説明

シールド材

【課題】酸素透過性が低く、耐薬品性に優れたポリカーボネート樹脂からなる樹脂シートをホログラム記録媒体のシールド材として用い、長期の未記録状態における使用有効期限(シェルフライフ)を有するホログラム記録媒体を提供する。
【解決手段】構成単位(A)を誘導する二価フェノールと、構成単位(B)を誘導する二価フェノールと、カーボネート前駆体と、を反応させて得られるポリカーボネート樹脂から構成され、全構成単位100モル%中における構成単位(A)の割合が50〜100モル%であるポリカーボネート樹脂から形成されたホログラム記録媒体用シールド材。構成単位(A)は、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンから誘導される構成単位である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を照射することによって情報を記録する記録層を有する光情報記録媒体に好適なシールド材に関する。中でも本発明は、情報を付与された情報光と参照光によって形成された干渉縞が記録されるホログラム記録層を有する光情報記録媒体に好適なシールド材に関する。より詳しくは、本発明は、特定のポリカーボネート樹脂から形成されたシールド材であって、特に酸素透過性が低く、同時に耐薬品性、耐熱性が良好であり、未記録状態における長期の使用有効期限(シェルフライフ)を確保可能な光情報記録媒体に好適なシールド材を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィを利用して記録媒体に情報を記録するホログラム記録媒体は、光磁気記録媒体や相変化光記録媒体などに比べ、記録再生するデータの大容量化・高速転送速度化を実現可能な光記録技術の一つである。
【0003】
ホログラム記録媒体の記録は、一般的に、イメージ情報を持った情報光と参照光とを記録媒体内部で重ねあわせ、そのときに形成される干渉縞を記録媒体に書き込むことによって行われる。記録された情報の再生時には、記録媒体に参照光を照射することにより、記録した干渉縞による回折によりイメージ情報が再生される。
【0004】
近年では、体積ホログラフィ、特にデジタル体積ホログラフィが実用域で開発され注目を集めている。体積ホログラフィとは、記録媒体の厚み方向を利用して、3次元的に干渉縞を書き込む方式であり、厚みを増すことで回折効率を高め、多重記録を用いて記録容量を増大することが可能である。そして、デジタル体積ホログラフィとは、体積ホログラフィと同様の記録媒体と記録再生方式を用いており、記録するイメージ情報を2値化したデジタルパターンに限定したホログラフィック記録方式である。このデジタル体積ホログラフィでは、例えば画像情報を、デジタルデータへ変換し、更に2次元デジタルパターン情報に展開し、これをイメージ情報として記録する。再生時は、このデジタルパターン情報を読み出してデコードすることで、元の画像情報に戻して表示する。これにより、再生時にSN比(信号対雑音比)が多少悪くても、微分検出を行ったり、2値化データをコード化しエラー訂正を行ったりすることで、極めて忠実に元の情報を再現することが可能になる。
【0005】
このような体積ホログラフィを用いたホログラフィック記録再生を行うホログラム記録媒体として、特許文献1及び2には図1に示すような構造体が提案されている。かかるホログラム記録媒体1は、エンボスピット3aを有する反射層3及び透明層4が形成されたディスク状の第1の基板2と、光透過性を有するディスク状の第2の基板5とを、それらの外周部および内周部にスペーサー7を挿入して所定の厚みに調整し、厚み方向に干渉縞を記録する記録層6を封入することにより製造される。
【0006】
ホログラム記録層としては、入射光強度によって屈折率変化を生じるニオブ酸リチウム(LiNbO)のような無機結晶が使用されていた。しかしながら、LiNbOは非常に高価であり、経時的に屈折率変化が減衰し、しかも有意な屈折率変化を生じさせるために厚い結晶を用いる必要があった。
【0007】
そこで特許文献3では、光学的に誘起された重合反応を利用してより大きい屈折率変化を生じる物質が記録層として使用されている。これらの物質は、フォトポリマー(感光性樹脂)といわれており、1種以上の光活性の重合性液体モノマーまたはオリゴマー、開始剤、不活性ポリマー充填材、及び増感剤等の均一な混合物からなる。
【0008】
記録層としてフォトポリマーを用いた場合、空気中の酸素により、フォトポリマーの重合反応を阻害するため、未記録状態におけるホログラム記録媒体の使用有効期限(シェルフライフ)が短くなることが問題となる。ホログラム記録媒体の厚み方向に関しては記録層の上下に各層が積層されており、酸素によるフォトポリマーの劣化はわずかである。しかしながら、半径方向においては記録層が直接空気に接触していることから酸素劣化による影響が大きいと考えられている。そこで特許文献4では、記録層の外周部および内周部に用いているスペーサーをシールド材として用い、スペーサーの幅を長くすることにより、外部からの空気の進入を防止することが記載されている。しかしながら、シールド材の具体的な材質、特性については記載されていない。
【0009】
そこで、ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂(以下PC−A)をリング状のプラスチックシートに加工し、両面に接着剤を塗布し、シールド材として検討したところ、記録層との接触により、耐薬品性が不足していることから、PC−Aが白濁し透明性が得られないとの問題、並びに酸素透過性が高いため、未記録状態におけるホログラム記録媒体の使用有効期限に関する改善効果もあまり得られないとの問題がある。
【0010】
尚、上記はディスク状のホログラム記録媒体を一例として説明したが、記録媒体の形状はカード状であってもよい。かかる製造において、記録層の課題は程度の差はあるものの共通であり、殊にホログラム記録媒体の記録容量が大きいほど重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−331464号公報
【特許文献2】特開2004−126041号公報
【特許文献3】特開2005−107312号公報
