説明

シール剥離装置

【課題】マルチウェルプレートを固定することなく保護シールを剥離することが可能なシール剥離装置を提供する。
【解決手段】シール剥離装置100は、プレート10をX方向に搬送するためのプレート搬送部110、プレート10の保護シール11の上に剥離補助シール20を貼付するためのシール貼付部120、及び剥離補助シール20の一端を把持する把持部130を備えている。プレート10に貼付されている保護シール11の上にさらに剥離補助シール20を貼付し、その一端を把持しながらプレート10をX方向に移動させることで、剥離補助シール20とともに保護シール11をプレート10から剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のウェルが配列されたマルチウェルプレートに貼付されている保護シールを剥離するためのシール剥離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新薬開発等の生化学分野では、微生物等の各種物質を用いた生化学反応試験が行われる。このような試験では、複数個のウェルが規則正しく配列されたマルチウェルプレートが用いられる。マルチウェルプレートには、マイクロプレート、ディープウェルプレート、チューブプレート等があり、このようなマルチウェルプレートを用いることにより、サンプルの分注の自動化が可能になり、一枚のマルチウェルプレートで多くのサンプルを扱うことができ、試験の効率化を図ることができる。
【0003】
マイクロプレートは、格子状に縦横に配列された隔壁で分割された複数のマイクロウェルを有しており、近年はウェルの個数が96個やさらに384個へと増加している。また、ディープウェルプレートは、マイクロプレートのマイクロウェルに比べてその深さをさらに深くしたディープウェルを複数配列したものである。ディープウェルプレートには、マイクロプレートのように隔壁でウェルを形成したものや、ウェルをチューブで形成して所定のチューブラックに収納したもの等がある。従来、ディープウェルはゴム栓でシールしていた。チューブプレートは、チューブの開口部にヒンジ付きの蓋を設けたチューブを複数本所定のチューブラックに収納したものである。チューブ用のチューブラックには、チューブの収納部分と蓋の収納部分とが一体に形成されたチューブ収納部が複数配列されている。
【0004】
マルチウェルプレートの各ウェルには各種サンプルが保存されており、ウェルの増加とともに1つのウェルに注入する溶液の量が少量化される傾向にある。そのため、各サンプルが蒸発して乾燥しやすくなっていることから、これを防止するためにマルチウェルプレートの上面全体に保護シールが貼付される。あるいは、ウェル内のサンプルが空気中の湿気を吸収するのを防止するために、保護シールの貼付が必要となることがある。
【0005】
また、各ウェル内のサンプルが汚染されるのを防止するためにも、保護シールの貼付が必要となっている。従来は、プラスチック板あるいは樹脂で成形した蓋をマルチウェルプレートの上に載置していたが、密閉性が十分でないため、マルチウェルプレートの外周に近い位置のウェルではサンプルが乾燥しやすい一方、マルチウェルプレートの中央側ではウェル間で蒸発による汚染の問題があった。そこで、プラスチック板や樹脂製の蓋に代えて、保護シールが用いられるようになってきている。保護シールは、アルミ箔やポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム等からなる基材の上に、アクリル系またはシリコーン系の粘着剤を塗布したものであり、大きな粘着力を有している。
【0006】
保護シールは、高い粘着力でマルチウェルプレートの隔壁の上面やチューブの開口部等に貼付され、各ウェルを密閉している。マルチウェルプレートに保存されているサンプルを試験等に用いるときは、マルチウェルプレートの上面等に貼付されている保護シールを剥離する必要がある。保護シールの剥離を容易にするために、保護シールの一部をマルチウェルプレートの一端からはみ出させた耳部が設けられており、この耳部を把持して保護シールを剥離することができる。
【0007】
保護シールを剥離するための耳部は、マルチウェルプレートの種類によって設けられている向きや長さが異なっている。それとともに、保護シールの材質や厚み、粘着材の材質や厚み、マルチウェルプレート内の内容物、等によってシールの貼付状態が異なる。このような条件の違いによって、保護シールの剥がしにくいマルチウェルプレートが存在し、剥がす作業が大きな負担となっていた。また、生化学反応試験等では多数のマルチウェルプレートのサンプルを用いることから、多数のマルチウェルプレートのシールを剥がすのに多大な労力を要していた。
【0008】
そこで、保護シールの剥離を容易にするためにシール剥離装置が開発されており、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載のシール剥離装置は、マルチウェルプレートを固定して移動させるための固定部と保護シールの耳部を掴む把持部を備えており、固定部をマルチウェルプレートの上面に平行に移動させる間に把持部が保護シールの耳部を掴み、保護シールを鋭角に折り曲げながらマルチウェルプレートから引き剥がす処理を行う。マルチウェルプレートの外周には突起部が設けられており、固定部がその突起部を固持することで、把持部が保護シールの耳部を掴んで引き剥がすときの力でマルチウェルプレートが固定部の載置台から浮上するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−73994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来のシール剥離装置では、保護シールを剥離するときにマルチウェルプレートが固定部から浮上するのを防止するために、マルチウェルプレートを固定部に固持させるための手段が必要であった。固定部にこのような固持手段を設けると、ロボットハンドリングにより固定部の上方からマルチウェルプレートを載置台に載置させるときに固持手段を開放させ、マルチウェルプレートを載置台に載置したのちに固持手段をロックさせる、といった一連の処理が必要となり、シール剥離装置の構造が複雑になってしまう。とくに、載置台とマルチウェルプレートを固定して搬送する固定部とを同じ場所に設ける必要があることから、固定部の構造が複雑になってしまうといった問題があった。
