説明

シール構造、電子装置、携帯装置及びシール方法

【課題】フレキシブルケーブル等の信号線又は回路部を通過させる筐体のシールに関し、止水、防塵等のシール機能を高めることにある。
【解決手段】筐体(ケース部6、8)をシールするとともに、そのシール部分(シール部22)から信号線を通過させるシール構造又はシール方法に関し、接合される第1及び第2の筐体部(ケース部6、8)の接合面部(28、30)の少なくとも一方に凹段差(32)を形成し、この凹段差の部分で第1及び第2の筐体部の間に第1のシール材(両面接着シート24)、信号線(フレキシブルケーブル20)又は回路部、及び第2のシール材を挟み込むことにより、第1のシール材が持つ粘着性や柔軟性と、第2のシール材(ガスケット26)が持つ伸縮性とを以て信号線又は回路部を通過させながら気密保持を実現している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯装置等の各種電子装置に止水や防塵等のために用いられるシール構造に関し、特に、フレキシブルケーブル等の信号線の通過を可能にしたシール構造、電子装置、携帯装置及びシール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯装置等の電子装置では、その用途や機能に応じた防水機能が必要であり、従来、水等の浸入防止のためのシール構造が採用されている。
【0003】
このシール構造に関し、特許文献1には、パッキンの間に基板を挟んだ場合でも防水機能を維持する電子装置について、フレキシブル基板と接触するパッキンに一様な高さ及び幅を有するリブ状の凸部を備え、この凸部が機器の胴及び裏蓋に設けられた溝に嵌め込まれ、筐体を閉状態としたときに、基板の側面部に密着する方向に弾性変形させて隙間を塞ぎ、水の浸入を抑制した機器について開示されている。
【0004】
特許文献2には、上側装置と下側装置とをヒンジ部を介して折り畳める構造とした携帯端末装置であって、ヒンジ部と上側装置及び下側装置との境界において、FPC及び接続ケーブルとその外側ケースとの間の空間がシールパッキンにより充填されている防水構造が開示されている。
【特許文献1】特開2002−198664公報(要約及び図1等)
【特許文献2】特開2004−47968公報(要約及び図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、携帯装置等の電子装置のシール構造では、防水、防塵の必要な箇所へのシール剤注入や、フレキシブルケーブル等の信号線とゴムとの一体成形又は接着、信号線のケース孔への圧入、又はパッキンの挟み込み等が採用されている。シール剤の注入や、フレキシブル基板とゴムとの接着には、シール剤や接着剤の固化まで時間がかかり、その固化までの間にシール剤や接着剤に塵埃が付着するというデメリットがあり、シール剤や接着剤の固化の管理や塵埃の付着を阻止するための処理を伴うことは製造工程的にも不利である。また、フレキシブルケーブルとゴムとの一体成形には、使用可能なゴムの種類やフレキシブルケーブルの条件に制約があり、製造コストが高いという不都合もある。
【0006】
シール構造には、単純にスポンジ又はゴム等のガスケットを筐体に挟み込む構造があるが、このような構造ではフレキシブルケーブルの厚さやガスケットの硬度によっては、フレキシブルケーブルとガスケットとの間に生じる隙間を封じることができない場合があり、浸水や、塵埃の侵入を防止できないおそれがある。
【0007】
筐体とシーリングとを以てケーブルを挟み込む構造では、筐体が固く、ケーブルが厚い場合には、ケーブルと筐体との間に隙間を生じ、この隙間を埋めることができない場合には十分な止水及び防塵の機能が得られない。
【0008】
また、フレキシブルケーブルを挟み込む2つのパッキンを設置した構造では、パッキンを組み込む筐体には高い組み立て精度が求められ、また、ケーブル厚の増大やパッキンの硬度によっては、ケーブルとパッキンとの間に隙間を生じるおそれがあり、この隙間により十分な止水及び防塵の機能が得られない。
【0009】
このような要求や課題について、特許文献1、2にはその開示や示唆はなく、それを解決する構成等についての開示や示唆もない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、フレキシブルケーブル等の信号線又は回路部を通過させる筐体のシールに関し、止水、防塵等のシール機能を高めることにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、フレキシブルケーブル等の信号線又は回路部を通過させる筐体のシールに関し、シール処理の作業性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、筐体をシールするとともに、そのシール部分から信号線又は回路部を通過させるシール構造又はシール方法に関し、接合される第1及び第2の筐体部の接合面部の少なくとも一方に凹段差を形成し、この凹段差の部分で第1及び第2の筐体部の間に第1のシール材、信号線又は回路部、及び第2のシール材を挟み込むことにより、第1のシール材が持つ粘着性や柔軟性と、第2のシール材が持つ伸縮性とを以て信号線又は回路部を通過させながら気密保持を実現している。斯かる構成により、上記目的を達成することができる。
