説明

シール構造体

【課題】携帯電話等の電子機器のハウジングをシールするシール構造体であって、ハウジングを確実に密封すると共に、簡易な構成によって意匠性の向上を図ることが可能なシール構造体を提供する。
【解決手段】ハウジング2を密封するシール構造体1において、ハウジング2に取り付けられるシール部材10と、シール部材10と一体成形されており、シール部材10がハウジング2に取り付けられた状態において、少なくともその一部がハウジング2内部にある基板20と、基板20上に設けられる光源素子30と、を備えており、シール部材10が透明又は半透明であって、かつ光源素子30がシール部材10による密封領域内に設けられていることで、光源素子30から射出された光によってシール部材10の少なくとも一部が発光するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、ノートPC等の電子機器のハウジングに用いられるシール構造体に関する。更に詳しくは、イルミネーションを設けることで商品の意匠性を向上させ、他商品との差別化を図ることが可能なシール構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話、ノートPC等の電子機器は、電子部品、基板等を収容するハウジングを有しており、さらにこれらのハウジングには、外部からハウジング内部に水が入り込むことを防ぐためのシール構造体が設けられている。ハウジングをシールする手段としては、例えば、ハウジングどうしの隙間、及びハウジング内に挿通される基板とハウジングとの隙間を接着剤等で埋める手法が知られている。しかしこの場合、電子機器のメンテナンス等の際にハウジングを一旦分解すると、再度組み立てることが困難になるといった問題がある。
【0003】
そこで特許文献1には、各ハウジングをハウジング接合部によって連結した上で、ハウジング接合部内に基板を挿通する構成が開示されている。また、特許文献2には、先端に端子が設けられている基板に、ブッシュ形状のシール部材を取り付ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−142836号公報
【特許文献2】特開2004−214927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のシール構造体には次の課題がある。近年、携帯電話やスマートフォン、電子ペーパー、電子手帳、又は携帯音楽再生機器等の電子機器に対するユーザーのデザイン志向が高まりつつあり、これらの要求に応えるべく、イルミネーションを付加することで意匠性の向上、商品の差別化を図る電子機器が提案されている。例えば、これらの電子機器のハウジング外面にLEDの光を導光し、イルミネーションとして発光させる手法が知られている。
【0006】
しかしながらこの場合、光源からの光をイルミネーションとしてハウジング外面に導光するための構造を別途設ける必要があり、シール構造体を設けた上に、さらにイルミネーションのための構造を別途追加することになると、電子機器の構造の複雑化、大型化を招くことになる。
【0007】
そこで本発明は、携帯電話等の電子機器のハウジングをシールするシール構造体であって、ハウジングを確実に密封すると共に、簡易な構成によって意匠性の向上を図ることが可能なシール構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
ハウジングを密封するシール構造体において、
前記ハウジングに取り付けられるシール部材と、
前記シール部材と一体成形されており、前記シール部材が前記ハウジングに取り付けら
れた状態において、少なくともその一部が前記ハウジング内部にある基板と、
前記基板上に設けられる光源素子と、
を備えており、
前記シール部材が透明又は半透明であって、かつ前記光源素子が前記シール部材による密封領域内に設けられていることで、前記光源素子から射出された光によって前記シール部材の少なくとも一部が発光するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、シール部材が透明又は半透明であり、かつ光源素子がシール部材による密封領域内に設けられているので、光源素子から射出された光をシール部材内に取り込むことで、シール部材の少なくとも一部を発光させることができる。よって、ハウジングを確実に密封すると共に、簡易な構成によって意匠性の向上、商品の差別化を図ることが可能になる。また、シール部材と基板とが一体成形されており、さらにその基板上に光源素子が設けられているので、光源素子とシール部材とを精度よく位置決めすることができ、光源素子から射出された光を効率良くシール部材内に導くことができる。また、シール部材と基板とが一体成形されていることで、基板を取り付ける為にシール部材を折り曲げたりする必要がなく、シール部材の折り曲げ部で発生する局所的な発光を抑制することができる。
【0010】
また、本発明にあっては、