【0011】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、マルチウェルプレートを固定することなく保護シールを剥離することが可能なシール剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のシール剥離装置の第1の態様は、複数のウェルが配列されたマルチウェルプレートの上面に貼付された保護シールを剥離するためのシール剥離装置であって、前記保護シールが貼付された前記マルチウェルプレートを載置して第1の方向に移動するプレート搬送部と、前記保護シールの剥離用に前記マルチウェルプレートの一端からはみ出させたはみ出し部を把持する把持部と、前記マルチウェルプレートが前記プレート搬送部から浮上するのを防止するための浮上防止部材と、を備え、前記把持部で前記はみ出し部を把持した状態で前記プレート搬送部を移動させ、前記マルチウェルプレートが前記プレート搬送部から浮上する前に前記マルチウェルプレートの上面を前記浮上防止部材で支持することで、前記保護シールを前記マルチウェルプレートから剥離することを特徴とする。
【0013】
本発明のシール剥離装置の他の態様は、前記浮上防止部材は、前記マルチウェルプレート上面の移動方向に平行な両端辺を支持するプレート支持部を2以上備えることを特徴とする。
【0014】
本発明のシール剥離装置の他の態様は、前記浮上防止部材は、前記両端辺の対向する位置に配置された2つの前記プレート支持部を1組として前記移動方向の異なる位置に2組以上備え、少なくとも1組の前記2つのプレート支持部は、前記両端辺から離れる方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明のシール剥離装置の他の態様は、前記プレート搬送部は、前記マルチウェルプレートを載置する載置面と、前記載置面に平行な方向に前記マルチウェルプレートを位置決めする位置決めガイドとを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明のシール剥離装置の他の態様は、前記把持部は、可動挟持部及び固定挟持部を有し、前記可動挟持部と前記固定挟持部との間が開いた前記把持部の開状態のときは、前記プレート搬送部が前記はみ出し部が形成されている向きに移動することにより前記はみ出し部が前記可動挟持部と前記固定挟持部との間に挿入され、前記可動挟持部を駆動させて前記固定挟持部との間が閉じた前記把持部の閉状態にすることで前記はみ出し部を把持することを特徴とする。
【0017】
本発明のシール剥離装置の他の態様は、前記把持部は、前記マルチウェルプレート上面に平行でかつ前記第1の方向に直交する第2の方向に前記可動挟持部及び前記固定挟持部を移動可能にする前後移動支持部を有していることを特徴とする。
【0018】
本発明のシール剥離装置の他の態様は、前記可動挟持部及び前記固定挟持部は、前記はみ出し部を把持していないときは前記第2の方向の前記マルチウェルプレートの略端部に相当する位置に配置されるように前記前後移動支持部を移動していることを特徴とする。
【0019】
本発明のシール剥離装置の他の態様は、前記把持部は、前記保護シールの面に垂直な方向を回転軸として前記可動挟持部及び前記固定挟持部を回転可能にする回転部を有していることを特徴とする。
【0020】
本発明のシール剥離装置の他の態様は、前記把持部は、前記はみ出し部の端部を前記マルチウェルプレートの略中心方向に向けて把持することを特徴とする。
【0021】
本発明のシール剥離装置の他の態様は、前記把持部を前記保護シールの面に垂直な方向に移動させる垂直駆動部をさらに備え、前記垂直駆動部は、前記把持部が前記はみ出し部を把持した直後に前記把持部を上方に持ち上げて前記保護シールの一部を前記マルチウェルプレートから剥離した後に前記把持部を再び元の位置に戻すことを特徴とする。
【0022】
本発明のシール剥離装置の他の態様は、前記はみ出し部を形成して前記マルチウェルプレートの上面全体に前記保護シールを貼付する、または前記はみ出し部を形成して前記保護シール上面の少なくとも一部に剥離補助シールを貼付するシール貼付部をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、マルチウェルプレートを固定することなく保護シールを剥離することが可能なシール剥離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシール剥離装置の構成を示す側面図である。
【図2】保護シールが貼付されたプレートの一例を示す斜視図である。
【図3】マイクロプレートの構成を示す斜視図である。
【図4】ディープウェルプレートの構成を示す斜視図である。
【図5】チューブプレートの構成を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態のシール剥離装置の浮上防止部材の構成を示す斜視図である。
【図7】第1実施形態のシール剥離装置の把持部の構成を示す側面図である。
【図8】第1実施形態のシール剥離装置の概略平面図である。
【図9】第1実施形態のシール剥離装置の動作状態を示す側面図である。
【図10】第1実施形態のシール剥離装置の動作状態を示す側面図である。
【図11】第1実施形態のシール剥離装置の動作状態を示す側面図である。
【図12】第1実施形態のシール剥離装置の動作状態を示す側面図である。
【図13】第1実施形態のシール剥離装置の動作状態を示す側面図である。
【図14】第1実施形態のシール剥離装置の動作状態を示す側面図である。
【図15】第1実施形態のシール剥離装置の動作状態を示す側面図である。
【図16】第1実施形態のシール剥離装置の動作状態を示す側面図である。
【図17】保護シール上に剥離補助シールを貼付した状態を示す平面図である。
【図18】剥離補助シールとともに保護シールを剥離する流れを示す説明図である。
【図19】剥離補助シールとともに保護シールを剥離する流れを示す説明図である。
【図20】本発明の第2実施形態に係るシール剥離装置の構成を示す側面図である。
【図21】本発明の第3実施形態に係るシール剥離装置の構成を示す側面図である。
【図22】本発明の第3実施形態のシール剥離装置の切断手段の動作を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の好ましい実施の形態におけるシール剥離装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。本発明のシール剥離装置は、マルチウェルプレートを所定の方向に移動させる間に、マルチウェルプレートに貼付されている保護シールをプレートから剥離する装置である。
