説明

シール性二軸延伸ポリエステルフィルム

本発明は、ベース層B、シール性最外層(A)及び非シール性最外層(C)から成るシール性二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。本発明は、更に、上記フィルムの製造方法および使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース層B、シール性最外層(A)及び非シール性最外層(C)から成るシール性二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。本発明は、更に、上記フィルムの製造方法および使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
シール性二軸延伸ポリエステルフィルムは公知である。
【0003】
特許文献1には共押出し2層ポリエステルフィルムが記載されており、1層はイソフタル酸とテレフタル酸とから成る共重合ポリエステルであり、もう1層はポリエチレンテレフタレートから成る。この文献には、このフィルムのシール性に関しての有益な記述は無い。添加粒子を配合していないために、このフィルムの巻取りや更なる加工は困難である。
【0004】
特許文献2は共押出し2層ポリエステルを記載しており、シール性層の厚さよりも大きな平均粒子径を有する粒子を添加して、シール性層における巻取り特性や加工特性を改良している。添加粒子は表面に突起を形成し、望ましくないフィルムのロールやガイドへのブロッキングや粘着を防ぐ。しかしながら、フィルムの他の非シール性層がアンチブロッキング剤を有しているかどうかわからない。140℃で測定したシールシーム強度は、63〜120Nm(0.97〜1.8N/15mm(フィルム幅)に相当)。
【0005】
特許文献3は共押出し多層シール性ポリエステルフィルムを記載しており、シール性層には更なる添加剤が添加されている。添加剤は、例えば無機粒子であり、好ましくはフィルム製造工程において、フィルムに水性層が被覆される。これは良好なシール性を保持し、フィルムの加工特性を良好とする意図で添加される。フィルムの反対面はほとんど粒子を添加せず、基本的にこの層は再生原料を使用している。このフィルムのシール温度範囲について何ら記載が無い。140℃で測定したシールシーム強度は、200Nm(4.125N/15mm(フィルム幅)に相当)であると記載されている。
【0006】
特許文献4は、二軸延伸シール性ポリエステルフィルムを記載しており、ベース層B、シール性最外層A及び非シール性最外層Cから成る。シール性最外層Aは110℃以下の最低シール温度および1.3N/15mm以上のシールシーム強度を有する。最外層A及びCの表面形状は粒子の特徴によって特徴付けられる。このフィルムは可撓性包装材に特に好適に使用され、特に高速包装機器で使用される。このフィルムはPVCに対しての接着性が非常に小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】英国特許公開公報第1465973号明細書
【特許文献2】欧州特許公開公報第0035835号明細書
【特許文献3】欧州特許公開公報第0515096号明細書
【特許文献4】欧州特許公開公報第1138480号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、以下の特性を有するシール性二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することである。
【0009】
・低い最低シール温度、好ましくは105℃以下を有する。
・それ自身のシール性が高く、更にPVCや金属などの基材に対するシール性も高く、好ましくは2.0N/15mmを超える(それ自身においてはFIN、140℃、4bar、0.5秒で測定、PVCや金属に対しては180℃、4bar、0.5秒で測定)。
【0010】
特に、本発明において、105℃以下の低い最低シール温度と、PVCや金属基材に対して良好なシール性(シールシーム強度が2.0N/15mmを超える)を目的とする。フィルムの製造工程において、フィルムの物性や光学的性質に悪影響を及ぼさないで、発生するオフカット材料を再生品として、フィルムの重量を基準として60重量%までフィルム製造工程にリサイクル出来ることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の本発明の目的は、少なくとも3層から成る共押出二軸延伸ポリエステルフィルムであって、当該ポリエステルフィルムは、ベース層Bと、ベース層Bに対しそれぞれ反対側に配置される最外層A及びCとから成り、(a)最外層Aの最低シール温度(FIN:最外層A対最外層A)が105℃以下であり、(b)140℃、4bar、0.5秒の条件での最外層Aのシールシーム強度(FIN)が2.0N/15mmよりも大きく、(c)最外層Aを構成する主たるポリマー成分のガラス転移温度が70℃未満であり、(d)最外層Aを構成する主たるポリマー成分の融点が220