【0013】
そこで、上記目的を達成するため、本発明の第1の側面は、筐体をシールするとともに、そのシール部分から信号線を通過させるシール構造であって、第1の筐体部と第2の筐体部の接合面部の少なくとも一方に形成された凹段差と、前記凹段差を覆って設置された第1のシール材と、前記凹段差の凹部内に設置された信号線を覆い、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との間に設置された第2のシール材とを備えることである。
【0014】
斯かる構成によれば、凹段差が第1のシール材で覆われ、凹段差内に設置された信号線は第1のシール材と第2のシール材とで挟み込まれて第1及び第2の筐体部の間の凹段差の部分に設置されるので、第1の筐体部と第2の筐体部との間に信号線を通過させるとともに、第1の筐体部と第2の筐体部との間、第1の筐体部と信号線との間、第2の筐体部と信号線との間がシールされる。従って、信号線の通過と筐体部間のシール性が高められるので、止水及び防塵が図られ、上記目的が達成される。
【0015】
上記目的を達成するためには、上記シール構造において、好ましくは、前記第1及び第2のシール材は、水分又は空気を遮断する柔軟性材料を用いてもよいし、前記第1のシール材は、その厚さが前記凹段差の段差高を超える幅にしてもよいし、前記第1のシール材は、その幅が前記凹段差の幅以上であってもよいし、また、前記第1のシール材は、伸縮可能な不連続性発泡体又は不連続性発泡体を含んでもよいし、また、前記第1のシール材は、その厚さが信号線の厚さを超えてもよいし、また、前記凹段差は、底面部が平坦面、凹凸面又は湾曲面、側壁部が垂直面、傾斜面又は湾曲面であってもよい。このような構成の何れを用いても、信号線の通過と筐体部間のシール性が高められるので、止水及び防塵が図られ、上記目的が達成される。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明の第2の側面は、電子装置に上記シール構造を備えることである。斯かる構成とすれば、信号線の通過と筐体部間のシール性が高められるので、電子装置の止水及び防塵が図られ、上記目的が達成される。
【0017】
また、上記目的を達成するため、本発明の第3の側面は、携帯装置に上記シール構造を備えることである。斯かる構成とすれば、信号線の通過と筐体部間のシール性が高められるので、携帯端末装置等の携帯装置の止水及び防塵が図られ、上記目的が達成される。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明の第4の側面は、電子装置であって、第1の筐体部と、前記第1の筐体部とヒンジを介して接合される第2の筐体部と、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との間に配置される回路部と、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との接合面部の少なくとも一方に形成された凹段差と、前記凹段差を覆うように設置された第1のシール材と、前記凹段差の凹部内に設置された前記回路部を覆い、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との間に設置された第2のシール材とを備えることである。
【0019】
斯かる構成によれば、凹段差が第1のシール材で覆われ、凹段差内に設置された回路部は第1のシール材と第2のシール材とで挟み込まれて第1及び第2の筐体部の間の凹段差の部分に設置されるので、第1の筐体部と第2の筐体部との間に回路部を通過させるとともに、第1の筐体部と第2の筐体部との間、第1の筐体部と回路部との間、第2の筐体部と回路部との間がシールされる。従って、回路部の通過と筐体部間のシール性が高められるので、止水及び防塵が図られ、上記目的が達成される。
【0020】
また、上記目的を達成するため、本発明の第5の側面は、筐体をシールするとともに、そのシール部分から信号線を通過させるシール方法であって、第1の筐体部と第2の筐体部の接合面部の少なくとも一方に凹段差を形成する工程と、前記凹段差を覆う第1のシール材を設置する工程と、前記凹段差の凹部内に設置された信号線を覆い、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との間に第2のシール材を設置する工程とを含むことである。
【0021】
