シール材及びその製造方法
【課題】膨張黒鉛からなるシール材の欠点を解消することができ、高温環境下でも長期に亘る使用が可能であり、接触する相手材に腐食を生じさせることがなく、耐久性に優れており、機械的強度や耐久性となじみ性や柔軟性をバランス良く両立させることが可能であり、更に生産効率が高く、多品種少量生産への対応も容易であるシール材を提供すること。
【解決手段】複数本の膨張黒鉛からなる帯状片を1本に束ねて或いは撚り合わせてなる糸状体と、該糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材とからなる紐状体を、複数本編んで得られる編組体を成形してなるシール材であって、前記編組体は、その編目に粘土が充填され且つ表面が粘土により被覆されている。
【解決手段】複数本の膨張黒鉛からなる帯状片を1本に束ねて或いは撚り合わせてなる糸状体と、該糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材とからなる紐状体を、複数本編んで得られる編組体を成形してなるシール材であって、前記編組体は、その編目に粘土が充填され且つ表面が粘土により被覆されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシール材及びその製造方法に関し、より詳しくは、膨張黒鉛と金属と粘土との複合材からなるシール材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスケットやパッキン等のシール材としてはアスベスト製品が広く使用されていた。しかし、アスベストが人体に重大な悪影響を与えることが明らかとなったことから、近年ではアスベストに代わる代替材料を用いた製品が使用されるようになっている。
【0003】
アスベスト製品に代わるシール材としては、例えば膨張黒鉛からなるシール材が知られている。
しかしながら、膨張黒鉛は、耐熱性、可撓性、圧縮復元性、耐アルカリ性、耐水性等に優れている反面、曲げ強度や引張強度等の機械的強度が低いという欠点を有している。
また、膨張黒鉛は耐熱性に優れているものの、酸素存在下では400℃を超える温度領域において膨脹黒鉛の酸化消失が促進される。そのため、膨張黒鉛からなるシール材は、400℃超の高温環境下では長期に亘る安定したシール性を維持することが困難なものとなる。
【0004】
一方、膨張黒鉛の機械的強度が低いという欠点を解消するために、膨張黒鉛と金属との複合材からなるシール材が提案されている。
例えば、下記特許文献1には、圧縮された金網からなる補強材と、この補強材の網目を充填する膨張黒鉛とからなるシール材が開示されている。
このシール材は、膨張黒鉛シートとシート状の金網からなる補強材とを積層した積層シートを渦巻き状に巻回して得られる筒状体(A)の外周に、膨張黒鉛シートを袋状の金網に収納してシート状に成形した外面層形成部材(B)を巻き付けた後(図13参照)、これを圧縮成形して得られるものである。
【0005】
しかし、この特許文献1に開示されたシール材は多くの欠点を有している。
第一に、特許文献1のシール材では、膨張黒鉛の酸化消失を防止するために、膨張黒鉛に五酸化燐及び燐酸塩を混合しているが、燐を含むことによりシール材が接触する相手材(配管等)に腐食を生じさせるおそれがある。また、特許文献1には、フッ素樹脂(PTFE)からなる潤滑すべり層を外面に形成したシール材も開示されているが、PTFEは約370℃を超えるとフッ素ガスを発生するため、このシール材は400℃を超える高温環境下で使用することはできない。
第二に、シール材の外面に位置する外面層形成部材(B)が切れ目(C)を有するため、シール材が切れ目を起点として破損して漏れが生じるおそれがあり、耐久性の点で問題がある。
第三に、金網が単一種類の金属線から構成されているため、使用する金属線の種類によりシール材の特性が大きく左右されてしまう。例えば、硬い金属線を使用すると機械的強度や耐久性は向上するが、なじみ性や柔軟性は低下してしまう。そのため、機械的強度や耐久性と、なじみ性や柔軟性という相反する性質を調整してバランス良く両立させることが困難である。
第四に、製造工程が複雑であり、各工程を自動的に連続して行うことが困難であるため、生産効率が低く、製造コストが高くなる。
第五に、膨張黒鉛シートの寸法により製品のサイズが決まってしまうため、製品サイズを変更しようとすると、その都度異なるサイズの膨張黒鉛シートを用意しなければならず、多品種少量生産に対応することが困難である。
【0006】
【特許文献1】特開2001−99325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記したような問題点を解決すべくなされたものであって、膨張黒鉛からなるシール材の欠点を解消することができ、高温環境下でも長期に亘る使用が可能であり、接触する相手材に腐食を生じさせることがなく、耐久性に優れており、機械的強度や耐久性となじみ性や柔軟性をバランス良く両立させることが可能であり、更に生産効率が高く、多品種少量生産への対応も容易であるシール材及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、複数本の膨張黒鉛からなる帯状片を1本に束ねて或いは撚り合わせてなる糸状体と、該糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材とからなる紐状体を、複数本編んで得られる編組体を成形してなるシール材であって、前記編組体は、その編目に粘土が充填され且つ表面が粘土により被覆されていることを特徴とするシール材に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記金属線材が、硬金属線材と軟金属線材とからなり、前記硬金属線材のブリネル硬さが90〜240(kg/mm2)であり、前記軟金属線材のブリネル硬さが40〜55(kg/mm2)であることを特徴とする請求項1記載のシール材に関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記硬金属線材が窒化処理されたステンレスからなり、前記軟金属線材が銅からなることを特徴とする請求項2記載のシール材に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材の編目のピッチが、長さ方向及び幅方向において夫々1.5〜6mmであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のシール材に関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記編組体が、前記紐状体の複数本を袋編みして得られた筒状体であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のシール材に関する。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記編組体の一端又は両端が外側に折り返され、この折り返された部分と折り返されていない部分との隙間部分に粘土が充填されていることを特徴とする請求項5記載のシール材に関する。
【0014】
請求項7に係る発明は、ガスケットであることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載のシール材に関する。
【0015】
請求項8に係る発明は、球面ガスケットであることを特徴とする請求項7記載のシール材に関する。
【0016】
請求項9に係る発明は、膨張黒鉛シートを細い帯状に切断して膨張黒鉛からなる帯状片を形成し、該帯状片の複数本を1本に重ねた或いは撚り合わせた糸状体の外面を被覆するように金属線材を編んで紐状体を形成し、該紐状体の複数本を袋編みして筒状の編組体を形成し、該編組体に、液中に粘土粒子が分散された粘土分散液を含浸し、該粘土分散液を含浸した編組体を乾燥し、該乾燥後の編組体を金型により成形して所定形状のシール材とすることを特徴とするシール材の製造方法に関する。
【0017】
請求項10に係る発明は、前記金属線材が、硬金属線材と軟金属線材とからなり、前記硬金属線材のブリネル硬さが90〜240(kg/mm2)であり、前記軟金属線材のブリネル硬さが40〜55(kg/mm2)であることを特徴とする請求項9記載のシール材の製造方法に関する。
【0018】
請求項11に係る発明は、前記硬金属線材がステンレスからなり、前記軟金属線材が銅からなり、前記金型による成形工程により得られた所定形状のシール材を窒化処理することを特徴とする請求項10記載のシール材の製造方法に関する。
【0019】
請求項12に係る発明は、前記糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材の編目のピッチが、長さ方向及び幅方向において夫々1.5〜6mmであることを特徴とする請求項9乃至11いずれかに記載のシール材の製造方法に関する。
【0020】
請求項13に係る発明は、前記編組体に粘土分散液を含浸する工程の前に、前記編組体の一端又は両端を外側に折り返すことを特徴とする請求項9乃至12いずれかに記載のシール材の製造方法に関する。
【0021】
請求項14に係る発明は、前記外側に折り返した部分と折り返していない部分との隙間部分に、前記粘土分散液から得られる粘土フィルムを介装することを特徴とする請求項13記載のシール材の製造方法に関する。
【0022】
請求項15に係る発明は、前記シール材がガスケットであることを特徴とする請求項9乃至14いずれかに記載のシール材の製造方法に関する。
【0023】
請求項16に係る発明は、前記ガスケットが球面ガスケットであることを特徴とする請求項15記載のシール材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る発明によれば、複数本の膨張黒鉛からなる帯状片を1本に重ねて或いは撚り合わせてなる糸状体と、該糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材とからなる紐状体を、複数本編んで得られる編組体を成形してなるシール材であるため、膨張黒鉛が有する耐熱性、可撓性、圧縮復元性、耐アルカリ性、耐水性等の優れた特性を維持しつつ、金属線材により曲げ強度や引張強度等の機械的強度を向上させることができる。
また、膨張黒鉛からなる糸状体の外面を被覆するように金属線材が編まれているため、金属線材に膨張黒鉛シートを積層した場合に比べて、膨張黒鉛と金属線材とが強固に且つ偏り無く一体化される。そのため、膨張黒鉛と金属線材が有する優れた特性をバランス良く確実に発揮することが可能となる。
また、編組体は、その編目に粘土が充填され且つ表面が粘土により被覆されていることにより、編組体を構成する材料の表面が粘土膜で被覆されたものとなる。そのため、非常に高い耐熱性を有するものとなり、400℃超の高温環境下においても長期に亘って高いシール性を維持した状態で使用することが可能となる。しかも、シール材が接触する相手材を腐食させるおそれがない。
また、紐状体を複数本編んで得られる編組体を成形してなるシール材であるため、シール材は切れ目を有さないものとなり、切れ目からの破損が生じないため、耐久性に優れたものとなり、長期間に亘って高いシール性を発揮することができる。
【0025】
請求項2に係る発明によれば、金属線材が、硬金属線材と軟金属線材とからなり、前記硬金属線材のブリネル硬さが90〜240(kg/mm2)であり、前記軟金属線材のブリネル硬さが40〜55(kg/mm2)であることから、硬金属線材が有する優れた機械的強度や耐久性と、軟金属線材が有する優れたなじみ性や柔軟性とを両立させることができる。また、硬金属線材と軟金属線材の本数の比率を変更することにより、機械的強度や耐久性と、なじみ性や柔軟性とのバランスを容易に調整することが可能である。
【0026】
請求項3に係る発明によれば、硬金属線材が窒化処理されたステンレスからなり、軟金属線材が銅からなることにより、窒化処理されたステンレスにより優れた機械的強度が発揮され、銅により優れたなじみ性が発揮される。
【0027】