℃未満であり、(e)最外層Aの厚さが0.5〜10.0μmであり、(f)最外層Aは最外層Aの重量を基準として0〜0.5重量%の含有量で粒子を含有し、(g)最外層Cは最外層Cの重量を基準として0.05重量%を超える含有量で粒子を含有することを特徴とする共押出二軸延伸ポリエステルフィルムによって達成できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、低い最低シール温度、好ましくは105℃以下を有し、それ自身のシール性が高く、更にPVCや金属などの基材に対するシール性も高く、好ましくは2.0N/15mmを超えるシール性二軸延伸ポリエステルフィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、シール性最外層Aの主成分のガラス転移温度は、70℃未満、好ましくは60℃未満、更に好ましくは50℃未満である。最外層のこの主成分ポリマーの占める割合は70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。シール性最外層Aの主成分のガラス転移温度が70℃を超えると、所望の最低シール温度が達成できない。
【0014】
シール性最外層Aの主成分の融点は220℃未満、好ましくは200℃未満、更に好ましくは180℃未満である。シール性最外層Aの主成分の融点が220以上の場合、シールシーム強度が不十分である。
【0015】
シール性最外層Aの厚さは0.5〜10.0μm、好ましくは0.7〜7.0μm、更に好ましくは1.0〜5.0μmである。シール性最外層Aの厚さが0.5μm未満の場合、シールシーム強度が不十分となる。シール性最外層Aの厚さが10μmを超える場合、フィルムの巻取特性が悪化する。
【0016】
シール性最外層Aは、シール性最外層Aの重量を基準として、0〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.4重量%、更に好ましくは0.02〜0.3重量%の粒子を含有する。シール性最外層Aが0.5重量%を超えて粒子を含有する場合、フィルムのシールシーム強度があまりにも低くなる。
【0017】
非シール性最外層Cは、0.05重量%を超えた、好ましくは0.10重量%を超えた、更に好ましくは0.15重量%を超えた粒子を含有する。非シール性最外層Cの粒子含有量が0.05重量%未満の場合、フィルムの巻取特性が悪化する。ここで、「非シール性」とは、最外層Cが少なくとも1つのシール特性についてシール性最外層Aよりも劣る特性を有すること、特に最低シール温度(FIN)が200℃を超えるような場合を意味する。
【0018】
フィルムは、ベース層B、シール性最外層A及び非シール性最外層Cの3層から成る。
【0019】
ベース層Bに使用するポリマー:
フィルムのベース層Bは、90重量%以上の熱可塑性ポリエステルから成ることが好ましい。好ましい熱可塑性ポリエステルとしては、エチレングリコールとテレフタル酸から製造されるポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレングリコールとナフタレン−2,6−ジカルボン酸から製造されるポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンとテレフタル酸から製造されるポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCDT)、エチレングリコールとナフタレン−2,6−ジカルボン酸とビフェニル−4,4’−ジカルボン酸から製造されるポリ(エチレン2,6−ナフタレートビベンゾエート)(PENBB)が例示される。中でも、エチレングリコールとテレフタル酸単位またはエチレングリコールとナフタレン−2,6−ジカルボン酸単位を90モル%以上、好ましくは95モル%以上含有するポリエステルが好ましい。他のモノマー単位としては脂肪族、脂環式または芳香族ジオール及び/又はジカルボン酸を使用することが出来る。
【0020】
他の脂肪族ジオールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、HO−(CH−OHの式で示される脂肪族グリコール(nは3〜6の整数を表す、具体的には、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる)、炭素数6までの分岐型脂肪族グリコール(特にネオペンチルグリコール)が挙げられる。他の脂環式ジオールとしては、シクロヘキサンジオール(特に1,4−シクロヘキサンジオール)が挙げられる。他の芳香族ジオールとしては、HO−C−X−C−OHで示される芳香族ジオール(式中Xは−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−O−、−S−、−SO−を表す)が挙げられ、式:HO−C−C−OHで表されるビスフェノールも好ましい。
【0021】
