説明

シールド配線構造及びシールド配線方法

【課題】 ノイズ発生源となる電線とノイズに弱い電線とを結束しながらも、後者の電線を簡単な構成でノイズから保護することができるシールド配線構造及びシールド配線方法を提供する。
【解決手段】 並行して配線される第1の電線群2と第2の電線群3とが導電性部材4を挟んで隔離した状態で結束されていて、その結束体7が、接地された車体に導電性部材4の固定片4aを介して取り付けられることによって、この導電性部材4が接地されて、シールドされる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、2つの電線群が並行して配線されるときに一方の電線群を他方の電線群が発するノイズから保護するためのシールド配線構造及びシールド配線方法に関する。
【0002】
【従来の技術】車両の配線には、通常ワイヤハーネスが用いられるが、携帯電話をはじめとする外部ノイズの増加やワイヤハーネスの通信線の高周波化等でノイズの元となる信号が増加する傾向にある。更には、高電圧と低電圧(例えば、42Vと14V)による2電源システムが採用されるようになると、低電圧の回路は高電圧の回路が発するノイズの影響を受けるおそれがある。こうした情況にあって、ノイズに対するシールド技術が益々重要になってきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】こうしたノイズ問題の解消策として、ノイズに弱い電線をなるべくノイズ発生源となる電線から離して配線することが考えられる。しかしながら、この方法では配線形態が複雑になり、また取付作業も煩雑となる。
【0004】別の解消策として、ワイヤハーネスの回路の中で、特に重要でノイズに弱い回路にシールド線を使用して外部ノイズから保護することが考えられる。
【0005】しかしながら、この方法では、車両の配線に用いる全てのワイヤハーネスを、シールド線を使用したものに切り換えるのに、ワイヤハーネスを車種毎に設計、製造の段階から全体的に変更する必要があり、ワイヤハーネスの製造原価が大幅に増加する点で問題があった。また、各シールド線のシールド導体を接地しなければならない分だけ回路も複雑となる。
【0006】本発明は、こうした従来技術の課題を解決するものであり、ノイズ発生源となる電線とノイズに弱い電線とを結束しながらも、後者の電線を簡単な構成でノイズから保護することができるシールド配線構造及びシールド配線方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のシールド配線構造は、第1の電線群と第2の電線群とが並行して配線されるときに、該第2の電線群を該第1の電線群が発するノイズから保護するためのものであって、前記第1の電線群と前記第2の電線群とを隔離してシールド配線するための導電性部材を具え、該導電性部材を挟んで該第1の電線群と該第2の電線群とが隔離した状態で結束されると共に、この結束体が車体に取り付けられることにより当該車体と接触して電気的に接続される接触部が前記導電性部材に設けられている構成からなる。
【0008】本発明のシールド配線方法は、同様に、前記第1の電線群と前記第2の電線群とを導電性部材を挟んで隔離した状態で結束し、該導電性部材の一部を車体に接触させた状態で、結束した電線群を車体に取り付ける構成からなる。
【0009】上記構成によれば、接地された車体に結束体を取り付けると、導電性部材に設けた接触部が車体に電気的に接続されることにより接地され、シールドが形成されるため、ノイズ発生源となる第1の電線群とノイズに弱い第2の電線群とを結束しながらも、ノイズに弱い第2の電線群を簡単な構成でノイズから保護することが可能となる。
【0010】すなわち、第2の電線群が、車体に接地される導電性部材を挟んで第1の電線群と隔離した状態になっているため、これによってシールド効果が生じ、第1の電線群がノイズを発生したとしても、そのノイズが第2の電線群に影響を及ぼすことがなくなる。しかも、導電性部材を追加するだけの簡素な配線構造であり、かつ、結束体を車体に取り付ける作業を行うだけでシールドを形成できるので、簡易かつ安価にノイズ対策を施すことが可能となる。
【0011】上記のシールド配線構造において、前記導電性部材は、前記結束体が車体に取り付けられることによって車体との間に前記第1の電線群又は前記第2の電線群が収められる空間を形成する形状をなす構成にすると、車体と導電性部材とで形成される閉じた空間に第1の電線群又は第2の電線群が収められるため、シールド効果をより一層を向上させることが可能となる。
【0012】上記のシールド配線構造は、前記導電性部材が車体に取り付けられている状態で、導電性部材が車体に接地されることによって上記の作用効果を奏する。
【0013】より具体的には、前記接触部は、車体に取り付けるための固定片の形状をなし、この固定片が車体に接触状態で固定されることにより、該導電性部材が接地される構成にすると、結束体を導電性部材の固定片を介して車体に取り付ける作業を行うだけでシールドが形成されるため、シールド配線の作業性が向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