請求項4に係る発明によれば、糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材の編目のピッチが、長さ方向及び幅方向において夫々1.5〜6mmであることから、金属線材による優れた機械的強度が発揮されるとともに、金属線材の網目に入り込んだ膨張黒鉛により優れたなじみ性が発揮される。
【0028】
請求項5に係る発明によれば、編組体が紐状体の複数本を袋編みして得られた筒状体であることから、編組体を製造する工程を自動化することができる。そのため、生産効率が高くなり、製造コストを低く抑えることができる。
また、製造時に編組体のサイズを容易に自在に変更することができるため、多品種少量生産に対応することが容易である。
【0029】
請求項6に係る発明によれば、編組体の一端又は両端が外側に折り返され、この折り返された部分と折り返されてない部分との隙間部分に粘土が充填されていることにより、編組体の側面において粘土が多層構造となるため、シール材の耐熱性及びシール性を大幅に向上させることができる。
【0030】
請求項7に係る発明によれば、上述した優れた特性を有するガスケットとなる。
【0031】
請求項8に係る発明によれば、上述した優れた特性を有する球面ガスケットとなる。
【0032】
請求項9に係る発明によれば、編組体を形成する工程を自動化することが可能となる。そのため、生産効率が高くなり、製造コストを低く抑えることができる。
また、編組体のサイズを容易に自在に変更することができるため、多品種少量生産に対応することが容易である。
更に、得られたシール材は、膨張黒鉛が有する優れた耐熱性、可撓性、圧縮復元性、耐アルカリ性、耐水性等の特性と、金属線材が有する優れた機械的強度を併せ持つものとなる。
また、膨張黒鉛からなる糸状体の外面を被覆するように金属線材を編んで紐状体を形成することにより、金属線材に膨張黒鉛シートを積層した場合に比べて、膨張黒鉛と金属線材とが強固に且つ偏り無く一体化される。そのため、膨張黒鉛と金属線材が有する優れた特性をバランス良く確実に発揮することが可能となる。
また、編組体に液中に粘土分散液を含浸することにより、編組体を構成する材料の表面が粘土膜で被覆されたものとなる。そのため、非常に高い耐熱性を有するものとなり、400℃超の高温環境下においても長期に亘って使用することが可能となる。しかも、シール材が接触する相手材を腐食させるおそれがない。
また、紐状体を複数本編んで編組体を成形してシール材を形成するため、シール材は切れ目を有さないものとなり、切れ目からの破損が生じないため、優れた耐久性を発揮することができる。
【0033】
請求項10に係る発明によれば、金属線材が、硬金属線材と軟金属線材とからなり、前記硬金属線材のブリネル硬さが90〜240(kg/mm2)であり、前記軟金属線材のブリネル硬さが40〜55(kg/mm2)であることから、硬金属線材が有する優れた機械的強度や耐久性と、軟金属線材が有する優れたなじみ性や柔軟性とを両立させることができる。また、硬金属線材と軟金属線材の本数の比率を変更することにより、機械的強度や耐久性と、なじみ性や柔軟性とのバランスを容易に調整することが可能である。
【0034】
請求項11に係る発明によれば、硬金属線材がステンレスからなり、軟金属線材が銅からなり、金型による成形工程により得られた所定形状のシール材を窒化処理することにより、窒化処理されたステンレスにより優れた機械的強度が発揮され、窒化処理されない銅により優れたなじみ性が発揮される。
【0035】
請求項12に係る発明によれば、糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材の編目のピッチが、長さ方向及び幅方向において夫々1.5〜6mmであることから、金属線材による優れた機械的強度が発揮されるとともに、金属線材の網目に入り込んだ膨張黒鉛により優れたなじみ性が発揮される。
【0036】
請求項13に係る発明によれば、編組体に粘土分散液を含浸する工程の前に、編組体の一端又は両端を外側に折り返すことにより、成形前に編組体の高さを低くすることができ、金型の高さを低くして小型化することが可能となる。
【0037】
請求項14に係る発明によれば、外側に折り返した部分と折り返してない部分との隙間部分に、粘土分散液から得られる粘土フィルムを介装することにより、編組体の側面において粘土が多層構造となるため、シール材の耐熱性及びシール性を大幅に向上させることができる。
【0038】
請求項15に係る発明によれば、上述した優れた特性を有するガスケットを製造することができる。
【0039】
請求項16に係る発明によれば、上述した優れた特性を有する球面ガスケットを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明に係るシール材及びその製造方法の好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
尚、以下の説明においては、本発明に係るシール材として球面ガスケットを例に挙げて説明するが、本発明に係るシール材にはシートガスケット等の他の種類のガスケットや、パッキンやジョイントシート等のガスケット以外のシール材も含まれるものである。
【0041】
先ず、本発明に係るシール材の製造方法について説明する。
第一工程として、図1に示すように、ロールに巻回された長尺の膨張黒鉛シート(1)を帯状に切断して膨張黒鉛からなる細い帯状片(2)を形成する。
【0042】
膨張黒鉛シート(1)は、天然黒鉛、熱分解黒鉛、キッシュ黒鉛等の黒鉛粉末を、濃硫酸、濃硝酸等と反応させて一旦層間化合物とした後、水洗などによって残留分解させて残留化合物とし、これを急熱して膨張させて得られる膨張黒鉛を、圧延ロールにより成形して可撓性を有するシート状とする方法等の公知の製法により得ることができる。
【0043】
膨張黒鉛シート(1)の厚みは、特に限定されるものではないが、0.1〜0.6mm程度のものが好適に用いられる。
これは、厚みが0.1mm未満であると充分な強度が得られずに後工程の編み加工時に帯状片(2)が破断するおそれがあり、厚みが0.6mmを超えると編み加工が良好に行えないおそれがあり、いずれの場合も好ましくないためである。
【0044】
膨張黒鉛シート(1)の密度についても、特に限定されるものではないが、0.70〜2.0g/cm3程度のものが好適に用いられる。
これは、密度が0.70g/cm3未満であると熱伝導性や強度が低下するおそれがあり、2.0g/cm3を超えると可撓性が低下するおそれがあるためである。
【0045】
膨張黒鉛シート(1)を切断して得られる帯状片(2)の幅は2.0〜8.0mmとすることが好ましい。
これは、幅が2.0mm未満であると充分な強度が得られずに後工程の編み加工時に帯状片(2)が破断するおそれがあり、幅が8.0mmを超えると編み加工が良好に行えないおそれがあり、いずれの場合も好ましくないためである。
【0046】
第二工程では、図2に示すように、第一工程で得られた帯状片(2)の複数本(図示例では2本)からなる糸状体(20)を中心とし、この糸状体(20)の外面を被覆するように金属線材(3)を編んで紐状体(4)を形成する。
糸状体(20)は、複数本の帯状片(2)を撚り合わせて撚糸としたものでもよいし、撚らずに単に重ねたものでもよい。
図示例では、糸状体(20)が2本の帯状片(2)からなり、糸状体(20)を被覆する金属線材(3)が1本である場合を示しているが、帯状片(2)は3本以上としてもよく、金属線材(3)は2本以上としてもよい。
帯状片(2)と金属線材(3)との本数の比率を変更することにより、膨張黒鉛からなる帯状片(2)により発揮される特性と金属線材(3)により発揮される特性とのバランスを調整することができ、使用用途に応じた特性を有するシール材を得ることができる。
【0047】
本発明においては、金属線材(3)として硬金属線材と軟金属線材の2種類の金属線材を使用することが好ましい。この場合、2種類の金属線材を重ねて或いは撚り合わせて1本とし、これを糸状体(20)の外面を被覆する編み糸として使用すればよい。
硬金属線材としてはブリネル硬さが90〜240(kg/mm2)のものが用いられる。
このような硬さを有する金属材料は、高温下における引張強度等の機械的強度が高く、繰り返し荷重に対する疲れ限度も高い。また、このような硬さを有する金属は、高温下においてクリープが生じにくい。
従って、硬金属線材は、シール材の機械的強度を向上させるとともに、高温下における耐クリープ性を高めて、シール材に応力緩和が生じないようにすることができる。
【0048】
硬金属線材としては、例えば、ステンレス、インコネル等の炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金を挙げることができる。
硬金属線材の直径は、0.05〜0.35mmとすることが好ましい。直径が0.05mm未満であると編み加工する際に破断するおそれがあり、0.35mmを超えると編み加工がしにくくなり、いずれの場合も好ましくないためである。
【0049】
軟金属線材としてはブリネル硬さが40〜55(kg/mm2)のものが用いられる。
このような硬さを有する金属材料は、シール材が接触する相手材料より硬度が低いため、シール材が相手材料に対して相対的に変位した場合に相手材料に傷を付けることがない。また、このような硬さを有する金属材料は、柔軟性に優れ、塑性加工を容易に行うことができる。
従って、軟金属線材の占める割合が多いほど、第二工程における編み加工を容易に行うことができる。また、編み加工して得られた紐状体(4)から得られたものを加圧成形してシール材とする際、表面及び内部が緻密に詰んだシール材とすることができる。
また、このような硬さを有する金属材料は、相手材料に対するなじみ性が良好である。そのため、軟金属線材の占める割合が多いほど、シール材のシール性を向上させることができる。
更に、このような硬さを有する金属材料は、400〜850℃程度の温度下では変質しにくい。従って、シール材のシール性を高温下において安定させることができる。
【0050】
軟金属線材としては、例えば、銅、モネルメタル等の銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金を挙げることができる。
軟金属線材の直径は、0.05〜0.35mmとすることが好ましい。直径が0.05mm未満であると編み加工する際に破断するおそれがあり、0.35mmを超えると編み加工がしにくくなり、いずれの場合も好ましくないためである。
【0051】
金属線材(3)として硬金属線材と軟金属線材の2種類の金属線材を使用する場合、両者の本数の比は1:1〜0.3とすることが好ましい。これを比の値(硬金属線材の本数/軟金属線材の本数)で表すと1〜約3.3となる。
比の値が1未満であると紐状体(4)の機械的強度が低くなり、逆に3.3を超えると編み加工しにくくなる上に、紐状体のなじみ性が低下してシール材のシール性が低下するおそれがあるため、いずれの場合もあまり好ましくない。
【0052】
糸状体(20)の外面を被覆するように編まれる金属線材(3)の編目のピッチは、長さ方向及び幅方向において夫々1.5〜6mmとすることが好ましい。尚、図3は編目のピッチの長さ方向(L)と幅方向(W)の説明図である。
金属線材(3)の編目のピッチが1.5mm未満であると、網目に膨張黒鉛が入り込みにくいためにシール材のなじみ性やシール性が充分に得られず、一方、6mmを超えると、シール材の強度が低下するため、いずれの場合も好ましくない。
【0053】
金属線材(3)の編み方(編み組織)については、経編でも緯編でもよいが、強度の点から緯編が好ましい。
緯編とする場合、その具体的な形態は特に限定されず、平編、ゴム編、パール編、タック編、浮き編、片畦編、両畦編、両面編、レース編、添糸編等の形態を採用することができる。
【0054】
第二工程において形成される紐状体(4)は、膨張黒鉛からなる糸状体(20)と金属線材(3)とから形成されているため、金属線材のみから形成されるものに比べてなじみ性が大幅に向上する。また、後工程(第六工程)において紐状体(4)から得られた編組体を加圧成形してシール材とする際、膨張黒鉛が金属線材(3)の隙間に入り込むため、表面及び内部が非常に緻密に詰んだシール材とすることができる。
