に係り、又前記牽引部材に牽引力が作用した状態で、前記逸走防止ストッパが前記枕木と非干渉状態となる様前記逸走防止部材の長さが設定されたシールド掘進機に係るものである。
【0014】
更に又本発明は、前記牽引部材にストッパ駒が固着されると共に前記牽引部材の台車側端部に前記逸走防止ストッパが係着され、牽引力は前記ストッパ駒を介して前記先頭台車に伝達され牽引力が作用しない状態では、前記逸走防止ストッパの自重により前記牽引部材が引張られる様にしたシールド掘進機に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、掘進機本体と該掘進機本体に牽引されレールを走行可能な台車群と、該台車群の先頭台車と前記掘進機本体とを連結する屈撓自在な牽引部材と、前記レールを支持する枕木と、前記先頭台車に設けられ、自重で下方に突出し前記枕木に係合可能となる逸走防止ストッパとを具備し、該逸走防止ストッパは前記牽引部材に作用する牽引力で引上げられ、前記逸走防止ストッパが前記枕木と非干渉状態となる様構成したので、台車が前記掘進機本体に対して接近することで、前記逸走防止ストッパが枕木に係合し、逸走が防止される。
【0016】
又本発明によれば、前記逸走防止ストッパは昇降可能な棒状部材であり、前記牽引部材の牽引力により上昇されるので、単純な構成で確実な逸走防止が行われる。
【0017】
又本発明によれば、前記逸走防止ストッパは回転可能な部材であり、自由状態で一部が前記枕木より下方に突出し、前記牽引部材の牽引力により回転され前記一部が前記枕木の上方迄上昇されるので、単純な構成で確実な逸走防止が行われる。
【0018】
又本発明によれば、前記掘進機本体と前記先頭台車間に屈撓自在な逸走防止部材が設けられ、該逸走防止部材は前記先頭台車に設けられた滑車を介して垂下され、垂下した前記逸走防止部材に前記逸走防止ストッパが取付けられたので、又前記牽引部材に牽引力が作用した状態で、前記逸走防止ストッパが前記枕木と非干渉状態となる様前記逸走防止部材の長さが設定されたので、既存のシールド掘進機に対しても大きな変更を行うことなく簡単に実施できる。
【0019】
更に又本発明によれば、前記牽引部材にストッパ駒が固着されると共に前記牽引部材の台車側端部に前記逸走防止ストッパが係着され、牽引力は前記ストッパ駒を介して前記先頭台車に伝達され牽引力が作用しない状態では、前記逸走防止ストッパの自重により前記牽引部材が引張られる様にしたので、単純な構成で確実な逸走防止が行われる等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0021】
先ず図1、図2により本発明に係るシールド掘進機について概略を説明する。
【0022】
図中、1は掘進機本体、2は台車群、3はセグメント台車である。
【0023】
前記掘進機本体1について説明する。
【0024】
カッタ4が多数植設された円盤状のカッタヘッド5がカッタヘッド軸6を介して回転自在に支持され、前記カッタヘッド5は掘削モータ7によって回転され、又前記カッタヘッド5は推進シリンダ8によって推進力が与えられる。
【0025】
前記カッタヘッド軸6によって掘削された土砂は、泥水とされ、スクリューコンベア9によって排出され、更に搬送ホース10によって後方に搬送される。
【0026】
掘削後のトンネル壁面には、セグメント19が貼付けられ、該セグメント19はエレクタ11によって貼付け位置迄持上げられ移動される。
【0027】
前記台車群2について略述する。
【0028】
該台車群2は、先頭に位置するバルブユニット台車12、操作台車13、ポンプユニット、作動流体、例えばオイルが貯溜されたタンクを搭載するポンプユニット台車14等の台車によって構成されている。前記台車群2の各台車は、レール16に走行自在に軌乗し、該レール16は進行方向に対して所要間隔で設けられた枕木17によって支持されている。
【0029】
各台車間は剛性を有する連結バー15によって連結され、前記操作台車13と前記ポンプユニット台車14との間を連結する連結バー15にはグリースポンプユニット18が載設されている。
【0030】
又、前記台車群2のレール16とは別にセグメント台車用レール(図示せず)が敷設されており、該セグメント台車用レールには前記セグメント台車3が走行自在に軌乗し、該セグメント台車3は前記セグメント19を運搬する。
【0031】
前記掘進機本体1と前記台車群2の先頭台車、即ち前記掘進機本体1と前記バルブユニット台車12とは連結手段である屈撓自在な線状部材、例えば牽引ワイヤ21によって連結され、該牽引ワイヤ21の前端は前記掘進機本体1の強度部材、例えば前記スクリューコンベア9の後端部に設けられたブラケット22に係着されている。又、前記掘進機本体1と前記バルブユニット台車12間には台車逸走防止装置23が設けられている。