前記シール部材は、
ハウジングの外周に沿って設けられる枠形状に形成されていると共に、前記光源素子から前記シール部材内に入射した光を反射させて、前記シール部材の形状に沿ってその進行方向を変えることが可能な反射部を有していると好適である。
【0011】
かかる構成によれば、シール部材内に入射した光を反射部において反射させることで、枠形状のシール部材の広い範囲を発光させることができる。例えば、シール部材の湾曲部に反射部を形成することで、シール部材を全周にわたって発光させることができる。また、反射部を設けることにより、少ない光源素子でシール部材の広い範囲を発光させることができるので、部品点数の削減、製造コストの削減を達成することができる。
【0012】
また、本発明にあっては、
前記シール部材には導光部が設けられており、前記光源素子から射出された光を前記導光部から前記シール部材内に取り入れるように構成されていると好適である。
【0013】
かかる構成によれば、シール部材に導光部を設けることにより、光源素子から射出された光を効率良くシール部材内に取り込むことが可能になる。
【0014】
また、本発明にあっては、
前記シール部材には凹部が形成されており、前記光源素子が前記基板上であってかつ前記凹部内に設けられていると好適である。
【0015】
かかる構成によれば、シール部材に形成されている凹部内に光源素子を設けることによって、光源素子から射出された光を効率良くシール部材内に取り込むことが可能になる。また、凹部に光源素子を設けることで、電子機器やコネクタの薄型化及び小型化を実現することができる。
【0016】
また、本発明にあっては、
前記光源素子は、
前記基板上において前記シール部材に埋設されていると好適である。
【0017】
かかる構成によれば、光源素子とシール部材との間に界面が存在しないので、光源素子から射出された光をより効率的にシール部材内に取り込むことができ、シール部材を効率良く発光させることができる。
【0018】
また、本発明にあっては、
前記シール部材は、
自己接着性を有するゴム又はエラストマーであることを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、ハウジングに対するシール部材の取り付け性が向上することに加え、例えばメンテナンス等の際にハウジングを一旦分解しても、再度シール部材と共にハウジングを組み立てることができる。また、シール部材と基板との一体化をより確実に行うことができ、ハウジングと基板との間に隙間が生じにくくなり、ハウジングの防水機能を高めることができる。
【0020】
また、本発明にあっては、
前記自己接着性を有するゴム又はエラストマーとは、
自己接着型シリコーンゴム、液状フッ素ゴム、液状エチレンプロピレンゴム、又はウレタン系エラストマーであると好適である。
【0021】
かかる構成によれば、シール部材と基板との一体化をより確実に行うことができる。また、自己接着性のシリコーンゴムを用いると、耐熱性及び耐寒性、撥水性、電気絶縁性が良好となる。また、液状フッ素ゴムを用いると、耐熱性が良好となり、液状エチレンプロピレンゴムを用いると、製造コストの低減を図ることができ、ウレタン系エラストマーを用いると、耐摩耗性、電気絶縁性が良好となる。
【0022】
また、本発明にあっては、
前記光源素子は、
複数の色彩を発光可能であると好適である。
【0023】
かかる構成によれば、シール部材の発光色を容易に変更できるので、意匠性の向上、商品の差別化を図ることが可能になる。
【0024】
また、本発明にあっては、
前記基板は、フレキシブル配線基板であることが好適である。
【0025】
かかる構成によれば、
基板の厚さを薄くすることができるので、シール構造体の小型化を図ることが可能になる。また、基板がハウジングを挿通する場合は、ハウジングと基板との間をより確実に密封することができるので、シール構造体の防水性能を高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、携帯電話等の電子機器のハウジングをシールするシール構造体であって、ハウジングを確実に密封すると共に、簡易な構成によって意匠性の向上を図ることが可能なシール構造体を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】シール構造体の概略構成図。
【図2】第1実施形態に係るシール構造体の概略構成図。
【図3】第2実施形態に係るシール構造体の概略構成図。
【図4】第3実施形態に係るシール構造体の概略構成図。
【図5】第4実施形態に係るシール構造体の概略断面図。
【図6】本発明に係るシール構造体の概略断面図。
【図7】本発明におけるフレキシブル配線基板の概略断面図。
【図8】本発明における携帯電話の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0029】
[第1実施形態]
(1−1:シール構造体の概略構成)
