シール材
【課題】電磁切換弁に好適なシール材を提供する。
【解決手段】往復動するスプールの外周面に形成された凹溝に装着されるシール材に於て、凹溝の奥部に対応する基部8と、基部8からラジアル外方向へ立設された胴部11と、胴部11のラジアル方向外端に連設された肩部12と、肩部12からラジアル外方向へ突出状の小頭部13とを、備えた横断面形状であって、基部8,胴部11,肩部12,小頭部13の各幅寸法の関係式が成立し、さらに、基部8と胴部11の段付部9の横断面形状は、アキシャル方向直線状又はアキシャル外方下傾状若しくはアール形状としたことを特徴とするシール材。基部8と胴部11と肩部12と小頭部13とを一体に有し、横断面が縦長形状であって、基部8の幅寸法を十分に大きく設定する。
【解決手段】往復動するスプールの外周面に形成された凹溝に装着されるシール材に於て、凹溝の奥部に対応する基部8と、基部8からラジアル外方向へ立設された胴部11と、胴部11のラジアル方向外端に連設された肩部12と、肩部12からラジアル外方向へ突出状の小頭部13とを、備えた横断面形状であって、基部8,胴部11,肩部12,小頭部13の各幅寸法の関係式が成立し、さらに、基部8と胴部11の段付部9の横断面形状は、アキシャル方向直線状又はアキシャル外方下傾状若しくはアール形状としたことを特徴とするシール材。基部8と胴部11と肩部12と小頭部13とを一体に有し、横断面が縦長形状であって、基部8の幅寸法を十分に大きく設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシール材に係り、特に、電磁弁等の方向切換弁のスプールに凹設された凹溝に装着して使用されるシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
方向切換弁は、バルブボディー内のスプール孔にスプールを摺動自在に挿入して、スプールを軸心方向に移動させて、バルブボディーの流体流入ポート,流体吐出ポート等を切り換えるのに広く使用されている弁である。
【0003】
図17に拡大図にて例示するように、スプール41の外周面に形成されたシール用凹溝42内に、ゴム等の弾性材製シール材43が嵌着(装着)され、バルブボディー44のスプール孔45の内周面の内、内径寸法Dが減少してラップ仕上げ等の研磨加工が施された摺接孔部(ランド部)46に、軸心方向Jに摺動自在に接触して、密封作用を行う。
【0004】
バルブホディー44のスプール孔45は、上記摺接孔部(ランド部)46と、勾配面47を介して大径に形成され(図外の)ポート部が開設される大径孔部48と、を有し、図17(A)に示すようにシール材43が大径孔部48に位置するときは、流体がスプール41とスプール孔45内面との間を通過可能(流れ得る)状態にある。
【0005】
そして、図17(B)のように、スプール41が矢印Kにて示すように移動すると、シール材43は勾配面47を越えて直ちに摺接孔部(ランド部)46に対応する密封位置に切り換わり、(図外の)隣り合うポートとポートの間の流体の流れが遮断される。
【0006】
ところで、従来、このような切換弁のスプール41に使用されてきたシール材43は、図18に例示するように横断面形状が、同図(a)に示す円形のOリングや、同図(b)及び図17に示す長円形シール材43(特許文献1参照)、あるいは、図18(c)に示した2連珠形シール材、同図(d)に示した特殊な小凹窪部49,49を有する略矩形のもの(特許文献2参照)が、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−170743号公報
【特許文献2】実開平5− 79143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来の図18(a)〜(d)のいずれの横断面形状のシール材も、次のような問題がある。即ち、図17(A)から(B)へ矢印K方向にスプール41が移動し、シール材43が、しだいに縮径する勾配面47と、スプール41外周部との間に、挟まれて噛み込みを生じ、同図(C)に示すような「欠け」等の損傷を受けるという問題、及び、上記噛み込みによってスプール41が正常に矢印J方向に作動しなくなるという問題がある。
【0009】
本発明者等は、従来のシール材43が何故に噛み込みを生じ易いかという疑問に関して多大な試行錯誤と実験を繰り返した結果、次の事実を究明した。つまり、図17(A)に示すように、切換弁の切換途中では瞬間的に激しい流体の流れF1 が発生し、シール材43に矢印M方向の揚力が発生し、このままで同図(B)のように勾配面47に到達して、勾配面47とスプール41の外周部との間でシール材43が挟まれるということである。図18の他のシール材(a)(c)(d)についても、同様の現象が発生し、全てのものが「欠け」等の損傷50を早期に発生したり、スプール作動不良を生じる。
そこで、本発明は、このような噛み込みを防止して、耐久性を向上し、スプールの作動不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、往復動するスプールの外周面に形成された凹溝に装着されるシール材に於て、上記凹溝の奥部に対応する基部と、該基部からラジアル外方向へ立設された胴部と、該胴部のラジアル方向外端に連設された肩部と、該肩部からラジアル外方向へ突出状の小頭部とを、備えた横断面形状であって、上記基部,胴部,肩部,小頭部の各幅寸法を、W0 ,W1 ,W2 ,W3 とすると、W1 <W2 ≦W0 ,W3 <W2 ≦W0 なる関係式が成立し、さらに、上記基部と胴部の段付部の横断面形状は、アキシャル方向直線状又はアキシャル外方下傾状若しくはアール形状としたものである。
【0011】
また、上記肩部は、上記胴部に対向する内周側段付部の横断面形状が円弧凸状又はアキシャル外方上傾状に形成したものである。
また、上記基部の内周面の横断面形状が、上記基部の幅寸法の50%以上の半径を有する円弧凸状とした。
また、上記基部の内周面の横断面形状が、略直線状とした。
また、横断面における全体高さ寸法をH0 とすると、 1.5・W0 ≦H0 ≦3・W0 なる関係式が成立して、横断面形状がラジアル方向に細長く構成されている。
【0012】
