説明

シールド構造

【課題】 第1基板と第2基板との間で電磁波を遮断するシールド構造であって、製造工程が少なく、資源再利用の要請に応えることができるシールド構造を提供する。
【解決手段】 メイン基板1と、断面がH字状を呈しメイン基板1の上面に取り付けられたH型ホルダ3と、H型ホルダ3の内部に収容されたサブ基板2と、H型ホルダ3及びサブ基板2の上方に位置する箱形板金4からなり、H型ホルダ3は合成樹脂等の成形可能な材料からなり、メイン基板1に取付けられ、サブ基板2を収容することにより、サブ基板2をメイン基板1に固定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の不要輻射等を遮蔽する際に好適な、シールド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機やPHS等の携帯端末等の電子機器においては、図12及び図13に示すように、メイン基板1に形成された所定のパターンの各ランドに各端子がそれぞれ半田付けされた雌型スタッキングコネクタ13に、サブ基板5に形成された所定のパターンの各ランドに各端子がそれぞれ半田付けされた雄型スタッキングコネクタ52を嵌合させることによりメイン基板1とサブ基板5とを電気的に接続するとともに、サブ基板5をメイン基板1に固定している。
そして、サブ基板5からの電磁波がメイン基板1の電気部品(図示せず)に影響することを防ぐため、内面にアルミニウムまたはニッケル等の金属皮膜の蒸着が施されたホルダ6によってサブ基板5を覆っている。このホルダ6は、プラスチックからなり、箱形を呈している。
ホルダ6とサブ基板5とは、上方から固定ネジ7を、ホルダ用ネジ穴61、サブ用ネジ穴51及びメイン用ネジ穴12に順次挿入し、筐体8のネジボス81に螺合することにより固定している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−076667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これでは次のような不都合があった。
プラスチックからなるホルダ6の内面に金属皮膜を蒸着する蒸着工程が必要であった。したがって、製造工程数が多く、生産性が低かった。
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、上記問題点を解決できる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
請求項1記載の発明の要旨は、第1基板と第2基板との間で電磁波を遮断するシールド構造であって、前記第1基板に取付けられ、前記第2基板を収容することにより、前記第2基板を前記第1基板に固定するホルダと、金属等からなり、内壁が前記ホルダの外周に嵌合されることにより前記ホルダの上面及び前記外周を覆うシールド部材とを備えていることを特徴とするシールド構造に存する。
請求項2記載の発明の要旨は、前記ホルダは、前記第1基板に形成された被嵌合部に嵌合可能に形成された嵌合部を有し、
前記嵌合部が前記第1基板の前記被嵌合部に嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載のシールド構造に存する。
請求項3記載の発明の要旨は、前記ホルダは、枠形をなし、
内壁に固定部を有し、
該固定部に前記第2基板の周縁が係合することにより、前記第2基板が前記ホルダの内部に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシールド構造に存する。
請求項4記載の発明の要旨は、前記ホルダの外面に係合凸部が設けられ、
前記シールド部材は、箱形に形成され、
内壁に前記係合凸部が係合する受け孔を有することを特徴とする請求項1乃至3に記載のシールド構造に存する。
請求項5記載の発明の要旨は、前記ホルダは合成樹脂等の成形可能な材料からなることを特徴とする請求項1乃至4に記載のシールド構造に存する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、合成樹脂等のモールド成形可能な材料からなるホルダを、金属等のシールド材から構成されたシールド部材に嵌合する構成であるため、蒸着する必要がない。したがって、製造工程が少なく、生産性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図7に示されるように、本実施の形態にかかるシールド構造は、主に、メイン基板1(第1基板)と、断面がH字状を呈しメイン基板1の上面に取り付けられたH型ホルダ3(ホルダ)と、H型ホルダ3の内部に収容されたサブ基板2(第2基板)と、H型ホルダ3及びサブ基板2の上方に位置する箱形板金4(シールド部材)からなる。