図1を参照して、本実施形態に係るシール構造体の概略構成について説明する。図1は、本実施形態に係るシール構造体1の概略構成図である。
【0030】
図1(a)に図示するように、シール構造体1は、フレキシブル配線基板20と、フレキシブル配線基板20の両側に設けられているシール部材10、40とを有している。また、フレキシブル配線基板20の両端にはコネクタ25が設けられており、各ハウジング内の電気部品と電気的に接続できるように構成されている。
【0031】
一方のシール部材10は、フレキシブル配線基板20と一体成形されており、透明又は半透明に形成されている。なお、ここでいう「透明」とは、シール部材10を介して、光をハウジング外部に透過できる程度の光透過性を有していればよく、厳密に無色透明を意味するものではない。シール部材10に適用可能な材料については後述する。
【0032】
このシール部材10は、枠形状のシール部材であって、対向する一対のハウジング間に取り付けられることでハウジングを密封するものである。シール部材10がハウジングに取り付けられた状態では、ハウジング間の隙間、及びハウジングとフレキシブル配線基板20との隙間をシール部材10によって同時に塞ぐことができる。また、他方のシール部材40は、ブッシュ形状のシール部材であって、ハウジングに設けられた挿通孔に取り付けられることでハウジングを密封することができる。
【0033】
シール部材10はフレキシブル配線基板20と一体成形されているので、シール構造体1をハウジングに取り付ける際にシール部材と基板を別々に取り付ける場合と比較して、シール構造体1の取り付け性が向上する。また、シール部材10とフレキシブル配線基板20との間に隙間が生じないので、両者を別々に設ける場合と比較すると、シール構造体1の防水性能を高めることができる。
【0034】
特に、本実施形態のように、基板としてフレキシブル配線基板20を用いる場合は、フレキシブル配線基板20は他の基板と比較すると薄く、変形性に優れているので、シール部材10との間に隙間が生じにくく、シール構造体1の防水性能を高めることができる。
【0035】
なお、ここではフレキシブル配線基板20の両側に枠形状のシール部材10とブッシュ形状のシール部材40を設ける構成について説明しているが、本実施形態に係るシール構造体1の構成はこれに限られるものではない。即ち、両方とも枠形状のシール部材であってもよいし、またはシール部材が1つだけ或いは3つ以上設けられているシール構造体であってもよい。つまり、密封対象となるハウジングの構成に合わせて、シール構造体1の構成を適宜変更することが可能である。
【0036】
また、図1(a)にはフレキシブル配線基板20がハウジングを挿通するパターンのシール構造体1を示しているが、図1(b)のようにフレキシブル配線基板20がハウジングを挿通しないパターンであってもよい。即ち、フレキシブル配線基板20は、シール部材10がハウジングに取り付けられた状態において、少なくともその一部がハウジング内部にあればよく、必ずしもハウジングを挿通するような形態に限定されるものではない。
【0037】
次に、フレキシブル配線基板20上に設けられている光源素子について説明する。フレキシブル配線基板20上には、光源素子としてのLED(発光ダイオード)30が実装されている。LED30は、シール構造体1をハウジングに取り付けた状態でシール部材10の密封領域内にくるように配置されている。
【0038】
このようにLED30を設けることで、LED30から射出される光によってシール部材10の少なくとも一部を発光させることができる。さらに、LED30がシール部材10の近傍に設けられていれば、LED30から射出される光をより効率良くシール部材10内に取り込むことが可能になる。
【0039】
また、上述したようにフレキシブル配線基板20とシール部材10は一体成形されているので、これらを別々に取り付ける場合と比較すると、シール部材10とLED30の位置精度を高精度に維持しやすい。よって、LED30から射出される光をより効率良くシール部材10内に取り込むことが可能になる。
【0040】
(1−2:シール部材を効率良く発光させるための構成)
LED30の数を出来る限り少なくしてシール部材10を広い範囲にわたって発光させるためには、LED30からシール部材10内に入射した光の進行方向を変えるための反射部を設けることが望ましい。図2を参照して、本実施形態における反射部の構成について説明する。
【0041】
図2は、シール部材10に設けられた反射部11、12を説明するための図である。図示するように、シール部材10は、LED30からの光が入射する部分に設けられている反射部12と、枠形状のシール部材10の湾曲部分に設けられている反射部11とを有している。
【0042】
なお、LED30の発光部がシール部材10から離れている場合は、図示するようにシール部材10の一部をLED30に向かって延ばしてもよく、さらにLED30からの光が入射する部分には、LED30の発光部を囲うように凹部を形成してもよい。なお、反射部11はシール部材10の四隅に設けられていてもよい。