このように、紐状体(4)に膨張黒鉛からなる帯状片(2)が用いられていることにより、金属線材のみが用いられている場合に比べてシール材のシール性を大きく向上させることが可能となる。
【0055】
第二工程において、膨張黒鉛からなる帯状片(2)と金属線材(3)との本数の比は、1:0.5〜5.0とすることが好ましい。これを比の値(帯状片の本数/金属線材の本数)で表すと2〜0.2となる。
比の値が2を超えると、シール材の機械的強度が低下し且つ摩擦が高くなるおそれがあり、逆に0.2未満であると、なじみ性が低下してシール材のシール性が低下するおそれがあり、いずれの場合もあまり好ましくない。
【0056】
第二工程で得られた紐状体(4)は、第三工程に供する前に、ダイスに通すことにより周囲から加圧して細くする工程を経ることが好ましい。また、この工程において紐状体(4)に撚りを加えても良い。
第三工程前にこのような工程を経ることにより、紐状体(4)を構成する膨張黒鉛からなる帯状片(2)と金属線材(3)とを強固に一体化することができる。
【0057】
第三工程では、図4に示すように、第二工程で得られた紐状体(4)の複数本を袋編みした後、所定長さに切断することにより、図5に示すような円筒状の編組体(5)を形成する。袋編みに際しては、公知の袋編み機を使用することができる。
編組体(5)の直径は、最終製品となるシール材の寸法に応じて適宜設定すればよく、袋編み機の設定により容易且つ自在に変更することができるが、例えばφ15〜200mmとすることができる。
編組体(5)の高さ(図5における上下方向長さ)についても、最終製品となるシール材の寸法に応じて適宜設定すればよいが、例えば15〜200mmとすることができる。尚、シール材は編組体(5)を高さ方向に加圧成形することにより得るため、編組体(5)の高さは、最終製品となるシール材の高さよりも高いものである。
【0058】
袋編みに使用される紐状体(4)の本数は特に限定されないが、6〜50本とすることが好ましい。これは6本未満であると編組体(5)の目が粗くなって強度が低下し、50本を超えると編組みが難しくなる上にコスト高となり、いずれの場合も好ましくないからである。
【0059】
上記した第二工程と第三工程は、いずれも連続的な加工が可能であって、自動化された工程とすることができるため、生産効率が高くなり、製造コストを低く抑えることができる。
また、製造時に編組体のサイズを容易に自在に変更することができるため、多品種少量生産に対応することが容易である。
【0060】
第四工程では、第三工程で得られた編組体(5)に、液中に粘土粒子が分散された粘土分散液(6)を含浸する。
粘土粒子が分散される液体としては、水、アルコール、エーテル、酢酸エチル、トルエン等を例示することができる。
粘土分散液の含浸方法は、図6に示すように編組体(5)を粘土分散液(6)に浸漬する方法でもよいし、編組体(5)に粘土分散液(6)を塗布したり吹き付けたりする方法でもよく、特に限定されない。
【0061】
粘土としては、天然粘土、合成粘土、変性粘土のうちの一種以上を用いることができる。
より具体的には、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイト、ノントロナイトのうちの一種以上が好適に用いられる。
【0062】
変性粘土に用いられる粘土としては、天然或いは合成物、好適には、例えば、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイトのうちの一種以上、更に好適には、それらの天然或いは合成物のいずれか或いはそれらの混合物が例示される。
変性粘土に用いられる有機カチオンとしては、第四級アンモニウムカチオン或いは第四級ホスホニウムカチオンを含むものが例示される。その際、変性粘土における有機カチオン組成を30重量%未満とする構成を採用することができる。
また、変性粘土にシリル化剤を反応させたものを使用することもできる。この場合、粘土とシリル化剤の総重量に対するシリル化剤組成を30%重量未満とする構成を採用することができる。
【0063】
変性粘土に含まれる有機物としては、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジウムカチオンが挙げられる。第四級アンモニウムカチオンとしては、特に限定されるものではないが、ジメチルオクタデシルタイプ、ジメチルステアリルベンジルタイプ、トリメチルステアリルタイプが例示される。また、類似の有機物として、第四級ホスホニウムカチオンが例示される。これらの有機物は、原料粘土のイオン交換によって粘土に導入される。
このイオン交換は、例えば原料粘土を、過剰な有機物を溶解した水に分散し、一定時間攪拌し、遠心分離或いは濾過により固液分離し、水により洗浄を繰り返すことにより行われる。これらのイオン交換プロセスは1回のみでもよいし、複数回繰り返してもよい。複数回繰り返すことにより、粘土に含まれるナトリウム、カルシウム等の交換性イオンが有機物によって交換される比率が高くなる。用いる有機物及び交換比率によって変性粘土の極性にバリエーションを持たせることができ、異なる極性の変性粘土はそれぞれ好適な添加物及び好適な溶剤が異なる。このとき、第四級アンモニウムカチオンの導入に用いられる試薬として、第四級アンモニウムカチオン塩化物が一般的に用いられる。第四級アンモニウムカチオンの導入と共に混入する塩素は水洗浄により薄められるが、水洗浄を繰り返してもその濃度を150ppm以下にすることは困難である。しかし、エレクトロニクス用途等では塩素の混入を著しく嫌うものがあり、そのため塩素濃度を150ppm以下に抑えなければならないことがある。そのような場合は、第四級アンモニウム塩化物を用いず、塩素を含まない他の試薬、例えば第四級アンモニウム臭化物、第四級アンモニウムカチオン水酸化物を用いなければならない。
【0064】
変性粘土に含まれるシリル化剤は、特に限定されるものではないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランを例示することができる。
また、粘土へのシリル化剤の導入方法についても特に限定されるものではないが、例えば、原料粘土と、原料粘土に対して2重量%のシリル化剤を混合し、それらをボールミルにより一時間ミルする方法を例示することができる。
【0065】
本発明で用いられる変性粘土は、その処理方法によって種々の極性のものを作製することが可能であり、その極性により粘土分散液を作製するのに適した溶剤が異なる。粘土分散液を作製する際の溶剤としては、アルコール、エーテル、酢酸エチル、トルエン等を例示することができる。
【0066】
粘土分散液(6)は、天然もしくは合成スメクタイト、又はこれらの混合物からなる粘土粒子を、上述した水や有機溶媒等の液体中に均一に分散させることにより得ることができる。
粘土中に含まれる固形分の割合は3〜15重量%であることが好ましい。また、粘土分散液の濃度は、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜3重量%とされる。更に、必要に応じて添加物の1種以上を粘土分散液に添加して、液中に均一分散又は溶解させることができる。
【0067】
添加物としては、セルロイド、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ユリア樹脂、酢酸セルロース、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリウレタン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル、ケイ素樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリロニトリル−ブダジエン−スチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタラート、ポリエーテルスルホン、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミドのうちの1種以上を用いることができる。
【0068】
更に、粘土分散液(6)に、赤燐、五酸化燐等の燐や、第一燐酸リチウム、第二燐酸リチウム、第一燐酸カルシウム、第二燐酸カルシウム、第一燐酸アルミニウム、第二燐酸アルミニウム等の燐酸塩のうちの1種以上を添加することもできる。
これらの燐及び/又は燐酸塩を粘土分散液に添加することにより、高温条件下における膨張黒鉛の酸化消失の防止効果に優れたものとなるとともに、粘土の存在によって燐を含むことによるシール材の相手材(配管等)の腐食を防止することも可能となる。
【0069】
第五工程では、第四工程において得られた粘土分散液を含浸した編組体を乾燥する。
乾燥後の編組体は、図7に示すように、編組体を構成する材料(線材)の表面が粘土膜(7)で被覆されたものとなる。また、網目に粘土が充填されたものとなる。
【0070】
第六工程では、乾燥後の編組体を図8に示すように金型(8)の内部に収容して高さ方向(矢印方向)に加圧成形し、図9に示すような所定形状のシール材(9)とする。図9(a)は外観図、(b)は断面図である。
金型(8)は、ガスケット等のシール材の成形に使用される公知の構造のものであって、最終製品となるシール材の形状に合わせた内部形状を有するものが使用される。
【0071】
本発明においては、第六工程における加圧成形の後、得られた成形体を窒化処理することができる。
この場合、金属線材(3)として、ステンレス(硬金属線材)と銅(軟金属線材)の2種類の金属線材を使用することが好ましい。また、窒化処理の温度は、550〜650℃とすることが好ましい。
このような2種類の金属線材を含むシール材を窒化処理した場合、ステンレスが窒化処理されることでシール材の機械的強度が大きく向上する一方、銅は窒化処理されずに柔らかい状態を維持するため、シール材のなじみ性は良好なものとなる。
また、窒化処理は、酸素不存在下においてなされるため、窒化処理工程における加熱によって膨張黒鉛の酸化消失が生じることはない。
窒化処理の方法は特に限定されず、ガス窒化法、塩浴窒化法、タフトライド法、ガス軟窒化法、プラズマ窒化法などの公知の方法を採用することができる。
このうち、窒素ガスと水素ガスの混合ガスを使用するプラズマ窒化法は、ステンレスの窒化処理に適している。
【0072】
最終製品として得られるシール材(9)は本発明に係るシール材であり、図9では球面ガスケットが示されている。しかし、本発明に係るシール材が球面ガスケットに限定されないことは上述した通りである。
【0073】
上述した方法により得られた本発明に係るシール材は、膨張黒鉛が有する優れた耐熱性、可撓性、圧縮復元性、耐アルカリ性、耐水性と、金属線材が有する優れた機械的強度を併せ持つものとなる。
また、膨張黒鉛からなる糸状体の外面を被覆するように金属線材を編んで紐状体を形成することにより、金属線材に膨張黒鉛シートを積層した場合に比べて、膨張黒鉛と金属線材とが強固に且つ偏り無く一体化される。そのため、膨張黒鉛と金属線材が有する優れた特性をバランス良く確実に発揮することが可能となる。
また、編組体に粘土分散液を含浸することにより、編組体は、その編目に粘土が充填され且つ表面が粘土により被覆されたものとなる。そのため、非常に高い耐熱性(約800〜1000℃)を有するものとなり、400℃超の高温環境下においても長期に亘って使用することが可能となる。しかも、シール材が接触する相手材を腐食させるおそれがない。
また、紐状体を複数本編んで編組体を成形してシール材を形成するため、シール材は切れ目を有さないものとなり、切れ目からの破損が生じないため、優れた耐久性を発揮することができる。
【0074】
更に、金属線材として硬金属線材と軟金属線材とを使用した場合、硬金属線材が有する優れた機械的強度や耐久性と、軟金属線材が有する優れたなじみ性や柔軟性とを併せ持つことができる。また、硬金属線材と軟金属線材の本数の比率を変更することにより、機械的強度や耐久性と、なじみ性や柔軟性とのバランスを容易に調整することが可能である。
【0075】
本発明に係る製造方法においては、上述した第三工程と第四工程の間に、第三工程で得られた編組体(5)の一端又は両端を外側に折り返す工程(以下、折り返し工程という)を経ることができる。
