説明

シール体又はシール格納体、又は、これらを備えるシール構造体

【課題】検査対象のシール構造体にシール体が装着されているか否かの診断を容易に行い得るシール構造を提供する。
【解決手段】シール体10がシール格納体20に装着されると、シール体10の環状体11は、シール格納体20の環状溝22に埋め込まれる。また、シール体10の突状部12は、シール格納体20の連通溝23に沿う状態にて嵌め込まれる。従って、当該突状部12は、シール格納体20の外部空間に案内され、当該突状部12の端部Kは、外部空間に露出されることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール体又はシール格納体、更に、当該シール体と当該シール格納体とから成るシール構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一方の物体と他方の物体との締結部について、双方の物体間に環状のシール体を介挿させ、気体又は液体の密封状態を確保させるシール構造体が種々検討されている。当該シール構造体は、機械分野又は電気分野を問わず、あらゆる場面で採り入れられる構造である。
【0003】
かかる構造体は、同一部品に複数個所設けられる装置とする場合、複数あるシール構造体のうちの何れかにシール体の組み付け忘れが生じると、少なくとも数箇所のシール構造体を分解しなければ、シール体の欠損部を目視によって特定することができないので、当該欠損部の特定する作業が煩雑となる。
【0004】
そこで、特開2000−235022号公報(特許文献1)では、かかるシール構造体を分解させずにシール体の欠損部を特定させる検査装置が紹介されている。当該検査装置は、シール構造体のうち一方の物体を加振させる加振手段と、当該一方の物体に接合された他方の物体の振動周波数を検出する振動検出手段と、当該振動検出手段の周波数特性をフーリエ変換させる変換手段とを備え、検査対象の周波数特性とシール体が装着されたときの周波数特性とを比較させ、これにより、検査対象のシール構造体にシール体が装着されているか否かを診断させる。
【0005】
【特許文献1】特開2000−235022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、かかる検査装置を用いてシール構造体にシール体が装着されているか否かを診断するので、当該検査装置の購入費用または製作費用が発生するとの問題が生じる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、検査対象のシール構造体にシール体が装着されているか否かの診断を容易に行い得るシール構造体、シール体、シール格納体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るシール体は、弾性部材から成る環状体と、前記環状体に設けられた突状部とから構成されることとする。
【0009】
また、本発明に係るシール格納体は、環状溝と、当該環状溝及び外部空間を連通させる連通溝とを備えることとする。
【0010】
更に、本発明に係るシール構造体は、弾性部材から成る環状体及び前記環状体に設けられた突状部から構成されるシール体と、環状溝と更に当該環状溝及び外部空間を連通させる連通溝とを備えるシール格納体とからなるシール構造体であって、前記突状部の端部は、前記シール格納体の外部に露出され、目視可能に組付けられることとする。
【0011】
ここで、前記環状体と前記突状部とは、一体的に形成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシール体によれば、環状体に設けられた突状部の端部が外部空間へ配置されることにより、シール体を装着する部分に当該シール体が組み付けられているか否かの確認が容易に行われる。
【0013】
本発明に係るシール格納体によれば、環状溝から外部空間に連通溝が形成されているので、突状部を有するシール体を装着させた際、当該突状部は、シール格納体に形成された連通溝に配置され、外部空間へ案内されることとなる。
【0014】
本発明に係るシール構造体によれば、シール体の一部とされる突状部が外部空間に露出されるので、複雑な装置を使用することなく、容易にシール体の存在を確認することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態につき図面を参照して説明する。図1には、本実施の形態に係るシール体の構成が示されている。シール体10は、図示の如く、環状体11と突状部12とから構成される。
【0016】
