説明

シール材の塗布方法及び塗布装置

【課題】シール材の糸引きの発生を防止する。
【解決手段】シールガン本体9のノズル10からシール材23を吐出させ、ノズル10をワークに対して相対移動させることでシール材23をワークに塗布する。シールガン本体9のノズル10がシール材23の塗布終了地点P1に達した段階でシール材23の吐出を停止し、その状態でノズル10をシール材塗布ラインLに沿って移動させてシール材23のノズル先端からの垂れ下がり23bを切断した後、上記ノズル10をシール材塗布ラインLから離反させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ワークの接合部にシール材を塗布する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のワイパ装置には、樹脂製のカバー本体にアルミニウム合金製のヒートシンクをインサート成形したモータカバーを使用している。このモータカバーでは、熱収縮の異なるカバー本体とヒートシンクの接合部に隙間が生じ易いため、ヒートシンクの周縁に沿ってシール材を塗布して雨水の侵入を防止している。
【0003】
シール材の塗布には、例えば、特許文献1に示すようなシールガンを使用する。このシールガンは、ガン本体内のシール材供給通路に開閉弁を設けてシール材の吐出を制御している。また、ノズルの上流端に逆止弁を設けて、開閉弁を閉じた際にシール材がノズルから滴下するのを防止している。
【特許文献1】実開平6−3476号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シール材は粘度が高いため、シール材の塗布終了時にシール材の吐出を停止しても、シール材がノズルの先端から垂れ下がった状態になる。この状態でシールガンをワークから離反させると、シール材の垂れ下がりが切れてワーク上のシール材塗布ライン以外の場所に落下し、シール材の糸引きがワーク表面に生じ、製品の外観を損ねてしまう。
【0005】
本発明の目的は、シール材の糸引きの発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシール材の塗布方法は、シールガンのノズルからシール材を吐出させ、ノズルをワークに対して相対移動させることでシール材を塗布するシール材の塗布方法であって、上記ノズルがシール材の塗布終了地点に達した段階で上記ノズルの相対移動とシール材の吐出を停止するステップと、上記ノズルをシール材塗布ラインに沿って移動させて上記シール材の垂れ下がりを切断するステップと、上記ノズルをシール材塗布ラインから離反させるステップとからなることを特徴とする。
【0007】
本発明のシール材の塗布方法は、上記シール材の垂れ下がりを切断する際のノズルの移動速度を、上記シール材を塗布する際の移動速度よりも大きくすることを特徴とする。
【0008】
本発明のシール材の塗布装置は、シールガンのノズルからシール材を吐出させ、ノズルをワークに対して相対移動させることでシール材を塗布するシール材の塗布装置であって、上記ノズルをワークに対して相対移動させる移動手段と、該移動手段と上記シールガンの動作を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、上記ノズルがシール材の塗布終了地点に達した段階で上記ノズルの相対移動とシール材の吐出を停止し、その状態で上記ノズルをシール材塗布ラインに沿って移動させて上記シール材の垂れ下がりを切断した後、上記ノズルをシール材塗布ラインから離反させることを特徴とする。
【0009】
本発明のシール材の塗布装置は、上記シール材の垂れ下がりを切断する際のノズルの移動速度を、上記シール材を塗布する際の移動速度よりも大きくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シール材の吐出を停止した後に、ノズルをシール材塗布ラインに沿って移動させることでシール材の垂れ下がりを切断することができる。さらに、このとき切断されたシール材の垂れ下がりはシール材塗布ライン上に落下するため、ワーク表面にシール材の糸引きを生じることなく、ノズルをシール材塗布ラインから離反させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、自動車のワイパ装置に使用するモータカバーを示している。
【0013】