【特許文献4】特開2008−027488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、酸素透過性が低く、耐薬品性に優れたポリカーボネート樹脂からなるプラスチックシートをホログラム記録媒体のシールド材として用いることにより、長期使用有効期限を有するホログラム記録媒体を提供することにある。従来ポリカーボネート樹脂は酸素透過性が高く、記録層及び接着剤に対する耐薬品性に優れず、シールド材には不向きであるとの認識があるが、本発明者らは、驚くべきことに特定のポリカーボネート樹脂を用いることにより、上記課題がいずれも解決でき、該樹脂から形成されたシート状シールド材がホログラム記録媒体の使用有効期限の改善に極めて好適であることを見出した。かかる知見に基づき更に検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、上記課題は、
(構成1):下記式(α)で表される構成単位(A)と下記式(β)で表される構成単位(B)とから構成され、全構成単位100モル%中における構成単位(A)の割合が50〜100モル%であるポリカーボネート樹脂から形成されたホログラム記録媒体用シールド材により解決される。
【0014】
【化1】

(式(α)中、xおよびyはそれぞれ独立して0または1〜4の整数であり、RおよびRはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、および炭素数7〜20のアラルキルオキシ基からなる群より選択される有機残基を表す。zは4〜11の整数を表し、かかる複数のRおよびRはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、および炭素数1〜3のアルキル基から選択される基を表す。)
【0015】
【化2】

(式(β)中、R〜Rは夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよいアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表す。Wは単結合、炭素原子数1〜15のアルキレン基、または炭素原子数1〜20の芳香族基を含んでもよいアルキレン基、または酸素原子を表す。)
【0016】
本発明の好適な態様の1つは、
(構成2):構成単位(A)の割合が70〜100モル%である上記構成1のホログラム記録媒体用シールド材である。
【0017】
本発明の好適な態様の1つは、
(構成3):構成単位(A)は、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンから誘導される構成単位である上記構成1または2のホログラム記録媒体用シールド材である。
【0018】
本発明の好適な態様の1つは、
(構成4):ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が1.3×10〜2.4×10の範囲である上記構成1〜3のいずれか1項のホログラム記録媒体用シールド材である。
【0019】
本発明の好適な態様の1つは、
(構成5):ポリカーボネート樹脂は、JIS K7126に準拠した酸素透過度試験において試験温度23℃で測定したその気体透過係数が0.1〜5.0(×10−11cm・cm/cm/sec/cmHg)である上記構成1〜構成4のいずれか1項のホログラム記録媒体用シールド材である。
【0020】
本発明の好適な態様の1つは、
(構成6):シールド材は、シート状の形状を有し、その厚みが5〜500μmであり、且つ厚み斑が±5μmである上記構成1〜構成5のいずれか1項のホログラム記録媒体用シールド材である。
【0021】
本発明の好適な態様の1つは、
(構成7):シールド材は、シート状の形状を有し、その幅が0.1〜1.5cmである上記構成1〜構成6のいずれか1項のホログラム記録媒体用シールド材である。
【0022】
本発明の好適な態様の1つは、
(構成8):シールド材は、シート状の形状を有し、その120℃で1hr加熱処理後の熱寸法変化率が0.08%以下である上記構成1〜構成7のいずれか1項のホログラム記録媒体用シールド材である。
【0023】
本発明の好適な態様の1つは、
(構成9)エンボスピットが形成された第1の基板と、光透過性の第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間にホログラム記録層を有し、ホログラム記録層が上記構成1〜構成8記載のいずれか1項のシールド材に保護されたホログラム記録媒体である。
【発明の効果】
【0024】
本発明のポリカーボネート樹脂からなるシールド材は、低酸素透過性を示し、耐薬品性に優れ、且つ、長期使用有効期間を有するホログラム記録媒体を提供することが可能である。殊に本発明は、特定のポリカーボネート樹脂を用いることより、酸素透過性が低く、耐薬品性が優れていることを見出したものであり、幅広い分野に利用され、また記録媒体の長期保存性に優れる。したがって、その奏する産業上の効果は格別である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来のホログラム記録媒体の概略断面図を示す。
【図2】(A)本発明のホログラム記録媒体における一実施様態の概略平面図を示す。(B)本発明のホログラム記録媒体における一実施様態の半径方向の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の詳細について説明する。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明のポリカーボネート樹脂は上記式(α)の構成単位(A)を誘導する二価フェノール及び上記式(β)の構成単位(B)を誘導する二価フェノールと、カーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。かかる二種類の二価フェノールはカーボネート前駆体と同時に反応させても、種類毎に順次反応させてよい。本発明のホログラム記録媒体用シールド材は、溶液キャスティング法、溶融押出法等の既知の方法により製膜したフィルムまたはシート状の形状を有し、必要な大きさに金型等を用いて打ち抜くことによって作成される。製膜する手法としては、生産性および製造コストの点から溶融押出法により製造することが好ましい。かかる溶融押出法による製膜には、高温下での溶融が必須となり、樹脂には優れた熱安定性が必要とされる。上記式(α)の構成単位からなるポリカーボネートは熱安定性に優れ、かかる要求を満足する。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0027】