環状体11は、弾性体から成り、NBR等から成る。本実施の形態では、当該環状体11は、略円形状の断面を有し、環状の形態を成している。尚、当該環状溝は、所謂Oリングと呼ばれる製品を用いても良い。但し、その規格を問うものでないことは言うまでも無い。また、当該環状体11の断面形状は、略円形状に限定されるものでなく、所謂平パッキンのような多角形断面とされても良い。
【0017】
突状部12は、所定長の平板体を成し、環状体11に設けられる。かかる突状部12は、弾性体であっても良く、この他の材質であっても良い。但し、当該突状部12は、環状体11と同一の材質として、当該環状体11に一体的に成形されるのが好ましい。また、当該突状部12の厚さ及び幅は、シール体10の密封効果を奏することのできる範囲で設定されるのが好ましい。
【0018】
シール体10の製法は、先ず、二枚の金型を準備する。かかる金型のうち一方の金型には、断面が半円状の円環溝が形成されている。また、他方の金型には、当該円環溝と、突状部12を形成させる凹溝が一繋がりで形成されている。
【0019】
そして、双方の金型に溶解した弾性体を注入し、断面が半円状とされた2種類の環状部品を形作る。その後、双方の金型を重ね合わせ、当該金型の内部では、双方金型の環状溝の輪郭が一致するように位置合わせされる。かかる金型の内部には、所定の熱量と圧力が加えられ、これにより、図1に示すシール体10が成形される。
【0020】
かかる如く、環状体11と突状部12とが一体的に形成されるシール体10では、突状部12の接着作業を省略できるので、製造工程の簡素化が図られる。
【0021】
上述の如く、本実施の形態に係るシール体10によれば、環状体11に設けられた突状部12の端部が外部空間へ配置されることにより、シール体を装着する部分に当該シール体が組み付けられているか否かの確認が容易に行われる。
【0022】
図2には、本実施の形態に係るシール格納体の構成が示されている。尚、特許請求の範囲におけるシール格納体の用語の意義は、上述したシール体10を格納させる溝が形成されたもの全般を指し、本実施の形態で記される構造若しくは用途に限定されるものではない。
【0023】
図示の如く、本実施の形態に係るシール格納体20は、平板体21と管部26a、26bとが一体的に形成されている。
【0024】
かかる平板体21は、樹脂材料から成り、シール体10の環状体11を装着させる環状溝22が形成されている。また、当該環状溝22及び外部空間を連通させる連通溝23が形成されている。更に、当該平板体21には、ボルト穴24a、24bが形成され、当該ボルト穴24a、24bは、金属製のリング管によって補強されている。尚、外部空間とは、シール格納体20が所定の構造物に取り付けられる際、シール体10の確認作業を行う者が存在する空間を指す。
【0025】
ここで、上述した連通溝23は、環状溝22から外部空間までの距離が、シール体10の突状部12の長さより短く設定されるのが好ましい。これにより、当該突状部12は、外部空間へ露出されることとされる。また、当該連通溝23の寸法は、シール体10の密封効果を奏することのできる範囲で設定されるのが好ましい。
【0026】
管部26a、26bは、上述の如く、平板体21に一体的に形成され、所定の構造体にシール格納体20が取付けられると、当該構造物外壁の内外の空間を連通させる。
【0027】
本実施の形態に係るシール格納体20によれば、環状溝22から外部空間に連通溝23が形成されているので、突状部12を有するシール体10を装着させた際、当該突状部12は、シール格納体20に形成された連通溝23に配置され、外部空間へ案内されることとなる。
【0028】
図3には、本実施の形態に係るシール構造体50の構成が示されている。当該シール構造体50は、シール体10とシール格納体20との組合せ体から成る。
【0029】
図示の如く、シール体10がシール格納体20に装着されると、シール体10の環状体11は、シール格納体20の環状溝22に埋め込まれる。但し、当該環状溝22は、シール体10のシール性を確保させるため、溝深さが適宜調整されている。
【0030】
また、シール体10の突状部12は、シール格納体20の連通溝23に沿う状態にて嵌め込まれる。これにより、当該突状部12は、シール格納体20の外部空間に案内され、当該突状部12の端部Kは、外部空間に露出されることとなる。従って、当該突状部12の端部Kが目視可能に取付けられるので、シール体10の検査工程では、所定の構造物からシール格納体20を取り外すことなく、シール体10の存在を確認することが可能となる。
【0031】
上述の如く、本実施の形態に係るシール構造体50によれば、シール体10の一部とされる突状部の端部Kが外部空間に露出されるので、複雑な装置を使用することなく、容易にシール体10の存在を確認することが可能となる。
