説明

シールユニット、板状加工装置及び半導体製造装置

【課題】精度良く且つ容易に加工を行うことが出来るにもかかわらず、シール効率を高めることができる、板状物用のシールユニットを提供する。
【解決手段】下側部材30の上面31を上側部材20の下面24に密着させ、且つ下側部材30の背面34を取り付け板10の表面に密着させて取り付けることで、シールユニットSUが組み立てられる。このとき、下側部材30の凹部32と、上側部材20の下面24とで囲われる空間が、帯金Wが通過する開口APとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造設備における、大気圧より低圧の真空チャンバの内部と外部との間を延在する板状物と、かかる真空チャンバとの間を密封するシールユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置などにおいては、真空や特殊ガス雰囲気に維持したプロセス室内で、ワークをステージに載置して移動させて加工処理することが行われている。ここで、プロセス室内に駆動源を含む位置決め装置を設けると、プロセス室外部との密閉性が維持されるため、真空や特殊ガス雰囲気を比較的容易に維持することが可能となる。
【0003】
ところが、比較的長い板状物のようなワークを加工処理する場合、ワーク全てをプロセス室内に収容しようとすると、プロセス室自体が大きくなり、その内部を所定の気圧にするための時間が長くかかったり、プロセス室内部を満たす特殊ガスを大量に必要としたり、或いは位置決め装置のメンテナンスが困難であったりするなどの問題がある。
【0004】
これに対して、プロセス室の容積を最小限にすると、上述した問題は解消されるものの、板状物であるワークをプロセス室の外部から供給しなくてはならなくなる。かかる場合、プロセス室を囲う筐体の壁に形成された開口を介して、ワークをプロセス室内部と外部との間で移動する際に、筐体の開口と板状物との間をシールすることにより、プロセス室の雰囲気の破壊を抑制するシールユニットが必要となる。このようなシールユニットの一例が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−44107号公報
【特許文献2】特開2005−249079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1において、真空チャンバーに取り付けられたエアースライド軸受が角軸を支持すると共に、シールユニットを兼用しているが、その図2において明らかなように、角軸の周囲を4枚の矩形板材で包み込むようにし、角軸の各側面に対向する内面に差動排気シール(吸引溝)を設けている。しかるに、かかる構成の場合には、4枚の矩形板材をそれぞれ単品にて吸引溝等を精度良く加工した後に、ボルト等で互いに結合しているが、加工精度の問題より板材同士の合わせ面には微小の隙間が残ることがある。加えて、4枚の矩形板材を結合した際に、その端面を揃えて平面度を維持することは極めて困難であり、よって結合した矩形板材を筐体の壁面等に突き当てた場合、隙間が生じることが多い。このような隙間を介して外部から大気が侵入すると、真空チャンバーの雰囲気を破壊する恐れがある。これに対し、接着剤を用いて矩形板材を接着してしまうことも考えられるが、シールユニットを容易に分解できなくなるため、トラブル時やメンテナンス時の作業に支障が生じるという問題が生じる。
【0007】
一方、特許文献2には、真空チャンバー内に差し込まれた丸軸に対してシールするシールユニットが開示されているが、丸軸に嵌合する円形断面の穴は、一体物のハウジングに対して、比較的高精度に加工することができ、また差動排気シール用の周溝も穴の内周面に比較的精度良く容易に加工できる。ところが、板状物を挿通することを考えた場合、ハウジングを一体物とすると、スリット状の穴加工や、穴内における差動排気シール用の溝加工などを精度良く行うことが困難になるという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、精度良く且つ容易に加工を行うことが出来るにもかかわらず、シール効率を高めることができる、板状物用のシールユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明のシールユニットは、内部が低圧である筐体の開口を介して外部から内部へ或いは内部から外部へと移動する板状物と、前記開口との間をシールするシールユニットであって、