他の芳香族ジカルボン酸としては、ベンゼンジカルボン酸、ナフタレン−1,4−又は−1,6−ジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸などのビフェニル−x,x’−ジカルボン酸、ジフェニルアセチレン−4,4’−ジカルボン酸などのジフェニルアセチレン−x,x−ジカルボン酸、スチルベン−x,x−ジカルボン酸などが挙げられる。他の脂環式ジカルボン酸としては、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などのシクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。他の脂肪族ジカルボン酸としては、C−C19のアルカンジカルボン酸が挙げられ、当該アルカンは直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0022】
上記のポリエステルは、例えばエステル交換反応により製造される。エステル交換反応では、ジカルボン酸エステルとジオールを出発原料とし、エステル交換反応触媒としては、亜鉛塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩などの公知のエステル交換反応用触媒が使用できる。更に、三酸化アンチモン、チタン塩、ゲルマニウム塩、アルミニウム塩などの公知の重縮合触媒の存在下で中間生成物の重縮合を行う。ポリエステルは。重縮合触媒の存在下で直接エステル化法によっても製造できる。直接エステル化法の出発原料はジカルボン酸とジオールである。
【0023】
シール性最外層Aに使用するポリマー:
ベース層Bに共押出により積層するシール性最外層Aは、70重量%以上、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上の共重合ポリエステルから成る。共重合ポリエステルとしては、テレフタル酸単位を主成分として、1,4−ブタンジオール及びネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−ジヒドロキシプロパン)単位から成る。残余のモノマー単位としては、ベース層Bで述べた脂肪族、脂環式または芳香族ジオール及び/又はジカルボン酸を使用することが出来る。好ましい共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート及びネオペンチルテレフタレートから形成されるもので、その比率はブチレンテレフタレート40〜90モル%及びネオペンチルテレフタレート10〜60モル%であり、ブチレンテレフタレート単位50〜85モル%、ネオペンチルテレフタレート単位10〜35モル%及びエチレングリコール単位0〜15モル%の共重合ポリエスエステルが好ましく、更に、ブチレンテレフタレート単位60〜80モル%、ネオペンチルテレフタレート単位15〜30モル%及びエチレングリコール単位5〜10モル%の共重合ポリエスエステルが好ましい。
【0024】
シール性最外層Aのシール特性:
シール性最外層Aの所望のシール特性は、使用する共重合ポリエステルの特性、最外層の厚さおよび粒子含有量の組合せにより達成される。
【0025】
シール性最外層Aにおいて、それ自身の最低シール温度は105℃未満、好ましくは100℃未満、更に好ましくは96℃未満である。140℃、4bаr、0.5秒におけるシールシーム強度は、2.0N/15mm以上、好ましくは2.5N/15mm以上、更に好ましくは3.0N/15mm以上である。
【0026】
本発明のシール性最外層Aは粒子を含有する。最外層Aに使用する粒子は、代表的には無機および/または有機粒子であり、例えば、炭酸カルシウム、非晶シリカ、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、フッ化リチウム、ジカルボン酸のカルシウム、バリウム、亜鉛またはマンガン塩、カーボンブラック、二酸化チタン、カオリン、架橋ポリスチレン粒子や架橋メチルメタクリレート粒子などの架橋ポリマー粒子などが例示される。シール性最外層Aの重量を基準としたこれらの粒子の配合量は、0〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.4重量%、更に好ましくは0.02〜0.3重量%である。粒子のd50は、好ましくは1〜10μmである。
【0027】
非シール性最外層Cに使用するポリマー:
非シール性最外層Cに使用するポリマーとしては、基本的にベース層Bの説明で例示したポリマーと同様のものを使用できる。非シール性最外層Cの最低シール温度は200℃を超えることが好ましい。
【0028】
巻取特性および加工特性を改良するため、最外層Cは不活性粒子を有する。最外層C中の不活性粒子の濃度は、0.05重量%を超え、好ましくは0.10重量%を超え、更に好ましくは0.15重量%を超え、基本的にはフィルムの達成すべき光学特性によって決定される。
【0029】
