説明

シールド機およびシールド機の制御方法

【課題】 単一のカッタによって、前方の地山を任意の形状に掘削可能であり、シールド機の姿勢や進行方向などの制御を容易に行うことができるシールド機およびシールド機の制御方法を提供する。
【解決手段】 隔壁5には、回転体21が設けられる。回転体21の前面には、フレーム25が設けられる。回転体21にはフレーム25を回転させるためのフレームモータ27が設けられる。フレーム25の一方の端部は、フレーム回転軸35を中心に回転可能なように回転体21に接合され、フレーム25は、回転体21に対して異なる回転軸で回転動作が可能である。フレーム25の回転体21との接合部とは反対側の端部近傍に、複数の刃を有するカッタ29が設けられる。フレーム25にはカッタモータ31が設けられ、カッタ29は、カッタ回転軸37を中心に回転可能である。なお、カッタ回転軸37はフレーム回転軸37および回転体回転軸33に対し偏心している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の断面形状のトンネルを掘削可能であり、シールド機の姿勢等の制御が可能なシールド機およびシールド機の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の掘削機の多くは、掘削方向に対面する略円形のカッタの回転により掘削機前方の地山を掘削するものであり、この場合、トンネルは円形断面形状となる。これに対し、複数のカッタを用いて、矩形断面トンネルが掘削可能な掘削機が開発されている。
【0003】
このような矩形形状等断面形状を有するトンネルを掘削可能なシールド機としては、例えば、シールド機本体前面にメインカッタを設け、メインカッタと一体に回転する回転体の径方向に変位可能な遊星カッタを備え、遊星カッタの公転軌道を制御部により制御し、メインカッタで掘削不可能な部位を遊星カッタの動作によって掘削する自由断面シールド機がある(特許文献1)。
【0004】
また、シールド機の前面にセンターカッタが設けられ、センターカッタの回転体から外れた位置に回動部材およびこれに設けられた遊星カッタを有し、遊星カッタの軌道を規制するガイド部材が設けられる自由断面シールド機がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−140585号公報
【特許文献2】特開平2−311692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に記載されたシールド機は、前方の地山を掘削するメインのカッタをシールド機の前面に設ける必要がある。例えば矩形形状の断面を掘削する場合には、メインのカッタによって円形に掘削されたトンネルの4隅の掘削を補助的に設けられた遊星カッタにより行うものである。このため、メインカッタに加え遊星カッタが必要となり、複数の形状のカッタを必要とする。
【0007】
また、特許文献1、特許文献2いずれのシールド機も、あらかじめ設定された範囲を掘削するものであり、状況に応じて掘削範囲を大幅に変化させるようなことはそもそも想定されていない。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、単一のカッタによって前方の地山を任意の形状に掘削可能であり、シールド機の姿勢や進行方向などの制御を容易に行うことができるシールド機およびシールド機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するための第1の発明は、地山を掘進するシールド機であって、シールド機本体と、前記シールド機本体を推進するジャッキと、前記シールド機本体前方に設けられる掘削部と、を有し、前記掘削部は、前記シールド機本体の軸方向略中心を回転軸とする回転体と、前記回転体の前面に前記回転軸に対して略垂直な方向に設けられ、一方の端部が前記回転軸から偏心した位置に回転可能に配置されたフレームと、前記フレームの他方の端部に設けられ、複数の刃を有する回転カッタと、を具備し、前記回転カッタのみで前記シールド機本体前面を掘削可能であることを特徴とするシールド機である。
【0010】
前記シールド機本体の前面下方には掘削土砂を排出する孔に通じる開口部が設けられ、前記開口部の幅は、前記フレームの幅よりも大きいことが望ましい。
【0011】
前記フレームには、掘削土砂を攪拌する攪拌翼が設けられてもよい。
【0012】
第1の発明のシールド機によれば、回転体とこれに設けられるフレームとフレームに設けられるカッタにより構成され、カッタが掘削面全域に対して移動可能であるため、単一のカッタによってシールド機前方の地山を掘削することができる。
