説明

シールベルト拘束装置

【課題】石炭受入れコンベヤの上部開口部を覆うシールベルトが強風によって吹き飛ばされるのを確実に防止することが可能なシールベルト拘束装置を提供する。
【解決手段】石炭受入れコンベヤの上部開口部4を覆うシールベルト21の上面21aに載置可能で、シールベルト21を幅方向に横断するように配設可能な拘束用チェーン31、32と、シールベルト21を横断する拘束用チェーン31、32の両端部31b、32bをシールベルト21の下面側を支持するシールベルト受け部8、9に固定する固定ピン34と、拘束用チェーン31に設けられ、拘束用チェーン31、32によるシールベルト21の拘束および拘束解除を行う連結手段33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、陸揚げされた石炭を運搬する石炭受入れコンベヤのシールベルトの拘束装置に関し、とくにシールベルトが強風によって吹き飛ばされるのを防止するシールベルト拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所には、陸揚げされた石炭を運搬する石炭受入れコンベヤが設置されている。船舶によって運搬されてきた石炭は、桟橋に設置された揚炭機により船舶から桟橋側に搬送され、その後、石炭受入れコンベヤによって貯留場まで搬送されるようになっている。
【0003】
図8は、従来の石炭受入れコンベヤの一例を示している。図8に示すように、石炭受入れコンベヤ1は、上部開口部4がシールベルト21によって覆われている。シールベルト21の一方の端部は、フレームを構成する一方の支柱2の頂部に設けられたシールベルト受け部8によって支持されている。シールベルト21の他方の端部は、フレームを構成する他方の支柱2の頂部に設けられたシールベルト受け部9によって支持されている。シールベルト受け部8、9には、シールベルト21が強風によって煽られるのを抑制するガイド15、16が設けられている。上部開口部4の下方には、石炭を運搬するためのコンベヤ本体(図示略)が位置しており、上部開口部4をシールベルト21により覆うことにより、石炭の外部への飛散や、石炭が雨で濡れるのを防止するようにしている。
【0004】
石炭受入れコンベヤ1の上部には、シールベルト21が強風によって離脱するのを防止するための押え金具11が設けられている。押え金具11は、シールベルト21を横断するように配置された押え棒12と、回動支点部13と、係合部14から構成されている。押え棒12は、図9に示すように、シールベルト受け部8に固定された回動支点部13を中心として、水平方向(矢印A方向)に回動可能となっている。押え棒12の先端部が係合部14に係合した状態では、押え棒12がシールベルト21を横断した状態となり、強風によってシールベルト21が離脱するのを防止するようになっている。
【0005】
従来からシールベルトの両端部の上方にベルト保持金物を配置し、強風によるシールベルトの脱落を防止するようにしたシールベルト押え装置は知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−225128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図8に示す押え金具11の場合は、押え棒12とシールベルト21との間に隙間Sが生じるので、台風などの襲来時には、強風によってシールベルト21がシールベルト受け部8、9から浮き上がりやすく、シールベルト21が強風によって吹き飛ばされるという問題があった。シールベルト21が強風によってシールベルト受け部8、9から浮き上がった場合は、シールベルト21の下面に過大な風圧が作用することになり、図10に示すように、押え棒12がシールベルト21とともに矢印B方向に吹き飛ばされるという事態が生じていた。これにより、台風通過後の復旧工事に多額の費用が必要になるとともに、発電所の稼動に支障が生じるという問題があった。
【0008】
特許文献1のシールベルト押さえ装置の場合も、シールベルトの両端部の上方にベルト保持金物が位置しているので、強風によってシールベルトが浮き上がりやすくなり、図10と同様の問題が生じる。
【0009】
そこでこの発明は、石炭受入れコンベヤの上部開口部を覆うシールベルトが強風によって吹き飛ばされるのを確実に防止することが可能なシールベルト拘束装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、石炭受入れコンベヤの上部開口部を覆うシールベルトの上面に載置可能で、前記シールベルトを幅方向に横断するように配設可能な拘束用チェーンと、前記シールベルトを横断する前記拘束用チェーンの両側を前記シールベルトの下面側を支持するフレームに固定する固定具と、前記拘束用チェーンまたは前記固定具のいずれかに設けられ、前記拘束用チェーンによる前記シールベルトの拘束および拘束解除を行う連結手段と、を備えたことを特徴とするシールベルト拘束装置である。