ポリエステルフィルムは、透明、白色、不透明、光沢または艶消しの性質を有していてもよい。これらの異なる光学特性は、例えば、異なる平均粒子径(d50)を有する硫酸バリウム、炭酸カルシウム、非晶シリカ、二酸化チタン等の添加粒子を異なる添加量で配合することによって達成される。これらの添加剤は、ベース層と最外層A及びCとの両方に存在させてもよい。
【0030】
全ての層に、通常使用される添加剤を更に加えてもよく、添加剤としては、UV安定剤、難燃剤、耐加水分解剤などが挙げられる。これらの添加剤はポリマー又はポリマー混合物に溶融前に適当に添加される。
【0031】
フィルム中のシール性最外層Aの厚さは、0.5〜10.0μm、好ましくは0.7〜7.0μm、更に好ましくは1.0〜5.0μmである。
【0032】
ポリエステルフィルムの総厚みは、幅広い範囲を取ることが出来、特に限定されるものではないが、好ましくは10〜125μm、更に好ましくは12〜100μmである。ベース層Bの総厚みに対する割合は30〜90%が好ましい。
【0033】
ポリエステルフィルムの製造方法については、例えば、「Handbook of Thermoplastic Polyesters」、S.Fakirov校訂、Wiley−VCH出版、2002年、「Polyesters, Films Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」、John Wiley & Sons出版、1988年などに記載されている。フィルムを製造するための好ましい押出し工程は、スロットダイを介して溶融ポリマー(必要であれば添加剤と)を押出し、引取ロール上で冷却して実質的に非晶前駆体フィルムを製造する。得られたフィルムを再加熱して、少なくとも1方向に延伸(配向)する。延伸は、機械方向(長手方向)または横方向にしてもよいが、好ましくは、長手方向および横方向、横方向および長手方向、あるいは、長手方向および横方向の延伸後に再度長手方向および/または横方向の延伸を行う。延伸工程でのフィルム温度は、使用するポリエステルのガラス転移温度(Tg)の通常10〜60℃高い温度であり、長手方向の延伸比は、通常2.0〜6.0、好ましくは3.0〜4.5であり、横方向の延伸比は、通常2.0〜5.0であり、好ましくは3.0〜4.5であり、2回目の長手方向および横方向の延伸比は1.1〜5.0である。長手方向の延伸を横方向の延伸と同時に行う方法(同時延伸)や他の連続延伸法も採用できる。引続き、熱固定を、180〜260℃、好ましくは220〜250℃で行う。引続き、フィルムを冷却し、巻取る。
【0034】
必要に応じて、フィルムに対して、横方向の延伸前に、メイヤーロッド法やリバースグラヴュアロールコーティング法などの公知の方法のインラインコーティングにより塗布を行ってもよい。塗布は、フィルムの非シール性層側に行うことが出来、例えば印刷インクのための接着促進層を塗布できる。
【0035】
本発明のフィルムは、顕著なシールシーム強度および最低シール温度を有する。シール性最外層Aは、それ自身、PET、PVC又は金属(例えば、アルミニウム、ECCSスチール等)に対してシールすることが出来る。
【0036】
フィルムの製造工程において、フィルムの重量の60重量%までのフィルム端材(再生原料)を押出工程に再供給しても、フィルムの物性に悪影響を及ぼさない。
【0037】
本発明のフィルムの重要な特性を一目でわかりやすいように再度以下の表1に纏めて示す。
【0038】
【表1】

【実施例】
【0039】
本発明の実施例において使用した原料、フィルム、試験法を以下に示す。
【0040】
(1)シールシーム強度(DIN 55529)
フィルムそれ自身のシールシーム強度の測定は、2つの15mm幅の本発明のフィルム片のシール層の上部同士を重ね、140℃で4barの圧力で0.5秒間圧着した(圧着装置:Brugger NDS、片方にシール用加熱顎を有する)。シールシーム強度(最大強度)は、剥離角度90°である(90°剥離法)。
【0041】
フィルムのPVCに対するシールシーム強度の測定は、15mm幅のフィルム片の非晶面を同等の大きさのPVC片に重ね、上記の方法において温度を180℃として圧着した。基材フィルムの固さから、シールシーム強度(最大強度)は180°で測定した。
【0042】
(2)最低シール温度の測定:
上記のシールシーム強度の測定で使用したBrugger HSG/ETシール装置を使用して、ヒートシールサンプル(シールシーム:15mm×100mm)を作成した。シールシーム強度は種々の温度で測定した。最低シールシーム温度は、1.0N/15mm以上のシールシーム強度を達成できる温度とした。
【0043】
(3)ガラス転移温度および融点:
最外層Aを構成するポリマーのガラス転移温度および融点は、DSC装置(Perkin−Elmer Pyris 1)を使用して決定した(DIN53765)。サンプルは、20K/分の昇温速度で300℃まで加熱し、この温度で10分間保つ。その後、サンプルを出来る限り急速に(500K/分)20℃まで冷却する。再現性を良好にするために、第2の加熱による結果を測定値とした。
【0044】
(4)ヘーズ:
ヘーズはASTM D 1003−52に従って求めた。
【0045】
(5)SV(標準粘度):