また、横断面における上記胴部の高さ寸法をH1 とし、全体高さ寸法をH0 とすると、 0.2・H0 ≦H1 ≦0.35・H0 かつ 1.5・W0 ≦H0 ≦3・W0 なる関係式が成立して、横断面形状がラジアル方向に細長く構成されている。
また、上記各寸法W0 ,W1 ,W2 ,W3 の間に、次式が成立する。
0.5・W0 ≦W1 ≦ 0.7・W0
0.9・W0 ≦W2 ≦ W0
0.5・W0 ≦W3 ≦ 0.8・W0
また、上記胴部と基部と肩部によって、アキシャル外方向に開口状の浅皿型凹溝部が包囲形成されていると共に、シール軸心方向から見て、多数本の放射枝状のリブを上記浅皿型凹溝部に一体に形成したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシール材によれば、所期目的を達成して、シール材外周側の噛み込みが発生せず、長寿命化を達成できる。そして、電磁方向切換弁等のスプールの円滑な切換作動を長期間に渡って、実現できる。さらに、従来のシール材の「欠け」によって、発生する流体機器の作動部(スプールを含む)の不良発生を、有効に防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す拡大断面図である。
【図2】第1の実施の形態の寸法と形状の説明図である。
【図3】第2の実施の形態を示す拡大断面図である。
【図4】第2の実施の形態の寸法と形状の説明図である。
【図5】第3の実施の形態を示す拡大断面図である。
【図6】第3の実施の形態の寸法と形状の説明図である。
【図7】第4の実施の形態を示す拡大断面図である。
【図8】第4の実施の形態の寸法と形状の説明図である。
【図9】第5の実施の形態を示す正面図である。
【図10】第5の実施の形態を示す斜視図である。
【図11】図9のA−A拡大断面図である。
【図12】図9のB−B拡大断面図である。
【図13】使用状態の一例を示す断面図である。
【図14】作用説明のための要部拡大断面図である。
【図15】作用説明のための要部拡大断面図である。
【図16】作用説明のための要部拡大断面図である。
【図17】従来例の作用及び構成を説明する要部拡大断面図である。
【図18】従来例の説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図13に電磁方向切換弁2を示し、バルブボディー3のスプール孔4に、軸心L1 方向に往復動可能にスプール1が挿入されている。なお、5は、流体流入ポート,流体吐出ポート等の各種ポートを示し、バルブボディー3に開設され、隣り合うポート間には、従来例の図17に於て既に説明したと同じ、摺接孔部(ランド部)46がスプール孔4に所定の間隔をもって配設されている。6はソレノイド、7はスプリングを示す。
【0016】
本発明に係るシール材Sは、このような切換弁2のスプール1に嵌着(装着)されるものであって、例えば、図1と図2に示した第1の実施の形態のシール材Sが、スプール1の外周面に形成された凹溝42に装着された拡大図を、図14〜図16に例示する。
【0017】
そして、図1,図2の第1の実施の形態、図3,図4の第2の実施の形態、図5,図6の第3の実施の形態、図7,図8の第4の実施の形態に共通する構成から説明し、その後、各実施の形態の特徴的な構成について、追加説明する。
【0018】
本発明に係るシール材Sは、ゴム状弾性体(エラストマー)から構成され、例えば、ニトリルゴム,水素化ニトリルゴム,ウレタンゴム,ふっ素ゴム等が使用可能である。
【0019】
各実施の形態に於て、スプール1の凹溝42の奥部(溝底側)42aに対応する基部8を有し、さらに、この基部8からラジアル外方向へ立設された胴部11を有し、また、胴部11のラジアル方向外端に連設された肩部12を有する。しかも、この肩部12からラジアル外方向へ突出状の小頭部13を有する。
つまり、シール材Sは、横断面形状が、基部8と胴部11と肩部12と小頭部13とを、一体に有するラジアル方向(上下方向と呼ぶ)に細長状である。
【0020】
図2,図4,図6,図8に示すように、基部8,胴部11,肩部12,小頭部13の各々の幅寸法を、W0 ,W1 ,W2 ,W3 とすると、W1 <W2 ≦W0 、かつ、W3 <W2 ≦W0 なる関係式が成立するように、設定する。
【0021】
さらに、横断面における全体高さ寸法をH0 とすると、最大幅を示す基部8の幅寸法W0 との関係は次式が成立する。
即ち、 1.5・W0 ≦H0 ≦3・W0 とする。
特に、 1.8・W0 ≦H0 ≦ 2.5・W0 とするのが好ましい。このように、シール材Sの横断面形状は、ラジアル方向に細長く構成されている。
【0022】
そして、横断面における胴部11の高さ寸法(ラジアル方向の寸法)をH1 とすると、前記全体高さ寸法H0 との関係は、次のようになっている。
0.2・H0 ≦H1 ≦0.35・H0
【0023】
また、基部8,胴部11,肩部12,小頭部13の各幅寸法は、前述のように、各々、W0 ,W1 ,W2 ,W3 としたが、好ましくは、さらに、次式が成立するように設定する。
つまり、 0.5・W0 ≦W1 ≦ 0.7・W0
0.5・W0 ≦W3 ≦ 0.8・W0
とする。このように、胴部11は左右幅寸法W1 は小さく、かつ、高さ寸法H1 は大きいといえる。
【0024】
次に、図1と図2、及び、図3と図4の第1・第2の実施の形態では、基部8と胴部11の段付部9の横断面形状は、軸心L1 と平行な方向───アキシャル方向───に直線状である。このようにすれば、図13と図14に示すように、流体圧力Pを段付部9が受けて、凹溝42の奥部(溝底)42aに向かう押圧力F8 が基部8に作用し、小頭部13が凹溝42側へ僅かに動き、噛み込みが有効に防止されつつ、図15から図16のように、勾配部47から摺接孔部(ランド部)46へ、小頭部13がスムースに摺動する。
【0025】
また、図5,図6に示す第3の実施の形態のように、基部8と胴部11の段付部9を、アキシャル外方下傾状の勾配面に形成するも、同様の作用効果が発揮される。軸心L1 に対する基部8の上面(段付部9)の勾配角度をαとすれば、0°<α≦45°に設定する。また、図7と図8に示す第4の実施の形態のように、基部8と胴部11の段付部9を、アール形状(円弧凸型)とするも望ましい。このときも、同様の作用効果が発揮される。