このモータカバー20は、電動モータの減速機を収容したケース(図示せず)の開口を閉塞するもので、樹脂製のカバー本体21にアルミニウム合金製のヒートシンク22とバスバー24をインサート成形してある。ヒートシンク22の一面には表面から凸設した突起部22aが形成され、これによりヒートシンクと周囲の空気との熱交換を積極的に行うようになっている。また、ヒートシンク22の一面と対向する面、他面には図示しない基板に接続されたトランジスタやFETなどの回路素子が絶縁関係を保って接触している。さらに、ヒートシンク22の他面側にはカバー本体21にインサート成形されたバスバー24が配置されている。このバスバーは、図示しない基板と図示しない電動モータとを電気的に接続している。ここで、カバー本体21と、カバー本体にインサート成形されるヒートシンクとは樹脂と金属であり、つまり、熱収縮の異なる材料を使用しているため、両者の接合部には隙間が生じ易い。そこで、カバー本体21とヒートシンク22はそれぞれの境界Aに凹設された溝25を形成し、溝25に沿ってシール材23を塗布することでケース内への雨水の侵入を防止している。
【0014】
図2は、このモータカバー20にシール材23を塗布する装置を示している。
【0015】
この装置は、ワークとしてのモータカバー20を複数個載置できるステージ1を備えている。ステージ1は第1ガイドレール2を介してベース3に設置してあり、図外の駆動源と連結されてX軸方向(紙面に直交する方向)に移動可能に構成してある。ベース3の上方には第2ガイドレール4が水平に配置してあり、このガイドレール4に沿って移動体5がY軸方向に移動可能に構成してある。さらに、この移動体5に第3ガイドレール6を立設し、これにシールガン保持体7を移動自在に組み付けてある。そして、シールガン保持体7にモータ8を搭載してシールガン保持体7をZ軸方向に移動可能に構成してある。シールガン保持体7にはシールガン本体9を取り付けてある。
【0016】
ステージ1、移動体5及びシールガン保持体7の駆動源は制御手段(図示せず)で制御されてシールガン本体9のノズル10をモータカバー20に対して相対移動させる。また、ノズル10からのシール材23の吐出と停止もこの制御手段で制御している。
【0017】
次に、この装置でモータカバー20にシール材23を塗布する方法について、図3〜図5を参照しながら説明する。図3と図4はノズル10の動作を正面から見て説明する図、図5はノズル10の動作を真上から見て説明する図である。
【0018】
まず、ステージ1にモータカバー20をセットし、シールガン9のノズル10からシール材(シリコン系)23を吐出しながらノズル10をモータカバー20に対し相対移動させて、カバー本体21とヒートシンク22の境界Aに沿ってシール材23をループ状に塗布する(図3(A)参照)。そして、ノズル10がシール材23の塗布終了地点P1に達した段階でノズル10からのシール材23の吐出を停止する(同図(B)参照)。このとき、シール材23は粘度が高いため、シール材23の吐出を停止しても、ノズル10の先端とシール材23は切れず、ノズル10の先端からシール材23が垂れ下がった状態になる。次いで、ノズル10をシール材塗布ラインLに沿って斜め上後方に移動させてシール材23のノズル先端からの垂れ下がり23bを切断する(同図(C)参照)。その際のノズル10の移動速度は、シール材23を塗布する際の移動速度よりも大きくするのが好ましい。これはシール材23の垂れ下がりの切断を容易にするためである。切断されたシール材23の垂れ下がり23bはシール材塗布ラインLの上に落下する。なお、シール材23の塗布を開始する地点(塗布終了地点P1と同じ)は、例えば図1に示すように、シール材塗布ラインLのコーナー部分を避けて直線部分に配置するのが好ましい。
【0019】
そして、塗布終了地点P1から所定の距離だけ離れた地点P2までノズル10を後退させた後(同図(D)参照)、ノズル10をシール材塗布ラインLに沿って斜め上前方に向けて地点P3まで移動させる(同図(E)参照)。この地点P3は塗布終了地点P1から前方に所定の距離だけ離れている。このようにノズル10を地点P2,P3間で移動させているのは、シール材23の垂れ下がり23bがなくなっても、シールガン本体9内に残留しているシール材23がノズル9から滴下する虞があるからである。つまり、滴下したシール材23をシール材塗布ラインLの上に落下させてワーク表面の汚れを防止するためである。ノズル10が地点P3まで達した後は、ノズル10を別のワーク側へ移動させてシール材23の塗布を行えばよい。
【0020】