【0007】
メイン基板1には、例えば、電子機器の主たる機能を果たす中央処理装置(CPU)等の電気部品が実装されている。メイン基板1の上面には、H型ホルダ3を固定するためのホルダ固定フック11が設けられている。
図8に示されるように、ホルダ固定フック11は、板金が略L字型に折り曲げられて水平部11aと鉛直部11bをなし、水平部11aが自動搭載によりメイン基板1に半田付けされている。鉛直部11bには、H型ホルダ3に設けられたフック爪34が挿通される凸字型のホルダ孔11cが形成されている。
メイン基板1に形成された所定のパターンの各ランドに各端子がそれぞれ半田付けされた雌型スタッキングコネクタ13が設けられており、この雌型スタッキングコネクタ13にサブ基板2の雄型スタッキングコネクタ22が嵌合されることによりメイン基板1とサブ基板2とが電気的に接続される。
【0008】
図9及び図10に示されるように、H型ホルダ3は、ABS樹脂やPC−ABS樹脂等の合成樹脂が、モールド成形により断面略H型に形成されてなる。H型ホルダ3は、平面視において略長方形の枠型に形成されており、メイン基板1に取り付けられることにより上面が開口した箱形をなし、内部にサブ基板2を収容することができる。
【0009】
H型ホルダ3の下面には、下方向に向かって突出した複数の嵌合爪33(嵌合部)が設けられている。嵌合爪33はH型ホルダ3をメイン基板1に取り付けたときにメイン基板1の周縁(被嵌合部)に対応する位置に設けられている。
嵌合爪33は図5の拡大図に示されるように、鉛直部33aと三角部33bとからなる。H型ホルダ3をメイン基板1に取り付けたとき、H型ホルダ3の枠の下面がメイン基板1の上面に当接し、鉛直部33aがメイン基板の周縁に当接し、三角部33bがメイン基板1の下面に当接することにより嵌合爪33がメイン基板1に固定される。
【0010】
H型ホルダ3の、嵌合爪33が設けられている面と反対側の側面には、外側方向に突出形成されたフック爪34が設けられている。フック爪34の先端は三角部34aをなす。
フック爪34がホルダ孔11cに挿通され、三角部34aがホルダ孔11cに引っかかることにより、H型ホルダ3がホルダ固定フック11に係合されている。
【0011】
H型ホルダ3の内壁3aには、突出して、サブ基板2を固定する基板固定突起31(固定部)と凸部36が内壁3aと一体に形成されている。この基板固定突起31にサブ基板2の縁部2aが係合することによりサブ基板2がH型ホルダ3に固定される。すなわちサブ基板2がH型ホルダ3に上方から挿入され、サブ基板2の縁部2aの下面に凸部36が位置し、縁部2aの上面に基板固定突起31が位置することによりサブ基板2が上下方向に固定されている。
【0012】
H型ホルダ3の四方の側面のうち対向する2つの短面3bには、複数の板金固定突起32(係合凸部)(図1では、側面にのみ図示)がそれぞれ設けられている。板金固定突起32は、平面視において側面の外側に突出して形成されており、箱形板金4の四方の側部4bにそれぞれ設けられた4つの固定孔42(受け孔)にそれぞれ係合される。
【0013】
図1〜図7に示されるように、サブ基板2は、例えば、電子機器の従たる機能を果たす電気部品が実装された基板であり、メイン基板1より小さい長方形をなす。
サブ基板2の周囲は縁部2aをなし、縁部2aがH型ホルダ3の内壁3aに形成された基板固定突起31に係合されることにより、サブ基板2がH型ホルダ3の内部に収容される。
また、サブ基板2に形成された所定のパターンの各ランドに各端子がそれぞれ半田付けされた雄型スタッキングコネクタ22が設けられている。
【0014】
箱形板金4はサブ基板2に設けられた電気部品を覆うことにより、電磁波が外部に漏れるのを防止するとともに、外部からの電磁波がサブ基板2に設けられた電気部品に影響を与えるのを防ぐものである。
箱形板金4は、ステンレス等の弾性・導電性を有するシールド材からなる板金がプレス加工され、上部4aと四方の側部4bとからなる箱形に形成されている。