図10は、折り返し工程により、編組体(5)の一端又は両端が外側に折り返された状態を示す図であり、(a)は上端が折り返された状態の図、(b)は下端が折り返された状態の図、(c)は両端(上下端)が折り返された状態の図である。
本発明に係る製造方法では、このように筒状の編組体の一端又は他端を折り返すことにより成形前に編組体の高さを低く調整することが可能である。つまり、折り返し部分(10)の長さ(L)を変更することにより、編組体の高さを調整することが可能である。
このように、折り返し工程を経ることにより、後工程(第六工程)の成形工程前に編組体の高さを低くすることができる。
これにより、第六工程において用いられる金型(8)の高さを低くして小型化することが可能となる。
【0076】
また、本発明に係る製造方法においては、上述した折り返し工程の後に、折り返し部分(10)と折り返されていない部分との隙間部分に粘土を充填する工程(以下、粘土充填工程という)を経ることができる。
粘土充填工程では、上記隙間部分に、上述した粘土分散液から得られる粘土フィルム(11)を介装する(図11参照)。
介装される粘土フィルム(11)の枚数は、特に限定されず、1枚でもよいし複数枚でもよい。
【0077】
粘土フィルム(11)は、以下の方法により製造することができる。
先ず、上述した方法により粘土分散液を調製する。
次いで、粘土分散液を水平に静置して、粘土粒子をゆっくりと沈積させるとともに、分散媒である液体と粘土粒子を固液分離手段によって分離することにより、粘土薄膜を成形する。
最後に、粘土薄膜を110〜300℃の温度条件下で乾燥することにより、粘土フィルム(11)が得られる。
【0078】
上記製法における固液分離手段としては、遠心分離、濾過、真空乾燥、凍結真空乾燥、加熱蒸発のいずれか、もしくはこれらの手段の組み合わせが採用される。
これらの方法のうち、例えば、加熱蒸発法を用いる場合、真空引きにより予め脱気した粘土分散液を平坦なトレイに注ぎ、水平を保った状態で、強制送風式オーブン中で30〜70℃、好ましくは40〜50℃の温度条件下で、3時間から半日程度、好ましくは3〜5時間乾燥させることにより、粘土フィルムを得る。
【0079】
このようにして製造された粘土フィルムは、自立膜として利用可能な強度を有し、粘土粒子の積層が高度に配向されたものとなる。
粘土粒子の積層が高度に配向されるとは、粘土粒子の単位構造層(厚さ約1nm)を、層面の向きを同一にして重ね、層面に垂直な方向に高い周期性をもたせることを意味している。このような粘土粒子の配向を得るためには、希薄で均一な粘土分散液を水平に静置し、粘土粒子をゆっくりと沈積させるとともに、例えば、分散媒である液体をゆっくりと蒸発させて膜状に形成する必要がある。
【0080】
このように得られた粘土フィルムは、膜厚が3〜100μm、好適には3〜30μmであり、ガスバリア性能は、厚さ30μmで酸素透過度0.1cc/m2・24hr・atm未満、水素透過度0.1cc/m2・24hr・atm未満である。ヘリウム、水素、酸素、窒素、空気の室温におけるガス透過係数は3.2×10−11cm2s−1cmHg−1未満であって、1000℃で24時間加熱処理後もガスバリア性の低下はみられない。
また、遮水性は、遮水係数が2×10−11cm/s以下であり、光透過性は、可視光(500nm)の透過性が75%以上であり、面積は100×40cm以上に大面積化することが可能であり、高耐熱性を有している。
【0081】
この粘土フィルムは、粘土粒子の積層が高度に配向し、ピンホールが存在しない。また、可撓性に優れ、250℃以上600℃までの高温においても構造変化しないものである。更には、自立膜として用いることが可能であり、ピンホールの存在しない緻密な材料であり、かつ気体・液体のバリアー性に優れたものである。
【0082】
このような粘土フィルムは、上述したように、粘土充填工程において折り返し工程により形成された編組体(5)の隙間部分に介装される。その後、この編組体(5)に粘土分散液(6)を含浸して乾燥させる。
粘土充填工程を経て得られた編組体は、編組体の側面において粘土が多層構造となる。つまり、粘土層が編組体(5)の内面側と外面側と隙間部分の三層に形成される。また、膨張黒鉛と粘土フィルムとの相性及びなじみ性は非常に良好である。
そのため、この編組体を成形して得られるシール材の耐熱性及びシール性を大幅に向上させることが可能となる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明に係るシール材の実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例サンプルの作製>
上述した第一乃至第六工程を経ることにより、図9に示すような球面ガスケット(外径φ70mm、内径φ53.5mm、高さ16mm)を製作し、これを実施例の球面ガスケットとした。尚、膨張黒鉛シートとしては厚み0.38mmのものを使用し、帯状片の幅は3mmとした。金属線材としては、直径0.15mmのSUS304(非窒化物)を使用した。金属線材の網目(図3参照)のピッチは、長さ方向(L)が4.5mm、幅方向(W)が3mmとし、第三工程の袋編みでは24本の紐状体を使用した。
一方、膨張黒鉛のみを材料として実施例と同じ形状をもつ球面ガスケットを製作し、これらを比較例の球面ガスケットとした。
【0084】
<耐熱シール性試験>
実施例の球面ガスケット(9)を、図12に示すように、2本のパイプ(ステンレス製、外径φ53mm)の端部近傍に夫々形成されたフランジ(ステンレス製)の間に介装して、スプリングを介してボルトにより荷重588.4N(60kgf)で締め付け、フランジ球面部の温度が700℃になるようにパイプ内部に詰めたSUSウール(12)をガスバーナー(13)により24時間加熱処理した後、フランジ球面部の可動部分を上下に6mmずつ繰り返し10回摺動させ、その後、内圧(空気圧)19.6kPa(0.2kgf/cm2)を加えたときの空気漏れ量を測定した。
その結果、空気漏れ量は13.9ml/minであり、自動車用排気管部品への適用基準値500ml/30secを大幅に下回った。
【0085】
<耐熱性試験>
実施例及び比較例の球面ガスケットを電気炉中にて600℃で24時間加熱し、加熱前後の重量を測定することにより、重量減少率を算出した。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示される如く、実施例の球面ガスケットの重量減少率が11%であったのに対して、比較例の球面ガスケットの重量減少率は24%であった。この結果から、本発明に係る球面ガスケットが従来のものよりも高い耐熱性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、発電所や化学プラント等の配管の接合部等に用いられるガスケット、パッキン、ジョイントシート等のシール材として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係るシール材の製造方法の第一工程の説明図である。
【図2】本発明に係るシール材の製造方法の第二工程の説明図である。
【図3】編目のピッチの長さ方向(L)と幅方向(W)の説明図である。
【図4】本発明に係るシール材の製造方法の第三工程の説明図である。
【図5】第三工程により得られる編組体を示す図である。
【図6】本発明に係るシール材の製造方法の第四工程の説明図である。
【図7】第五工程後の編組体を示す図である。
【図8】本発明に係るシール材の製造方法の第六工程の説明図である。
【図9】本発明に係るシール材の一例を示す図であり、(a)は外観図、(b)は断面図である。
【図10】折り返し工程により、編組体の一端又は両端が外側に折り返された状態を示す図であり、(a)は上端が折り返された状態の図、(b)は下端が折り返された状態の図、(c)は両端(上下端)が折り返された状態の図である。
【図11】粘土充填工程を経た編組体を示す断面図である。
【図12】本発明に係る球面ガスケットの耐熱シール性試験方法を説明する図である。
【図13】従来のシール材の加圧成形前の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 膨張黒鉛シート
2 膨張黒鉛シートからなる帯状片
3 金属線材
4 紐状体
5 編組体
6 粘土分散液
7 粘土膜
8 金型
9 シール材(球面ガスケット)
10 折り返し部分
11 粘土フィルム
20 糸状体
【技術分野】
【0001】
本発明はシール材及びその製造方法に関し、より詳しくは、膨張黒鉛と金属と粘土との複合材からなるシール材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスケットやパッキン等のシール材としてはアスベスト製品が広く使用されていた。しかし、アスベストが人体に重大な悪影響を与えることが明らかとなったことから、近年ではアスベストに代わる代替材料を用いた製品が使用されるようになっている。
【0003】
アスベスト製品に代わるシール材としては、例えば膨張黒鉛からなるシール材が知られている。
しかしながら、膨張黒鉛は、耐熱性、可撓性、圧縮復元性、耐アルカリ性、耐水性等に優れている反面、曲げ強度や引張強度等の機械的強度が低いという欠点を有している。
また、膨張黒鉛は耐熱性に優れているものの、酸素存在下では400℃を超える温度領域において膨脹黒鉛の酸化消失が促進される。そのため、膨張黒鉛からなるシール材は、400℃超の高温環境下では長期に亘る安定したシール性を維持することが困難なものとなる。
【0004】
一方、膨張黒鉛の機械的強度が低いという欠点を解消するために、膨張黒鉛と金属との複合材からなるシール材が提案されている。
例えば、下記特許文献1には、圧縮された金網からなる補強材と、この補強材の網目を充填する膨張黒鉛とからなるシール材が開示されている。
このシール材は、膨張黒鉛シートとシート状の金網からなる補強材とを積層した積層シートを渦巻き状に巻回して得られる筒状体(A)の外周に、膨張黒鉛シートを袋状の金網に収納してシート状に成形した外面層形成部材(B)を巻き付けた後(図13参照)、これを圧縮成形して得られるものである。
【0005】
しかし、この特許文献1に開示されたシール材は多くの欠点を有している。
第一に、特許文献1のシール材では、膨張黒鉛の酸化消失を防止するために、膨張黒鉛に五酸化燐及び燐酸塩を混合しているが、燐を含むことによりシール材が接触する相手材(配管等)に腐食を生じさせるおそれがある。また、特許文献1には、フッ素樹脂(PTFE)からなる潤滑すべり層を外面に形成したシール材も開示されているが、PTFEは約370℃を超えるとフッ素ガスを発生するため、このシール材は400℃を超える高温環境下で使用することはできない。
第二に、シール材の外面に位置する外面層形成部材(B)が切れ目(C)を有するため、シール材が切れ目を起点として破損して漏れが生じるおそれがあり、耐久性の点で問題がある。
第三に、金網が単一種類の金属線から構成されているため、使用する金属線の種類によりシール材の特性が大きく左右されてしまう。例えば、硬い金属線を使用すると機械的強度や耐久性は向上するが、なじみ性や柔軟性は低下してしまう。そのため、機械的強度や耐久性と、なじみ性や柔軟性という相反する性質を調整してバランス良く両立させることが困難である。
第四に、製造工程が複雑であり、各工程を自動的に連続して行うことが困難であるため、生産効率が低く、製造コストが高くなる。
第五に、膨張黒鉛シートの寸法により製品のサイズが決まってしまうため、製品サイズを変更しようとすると、その都度異なるサイズの膨張黒鉛シートを用意しなければならず、多品種少量生産に対応することが困難である。
【0006】