【0026】
次に、図1,図2、及び、図5,図6では、肩部12の内周面、即ち、胴部11に対向する内周側段付部14は、横断面円弧凸状に形成される。あるいは、図3,図4、及び、図7,図8では、この内周側段付部14は、アキシャル外方上傾状に形成される。つまり、この内周側段付部14は、軸心L1 と平行な方向(アキシャル方向)の外方向にしだいに上方へ向かう上傾ストレート状である。さらに、この段付部14の軸心L1 に対する傾斜角度をθとすると、30°≦θ≦60°とする。
【0027】
上述のように、肩部12の下面に相当する内周側段付部14の横断面形状を、円弧凸状やアキシャル外方上傾状とすれば、軸心L1 と平行な方向にする場合に比べて、ラジアル外方向への受圧に伴う引伸し外力が小さくなり、図14から図15のように、小頭部13が、亀の頭を引込めるが如くに、短縮する動きを、邪魔しない。
【0028】
次に、図1,図2、及び、図3,図4に於て、基部8の内周面18の横断面形状は、基部8の幅寸法W0 の50%強の半径R8 を有する円弧凸状とする。あるいは、図5と図6に示すように、 0.5・W0 ≦R8 の範囲で、比較的に大きな半径R8 としても良い。この場合、基部8の両側面には、ストレート部15,15が形成される。
【0029】
また、図7,図8の第4の実施の形態に示すように、基部8の内周面18を、略直線状として、軸心L1 と平行なストレートに形成するも、好ましい。なお、左右両角部には、小アール状の面取り16,16を形成し、又は、45°面取り16Aを2点鎖線のように形成するのが良い。
【0030】
ところで、図1〜図8に於て例示の基部8、胴部11、肩部12の各々の形状を交互に入れ換えて、組み合わすことも、自由である(図示省略)。なお、小頭部13は略半円形等の丸味のある形状が望ましく、噛み込み防止に役に立つ。
【0031】
次に、図9,図10、及び、図9のA−A拡大断面を示す図11と、図9のB−B拡大断面を示す図12に示した別の実施の形態について説明すれば、図12は例えば、図1,図2の第1の実施の形態と同様の構成の横断面を示すのに対し、図11では、十分に断面積が増加した形状である。
【0032】
即ち、胴部11と基部8と肩部12によって、アキシャル外方向に開口状の浅皿型凹溝部19,19が、包囲形成されているが、シール軸心L1 の方向から見て(図9参照)、多数本の放射枝状のリブ20を、浅皿型凹溝部19に一体に形成して、剛性増大を図っている。なお、図11では、図12の肩部12の左右最外端と、基部8の左右最外端とを、連結するように、リブ20が浅皿型凹溝部19を完全に埋めている。また、図12の代わりに、前述した図3〜図8等の横断面形状のものをベースとして、リブ20を付加する構成も、自由である。
【0033】
次に、上述のように構成された本発明のシール材Sの作用と機能と用途及び切換弁2の内部の構成等について以下説明すると、図13、及び、図14〜図16に示すように、スプール1の外周面に(台形状の)突条部21が外鍔状に形成され、その中間にシール用凹溝42が、ラジアル方向に縦長状として、凹設され、ゴム等の弾性材製の本シール材Sが嵌着(装着)され、バルブボディー44のスプール孔45の内、内径寸法Dが減少して研磨加工が施された摺接孔部(ランド部)46に、軸心方向Jに摺動可能に接触して、図16のように、密封状態となる。
【0034】
バルブボディー44のスプール孔45は、摺接孔部(ランド部)46と、(図13のように)ポート5が開設される大径孔部48とを交互に有し、図14に示すようにシール材Sが大径孔部48に対応するときには、流体はスプール1とスプール孔45の内面との間を、通過可能(流れ得る)状態にある。
【0035】
そして、図15に示すように、スプール1が矢印Kにて示すように移動すると、シール材Sは、その小頭部13が勾配面47に軽く接しつつ摺動して越えて、図16に示すように、直ちに摺接孔部(ランド部)46に密に接触して、密封状態を保持し、もって、隣り合うポート5,5(図13参照)の相互間を遮断し、切換弁2は、例えば、第1出力ポートからの出力状態、第2出力ポートからの排出状態、あるいは、中立状態等に、切り換わる。
【0036】
そして、図14に示すように、スプール1が矢印K方向に移動し、シール材Sが縮径する勾配面47に接近した際に、激しい流体流れF1 が発生したとしても、本発明に係るシール材Sは、流体圧力Pを基部8の段付部9が受けて、基部8は押圧力F8 にて溝底(凹溝奥部)42aへ押付けられるように(ラジアル方向に)圧縮弾性変形を起こし、これに伴って、小頭部13は、(あたかも亀が頭を引込めるような)亀頭引込作動によって、凹溝42の開口端近傍まで収縮し、図14から図15を越えて、図16の状態に、小頭部13は損傷を受けることなく円滑に切り換わる。なお、図15に示すように、他のポートからの流体圧による流れF2 が存在したとしても、同様に流体圧力Pが段付部9に作用して、上記亀頭引込作動を助長する。
【0037】
さらに、肩部12の幅寸法W2 よりも小頭部13の幅寸法W3 が小さいので、小頭部13はその弾性変形によって、容易に(図15に示す如く)勾配面47と突条部21との間に挾み込まれることを逃げることが可能であり、かつ、胴部11はその幅寸法W1 が小さいため、弾性変形しつつ図15のように弾性的に弯曲変形して、一層、小頭部13の亀頭引込作動を瞬時に助けることが可能である。このようにして、従来の図18に例示したシール材では、避けることが困難であった噛み込みと(欠け等の)損傷50(図17参照)を、巧妙に防いでいる。従って、本発明に係るシール材Sは、極めて高速で瞬時に切り換わる電磁切換弁に於ても、長期間安定した作動を保証し、長寿命である。
【0038】
さらに、本発明に係るシール材Sは、胴部11及び小頭部13が、その幅寸法W1 ,W3 が小さく、弾性的圧縮変形が容易な構成であるので、スプール孔4の内面への接触面圧は十分に小さくなり、これに伴って、摺動抵抗も低減でき、シール材Sの負荷低減になって、一層の長寿命化が期待できる。
【0039】