【0015】図1〜図4は、本発明のシールド配線構造1の構成例を示す。
【0016】このシールド配線構造1は、第1の電線群2と第2の電線群3とが並行して配線されるときに、第2の電線群3を第1の電線群2が発するノイズから保護するためのものである。ここで、並行して配線される第1の電線群2と第2の電線群3による配線の一例として、高電圧と低電圧(例えば、42Vと14V)による2電源システムを採用した場合の配線がある。具体的には、高電圧の第1の電線群2としては、パワーウインド駆動用電線、リアウインドデフォガ用電線等があり、低電圧の第2の電線群3としては、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)関係の信号線、カー・ナビゲーション・システムの信号線、オーディオ用の信号線等がある。この場合には、低電圧の第2の電線群3は高電圧の第1の電線群2が発するノイズの影響を受けるおそれがある。
【0017】そこで、図1に示すシールド配線構造1では、第1の電線群2と第2の電線群3とが導電性部材4を挟んで隔離した状態で結束されていて、この結束体7が導電性部材4の固定片4a(接触部)を介して車体に取り付けられることによって、導電性部材4が車体と接触して電気的に接続されて接地され、シールドされる構成になっている。
【0018】より詳しくは、導電性部材4は、図2に示すように、逆U字状断面のカバー部4bが直線的な配線経路を覆うように長く延びた形状になっていて、両端部に車体に取り付けるための固定片4aが突設され、この固定片4aに取付穴4cが穿孔されている。この導電性部材4は成形加工により簡単に製造することができる。
【0019】この導電性部材4に対し、図1に示すように、高電圧の第1の電線群2をカバー部4bの外周に長手方向に沿って配列すると共に、低電圧の第2の電線群3を長手方向に沿ってカバー部4bの内側に収めるように配列する。そして、これら全体に外側からテープ5を巻いて結束して結束体7としている。図3は、このシールド配線構造1を図1におけるP−P断面で表しており、低電圧の第2の電線群3が、導電性部材4を挟んで6本の高電圧電線21〜26からなる第1の電線群2と隔離された状態になっている。
【0020】図4は、このシールド配線構造1を、車体のドアの下を通っている敷居であるサイドシル6に適用した状態を表している。具体的には、サイドシル6の縦壁6aと底面6bからなるL字状断面部において、シールド配線構造1を構成する導電性部材4を、底面6bに固定片4aの取付穴4cでねじ止めすることによって、導電性部材4と底面6bとで形成される閉じた空間Rに低電圧の第2の電線群3が収められると共に、導電性部材4が取付によって接地されるようにしている。
【0021】この構成によれば、接地された車体のサイドシル6に導電性部材4の固定片4aを介して結束体7を取り付けることによって、導電性部材4が車体に電気的に接続されることにより接地され、シールドが形成されるため、ノイズ発生源となる第1の電線群2とノイズに弱い第2の電線群3とを結束しながらも、ノイズに弱い第2の電線群3を簡単な構成でノイズから保護することができる。
【0022】すなわち、低電圧の第2の電線群3が、車体のサイドシル6に接地された導電性部材4を挟んで高電圧の第1の電線群2と隔離した状態になるため、これによってシールド効果が生じ、高電圧の第1の電線群2がノイズを発生したとしても、そのノイズが低電圧の第2の電線群3に影響を及ぼすことがなくなる。しかも、車体のサイドシル6における底面6bと導電性部材4とで形成される閉じた空間Rに低電圧の第2の電線群3が収められるため、シールド効果をより一層を向上させることができる。
【0023】また、このシールド配線構造1は、導電性部材4を追加するだけの簡素な配線構造であり、かつ、結束体7を車体に取り付ける作業を行うだけでシールドを形成できるので、簡易かつ安価にノイズ対策を施すことができる。
【0024】以上、本発明のシールド配線構造及びシールド配線方法は、上記した実施形態の具体的構成に限定されるものではなく、必要に応じ適宜構成を変形、追加又は削除した構成としてもよいことは言うまでもない。
【0025】例えば、上記では、高電圧の第1の電線群と低電圧の第2の電線群とが並行して配線される場合の例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2つの電線群が並行して配線されるときに一方の電線群を他方の電線群が発するノイズから保護する必要がある配線であれば、どんな配線にも本発明を適用することができる。
【0026】また、上記では、本発明のシールド配線構造を、車体のサイドシルに適用する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、接地された車体のどの部分の配線にも本発明を適用することができる。
【0027】また、上記の導電性部材は、車体に取り付けるための固定片が導電性部材の両端部に突設されていて、この固定片を介して導電性部材を車体に取り付けることによって、導電性部材が接地される構成とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、結束体が車体に取り付けられることによって車体と接触して電気的に接続される接触部が導電性部材に設けられている構成であれば他の形態であってもよい。その場合、例えば、別部品のクランプ等を用いて結束体を車体に取り付ける構成とする。