このようなシール方法によれば、上記シール構造を筐体部間に実現することができ、信号線の通過と筐体部間のシール性が高められるので、止水及び防塵が図られ、上記目的が達成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0023】
(1) 接合される筐体部間のシール部分に信号線又は回路部を通過させることができるとともに、その筐体部間のシール性が高められ、止水及び防塵が図られる。
【0024】
(2) 接合される筐体部の少なくとも一方に設けられた凹段差、第1及び第2のシール材を用いて信号線又は回路部の通過を可能にするとともに、筐体部間をシールすることができ、シール構造の簡略化が図られる。
【0025】
(3) このようなシール構造又はシール方法を用いれば、信号線又は回路部とシール材との一体成形のような高度な技術は不要であって、製造や組立てのコストを削減できる。
【0026】
(4) 接合される筐体部の少なくとも一方に設けられた凹段差に第1のシール材を介在させて信号線又は回路部が設置され、その上に第2のシール材が設置されるので、信号線又は回路部の縁部側に発生しがちな隙間が第1及び第2のシール材の回り込み等で塞ぐことができ、シール性が高められる。
【0027】
(5) 第1のシール材として、信号線又は回路部より厚い粘着材を用いれば、信号線又は回路部の縁部側に発生しがちな隙間が粘着材で塞ぐことができ、シール性の向上が図られ、止水及び防塵が高められる。
【0028】
(6) このようなシール構造を電子装置や携帯装置に用いれば、電子装置や携帯装置の筐体部のシール性の向上が図られ、止水及び防塵が高められるとともに、信号線又は回路部の筐体部からの通過が行え、利便性が高められる。
【0029】
(7) 本発明のシール方法によれば、上記シール構造を容易に実現でき、信号線の筐体部からの通過とともにシール性を向上させ、各種機器の止水機能や防塵機能を向上させることができる。
【0030】
そして、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面及び各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
〔第1の実施の形態〕
【0032】
本発明の第1の実施の形態について、図1、図2、図3及び図4を参照する。図1は、第1の実施の形態に係る携帯装置の一例を示す断面図、図2は、加圧前の状態を示す図1のII−II線断面図、図3は、凹段差上に設置された両面接着シートを示す図、図4は、加圧後の状態を示す図1のIV−IV線断面図である。
【0033】
この携帯装置2は、シール構造、シール方法が適用された電子機器又は電子装置の一例であって、図1に示すように、そのケース4は第1及び第2の筐体部としてケース部6、8を備えている。各ケース部6、8は立壁部10、12で接合され、ケース部6、8の内部には空間部14が形成されている。空間部14には、信号線、回路部として例えば、回路基板16、電子部品等の各種の収納物が収納され、回路基板16のコネクタ部18には、板状の配線、信号線又は回路部として例えば、フレキシブルケーブル20が接続され、このフレキシブルケーブル20はシール部22を通過させてケース4より引き出されている。ここで、板状の配線、信号線には、信号線、電源線等の各種の回路配線が含まれ、回路部には、電子回路、電気回路等の回路が含まれる。
【0034】
シール部22には、フレキシブルケーブル20を挟んで第1のシール材として粘着材である両面接着シート24と、第2のシール材としてガスケット26とが設置され、ガスケット26はケース部6の接合面部28側に設置され、両面接着シート24はケース部8の接合面部30側に設置されている。ガスケット26は弾性、空気の通流を阻止する気密性、水の通流を阻止する止水性を備える弾性材料で形成され、例えば、ゴム又はエラストマ等で構成される。また、両面接着シート24は不連続性発泡基材又は不連続性発泡体を含む基材で構成され、適当な伸縮性を備えた材料であればよい。
【0035】
この実施の形態では図2に示すように、ケース部8の接合面部30には凹段差32が形成されている。この凹段差32は、接合面部30に形成された凹部によって形成されている。そこで、フレキシブルケーブル20、両面接着シート24及び凹段差32の大小関係について、フレキシブルケーブル20の幅をW1、凹段差32の幅をW2、両面接着シート24の幅をW3とすると、両面接着シート24の幅W3は凹段差32の幅W2より大きく、凹段差32の幅W2はフレキシブルケーブル20の幅W1より大きく設定されている。即ち、W1<W2<W3の関係である。フレキシブルケーブル20、凹段差32及び両面接着シート24の各中心を合致させた場合、フレキシブルケーブル20と凹段差32との間には幅W4、凹段差32と両面接着シート24との間には幅W5が存在している。これらを数式で示すと次の通りである。