少なくとも前記板状物の表面に対向する第1板シール面に差動排気シールを備えた第1部材と、
少なくとも前記板状物の裏面に対向する第2板シール面と、前記筐体に対向する第2筐体シール面とに、それぞれ差動排気シールを備えた第2部材と、を有し、
前記第1部材と前記第2部材とは分離可能となっていることを特徴とする。
【0010】
第2の本発明のシールユニットは、内部が低圧である筐体の開口を介して外部から内部へ或いは内部から外部へと移動する板状物と、前記開口との間をシールするシールユニットであって、
前記筐体に取り付けられ、前記板状物が通過する開口を備えた取り付け部材と、
少なくとも前記板状物の表面に対向する第1板シール面と、前記取り付け部材に対向する第2筐体シール面とに、それぞれ差動排気シールを備えた第1部材と、
少なくとも前記板状物の裏面に対向する第2板シール面と、前記取り付け部材に対向する第2筐体シール面とに、それぞれ差動排気シールを備えた第2部材と、を有し、
前記取り付け部材と、前記第1部材と、前記第2部材とは、相互に分離可能となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1の本発明によれば、前記第1部材と前記第2部材の2つの部品でシールユニットを構成するので、組み付け時における合わせ面の数を減らし、また端面の平面度を向上することにより部品間の隙間を減らし、これによりシール効率を高めることができる。又、前記第1部材と前記第2部材とは分離可能となっているので、それぞれ分解した状態で精度良く且つ容易にシール面に差動排気シールを加工することが出来、また組み付けた状態で、前記板状物の表裏面に対向する前記第1板シール面と前記第2板シール面とにより、前記板状物との間を有効にシールすることができ、前記筐体に対向する前記第2筐体シール面により、前記筐体との間を有効にシールすることができる。
【0012】
前記第1板シール面は平面状であり、前記第2板シール面は、前記板状物の裏面及び両側面に対向するようにコ字状又はU字状となっていると好ましい。
【0013】
前記第1部材は、前記筐体の一部と一体であると好ましい。
【0014】
前記第1部材は、前記筐体から分離可能となっており、前記筐体に対向する第1筐体シール面に差動排気シールを備えていると好ましい。
【0015】
第2の本発明によれば、前記取り付け部材と前記第1部材と前記第2部材の3つの部品でシールユニットを構成するので、組み付け時における合わせ面の数を減らし、また端面の平面度を向上することにより部品間の隙間を減らし、これによりシール効率を高めることができる。又、前記取り付け部材と前記第1部材と前記第2部材とは相互に分離可能となっているので、それぞれ分解した状態で精度良く且つ容易にシール面に差動排気シールを加工することが出来、また組み付けた状態で、前記板状物の表裏面に対向する前記第1板シール面と前記第2板シール面とにより、前記第1部材及び前記第2部材と前記板状物との間を有効にシールすることができ、前記取り付け部材に対向する前記第1筐体シール面と前記第2筐体シール面とにより、前記第1部材及び前記第2部材と前記取り付け部材との間を有効にシールすることができる。
【0016】
尚、差動排気シールとは、例えば対向する2面間の微小な間隙などの絞りの間にある気体を前記2面間に設けられた差圧室を介して排気することにより、非接触の状態で、対向面を挟む両側の雰囲気(例えば大気圧と高真空)を一定の状態に保つように機能するものをいうが、ここでは特に、吸引される差圧室(例えば溝)を差動排気シールと呼ぶものとする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】板状物としての帯金を加工する加工装置の外観図である。
【図2】(a)は、第1の実施の形態にかかるシールユニットSUを筐体BX側から見た斜視図、(b)は、下側部材30と帯金Wのみの斜視図、(c)は、下側部材30のみの斜視図である。
【図3】(a)は、シールユニットSUを外部側から見た斜視図、(b)は、下側部材30と帯金Wのみの斜視図、(c)は、下側部材30のみの斜視図である。
【図4】シールユニットSUを分解した状態で下方から見た斜視図である。
【図5】シールユニットSUの正面図である。
【図6】シールユニットSUの背面図である。
【図7】シールユニットSUの上面図である。
【図8】シールユニットSUの下面図である。