界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0028】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノールまたは低級アルキル置換フェノールであって、下記式[γ]
【化3】

(式中、Aは水素原子または炭素原子数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはフェニル置換アルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。)
で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0029】
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、フェニルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、tert−オクチルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0030】
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族エステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類を使用することができる。
【0031】
これらの末端停止剤は、得られたポリカーボネート共重合体の全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%の末端に導入されることが望ましく、更に好ましくは80モル%以上の末端に導入される。また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0032】
溶融重合法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応が代表的であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を1,300Pa〜13Pa(10〜0.1Torr)程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0033】
カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素原子数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0034】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができる。重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ホウ素やアルミニウムの水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物などの通常エステル化反応やエステル交換反応に使用される触媒があげられる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせ使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−9〜1×10−5当量、より好ましくは1×10−8〜5×10−6当量の範囲で選ばれる。
【0035】
また、かかる重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートを加えることが好ましく、特に2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく使用される。
【0036】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後のポリカーボネート共重合体に対し、好ましくは0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが好ましく挙げられる。
前記以外の反応形式の詳細についても、各種の文献および特許公報などで良く知られている。
【0037】
上記式(α)の構成単位(A)を誘導する二価フェノールとしては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が例示される。
【0038】
上記式(β)の構成単位(B)を誘導する二価フェノールとしては、例えば、4,4’−ビフェノール、4,4’−ビス(2,6−ジメチル)ジフェノール、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(通常“ビスフェノールM”と称される)、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−フェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールA”と称される)2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールC”と称される)、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(2,3−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、炭素数1〜3のアルキル基で置換されたレゾルシノール、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダン−5−オール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5−オール、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチルスピロインダン、1−メチル−1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−イソプロピルシクロヘキサン、1−メチル−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]シクロヘキサン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、およびエチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等が例示される。