標準粘度(DCA)はDIN53726に従い、ジクロル酢酸中25℃で標準値からの差を測定した。ポリエチレンテレフタレートの固有粘度(IV)は、標準粘度と以下の式を使用して算出した。
【0046】
IV=[η]=6.907×10−4SV(DCA)+0.063096[dl/g]
【0047】
以下に本発明を実施例を用いて説明する。
【0048】
実施例1:
フィルムの作成に使用した出発原料は以下の通りである。
【0049】
最外層(A):
70モル%のブチレンテレフタレート単位と、25モル%のネオペンチルテレフタレート単位と、5モル%のエチレンテレフタレート単位とから成り、SVが950、ガラス転移温度が43℃である共重合ポリエステル100重量%。
【0050】
ベース層(B):
SVが800であるポリエチレンテレフタレート100重量%。
【0051】
最外層(C):
SVが800であるポリエチレンテレフタレート80重量と、ポリエチレンテレフタレート(SV=800)99重量%及びSylobloc 44H(Grace社製の合成SiO、d50:2.5μm)1重量%から成るマスターバッチ20重量%とから成る。
【0052】
それぞれ1つの層に対して1つの押出機で上記の原料を溶融し、3層スロットダイを介して冷却引取ロール上に押出した。得られた非晶前駆体フルムを最初に長手方向に延伸し、次いで横方向に延伸し、熱固定を行った後に巻取った(最終的なフィルムの厚さは12μmで、それぞれの外層の厚さは1μmであった。個々の工程における条件を以下に示す。
【0053】
長手方向延伸温度:80〜120℃、長手方向延伸比:4.0。
横方向延伸温度:80〜135℃、横方向延伸比:4.2。
熱固定:235℃、2秒。
【0054】
得られたフィルムの特性について表2に示す。
【0055】
実施例2:
実施例1において、フィルムの厚さを20μm、シール性最外層(A)の厚さを2.0μmとした以外は、実施例1と同様の構成および製造条件でフィルムを製造した。シール特性は改良され、特に、シールシーム強度が顕著に大きくなった。
【0056】
実施例3:
実施例1において、シール性最外層(A)を以下のように変更した以外は、実施例1と同様の構成および製造条件でフィルムを製造した。
【0057】
シール性最外層(A):
70モル%のブチレンテレフタレート単位と、25モル%のネオペンチルテレフタレート単位と、5モル%のエチレンテレフタレート単位とから成り、SVが950である共重合ポリエステル95重量%と、82モル%のエチレンテレフタレート単位および18モル%のエチレンイソフタレート単位から成り、SVが850である共重合ポリエステル95重量%及びSylysia 430Fuji社製(日本)の合成SiO、d50:3.4μm)5重量%から成るマスターバッチ5重量%とから成る。
【0058】
このフィルムは巻取り特性が改良された。
【0059】
比較例1:
実施例1において、シール性最外層(A)を以下のように変更(欧州特許第0035835明細書の実施例1と同じ)し、フィルムの厚さを15μm、シール性最外層(A)の厚さを2.25μmとした以外は、実施例1と同様の構成および製造条件でフィルムを製造した。
【0060】
シール性最外層(A):
82モル%のエチレンテレフタレート単位および18モル%のエチレンイソフタレート単位から成り、SVが850である共重合ポリエステル95重量%と、70モル%のブチレンテレフタレート単位と、25モル%のネオペンチルテレフタレート単位と、82モル%のエチレンテレフタレート単位および18モル%のエチレンイソフタレート単位から成り、SVが850である共重合ポリエステル95重量%及びSylysia 430Fuji社製(日本)の合成SiO、d50:3.4μm)5重量%から成るマスターバッチ5重量%とから成る。
【0061】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層から成る共押出二軸延伸ポリエステルフィルムであって、当該ポリエステルフィルムは、ベース層Bと、ベース層Bに対しそれぞれ反対側に配置される最外層A及びCとから成り、(a)最外層Aの最低シール温度(FIN:最外層A対最外層A)が105℃以下であり、(b)140℃、4bar、0.5秒の条件での最外層Aのシールシーム強度(FIN)が2.0N/15mmよりも大きく、(c)最外層Aを構成する主たるポリマー成分のガラス転移温度が70℃未満であり、(d)最外層Aを構成する主たるポリマー成分の融点が220℃未満であり、(e)最外層Aの厚さが0.5〜10.0μmであり、(f)最外層Aは最外層Aの重量を基準として0〜0.5重量%の含有量で粒子を含有し、(g)最外層Cは最外層Cの重量を基準として0.05重量%を超える含有量で粒子を含有することを特徴とする共押出二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項2】
最外層Aを構成する主たるポリマー成分のガラス転移温度が60℃未満、好ましくは50℃未満である請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