【図9】シールユニットSUの側面図である。
【図10】構造体SSの正面図である。
【図11】構造体SSの上面図である。
【図12】構造体SSの側面図である。
【図13】下側部材30の正面図である。
【図14】下側部材30の上面図である。
【図15】下側部材30の背面図である。
【図16】図14の構成をXVI-XVI線で切断して矢印方向に見た図である。
【図17】(a)は、第2の実施の形態にかかるシールユニットSUを筐体BX側から見た斜視図、(b)は、下側部材30と角柱Wのみの斜視図、(c)は、下側部材30のみの斜視図である。
【図18】(a)は、シールユニットSUを外部側から見た斜視図、(b)は、下側部材30と角柱Wのみの斜視図、(c)は、下側部材30のみの斜視図である。
【図19】シールユニットSUの正面図である。
【図20】シールユニットSUの背面図である。
【図21】シールユニットSUの上面図である。
【図22】シールユニットSUの下面図である。
【図23】シールユニットSUの側面図である。
【図24】構造体SSの正面図である。
【図25】構造体SSの上面図である。
【図26】構造体SSの側面図である。
【図27】下側部材30の正面図である。
【図28】下側部材30の上面図である。
【図29】下側部材30の背面図である。
【図30】図28の構成をXXX-XXX線で切断して矢印方向に見た図である。
【図31】(a)は、第3の実施の形態にかかるシールユニットSUを筐体BX側から見た斜視図、(b)は、下側部材30と角柱Wのみの斜視図、(c)は、下側部材30のみの斜視図、(d)は、上側部材120の背面側から見た斜視図、(e)は、上側部材120を天地を逆にした状態で示す斜視図である。
【図32】シールユニットSUの正面図である。
【図33】シールユニットSUの背面図である。
【図34】シールユニットSUの上面図である。
【図35】シールユニットSUの下面図である。
【図36】シールユニットSUの側面図である。
【図37】変形例にかかるシールユニットの構造体SSの斜視図である。
【図38】変形例にかかるシールユニットの下側部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、板状物としての帯金を加工する加工装置の外観図である。図1において、筐体BX内は高真空に維持されており、高真空環境で処理を行う処理装置(不図示)が配置されている。筐体BXは、図1で左右に開口(不図示)を有しており、かかる開口を遮蔽するようにしてシールユニットSUが配置されている。
【0019】
筐体BXの外部において、供給ローラIRから引き出された帯金Wが、位置決めローラ対PR1を通過し、左側のシールユニットSUを通して筐体BX内に進入し、位置決めローラ対PR2,PR3間で処理装置により処理された後、右側のシールユニットSUより外部へと引き出され、位置決めローラ対PR4を通過し、巻き取りローラORに巻かれるようになっている。シールユニットSUは、帯金Wが筐体BX内に出入りしても、筐体BX内の真空雰囲気を維持するように機能する。以下、シールユニットSUについて説明する。
【0020】
図2は、第1の実施の形態にかかるシールユニットSUを筐体BX側から見た斜視図及び分解図であり、図3は、シールユニットSUを外部側から見た斜視図及び分解図である。図4は、シールユニットSUを分解した状態で下方から見た斜視図である。図5は、シールユニットSUの正面図(外部側から見た図、以下同じ)、図6は、シールユニットSUの背面図(筐体側から見た図、以下同じ)、図7は、シールユニットSUの上面図、図8は、シールユニットSUの下面図、図9は、シールユニットSUの側面図である。図10は、構造体SSの正面図、図11は、構造体SSの上面図、図12は、構造体SSの側面図である。図13は、下側部材30の正面図、図14は、下側部材30の上面図、図15は、下側部材30の背面図、図16は、図14の構成をXVI-XVI線で切断して矢印方向に見た図である。
【0021】
図2〜9に示すように、矩形板状の取り付け板(取り付け部材)10と、取り付け板10に一体的に形成された上側部材(第1部材)20と、取り付け板10及び上側部材20に対して分解可能に取り付けられる下側部材(第2部材)30とを有する。取り付け板10と上側部材20とで、構造体SSを構成する。
【0022】