【特許文献1】特開2001−99325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記したような問題点を解決すべくなされたものであって、膨張黒鉛からなるシール材の欠点を解消することができ、高温環境下でも長期に亘る使用が可能であり、接触する相手材に腐食を生じさせることがなく、耐久性に優れており、機械的強度や耐久性となじみ性や柔軟性をバランス良く両立させることが可能であり、更に生産効率が高く、多品種少量生産への対応も容易であるシール材及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、複数本の膨張黒鉛からなる帯状片を1本に束ねて或いは撚り合わせてなる糸状体と、該糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材とからなる紐状体を、複数本編んで得られる編組体を成形してなるシール材であって、前記編組体は、その編目に粘土が充填され且つ表面が粘土により被覆されていることを特徴とするシール材に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記金属線材が、硬金属線材と軟金属線材とからなり、前記硬金属線材のブリネル硬さが90〜240(kg/mm2)であり、前記軟金属線材のブリネル硬さが40〜55(kg/mm2)であることを特徴とする請求項1記載のシール材に関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記硬金属線材が窒化処理されたステンレスからなり、前記軟金属線材が銅からなることを特徴とする請求項2記載のシール材に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材の編目のピッチが、長さ方向及び幅方向において夫々1.5〜6mmであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のシール材に関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記編組体が、前記紐状体の複数本を袋編みして得られた筒状体であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のシール材に関する。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記編組体の一端又は両端が外側に折り返され、この折り返された部分と折り返されていない部分との隙間部分に粘土が充填されていることを特徴とする請求項5記載のシール材に関する。
【0014】
請求項7に係る発明は、ガスケットであることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載のシール材に関する。
【0015】
請求項8に係る発明は、球面ガスケットであることを特徴とする請求項7記載のシール材に関する。
【0016】
請求項9に係る発明は、膨張黒鉛シートを細い帯状に切断して膨張黒鉛からなる帯状片を形成し、該帯状片の複数本を1本に重ねた或いは撚り合わせた糸状体の外面を被覆するように金属線材を編んで紐状体を形成し、該紐状体の複数本を袋編みして筒状の編組体を形成し、該編組体に、液中に粘土粒子が分散された粘土分散液を含浸し、該粘土分散液を含浸した編組体を乾燥し、該乾燥後の編組体を金型により成形して所定形状のシール材とすることを特徴とするシール材の製造方法に関する。
【0017】
請求項10に係る発明は、前記金属線材が、硬金属線材と軟金属線材とからなり、前記硬金属線材のブリネル硬さが90〜240(kg/mm2)であり、前記軟金属線材のブリネル硬さが40〜55(kg/mm2)であることを特徴とする請求項9記載のシール材の製造方法に関する。
【0018】
請求項11に係る発明は、前記硬金属線材がステンレスからなり、前記軟金属線材が銅からなり、前記金型による成形工程により得られた所定形状のシール材を窒化処理することを特徴とする請求項10記載のシール材の製造方法に関する。
【0019】
請求項12に係る発明は、前記糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材の編目のピッチが、長さ方向及び幅方向において夫々1.5〜6mmであることを特徴とする請求項9乃至11いずれかに記載のシール材の製造方法に関する。
【0020】
請求項13に係る発明は、前記編組体に粘土分散液を含浸する工程の前に、前記編組体の一端又は両端を外側に折り返すことを特徴とする請求項9乃至12いずれかに記載のシール材の製造方法に関する。
【0021】
請求項14に係る発明は、前記外側に折り返した部分と折り返していない部分との隙間部分に、前記粘土分散液から得られる粘土フィルムを介装することを特徴とする請求項13記載のシール材の製造方法に関する。
【0022】
請求項15に係る発明は、前記シール材がガスケットであることを特徴とする請求項9乃至14いずれかに記載のシール材の製造方法に関する。
【0023】
請求項16に係る発明は、前記ガスケットが球面ガスケットであることを特徴とする請求項15記載のシール材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る発明によれば、複数本の膨張黒鉛からなる帯状片を1本に重ねて或いは撚り合わせてなる糸状体と、該糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材とからなる紐状体を、複数本編んで得られる編組体を成形してなるシール材であるため、膨張黒鉛が有する耐熱性、可撓性、圧縮復元性、耐アルカリ性、耐水性等の優れた特性を維持しつつ、金属線材により曲げ強度や引張強度等の機械的強度を向上させることができる。
また、膨張黒鉛からなる糸状体の外面を被覆するように金属線材が編まれているため、金属線材に膨張黒鉛シートを積層した場合に比べて、膨張黒鉛と金属線材とが強固に且つ偏り無く一体化される。そのため、膨張黒鉛と金属線材が有する優れた特性をバランス良く確実に発揮することが可能となる。
また、編組体は、その編目に粘土が充填され且つ表面が粘土により被覆されていることにより、編組体を構成する材料の表面が粘土膜で被覆されたものとなる。そのため、非常に高い耐熱性を有するものとなり、400℃超の高温環境下においても長期に亘って高いシール性を維持した状態で使用することが可能となる。しかも、シール材が接触する相手材を腐食させるおそれがない。
また、紐状体を複数本編んで得られる編組体を成形してなるシール材であるため、シール材は切れ目を有さないものとなり、切れ目からの破損が生じないため、耐久性に優れたものとなり、長期間に亘って高いシール性を発揮することができる。
【0025】
請求項2に係る発明によれば、金属線材が、硬金属線材と軟金属線材とからなり、前記硬金属線材のブリネル硬さが90〜240(kg/mm2)であり、前記軟金属線材のブリネル硬さが40〜55(kg/mm2)であることから、硬金属線材が有する優れた機械的強度や耐久性と、軟金属線材が有する優れたなじみ性や柔軟性とを両立させることができる。また、硬金属線材と軟金属線材の本数の比率を変更することにより、機械的強度や耐久性と、なじみ性や柔軟性とのバランスを容易に調整することが可能である。
【0026】
請求項3に係る発明によれば、硬金属線材が窒化処理されたステンレスからなり、軟金属線材が銅からなることにより、窒化処理されたステンレスにより優れた機械的強度が発揮され、銅により優れたなじみ性が発揮される。
【0027】
請求項4に係る発明によれば、糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材の編目のピッチが、長さ方向及び幅方向において夫々1.5〜6mmであることから、金属線材による優れた機械的強度が発揮されるとともに、金属線材の網目に入り込んだ膨張黒鉛により優れたなじみ性が発揮される。
【0028】
請求項5に係る発明によれば、編組体が紐状体の複数本を袋編みして得られた筒状体であることから、編組体を製造する工程を自動化することができる。そのため、生産効率が高くなり、製造コストを低く抑えることができる。
また、製造時に編組体のサイズを容易に自在に変更することができるため、多品種少量生産に対応することが容易である。
【0029】
請求項6に係る発明によれば、編組体の一端又は両端が外側に折り返され、この折り返された部分と折り返されてない部分との隙間部分に粘土が充填されていることにより、編組体の側面において粘土が多層構造となるため、シール材の耐熱性及びシール性を大幅に向上させることができる。
【0030】
請求項7に係る発明によれば、上述した優れた特性を有するガスケットとなる。
【0031】
請求項8に係る発明によれば、上述した優れた特性を有する球面ガスケットとなる。
【0032】
請求項9に係る発明によれば、編組体を形成する工程を自動化することが可能となる。そのため、生産効率が高くなり、製造コストを低く抑えることができる。
また、編組体のサイズを容易に自在に変更することができるため、多品種少量生産に対応することが容易である。
更に、得られたシール材は、膨張黒鉛が有する優れた耐熱性、可撓性、圧縮復元性、耐アルカリ性、耐水性等の特性と、金属線材が有する優れた機械的強度を併せ持つものとなる。
また、膨張黒鉛からなる糸状体の外面を被覆するように金属線材を編んで紐状体を形成することにより、金属線材に膨張黒鉛シートを積層した場合に比べて、膨張黒鉛と金属線材とが強固に且つ偏り無く一体化される。そのため、膨張黒鉛と金属線材が有する優れた特性をバランス良く確実に発揮することが可能となる。
また、編組体に液中に粘土分散液を含浸することにより、編組体を構成する材料の表面が粘土膜で被覆されたものとなる。そのため、非常に高い耐熱性を有するものとなり、400℃超の高温環境下においても長期に亘って使用することが可能となる。しかも、シール材が接触する相手材を腐食させるおそれがない。
また、紐状体を複数本編んで編組体を成形してシール材を形成するため、シール材は切れ目を有さないものとなり、切れ目からの破損が生じないため、優れた耐久性を発揮することができる。
【0033】
請求項10に係る発明によれば、金属線材が、硬金属線材と軟金属線材とからなり、前記硬金属線材のブリネル硬さが90〜240(kg/mm2)であり、前記軟金属線材のブリネル硬さが40〜55(kg/mm2)であることから、硬金属線材が有する優れた機械的強度や耐久性と、軟金属線材が有する優れたなじみ性や柔軟性とを両立させることができる。また、硬金属線材と軟金属線材の本数の比率を変更することにより、機械的強度や耐久性と、なじみ性や柔軟性とのバランスを容易に調整することが可能である。
【0034】
請求項11に係る発明によれば、硬金属線材がステンレスからなり、軟金属線材が銅からなり、金型による成形工程により得られた所定形状のシール材を窒化処理することにより、窒化処理されたステンレスにより優れた機械的強度が発揮され、窒化処理されない銅により優れたなじみ性が発揮される。
【0035】
請求項12に係る発明によれば、糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材の編目のピッチが、長さ方向及び幅方向において夫々1.5〜6mmであることから、金属線材による優れた機械的強度が発揮されるとともに、金属線材の網目に入り込んだ膨張黒鉛により優れたなじみ性が発揮される。
【0036】
請求項13に係る発明によれば、編組体に粘土分散液を含浸する工程の前に、編組体の一端又は両端を外側に折り返すことにより、成形前に編組体の高さを低くすることができ、金型の高さを低くして小型化することが可能となる。
【0037】
請求項14に係る発明によれば、外側に折り返した部分と折り返してない部分との隙間部分に、粘土分散液から得られる粘土フィルムを介装することにより、編組体の側面において粘土が多層構造となるため、シール材の耐熱性及びシール性を大幅に向上させることができる。
【0038】
請求項15に係る発明によれば、上述した優れた特性を有するガスケットを製造することができる。
【0039】
請求項16に係る発明によれば、上述した優れた特性を有する球面ガスケットを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明に係るシール材及びその製造方法の好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