【0013】
また、回転体とフレームの動作を適宜連携させることで、シールド機本体に対して任意の位置にカッタを移動させることができる。すなわち、自由な断面形状のトンネルを掘削することが可能であり、さらに状況に応じてカッタの移動範囲を変更することが可能である。
【0014】
また、シールド機前面の下方に掘削土砂を排出するためのスクリューコンベアへつながる孔が設けられ、孔の前方にはフレーム幅よりも広い開口部が設けられれば、カッタの移動位置によって、フレーム及びカッタで孔を塞ぐことがない。したがって、カッタ位置によらず、確実に掘削土砂を排出することが可能である。
【0015】
また、フレームのカッタとの接合部以外の部位に、攪拌翼を設ければ、カッタの移動に伴うフレームの回転動作によって、掘削された土砂がシールド機のチャンバ内で攪拌される。したがって、土砂の固結や閉塞を防止することができる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明にかかるシールド機を用いたシールド機の制御方法であって、掘削範囲の一部は、前記回転カッタが前記シールド機本体の外周から所定量はみ出す位置まで掘削を行わせるとともに、他の一部は前記回転カッタが前記シールド機本体の外周から所定量内側までのみの掘削を行わせることを特徴とするシールド機の制御方法である。
【0017】
前記シールド機本体が掘削方向に対してローリングした場合に、前記回転カッタによる掘削範囲を正規のトンネル形状となるよう前記回転カッタによる掘削範囲を制御してもよい。
【0018】
シールド機を進めたい方向の掘削位置は、前記回転カッタが前記シールド機本体の外周から所定量はみ出す位置まで掘削を行うとともに、シールド機を進めたい方向とは逆側の掘削位置は、前記回転カッタが前記シールド機本体の外周から所定量内側までのみの掘削を行うように制御してもよい。
【0019】
前記シールド機は掘削部の土質を検出する検出部を更に有し、軟質の土質の部位は、前記回転カッタの前記シールド機の外周面からのはみ出し掘削量および/または内側へのマイナス側掘削量を小さくし、硬質の土質の部位は、前記回転カッタの前記シールド機の外周面からのはみ出し掘削量および/または内側へのマイナス側掘削量を大きくし、掘削部の土質に応じて、前記回転カッタの掘削範囲を制御してもよい。
【0020】
ここで、はみ出し掘削量とは、シールド機の前方から見た投影外形に対して、カッタの一部が外周よりはみ出して掘削する場合において、シールド機の投影外形外周部からのカッタのはみ出し長さをいう。また、マイナス側掘削量とは、カッタがシールド機の外周よりも内側までのみを掘削する場合(すなわち、カッタがシールド機の投影外形内に隠れる状態)において、シールド機の投影外形外周部からのカッタによる掘削範囲最外部までの長さをいう。
【0021】
第2の発明によれば、カッタの掘削範囲をはみ出し掘削、マイナス側掘削と変化させることができるため容易にシールド機を制御することができる。
【0022】
また、掘削範囲をシールド機の姿勢によらず正規の掘削範囲とすれば、シールド機が蛇行した場合であっても、容易にシールド機の姿勢を制御することができる。また、同様に、進行方向をはみ出し掘削としてその逆側をマイナス側掘削とすれば、シールド機1の進行方向を容易に制御することができる。また、土質に応じて掘削範囲を変化できれば、掘削面の崩落や過剰な余掘りを防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、単一のカッタによって前方の地山を任意の形状に掘削可能であり、シールド機の姿勢や進行方向などの制御を容易に行うことができるシールド機およびシールド機の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】シールド機1を示す側方断面図。
【図2】シールド機1の正面図。
【図3】シールド機1における、回転体21、フレーム25、カッタ29の動作を示す図。
【図4】カッタ29による掘削範囲を示す図。
【図5】矩形断面以外のトンネル形状の掘削例を示す図。
【図6】シールド機1の外周に対して、(a)はカッタ9がはみ出した範囲まで掘削する状態を示す図、(b)はカッタ9がマイナス側まで掘削した状態を示す図。
【図7】シールド機1がローリングした状態において、シールド機1の前方の掘削範囲の制御方法を示す図。