取り付け板10は、中央に配置された薄いスリット状の開口11と、裏面(筐体側)において開口11の周囲を取り囲むようにして形成されたO−リング溝12とを有する。取り付け板10は、不図示のボルトにより筐体BX(図1)の壁面に取り付けられて、その一部を構成するが、O−リング溝12内に配置されたO−リングORが筐体BXとの間を密封するようになっている。
【0023】
取り付け板10の表面(外部側)に、直方体状の上側部材20が一体で形成されている。上側部材20は、側面から奥側に向かって平行に形成された2本の袋孔21a,21bと、袋孔21a、21bから平面である下面(第1板シール面)24に向かって延在する各2本ずつの通孔22a,22bと、下面24に形成されて通孔22a、22bに連通する細溝状の凹部23a,23bを有している。
【0024】
下側部材30は直方体状であり、図2,3、14に示すように、その上面31の中央に浅溝状の凹部32を形成している。凹部32は、帯金W(図2,3参照)の幅に等しいか僅かに大きい幅と、帯金Wの高さと等しいか僅かに深い深さを有する。帯金Wの移動方向に直交する方向に、凹部32を分断する(すなわち底面32a、両側面32b、32bを掘り下げる)ようにして、上面から見てコ字状の第1上面溝33aと、その周囲に配置された同様にコ字状の第2上面溝33bとが形成されている。凹部32の底面32aと両側面32b、32bとで、第2板シール面を構成する、
【0025】
下側部材30の平面である背面34(筐体側にある第2筐体シール面)に、コ字状の第1背面溝35aと、その周囲に配置されたコ字状の第2背面溝35bとが形成されている。直交する上面31と背面34の交差部において、第1背面溝35aの両端は、第1上面溝33aの両端にそれぞれ連結し、第2背面溝35bの両端は、第2上面溝33bの両端にそれぞれ連結している。
【0026】
下側部材30の上面31を上側部材20の下面24に密着させ、且つ下側部材30の背面34を取り付け板10の表面に密着させて取り付けることで、シールユニットSUが組み立てられる。このとき、下側部材30の凹部32と、上側部材20の下面24とで囲われる空間が、帯金Wが通過する開口APとなる。
【0027】
また、上側部材20の下面24における凹部23a、23bは、その全長Δ1が下側部材30の凹部32の幅Δ2より大きいので、凹部32にまたがるようにしてその両側にある下面31の第1上面溝33aと第2上面溝33bの一部に被さるようになる。第1上面溝33aと第2上面溝33bの残りは、下面24により遮蔽される。一方、下側部材30の背面34の第1背面溝35aと第2背面溝35bは、取り付け板10の表面により遮蔽される。よって、外部に対して露出するのは、開口APの内周全周に連なった凹部23a、23b、第1上面溝33a、第2上面溝33bのみになり、これらが差動排気シールを構成することとなる。
【0028】
ここで、開口APに帯金Wを挿通した状態で、上側部材20の袋孔21a,21bを、外部の真空ポンプ(不図示)に接続して吸引すると、通孔22a、22bを介して、凹部23a、23b、第1上面溝33a、第2上面溝33bが吸引され、差動排気シールの機能を発揮して帯金Wの表裏面及び両側面との間の隙間内の気体が吸引され、これにより開口APと帯金Wとの間を介して外部から筐体BX内部へと空気が侵入することを抑制することができる。同時に、第1上面溝33a、第2上面溝33bが連通した第1背面溝35a、第2背面溝35bも吸引されることとなり、差動排気シールとしての機能を発揮して下側部材30と取り付け板10との間の隙間内の気体が吸引され、この隙間を介して、外部から筐体BX内部へと空気が侵入することを抑制することができる。
【0029】
本実施の形態によれば、構造体SSと下側部材30との2部品のみで、帯金Wと筐体BX間のシールを行うシールユニットSUを構成することが出来るため、低コストでありながら高機能を発揮できる。又、下側部材30をシールユニットSUから分解できるので、図14,15に示すような複雑な形状の溝加工を単品の状態で容易に行うことができる。一方、上側部材20については、浅溝状の凹部を形成することなく下面24が平面であって、袋孔21a,21bと、通孔22a,22bと、凹部23a,23bのみであるので、その加工はドリルやフライスを用いて容易に行うことができる。このように、分解する部品を最小限にすることで、部材間の隙間を最小限に抑え、シール効率を高めると共に部品の小型化を図ることができる。又、傷付き等に対して保護する部位も限定されるため、取り扱い性にも優れる。但し、上側部材20に加工を施した後、取り付け板10に溶接しても良い。