【0011】
この発明によれば、シールベルトを横断するように配設される拘束用チェーンは、シールベルトに対して錘の役割を果たすことになるので、シールベルトが強風によって浮き上がりにくくなり、シールベルトの下面には強風による過大な風圧が作用しなくなる。また、石炭受入れコンベヤを使用する際には、拘束用チェーンが邪魔になるので、連結手段による拘束解除により、拘束用チェーンによるシールベルトの拘束が解除される。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシールベルト拘束装置において、前記拘束用チェーンは、前記シールベルトの幅方向中央で左右に分離可能に構成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のシールベルト拘束装置において、前記連結手段は、左右に分離された前記拘束用チェーンを連結可能な連結フックから構成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシールベルト拘束装置において、前記拘束用チェーンは、前記フレーム側に設けられた収納箱に収納可能であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、台風の襲来などによる強風によってシールベルトが吹き飛ばされるのを確実に防止できるので、台風通過後の復旧工事が不要となり、保守コストの低減が図れる。また、台風通過後も直ちに石炭受入れコンベヤを運転することが可能となるので、火力発電所の稼動に支障をきたすことはない。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、拘束用チェーンを左右に分離可能としているので、拘束用チェーンの重量を半減することができ、拘束用チェーンの取扱い時の労力を軽減することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、連結手段を連結フックから構成しているので、シールベルトの拘束作業または拘束解除作業を迅速に行うことができ、作業能率を高めることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、拘束用チェーンをフレーム側に設けられた収納箱に収納することができるので、拘束用チェーンの整理および整頓が図れ、石炭受入れコンベヤの上部が煩雑になるのを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係わるシールベルト拘束装置の正面図である。
【図2】図1の装置の平面図である。
【図3】図1の装置における連結フックの拡大平面図である。
【図4】図1の装置が複数配置された石炭受入れコンベヤの斜視図である。
【図5】図1の装置が用いられる石炭受入れコンベヤの断面図である。
【図6】船舶に積載された石炭を石炭受入れコンベヤに供給する揚炭機の斜視図である。
【図7】図6の揚炭機の部分拡大斜視図である。
【図8】従来の石炭受入れコンベヤの上部拡大断面図である。
【図9】図8におけるシールベルトと押え金具との位置関係を示す平面図である。
【図10】図8におけるシールベルトと押え金具が強風によって吹き飛ばされた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、この発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0021】
図1ないし図7は、この発明の実施の形態を示している。図5は、火力発電所に設置されている石炭受入れコンベヤ1を示している。図5に示すように、石炭受入れコンベヤ1の上部には、シールベルト21が位置している。シールベルト21における幅方向の一端部の下面側は、フレームを構成する一方の支柱2の頂部に設けられたシールベルト受け部8によって支持されている。シールベルト21における幅方向の他端部の下面側は、フレームを構成する他方の支柱2の頂部に設けられたシールベルト受け部9によって支持されている。シールベルト受け部8とシールベルト受け部9は、互いに対向するように配置されており、シールベルト受け部8とシールベルト受け部9との間には、上部開口部4が形成されている。上部開口部4は、通常シールベルト21によって覆われており、図6に示す揚炭機50による石炭71の陸揚げの際には、揚炭機50によるシールベルト21の一部の持ち上げにより露出するようになっている。シールベルト21は、ゴムをスチールワイヤで補強した高強度を有する帯状部材であり、シールベルト21の上面21aに作業者や拘束用チェーン31、32が載ってもほとんど下方に変位しない。