このようにすれば、シール材23の吐出を停止した後に、ノズル10がシール材塗布ラインLに沿って移動してシール材23の垂れ下がり23bを切断するので、切断されたシール材23の垂れ下がり23bがシール材塗布ラインLの上に落下し、ワーク表面にシール材23の糸引きが生じなくなる。これに対して、ノズル10がシール材23の塗布終了地点P1に達した段階で直ぐにノズル10を別のワークに移動させると、シール材23の垂れ下がり23bがシール材塗布ラインLから外れてワーク表面に落下し、図1に示すようなシール材23の糸引き23aが生じてしまう。
【0021】
ところで、このワークではシール材23をループ状に塗布しているので、つまり、シール材23の塗布終了地点が塗布開始地点と同じなので、図4に示すようにノズル10を斜め上前方に移動させてシール材23の垂れ下がり23bを切断してもよい。
【0022】
なお、ノズル10の移動速度と移動距離は、シール材23の粘度等を考慮し、シール材23の垂れ下がり23bが確実に切断できるような値にすればよい。
【0023】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、本実施の形態おいては、3つのガイドレール2,4,6によってシールガン9をXYZ軸方向に移動させるようにしてあるが、シールガン9は多関節ロボットアームの先端に取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)はモータカバーの正面図、(B)は(A)のa−a線に沿う断面図である。
【図2】本発明のシール材塗布装置の正面図である。
【図3】ノズルの動作を正面から見て説明する図である。
【図4】図3(C)の変形例を示す図である。
【図5】ノズルの動作を真上から見て説明する図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ステージ
2 第1ガイドレール
3 ベース
4 第2ガイドレール
5 移動体
6 第3ガイドレール
7 シールガン保持体
8 モータ
9 シールガン本体
10 ノズル
20 モータカバー
21 カバー本体
22 ヒートシンク
22a 突起部
23 シール材
23a シール材の糸引き
23b シール材の垂れ下がり
24 バスバー
25 溝
L シール材の塗布ライン
P1 塗布終了地点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールガンのノズルからシール材を吐出させ、該ノズルをワークに対して相対移動させることで上記シール材を該ワークに塗布するシール材の塗布方法であって、
上記ノズルが上記シール材の塗布終了地点に達した段階で上記シール材の吐出を停止するステップと、
上記ノズルをシール材塗布ラインに沿って移動させて上記シール材の垂れ下がりを切断するステップと、
上記ノズルをシール材塗布ラインから離反させるステップと、
からなることを特徴とするシール材の塗布方法。
【請求項2】
請求項1記載のシール材の塗布方法において、上記シール材の垂れ下がりを切断する際のノズルの移動速度を、上記シール材を塗布する際の移動速度よりも大きくすることを特徴とするシール材の塗布方法。
【請求項3】
シールガンのノズルからシール材を吐出させ、該ノズルをワークに対して相対移動させることで上記シール材を該ワークに塗布するシール材の塗布装置であって、
上記ノズルを上記ワークに対して相対移動させる移動手段と、該移動手段と上記シールガンの動作を制御する制御手段とを備え、
該制御手段は、上記ノズルがシール材の塗布終了地点に達した段階で上記シール材の吐出を停止し、その状態で上記ノズルをシール材塗布ラインに沿って移動させて上記シール材の垂れ下がりを切断した後、上記ノズルをシール材塗布ラインからから離反させることを特徴とするシール材の塗布装置。
【請求項4】
請求項3記載のシール材の塗布装置において、上記シール材の垂れ下がりを切断する際のノズルの移動速度を、上記シール材を塗布する際の移動速度よりも大きくすることを特徴とするシール材の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−161764(P2008−161764A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351687(P2006−351687)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】