【0043】
反射部12はLED30の発光面と対向する位置に設けられており、斜面状に形成されていることで、光をシール部材10の形状に沿う方向へ反射させることができる(図中矢印方向)。また、反射部11はシール部材10の湾曲部分に設けられており、光がシール部材10の形状に沿って進むように、反射部12で反射された光の進行方向を変えるものである。
【0044】
このようにシール部材10に反射部11、12を設けることにより、LED30から射出された光をシール部材10内に効率良く取り込むことが可能になる。なお、それぞれの反射部は鏡面加工によって形成されているが、シール部材10内で光を反射可能であれば、反射部の加工方法は特に限定されない。なお、特に図示しないが、入射効率を上げる為に、シール部材10において光が入射する部分をLED30に近づけたり、光が入射する部分の厚みを厚くしてもよい。あるいは、LED30からシール部材10の光が入射する部分にかけて、透明樹脂でオーバーコートしてもよく、反射フィルム等を貼り付けてもよ
い。
【0045】
(1−3:フレキシブル配線基板の構成)
図7を参照して、フレキシブル配線基板20の構成について説明する。図7は、フレキシブル配線基板20の概略断面図である。
【0046】
フレキシブル配線基板20は、ベースフィルム20d(基層)、ベースフィルム20d上に形成されている配線パターン20b(導電層)、及び配線パターン20b上に形成されている表面保護絶縁材20a(絶縁層)から構成されている。なお、配線パターン20bは接着層20cによってベースフィルム20d上に接着されているが、接着層20cを設けない構成であってもよい。
【0047】
配線パターン20bは、接着層20cによってベースフィルム20d上に貼り付けられた圧延銅箔及び電解銅箔等の金属箔を、エッチングすることによって形成されている。あるいは、ベースフィルム20dの表面(又はベースフィルム20dに形成された接着層20cの表面)に、銅または銀のような金属その他の導電体を用いて、めっき、印刷、蒸着またはスパッタ等の方法によって配線パターン20bを形成することもできる。接着層20cは、ポリイミド等の公知の熱可塑性樹脂、またはシアネートエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、フェノール系樹脂、ナフタレン樹脂、ユリア樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、ケイ素樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及びポリウレタン樹脂等の公知の熱硬化性樹脂を用いて形成される。あるいは、接着層20cは、上述の有機樹脂に、シリカまたはアルミナ等の無機フェラーを分散させたもので形成することもできる。
【0048】
ベースフィルム20d及び表面保護絶縁材20aとして適用可能な材料は、特に限定されないが、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、環状ポリオレフィン、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート、シクロオレフィンポリマーから選択される1種類のフィルム、又は複数の樹脂フィルムを積層した積層フィルムであってもよい。なお、ベースフィルム20d、及び表面保護絶縁材20aの厚さは5〜200μmが好ましく、5〜100μmであれば特に好ましい。なお、フレキシブル配線基板20として、片面構造について例示しているが、それに限らず両面構造や多層構造であってもよく、多層構造の場合はリジッドフレックス配線基板であってもよい。
【0049】
(1−4:シール構造体の製造方法)
上述のフレキシブル配線基板20に対してシール部材10を一体成形し、シール構造体1を得る製造方法について説明する。
【0050】
まず、シール部材10に適用可能な材料について説明する。シール部材10としては、取り扱い性の観点から柔軟なものであって、かつ透明若しくは半透明であればよく、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタン系エラストマー、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ブチルゴム、ブタジエン−スチレン共重合体、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブタジエンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、1,2−BR系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等を適用可能である。特にこれらの中でも、自己接着性を有する材料が望ましく、自己接着型シリコーンゴム、液状フッ素ゴム、液状エチレンプロピレンゴム又はウレタン系エラストマーが好ましく、これらの材料を適用した場