【0032】
図3を参照して該台車逸走防止装置23について説明する。
【0033】
前記バルブユニット台車12は前方に張出す庇部25を有し、該庇部25に滑車26が垂設されている。該滑車26には屈撓自在な線状部材、例えば逸走防止ワイヤ27が掛回され、垂下する下端には逸走防止ストッパ28が係着されている。該逸走防止ストッパ28は棒状部材であり、自重で鉛直姿勢となっており、下端部はテーパ形状となっている。又、前記逸走防止ストッパ28は充分な重量を有し、前記逸走防止ワイヤ27には前記逸走防止ストッパ28の自重により常に張力が作用する。
【0034】
前記バルブユニット台車12の前面に、上下に少なくとも2つのガイド29が設けられ、前記逸走防止ストッパ28は前記ガイド29によって昇降方向にガイドされている。
【0035】
前記逸走防止ワイヤ27は前端は、前記掘進機本体1の所要位置、好ましくは前記牽引ワイヤ21が係着された部分の近傍に係着されている。
【0036】
前記牽引ワイヤ21は前記バルブユニット台車12の前面に設けられた連結器31を介して前記バルブユニット台車12と係着されている。
【0037】
前記牽引ワイヤ21に前記バルブユニット台車12を牽引する際の張力(牽引力)が作用している状態、即ち前記牽引ワイヤ21が張っている状態では、該牽引ワイヤ21に作用する牽引力により前記逸走防止ストッパ28が引上げられ、該逸走防止ストッパ28は前記枕木17と干渉しない位置となっている。
【0038】
前記台車逸走防止装置23の作用について説明する。
【0039】
前記掘進機本体1が水平方向、登り傾斜方向に掘削している状態では、前記牽引ワイヤ21は張った状態であり、前記逸走防止ストッパ28は引上げられた状態(図3で示す状態)となっている。該逸走防止ストッパ28は、前記枕木17と干渉することがなく、前記バルブユニット台車12の走行に支障はない。
【0040】
前記掘進機本体1が下り傾斜で掘削している状態で、更に勾配による前記バルブユニット台車12への推進力が該バルブユニット台車12、即ち前記台車群2の走行抵抗より大きくなった場合、前記バルブユニット台車12は走行抵抗で減速され、緩やかに前進する。
【0041】
前記掘進機本体1に対し前記バルブユニット台車12が相対的に前進することで、前記牽引ワイヤ21が緩み、前記掘進機本体1と前記バルブユニット台車12間の距離が減少する。前記逸走防止ワイヤ27の長さは変らないので、前記逸走防止ストッパ28は距離減少分だけ下降する。
【0042】
やがて、前記逸走防止ストッパ28の下端部が、前記枕木17の位置より降下し、該枕木17と干渉する状態(図3の2点鎖線の位置)となり、更に前記バルブユニット台車12が前進することで、前記逸走防止ストッパ28は前記枕木17に突当る。前記逸走防止ストッパ28の鉛直姿勢は前記ガイド29で維持されるので、前記バルブユニット台車12の前進が拘束される。
【0043】
而して、前記バルブユニット台車12、即ち前記台車群2の逸走が防止される。
【0044】
次に、前記掘進機本体1が前記バルブユニット台車12に対して相対的な前進をすると、前記掘進機本体1と前記バルブユニット台車12間の距離が増大し、前記逸走防止ワイヤ27を介して前記逸走防止ストッパ28が引上げられ、該逸走防止ストッパ28が完全に引上げられた状態、即ち該逸走防止ストッパ28と前記枕木17が干渉しない状態となった時に前記牽引ワイヤ21が張った状態となり、前記バルブユニット台車12の前進が開始される。
【0045】
而して、前記台車逸走防止装置23は、前記掘進機本体1の前進には支障なく、前記台車群2の逸走のみを防止する。
【0046】
尚、本発明は前記掘進機本体1と前記バルブユニット台車12間の距離の変化を利用して、前記台車逸走防止装置23を作動させるものであり、種々の変更が考えられる。
【0047】
例えば、図4は第2の実施の形態を示すものであり、逸走防止ストッパ28を支持軸33を介しバルブユニット台車12の前面に回転自在に設けたものである。
【0048】
第2の実施の形態では、逸走防止ストッパ28をL状に形成し、又重心の位置を偏心させ、自由状態では図示の2点鎖線で示す様に自重により倒立L字姿勢の状態に回転する様に設定したものである。
【0049】
前記逸走防止ストッパ28の一端に係着した逸走防止ワイヤ27に張力が作用することで、前記逸走防止ストッパ28の一端が引上げられ、該逸走防止ストッパ28が回転し、倒伏L字姿勢となり、前記逸走防止ストッパ28と枕木17は干渉せず、又前記逸走防止ワイヤ27が弛むと前記逸走防止ストッパ28が倒立L字姿勢となって前記枕木17と干渉し、前記バルブユニット台車12の前進を拘束する。