【0039】
上記式(α)の構成単位(A)を誘導する前記二価フェノールの中でも、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが好適に例示される。上記式(β)の構成単位(B)を誘導する前記二価フェノールの中でも、ビスフェノールM、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ビスフェノールC、ビスフェノールA、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカンが好適に例示される。かかるポリカーボネートのその他詳細については、例えばWO03/080728号パンフレット、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報、および特開2002−117580号公報等に記載されている。
【0040】
上記式(α)の構成単位(A)の割合は、全構成単位100モル%中50〜100モル%であり、70〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がさらに好ましい。
【0041】
最も好適なポリカーボネート樹脂は、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン由来の構造単位からなるポリカーボネート樹脂である。かかるポリカーボネートは良好な熱安定性を有し、更に酸素透過率が低い点で本発明の目的に最も合致する。酸素透過率が大きい場合、ホログラム記録媒体中の記録材料が空気中の酸素によって劣化し、未記録状態の使用有効期限が短縮される。また、熱安定性が劣るの場合、製膜歩留まりの低下などの問題を生じやすい。
【0042】
ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは1.3×10〜2.4×10であり、より好ましくは1.4×10〜2.1×10であり、さらに好ましくは1.5×10〜1.8×10である。粘度平均分子量が1.3×10未満のポリカーボネートでは、実用上十分な強度が得られない場合がある。一方、粘度平均分子量が2.4×10を超えるポリカーボネートから得られる樹脂組成物は、概して高い成形加工温度を必要とするか、または特殊な成形方法を必要とすることから汎用性に劣る。
【0043】
ポリカーボネートの粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート0.7gを夫々溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0044】
尚、本発明のポリカーボネート樹脂組成物における粘度平均分子量の算出は次の要領で行なわれる。すなわち、該組成物を、その20〜30倍重量の塩化メチレンと混合し、組成物中の可溶分を溶解させる。かかる可溶分をセライト濾過により採取する。その後得られた溶液中の溶媒を除去する。溶媒除去後の固体を十分に乾燥し、塩化メチレンに溶解する成分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、上記と同様にして20℃における比粘度を求め、該比粘度から上記と同様にして粘度平均分子量Mを算出する。
【0045】
<ポリカーボネート樹脂の特性>
本発明のホログラム記録媒体用シールド材は、ポリカーボネート樹脂を溶融押出法等により製膜したシート状の形状を有し、金型等を用いて必要な大きさに打ち抜くことにより製造することができる。かかる製造方法において、シールド材として用いるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が上述の範囲であれば、ポリカーボネート樹脂からなるシート状成形品が脆くなり難く、金型等を用いて、必要な大きさに打ち抜く際に端面にノッチを発生したりすることが少なくなる。特に、溶融製膜時に異物が発生し難く、厚み斑を発生し難くなる点で好ましい。
【0046】
更に本発明のポリカーボネート樹脂は、好ましくはその酸素透過係数が0.1〜5.0(×10−11cm・cm/(cm・sec・cmHg))の範囲にあるポリカーボネート樹脂である。ここで酸素透過係数とは、JIS K7126に準拠した気体透過度試験において試験温度23℃、測定気体である酸素の透過量を示し、ガスシールド性を表す材料固有の指標である。かかる気体透過係数は、気体透過係数=気体透過量(体積)×フィルム厚さ/(透過面積×時間×圧力差)で算出される。
【0047】
本発明は、かかる酸素透過係数を満足する特定のポリカーボネート樹脂を選択することにより、より好適なホログラム記録媒体用シールド材を提供する。
更に、本発明者らは、特定のポリカーボネート樹脂は、従来用いられているビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂に比較して、優れた酸素透過係数を有することを見出した。かかる特性は、記録層の酸素による劣化を抑制し、ホログラム記録媒体の使用有効期限を延長させる。かかる点においても本発明のポリカーボネート樹脂組は、ホログラム記録媒体用シールド材に好適である。
【0048】
酸素透過係数は、より好ましくは0.1〜3.0(×10−11cm・cm/(cm・sec・cmHg))、さらに好ましくは0.1〜2.0(×10−11cm・cm/(cm・sec・cmHg))、特に好ましくは0.1〜1.0(×10−11cm・cm/(cm・sec・cmHg))である。かかる下限未満となるためには更に特殊なポリカーボネート樹脂が必要となり原料の入手が困難となり、上限を超えると酸素による記録材料の劣化が顕著となり、未記録状態の使用有効期限が短くなる。
【0049】
<シールド材の形状について>