合は、シール部材10とフレキシブル配線基板20との一体化をより確実に行えると共に、耐熱性及び耐寒性、撥水性、電気絶縁性が良好となる。特に液状フッ素ゴムは耐熱性が良好であり、液状エチレンプロピレンゴムは安価に製造することができ、ウレタン系エラストマーは耐摩耗性、電気絶縁性が良好である。
【0051】
シール構造体1は、予め目的の形状に仕上げられたフレキシブル配線基板20の表面保護絶縁材20aの上に、直接、金型を用いて材料を注入し、シール部材10が一体成形されることで製造される。シール部材10としては、自己接着性液状ゴムである自己接着型シリコーンゴムが好ましく使用できるが、これに限られるものではない。自己接着型シリコーンゴムとしては、信越シリコーン(株)製のX−34−1277A/B、X−34−1547A/B、X−34−1464A/B等が挙げられる。また、枠形状のシール部材10及びブッシュ形状のシール部材40は、金型を用いて成形されるシール部材の両端同士を接着固定で形成することも可能である。さらには、シール構造体1の他の製造方法として、押出し成型等により予めひも状に成形したシール部材を枠形状にセットし、シール部材の両端どうしをフレキシブル配線基板20に接着固定してもよい。ここで、ひも状に成形したシール部材は、光ファイバーのようなコア/クラッド層からなる複層構造でもよいし、内部が空洞のチューブ状でもよい。なお、接着固定のみならず、融着固定、又は密着固定によって固定してもよい。
【0052】
シール部材10全体を発光させる方法として、上記で挙げた各ゴム、エラストマーに気泡、又は光散乱体(例えば、ラメ、糸片、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等)を含有させることで、光散乱効果を一層促進させてもよい。さらに、屈折率の低い透明樹脂からなるクラッド層でシール部材10を覆い、このクラッド層の表面に光拡散シートを被覆してもよい。また、シール部材10の外周にレーザーでドット加工を施したり、インクジェットによるドット印刷を施してもよい。あるいは、シール部材10の成形時に凹凸を形成することで、光の散乱を促す構成であってもよい。
【0053】
この製造方法によれば、簡易かつ安価な構成によってハウジングを確実に密封可能なシール構造体1を得ることができる。即ち、シール部材10によって、ハウジングの合わせ面間の間隙、ハウジングとフレキシブル配線基板20との間の間隙を確実に密封することができる。
【0054】
なお、シール構造体1は、例えば図8に示すように、携帯電話のハウジング2に対して利用することも可能であるし、また、コネクタハウジングに対して利用することもできる。さらに上述したように、シール部材の形状は、枠形状、ブッシュ形状の他、各種の形状を採用可能であるし、フレキシブル配線基板に対して設けられるシール部材の数は、目的とする機器に応じて適宜変更することができる。
【0055】
このように本実施形態によれば、携帯電話等の電子機器のハウジングをシールするシール構造体であって、ハウジングを確実に密封すると共に、簡易な構成によって意匠性の向上を図ることが可能なシール構造体を提供することが可能になる。
【0056】
[第2実施形態]
図3を参照して、本発明を適用可能な第2実施形態に係るシール構造体について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成に関しては説明を省略し、ここでは第1実施形態と異なる点についてのみ説明を行う。
【0057】
(シール部材を効率良く発光させるための構成)
LED30から射出された光をより効率的にシール部材10内に取り込むために、本実施形態では、シール部材10に導光部13が設けられていることが特徴である。フレキシ
ブル配線基板20にはLED30が2つ実装されており、それぞれのLED30に対応して、導光部13が2つ設けられている。また、導光部13から入射した光は、シール部材10内の反射部11でシール部材10の形状に沿う方向へ反射される。
【0058】
なお、ここではLED30を2つ設ける構成について説明しているが、LED30の数はこれに限られるものではなく、1つであってもよい。また、第1実施形態で説明したような切り込み形状の反射部(図2の符号12)を設けてもよい。このようにシール部材10に導光部13を設けることにより、LED30から射出された光を、光漏れを少なくしてシール部材10に取り込むことが出来る。よって、LED30の数が少ない場合も、シール部材10を十分に発光させることが可能になる。なお、特に図示していないが、入光効率をさらに上げるために、光が入射する導光部13の厚みを厚くしてもよい。あるいは、LED30から導光部13にかけて、透明樹脂でオーバーコートしてもよく、反射フィルム等を貼り付けてもよい。
【0059】