【0022】
図1に示すように、シールベルト受け部8の上面には、シールベルト21が強風によって煽られるのを抑制する帯状のガイド15が設けられている。ガイド15は、シールベルト21における幅方向の一端部に隣接して配置されており、シールベルト21の長手方向に延びている。同様に、シールベルト受け部9の上面には、シールベルト21が強風によって煽られるのを抑制する帯状のガイド16が設けられている。ガイド16は、シールベルト21における幅方向の他端部に隣接して配置されており、シールベルト21の長手方向に延びている。シールベルト受け部8の上面は、シールベルト21を受ける部位は水平面に形成されており、シールベルト21から離れている部位は傾斜面に形成されている。同様に、シールベルト受け部9の上面は、シールベルト21を受ける部位は水平面に形成されており、シールベルト21から離れている部位は傾斜面に形成されている。
【0023】
図5に示すように、シールベルト21の下方には、石炭71を運搬するためのコンベヤ本体5が位置している。コンベヤ本体5は、水平ローラ5aと、左斜めローラ5bと、右斜めローラ5cを有している。水平ローラ5aは、シールベルト21の長手方向に所定の間隔をもって多数配設されている。左斜めローラ5bは、水平ローラ5aの左側に隣接して取付けられており、シールベルト21の長手方向に所定の間隔をもって多数配設されている。右斜めローラ5cは、水平ローラ5aの右側に隣接して取付けられており、シールベルト21の長手方向に所定の間隔をもって多数配設されている。各ローラ5a〜5cの下側には、戻り用のローラ5dが設けられている。石炭71は、各ローラ5a〜5cの上を移動する搬送用ベルト(図示略)によってシールベルト21の長手方向に移動可能となっている。このように、シールベルト21は、石炭受入れコンベヤ1の上部開口部4を覆うことにより、石炭71の外部への飛散防止や、石炭71が雨で濡れるのを防止する機能を有している。
【0024】
図6は、石炭受入れコンベヤ1に石炭を供給する揚炭機50の概要を示している。揚炭機50は、船舶70に積載された石炭71を自動で陸揚げする機能を有しており、桟橋60に敷設された左右のレール61上をX方向に走行可能となっている。揚炭機50は、フレーム本体51と、搬送用アーム52と、垂直コンベヤ部53と、取入れ部54を有している。フレーム本体51は、走行方向と直交する方向に延びており、両端部にレール61上を走行する走行部51dが設けられている。搬送用アーム52は、フレーム本体51の上部に設けられており、フレーム本体51に対して矢印U方向に旋回可能となっている。また、搬送アーム52は、上下方向(矢印Z方向)に揺動可能となっている。垂直コンベヤ部53は、搬送アーム52の先端部に取付けられている。垂直コンベヤ部53は、矢印W方向に旋回可能となっており、取入れ部54からの石炭71を上方に搬送する機能を有している。取入れ部54は、垂直コンベヤ部53の下端部に取付けられており、船舶70内を矢印Y方向に移動するようになっている。
【0025】
図7は、揚炭機50と石炭受入れコンベヤ1との接続関係を示している。揚炭機50のフレーム本体51の途中には、搬送用アーム52からの石炭71を受け入れる収容ケース51aが形成されている。収容ケース51aの下部には、石炭受入れコンベヤ1に石炭71を投入する筒状の投入口51bが設けられている。揚炭機50は、シールベルト21の一部を持ち上げる複数のガイドローラ51cを有している。揚炭機50の投入口51bの下端部は、シールベルト21を持ち上げた状態では石炭受入れコンベヤ1の上部開口部4に位置するようになっている。すなわち、複数のガイドローラ51cによってシールベルト21の一部を持ち上げることにより、上部開口部4を介してコンベヤ本体5の一部が露出するようになっており、この露出したコンベヤ本体5側に向けて投入口51bから石炭71が供給されるようになっている。この実施の形態においては、図7に示すように、2つの石炭受入れコンベヤ1が平行して配置されており、陸揚げされた石炭71は2つの石炭受入れコンベヤ1へ同時に供給可能となっている。
【0026】