本発明のシールド材は、シート状の形状を有し、そのホログラム記録材料の厚みを調整するためのスペーサーの役割を担っている。該シールド材の厚みが5〜500μm、その厚み斑が±5μmであることが好ましい。本発明のシールド材は、ホログラム記録材料の酸素による劣化を防止するために、金型等を用いてシート状成形品をリング状または必要な大きさに打ち抜くことで作成される。シールド材は、その幅が0.1〜1.5cmであることが好ましい。幅上限は、より好ましくは1.2cm、更に好ましくは1.0cmであり、かかる下限は、より好ましくは0.3cm、更に好ましくは0.5cmである。かかる下限未満では、酸素透過によるホログラム記録媒体の劣化が顕著となり、上限を超えると記録領域が狭くなることにより記録容量が低下する。
【0050】
また、シールド材は、120℃で1hr加熱処理後の熱寸法変化率が0.08%以下であることが好ましく、0.05%以下がより好ましい。熱寸法変化率が小さくなると環境変化において記録したホログラムの位置ずれが生じなくなり、再生時のデータ読み取り不良を防止できるため好ましい。
【0051】
<ホログラム記録媒体について>
本発明のシールド材を用いるホログラム記録媒体は図2に示す実施態様であり、図2(A)に概略平面図、(B)に半径方向の概略断面図を示す。
図2のホログラム記録媒体1は、第1の基板2と、第2の基板5と、第1の基板2と第2の基板5との間にシールド材10に囲まれた記録層6とを有しており、第1の基板2には、位置制御層12aと、反射層3と、波長選択層11と、ギャップ層4とを有している。図2のホログラム記録媒体1は、図2(A)に示すように、円盤形状であり、中心には開口部1bが形成されており、例えば、記録再生装置のスピンドルに開口部1bを装着することにより、ホログラム記録媒体1を回転可能に保持するように構成されている。
【0052】
第1の基板2は、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられるが、加工性、コストの面から、プラスチックが特に好適に用いられる。前記プラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリレーン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ乳酸樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、加工性、耐熱性、光学特性、コストの面から、ポリカーボネート樹脂が特に好適に用いられる。
【0053】
第1の基板2における位置制御光9を位置制御層12aに照射することによって再生される制御情報としては、トラッキング情報、フォーカス情報、アドレス情報、ディスク条件情報などが挙げられる。前記トラッキング情報は、例えば、ウォブルピット、ウォブルグルーブ、トラッキングピットなどが挙げられる。前記フォーカス情報は、例えば、第2の基板6表面に形成した反射層3、フォーカス用ミラー部分、フォーカス用ピットなどが挙げられる。前記アドレス情報は、例えば、前記ウォブルピット上に形成した凹凸、エンコードしたピット列、ウォブル変調信号などが挙げられる。
【0054】
前記第1の基板2における位置制御層12aの表面に反射層3として反射膜を形成する。前記反射膜の材料としては、位置制御光9に対して高い反射率を有する材料を用いることが好ましい。例えば、Al、Al合金、Ag、Ag合金、Au、Cu合金等が好ましい。前記反射膜の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等のPVD法、あるいはCVD法等、種々の薄膜形成法が適用できる。
【0055】
ギャップ層4は、樹脂材料、例えばUVレジン等の材料をスピンコート等によって塗布
し硬化させたり、ポリカーボネート等の樹脂シートを接着剤等を使用して貼り合せることで形成することができる。ギャップ層4は、記録層6や波長選択層11を保護すると共に、記録層6内に生成される干渉縞6aの大きさや記録再生用光8と位置制御光9の焦点距離間の間隔などを調整するためにも有効である。また、ギャップ層4は、干渉縞が集中する記録再生光8の焦点近傍の部分を記録層6中に位置しないようにできるので、干渉縞が集中する焦点近傍の部分によって記録層6のフォトポリマーが大量に消費され、記録容量が低下することを防ぐことができる。ギャップ層4の厚みとしては、10〜100μmの範囲とすることが好ましい。
【0056】
波長選択層11は、記録再生用光8を反射し、位置制御光9を透過する。波長選択層11としては、高屈折率物質と低屈折率物質を交互に積層させたダイクロイックミラー膜やコレステリック液晶膜を用いることができる。波長選択層11における記録再生用光8に対する反射面は、情報を安定して記録・再生できるように、平坦であることが好ましい。
【0057】
シールド材10は、第1の基板2と第2の基板5との間に配置され、シールド材10と第1の基板2及び第2の基板5とによって形成される空間内に記録層6を封入するためのものであり、少なくとも位置制御光9を透過する必要がある。さらに、シールド材10として接着剤、両面粘着シールなどを使用すれば、シールド材10によって第1の基板2と第2の基板5とを貼り合わせることもできる。なお、シールド材10は、第1の基板2と第2の基板5との間隔を一定に保持するスペーサーを兼用してもよいし、別途スペーサーを配置することもできる。なお、シールド材10は、記録再生用光8を透過してもよいし、透過しなくてもよい。図2(A)においては、記録領域1aが広くなるように、円盤の内縁と外縁にシールド材10が配置されている。
【0058】
記録層6は、シールド材10の内側に形成されており、記録再生光8との干渉縞6aが記録される。特に好ましくは、記録再生用光8には感光し、アドレス情報等を読み取るための位置制御光9には感光しない材料が好ましい。記録層6としては、フォトポリマー(感光性材料)を使用することができる。一般的に、フォトポリマーとしてラジカル重合性化合物及び光ラジカル重合開始剤に加え、三次元架橋ポリマーマトリクスを有する感光性材料が好適に用いられる。
【0059】
マトリクスを形成する三次元架橋ポリマーとなる化合物は、エポキシ化合物が用いられる。具体的には、エポキシ化合物としては、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジエポキシオクタン、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、およびエポキシプロポキシプロピル末端のポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0060】
ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸アミド、ビニル化合物などが挙げられる。より具体的には、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ビシクロペンテニルアクリレート、アクリル酸フェニル、イソボルニルアクリレート、アクリル酸アダマンチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸フェニル、フェノキシエチルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、メタクリル酸アダマンチル、イソボルニルメタクリレート、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ビニルピリジン、スチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、トリブロモフェニルアクリレート、トリクロロフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、トリクロロフェニルメタクリレート、ビニルベンゾエート、3,5−ジクロロビニルベンゾエート、ビニルナフタレン、ビニルナフトエート、ナフチルメタクリレート、ナフチルアクリレート、N−フェニルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ビニルピロリジノン、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、ビシクロペンテニルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールトリメタクリレート、N−ビニルカルバゾールおよびN−ビニルピロリドンが挙げられる。
【0061】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、イミダゾール誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、有機過酸化物、およびチオキサントン誘導体等が挙げられる。具体的には、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタール、ベンジルメトキシエチルエーテル、2,2’−ジエチルアセトフェノン、2,2’−ジプロピルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、3,3’4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)1,3,5−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)1,3,5−トリアジン、2−[(p−メトキシフェニル)エチレン]−4,6−ビス(トリクロロメチル)1,3,5−トリアジン、チバスペシャルティケミカルズ社製のイルガキュア149、184、369、651、784、819、907、1700、1800、1850など各番号のもの、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、デカノイルーパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、およびシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
必要に応じてシアニン、メロシアニン、キサンテン、クマリン、エオシンなどの増感色素、シランカップリング剤、および可塑剤などを加えてもよい。
【0062】
記録層6の材料として、緑又は青色光に感度を有するフォトポリマーを使用した場合であれば、記録再生用光8には緑又は青色光を使用し、位置制御光9にはそれ以外の波長の光、例えば赤色光を使用すればよい。なお、本発明において、記録層6はフォトポリマーに限定されるものではない。
【0063】
記録層6の形成方法としては、第1の基板2と第2の基板5とをシールド材10を介在させて貼り合わせた状態で、シールド材10の一部に注入口を設けておき、シールド材10の内部の空間を真空にし、記録層6を注入させ、注入後に注入口を封止する方式でもよいし、第1の基板2又は第2の基板5にシールド材10を配置し、その間に記録層6を滴下して他方の基板を貼り合わせる方式でもよい。
【0064】
第2の基板5には必要に応じて、記録再生光8の入射光側に反射防止層を設けることができる。反射防止層としては、高屈折率材料と低屈折材料を複数積層させた反射防止膜を蒸着やスパッタリングすることができる。更には、第2の基板5を射出成形等により成形する際に、モスアイ構造を転写させることで基板表面に反射防止層を形成することもできる。
【0065】
<ホログラム記録再生について>
本発明のシールド材を用いたホログラム記録媒体の記録方法は、記録再生光である情報光及び参照光を同軸または異軸として照射し、該情報光と参照光との干渉による干渉縞によって情報を記録層6に記録する同軸干渉方式(コリニア方式)または二光束干渉(ポリトピック)方式によるホログラム記録方法を用いることができる。
再生方法としては、前記記録方法により記録層6に形成された干渉縞に参照光を照射して該干渉縞に対応した記録情報を再生することができる。
【0066】
本発明のシールド材を用いたホログラム記録媒体は、情報の記録再生だけではなく、再生時の強度パターンを利用することによって画像認証、動画識別に用いることができる。特に、本発明のシールド材を用いたホログラム記録媒体は、全光型超高速画像・動画識別システムに適応することできる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明のシールド材を用いたホログラム記録媒体の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の製造例、実施例、および比較例において、各特性の測定法は次のとおりである。
【0068】
(1)粘度平均分子量
得られたポリカーボネート樹脂パウダーを、30倍重量の塩化メチレンと混合して溶解させ、可溶分をセライト濾過により採取した。その後得られた溶液から溶媒を除去した後の得られた固体を十分に乾燥し、該固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記式により粘度平均分子量を算出した。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]