W3=W1+2(W4+W5)=W2+2×W5 ・・・(1)
W2=W1+2×W4 ・・・(2)
であり、これらの関係から、
W4=(W2−W1)/2>0 ・・・(3)
W5=(W3−W2)/2>0 ・・・(4)
である。幅W4は、フレキシブルケーブル20に対する凹段差32の余裕度を表し、幅W5は、凹段差32に対する両面接着シート24の大きさの度合いを表している。従って、W1<W2<W3の関係が維持されれば、凹段差32が両面接着シート24で覆われ、凹段差32より幅の狭いフレキシブルケーブル20が両面接着シート24に接着されることになる。即ち、フレキシブルケーブル20は、凹段差32によって両面接着シート24に現れた窪み内に設置されることになる。
【0036】
凹段差32について、図3を参照すると、凹段差32はケース部8の接合面部30に形成された凹部であって、フラット面部34と、凹面部36と、これら面部間に形成された垂直面部38とで構成されている。垂直面部38は、凹段差32の深さを表している。そこで、フレキシブルケーブル20、両面接着シート24及び垂直面部38について、フレキシブルケーブル20の厚さをT1、凹段差32の垂直面部38の高さ(深さ)をT2、両面接着シート24の厚さをT3とすると、両面接着シート24の厚さT3はフレキシブルケーブル20の厚さT1より大きく、両面接着シート24の厚さT3は垂直面部38の高さ(深さ)T2より大きく設定される。即ち、T3>T1、T3>T2の関係にある。この場合、幅W4は垂直面部38の高さ(深さ)T2より大きく設定すればよい。即ち、W4>T2の関係にある。
【0037】
このように、ケース部8の凹段差32側に両面接着シート24が接着され、その上にフレキシブルケーブル20が設置されて接着され、その上からフレキシブルケーブル20及び両面接着シート24を覆ってガスケット26が設置され、このガスケット26の上にケース部6が設置される。
【0038】
この場合、凹段差32の深さT2より両面接着シート24の厚さT3が大きいので、凹段差32の窪みは両面接着シート24で覆われ、両面接着シート24上に設置されたフレキシブルケーブル20の上面はフラット面部34上の両面接着シート24の上面より僅かに突出した状態になる。
【0039】
そして、ケース部6、8に対して接合面部28、30の間隔を狭めるように圧縮力を加えて保持させると、図4に示すように、ケース部6、8間のシール部22には、ガスケット26が収縮するとともに、ガスケット26とケース部8との間に存在していた隙間にガスケット26が入り込み、シール構造が実現する。ガスケット26の柔軟性をフレキシブルケーブル20や両面接着シート24より高く設定すれば、高度な密封性が得られる。このようなシール構造により、外部からの水や塵埃等の侵入が阻止され、空間部14内の回路基板16等の収納物が水や塵埃等からの汚染から防護される。
【0040】
次に、シール方法について、図5及び図6を参照する。図5は、シール部を示す分解斜視図、図6は、シール方法の一例としてシール工程を示す図である。図5及び図6において、図1〜図4と同一部分には同一符号を付してある。
【0041】
このシール方法には、凹段差の形成工程、粘着材の設置工程、シール材の設置工程等が含まれている。
【0042】
A)凹段差32の形成工程
【0043】
ケース部8は合成樹脂で成形加工されるが、その際、接合面部30に対し、図5及び図6のAに示すように、フレキシブルケーブル20の引出し部分に凹段差32が形成される。この凹段差32の高さT2や幅W2は既述の通りである。
【0044】
B)粘着材の設置工程
【0045】
図6のBに示すように、凹段差32の中心と両面接着シート24の中心を合わせ、凹段差32の上に両面接着シート24が設置される。両面接着シート24は、凹段差32を覆って接合面部30に接着される。接着された両面接着シート24には、凹段差32に応じた窪みが生じる。
【0046】
C)フレキシブルケーブル20の設置工程
【0047】
両面接着シート24の上面には、図6のCに示すように、空間部14(図1)の回路基板16から引き出されたフレキシブルケーブル20が設置されて接着される。この場合、フレキシブルケーブル20の中心と凹段差32の中心を合致させれば、既述の寸法設定であれば、凹段差32によって両面接着シート24の上面に現れた窪み内にフレキシブルケーブル20が設置される。フレキシブルケーブル20は、両面接着シート24上にその接着力によって位置決めされて固定される。
【0048】
D)シール材の設置工程
【0049】
フレキシブルケーブル20の上面側には図6のDに示すように、フレキシブルケーブル20及び両面接着シート24を覆うように、ガスケット26及びケース部6が設置される。
【0050】
E)組立工程
【0051】