【0026】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るシール剥離装置を、図1を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態に係るシール剥離装置100の構成を示す側面図である。以下では、説明を容易にするために、紙面の左右をX方向(左側を+側、右側を−側とする)、紙面に垂直の方向をY方向(紙面から手前側を+側、紙面の裏側を−側)、及び紙面の上下方向をZ方向(上側を+側、下側を−側)とする。
【0027】
保護シールが貼付されたマルチウェルプレートの一例を図3〜5に示す。図3〜5は、それぞれマイクロプレート、ディープウェルプレート、及びチューブプレートの構成を示す斜視図である。図3に示すマイクロプレート10は、格子状に縦横に配列された隔壁10bで分割された複数のマイクロウェル10aを有しており、その上面全体に保護シート11が貼付されている。保護シート11は、マイクロプレート10から一部がはみ出した耳部11aを有している。
【0028】
図4に示すディープウェルプレート15は、ディープウェル15aが縦横に複数配列されて構成されている。ディープウェル15aには、同図(a)に示すようにディープウェルプレート15に一体に形成されたされたものや、同図(b)に示すようにディープチューブ15bがディープウェルプレート15に形成されたチューブ収納部15cに挿入されたものがある。いずれのものでも、同図(c)に示すように、ディープウェルプレート15の上面全体に耳部11aを有する保護シート11を貼付することができる。
【0029】
図5に示すチューブプレート17は、チューブ17aとチューブラック18とで構成されている。チューブ17aは、開口部にヒンジ付きの蓋17bを有しており、これに対応してチューブラック18にはチューブ17aと蓋17bを一体に収納できるチューブ収納部18aが複数形成されている。チューブ17aをチューブ収納部18aに収納したとき、チューブ17aが引き抜けないようにロックできる構造のものもある。チューブプレート17は、同図(b)に示すように、その上面全体に耳部11aを有する保護シート11を貼付することができる。以下では、図3に示したマイクロプレート10を例に、本実施形態のシール剥離装置100の動作を説明する。
【0030】
本実施形態のシール剥離装置100は、図3に示すマイクロプレート(以下では、単にプレートという)10に貼付されている保護シール11の耳部11aを把持しながらプレート10をX方向(図1では−X方向)に移動させることで、保護シール11をプレート10から剥離するものである。あるいは、保護シール11の耳部11aを把持する代わりに、図2に示すように、保護シール11の上に剥離補助シール20を貼付して把持しやすい延長耳部20aを設け、延長耳部20aを把持しながらプレート10をX方向に移動させて保護シール11を剥離するようにしてもよい。以下では、保護シール11上に剥離補助シール20を貼付して剥離する場合を例に説明するが、これに限定されず、剥離補助シール20を用いないで保護シール11の耳部11aを把持してこれを剥離してもよい。
【0031】
本実施形態の剥離装置100は、プレート10をX方向に搬送するためのプレート搬送部110、プレート10上の保護シール11の上に剥離補助シール20を貼付するためのシール貼付部120、剥離補助シール20を保護シール11に密着させるためのシール押圧部140、剥離補助シール20の延長耳部20aを把持する把持部130、及び保護シール11の剥離時にプレート10がプレート搬送部110から浮上するのを防止するための浮上防止部材150を備えている。保護シール11上に剥離補助シール20を貼付しないで保護シール11の耳部11aを把持して剥離するときは、シール貼付部120とシール押圧部140は不要となる。
【0032】
本実施形態のプレート搬送部110は、プレート10を固定するための構造を有しておらず、プレート10を載置するだけの簡単な構造となっている。より詳細には、プレート搬送部110は、プレート10を載置する載置面111と、載置面111の周縁に配置された位置決めガイド112を有している。位置決めガイド112は、プレート10を載置面111に載置したときに、プレート10がXY方向に移動しないように保持するものである。プレート搬送部110を、上記のようなプレート10を載置するだけの簡単な構造とすることにより、プレート搬送部110にプレート10を載置するとき、ロボットハンド50でプレート10をプレート搬送部110上に置くだけですむ。
【0033】
プレート10がプレート搬送部110に固定されていないため、保護シール11の耳部11aまたは剥離補助シール20の延長耳部20aを把持部130で把持して保護シール11を剥離するとき、プレート10がプレート搬送部110から浮き上がってしまうのを防止するために、本実施形態のシール剥離装置100は浮上防止部材150を備えている。浮上防止部材150の構造を、図6の斜視図を用いて以下に説明する。
【0034】
浮上防止部材150は、プレート10上面のY方向両端辺を支持するプレート支持部151〜154を有している。プレート支持部151は、円柱状の小輪151aと、これより径の大きな大輪151bを同心円状に張り合わせたような形状を有しており、小輪151aはその側面でプレート10の上面を支持し、大輪151bはその端面の小輪151aの小輪端面から露出した部分でプレート10の側面を支持している。また、プレート支持部152〜154も、プレート支持部151と同様の構造を有している。プレート支持部151、152の2つは1つのシャフト155に固定され、プレート支持部153、154は別々のシャフト156、157に固定されている。
【0035】
プレート10の進行方向(X方向)後方側にある2つのプレート支持部153、154は、剥離中の保護シール11をプレート10との間に巻き込むのを防止するために、Y方向に別々に移動可能となっている。保護シール11の剥離中に、プレート支持部153、154とプレート10との間に保護シール11を挟んで剥離の妨げになるときは、プレート支持部153、154のいずれか一方、あるいはその両方を保護シール11の未剥離部分から離れる方向に移動させて保護シール11を剥離しやすくすることができる。プレート支持部153、154を保護シール11の未剥離部分から離すために、プレート支持部153、154をY方向に移動させる、またはX方向もしくはZ方向に揺動させる。これらの動作は、例えばエアシリンダを用いて行うことができる。
【0036】