箱形板金4がH型ホルダ3に取り付けられたときにH型ホルダ3の上部を覆うように、上部4aは平面視においてH型ホルダ3よりわずかに大きい略長方形をなす。側部4bはH型ホルダ3に取り付けられたときにメイン基板1に届く程度の高さを有しH型ホルダ3の周囲を囲繞している。
【0015】
箱形板金4の側部4bの下端には板ばね41が設けられている。板ばね41は側部4bと一体に構成された金属片が水平に折り曲げられて成り、平面視において対角に2つ設けられている。箱形板金4がH型ホルダ3に取り付けられると、板ばね41がメイン基板1に圧接される。
箱形板金4の側部4bには、H型ホルダ3に設けられた板金固定突起32が挿通される固定孔42が設けられている。
【0016】
次に本実施の形態にかかるシールド構造の作用について説明する。
サブ基板2の上部及び周囲はシールド材からなる箱形板金4によって覆われているため、サブ基板2に搭載された電気部品から外部への電磁波が遮断される。すなわちサブ基板2の電磁波がメイン基板1の電気部品等に影響するのを防止する。
一方、メイン基板1に設けられた電気部品とサブ基板2との間でも電磁波が遮断される。したがって、メイン基板1に設けられた電気部品の電磁波がサブ基板2の電気部品等に影響を与えることも防止される。
【0017】
上記した本実施の形態に係るシールド構造は、以下に掲げる効果を奏する。
H型ホルダ3を、メイン基板1に、嵌合させて固定する構成であるため、ネジが不要となり、部品数を減らすことができる。また、ネジ締め工程が不要であるため作業効率がよく高い生産性を得られる。
【0018】
従来はスタッキングコネクタのみでメイン基板1とサブ基板2を接続していたため、落下衝撃等によるメイン基板と1サブ基板2との間の応力をスタッキングコネクタで受けていたが、本実施の形態によれば、メイン基板1とサブ基板2との間をH型ホルダを介して固定する構成により、H型ホルダにて落下衝撃を吸収するため、落下衝撃等の応力がスタッキングコネクタ等の接続部に加わるのを軽減させることができる。
また、スタッキングコネクタでの接続及びメイン基板1へのサブ基板2の固定のみでは横方向の衝撃に弱いため、別途横方向の衝撃の対策が必要であったが、本実施の形態によれば枠状のH型ホルダ3でサブ基板2の4方を囲繞するため、H型ホルダ3により横方向の衝撃にも対応できる。
【0019】
また、ABS樹脂・PC−ABS樹脂等のモールド成形しやすい材料を使用することにより、嵌合爪33等の部材を容易に形成できるため、コストを抑えることができる。
H型ホルダ3と箱形板金4とを別々に構成し、板金固定突起32を固定孔42に挿入し、嵌合する構成としたため、H型ホルダ3の内面に金属皮膜を蒸着する必要がない。
また、電子機器を廃棄するに際しては、資源の再利用の要請からプラスチックと金属とを分離する必要があり、上記した従来の電子機器では、プラスチックからなるホルダ6の内面から金属被膜を完全に除去することが困難であるため、上記資源の再利用の要請に応えることができなかったが本実施の形態にかかるシールド構造によれば、箱形板金4の側部4bを外側方向に弾性変形させ、板金固定突起32と固定孔42との係合を外すことにより容易に分解し、金属と合成樹脂とを分別することができるため、資源再利用の要請に応えることができる。
【0020】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。図11の分解斜視図に示すように、メイン基板1とサブ基板2は板金ホルダ9によって固定されている。
板金ホルダ9は、自動搭載によりメイン基板1に半田付けされている。板金ホルダ9の四方の側面9aにはそれぞれ貫通孔91が形成され、サブ基板2には四方の縁にはそれぞれサブ基板爪21が設けられている。この4つのサブ基板爪21が貫通孔91に挿通されることによりサブ基板2が板金ホルダ9に固定されている。また、板金ホルダ9の四方の側面9aにはそれぞれ2つずつ板金固定突起92が設けられ、箱形板金4の四方の側面4bには板金固定突起9が嵌合される嵌合孔43が設けられている。
なお、上記以外は、第1の実施の形態と同じであるので、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
上記の構造によれば、板金をホルダとして使用し、板金ホルダ9は自動搭載によりメイン基板1に取り付けられているため、ホルダ固定フック11が不要となり、部品点数が少なく、生産性の向上が計れる。
【0021】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。