図1は、シールベルト21を拘束するためのシールベルト拘束装置30を示している。シールベルト拘束装置30は、第一の拘束用チェーン31、第二の拘束用チェーン32と、固定ピン34と、連結フック33と、収納箱35を有している。各拘束用チェーン31、32は、潮風に対して十分な耐食性を有する金属部材から構成されており、この実施の形態では耐食性金属部材としてステンレス鋼(SUS304)が用いられている。各拘束用チェーン31、32は、シールベルト21の上面21aに載置可能であり、シールベルト21を幅方向に横断するように配設可能となっている。すなわち、各拘束用チェーン31、32は、シールベルト21の拘束時には、シールベルト21の長手方向に対して直交する方向に延びるように配設されており、拘束用チェーン31、32はシールベルト21の幅方向の端部からさらに外方に延びるように配設されている。第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32の重量は、強風によるシールベルト21の浮き上がりを防止でき、かつ作業者による取扱いを考慮して設定されている。
【0027】
図1および図2に示すように、各拘束用チェーン31、32は、多数の金属リングが直列に連結されたものであり、形状が自在となることから、シールベルト21の拘束時には、ほぼ全長にわたり石炭受入れコンベヤ1の上部の各部位に接触した状態で延びている。第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32は、シールベルト21の拘束時には、連結手段としての連結フック33を介してシールベルト21の幅方向のほぼ中央で連結されている。連結フック33は、図3に示すように、フック本体33aと、外れ止め33cを有している。フック本体33aの付け根部には、連結孔33bが形成されている。第一の拘束用チェーン31の一端部31aは、連結孔33bに挿入されており、これによりフック本体33aと第一の拘束用チェーン31が連結されている。外れ止め33cは、フック本体33aに設けられた支点33dを中心として揺動可能となっており、バネ(図示略)によってフック本体33aの内側に向けて付勢されている。フック本体33aには、第二の拘束用チェーン32の一端部32aが引っ掛けられており、この一端部32aは外れ止め33cを解除しないとフック本体33aから外れないようになっている。
【0028】
図1に示すように、第一の拘束用チェーン31は、シールベルト21の幅方向のほぼ中央から左側に延びており、さらにガイド15を乗り越えてシールベルト受け部8の外端部8b近傍まで延びている。第二の拘束用チェーン32は、シールベルト21の幅方向のほぼ中央から右側に延びており、さらにガイド16を乗り越えてシールベルト受け部9の外端部9b近傍まで延びている。シールベルト受け部8、9の外端部8b、9bの近傍には、固定具としての固定ピン34が設けられている。固定ピン34は、シールベルト受け部8、9に溶接などによって強固に固定されている。第一の拘束用チェーン31の他端部31bは、固定ピン34を介してシールベルト受け部8に固定されている。同様に、第二の拘束用チェーン32の他端部32bは、固定ピン34を介してシールベルト受け部9に固定されている。第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32とを連結フック33を介して連結した長さは、一方の固定ピン34と他方の固定ピン34との距離L1よりも若干長く設定されている。これにより、強風によるシールベルト21の過大な浮き上がりが阻止されるようになっている。
【0029】
シールベルト受け部8、9の上面における傾斜面に形成された部位には、収納箱35が設けられている。収納箱35は、図2に示すように、平面形状が四角形をしており、上方が開口している。第一の拘束用チェーン31および第二の拘束用チェーン32を固定する固定ピン34は、収納箱35の内側奥部に位置しており、収納箱35の底部を貫通してシールベルト受け部8、9に固定されている。連結フック33による第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32との連結を解除した状態では、第一の拘束用チェーン31はシールベルト受け部8側の収納箱35内に収納可能となっており、第二の拘束用チェーン32はシールベルト受け部9側の収納箱35内に収納可能となっている。
【0030】
図4に示すように、シールベルト拘束装置30は、強風によるシールベルト21の浮き上がりを確実に防止するために、シールベルト21の長手方向に所定の間隔(長さL2)をもって配置されている。これにより、例えば桟橋60から石炭71の貯留場所が離れていて、石炭受入れコンベヤ1が非常に長くなる場合であっても、シールベルト21が強風によって吹き飛ばされるのを確実に防止することができる。
【0031】
つぎに、船舶70からの石炭71の陸揚げ手順および石炭受入れコンベヤ1におけるシールベルト拘束装置30の作用について、説明する。
【0032】