プレート10が進行して浮上防止部材150の位置に達すると(図6(a))、プレート支持部153、154がプレート10を上方から支持し始める。プレート10がさらに進行すると(図6(b))、次にプレート支持部151、152もプレート10を上方から支持し始める。プレート10の進行に伴ってプレート支持部153、154が保護シール11の未剥離部分に接近していくが、プレート支持部153、154が保護シール11をプレート10との間に挟むおそれがあるときは、プレート支持部153、154をY方向に移動、またはX方向もしくはZ方向に揺動させる。これにより、プレート支持部153、154が保護シール11の剥離の妨げとなるのを防止することができる。
【0037】
プレート支持部151〜154の材質には、プレート10との間の滑りを良くするために、樹脂やゴム等を用いるのがよい。金属を用いると、プレート10に損傷を与えたり削ったりして、破片をウェルに混入させてしまうおそれがある。あるいは、プレート支持部151〜154とシャフトとの間にベアリングを配置して回転可能にしてもよい。
【0038】
剥離補助シール20は、保護シール11と同様に、アルミ箔やポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム等からなる基材の上に、アクリル系またはシリコーン系の粘着剤を塗布したものであり、大きな粘着力を有している。使用前の剥離補助シール20は、粘着剤が塗布された面が剥離紙(フィルム)で覆われており、使用時(剥離補助シール20を保護シール11に貼付するとき)はこれを剥離して保護シール11に貼付する。
【0039】
剥離補助シール20は、保護シール11の上面に貼付されたとき、保護シール11とプレート10との間の粘着度よりも高い粘着度で保護シール11に貼付されている必要がある。保護シール11は、プレート10の各ウェル10aを分割する隔壁の上面のみに貼付されるが、剥離補助シール20は保護シール11と接触する面全体に貼付される。従って、剥離補助シール20の粘着力が保護シール11の粘着力と同程度であれば、剥離補助シール20と保護シール11との間の粘着度が、保護シール11とプレート10との間の粘着度よりも高くなり、剥離補助シール20を引き剥がすことで保護シール11も一緒にプレート10から引き剥がすことが可能となる。
【0040】
シール剥離装置100は、上記の各構成部を設置するための支持パネル101及び支持台102を備えている。プレート搬送部110は、X方向に移動可能に支持台102に支持されており、シール貼付部120、把持部130、シール押圧部140、及び浮上防止部材150は、支持パネル101に固定または移動可能に支持されている。プレート搬送部110をX方向に移動させる手段として、プレート搬送部110を移動させるベルトまたはボールねじ、プレート搬送部110の移動経路を案内する案内ガイド、及びベルトまたはボールねじを駆動させるモータ等が支持台102に設置されている。
【0041】
シール貼付部120は、その直下にプレート10が搬送されてきたときに、シール供給部142から供給される剥離補助シール20をプレート10の保護シール11上に貼り付ける。剥離補助シール20は、剥離紙を貼付した状態でシール供給部142にリール巻きして取り付けられており、シール貼付部120で剥離紙が剥離されて保護シール11に貼付される。また、剥離紙は回収部143に回収される。シール供給部142及び回収部143は、ともに支持パネル101に固定されている。
【0042】
シール貼付部120は、剥離補助シール20を保護シール11上に貼付した後、所定の長さで剥離補助シール20を切断するための図22に示す切断手段350を備えている。あるいは、あらかじめ所定の長さに切断された剥離補助シール20を剥離紙から剥離して保護シール11に1枚ずつ貼付するようにしてもよい。
【0043】
次に、把持部130の構成を、図7を用いて説明する。図7は、把持部130の構成を示す側面図である。同図に示すように、把持部130は、プレート10に貼付された剥離補助シール20を把持するための可動挟持部131及び固定挟持部132と、可動挟持部131及び固定挟持部132を一体にY方向に自在に移動できるようにするための前後移動支持部133と、Z方向を回転軸として可動挟持部131及び固定挟持部132を一体に回転可能にする回転部134と、可動挟持部131を駆動させるためのエアシリンダ部135を備えている。
【0044】
前後移動支持部133には、可動挟持部131及び固定挟持部132を一体にY方向に移動させるレール部133aと、これを支えるレール支持基台133bが設けられている。レール支持基台133bは、その下方をプレート10が通過できるように、その底面が略水平に配置されている。可動挟持部131及び固定挟持部132は、剥離した保護シール11及び剥離補助シール20を廃棄しやすくするために、その先端部にテフロン(登録商標)を貼付している。把持部130で耳部11aまたは延長耳部20aを把持するときは、保護シール11の粘着力に助長されて確実に把持できるが、剥離した保護シール11等を廃棄するときは、その粘着力で廃棄しにくくなる。そこで、本実施形態では、保護シール11及び剥離補助シール20を剥がれ易くするために可動挟持部131及び固定挟持部132の先端部にテフロン(登録商標)を貼付している。
【0045】
把持部130の水平方向の動作を、図8に示すシール剥離装置100の概略平面図を用いて説明する。把持部130は、剥離補助シール20を把持していない時は、前後移動支持部133のレール部133a上を−Y方向(支持パネル101に接近する方向)に移動している。これは、例えば支持パネル101に設けられた磁石で把持部130を引き寄せるような構成とすることで実現できる。また、可動挟持部131及び固定挟持部132は、回転部134における回転により、支持パネル101に近接する位置から斜め前方、すなわち略+Xかつ+Y方向に向いた状態に設定されている。把持部130が支持パネル101側に引き寄せられた状態にあるときは、そのY方向位置がプレート搬送部110に載置されて移動するプレート10の−Y側(支持パネル101側)の端辺に近い位置に相当するように設定されている。
【0046】
図7(a)は、可動挟持部131と固定挟持部132との間が開いた把持部130の開状態を示しており、図7(b)は、可動挟持部131と固定挟持部132との間が閉じた把持部130の閉状態を示している。図7(a)に示すように、把持部130が開状態のときは、可動挟持部131が左斜め下向きの状態となる。このとき、可動挟持部131は、少なくともレール支持基台133bの底面より−Z方向(下側)に位置しており、その下を通過するプレート10と干渉する位置にある。一方、把持部130が閉状態のときは、図7(b)に示すように、可動挟持部131の側面がレール支持基台133bの底面と略同一水平面上にあり、可動挟持部131はその下を通過するプレート10と干渉しない位置にある。