本発明は、以上述べたように、往復動するスプール1の外周面に形成された凹溝42に装着されるシール材に於て、上記凹溝42の奥部42aに対応する基部8と、該基部8からラジアル外方向へ立設された胴部11と、該胴部11のラジアル方向外端に連設された肩部12と、該肩部12からラジアル外方向へ突出状の小頭部13とを、備えた横断面形状であって、上記基部8,胴部11,肩部12,小頭部13の各幅寸法を、W0 ,W1 ,W2 ,W3 とすると、W1 <W2 ≦W0 ,W3 <W2 ≦W0 なる関係式が成立し、さらに、上記基部8と胴部11の段付部9の横断面形状は、アキシャル方向直線状又はアキシャル外方下傾状若しくはアール形状とした構成であるので、凹溝42の奥部42aに、基部8は(浮上らずに)常時安定して保持され、特に、(図14と図15に示すように)流体圧力Pを受けて奥部42aへ押圧保持され、凹溝42の開口部近傍の小頭部13は、亀頭引込作動を起こして、しかも、肉厚(幅寸法W1 )の小さい胴部11はラジアル方向への弾性圧縮変形及び弾性曲げ変形によって、一層、スプール孔4の内面との挾み込みを回避でき、噛み込みを有効防止できる。これにより、従来の欠け等の損傷50(図17(C)参照)を防止できて、長寿命化を図り得る。かつ、スプール1の作動不良も発生しない。このように本発明は、電磁切換弁のシール材として、極めて好適である。
【0040】
また、上記肩部12は、上記胴部11に対向する内周側段付部14の横断面形状が円弧凸状又はアキシャル外方上傾状に形成したので、肩部12がラジアル外方向への流体圧力を受けて移動することを防ぎ、これに伴って、小頭部13がスプール孔4の内面側へ大きく突出して、噛み込みを生ずることを防止する。
【0041】
また、上記基部8の内周面18の横断面形状が、上記基部8の幅寸法W0 の50%以上の半径R8 を有する円弧凸状としたので、基部8がシール材全体の剛性を高め、不意にシール材が凹溝42の奥部42aから浮上ってしまうことを防ぎ、スプール孔4との噛み込みを防ぐのに寄与できる。
【0042】
また、上記基部8の内周面18の横断面形状が、略直線状であるので、基部8がシール材全体の剛性を高め、不意にシール材が凹溝42の奥部42aから浮上ってしまうことを防ぎ、スプール孔4との噛み込みを防ぐのに寄与できる。
【0043】
また、横断面における全体高さ寸法をH0 とすると、 1.5・W0 ≦H0 ≦3・W0 なる関係式が成立して、横断面形状がラジアル方向に細長く構成されているので、不意にシール材が凹溝42の奥部42aから浮上ってしまうことを防ぎ、スプール孔4との噛み込みを防ぐのに寄与できる。さらに、スプール孔4の内面との接触面圧が低減して、摺動抵抗の低減が図られ、シール材の寿命も、さらに延びる。
【0044】
また、横断面における上記胴部11の高さ寸法をH1 とし、全体高さ寸法をH0 とすると、 0.2・H0 ≦H1 ≦0.35・H0 かつ 1.5・W0 ≦H0 ≦3・W0 なる関係式が成立して、横断面形状がラジアル方向に細長く構成されているので、不意にシール材が凹溝42の奥部42aから浮上ってしまうことを防ぎ、スプール孔4との噛み込みを防ぐのに寄与できる。さらに、スプール孔4の内面との接触面圧が低下し、摺動抵抗が低減して、シール材の寿命が一層延びる。
【0045】
また、上記各寸法W0 ,W1 ,W2 ,W3 の間に、 0.5・W0 ≦W1 ≦ 0.7・W0 , 0.9・W0 ≦W2 ≦ W0 ,0.5・W0 ≦W3 ≦ 0.8・W0 が成立するように構成したので、W1 とW3 が十分に小さく設定されて、図15に既述したように、胴部11と小頭部13の弾性的変形がスムースに行われて、噛み込みを有効に防止でき、かつ、接触面圧の低下と摺動抵抗の低減が達成できることとなる。
【0046】
また、上記胴部11と基部8と肩部12によって、アキシャル外方向に開口状の浅皿型凹溝部19,19が包囲形成されていると共に、シール軸心L1 方向から見て、多数本の放射枝状のリブ20を上記浅皿型凹溝部19に一体に形成したので、シール材としての剛性を必要に応じて、高めることが容易となる。
【符号の説明】
【0047】
S シール材
8 基部
11 胴部
12 肩部
13 小頭部
14 段付部
18 内周面
19 凹溝部
20 リブ
42 凹溝
42a 奥部
L1 軸心
W0 ,W1 ,W2 ,W3 幅寸法
H0 ,H1 高さ寸法
【技術分野】
【0001】
本発明はシール材に係り、特に、電磁弁等の方向切換弁のスプールに凹設された凹溝に装着して使用されるシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
方向切換弁は、バルブボディー内のスプール孔にスプールを摺動自在に挿入して、スプールを軸心方向に移動させて、バルブボディーの流体流入ポート,流体吐出ポート等を切り換えるのに広く使用されている弁である。
【0003】
図17に拡大図にて例示するように、スプール41の外周面に形成されたシール用凹溝42内に、ゴム等の弾性材製シール材43が嵌着(装着)され、バルブボディー44のスプール孔45の内周面の内、内径寸法Dが減少してラップ仕上げ等の研磨加工が施された摺接孔部(ランド部)46に、軸心方向Jに摺動自在に接触して、密封作用を行う。
【0004】
バルブホディー44のスプール孔45は、上記摺接孔部(ランド部)46と、勾配面47を介して大径に形成され(図外の)ポート部が開設される大径孔部48と、を有し、図17(A)に示すようにシール材43が大径孔部48に位置するときは、流体がスプール41とスプール孔45内面との間を通過可能(流れ得る)状態にある。
【0005】
そして、図17(B)のように、スプール41が矢印Kにて示すように移動すると、シール材43は勾配面47を越えて直ちに摺接孔部(ランド部)46に対応する密封位置に切り換わり、(図外の)隣り合うポートとポートの間の流体の流れが遮断される。
【0006】
ところで、従来、このような切換弁のスプール41に使用されてきたシール材43は、図18に例示するように横断面形状が、同図(a)に示す円形のOリングや、同図(b)及び図17に示す長円形シール材43(特許文献1参照)、あるいは、図18(c)に示した2連珠形シール材、同図(d)に示した特殊な小凹窪部49,49を有する略矩形のもの(特許文献2参照)が、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−170743号公報