【0028】更には、上記では、導電性部材が直線形状である場合の例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、車体形状に沿って曲がりくねって配線される電線群を、その配線経路に対応するカバー形状をなす導電性部材で覆う構成としてもよい。この構成によれば、曲がりくねる電線群を導電性部材によって確実に覆って、シールド効果を更に向上させることが可能となる。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、接地された車体に結束体を取り付けると、導電性部材に設けた接触部が車体に電気的に接続されることにより接地され、シールドが形成されるため、ノイズ発生源となる電線とノイズに弱い電線とを結束しながらも、ノイズに弱い電線を簡単な構成でノイズから保護することができる。
【0030】すなわち、第2の電線群が、車体に接地される導電性部材を挟んで第1の電線群と隔離した状態になっているため、これによってシールド効果が生じ、第1の電線群がノイズを発生したとしても、そのノイズが第2の電線群に影響を及ぼすことがなくなる。しかも、導電性部材を追加するだけの簡素な配線構造であり、かつ、結束体を車体に取り付ける作業を行うだけでシールドを形成できるので、簡易かつ安価にノイズ対策を施すことができる。
【0031】上記導電性部材は、結束体が車体に取り付けられることによって車体との間に第1の電線群又は第2の電線群が収められる空間を形成する形状をなす構成にすると、車体と導電性部材とで形成される閉じた空間に一方の電線群が収められるため、シールド効果をより一層を向上させることができる。
【0032】尚、上記のシールド配線構造は、導電性部材が車体に取り付けられている状態で、導電性部材が車体に接地されることによって上記の作用効果を奏する。
【0033】より具体的には、接触部は、車体に取り付けるための固定片の形状をなし、この固定片が車体に接触状態で固定されることにより、導電性部材が接地される構成にすると、結束体を導電性部材の固定片を介して車体に取り付ける作業を行うだけでシールドを形成できるので、シールド配線の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシールド配線構造の構成例を示す斜視図である。
【図2】本発明のシールド配線構造を構成する導電性部材の構成例を示す斜視図である。
【図3】図1におけるP−P断面を表す断面図である。
【図4】本発明のシールド配線構造をサイドシルに適用した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 シールド配線構造
2 第1の電線群
3 第2の電線群
4 導電性部材
4a 固定片(接触部)
5 テープ
6 サイドシル(車体)
7 結束体
R 閉じた空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1の電線群と第2の電線群とが並行して配線されるときに、該第2の電線群を該第1の電線群が発するノイズから保護するためのシールド配線構造であって、前記第1の電線群と前記第2の電線群とを隔離してシールド配線するための導電性部材を具え、該導電性部材を挟んで該第1の電線群と該第2の電線群とが隔離した状態で結束されると共に、この結束体が車体に取り付けられることにより当該車体と接触して電気的に接続される接触部が前記導電性部材に設けられていることを特徴とするシールド配線構造。
【請求項2】 前記導電性部材は、前記結束体が車体に取り付けられることによって車体との間に前記第1の電線群又は前記第2の電線群が収められる空間を形成する形状をなす請求項1記載のシールド配線構造。
【請求項3】 前記導電性部材が車体に取り付けられている請求項2記載のシールド配線構造。
【請求項4】 前記接触部は、車体に取り付けるための固定片の形状をなし、この固定片が車体に接触状態で固定されることにより、該導電性部材が接地される請求項1〜請求項3のいずれかに記載のシールド配線構造。
【請求項5】 第1の電線群と第2の電線群とが並行して配線されるときに、該第2の電線群を該第1の電線群が発するノイズから保護するためのシールド配線方法であって、前記第1の電線群と前記第2の電線群とを導電性部材を挟んで隔離した状態で結束し、該導電性部材の一部を車体に接触させた状態で、結束した電線群を車体に取り付けることを特徴とするシールド配線方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−352636(P2001−352636A)
【公開日】平成13年12月21日(2001.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−169979(P2000−169979)
【出願日】平成12年6月7日(2000.6.7)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】