【0047】
次に、図9〜16を用いて本実施形態のシール剥離装置100の動作を説明する。図9〜16は、シール剥離装置100の動作状態を示す側面図であり、図1のシール剥離装置100を部分的に拡大して示している。まず、シール剥離装置100を動作させる初期段階として、図9では保護シール11が貼付された対象のプレート10をシール剥離装置100に搭載している。シール剥離装置100は、支持台102の右端部にプレート保持台141を備えており、ロボットハンド50でプレート10をプレート保持台141の上に載置する。なお、保護シール11の耳部11aの向きは、剥離補助シール20を用いる本実施形態では特に限定されるものではない。また、プレート保持台141の設置位置は、支持台102の右端部に限定されず、例えば支持台102の左端部に設けるように構成することも可能である。あるいは、プレート保持台141を設けないで、ロボットハンド50でプレート10をプレート搬送部110に直接載置するようにしてもよい。
【0048】
次に、プレート保持台141に載置されたプレート10の下からプレート搬送部110の載置面111を上昇させ、プレート10をプレート保持台141からプレート搬送部110に移動させる(図10)。プレート搬送部110がプレート10を載置するだけの簡単な構造に形成されていることから、プレート10の下からプレート搬送部110を上昇させるだけで、プレート10をプレート保持台141からプレート搬送部110に容易に移動させることができる。載置面111は、そのY方向両端部に設けられた位置決めガイド112の間にプレート10が挟まれるように、プレート保持台141に対して位置決めされている。プレート10が載置面111の所定の位置に載置されると、プレート搬送部110は、プレート10を載置した状態で+X方向(左方向)に移動する。
【0049】
プレート搬送部110は、プレート10を略水平に保持しながらシール貼付部120の直下まで移動される。プレート10の移動途中に把持部130が設けられているが、例えばプレート10がプレート保持台141に載置される当初から可動挟持部131を閉じた状態にしておくことで、プレート搬送部110は載置面111に載置したプレート10を把持部130と干渉させることなくその下を通過させることができる。把持部130は、遅くともプレート10を載置したプレート搬送部110がその直下を通過する前に、閉状態にしておく必要がある。
【0050】
プレート搬送部110は、プレート10をシール貼付部120の直下まで移動させると、+X方向の移動を停止して載置面111を上昇させる。あるいは、+X方向に移動しながら載置面111を上昇させてもよい。これにより、シール貼付部120の先端がプレート10上の保護シール11の所定の位置に接する(図11)。シール貼付部120の先端には剥離紙が剥離された剥離補助シール20がその粘着面を下向きに配置されており、プレート搬送部110の+X方向への移動を再開させることにより、剥離補助シール20が保護シール11の上面に貼付されていく。剥離補助シール20は、必ずしも保護シール11の左端部(先頭側)から貼付される必要はなく、保護シール11に貼付される長さが所定値以上となる位置から貼付を開始すればよい。
【0051】
シール貼付部120の先端をプレート10上の保護シール11に接触させ、プレート搬送部110を再び+X方向に移動させると、剥離補助シール20が保護シール11上に添付される。剥離補助シール20は、シール供給部142から連続して供給されており、プレート搬送部110が+X方向に移動する間、シール貼付部120の先端で保護シール11の上面に順次貼付されていく。
【0052】
シール貼付部120は、剥離補助シール20を保護シール11上のプレート10の右端部の位置まで貼付すると、さらに所定の長さだけプレート10からはみ出させた後に切断する。剥離補助シール20のプレート10の右端部からはみ出した部分が、剥離補助シール20の延長耳部20aとなる。延長耳部20aは、把持部130で把持しやすくするために、通常の保護シール11の耳部11aより長い所定の長さとする。剥離補助シール20の切断は、シール貼付部120に設けられている切断手段を用いて行われる。あるいは、延長耳部20aが所定長さとなるように、剥離補助シール20が予め切断されて剥離紙に貼付されていてもよい。
【0053】
プレート搬送部110は、剥離補助シール20をシール押圧部140で保護シール11に密着させるために、プレート10をさらに+X方向に移動する。剥離補助シール20は、シール押圧部140の先端で押圧されて保護シート11に密着される。剥離補助シール20がシール押圧部140によりプレート10の右端部の位置まで保護シート11に密着されると、プレート搬送部110は、+X方向への移動を停止する(図12)。
【0054】
次に、プレート搬送部110は、−X方向(右側)への移動を開始する。それとほぼ同時に、把持部130の可動挟持部131が左斜め下方の所定の向きまで開いて把持部130が開状態となる。このとき、可動挟持部131の先端は、プレート10の右端部に設けられた延長耳部20aの先端より低い位置となっている。また、可動挟持部131及び固定挟持部132は、磁石等で支持パネル101側に引き寄せられて斜め前方(略XY方向)に向いている。プレート搬送部110が−X方向に移動して延長耳部20aが可動挟持部131の位置に達すると、延長耳部20aの先端が可動挟持部131の内側の面に沿って移動し、延長耳部20aが可動挟持部131と固定挟持部132との間に挿入される。
【0055】
把持部130は−Y方向の支持パネル101側に移動していることから、延長耳部20aはその−Y側端部(支持パネル101に近い側の端部)の近傍が可動挟持部131と固定挟持部132との間に挿入される。延長耳部20aの−Y側端部近傍が所定の長さだけ可動挟持部131と固定挟持部132との間に挿入されると、プレート搬送部110は−X方向への移動を一時停止する(図13)。
【0056】
次に、エアシリンダ部135の作動により可動挟持部131が駆動して固定挟持部132との間が閉じ、把持部130が閉状態となる。これにより、延長耳部20aの−Y側端部近傍が、可動挟持部131と固定挟持部132との間に挟まれて把持部130に把持される(図14)。延長耳部20aは、可動挟持部131と固定挟持部132との間に挟まれて把持されるのに十分な長さを有している。把持部130が閉状態になると、可動挟持部131はプレート10に貼付されている保護シール11より高い位置(+Z側)となることから、延長耳部20aはプレート10の右端部から可動挟持部131の先端まで右斜め上方に引っ張られた状態となる。