【特許文献2】実開平5− 79143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来の図18(a)〜(d)のいずれの横断面形状のシール材も、次のような問題がある。即ち、図17(A)から(B)へ矢印K方向にスプール41が移動し、シール材43が、しだいに縮径する勾配面47と、スプール41外周部との間に、挟まれて噛み込みを生じ、同図(C)に示すような「欠け」等の損傷を受けるという問題、及び、上記噛み込みによってスプール41が正常に矢印J方向に作動しなくなるという問題がある。
【0009】
本発明者等は、従来のシール材43が何故に噛み込みを生じ易いかという疑問に関して多大な試行錯誤と実験を繰り返した結果、次の事実を究明した。つまり、図17(A)に示すように、切換弁の切換途中では瞬間的に激しい流体の流れF1 が発生し、シール材43に矢印M方向の揚力が発生し、このままで同図(B)のように勾配面47に到達して、勾配面47とスプール41の外周部との間でシール材43が挟まれるということである。図18の他のシール材(a)(c)(d)についても、同様の現象が発生し、全てのものが「欠け」等の損傷50を早期に発生したり、スプール作動不良を生じる。
そこで、本発明は、このような噛み込みを防止して、耐久性を向上し、スプールの作動不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、往復動するスプールの外周面に形成された凹溝に装着されるシール材に於て、上記凹溝の奥部に対応する基部と、該基部からラジアル外方向へ立設された胴部と、該胴部のラジアル方向外端に連設された肩部と、該肩部からラジアル外方向へ突出状の小頭部とを、備えた横断面形状であって、上記基部,胴部,肩部,小頭部の各幅寸法を、W0 ,W1 ,W2 ,W3 とすると、W1 <W2 ≦W0 ,W3 <W2 ≦W0 なる関係式が成立し、さらに、上記基部と胴部の段付部の横断面形状は、アキシャル方向直線状又はアキシャル外方下傾状若しくはアール形状としたものである。
【0011】
また、上記肩部は、上記胴部に対向する内周側段付部の横断面形状が円弧凸状又はアキシャル外方上傾状に形成したものである。
また、上記基部の内周面の横断面形状が、上記基部の幅寸法の50%以上の半径を有する円弧凸状とした。
また、上記基部の内周面の横断面形状が、略直線状とした。
また、横断面における全体高さ寸法をH0 とすると、 1.5・W0 ≦H0 ≦3・W0 なる関係式が成立して、横断面形状がラジアル方向に細長く構成されている。
【0012】
また、横断面における上記胴部の高さ寸法をH1 とし、全体高さ寸法をH0 とすると、 0.2・H0 ≦H1 ≦0.35・H0 かつ 1.5・W0 ≦H0 ≦3・W0 なる関係式が成立して、横断面形状がラジアル方向に細長く構成されている。
また、上記各寸法W0 ,W1 ,W2 ,W3 の間に、次式が成立する。
0.5・W0 ≦W1 ≦ 0.7・W0
0.9・W0 ≦W2 ≦ W0
0.5・W0 ≦W3 ≦ 0.8・W0
また、上記胴部と基部と肩部によって、アキシャル外方向に開口状の浅皿型凹溝部が包囲形成されていると共に、シール軸心方向から見て、多数本の放射枝状のリブを上記浅皿型凹溝部に一体に形成したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシール材によれば、所期目的を達成して、シール材外周側の噛み込みが発生せず、長寿命化を達成できる。そして、電磁方向切換弁等のスプールの円滑な切換作動を長期間に渡って、実現できる。さらに、従来のシール材の「欠け」によって、発生する流体機器の作動部(スプールを含む)の不良発生を、有効に防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す拡大断面図である。
【図2】第1の実施の形態の寸法と形状の説明図である。
【図3】第2の実施の形態を示す拡大断面図である。
【図4】第2の実施の形態の寸法と形状の説明図である。
【図5】第3の実施の形態を示す拡大断面図である。
【図6】第3の実施の形態の寸法と形状の説明図である。
【図7】第4の実施の形態を示す拡大断面図である。
【図8】第4の実施の形態の寸法と形状の説明図である。
【図9】第5の実施の形態を示す正面図である。
【図10】第5の実施の形態を示す斜視図である。
【図11】図9のA−A拡大断面図である。
【図12】図9のB−B拡大断面図である。
【図13】使用状態の一例を示す断面図である。
【図14】作用説明のための要部拡大断面図である。
【図15】作用説明のための要部拡大断面図である。
【図16】作用説明のための要部拡大断面図である。
【図17】従来例の作用及び構成を説明する要部拡大断面図である。
【図18】従来例の説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図13に電磁方向切換弁2を示し、バルブボディー3のスプール孔4に、軸心L1 方向に往復動可能にスプール1が挿入されている。なお、5は、流体流入ポート,流体吐出ポート等の各種ポートを示し、バルブボディー3に開設され、隣り合うポート間には、従来例の図17に於て既に説明したと同じ、摺接孔部(ランド部)46がスプール孔4に所定の間隔をもって配設されている。6はソレノイド、7はスプリングを示す。
【0016】
本発明に係るシール材Sは、このような切換弁2のスプール1に嵌着(装着)されるものであって、例えば、図1と図2に示した第1の実施の形態のシール材Sが、スプール1の外周面に形成された凹溝42に装着された拡大図を、図14〜図16に例示する。
【0017】
そして、図1,図2の第1の実施の形態、図3,図4の第2の実施の形態、図5,図6の第3の実施の形態、図7,図8の第4の実施の形態に共通する構成から説明し、その後、各実施の形態の特徴的な構成について、追加説明する。
【0018】
本発明に係るシール材Sは、ゴム状弾性体(エラストマー)から構成され、例えば、ニトリルゴム,水素化ニトリルゴム,ウレタンゴム,ふっ素ゴム等が使用可能である。
【0019】
各実施の形態に於て、スプール1の凹溝42の奥部(溝底側)42aに対応する基部8を有し、さらに、この基部8からラジアル外方向へ立設された胴部11を有し、また、胴部11のラジアル方向外端に連設された肩部12を有する。しかも、この肩部12からラジアル外方向へ突出状の小頭部13を有する。