【図8】シールド機1の進路を変更する場合において、シールド機1の前方の掘削範囲の制御方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明にかかるシールド機1を示す図である。シールド機1は、主に、スキンプレート3、隔壁5、スクリューコンベア15等から構成されるシールド機本体と、シールドを推進させるためのシールドジャッキである油圧ジャッキ7と、シールド前方の地山を掘削するカッタ29、フレーム25、回転体21等からなる掘削部などから構成される。
【0026】
シールド機1は、略矩形断面形状の筒状のスキンプレート3を有し、スキンプレート3の後方には、筒状のテールプレート9が接続される。スキンプレート3の内部には、油圧ジャッキ7が設けられる。テールプレート11内には、図示を省略したセグメント組み立て装置によって組み立てられたセグメント11が設置される。セグメント11とテールプレート9との間はテールシール13によってシールされる。
【0027】
油圧ジャッキ7は、軸方向に往復動作可能である。シールド機1は、油圧ジャッキ7によってセグメント11を押圧し、セグメント11からの反力にて前方に推進する。
【0028】
スキンプレート3の前方には隔壁5が設けられる。隔壁5は、油圧ジャッキ7等が設けられる側と、後述するカッタ29等が設けられる側(チャンバ19側)とを区画する。隔壁5の下方には、開口部17が設けられる。開口部17は、後方のスクリューコンベア15と連通する。すなわち、隔壁5の前方に向かって開口する開口部17は後方にスクリューコンベア15に連通する孔が設けられる。掘削部によって掘削されたチャンバ19内の掘削土砂は、所定の圧力を保持しつつ開口部17内に取り込まれ、スクリューコンベア15によって後方に排出される。
【0029】
隔壁5には、回転体21が設けられる。回転体21は、シールド機1の略中心(すなわち、シールド機1の推進方向の略中心)に位置する回転体回転軸33を中心に回転可能である。すなわち、回転体21は、スキンプレート3内に設けられた回転体モータ23によって回転体回転軸33を中心に回転する。
【0030】
回転体21の前面には、フレーム25が設けられる。フレーム25は、回転体21の回転体回転軸33に対して略垂直な方向にアーム状に設けられる。回転体21にはフレーム25を回転させるためのフレームモータ27が設けられ、フレーム25は、フレーム回転軸35を中心に回転可能である。なお、フレーム回転軸35は回転体回転軸33に対し偏心している(すなわちずれた位置に位置する)。すなわち、フレーム25の一方の端部が、フレーム回転軸35を中心に回転可能なように回転体21に接合され、フレーム25は、回転体21に対して異なる回転軸で回転動作が可能である。
【0031】
フレーム25の、回転体21との接合部とは反対側の端部近傍に、複数の刃を有するカッタ29が設けられる。カッタ29は地山を掘削する部位である。フレーム25にはカッタモータ31が設けられ、カッタ29は、カッタ回転軸37を中心に回転可能である。なお、カッタ回転軸37はフレーム回転軸35および回転体回転軸33に対し偏心している(すなわちずれた位置に位置する)。
【0032】
図2は、シールド機1の正面図を示す。略矩形の断面形状を有するスキンプレート3はシールド機1の外周を形成する。前述の通り、シールド機1の略中央には回転体21が設けられる。回転体21にはフレーム25が接合される。フレーム25は回転体21の径方向に向けて延伸されており、端部にはカッタ29が設けられる。カッタ29には複数の刃39が設けられる。フレーム25のカッタ29との接合部とは逆側には、攪拌翼41が設けられる。攪拌翼41は、チャンバ19(図1)内の土砂を攪拌し、土砂の固結や閉塞を防止する。
【0033】
ここで、回転体21は、回転体回転軸33を中心に往復方向に回転可能である(図中矢印A、B方向)。また、フレーム25はフレーム回転軸35を中心に往復回転動作が可能である(図中矢印C、D方向)。また、カッタ29はカッタ回転軸37を中心に一方向に回転する(例えば図中矢印E方向)。すなわち、カッタ29は常に同じ方向に回転し、地山を掘削する。このため、カッタ29に設けられる刃39は、一方向(回転方向に対し同一周方向)に向けて設けられる。
【0034】
次に、シールド機1の掘削部の動作を説明する。図3はシールド機1の掘削部動作を示す図である。
【0035】
まず、図3(a)の位置からシールド機1に向かって(図面正面からみて)時計回りにカッタ29が移動する例を説明する。図3(a)の位置は、矩形断面の角部近傍を掘削する状態であり、カッタ29は、中心(回転体回転軸33)から最も遠い位置を掘削する。従って、例えば、回転体回転軸33、フレーム回転軸35、カッタ回転軸37が一直線上に並ぶように位置する。