ケース部6、8に対し、上下方向に圧縮力を付与し、ケース部6、8を固定すれば、図6のEに示すように、ガスケット26が圧縮され、シール部22に発生していた隙間がガスケット26によって封止される。この場合、両面接着シート24も加えられた圧縮力によって変形し、凹段差32の隙間に回り込み、図4に示すように、気密性の高いシール構造が実現される。
【0052】
以上説明したシール構造及びシール方法について、利点を列挙すれば、次の通りである。
【0053】
以上述べたシール構造又はシール方法では、凹段差32を設けたケース部8に両面接着シート24を貼付し、その上にフレキシブルケーブル20及びガスケット26を配置し、他方のケース部6で挟み込む構成であるから、従来のシール剤を使用する場合に比べて製造工程を簡略化でき、製造時間を削減でき、製造コストを低減できる。
【0054】
フレキシブルケーブル20とガスケット26とを一体成形するような高度な技術を用いる必要はないので、メーカの制約も受けず、かつ製造コストを削減できる。
【0055】
ガスケット26と、フレキシブルケーブル20より厚い不連続発泡基材の両面接着シート24とでフレキシブルケーブル20を挟み込むので、フレキシブルケーブル20の縁部に生じる隙間を確実に埋めることができ、シール性を向上させ、止水性や防塵性が高められる。
【0056】
〔第2の実施の形態〕
【0057】
第1の実施の形態では、凹段差32に垂直面部38(図3)を用いたが、図7のAに示すように、傾斜面部40で構成してもよい。このような傾斜面部40を使用すれば、図7のBに示すように、両面接着シート24を傾斜面部40に沿って密着状態で馴染ませることができ、隙間が発生するのを防止できる。図7のA及びBにおいて、図3と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0058】
〔第3の実施の形態〕
【0059】
第2の実施の形態では、凹段差32に傾斜面部40(図7)を用いたが、図8のAに示すように、角部分を湾曲させた曲面部42で構成してもよい。このような曲面部42を使用すれば、図8のBに示すように、両面接着シート24を曲面部42に沿って密着状態で馴染ませることができ、隙間が発生するのを防止できる。図8のA及びBにおいて、図3、図7のA及びBと同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0060】
〔第4の実施の形態〕
【0061】
第1の実施の形態では、ケース部8側のみに凹段差32を形成してフレキシブルケーブル20を通過させたが、図9のAに示すように、ケース部8側に凹段差32Aを形成するとともに、ケース部6側に凹段差32Bを形成し、第1のシール材として、両面接着シート24A、24Bを設置し、両面接着シート24A側にフレキシブルケーブル20A、両面接着シート24B側にフレキシブルケーブル20Bを設置するとともに、これらフレキシブルケーブル20A、20Bの間に第2のシール材であるガスケット26を挟み込む構成としてもよい。この場合、図9のBに示すように、ケース部6、8を圧接させることにより、シール部22を密着させ、フレキシブルケーブル20A、20Bの通過部分及びケース部6、8間の高度な気密性が保持される。このような構成とすれば、第1の実施の形態と同様のシール構造又はシール方法を以て複数のフレキシブルケーブル20A、20Bを通過させることができ、利便性を高めることができる。
【0062】
〔その他の実施の形態〕
【0063】
(1) 上記実施の形態では、第1のシール材として両面接着シート24を例示したが、この両面接着シート24に代え、気密性(透気性)を備えかつ粘着性を持たない柔軟性シートで構成してもよい。
【0064】
(2) 上記実施の形態では、接合面部30に対向するガスケット26の面部をフラット面としたが、図10に示すように、フレキシブルケーブル20及び両面接着シート24に対向する面部に凹部44を形成し、この凹部44内にフレキシブルケーブル20及び両面接着シート24を密着させる構成としてもよい。図10において、図2と同一部分には同一符号を付しその説明を省略する。
【0065】
(3) 上記実施の形態では、凹段差32の凹面部36をフラット面としたが、図11に示すように、凹凸面部46で構成してもよい。このような構成によっても、両面接着シート24や柔軟性シートを密着させることができる。
【0066】
(4) 上記実施の形態では、凹段差32の凹面部36をフラット面としたが、曲面構成としてもよい。このような構成によっても、両面接着シート24や柔軟性シートを密着させることができる。
【実施例】
【0067】
〔第1の実施例〕
【0068】
次に、第1の実施例について、図12、図13、図14及び図15を参照する。図12は、第1の実施例に係る携帯装置を示す斜視図、図13は、携帯装置のヒンジ部を抽出して示した図、図14は、図13のXIV −XIV 線断面図、図15は、ガスケットの配置を示す図である。図12〜図15において、図1と同一部分には同一符号を付してある。