【0057】
延長耳部20aが把持部130に把持されると、プレート搬送部110は再び−X方向への移動を開始する。これにより、プレート10の右端部が可動挟持部131の先端に近付く間は、延長耳部20aが徐々に緩んでいくが、プレート10の右端部が可動挟持部131の先端を通過した後は延長耳部20aが徐々に引き延ばされていく。そして、プレート10の右端部と可動挟持部131の先端との間で延長耳部20aが再び引き伸ばされた状態となる。このとき、延長耳部20aはプレート10の右端部から左後方の可動挟持部131の先端まで鋭角に折り曲げられた状態となる。
【0058】
プレート搬送部110が−X方向へさらに移動していくと、プレート10が延長耳部20aを介して把持部130で引っ張られてプレート搬送部110から浮き上がってくるが、この浮き上がりを阻止するために浮上防止部材150が設けられている。プレート10が図6に示したように浮上防止部材150で上方に浮上するのを阻止されながら−X方向に移動する間、剥離補助シール20の粘着により保護シール11がプレート10から引き剥がされていく(図15)。剥離補助シール20及び保護シール11が鋭角に折り曲げられていることから、プレート10を上下に振動させることなくプレート10から保護シール11を容易に剥離することができる。
【0059】
可動挟持部131及び固定挟持部132は、延長耳部20aの−Y側端部(支持パネル101に近い側の端部)近傍をXY方向斜めに把持していることから、プレート搬送部110の−X方向の移動に伴って、保護シール11がプレート10の右側端部の−Y側角部から徐々に+Y側に剥離範囲を拡大させながら引き剥がされていく。可動挟持部131及び固定挟持部132は、前後移動支持部133によりY方向に自在に移動できることから、剥離範囲が+Y側に拡大するのに伴って可動挟持部131及び固定挟持部132も徐々に+Y方向に移動していく。そして、保護シール11の剥離範囲がプレート10の+Y側端辺に達すると、可動挟持部131及び固定挟持部132は、回転部134における回転により、一体にほぼ+X方向に向く。
【0060】
プレート10を載置したプレート搬送部110が−X方向に移動していくのに伴って、剥離補助シール20が把持部130に引っ張られて保護シート11がプレート10から引き剥がされていき、プレート10が所定の位置まで移動すると、すべての保護シート11がプレート10から引き剥がされる(図16)。可動挟持部131及び固定挟持部132は、剥離補助シール20及び保護シート11を剥離した後、磁石で支持パネル101側に引き寄せられるとともに、向きが斜め前方方向となるように回転して元の状態に戻る。把持部130に把持された剥離補助シール20及び保護シール11は、把持部130が開状態になるとともに例えばエアーを吹き付けられることで、可動挟持部131及び固定挟持部132から取り除かれて廃棄される。プレート搬送部110は、保護シート11が剥離されたプレート10をプレート保持台141に載置して処理を終了する。
【0061】
次に、本実施形態のシール剥離装置100により、保護シール11上に剥離補助シール20を貼付する方法を、図17を用いて説明する。図17は、保護シール11上に剥離補助シール20を貼付した状態を示す平面図である。プレート10に貼付された保護シール11は、プレート10からはみ出した耳部11aをいずれかの向きに有しているが、同図ではこれを省略している。本実施形態では、保護シール11の耳部11aの向きに関係なく、剥離補助シール20を保護シール11に貼付することができる。剥離補助シール20は、プレート10の端辺より所定長さの延長耳部20aを−X方向に有している。延長耳部20aの長さは、通常の耳部11aより長くなるように形成される。剥離補助シール20は、保護シール11の全面に貼付される必要はなく、また保護シール11の貼付位置と一致しない位置に貼付することができる。
【0062】
図17(a)では、保護シール11の左側(+X側)の一部だけを残して剥離補助シール20が幅方向(Y方向)全体に貼付されている。また、図17(b)では、剥離補助シール20が保護シール11の右側(−X側)端辺の−Y側角部の近傍に貼付されている。図7(c)でも、剥離補助シール20が保護シール11の右側端辺の−Y側角部の近傍に貼付されているが、図17(b)では剥離補助シール20が保護シール11の−Y方向にはみ出さないように貼付されているのに対し、図17(c)では剥離補助シール20が保護シール11の−Y方向にはみ出して貼付されている。本実施形態のシール剥離装置100では、上記のように、剥離補助シール20を保護シール11に貼付し始める位置を変えたり、Y方向にずらしたり、あるいは斜めにずらして貼付しても、保護シール11を確実に剥離することが可能である。上記いずれの方法でも、剥離補助シール20の右側端辺の−Y側角部の近傍を、XY方向に向いた把持部130が把持して剥離する。
【0063】
上記のように、剥離補助シール20とともに保護シール11を剥離する処理の流れを、図18、19を用いて説明する。図18では、剥離補助シール20の右側(−X側)端辺の−Y側角部(以下では、単に図面右上という)の近傍を、把持部130(可動挟持部131及び固定挟持部132)の先端を図面左下向きにして把持し、把持部130が剥離補助シール20に対し相対的に図面左下に移動しながら剥離補助シール20及び保護シート11を剥離している。
また、図19では、把持部130が適宜回転しながら剥離補助シール20及び保護シート11をほぼ+X方向に剥離している。
【0064】
上記のように、本実施形態のシール剥離装置100では、把持部130で剥離補助シール20を把持する位置及び剥離するときの向きを適宜変えるように制御することができる。シール剥離装置100で保護シール11を剥離するときは、剥離補助シール20を保護シール11から適宜ずらして貼付することができる。
【0065】