尚、以下の説明においては、本発明に係るシール材として球面ガスケットを例に挙げて説明するが、本発明に係るシール材にはシートガスケット等の他の種類のガスケットや、パッキンやジョイントシート等のガスケット以外のシール材も含まれるものである。
【0041】
先ず、本発明に係るシール材の製造方法について説明する。
第一工程として、図1に示すように、ロールに巻回された長尺の膨張黒鉛シート(1)を帯状に切断して膨張黒鉛からなる細い帯状片(2)を形成する。
【0042】
膨張黒鉛シート(1)は、天然黒鉛、熱分解黒鉛、キッシュ黒鉛等の黒鉛粉末を、濃硫酸、濃硝酸等と反応させて一旦層間化合物とした後、水洗などによって残留分解させて残留化合物とし、これを急熱して膨張させて得られる膨張黒鉛を、圧延ロールにより成形して可撓性を有するシート状とする方法等の公知の製法により得ることができる。
【0043】
膨張黒鉛シート(1)の厚みは、特に限定されるものではないが、0.1〜0.6mm程度のものが好適に用いられる。
これは、厚みが0.1mm未満であると充分な強度が得られずに後工程の編み加工時に帯状片(2)が破断するおそれがあり、厚みが0.6mmを超えると編み加工が良好に行えないおそれがあり、いずれの場合も好ましくないためである。
【0044】
膨張黒鉛シート(1)の密度についても、特に限定されるものではないが、0.70〜2.0g/cm3程度のものが好適に用いられる。
これは、密度が0.70g/cm3未満であると熱伝導性や強度が低下するおそれがあり、2.0g/cm3を超えると可撓性が低下するおそれがあるためである。
【0045】
膨張黒鉛シート(1)を切断して得られる帯状片(2)の幅は2.0〜8.0mmとすることが好ましい。
これは、幅が2.0mm未満であると充分な強度が得られずに後工程の編み加工時に帯状片(2)が破断するおそれがあり、幅が8.0mmを超えると編み加工が良好に行えないおそれがあり、いずれの場合も好ましくないためである。
【0046】
第二工程では、図2に示すように、第一工程で得られた帯状片(2)の複数本(図示例では2本)からなる糸状体(20)を中心とし、この糸状体(20)の外面を被覆するように金属線材(3)を編んで紐状体(4)を形成する。
糸状体(20)は、複数本の帯状片(2)を撚り合わせて撚糸としたものでもよいし、撚らずに単に重ねたものでもよい。
図示例では、糸状体(20)が2本の帯状片(2)からなり、糸状体(20)を被覆する金属線材(3)が1本である場合を示しているが、帯状片(2)は3本以上としてもよく、金属線材(3)は2本以上としてもよい。
帯状片(2)と金属線材(3)との本数の比率を変更することにより、膨張黒鉛からなる帯状片(2)により発揮される特性と金属線材(3)により発揮される特性とのバランスを調整することができ、使用用途に応じた特性を有するシール材を得ることができる。
【0047】
本発明においては、金属線材(3)として硬金属線材と軟金属線材の2種類の金属線材を使用することが好ましい。この場合、2種類の金属線材を重ねて或いは撚り合わせて1本とし、これを糸状体(20)の外面を被覆する編み糸として使用すればよい。
硬金属線材としてはブリネル硬さが90〜240(kg/mm2)のものが用いられる。
このような硬さを有する金属材料は、高温下における引張強度等の機械的強度が高く、繰り返し荷重に対する疲れ限度も高い。また、このような硬さを有する金属は、高温下においてクリープが生じにくい。
従って、硬金属線材は、シール材の機械的強度を向上させるとともに、高温下における耐クリープ性を高めて、シール材に応力緩和が生じないようにすることができる。
【0048】
硬金属線材としては、例えば、ステンレス、インコネル等の炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金を挙げることができる。
硬金属線材の直径は、0.05〜0.35mmとすることが好ましい。直径が0.05mm未満であると編み加工する際に破断するおそれがあり、0.35mmを超えると編み加工がしにくくなり、いずれの場合も好ましくないためである。
【0049】
軟金属線材としてはブリネル硬さが40〜55(kg/mm2)のものが用いられる。
このような硬さを有する金属材料は、シール材が接触する相手材料より硬度が低いため、シール材が相手材料に対して相対的に変位した場合に相手材料に傷を付けることがない。また、このような硬さを有する金属材料は、柔軟性に優れ、塑性加工を容易に行うことができる。
従って、軟金属線材の占める割合が多いほど、第二工程における編み加工を容易に行うことができる。また、編み加工して得られた紐状体(4)から得られたものを加圧成形してシール材とする際、表面及び内部が緻密に詰んだシール材とすることができる。
また、このような硬さを有する金属材料は、相手材料に対するなじみ性が良好である。そのため、軟金属線材の占める割合が多いほど、シール材のシール性を向上させることができる。
更に、このような硬さを有する金属材料は、400〜850℃程度の温度下では変質しにくい。従って、シール材のシール性を高温下において安定させることができる。
【0050】
軟金属線材としては、例えば、銅、モネルメタル等の銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金を挙げることができる。
軟金属線材の直径は、0.05〜0.35mmとすることが好ましい。直径が0.05mm未満であると編み加工する際に破断するおそれがあり、0.35mmを超えると編み加工がしにくくなり、いずれの場合も好ましくないためである。
【0051】
金属線材(3)として硬金属線材と軟金属線材の2種類の金属線材を使用する場合、両者の本数の比は1:1〜0.3とすることが好ましい。これを比の値(硬金属線材の本数/軟金属線材の本数)で表すと1〜約3.3となる。
比の値が1未満であると紐状体(4)の機械的強度が低くなり、逆に3.3を超えると編み加工しにくくなる上に、紐状体のなじみ性が低下してシール材のシール性が低下するおそれがあるため、いずれの場合もあまり好ましくない。
【0052】
糸状体(20)の外面を被覆するように編まれる金属線材(3)の編目のピッチは、長さ方向及び幅方向において夫々1.5〜6mmとすることが好ましい。尚、図3は編目のピッチの長さ方向(L)と幅方向(W)の説明図である。
金属線材(3)の編目のピッチが1.5mm未満であると、網目に膨張黒鉛が入り込みにくいためにシール材のなじみ性やシール性が充分に得られず、一方、6mmを超えると、シール材の強度が低下するため、いずれの場合も好ましくない。
【0053】
金属線材(3)の編み方(編み組織)については、経編でも緯編でもよいが、強度の点から緯編が好ましい。
緯編とする場合、その具体的な形態は特に限定されず、平編、ゴム編、パール編、タック編、浮き編、片畦編、両畦編、両面編、レース編、添糸編等の形態を採用することができる。
【0054】
第二工程において形成される紐状体(4)は、膨張黒鉛からなる糸状体(20)と金属線材(3)とから形成されているため、金属線材のみから形成されるものに比べてなじみ性が大幅に向上する。また、後工程(第六工程)において紐状体(4)から得られた編組体を加圧成形してシール材とする際、膨張黒鉛が金属線材(3)の隙間に入り込むため、表面及び内部が非常に緻密に詰んだシール材とすることができる。
このように、紐状体(4)に膨張黒鉛からなる帯状片(2)が用いられていることにより、金属線材のみが用いられている場合に比べてシール材のシール性を大きく向上させることが可能となる。
【0055】
第二工程において、膨張黒鉛からなる帯状片(2)と金属線材(3)との本数の比は、1:0.5〜5.0とすることが好ましい。これを比の値(帯状片の本数/金属線材の本数)で表すと2〜0.2となる。
比の値が2を超えると、シール材の機械的強度が低下し且つ摩擦が高くなるおそれがあり、逆に0.2未満であると、なじみ性が低下してシール材のシール性が低下するおそれがあり、いずれの場合もあまり好ましくない。
【0056】
第二工程で得られた紐状体(4)は、第三工程に供する前に、ダイスに通すことにより周囲から加圧して細くする工程を経ることが好ましい。また、この工程において紐状体(4)に撚りを加えても良い。
第三工程前にこのような工程を経ることにより、紐状体(4)を構成する膨張黒鉛からなる帯状片(2)と金属線材(3)とを強固に一体化することができる。
【0057】
第三工程では、図4に示すように、第二工程で得られた紐状体(4)の複数本を袋編みした後、所定長さに切断することにより、図5に示すような円筒状の編組体(5)を形成する。袋編みに際しては、公知の袋編み機を使用することができる。
編組体(5)の直径は、最終製品となるシール材の寸法に応じて適宜設定すればよく、袋編み機の設定により容易且つ自在に変更することができるが、例えばφ15〜200mmとすることができる。
編組体(5)の高さ(図5における上下方向長さ)についても、最終製品となるシール材の寸法に応じて適宜設定すればよいが、例えば15〜200mmとすることができる。尚、シール材は編組体(5)を高さ方向に加圧成形することにより得るため、編組体(5)の高さは、最終製品となるシール材の高さよりも高いものである。
【0058】
袋編みに使用される紐状体(4)の本数は特に限定されないが、6〜50本とすることが好ましい。これは6本未満であると編組体(5)の目が粗くなって強度が低下し、50本を超えると編組みが難しくなる上にコスト高となり、いずれの場合も好ましくないからである。
【0059】
上記した第二工程と第三工程は、いずれも連続的な加工が可能であって、自動化された工程とすることができるため、生産効率が高くなり、製造コストを低く抑えることができる。
また、製造時に編組体のサイズを容易に自在に変更することができるため、多品種少量生産に対応することが容易である。
【0060】
第四工程では、第三工程で得られた編組体(5)に、液中に粘土粒子が分散された粘土分散液(6)を含浸する。
粘土粒子が分散される液体としては、水、アルコール、エーテル、酢酸エチル、トルエン等を例示することができる。
粘土分散液の含浸方法は、図6に示すように編組体(5)を粘土分散液(6)に浸漬する方法でもよいし、編組体(5)に粘土分散液(6)を塗布したり吹き付けたりする方法でもよく、特に限定されない。
【0061】
粘土としては、天然粘土、合成粘土、変性粘土のうちの一種以上を用いることができる。
より具体的には、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイト、ノントロナイトのうちの一種以上が好適に用いられる。
【0062】
変性粘土に用いられる粘土としては、天然或いは合成物、好適には、例えば、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイトのうちの一種以上、更に好適には、それらの天然或いは合成物のいずれか或いはそれらの混合物が例示される。
変性粘土に用いられる有機カチオンとしては、第四級アンモニウムカチオン或いは第四級ホスホニウムカチオンを含むものが例示される。その際、変性粘土における有機カチオン組成を30重量%未満とする構成を採用することができる。
また、変性粘土にシリル化剤を反応させたものを使用することもできる。この場合、粘土とシリル化剤の総重量に対するシリル化剤組成を30%重量未満とする構成を採用することができる。
【0063】
変性粘土に含まれる有機物としては、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジウムカチオンが挙げられる。第四級アンモニウムカチオンとしては、特に限定されるものではないが、ジメチルオクタデシルタイプ、ジメチルステアリルベンジルタイプ、トリメチルステアリルタイプが例示される。また、類似の有機物として、第四級ホスホニウムカチオンが例示される。これらの有機物は、原料粘土のイオン交換によって粘土に導入される。