【実施例】
【0032】
図4及び図5には、上述したシール構造体の使用例が示されている。図示の如く、当該シール構造体50は、車両に設けられる排ガス除去装置の制御回路ボックスに取り付けられる。
【0033】
ここで、排ガス除去装置は、トラック等のディーゼル車両のシャーシ部に取り付けられる装置であって、高電圧によって放電を行う高圧端子と、発熱抵抗を具備するフィルター群と、当該高圧端子及びフィルター群を電気的に制御させる制御回路ボックスとから構成される。かかる構成より成る排ガス制御装置では、内燃機関から吐き出された排気ガスが高圧端子へ導入されると、制御回路ボックスから放電信号が送信され、当該高圧端子では、排気ガスに対して放電を開始する。このとき、排気ガスでは、高圧端子の放電作用によってディーゼルパティキュレートがイオン化され、後段のフィルター群への吸着性が向上する。その後、当該排気ガスは、フィルター群へと導かれ、イオン化されたディーゼルパティキュレートがフィルター群の触媒体へ吸着する。かかる後、制御回路ボックスから発熱抵抗に対して電力が供給され、フィルターに吸着されたパティキュレートを燃焼浄化させる。
【0034】
図4には、かかる制御回路ボックスの一部構造が示されている。当該制御回路ボックス30は、回路格納体32と蓋体31とから構成され、当該蓋体31は、回路格納体32へ気密的に接合される。また、回路格納体32には、シール格納体20を嵌着させる開口部32aが形成されている。更に、タップ孔32b及び32cが適宜形成されている。
【0035】
シール構造体50は、突状部の一端Kが露出された状態にて、シール体10がシール格納体20へ組み込まれる。
【0036】
その後、当該シール構造体50は、回路格納体32の開口部32aに嵌め込まれる。そして、シール格納体20は、ボルト41a及び42aによって制御回路ボックス30へ螺着される。
【0037】
図5には、かかるシール構造体50が制御回路ボックス30に取り付けられた配置例が示されている。図示の如く、シール体10の突状部の端部Kが外部空間に露出されるのを確認できる。また、シール格納体50は、シール体10を介して制御回路ボックス30に取付けられているので、当該制御回路ボックス30は、管部を経由する流体の往来を許容しつつ、その他の接合面からの液体又は気体の侵入を防いでいる。尚、かかる管部には配管が施されるので、当該管部から車外の雨水等が侵入することは無い。従って、路面の水分が制御回路ボックス内に浸入し回路基板を漏電させる惧れも無い。
【0038】
図示の如く、本実施例に係るシール構造体50にあっても、シール体10の一部とされる突状部の端部Kが外部空間に露出されるので、容易にシール体10の存在を確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施の形態に係るシール体の構成を示す図
【図2】実施の形態に係るシール格納体の構成を示す図
【図3】実施の形態に係るシール構造体を示す図
【図4】実施例に係るシール構造体の使用例を示す図
【図5】実施例に係るシール構造体の使用例を示す図
【符号の説明】
【0040】
10 シール体
11 環状体
12 突状部
K 端部
20 シール格納体
22 環状溝
23 連通溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性部材から成る環状体と、前記環状体に設けられた突状部とから構成されることを特徴とするシール体。
【請求項2】
環状溝と、当該環状溝及び外部空間を連通させる連通溝とを備えるシール格納体。
【請求項3】
弾性部材から成る環状体及び前記環状体に設けられた突状部から構成されるシール体と、環状溝と更に当該環状溝及び外部空間を連通させる連通溝とを備えるシール格納体とからなるシール構造体であって、
前記突状部の端部は、前記シール格納体の外部に露出され、目視可能に組付けられることを特徴とするシール構造体。
【請求項4】
前記環状体と前記突状部とは、一体的に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載のシール体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−127414(P2010−127414A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303664(P2008−303664)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】