本実施形態のシール剥離装置100は、剥離補助シール20を保護シール11に貼付し、これを引き剥がすことで保護シール11を剥離するように構成されていることから、保護シール11の耳部11aの長さや貼付条件によらず保護シール11を確実に剥離することが可能となる。また、保護シール11をプレート10から剥離するときは、剥離補助シール20及び保護シート11を把持部130で鋭角の方向に引っ張って剥離させることから、プレート10に振動等を与えることはなく、収納されたサンプル液等を漏洩させるおそれがない。なお、上記ではマイクロプレート10を対象に本実施形態のシール剥離装置100の動作を説明したが、ディープウェルプレート15あるいはチューブプレート17を対象とするときも、同様にして保護シール11を貼付したり剥離したりすることができる。
【0066】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るシール剥離装置を、図20を用いて以下に説明する。図20は、本実施形態に係るシール剥離装置200の構成を示す側面図である。本実施形態に係るシール剥離装置200は、把持部130を垂直方向(Z方向)に移動させるための垂直駆動部201を有している。
【0067】
保護シール11に剥離補助シール20が貼付された後、剥離補助シール20の延長耳部20aが可動挟持部131及び固定挟持部132で把持される(図14)が、本実施形態ではその後垂直駆動部201を駆動させて把持部130を垂直上方に移動させる。一方、保護シール11及び剥離補助シール20が貼付されたプレート10は、少なくともシール貼付部120で垂直上方への移動が阻止されるように構成されている。または、プレート10が垂直上方に移動するのを阻止するために、さらに浮上防止部材150を用いるようにしてもよい。すなわち、把持部130を垂直上方に移動させるときには、プレート10の先端の少なくとも一部が浮上防止部材150の直下に来るようにする。この状態で把持部130を垂直上方に移動させると、プレート10はシール貼付部120と浮上防止部材150で上方に移動するのを阻止される。このように、プレート10が上方に移動するのを阻止するようにすることにより、把持部130が上方に移動したとき、剥離補助シール20が上方に引っ張られて保護シール11の一部をプレート10から剥離する。
【0068】
把持部130を垂直上方に移動させて保護シール11の一部をプレート10から剥離した後、垂直駆動部201により把持部130を垂直下方に移動させて元の位置に戻す。これにより、保護シール11は再びプレート10上に接着するが、一度剥がされたことでその接着力は大幅に低下している。以下は、第1実施形態と同様に、プレート搬送部110を再び−X方向に移動させる。把持部130の垂直移動により一度剥離された保護シール11の上記一部は、プレート搬送部110の移動によって再び容易に剥離される。また、一部が剥離された保護シール11は、それに続く接着部の剥離も容易に行えることから、プレート搬送部110の移動とともに保護シール11が順次剥離されていく。
【0069】
なお、ディープウェルプレート15あるいはチューブプレート17に貼付された保護シール11を剥離するときは、それぞれのプレートの構造によって、把持部130を上方に移動させる垂直距離を調整する必要がある。すなわち、ディープウェル15aを一体に形成しているディープウェルプレート15や、チューブ17aをロックできる構造のチューブプレート17では、上記のマイクロプレート10と同様に剥離することができる。これに対し、ディープチューブ15bをチューブ収納部15cに挿入する構造のディープウェルプレート15や、チューブ17aをロックする構造を有さないチューブプレート17では、チューブが収納部から引き抜かれることのないように、例えばプレート(チューブラック)の端辺からチューブまでのプレート周縁部だけ保護シール11を剥がすように把持部130を垂直上方に移動させるのがよい。
【0070】
上記説明のように、剥離補助シール20の延長耳部2aを可動挟持部131及び固定挟持部132で把持したのち、把持部130を上方に移動させて保護シール11の一部を剥離することで、保護シール11のプレート10からの剥離がさらに容易となる。
【0071】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係るシール剥離装置を、図21を用いて以下に説明する。図21は、本実施形態に係るシール剥離装置300の構成を示す側面図である。本実施形態のシール剥離装置300は、把持部330の配置が第1実施形態及び第2実施形態と異なっている。第1実施形態及び第2実施形態のシール剥離装置100及び200では、+X方向に順次把持部130、シール貼付部120、及びシール押圧部140が配置されているのに対し、本実施形態では把持部330がシール押圧部140のさらに左側(+X方向)に配置されている。
【0072】
把持部330をシール押圧部140のさらに左側に配置した本実施形態のシール剥離装置300では、プレート搬送部110を+X方向の一方向に移動するだけで保護シール11の剥離処理を完了させることができる。すなわち、プレート搬送部110を支持台102の右端(プレート保持台141)から+X方向に移動させる間に、シール貼付部120で剥離補助シール20を保護シール11上に貼付し、シール押圧部140で剥離補助シール20を保護シール11に密着させた後、把持部330で剥離補助シール20とともに保護シール11を剥離することができる。保護シール11が剥離されたプレート10は、プレート搬送部110で支持台102の左端部まで移動され、ここで剥離処理が終了する。
【0073】
上記のように、本実施形態のシール剥離装置300によれば、プレート搬送部110を一方向に移動させるだけで保護シール11を剥離することができ、プレート搬送部110を往復移動させる第1実施形態及び第2実施形態より制御を簡略化して処理を高速化することができる。また、プレート10が把持部330に達するまで可動挟持部131を開状態にしておくことができ、可動挟持部131の動作を簡略化することができる。
【0074】
本実施形態のシール剥離装置300では、剥離補助シール20(貼付装置として用いるときは保護シール11)を所定の長さで切断するための切断手段350を、シール貼付部120に隣接する位置に設けている。切断手段350の構成を図22に示す。切断手段350は、剥離補助シール20を切断するためのカッター351と、剥離補助シール20の横方向(Y方向)にカッター351を移動させるためのカッター移動手段352と、カッター移動手段352を移動方向に案内するためのカッター移動レール353と、カッター351との間で剥離補助シール20を挟むカッター受け部354とを有している。
【0075】