【0069】
この携帯装置2では、図12及び図13に示すように、第1の筐体部としてケース401と、第2の筐体部としてケース402とをヒンジ部404で連結し、折り畳み可能に構成されている。ケース401には複数のキーを備えた入力操作部406、ケース402には表示部408等が設置されている。
【0070】
図14に示すように、ケース401はケース部6A、8Aで構成され、ケース402はケース部6B、8Bで構成されており、ケース401側の空間部14A側に設置された回路基板16Aと、ケース402側の空間部14B側に設置された回路基板16Bとは、フレキシブルケーブル20を介して接続され、このフレキシブルケーブル20はヒンジ部404を通過させて配置されている。
【0071】
ケース401には既述のシール部22が形成され、同様に、ケース402側にもシール部22が形成され、各空間部14A、14Bが密封されている。この場合、ケース401側には両面接着シート24a、ガスケット26A、ケース402側には両面接着シート24b、ガスケット26Bが設置されており、このシール部22のシール構造は、第1の実施の形態(図1〜図6)で既述した通りであるので、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
そして、この携帯装置2では、図15に示すように、ケース部6A、6Bのそれぞれに周回状にガスケット26A、26Bが設置され、これらガスケット26A、26Bによって各シール部22以外の部分もシールされている。
【0073】
このように、2つのケース401、402を連結させた携帯装置2にあっては、本実施の形態のシール構造やシール方法を用いることにより、ケース401、402間にフレキシブルケーブル20を通過させることができるとともに、フレキシブルケーブル20の通過部分のシール性を高め、水等の流体や塵埃等の侵入から各ケース401、402の内部の汚染を防止でき、信頼性の高い携帯装置2を提供することができる。
【0074】
〔第2の実施例〕
【0075】
上記実施例では携帯装置2を例示したが、本実施の形態は図16に示すように、電子装置として例えば、パーソナルコンピュータ(PC)200に適用することができる。このPC200では、ケース401、402とをヒンジ部404で連結して折り畳み構成されているので、第1の実施例と同様にシール構造やシール方法を適用することができる。図16において、図14と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
〔他の実施例〕
【0077】
(1) 上記実施例では、携帯装置2やPC200を例示したが、他の電子装置として例えば、図17に示すように、ヒンジ部404を備えて表示側のケース401、402が本体部と開閉可能にされたビデオカメラ300に適用してもよい。図17において、図14と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0078】
(2) 上記実施例では、ヒンジ部を備えて開閉可能な電子装置や携帯装置を例示したが、本発明は、ヒンジ部を備えていない携帯情報端末機(PDA:Personal Digital Assistant)、ゲーム機器、カメラ等の電子装置や携帯装置に適用することができるものであり、ヒンジ部を備える必要はない。
【0079】
次に、以上述べた本発明の実施の形態から抽出される技術的思想を請求項の記載形式に準じて付記として列挙する。本発明に係る技術的思想は上位概念から下位概念まで、様々なレベルやバリエーションにより把握できるものであり、以下の付記に本発明が限定されるものではない。
【0080】
(付記1) 筐体をシールするとともに、そのシール部分から信号線を通過させるシール構造であって、
第1の筐体部と第2の筐体部の接合面部の少なくとも一方に形成された凹段差と、
前記凹段差を覆って設置された第1のシール材と、
前記凹段差の凹部内に設置された信号線を覆い、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との間に設置された第2のシール材とを備えることを特徴とする、シール構造。
【0081】
(付記2) 付記1のシール構造において、
前記第1及び第2のシール材は、水分又は空気を遮断する柔軟性材料であることを特徴とする、シール構造。
【0082】
(付記3) 付記1のシール構造において、
前記第1のシール材は、粘着性を備える柔軟性材料であることを特徴とする、シール構造。
【0083】
(付記4) 付記1のシール構造において、
前記第1のシール材は、その厚さが前記凹段差の段差高を超えていることを特徴とする、シール構造。
【0084】
(付記5) 付記1のシール構造において、
前記第1のシール材は、その幅が前記凹段差の幅以上であることを特徴とする、シール構造。