図6に示すように、船舶70が火力発電所の桟橋60に到着すると、揚炭機50による船舶70に積載された石炭71の陸揚げが開始される。船舶70内の石炭71は、揚炭機50の取入れ部54から取り入れられ、垂直コンベヤ部53に送られる。垂直コンベヤ部53から排出された石炭71は、搬送用アーム52内のコンベヤ(図示略)によって水平方向に搬送され、図7に示すフレーム本体51の収容ケース51aに到達する。つぎに、収容ケース51aに到達した石炭71は、投入口51bから二つの石炭受入れコンベヤ1に投入される。この状態では、複数のガイドローラ51cによってシールベルト21の一部を持ち上げることにより、コンベヤ本体5の一部が露出するので、投入口51bからの石炭71はコンベヤ本体5に供給される。揚炭機50は、レール61に沿って矢印X方向に移動可能となっているので、石炭71の陸揚げ時には、シールベルト21がガイドローラ51cによって持ち上げられる位置も変化する。このように、石炭71の陸揚げ時には、矢印X方向に移動する揚炭機50のガイドローラ51cによってシールベルト21が順次持ち上げられ、石炭受入れコンベヤ1に石炭71が供給される。シールベルト21は、ガイドローラ51cが所定の位置を通過すると自重により降下するので、上部開口部4はシールベルト21によって再び覆われる。
【0033】
揚炭機50を使用する際には、シールベルト21がシールベルト拘束装置30で拘束されていると、シールベルト21をガイドローラ51cによって持ち上げることができないので、第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32は連結フック33の連結解除によって切り離すことが必要となる。第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32の連結解除は、連結フック33の外れ止め33cを揺動させ、フック本体33aから第二の拘束用チェーン32の一端部32aを外すことにより迅速に行うことができるので、作業能率を高めることができる。また、第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32は、左右に分離可能となっているので、拘束用チェーンの重量を半減することができ、各拘束用チェーン31、32の取扱い時の労力を軽減することができる。
【0034】
揚炭機50の使用時には、各拘束用チェーン31、32は収納箱35に収納されるので、各拘束用チェーン31、32の整理および整頓が図れ、石炭受入れコンベヤ1の上部が煩雑になるのを解消することができる。したがって、揚炭機50の使用時には、第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32が揚炭機50に巻き込まれるという事態も回避することができる。揚炭機50による石炭71の陸揚げ作業が完了すると、第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32は、再び連結フック33を介して連結され、シールベルト21は、シールベルト拘束装置30によって拘束される。
【0035】
図1および図2は、シールベルト21はシールベルト拘束装置30によって拘束された状態を示している。この状態では、第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32は、シールベルト21を幅方向に直線状に横断するように延びている。そして、形状が自在となる第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32は、シールベルト21の幅方向のほぼ全長にわたり上面21aと接触した状態となっている。第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32がシールベルト21を横断した状態では、第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32による重量Gがシールベルト21の幅方向に均一に作用することになる。つまり、第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32は、シールベルト21に対して均一に重量が作用する錘の役割を果たすことになる。そのため、シールベルト21が矢印C1方向の強風または矢印C2方向の強風によって浮き上がりにくくなり、シールベルト21の下面21bには強風による過大な風圧が作用しなくなる。
【0036】