[η]=1.23×10−40.83
ηsp:比粘度
η:極限粘度
c:定数(=0.7)
M:粘度平均分子量
【0069】
(2)ガラス転移温度
得られたポリカーボネート樹脂組成物パウダーを測定試料として用い、TAインスツルメント社製の熱分析システムDSC−2910を使用して、JIS K7121に従い窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
【0070】
(3)酸素透過係数
得られた樹脂シートを用い、幅100mm、長さ100mmを切り取り、JIS−K−7126−1に準拠し、差圧法から、23℃における酸素透過係数を測定した。
【0071】
(4)耐薬品性
得られた樹脂シートを用い、有機溶媒を少量含ませたベンコット(旭化成製、型式M−3)を用いて指圧(約500g)による拭き取り(10往復)を行い、目視にて樹脂シートの状態を観察した。有機溶媒としては、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエンを用いた。
【0072】
(5)厚み斑
得られた樹脂シートを用いて、連続厚み計(アンリツ(株)製フィルムシックネステスター 型式KG601A)を用いて全幅の厚み斑を測定した。
【0073】
(6)熱寸法変化率
得られた樹脂シートを用いて、幅方向3箇所(両端から2.5mmの位置2箇所、中央1箇所)からサンプルを採取した。測定サンプルの大きさは幅10mm、測定の方向に150mmとした。測定の方向は樹脂シートの走行方向と走行方向に直角方向の2方向とした。測定の方向に標点間隔を100mmとし、温度120℃の恒温槽にて無負荷下で1時間処理した後、室温に取り出し冷却した後測定した。寸法の変化は、恒温恒湿下、23℃、65%RHの条件下で、読み取り顕微鏡を用いて実施した。寸法の変化率は熱処理前後の寸法から次のように求めた。全6点の最大値を熱寸法変化率とした。
熱寸法変化率={(処理前の寸法)−(処理後の寸法)}/(処理前の寸法)×100%
【0074】
(7)ホログラム記録媒体の特性評価
(i)パルステック工業製二光束干渉方式標準ホログラムテスター、型式SHOT−500を用いて作成直後のホログラム記録媒体の評価を行った。測定用光源は532nmの緑光源、ビーム直径は5mm、ビーム強度は7mW/cmである。露光量を7,000mJ/cmとしてスケジューリングを行い、ステージの回転角を−60°から60°に20°の角度間隔で記録し、更に各回転角毎に入射角を−6°から6°まで2°の角度間隔で多重記録し、計49個のホログラムを多重記録した。ホログラム記録後、残留する未反応成分を反応させるため、媒体面全体に、波長532nmの青色LEDで十分な光を照射した。再生は同一光源を用いてステージの回転角を−60°から60°に20°の角度間隔、更に各回転角毎に入射角を−7°から7°まで0.2°の角度間隔で再生し、回折光強度から回折効率を求めた。更に、ダイナミックレンジM/#(回折効率の平方根の和)を算出した。
(ii)シェルフライフ特性として、上記構成のホログラム記録媒体を更に2つ準備し、1ヶ月保管後、3ヶ月保管後のダイナミックレンジを測定した。
【0075】
[実施例1]
(1)ポリカーボネート樹脂パウダーの作成
温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48%水酸化ナトリウム水溶液238.0部およびイオン交換水1168.8部を仕込み、これに1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン213.5部およびハイドロサルファイト0.43部を溶解した後、塩化メチレン797.2部を加え、撹拌下、15〜25℃でホスゲン100.0部を約60分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液29.7部およびp−tert−ブチルフェノール4.87部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン0.25部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を得た。次いで、この溶液を目開き0.3μmのフィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕、乾燥してパウダーを得た。
【0076】
(2)樹脂シートの作成
得られたポリカーボネート樹脂パウダーを用い、減圧乾燥式の棚段乾燥機を用いて、120℃で3時間乾燥した。溶融ポリマーの異物を除去するための平均目開きが10μmであるステンレス不織布製のディスク形状フィルタを用いた。濾過後の溶融樹脂を290℃に設定したダイにより、回転する直径800mm、ロール面長1800mmの冷却ロール面に押出した。押出しダイのリップ幅は1500mm、リップ間隙は約2mmとした。樹脂シートを均一に冷却して引き取るために、樹脂シート全幅を静電密着法により冷却ロール面に密着させた。静電密着のための電極にはステンレス製ピアノ線を清浄に磨いたものを用いた。このピアノ線に直流電源のプラス電極をつなぎ、冷却ドラム側は接地した。印加電圧は7KVとした。かくして厚みが200μmの樹脂シートを冷却ロール回転速度10m/分で、テイクオフロールを介して引き取った。樹脂シートの両端部を70mmずつ切り除いて1300mm幅の樹脂シートを得た。
【0077】
(3)ホログラム記録材料層溶液(記録層)の調製
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル100重量部に対してジエチレントリアミン23重量部を加え、マトリクス溶液を作成した。また、ラジカル重合性化合物としてポリエチレングリコールジアクリレート100重量部に、光重合開始剤としてイルガキュア−784(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)3重量部を加え混合した。ホログラム記録材料層溶液の全体量に対して、マトリクス材料の割合が67重量%、光重合性モノマーの割合が33重量%となるように室温にて混合し、ホログラム記録材料層溶液を調製した。