【0085】
(付記6) 付記1のシール構造において、
前記第1のシール材は、伸縮可能な不連続性発泡体又は不連続性発泡体を含むことを特徴とする、シール構造。
【0086】
(付記7) 付記1のシール構造において、
前記第1のシール材は、その厚さが信号線の厚さを超えていることを特徴とする、シール構造。
【0087】
(付記8) 付記1のシール構造において、
前記凹段差は、底面部が平坦面、凹凸面又は湾曲面、側壁部が垂直面、傾斜面又は湾曲面であることを特徴とする、シール構造。
【0088】
(付記9) 付記1のシール構造において、
前記凹段差は、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部の接合面部の双方の対向面部に備えることを特徴とする、シール構造。
【0089】
(付記10) 付記1、2、3、4、5、6、7、8又は9に記載のシール構造を備えることを特徴とする、電子装置。
【0090】
(付記11) 付記1、2、3、4、5、6、7、8又は9に記載のシール構造を備えることを特徴とする、携帯装置。
【0091】
(付記12) 第1の筐体部と、
前記第1の筐体部とヒンジを介して接合される第2の筐体部と、
前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との間に配置される回路部と、
前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との接合面部の少なくとも一方に形成された凹段差と、
前記凹段差を覆うように設置された第1のシール材と、
前記凹段差の凹部内に設置された前記回路部を覆い、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との間に設置された第2のシール材とを備えることを特徴とする、電子装置。
【0092】
(付記13) 筐体をシールするとともに、そのシール部分から信号線を通過させるシール方法であって、
第1の筐体部と第2の筐体部の接合面部の少なくとも一方に凹段差を形成する工程と、 前記凹段差を覆う第1のシール材を設置する工程と、
前記凹段差の凹部内に設置された信号線を覆い、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との間に第2のシール材を設置する工程とを含むことを特徴とする、シール方法。
【0093】
(付記14) 付記13のシール方法において、
前記第1及び第2のシール材は、水分又は空気を遮断する柔軟性材料であることを特徴とする、シール方法。
【0094】
(付記15) 付記13のシール方法において、
前記第1のシール材は、粘着性を備える柔軟性材料であることを特徴とする、シール方法。
【0095】
(付記16) 付記13のシール方法において、
前記第1のシール材は、その厚さが前記凹段差の段差高を超えていることを特徴とする、シール方法。
【0096】
(付記17) 付記13のシール方法において、
前記第1のシール材は、その幅が前記凹段差の幅以上であることを特徴とする、シール方法。
【0097】
(付記18) 付記13のシール方法において、
前記第1のシール材は、伸縮可能な不連続性発泡体又は不連続性発泡体を含むことを特徴とする、シール方法。
【0098】
(付記19) 付記13のシール方法において、
前記第1のシール材は、その厚さが信号線の厚さを超えていることを特徴とする、シール方法。
【0099】
(付記20) 付記13のシール方法において、
前記凹段差は、底面部が平坦面、凹凸面又は湾曲面、側壁部が垂直面、傾斜面又は湾曲面であることを特徴とする、シール方法。
【0100】
(付記21) 付記13のシール方法において、
前記第1の筐体部と前記第2の筐体部の接合面部の双方の対向面部に前記凹段差を形成する工程を含むことを特徴とする、シール方法。
【0101】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、携帯装置等の電子機器や各種電子装置に止水や防塵等のために用いられるシール構造に関し、携帯装置等の各種電子装置に止水や防塵等のために用いられ、接合される筐体部間のシール部分に信号線を通過させることができるとともに、その筐体部間のシール性が高められ、止水及び防塵が図られる等、電子装置や携帯装置の信頼性の向上に寄与し、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】第1の実施の形態に係る携帯装置を示す断面図である。
【図2】加圧前の状態を示す図1のII−II線断面図である。
【図3】凹段差上に設置された両面接着シートを示す図である。
【図4】加圧後の状態を示す図1のIV−IV図である。
【図5】シール部を示す分解斜視図である。
【図6】シール方法の工程の一例を示す図である。