つまり、シール材Sは、横断面形状が、基部8と胴部11と肩部12と小頭部13とを、一体に有するラジアル方向(上下方向と呼ぶ)に細長状である。
【0020】
図2,図4,図6,図8に示すように、基部8,胴部11,肩部12,小頭部13の各々の幅寸法を、W0 ,W1 ,W2 ,W3 とすると、W1 <W2 ≦W0 、かつ、W3 <W2 ≦W0 なる関係式が成立するように、設定する。
【0021】
さらに、横断面における全体高さ寸法をH0 とすると、最大幅を示す基部8の幅寸法W0 との関係は次式が成立する。
即ち、 1.5・W0 ≦H0 ≦3・W0 とする。
特に、 1.8・W0 ≦H0 ≦ 2.5・W0 とするのが好ましい。このように、シール材Sの横断面形状は、ラジアル方向に細長く構成されている。
【0022】
そして、横断面における胴部11の高さ寸法(ラジアル方向の寸法)をH1 とすると、前記全体高さ寸法H0 との関係は、次のようになっている。
0.2・H0 ≦H1 ≦0.35・H0
【0023】
また、基部8,胴部11,肩部12,小頭部13の各幅寸法は、前述のように、各々、W0 ,W1 ,W2 ,W3 としたが、好ましくは、さらに、次式が成立するように設定する。
つまり、 0.5・W0 ≦W1 ≦ 0.7・W0
0.5・W0 ≦W3 ≦ 0.8・W0
とする。このように、胴部11は左右幅寸法W1 は小さく、かつ、高さ寸法H1 は大きいといえる。
【0024】
次に、図1と図2、及び、図3と図4の第1・第2の実施の形態では、基部8と胴部11の段付部9の横断面形状は、軸心L1 と平行な方向───アキシャル方向───に直線状である。このようにすれば、図13と図14に示すように、流体圧力Pを段付部9が受けて、凹溝42の奥部(溝底)42aに向かう押圧力F8 が基部8に作用し、小頭部13が凹溝42側へ僅かに動き、噛み込みが有効に防止されつつ、図15から図16のように、勾配部47から摺接孔部(ランド部)46へ、小頭部13がスムースに摺動する。
【0025】
また、図5,図6に示す第3の実施の形態のように、基部8と胴部11の段付部9を、アキシャル外方下傾状の勾配面に形成するも、同様の作用効果が発揮される。軸心L1 に対する基部8の上面(段付部9)の勾配角度をαとすれば、0°<α≦45°に設定する。また、図7と図8に示す第4の実施の形態のように、基部8と胴部11の段付部9を、アール形状(円弧凸型)とするも望ましい。このときも、同様の作用効果が発揮される。
【0026】
次に、図1,図2、及び、図5,図6では、肩部12の内周面、即ち、胴部11に対向する内周側段付部14は、横断面円弧凸状に形成される。あるいは、図3,図4、及び、図7,図8では、この内周側段付部14は、アキシャル外方上傾状に形成される。つまり、この内周側段付部14は、軸心L1 と平行な方向(アキシャル方向)の外方向にしだいに上方へ向かう上傾ストレート状である。さらに、この段付部14の軸心L1 に対する傾斜角度をθとすると、30°≦θ≦60°とする。
【0027】
上述のように、肩部12の下面に相当する内周側段付部14の横断面形状を、円弧凸状やアキシャル外方上傾状とすれば、軸心L1 と平行な方向にする場合に比べて、ラジアル外方向への受圧に伴う引伸し外力が小さくなり、図14から図15のように、小頭部13が、亀の頭を引込めるが如くに、短縮する動きを、邪魔しない。
【0028】
次に、図1,図2、及び、図3,図4に於て、基部8の内周面18の横断面形状は、基部8の幅寸法W0 の50%強の半径R8 を有する円弧凸状とする。あるいは、図5と図6に示すように、 0.5・W0 ≦R8 の範囲で、比較的に大きな半径R8 としても良い。この場合、基部8の両側面には、ストレート部15,15が形成される。
【0029】
また、図7,図8の第4の実施の形態に示すように、基部8の内周面18を、略直線状として、軸心L1 と平行なストレートに形成するも、好ましい。なお、左右両角部には、小アール状の面取り16,16を形成し、又は、45°面取り16Aを2点鎖線のように形成するのが良い。
【0030】
ところで、図1〜図8に於て例示の基部8、胴部11、肩部12の各々の形状を交互に入れ換えて、組み合わすことも、自由である(図示省略)。なお、小頭部13は略半円形等の丸味のある形状が望ましく、噛み込み防止に役に立つ。
【0031】
次に、図9,図10、及び、図9のA−A拡大断面を示す図11と、図9のB−B拡大断面を示す図12に示した別の実施の形態について説明すれば、図12は例えば、図1,図2の第1の実施の形態と同様の構成の横断面を示すのに対し、図11では、十分に断面積が増加した形状である。
【0032】
即ち、胴部11と基部8と肩部12によって、アキシャル外方向に開口状の浅皿型凹溝部19,19が、包囲形成されているが、シール軸心L1 の方向から見て(図9参照)、多数本の放射枝状のリブ20を、浅皿型凹溝部19に一体に形成して、剛性増大を図っている。なお、図11では、図12の肩部12の左右最外端と、基部8の左右最外端とを、連結するように、リブ20が浅皿型凹溝部19を完全に埋めている。また、図12の代わりに、前述した図3〜図8等の横断面形状のものをベースとして、リブ20を付加する構成も、自由である。
【0033】
次に、上述のように構成された本発明のシール材Sの作用と機能と用途及び切換弁2の内部の構成等について以下説明すると、図13、及び、図14〜図16に示すように、スプール1の外周面に(台形状の)突条部21が外鍔状に形成され、その中間にシール用凹溝42が、ラジアル方向に縦長状として、凹設され、ゴム等の弾性材製の本シール材Sが嵌着(装着)され、バルブボディー44のスプール孔45の内、内径寸法Dが減少して研磨加工が施された摺接孔部(ランド部)46に、軸心方向Jに摺動可能に接触して、図16のように、密封状態となる。
【0034】
バルブボディー44のスプール孔45は、摺接孔部(ランド部)46と、(図13のように)ポート5が開設される大径孔部48とを交互に有し、図14に示すようにシール材Sが大径孔部48に対応するときには、流体はスプール1とスプール孔45の内面との間を、通過可能(流れ得る)状態にある。
【0035】