このイオン交換は、例えば原料粘土を、過剰な有機物を溶解した水に分散し、一定時間攪拌し、遠心分離或いは濾過により固液分離し、水により洗浄を繰り返すことにより行われる。これらのイオン交換プロセスは1回のみでもよいし、複数回繰り返してもよい。複数回繰り返すことにより、粘土に含まれるナトリウム、カルシウム等の交換性イオンが有機物によって交換される比率が高くなる。用いる有機物及び交換比率によって変性粘土の極性にバリエーションを持たせることができ、異なる極性の変性粘土はそれぞれ好適な添加物及び好適な溶剤が異なる。このとき、第四級アンモニウムカチオンの導入に用いられる試薬として、第四級アンモニウムカチオン塩化物が一般的に用いられる。第四級アンモニウムカチオンの導入と共に混入する塩素は水洗浄により薄められるが、水洗浄を繰り返してもその濃度を150ppm以下にすることは困難である。しかし、エレクトロニクス用途等では塩素の混入を著しく嫌うものがあり、そのため塩素濃度を150ppm以下に抑えなければならないことがある。そのような場合は、第四級アンモニウム塩化物を用いず、塩素を含まない他の試薬、例えば第四級アンモニウム臭化物、第四級アンモニウムカチオン水酸化物を用いなければならない。
【0064】
変性粘土に含まれるシリル化剤は、特に限定されるものではないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランを例示することができる。
また、粘土へのシリル化剤の導入方法についても特に限定されるものではないが、例えば、原料粘土と、原料粘土に対して2重量%のシリル化剤を混合し、それらをボールミルにより一時間ミルする方法を例示することができる。
【0065】
本発明で用いられる変性粘土は、その処理方法によって種々の極性のものを作製することが可能であり、その極性により粘土分散液を作製するのに適した溶剤が異なる。粘土分散液を作製する際の溶剤としては、アルコール、エーテル、酢酸エチル、トルエン等を例示することができる。
【0066】
粘土分散液(6)は、天然もしくは合成スメクタイト、又はこれらの混合物からなる粘土粒子を、上述した水や有機溶媒等の液体中に均一に分散させることにより得ることができる。
粘土中に含まれる固形分の割合は3〜15重量%であることが好ましい。また、粘土分散液の濃度は、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜3重量%とされる。更に、必要に応じて添加物の1種以上を粘土分散液に添加して、液中に均一分散又は溶解させることができる。
【0067】
添加物としては、セルロイド、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ユリア樹脂、酢酸セルロース、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリウレタン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル、ケイ素樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリロニトリル−ブダジエン−スチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタラート、ポリエーテルスルホン、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミドのうちの1種以上を用いることができる。
【0068】
更に、粘土分散液(6)に、赤燐、五酸化燐等の燐や、第一燐酸リチウム、第二燐酸リチウム、第一燐酸カルシウム、第二燐酸カルシウム、第一燐酸アルミニウム、第二燐酸アルミニウム等の燐酸塩のうちの1種以上を添加することもできる。
これらの燐及び/又は燐酸塩を粘土分散液に添加することにより、高温条件下における膨張黒鉛の酸化消失の防止効果に優れたものとなるとともに、粘土の存在によって燐を含むことによるシール材の相手材(配管等)の腐食を防止することも可能となる。
【0069】
第五工程では、第四工程において得られた粘土分散液を含浸した編組体を乾燥する。
乾燥後の編組体は、図7に示すように、編組体を構成する材料(線材)の表面が粘土膜(7)で被覆されたものとなる。また、網目に粘土が充填されたものとなる。
【0070】
第六工程では、乾燥後の編組体を図8に示すように金型(8)の内部に収容して高さ方向(矢印方向)に加圧成形し、図9に示すような所定形状のシール材(9)とする。図9(a)は外観図、(b)は断面図である。
金型(8)は、ガスケット等のシール材の成形に使用される公知の構造のものであって、最終製品となるシール材の形状に合わせた内部形状を有するものが使用される。
【0071】
本発明においては、第六工程における加圧成形の後、得られた成形体を窒化処理することができる。
この場合、金属線材(3)として、ステンレス(硬金属線材)と銅(軟金属線材)の2種類の金属線材を使用することが好ましい。また、窒化処理の温度は、550〜650℃とすることが好ましい。
このような2種類の金属線材を含むシール材を窒化処理した場合、ステンレスが窒化処理されることでシール材の機械的強度が大きく向上する一方、銅は窒化処理されずに柔らかい状態を維持するため、シール材のなじみ性は良好なものとなる。
また、窒化処理は、酸素不存在下においてなされるため、窒化処理工程における加熱によって膨張黒鉛の酸化消失が生じることはない。
窒化処理の方法は特に限定されず、ガス窒化法、塩浴窒化法、タフトライド法、ガス軟窒化法、プラズマ窒化法などの公知の方法を採用することができる。
このうち、窒素ガスと水素ガスの混合ガスを使用するプラズマ窒化法は、ステンレスの窒化処理に適している。
【0072】
最終製品として得られるシール材(9)は本発明に係るシール材であり、図9では球面ガスケットが示されている。しかし、本発明に係るシール材が球面ガスケットに限定されないことは上述した通りである。
【0073】
上述した方法により得られた本発明に係るシール材は、膨張黒鉛が有する優れた耐熱性、可撓性、圧縮復元性、耐アルカリ性、耐水性と、金属線材が有する優れた機械的強度を併せ持つものとなる。
また、膨張黒鉛からなる糸状体の外面を被覆するように金属線材を編んで紐状体を形成することにより、金属線材に膨張黒鉛シートを積層した場合に比べて、膨張黒鉛と金属線材とが強固に且つ偏り無く一体化される。そのため、膨張黒鉛と金属線材が有する優れた特性をバランス良く確実に発揮することが可能となる。
また、編組体に粘土分散液を含浸することにより、編組体は、その編目に粘土が充填され且つ表面が粘土により被覆されたものとなる。そのため、非常に高い耐熱性(約800〜1000℃)を有するものとなり、400℃超の高温環境下においても長期に亘って使用することが可能となる。しかも、シール材が接触する相手材を腐食させるおそれがない。
また、紐状体を複数本編んで編組体を成形してシール材を形成するため、シール材は切れ目を有さないものとなり、切れ目からの破損が生じないため、優れた耐久性を発揮することができる。
【0074】
更に、金属線材として硬金属線材と軟金属線材とを使用した場合、硬金属線材が有する優れた機械的強度や耐久性と、軟金属線材が有する優れたなじみ性や柔軟性とを併せ持つことができる。また、硬金属線材と軟金属線材の本数の比率を変更することにより、機械的強度や耐久性と、なじみ性や柔軟性とのバランスを容易に調整することが可能である。
【0075】
本発明に係る製造方法においては、上述した第三工程と第四工程の間に、第三工程で得られた編組体(5)の一端又は両端を外側に折り返す工程(以下、折り返し工程という)を経ることができる。
図10は、折り返し工程により、編組体(5)の一端又は両端が外側に折り返された状態を示す図であり、(a)は上端が折り返された状態の図、(b)は下端が折り返された状態の図、(c)は両端(上下端)が折り返された状態の図である。
本発明に係る製造方法では、このように筒状の編組体の一端又は他端を折り返すことにより成形前に編組体の高さを低く調整することが可能である。つまり、折り返し部分(10)の長さ(L)を変更することにより、編組体の高さを調整することが可能である。
このように、折り返し工程を経ることにより、後工程(第六工程)の成形工程前に編組体の高さを低くすることができる。
これにより、第六工程において用いられる金型(8)の高さを低くして小型化することが可能となる。
【0076】
また、本発明に係る製造方法においては、上述した折り返し工程の後に、折り返し部分(10)と折り返されていない部分との隙間部分に粘土を充填する工程(以下、粘土充填工程という)を経ることができる。
粘土充填工程では、上記隙間部分に、上述した粘土分散液から得られる粘土フィルム(11)を介装する(図11参照)。
介装される粘土フィルム(11)の枚数は、特に限定されず、1枚でもよいし複数枚でもよい。
【0077】
粘土フィルム(11)は、以下の方法により製造することができる。
先ず、上述した方法により粘土分散液を調製する。
次いで、粘土分散液を水平に静置して、粘土粒子をゆっくりと沈積させるとともに、分散媒である液体と粘土粒子を固液分離手段によって分離することにより、粘土薄膜を成形する。
最後に、粘土薄膜を110〜300℃の温度条件下で乾燥することにより、粘土フィルム(11)が得られる。
【0078】
上記製法における固液分離手段としては、遠心分離、濾過、真空乾燥、凍結真空乾燥、加熱蒸発のいずれか、もしくはこれらの手段の組み合わせが採用される。
これらの方法のうち、例えば、加熱蒸発法を用いる場合、真空引きにより予め脱気した粘土分散液を平坦なトレイに注ぎ、水平を保った状態で、強制送風式オーブン中で30〜70℃、好ましくは40〜50℃の温度条件下で、3時間から半日程度、好ましくは3〜5時間乾燥させることにより、粘土フィルムを得る。
【0079】
このようにして製造された粘土フィルムは、自立膜として利用可能な強度を有し、粘土粒子の積層が高度に配向されたものとなる。
粘土粒子の積層が高度に配向されるとは、粘土粒子の単位構造層(厚さ約1nm)を、層面の向きを同一にして重ね、層面に垂直な方向に高い周期性をもたせることを意味している。このような粘土粒子の配向を得るためには、希薄で均一な粘土分散液を水平に静置し、粘土粒子をゆっくりと沈積させるとともに、例えば、分散媒である液体をゆっくりと蒸発させて膜状に形成する必要がある。
【0080】
このように得られた粘土フィルムは、膜厚が3〜100μm、好適には3〜30μmであり、ガスバリア性能は、厚さ30μmで酸素透過度0.1cc/m2・24hr・atm未満、水素透過度0.1cc/m2・24hr・atm未満である。ヘリウム、水素、酸素、窒素、空気の室温におけるガス透過係数は3.2×10−11cm2s−1cmHg−1未満であって、1000℃で24時間加熱処理後もガスバリア性の低下はみられない。
また、遮水性は、遮水係数が2×10−11cm/s以下であり、光透過性は、可視光(500nm)の透過性が75%以上であり、面積は100×40cm以上に大面積化することが可能であり、高耐熱性を有している。
【0081】
この粘土フィルムは、粘土粒子の積層が高度に配向し、ピンホールが存在しない。また、可撓性に優れ、250℃以上600℃までの高温においても構造変化しないものである。更には、自立膜として用いることが可能であり、ピンホールの存在しない緻密な材料であり、かつ気体・液体のバリアー性に優れたものである。
【0082】
このような粘土フィルムは、上述したように、粘土充填工程において折り返し工程により形成された編組体(5)の隙間部分に介装される。その後、この編組体(5)に粘土分散液(6)を含浸して乾燥させる。
粘土充填工程を経て得られた編組体は、編組体の側面において粘土が多層構造となる。つまり、粘土層が編組体(5)の内面側と外面側と隙間部分の三層に形成される。また、膨張黒鉛と粘土フィルムとの相性及びなじみ性は非常に良好である。
そのため、この編組体を成形して得られるシール材の耐熱性及びシール性を大幅に向上させることが可能となる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明に係るシール材の実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例サンプルの作製>