【0036】
この状態から、カッタ29の位置を動かすためには、回転体21を時計回り方向(図中矢印B方向)に回転させながら、フレーム25を反時計回り(図中矢印C方向)に回転させる。なお、以下、カッタ29は常に一定方向(例えば図中矢印E方向の時計回り)に回転しながら掘削を行う。
【0037】
図3(b)は、このようにしてカッタ29の位置が移動した状態を示す。同様に、さらに回転体21を時計回り方向(図中矢印B方向)に回転させながら、フレーム25を反時計回り(図中矢印C方向)に回転させ、カッタ29の位置を図3(c)の位置まで移動させる。
【0038】
カッタ29がシールド機1の高さの約半分程度まで移動したら(図3(c))、回転体21の動作はそのままの方向で、フレーム25の回転方向を時計回りに逆転する(図中矢印C方向)。
【0039】
さらにカッタ29が下方の角部近傍まで移動すると(図3(d))、回転体21の回転方向を反時計回りに(図中矢印A方向)逆転させるとともに、フレーム25の回転方向を時計回り(図中矢印D方向)に逆転させる。この状態から、カッタ29が矩形断面の角部に来るように回転体21、フレーム25の位置を調整する(図3(e))。
【0040】
以後、同様に、カッタ29を矩形断面下方に沿って移動させる(図3(f))。以上の動作を繰り返し、カッタ29を掘削範囲内で移動させながら、シールド機1の前方の地山を掘削する。
【0041】
なお、図3(f)に示すように、フレーム25、カッタ29が開口部17の前を通過する際においても、開口部17がフレーム25の幅よりも大きいため、フレーム25によって開口部17が完全に塞がれることがない。このため、カッタ29の位置によらず、掘削土砂の排出には問題がない。
【0042】
図4は、カッタ29の移動軌跡であるカッタ軌跡43を示す図である。図4に示すように、カッタ29は掘削断面45の全範囲を掘削可能である。すなわち、シールド機1は、カッタ29のみによって、シールド機1の前方の地山を掘削可能である。
【0043】
なお、シールド機1により掘削可能な断面は、前記した矩形断面に限られない。たとえば、図5(a)に示すように、完全円形の掘削断面45aであってももちろん掘削可能であり、また、矩形形状と円形状とを組み合わせたような図5(b)に示すような掘削断面45bであっても掘削可能である。すなわち、シールド機1によれば、フレーム25と回転体21との動作によってカバーできる範囲内であれば、任意の掘削断面を掘削可能である。
【0044】
また、例えば、シールド機1によれば、カッタ29をシールド機1の外周から所定量はみ出すように掘削するように制御することも可能である。また、カッタ29がシールド機1の外周に対して内側までのみを掘削するように制御することもできる。
【0045】
図6は、シールド機1のカッタ29の掘削範囲を変更して掘削する状態を示す図である。図6(a)に示すように、回転体21とフレーム25の回転角度を制御することにより、カッタ29の一部をシールド機1の外周(すなわちスキンプレート3により形成される外周)よりも外側にはみ出させることができる。図6(a)は、カッタ29の一部がシールド機1よりも、はみ出し掘削量Fだけはみ出した例を示す。
【0046】
なお、シールド機1の外周よりもはみ出すとは、カッタ29の一部が、シールド機1を正面から見た際のスキンプレート3の投影範囲よりも、外側に位置することをいう。この際の掘削をはみ出し掘削と称する。
【0047】
同様に、図6(b)に示すように、回転体21とフレーム25の回転角度を制御することにより、カッタ29の一部をシールド機1の外周よりも内側に位置させることもできる。図6(b)は、カッタ29の一部がシールド機1よりもマイナス側掘削量Gだけマイナス側に配置した例を示す。
【0048】
なお、シールド機1の外周よりもマイナス側に配置するとは、カッタ29のすべてが、シールド機1を正面から見た際のスキンプレート3の投影範囲内部に位置することをいう。この際の掘削をマイナス側掘削と称する。
【0049】
次に、シールド機1の制御について説明する。図7は、カッタ29の掘削範囲を変更して、シールド機1のローリングを修正する方法を示す。
【0050】
カッタ29の掘削に伴い、シールド機1自体にローリングが生じ、シールド機1が水平状態から変位した場合、カッタ29の掘削範囲を制御して、掘削範囲を変更する。たとえば、図7(a)に示すように、シールド機1が正規掘削断面47から回転した場合、カッタ29の掘削範囲(シールド機1の掘進方向とは垂直な方向におけるカッタ29の移動範囲)を変更し、正規掘削断面47となるように制御する。