そして、図15に示すように、スプール1が矢印Kにて示すように移動すると、シール材Sは、その小頭部13が勾配面47に軽く接しつつ摺動して越えて、図16に示すように、直ちに摺接孔部(ランド部)46に密に接触して、密封状態を保持し、もって、隣り合うポート5,5(図13参照)の相互間を遮断し、切換弁2は、例えば、第1出力ポートからの出力状態、第2出力ポートからの排出状態、あるいは、中立状態等に、切り換わる。
【0036】
そして、図14に示すように、スプール1が矢印K方向に移動し、シール材Sが縮径する勾配面47に接近した際に、激しい流体流れF1 が発生したとしても、本発明に係るシール材Sは、流体圧力Pを基部8の段付部9が受けて、基部8は押圧力F8 にて溝底(凹溝奥部)42aへ押付けられるように(ラジアル方向に)圧縮弾性変形を起こし、これに伴って、小頭部13は、(あたかも亀が頭を引込めるような)亀頭引込作動によって、凹溝42の開口端近傍まで収縮し、図14から図15を越えて、図16の状態に、小頭部13は損傷を受けることなく円滑に切り換わる。なお、図15に示すように、他のポートからの流体圧による流れF2 が存在したとしても、同様に流体圧力Pが段付部9に作用して、上記亀頭引込作動を助長する。
【0037】
さらに、肩部12の幅寸法W2 よりも小頭部13の幅寸法W3 が小さいので、小頭部13はその弾性変形によって、容易に(図15に示す如く)勾配面47と突条部21との間に挾み込まれることを逃げることが可能であり、かつ、胴部11はその幅寸法W1 が小さいため、弾性変形しつつ図15のように弾性的に弯曲変形して、一層、小頭部13の亀頭引込作動を瞬時に助けることが可能である。このようにして、従来の図18に例示したシール材では、避けることが困難であった噛み込みと(欠け等の)損傷50(図17参照)を、巧妙に防いでいる。従って、本発明に係るシール材Sは、極めて高速で瞬時に切り換わる電磁切換弁に於ても、長期間安定した作動を保証し、長寿命である。
【0038】
さらに、本発明に係るシール材Sは、胴部11及び小頭部13が、その幅寸法W1 ,W3 が小さく、弾性的圧縮変形が容易な構成であるので、スプール孔4の内面への接触面圧は十分に小さくなり、これに伴って、摺動抵抗も低減でき、シール材Sの負荷低減になって、一層の長寿命化が期待できる。
【0039】
本発明は、以上述べたように、往復動するスプール1の外周面に形成された凹溝42に装着されるシール材に於て、上記凹溝42の奥部42aに対応する基部8と、該基部8からラジアル外方向へ立設された胴部11と、該胴部11のラジアル方向外端に連設された肩部12と、該肩部12からラジアル外方向へ突出状の小頭部13とを、備えた横断面形状であって、上記基部8,胴部11,肩部12,小頭部13の各幅寸法を、W0 ,W1 ,W2 ,W3 とすると、W1 <W2 ≦W0 ,W3 <W2 ≦W0 なる関係式が成立し、さらに、上記基部8と胴部11の段付部9の横断面形状は、アキシャル方向直線状又はアキシャル外方下傾状若しくはアール形状とした構成であるので、凹溝42の奥部42aに、基部8は(浮上らずに)常時安定して保持され、特に、(図14と図15に示すように)流体圧力Pを受けて奥部42aへ押圧保持され、凹溝42の開口部近傍の小頭部13は、亀頭引込作動を起こして、しかも、肉厚(幅寸法W1 )の小さい胴部11はラジアル方向への弾性圧縮変形及び弾性曲げ変形によって、一層、スプール孔4の内面との挾み込みを回避でき、噛み込みを有効防止できる。これにより、従来の欠け等の損傷50(図17(C)参照)を防止できて、長寿命化を図り得る。かつ、スプール1の作動不良も発生しない。このように本発明は、電磁切換弁のシール材として、極めて好適である。
【0040】
また、上記肩部12は、上記胴部11に対向する内周側段付部14の横断面形状が円弧凸状又はアキシャル外方上傾状に形成したので、肩部12がラジアル外方向への流体圧力を受けて移動することを防ぎ、これに伴って、小頭部13がスプール孔4の内面側へ大きく突出して、噛み込みを生ずることを防止する。
【0041】
また、上記基部8の内周面18の横断面形状が、上記基部8の幅寸法W0 の50%以上の半径R8 を有する円弧凸状としたので、基部8がシール材全体の剛性を高め、不意にシール材が凹溝42の奥部42aから浮上ってしまうことを防ぎ、スプール孔4との噛み込みを防ぐのに寄与できる。
【0042】
また、上記基部8の内周面18の横断面形状が、略直線状であるので、基部8がシール材全体の剛性を高め、不意にシール材が凹溝42の奥部42aから浮上ってしまうことを防ぎ、スプール孔4との噛み込みを防ぐのに寄与できる。
【0043】
また、横断面における全体高さ寸法をH0 とすると、 1.5・W0 ≦H0 ≦3・W0 なる関係式が成立して、横断面形状がラジアル方向に細長く構成されているので、不意にシール材が凹溝42の奥部42aから浮上ってしまうことを防ぎ、スプール孔4との噛み込みを防ぐのに寄与できる。さらに、スプール孔4の内面との接触面圧が低減して、摺動抵抗の低減が図られ、シール材の寿命も、さらに延びる。
【0044】
また、横断面における上記胴部11の高さ寸法をH1 とし、全体高さ寸法をH0 とすると、 0.2・H0 ≦H1 ≦0.35・H0 かつ 1.5・W0 ≦H0 ≦3・W0 なる関係式が成立して、横断面形状がラジアル方向に細長く構成されているので、不意にシール材が凹溝42の奥部42aから浮上ってしまうことを防ぎ、スプール孔4との噛み込みを防ぐのに寄与できる。さらに、スプール孔4の内面との接触面圧が低下し、摺動抵抗が低減して、シール材の寿命が一層延びる。
【0045】
また、上記各寸法W0 ,W1 ,W2 ,W3 の間に、 0.5・W0 ≦W1 ≦ 0.7・W0 , 0.9・W0 ≦W2 ≦ W0 ,0.5・W0 ≦W3 ≦ 0.8・W0 が成立するように構成したので、W1 とW3 が十分に小さく設定されて、図15に既述したように、胴部11と小頭部13の弾性的変形がスムースに行われて、噛み込みを有効に防止でき、かつ、接触面圧の低下と摺動抵抗の低減が達成できることとなる。
【0046】
また、上記胴部11と基部8と肩部12によって、アキシャル外方向に開口状の浅皿型凹溝部19,19が包囲形成されていると共に、シール軸心L1 方向から見て、多数本の放射枝状のリブ20を上記浅皿型凹溝部19に一体に形成したので、シール材としての剛性を必要に応じて、高めることが容易となる。