【0078】
(4)ホログラム記録媒体の作成
(2)で得られた樹脂シートを50mm角に切り取り、中心部を40mm角で均一に打ち抜くことによって幅10mm、0.2mm厚のシールド材を準備した。片面に反射防止膜が設けられた50mm角、0.5mm厚のガラス基板を2枚準備した。更にシールド材として、ガラス基板の反射防止膜が設けられていない面上に、上記シールド材を置き、(3)で調製したホログラム記録材料層溶液を塗布した。更に記録材料層をガラス基板で挟み込み封入した。室温で1時間乾燥し、次いで80℃で10時間乾燥し、乾燥膜厚200μmのホログラム記録材料層を得た。
【0079】
[実施例2]
実施例1の(1)において、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン192.2部、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン16.5部とした以外は全て実施例1と同様の操作を行い、ホログラム記録媒体を作成した。媒体作成直後、1ヶ月保管後、3ヶ月保管後のダイナミックレンジを測定した。
【0080】
[比較例1]
シールド材としてパンライト(登録商標)AD−5503を用いたシールド材を作成し実施例1と同様の操作を行い、ホログラム記録媒体を作成した。媒体作成直後、1ヶ月保管後、3ヶ月保管後のダイナミックレンジを測定した。
表1の結果から明らかなように、特定のポリカーボネート樹脂を用いたシールド材では、ホログラム記録媒体として良好な結果が得られる一方、汎用されるポリカーボネート樹脂を用いたシールド材ではかかる有用な特性が得られないことが分かる。また、シールド材に必要とされる低酸素透過性は、特定のポリカーボネート樹脂を用いることにより向上することが分かる。即ち、本発明によれば、汎用されるポリカーボネート樹脂では得られない良好なシールド材が得られることが分かる。
【0081】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のシールド材は、コリニア方式ホログラム記録媒体、二光束干渉方式ホログラム記録媒体、マイクロホログラフィック・ストレージ用記録材料のシールド材などに利用できる。
【符号の説明】
【0083】
1 ホログラム記録媒体
1a 記録領域
1b 開口部
2 第1の基板
3 反射層
3a エンボスピット
4 ギャップ層
5 第2の基板
6 記録層
6a 干渉縞
7 スペーサー
8 記録再生光
9 位置制御光
10 シールド材
11 波長選択層
12a 位置制御層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(α)で表される構成単位(A)と下記式(β)で表される構成単位(B)とから構成され、全構成単位100モル%中における構成単位(A)の割合が50〜100モル%であるポリカーボネート樹脂から形成されたホログラム記録媒体用シールド材。
【化1】

(式(α)中、xおよびyはそれぞれ独立して0または1〜4の整数であり、RおよびRはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、および炭素数7〜20のアラルキルオキシ基からなる群より選択される有機残基を表す。zは4〜11の整数を表し、かかる複数のRおよびRはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、および炭素数1〜3のアルキル基から選択される基を表す。)
【化2】

(式(β)中、R〜Rは夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよいアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表す。Wは単結合、炭素原子数1〜15のアルキレン基、炭素原子数1〜20の芳香族基を含んでもよいアルキレン基、または酸素原子を表す。)
【請求項2】
構成単位(A)の割合が70〜100モル%である請求項1記載のホログラム記録媒体用シールド材。
【請求項3】
構成単位(A)は、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンから誘導される構成単位である請求項1または2に記載のホログラム記録媒体用シールド材。
【請求項4】
ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が1.3×10〜2.4×10の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載のホログラム記録媒体用シールド材。
【請求項5】
ポリカーボネート樹脂は、JIS K7126に準拠した酸素透過度試験において試験温度23℃で測定した気体透過係数が0.1〜5.0(×10−11cm・cm/cm/sec/cmHg)である請求項1〜4のいずれか1項に記載のホログラム記録媒体用シールド材。
【請求項6】
シールド材は、シート状の形状を有し、その厚みが5〜500μmであり、且つ厚み斑が±5μmである請求項1〜5のいずれか1項に記載のホログラム記録媒体用シールド材。
【請求項7】
シールド材は、シート状の形状を有し、その幅が0.1〜1.5cmである請求項1〜6のいずれか1項に記載のホログラム記録媒体用シールド材。
【請求項8】
シールド材は、シート状の形状を有し、その120℃で1hr加熱処理後の熱寸法変化率が0.08%以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載のホログラム記録媒体用シールド材。
【請求項9】
エンボスピットが形成された第1の基板と、光透過性の第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間にホログラム記録層を有し、ホログラム記録層が請求項1〜8のいずれか1項に記載のシールド材に保護されたホログラム記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−70715(P2011−70715A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219050(P2009−219050)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】