【0050】
次に、図5は第3の実施の形態を示すものであり、該第3の実施の形態では牽引ワイヤ21の緩み(牽引力が作用しなくなる)を直接利用し、逸走防止ワイヤ27を省略したものである。
【0051】
前記牽引ワイヤ21をバルブユニット台車12の強度部材35に挿通し、更に前記牽引ワイヤ21にストッパ駒34を固着し、前記牽引ワイヤ21に張力が作用した場合は、前記ストッパ駒34が前記強度部材35に当接して、該強度部材35を介して前記バルブユニット台車12が牽引される様にする。又、該牽引ワイヤ21を滑車26を介して垂下し、下端に逸走防止ストッパ28を係着する。尚、該逸走防止ストッパ28は図3で示した昇降式でもよく、或は図4で示した回転式でもよい。
【0052】
前記バルブユニット台車12が前記掘進機本体1に対して相対的に前進することで、前記牽引ワイヤ21に作用する牽引力(牽引力による張力)がなくなり、前記逸走防止ストッパ28の自重で前記牽引ワイヤ21が引張られ前記逸走防止ストッパ28が降下、或は回転して枕木17と当接し、前記バルブユニット台車12の前進が拘束される。即ち、逸走が防止される。
【0053】
更に、前記牽引ワイヤ21の緩みを電気的な信号として検出し、ソレノイドにより前記逸走防止ストッパ28を前記枕木17に係合、解除させる様にしてもよい。或は、電磁弁を作動させシリンダを介して、前記逸走防止ストッパ28を前記枕木17に係合、解除させる様にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るシールド掘進機の概略側断面図である。
【図2】本発明に係るシールド掘進機の概略平断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の要部を示す側面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態を示す部分図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態を示す部分図である。
【符号の説明】
【0055】
1 掘進機本体
2 台車群
5 カッタヘッド
9 スクリューコンベア
12 バルブユニット台車
16 レール
17 枕木
21 牽引ワイヤ
23 台車逸走防止装置
26 滑車
27 逸走防止ワイヤ
28 逸走防止ストッパ
29 ガイド
34 ストッパ駒
35 強度部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘進機本体と該掘進機本体に牽引されレールを走行可能な台車群と、該台車群の先頭台車と前記掘進機本体とを連結する屈撓自在な牽引部材と、前記レールを支持する枕木と、前記先頭台車に設けられ、自重で下方に突出し前記枕木に係合可能となる逸走防止ストッパとを具備し、該逸走防止ストッパは前記牽引部材に作用する牽引力で引上げられ、前記逸走防止ストッパが前記枕木と非干渉状態となる様構成したことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
前記逸走防止ストッパは昇降可能な棒状部材であり、前記牽引部材の牽引力により上昇される請求項1のシールド掘進機。
【請求項3】
前記逸走防止ストッパは回転可能な部材であり、自由状態で一部が前記枕木より下方に突出し、前記牽引部材の牽引力により回転され前記一部が前記枕木の上方迄上昇される請求項1のシールド掘進機。
【請求項4】
前記掘進機本体と前記先頭台車間に屈撓自在な逸走防止部材が設けられ、該逸走防止部材は前記先頭台車に設けられた滑車を介して垂下され、垂下した前記逸走防止部材に前記逸走防止ストッパが取付けられた請求項1〜請求項3のいずれかのシールド掘進機。
【請求項5】
前記牽引部材に牽引力が作用した状態で、前記逸走防止ストッパが前記枕木と非干渉状態となる様前記逸走防止部材の長さが設定された請求項4のシールド掘進機。
【請求項6】
前記牽引部材にストッパ駒が固着されると共に前記牽引部材の台車側端部に前記逸走防止ストッパが係着され、牽引力は前記ストッパ駒を介して前記先頭台車に伝達され牽引力が作用しない状態では、前記逸走防止ストッパの自重により前記牽引部材が引張られる様にした請求項1〜請求項3のいずれかのシールド掘進機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−248501(P2008−248501A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88266(P2007−88266)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】