上述した第一乃至第六工程を経ることにより、図9に示すような球面ガスケット(外径φ70mm、内径φ53.5mm、高さ16mm)を製作し、これを実施例の球面ガスケットとした。尚、膨張黒鉛シートとしては厚み0.38mmのものを使用し、帯状片の幅は3mmとした。金属線材としては、直径0.15mmのSUS304(非窒化物)を使用した。金属線材の網目(図3参照)のピッチは、長さ方向(L)が4.5mm、幅方向(W)が3mmとし、第三工程の袋編みでは24本の紐状体を使用した。
一方、膨張黒鉛のみを材料として実施例と同じ形状をもつ球面ガスケットを製作し、これらを比較例の球面ガスケットとした。
【0084】
<耐熱シール性試験>
実施例の球面ガスケット(9)を、図12に示すように、2本のパイプ(ステンレス製、外径φ53mm)の端部近傍に夫々形成されたフランジ(ステンレス製)の間に介装して、スプリングを介してボルトにより荷重588.4N(60kgf)で締め付け、フランジ球面部の温度が700℃になるようにパイプ内部に詰めたSUSウール(12)をガスバーナー(13)により24時間加熱処理した後、フランジ球面部の可動部分を上下に6mmずつ繰り返し10回摺動させ、その後、内圧(空気圧)19.6kPa(0.2kgf/cm2)を加えたときの空気漏れ量を測定した。
その結果、空気漏れ量は13.9ml/minであり、自動車用排気管部品への適用基準値500ml/30secを大幅に下回った。
【0085】
<耐熱性試験>
実施例及び比較例の球面ガスケットを電気炉中にて600℃で24時間加熱し、加熱前後の重量を測定することにより、重量減少率を算出した。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示される如く、実施例の球面ガスケットの重量減少率が11%であったのに対して、比較例の球面ガスケットの重量減少率は24%であった。この結果から、本発明に係る球面ガスケットが従来のものよりも高い耐熱性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、発電所や化学プラント等の配管の接合部等に用いられるガスケット、パッキン、ジョイントシート等のシール材として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係るシール材の製造方法の第一工程の説明図である。
【図2】本発明に係るシール材の製造方法の第二工程の説明図である。
【図3】編目のピッチの長さ方向(L)と幅方向(W)の説明図である。
【図4】本発明に係るシール材の製造方法の第三工程の説明図である。
【図5】第三工程により得られる編組体を示す図である。
【図6】本発明に係るシール材の製造方法の第四工程の説明図である。
【図7】第五工程後の編組体を示す図である。
【図8】本発明に係るシール材の製造方法の第六工程の説明図である。
【図9】本発明に係るシール材の一例を示す図であり、(a)は外観図、(b)は断面図である。
【図10】折り返し工程により、編組体の一端又は両端が外側に折り返された状態を示す図であり、(a)は上端が折り返された状態の図、(b)は下端が折り返された状態の図、(c)は両端(上下端)が折り返された状態の図である。
【図11】粘土充填工程を経た編組体を示す断面図である。
【図12】本発明に係る球面ガスケットの耐熱シール性試験方法を説明する図である。
【図13】従来のシール材の加圧成形前の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 膨張黒鉛シート
2 膨張黒鉛シートからなる帯状片
3 金属線材
4 紐状体
5 編組体
6 粘土分散液
7 粘土膜
8 金型
9 シール材(球面ガスケット)
10 折り返し部分
11 粘土フィルム
20 糸状体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の膨張黒鉛からなる帯状片を1本に重ねて或いは撚り合わせてなる糸状体と、該糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材とからなる紐状体を、複数本編んで得られる編組体を成形してなるシール材であって、
前記編組体は、その編目に粘土が充填され且つ表面が粘土により被覆されていることを特徴とするシール材。
【請求項2】
前記金属線材が、硬金属線材と軟金属線材とからなり、
前記硬金属線材のブリネル硬さが90〜240(kg/mm2)であり、前記軟金属線材のブリネル硬さが40〜55(kg/mm2)であることを特徴とする請求項1記載のシール材。
【請求項3】
前記硬金属線材が窒化処理されたステンレスからなり、前記軟金属線材が銅からなることを特徴とする請求項2記載のシール材。
【請求項4】
前記糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材の編目のピッチが、長さ方向及び幅方向において夫々1.5〜6mmであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のシール材。
【請求項5】
前記編組体が、前記紐状体の複数本を袋編みして得られた筒状体であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のシール材。
【請求項6】
前記編組体の一端又は両端が外側に折り返され、この折り返された部分と折り返されていない部分との隙間部分に粘土が充填されていることを特徴とする請求項5記載のシール材。
【請求項7】
ガスケットであることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載のシール材。
【請求項8】
球面ガスケットであることを特徴とする請求項7記載のシール材。
【請求項9】
膨張黒鉛シートを細い帯状に切断して膨張黒鉛からなる帯状片を形成し、
該帯状片の複数本を1本に重ねた或いは撚り合わせた糸状体の外面を被覆するように金属線材を編んで紐状体を形成し、
該紐状体の複数本を袋編みして筒状の編組体を形成し、
該編組体に、液中に粘土粒子が分散された粘土分散液を含浸し、
該粘土分散液を含浸した編組体を乾燥し、
該乾燥後の編組体を金型により成形して所定形状のシール材とする
ことを特徴とするシール材の製造方法。
【請求項10】
前記金属線材が、硬金属線材と軟金属線材とからなり、
前記硬金属線材のブリネル硬さが90〜240(kg/mm2)であり、前記軟金属線材のブリネル硬さが40〜55(kg/mm2)であることを特徴とする請求項9記載のシール材の製造方法。
【請求項11】
前記硬金属線材がステンレスからなり、前記軟金属線材が銅からなり、
前記金型による成形工程により得られた所定形状のシール材を窒化処理することを特徴とする請求項10記載のシール材の製造方法。
【請求項12】
前記糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材の編目のピッチが、長さ方向及び幅方向において夫々1.5〜6mmであることを特徴とする請求項9乃至11いずれかに記載のシール材の製造方法。
【請求項13】
前記編組体に粘土分散液を含浸する工程の前に、
前記編組体の一端又は両端を外側に折り返すことを特徴とする請求項9乃至12いずれかに記載のシール材の製造方法。
【請求項14】
前記外側に折り返した部分と折り返していない部分との隙間部分に、前記粘土分散液から得られる粘土フィルムを介装することを特徴とする請求項13記載のシール材の製造方法。
【請求項15】
前記シール材がガスケットであることを特徴とする請求項9乃至14いずれかに記載のシール材の製造方法。
【請求項16】
前記ガスケットが球面ガスケットであることを特徴とする請求項15記載のシール材の製造方法。
【請求項1】
複数本の膨張黒鉛からなる帯状片を1本に重ねて或いは撚り合わせてなる糸状体と、該糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材とからなる紐状体を、複数本編んで得られる編組体を成形してなるシール材であって、
前記編組体は、その編目に粘土が充填され且つ表面が粘土により被覆されていることを特徴とするシール材。
【請求項2】
前記金属線材が、硬金属線材と軟金属線材とからなり、
前記硬金属線材のブリネル硬さが90〜240(kg/mm2)であり、前記軟金属線材のブリネル硬さが40〜55(kg/mm2)であることを特徴とする請求項1記載のシール材。
【請求項3】
前記硬金属線材が窒化処理されたステンレスからなり、前記軟金属線材が銅からなることを特徴とする請求項2記載のシール材。
【請求項4】
前記糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材の編目のピッチが、長さ方向及び幅方向において夫々1.5〜6mmであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のシール材。
【請求項5】
前記編組体が、前記紐状体の複数本を袋編みして得られた筒状体であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のシール材。
【請求項6】
前記編組体の一端又は両端が外側に折り返され、この折り返された部分と折り返されていない部分との隙間部分に粘土が充填されていることを特徴とする請求項5記載のシール材。
【請求項7】
ガスケットであることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載のシール材。
【請求項8】
球面ガスケットであることを特徴とする請求項7記載のシール材。
【請求項9】
膨張黒鉛シートを細い帯状に切断して膨張黒鉛からなる帯状片を形成し、
該帯状片の複数本を1本に重ねた或いは撚り合わせた糸状体の外面を被覆するように金属線材を編んで紐状体を形成し、
該紐状体の複数本を袋編みして筒状の編組体を形成し、
該編組体に、液中に粘土粒子が分散された粘土分散液を含浸し、
該粘土分散液を含浸した編組体を乾燥し、
該乾燥後の編組体を金型により成形して所定形状のシール材とする
ことを特徴とするシール材の製造方法。
【請求項10】
前記金属線材が、硬金属線材と軟金属線材とからなり、
前記硬金属線材のブリネル硬さが90〜240(kg/mm2)であり、前記軟金属線材のブリネル硬さが40〜55(kg/mm2)であることを特徴とする請求項9記載のシール材の製造方法。
【請求項11】
前記硬金属線材がステンレスからなり、前記軟金属線材が銅からなり、
前記金型による成形工程により得られた所定形状のシール材を窒化処理することを特徴とする請求項10記載のシール材の製造方法。
【請求項12】
前記糸状体の外面を被覆するように編まれた金属線材の編目のピッチが、長さ方向及び幅方向において夫々1.5〜6mmであることを特徴とする請求項9乃至11いずれかに記載のシール材の製造方法。
【請求項13】
前記編組体に粘土分散液を含浸する工程の前に、
前記編組体の一端又は両端を外側に折り返すことを特徴とする請求項9乃至12いずれかに記載のシール材の製造方法。
【請求項14】
前記外側に折り返した部分と折り返していない部分との隙間部分に、前記粘土分散液から得られる粘土フィルムを介装することを特徴とする請求項13記載のシール材の製造方法。
【請求項15】
前記シール材がガスケットであることを特徴とする請求項9乃至14いずれかに記載のシール材の製造方法。
【請求項16】
前記ガスケットが球面ガスケットであることを特徴とする請求項15記載のシール材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−71373(P2010−71373A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238597(P2008−238597)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(390015679)ジャパンマテックス株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(390015679)ジャパンマテックス株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
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