【0030】
図17は、第2の実施の形態にかかるシールユニットSUを筐体BX側から見た斜視図及び分解図であり、図18は、シールユニットSUを外部側から見た斜視図及び分解図である。図19は、シールユニットSUの正面図(外部側から見た図)、図20は、シールユニットSUの背面図(筐体側から見た図)、図21は、シールユニットSUの上面図、図22は、シールユニットSUの下面図、図23は、シールユニットSUの側面図である。図24は、構造体SSの正面図、図25は、構造体SSの上面図、図26は、構造体SSの側面図である。図27は、下側部材30の正面図、図28は、下側部材30の上面図、図29は、下側部材30の背面図、図30は、図28の構成をXXX-XXX線で切断して矢印方向に見た図である。
【0031】
本実施の形態においては、帯金の代わりに、板状物として断面矩形状の角柱Wを用いている。よって、下側部材30の凹部32の深さは、その分だけ深くなっており、従って凹部32を分断する第1上面溝33a、第2の上面溝33bも深い位置まで形成されている。それ以外の構成については上述した実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0032】
図31は、第3の実施の形態にかかるシールユニットSUを筐体BX側から見た斜視図及び分解図である。図32は、シールユニットSUの正面図(外部側から見た図)、図33は、シールユニットSUの背面図(筐体側から見た図)、図34は、シールユニットSUの上面図、図35は、シールユニットSUの下面図、図36は、シールユニットSUの側面図である。
【0033】
本実施の形態においては、取り付け板10から、上側部材(第1部材)120を分離可能となっている。これにより、上側部材120の穴加工や溝加工が容易になる。より具体的には、直方体状である上側部材120は、図31に示すように、平面である下面121に、コ字状の第1下面溝122aと、その周囲に配置されたコ字状の第2下面溝122bとを形成している。袋孔121a、121bは、不図示の通孔122a、122bを介して、第1下面溝122a及び第2下面溝122bにそれぞれ連通している。
【0034】
又、上側部材120の平面である背面123(筐体側にある第1筐体シール面)に、コ字状の第1背面溝124aと、その周囲に配置されたコ字状の第2背面溝124bとを形成している。直交する下面121と背面123の交差部において、第1背面溝124aの両端は、第1下面溝122aの両端にそれぞれ連結し、第2背面溝124bの両端は、第2下面溝122bの両端にそれぞれ連結している。
【0035】
上側部材120の背面123を取り付け板10の表面に密着させて取り付けることで、上述した実施の形態のごとき構造体が形成され、第1背面溝124aと第2背面溝124bが社費得される。更に、この構造体に上述したようにして、上述した実施の形態と同様な構成の下側部材30を組み付けることでシールユニットが形成される。
【0036】
本実施の形態においては、上側部材120の袋孔21a,21bを、外部の真空ポンプ(不図示)に接続して吸引すると、通孔22a、22bを介して、上側部材120の第1背面溝124a、第2背面溝124bが吸引され、差動排気シールとしての機能を発揮して上側部材120と取り付け板10との間の隙間内の気体が吸引され、この隙間を介して、外部から筐体BX内部へと空気が侵入することを抑制することができる。又、上述した実施の形態と同様に、下側部材30と角柱Wとの間、及び下側部材30と取り付け板10との間の差動排気シールを確立することができる。尚、上側部材120の下面121は平面であるが、下側部材30の凹部32に対向して、凹部を形成してもよい。それにより、凹部32の深さをより浅くできる。
【0037】
図37は、変形例にかかるシールユニットの構造体SSの斜視図であり、図38は、変形例にかかるシールユニットの下側部材の斜視図である。本変形例においては、図38に示すように、下側部材30’を板状物の移動方向に延長し、凹部32の底面32a及び両側面32b、32bに、第2上面溝33bに隣接して、静圧軸受用の多孔質パッドPDを配置している。一方、図37に示すように、上側部材20’の下面には、凹部32の底面の多孔質パッドPDに対向して、同様に静圧軸受用の多孔質パッドPDを配置している。
【0038】