最外層A中の最外層Aを構成する主たるポリマーの含有量が、最外層A中の重量を基準として70重量%以上、好ましくは80重要%以上、更に好ましくは90重量%以上である請求項1又は2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
最外層Aを構成する主たるポリマー成分の融点が200℃未満、好ましくは180℃未満である請求項1〜3の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
最外層Aの厚さが0.7〜7.0μm、好ましくは1.0〜5.0μmである請求項1〜4の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項6】
シール性最外層Aの粒子の含有量が、最外層Aの重量を基準として0.01〜0.4重量%、好ましくは0.02〜0.3重量%である請求項1〜5の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】
シール性最外層Cの粒子の含有量が、最外層Cの重量を基準として0.10重量%を超え、好ましくは0.15重量%を超える請求項1〜6の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項8】
ベース層Bと、ベース層Bに対しそれぞれ反対側に配置される最外層A及びCの3層から成る請求項1〜7の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項9】
最外層Aが、70重量%以上、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上の共重合ポリエステルから成り、当該共重合ポリエステルの主たる構成成分がテレフタル酸単位およびブタン−1,4−ジオール及びネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−ジヒドロキシプロパン)単位である請求項1〜8の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項10】
共重合ポリエステル中の1,4−ブチレンテレフタレート単位の比率が40〜90モル%、ネオペンチレンテレフタレート単位の比率が10〜40モル%である請求項9に記載のポリエステルフィルム。
【請求項11】
共重合ポリエステル中の1,4−ブチレンテレフタレート単位の比率が50〜85モル%、好ましくは60〜80モル%、ネオペンチレンテレフタレート単位の比率が10〜35モル%、好ましくは15〜30モル%、エチレンテレフタレート単位の比率が0〜15モル%、好ましくは5〜10モル%である請求項9又は10に記載のポリエステルフィルム。
【請求項12】
最外層A同士の最低シール温度(FINシール)が100℃未満、好ましくは95℃未満である請求項1〜11の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項13】
140℃、4bar、0.5秒の条件での最外層A同士のシールシーム強度(FIN)が2.5N/15mm以上、好ましくは3.0/15mm(フィルム幅)以上である請求項1〜12の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項14】
請求項1に記載のフィルムの製造方法であって、当該製造方法は、A層、B層、C層の個々に対応する溶融材料をフラットダイを介して共押出してフィルムを製造する工程と、得られたフィルムを1つ以上のロールを使用して引き出して固化させる工程と、固化したフィルムを二軸延伸する工程と、二軸延伸したフィルムを熱固定して巻取る工程とから成り、最外層Aの主成分ポリマーのガラス転移温度が70℃未満であり、最外層Aの主成分ポリマーの融点が220℃未満であり、最外層Aの厚さが0.5〜10μmであり、最外層Aは最外層Aの重量を基準として0〜0.5重量%の含有量で粒子を含有し、最外層Cは最外層Cの重量を基準として0.05重量%を超える含有量で粒子を含有することを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載のポリエステルフィルムの包装フィルム、積層フィルム、好ましくはPVCフィルム及び金属基材へのシールとしての使用。

【公表番号】特表2012−501886(P2012−501886A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526396(P2011−526396)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006385
【国際公開番号】WO2010/028774
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(596099734)ミツビシ ポリエステル フィルム ジーエムビーエイチ (29)
【Fターム(参考)】