【図7】第2の実施の形態に係る凹段差を示し、Aは両面接着シートの設置前の凹段差を示す図、Bは両面接着シートが設置された凹段差を示す図である。
【図8】第3の実施の形態に係る凹段差を示し、Aは両面接着シートの設置前の凹段差を示す図、Bは両面接着シートが設置された凹段差を示す図である。
【図9】第4の実施の形態に係る携帯装置のシール部を示す図である。
【図10】他の実施の形態に係るシール部を示す図である。
【図11】他の実施の形態に係るシール部を示す図である。
【図12】第1の実施例に係る携帯装置を示す斜視図である。
【図13】携帯装置のヒンジ部及びその近傍部分を抽出して示した図である。
【図14】図13のXIV −XIV 線断面図である。
【図15】携帯装置のガスケットの配置を示す図である。
【図16】第2の実施例に係るパーソナルコンピュータを示す図である。
【図17】他の実施例に係るビデオカメラを示す図である。
【符号の説明】
【0104】
2 携帯装置
6、8 ケース部
14 空間部
20 フレキシブルケーブル
22 シール部
24 両面接着シート
26 ガスケット
28、30 接合面部
32 凹段差
38 垂直面部
40 傾斜面部
42 曲面部
200 パーソナルコンピュータ
300 ビデオカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体をシールするとともに、そのシール部分から信号線を通過させるシール構造であって、
第1の筐体部と第2の筐体部の接合面部の少なくとも一方に形成された凹段差と、
前記凹段差を覆って設置された第1のシール材と、
前記凹段差の凹部内に設置された信号線を覆い、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との間に設置された第2のシール材とを備えることを特徴とする、シール構造。
【請求項2】
請求項1のシール構造において、
前記第1及び第2のシール材は、水分又は空気を遮断する柔軟性材料であることを特徴とする、シール構造。
【請求項3】
請求項1のシール構造において、
前記第1のシール材は、その厚さが前記凹段差の段差高を超えていることを特徴とする、シール構造。
【請求項4】
請求項1のシール構造において、
前記第1のシール材は、その幅が前記凹段差の幅以上であることを特徴とする、シール構造。
【請求項5】
請求項1のシール構造において、
前記第1のシール材は、伸縮可能な不連続性発泡体又は不連続性発泡体を含むことを特徴とする、シール構造。
【請求項6】
請求項1のシール構造において、
前記第1のシール材は、その厚さが信号線の厚さを超えていることを特徴とする、シール構造。
【請求項7】
請求項1のシール構造において、
前記凹段差は、底面部が平坦面、凹凸面又は湾曲面、側壁部が垂直面、傾斜面又は湾曲面であることを特徴とする、シール構造。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載のシール構造を備えることを特徴とする、電子装置。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載のシール構造を備えることを特徴とする、携帯装置。
【請求項10】
第1の筐体部と、
前記第1の筐体部とヒンジを介して接合される第2の筐体部と、
前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との間に配置される回路部と、
前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との接合面部の少なくとも一方に形成された凹段差と、
前記凹段差を覆うように設置された第1のシール材と、
前記凹段差の凹部内に設置された前記回路部を覆い、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との間に設置された第2のシール材とを備えることを特徴とする、電子装置。
【請求項11】
筐体をシールするとともに、そのシール部分から信号線を通過させるシール方法であって、
第1の筐体部と第2の筐体部の接合面部の少なくとも一方に凹段差を形成する工程と、 前記凹段差を覆う第1のシール材を設置する工程と、
前記凹段差の凹部内に設置された信号線を覆い、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との間に第2のシール材を設置する工程とを含むことを特徴とする、シール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−26966(P2009−26966A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188787(P2007−188787)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】