メイン基板1、サブ基板2に電気部品が搭載されている場合について説明したが、電子部品であっても適用可能である。
メイン基板1、サブ基板2は複数であっても適用可能であり、一つのH型ホルダに複数の基板を取り付ける構成としてもよい。
【0022】
雌型スタッキングコネクタ13と雄型スタッキングコネクタ22によりメイン基板1とサブ基板2とを接続した場合について説明したが、フレキシブルプリント板(*)を用いても良い。この場合には衝撃が和らげられるため、さらに衝撃に強い構造とすることができる。他に、導電性ゴムやバネ端子を用いて接続しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態にかかるシールド構造の分解斜視図。
【図2】第1の実施の形態にかかるシールド構造の分解側面図。
【図3】第1の実施の形態にかかるシールド構造の平面図。
【図4】第1の実施の形態にかかるシールド構造の底面図。
【図5】第1の実施の形態にかかるシールド構造の正面図。
【図6】第1の実施の形態にかかるシールド構造の側面図。
【図7】第1の実施の形態にかかるシールド構造の側面図。
【図8】第1の実施の形態にかかるホルダ固定フックの斜視図。
【図9】第1の実施の形態にかかるホルダの斜視図。
【図10】第1の実施の形態にかかるホルダの平面図及び断面図。
【図11】第2の実施の形態にかかるシールド構造の分解斜視図。
【図12】従来のシールド構造の分解斜視図。
【図13】従来のシールド構造の分解側面図。
【符号の説明】
【0024】
1…………メイン基板(第1部材)
11………ホルダ固定フック
11a……水平部
11b……鉛直部
11c……ホルダ孔
12………メイン用ネジ穴
13………雌型スタッキングコネクタ
14………雌型スタッキングコネクタ
2…………サブ基板(第2基板)
21………サブ基板爪
22………雄型スタッキングコネクタ
3…………H型ホルダ(ホルダ)
31………基板固定突起(第2基板)
32………板金固定突起(係合凸部)
33………嵌合爪(嵌合部)
33a……鉛直部
33b……三角部
34………フック爪
34a……三角部
35………凸部
4…………箱形板金(シールド部材)
41………板ばね
42………固定孔(受け孔)
43………固定孔
5…………一体型サブ基板
51………サブ用ネジ穴
52………雄型スタッキングコネクタ
6…………蒸着付ホルダ
61………ホルダ用ネジ穴
7…………固定ネジ
8…………筺体
81………ネジボス
9…………板金ホルダ(ホルダ)
91………貫通孔
92………突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板との間で電磁波を遮断するシールド構造であって、
前記第1基板に取付けられ、前記第2基板を収容することにより、前記第2基板を前記第1基板に固定するホルダと、
金属等からなり、内壁が前記ホルダの外周に嵌合されることにより前記ホルダの上面及び前記外周を覆うシールド部材とを備えていることを特徴とするシールド構造。
【請求項2】
前記ホルダは、前記第1基板に形成された被嵌合部に嵌合可能に形成された嵌合部を有し、
前記嵌合部が前記第1基板の前記被嵌合部に嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載のシールド構造。
【請求項3】
前記ホルダは、枠形をなし、
内壁に固定部を有し、
該固定部に前記第2基板の周縁が係合することにより、前記第2基板が前記ホルダの内部に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシールド構造。
【請求項4】
前記ホルダの外面に係合凸部が設けられ、
前記シールド部材は、箱形に形成され、
内壁に前記係合凸部が係合する受け孔を有することを特徴とする請求項1乃至3に記載のシールド構造。
【請求項5】
前記ホルダは合成樹脂等の成形可能な材料からなることを特徴とする請求項1乃至4に記載のシールド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−185949(P2006−185949A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374725(P2004−374725)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】