【0051】
この場合、例えば、シールド機1の外周よりも正規掘削断面47が外側に来る部分である余掘り部49は、前述の図6(a)に示すように、カッタ29をシールド機1からはみ出すように移動させる。
【0052】
同様に、シールド機1の外周よりも正規掘削断面47が内側に来る部分であるマイナス掘り部51は、前述の図6(b)に示すように、カッタ29をシールド機1からマイナス側に来るように移動させる。
【0053】
このようにすることで、シールド機1の外周形状によらず、正規掘削断面47を掘削することができる。なお、シールド機1のローリング角度が小さい状態でこのような制御を行えば、シールド機1は掘削断面内に収まろうとするため、やがて正規掘削断面47内に収まる。すなわち、シールド機1のローリングが修正可能である。
【0054】
図8は、同様の制御方法によりシールド機1の進行方向を制御する方法を示す図である。たとえば、図8(a)に示すように、シールド機1の進行方向(図中矢印G)に対して、シールド機1の進行方向にずれが生じた場合には、シールド機1が正規の進行方向となるように、進みたい側の掘削範囲を余掘り部49として、進みたい側とは逆側をマイナス掘り部51とすればよい。
【0055】
このようにすることで、シールド機1は掘削断面内に収まろうとするため、シールド機1の進行方向が正規の方向に向くように制御することができる。
【0056】
なお、このような制御は、シールド機1内に設けられた各種センサ等によって姿勢および方向等を検知し、シールド機1内に設けられたコンピュータによって、自動で掘削範囲の設定し、カッタ29が掘削範囲を移動できるように回転体21、フレーム25の動作を制御してもよい。カッタ29の位置やフレーム25、回転体21の回転角度などは、回転計などにより把握される。
【0057】
また、シールド機1の前面に土砂の土質を検知可能な検出部を設けておき、土質に応じて掘削範囲を制御してもよい。たとえば、軟質の土質を掘削する場合には、カッタ29のはみ出し堀量やマイナス堀量を少なくし、硬質の土質を掘削する場合には、カッタ29のはみ出し堀量やマイナス堀量を多くしてもよい。シールド機1が掘進し、掘削位置の土質に応じて掘削範囲を変えることで、掘削面の崩落や過剰な掘削を防止でき、効率良く掘削を行うことができる。
【0058】
土質の検出としては、掘削土砂のチャンバ内の流動抵抗等を検知する検知器を設けたり、カッタ29のモータ電流等によって土質を検出してもよい。
【0059】
以上説明したように、本発明の実施形態にかかるシールド機1によれば、掘削部が回転体21、フレーム25、カッタ29により構成され、カッタ29が掘削面全域に対して移動可能であるため、単一のカッタ29によってシールド機1前方の掘削範囲をすべて掘削することができる。
【0060】
また、回転体21とフレーム25の動作を適宜連携させることで、シールド機1に対して任意の位置にカッタ29を移動させることができる。すなわち、自由な断面形状のトンネルを掘削することが可能であり、さらに状況に応じてカッタの移動範囲を変更することが可能である。
【0061】
また、スクリューコンベア15へつながる孔の前方にはフレーム25幅よりも広い開口部17が設けられるため、カッタ29の移動位置によって、フレーム25及びカッタ29で孔を塞ぐことがない。したがって、カッタ29位置によらず、確実に掘削土砂を排出することが可能である。
【0062】
また、フレーム21には攪拌翼41が設けられるため、カッタ29の移動に伴うフレーム25の回転動作によって、掘削された土砂がシールド機1のチャンバ19内で攪拌され、土砂の固結や閉塞が防止することができる。
【0063】
また、カッタ29の掘削範囲をはみ出し掘削、マイナス側掘削と変化させることができるため容易にシールド機の姿勢を制御することができる。
【0064】
例えば、シールド機1がローリングした場合であっても、シールド機1の姿勢によらずに、カッタ29の掘削範囲を正規掘削断面47とすれば、容易にシールド機1の姿勢を制御することができる。また、同様に、進行方向を、はみ出し掘削としてその逆側をマイナス側掘削とすれば、シールド機1の進行方向を容易に制御することができる。また、土質に応じて掘削範囲を変化できれば、掘削面の崩落や過剰な余掘りを防止することができる。
【0065】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0066】
例えば、カッタ29の回転方向とカッタ29の移動(軸方向に対して垂直な方向への移動)方向とは、実施例に限られない。カッタ29を時計回りで回転させた状態で、カッタ29を掘削範囲に対して反時計回りに移動させてもよい(図3とは逆方向へ移動)。