【符号の説明】
【0047】
S シール材
8 基部
11 胴部
12 肩部
13 小頭部
14 段付部
18 内周面
19 凹溝部
20 リブ
42 凹溝
42a 奥部
L1 軸心
W0 ,W1 ,W2 ,W3 幅寸法
H0 ,H1 高さ寸法
【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動するスプール(1)の外周面に形成された凹溝(42)に装着されるシール材に於て、
上記凹溝(42)の奥部(42a)に対応する基部(8)と、該基部(8)からラジアル外方向へ立設された胴部(11)と、該胴部(11)のラジアル方向外端に連設された肩部(12)と、該肩部(12)からラジアル外方向へ突出状の小頭部(13)とを、備えた横断面形状であって、上記基部(8),胴部(11),肩部(12),小頭部(13)の各幅寸法を、W0 ,W1 ,W2 ,W3 とすると、
W1 <W2 ≦W0
W3 <W2 ≦W0
なる関係式が成立し、さらに、上記基部(8)と胴部(11)の段付部(9)の横断面形状は、アキシャル方向直線状又はアキシャル外方下傾状若しくはアール形状としたことを特徴とするシール材。
【請求項2】
上記肩部(12)は、上記胴部(11)に対向する内周側段付部(14)の横断面形状が円弧凸状又はアキシャル外方上傾状に形成した請求項1記載のシール材。
【請求項3】
上記基部(8)の内周面(18)の横断面形状が、上記基部(8)の幅寸法W0 の50%以上の半径(R8 )を有する円弧凸状とした請求項1又は2記載のシール材。
【請求項4】
上記基部(8)の内周面(18)の横断面形状が、略直線状である請求項1又は2記載のシール材。
【請求項5】
横断面における全体高さ寸法をH0 とすると、 1.5・W0 ≦H0 ≦3・W0 なる関係式が成立して、横断面形状がラジアル方向に細長く構成された請求項1,2,3又は4記載のシール材。
【請求項6】
横断面における上記胴部(11)の高さ寸法をH1 とし、全体高さ寸法をH0 とすると、 0.2・H0 ≦H1 ≦0.35・H0 かつ 1.5・W0 ≦H0 ≦3・W0 なる関係式が成立して、横断面形状がラジアル方向に細長く構成された請求項1,2,3又は4記載のシール材。
【請求項7】
上記各寸法W0 ,W1 ,W2 ,W3 の間に、次式が成立する請求項1,2,3,4,5又は6記載のシール材。
0.5・W0 ≦W1 ≦ 0.7・W0
0.9・W0 ≦W2 ≦ W0
0.5・W0 ≦W3 ≦ 0.8・W0
【請求項8】
上記胴部(11)と基部(8)と肩部(12)によって、アキシャル外方向に開口状の浅皿型凹溝部(19(19)が包囲形成されていると共に、シール軸心(L1 )方向から見て、多数本の放射枝状のリブ(20)を上記浅皿型凹溝部(19)に一体に形成した請求項1,2,3,4,5,6又は7記載のシール材。
【請求項1】
往復動するスプール(1)の外周面に形成された凹溝(42)に装着されるシール材に於て、
上記凹溝(42)の奥部(42a)に対応する基部(8)と、該基部(8)からラジアル外方向へ立設された胴部(11)と、該胴部(11)のラジアル方向外端に連設された肩部(12)と、該肩部(12)からラジアル外方向へ突出状の小頭部(13)とを、備えた横断面形状であって、上記基部(8),胴部(11),肩部(12),小頭部(13)の各幅寸法を、W0 ,W1 ,W2 ,W3 とすると、
W1 <W2 ≦W0
W3 <W2 ≦W0
なる関係式が成立し、さらに、上記基部(8)と胴部(11)の段付部(9)の横断面形状は、アキシャル方向直線状又はアキシャル外方下傾状若しくはアール形状としたことを特徴とするシール材。
【請求項2】
上記肩部(12)は、上記胴部(11)に対向する内周側段付部(14)の横断面形状が円弧凸状又はアキシャル外方上傾状に形成した請求項1記載のシール材。
【請求項3】
上記基部(8)の内周面(18)の横断面形状が、上記基部(8)の幅寸法W0 の50%以上の半径(R8 )を有する円弧凸状とした請求項1又は2記載のシール材。
【請求項4】
上記基部(8)の内周面(18)の横断面形状が、略直線状である請求項1又は2記載のシール材。
【請求項5】
横断面における全体高さ寸法をH0 とすると、 1.5・W0 ≦H0 ≦3・W0 なる関係式が成立して、横断面形状がラジアル方向に細長く構成された請求項1,2,3又は4記載のシール材。
【請求項6】
横断面における上記胴部(11)の高さ寸法をH1 とし、全体高さ寸法をH0 とすると、 0.2・H0 ≦H1 ≦0.35・H0 かつ 1.5・W0 ≦H0 ≦3・W0 なる関係式が成立して、横断面形状がラジアル方向に細長く構成された請求項1,2,3又は4記載のシール材。
【請求項7】
上記各寸法W0 ,W1 ,W2 ,W3 の間に、次式が成立する請求項1,2,3,4,5又は6記載のシール材。
0.5・W0 ≦W1 ≦ 0.7・W0
0.9・W0 ≦W2 ≦ W0
0.5・W0 ≦W3 ≦ 0.8・W0
【請求項8】
上記胴部(11)と基部(8)と肩部(12)によって、アキシャル外方向に開口状の浅皿型凹溝部(19(19)が包囲形成されていると共に、シール軸心(L1 )方向から見て、多数本の放射枝状のリブ(20)を上記浅皿型凹溝部(19)に一体に形成した請求項1,2,3,4,5,6又は7記載のシール材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図9】
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【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−216632(P2010−216632A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67276(P2009−67276)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】
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