カッター351は円盤形状を有しており、剥離補助シール20を挟んで樹脂またはゴム材で形成されたカッター受け部354にカッター351を押し当てる。この状態で、カッター移動手段352によりカッター351をカッター移動レール353に沿ってY方向に移動させることで、カッター351が回転して剥離補助シール20を切断する。カッター351をY方向に移動させるカッター移動手段352は、マグネット型ロッドレスシリンダの構造を有している。すなわち、カッター移動レール353内に内蔵されたマグネット(図示せず)0をエアーで左右移動させることで、これに連動してカッター351を固定している可動ブロック352aを左右移動させる。
【0076】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係るシール剥離装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態におけるシール剥離装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0077】
10 マイクロプレート
11 保護シール
11a 耳部
15 ディープウェルプレート
15a ディープウェル
15b ディープチューブ
15c チューブ収納部
17 チューブプレート
17a チューブ
17b 蓋
18 チューブラック
18a チューブ収納部
20 剥離補助シール
20a 延長耳部
50 ロボットハンド
100、200、300 シール剥離装置
101 支持パネル
102 支持台
141 プレート保持台
142 シール供給部
143 回収部
110 プレート搬送部
111 載置面
112 位置決めガイド
120 シール貼付部
130、330 把持部
131 可動挟持部
132 固定挟持部
133 前後移動支持部
133a レール部
133b レール支持基台
134 回転部
135 エアシリンダ部
140 シール押圧部
150 浮上防止部材
151〜154 プレート支持部
155〜157 シャフト
201 垂直駆動部
350 切断手段
351 カッター
352 カッター移動手段
353 カッター移動レール
354 カッター受け部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウェルが配列されたマルチウェルプレートの上面に貼付された保護シールを剥離するためのシール剥離装置であって、
前記保護シールが貼付された前記マルチウェルプレートを載置して第1の方向に移動するプレート搬送部と、
前記保護シールの剥離用に前記マルチウェルプレートの一端からはみ出させたはみ出し部を把持する把持部と、
前記マルチウェルプレートが前記プレート搬送部から浮上するのを防止するための浮上防止部材と、を備え、
前記把持部で前記はみ出し部を把持した状態で前記プレート搬送部を移動させ、前記マルチウェルプレートが前記プレート搬送部から浮上する前に前記マルチウェルプレートの上面を前記浮上防止部材で支持することで、前記保護シールを前記マルチウェルプレートから剥離する
ことを特徴とするシール剥離装置。
【請求項2】
前記浮上防止部材は、前記マルチウェルプレート上面の移動方向に平行な両端辺を支持するプレート支持部を2以上備える
ことを特徴とする請求項1に記載のシール剥離装置。
【請求項3】
前記浮上防止部材は、前記両端辺の対向する位置に配置された2つの前記プレート支持部を1組として前記移動方向の異なる位置に2組以上備え、
少なくとも1組の前記2つのプレート支持部は、前記両端辺から離れる方向に移動可能に構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のシール剥離装置。
【請求項4】
前記プレート搬送部は、前記マルチウェルプレートを載置する載置面と、前記載置面に平行な方向に前記マルチウェルプレートを位置決めする位置決めガイドとを備える
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシール剥離装置。
【請求項5】
前記把持部は、可動挟持部及び固定挟持部を有し、
前記可動挟持部と前記固定挟持部との間が開いた前記把持部の開状態のときは、前記プレート搬送部が前記はみ出し部が形成されている向きに移動することにより前記はみ出し部が前記可動挟持部と前記固定挟持部との間に挿入され、前記可動挟持部を駆動させて前記固定挟持部との間が閉じた前記把持部の閉状態にすることで前記はみ出し部を把持する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシール剥離装置。
【請求項6】
前記把持部は、前記マルチウェルプレート上面に平行でかつ前記第1の方向に直交する第2の方向に前記可動挟持部及び前記固定挟持部を移動可能にする前後移動支持部を有している
ことを特徴とする請求項5に記載のシール剥離装置。
【請求項7】
前記可動挟持部及び前記固定挟持部は、前記はみ出し部を把持していないときは前記第2の方向の前記マルチウェルプレートの略端部に相当する位置に配置されるように前記前後移動支持部を移動している
ことを特徴とする請求項6に記載のシール剥離装置。
【請求項8】
前記把持部は、前記保護シールの面に垂直な方向を回転軸として前記可動挟持部及び前記固定挟持部を回転可能にする回転部を有している
ことを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載のシール剥離装置。
【請求項9】
前記把持部は、前記はみ出し部の端部を前記マルチウェルプレートの略中心方向に向けて把持する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のシール剥離装置。
【請求項10】
前記把持部を前記保護シールの面に垂直な方向に移動させる垂直駆動部をさらに備え、
前記垂直駆動部は、前記把持部が前記はみ出し部を把持した直後に前記把持部を上方に持ち上げて前記保護シールの一部を前記マルチウェルプレートから剥離した後に前記把持部を再び元の位置に戻す
ことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のシール剥離装置。
【請求項11】
前記はみ出し部を形成して前記マルチウェルプレートの上面全体に前記保護シールを貼付する、または前記はみ出し部を形成して前記保護シール上面の少なくとも一部に剥離補助シールを貼付するシール貼付部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のシール剥離装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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