【0067】
この場合でも、同様に回転体21とフレーム25との回転角度を調整すれば良い。なお、カッタ29の回転方向と、カッタ29の掘削範囲における移動方向とは逆側の方が、カッタ29の回転によるシールド機1の回転と、カッタ29の移動によるシールド機1の回転とが打ち消し合うため、シールド機1の回転に対しては望ましい。
【符号の説明】
【0068】
1………シールド機
3………スキンプレート
5………隔壁
7………油圧ジャッキ
9………テールプレート
11………セグメント
13………テールシール
15………スクリューコンベア
17………開口部
19………チャンバ
21………回転体
23………回転体モータ
25………フレーム
27………フレームモータ
29………カッタ
31………カッタモータ
33………回転体回転軸
35………フレーム回転軸
37………カッタ回転軸
39………刃
41………攪拌翼
43………カッタ軌跡
45、45a、45b………掘削断面
47………正規掘削断面
49………余掘り部
51………マイナス掘り部
53………地山

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山を掘進するシールド機であって、
シールド機本体と、
前記シールド機本体を推進するジャッキと、
前記シールド機本体前方に設けられる掘削部と、
を有し、
前記掘削部は、
前記シールド機本体の軸方向略中心を回転軸とする回転体と、
前記回転体の前面に前記回転軸に対して略垂直な方向に設けられ、一方の端部が前記回転軸から偏心した位置に回転可能に配置されたフレームと、
前記フレームの他方の端部に設けられ、複数の刃を有する回転カッタと、
を具備し、
前記回転カッタのみで前記シールド機本体前面を掘削可能であることを特徴とするシールド機。
【請求項2】
前記シールド機本体の前面下方には掘削土砂を排出する孔に通じる開口部が設けられ、
前記開口部の幅は、前記フレームの幅よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のシールド機。
【請求項3】
前記フレームには、掘削土砂を攪拌する攪拌翼が設けられることを特徴とする請求項1また請求項2に記載のシールド機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかのシールド機を用いたシールド機の制御方法であって、
掘削範囲の一部は、前記回転カッタが前記シールド機本体の外周から所定量はみ出す位置まで掘削を行わせるとともに、
他の一部は前記回転カッタが前記シールド機本体の外周から所定量内側までのみの掘削を行わせることを特徴とするシールド機の制御方法。
【請求項5】
前記シールド機本体が掘削方向に対してローリングした場合に、前記回転カッタによる掘削範囲を正規のトンネル形状となるよう前記回転カッタによる掘削範囲を制御することを特徴とする請求項4記載のシールド機の制御方法。
【請求項6】
シールド機を進めたい方向の掘削位置は、前記回転カッタが前記シールド機本体の外周から所定量はみ出す位置まで掘削を行うとともに、シールド機を進めたい方向とは逆側の掘削位置は、前記回転カッタが前記シールド機本体の外周から所定量内側までのみの掘削を行うように制御することを特徴とする請求項4記載のシールド機の制御方法。
【請求項7】
前記シールド機は掘削部の土質を検出する検出部を更に有し、
軟質の土質の部位は、前記回転カッタの前記シールド機の外周面からのはみ出し掘削量および/または内側へのマイナス側掘削量を小さくし、
硬質の土質の部位は、前記回転カッタの前記シールド機の外周面からのはみ出し掘削量および/または内側へのマイナス側掘削量を大きくし、
掘削部の土質に応じて、前記回転カッタの掘削範囲を制御することを特徴とする請求項4記載のシールド機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−185236(P2010−185236A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30766(P2009−30766)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔発行者名〕 社団法人 土木学会 〔刊行物名〕 第63回年次学術講演会講演概要集 〔発行年月日〕 平成20年8月13日
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】