また、強風によってシールベルト21が多少浮き上がってシールベルト21が変形しても、形状が自在である第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32はシールベルト21と接触を維持することになり、第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32の重量がシールベルト21に常時作用する。これにより、浮き上がったシールベルト21は、第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32の重量により降下し、シールベルト21の下面21bには強風による過大な風圧が作用しなくなる。したがって、シールベルト21は、左右方向のいずれからの強風によって吹き飛ばされることはなく、シールベルト拘束装置30も破損することはなくなる。
【0037】
このように、第一の拘束用チェーン31および第二の拘束用チェーン32の錘効果を利用してシールベルト21を拘束することにより、台風の襲来時の強風によってシールベルト21が吹き飛ばされるのを確実に防止できる。したがって、台風通過後の復旧工事が不要となり、保守コストの低減が図れる。また、台風通過後も直ちに石炭受入れコンベヤ1を正常に運転することが可能となるので、火力発電所の稼動に支障をきたすことはなくなる。さらに、シールベルト拘束装置30は、図4に示すように、シールベルト21の長手方向に所定の間隔をもって複数配置されているので、シールベルト21が非常に長い場合でも、強風によってシールベルト21が全長にわたって浮き上がりにくくなり、シールベルト21が強風によって吹き飛ばされるのを確実に防止することができる。
【0038】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上述の実施の形態では、作業能率を高めるために、第一の拘束用チェーン31と第二の拘束用チェーン32に分離可能とする構成としているが、一本の拘束用チェーンを使用してシールベルト21を拘束する構成としてもよい。この場合は、一本の拘束用チェーンの一端部を一方の固定ピン34によりシールベルト受け部8に固定するとともに、連結フック33を他方の固定ピン34に取付け、一本の拘束用チェーンの他端部を連結フック33と連結する構成とする。
【0039】
また、各拘束用チェーン31、32は、ステンレス鋼でなくともよく、表面が防錆処理された金属部材であり適度な強度および重量を有するものであれば材質を問わない。さらに、連結手段は拘束用チェーン31、32を連結する連結フック33に限定されることなく、ネジによる連結構造やシャックルを用いた連結構造を採用してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 石炭受入れコンベヤ
4 上部開口部
5 コンベヤ本体
8、9 シールベルト受け部(フレーム)
15、16 ガイド
21 シールベルト
30 シールベルト拘束装置
31 第一の拘束用チェーン(拘束用チェーン)
32 第二の拘束用チェーン(拘束用チェーン)
33 連結フック(連結手段)
34 固定ピン(固定具)
35 収納箱
50 揚炭機
60 桟橋
70 船舶
71 石炭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭受入れコンベヤの上部開口部を覆うシールベルトの上面に載置可能で、前記シールベルトを幅方向に横断するように配設可能な拘束用チェーンと、
前記シールベルトを横断する前記拘束用チェーンの両側を前記シールベルトの下面側を支持するフレームに固定する固定具と、
前記拘束用チェーンまたは前記固定具のいずれかに設けられ、前記拘束用チェーンによる前記シールベルトの拘束および拘束解除を行う連結手段と、
を備えたことを特徴とするシールベルト拘束装置。
【請求項2】
前記拘束用チェーンは、前記シールベルトの幅方向中央で左右に分離可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシールベルト拘束装置。
【請求項3】
前記連結手段は、左右に分離された前記拘束用チェーンを連結可能な連結フックから構成されていることを特徴とする請求項2に記載のシールベルト拘束装置。
【請求項4】
前記拘束用チェーンは、前記フレーム側に設けられた収納箱に収納可能であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシールベルト拘束装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−163266(P2010−163266A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8072(P2009−8072)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】