本変形例によれば、不図示の正圧ポンプから圧送された空気を、上側部材20’および下側部材30’の多孔質パッドPDから吐出させることで、不図示の板状物の表裏面及び両側面に静圧を発生させ、これによりシールユニットに対して非接触状態で板状物を支持することができる。
【0039】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、板状物はワークに限らず、ガイド等であっても良い。又、本発明のシールユニットは、大気雰囲気と減圧下の筐体内部との間のみならず、異なる環境であって隣接する密閉空間(減圧、ガス雰囲気)の間をシールすることもできる。密閉空間としては、例えばCVDやPVDのための減圧されたガス雰囲気(真空空間)の環境に維持されたものがあるが、かかる環境を維持するためには本発明のシールユニットが好適である。又、差動排気シールに関しては、上述した実施の形態では2段(2つの排気溝を有する)であるが、必要とされるシール性能に応じて、排気溝は1段、あるいは3段以上と適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 取り付け板
11 開口
12 O−リング溝
20 上側部材
21a、21b 袋孔
22a、22b 通孔
23a,23b 凹部
24 下面
30 下側部材
31 上面
32 凹部
33a 第1上面溝
33b 第2上面溝
34 背面
35a 第1背面溝
35b 第2背面溝
120 上側部材
121 下面
121a,121b 袋孔
122a 第1下面溝
122b 第2下面溝
123 背面
124a 第1背面溝
124b 第2背面溝
IR 供給ローラ
OR O−リング
OR 巻き取りローラ
PR1 ローラ対
PR2,PR3 ローラ対
PR4 ローラ対
SU シールユニット
W 帯金
W 角柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が低圧である筐体の開口を介して外部から内部へ或いは内部から外部へと移動する板状物と、前記開口との間をシールするシールユニットであって、
少なくとも前記板状物の表面に対向する第1板シール面に差動排気シールを備えた第1部材と、
少なくとも前記板状物の裏面に対向する第2板シール面と、前記筐体に対向する第2筐体シール面とに、それぞれ差動排気シールを備えた第2部材と、を有し、
前記第1部材と前記第2部材とは分離可能となっていることを特徴とするシールユニット。
【請求項2】
前記第1板シール面は平面状であり、前記第2板シール面は、前記板状物の裏面及び両側面に対向するようにコ字状又はU字状となっていることを特徴とする請求項1に記載のシールユニット。
【請求項3】
前記第1部材は、前記筐体の一部と一体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシールユニット。
【請求項4】
前記第1部材は、前記筐体から分離可能となっており、前記筐体に対向する第1筐体シール面に差動排気シールを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシールユニット。
【請求項5】
内部が低圧である筐体の開口を介して外部から内部へ或いは内部から外部へと移動する板状物と、前記開口との間をシールするシールユニットであって、
前記筐体に取り付けられ、前記板状物が通過する開口を備えた取り付け部材と、
少なくとも前記板状物の表面に対向する第1板シール面と、前記取り付け部材に対向する第2筐体シール面とに、それぞれ差動排気シールを備えた第1部材と、
少なくとも前記板状物の裏面に対向する第2板シール面と、前記取り付け部材に対向する第2筐体シール面とに、それぞれ差動排気シールを備えた第2部材と、を有し、
前記取り付け部材と、前記第1部材と、前記第2部材とは、相互に分離可能となっていることを特徴とするシールユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate


【公開番号】特開2013−57399(P2013−57399A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−233572(P2012−233572)
【出願日】平成24年10月23日(2012.10.23)
【分割の表示】特願2008−283075(P2008−283075)の分割
【原出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】