以上より、本実施形態によれば、携帯電話等の電子機器のハウジングをシールするシール構造体であって、ハウジングを確実に密封すると共に、簡易な構成によって意匠性の向上を図ることが可能なシール構造体を提供することが可能になる。
【0060】
[第3実施形態]
図4を参照して、本発明を適用可能な第3実施形態に係るシール構造体について説明する。なお、第1、第2実施形態と同一の構成に関しては説明を省略し、ここでは第1、第2実施形態と異なる点についてのみ説明を行う。
【0061】
(シール部材を効率良く発光させるための構成)
図4(a)に図示するように、シール構造体1を上方から見た場合に、本実施形態のLED30はフレキシブル配線基板20上であって、かつシール部材10内に配置されている。また、図4(b)に図示するように、LED30を2つ実装し、左右それぞれに光を射出するようにしてもよい。なお、シール部材10には不図示の凹部が形成されており、製造工程ではこの凹部内にLED30がくるようにしてフレキシブル配線基板20とシール部材10とが一体成形されていてもよい。
【0062】
図5に、シール構造体1において、フレキシブル配線基板20上にLED30が実装され、かつシール部材10が形成されている部分の概略断面図を示す。図5(a)はシール部材10に設けられた開口内にLED30を配置した場合を示す。これによれば、シール部材10が所要の耐熱性を備えていれば、シール部材10を形成した後にLED30を実装することも可能である。一方、図5(b)は、シール部材10に形成されている凹部10a内にLED30を配置した場合を示す。これによれば、LED30から射出された光を効率良くシール部材10内に取り入れることが可能になる。また、LED30の実装位置はこれに限られるものではなく、図5(c)に示すように、LED30をシール部材10に埋設してもよい。これによれば、LED30の発光面とシール部材10との間に界面が生じないので、LED30から射出された光をさらに効率良くシール部材10内に取り入れることができる。
【0063】
また、上述したように枠形状のシール部材10は、ひも状のシール部材の両端同士を接着固定して形成することも可能である。その場合は、両端の端面に平坦部を設け、少なくとも一方の平坦部にLED30がくるようにフレキシブル配線基板20とシール部材10とを一体成形すれば、図示するようにシール部材10の広い領域を発光させることができる。
【0064】
以上より、本実施形態によれば、携帯電話等の電子機器のハウジングをシールするシー
ル構造体であって、ハウジングを確実に密封すると共に、簡易な構成によって意匠性の向上を図ることが可能なシール構造体を提供することが可能になる。
【0065】
[第4実施形態]
図6を参照して、本発明を適用可能な第4実施形態に係るシール構造体について説明する。なお、第1〜第3実施形態と同一の構成に関しては説明を省略し、ここでは第1〜第3実施形態と異なる点についてのみ説明を行う。
【0066】
(シール部材を効率良く発光させるための構成)
図6は、シール構造体1の断面を示すものであって、ハウジング2の間をシール部材10によって密封している状態を示している。
【0067】
図6(a)に示すように、ここではLED30を、その光の射出方向がフレキシブル配線基板20の略法線方向になるようにしてフレキシブル配線基板20上に実装している。
【0068】
そして、それぞれのLED30から射出された光をシール部材10の形状に沿って進めるべく、シール部材10には両端の端面にそれぞれ形成された傾斜部14の表面に反射加工を施している。これによれば、LED30から射出された光が反射機能を有する傾斜部14で反射され、シール部材10内を進むことが可能になる。
【0069】
なお、LED30の数は1つに限られるものではない。例えば、図6(b)に示すように、フレキシブル配線基板20を複層構造とし、上面と下面のそれぞれの表面にLED30を実装し、LED30から射出された光を傾斜部14によって反射させるようにしてもよい。
【0070】
このようにシール部材10の端面に形成された傾斜部14を反射部として利用することにより、簡易な構成によってLED30から射出された光をシール部材10内に導くことができる。よって、本実施形態によれば、携帯電話等の電子機器のハウジングをシールするシール構造体であって、ハウジングを確実に密封すると共に、簡易な構成によって意匠性の向上を図ることが可能なシール構造体を提供することが可能になる。
【0071】
[その他の実施形態]
第1〜第4実施形態では、LED30の数が1個又は2個の場合について説明したが、LED30の数はこれに限られるものではない。デザイン上の要求を満たすべく、さらにLED30の数を追加してもよい。また、全てのLEDから射出される光を同色とする必要はなく、LED30ごとに光の色彩を変えるようにしてもよいし、複数の色彩を発光可能なLED30を設けてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…シール構造体 2…ハウジング 10…シール部材 11、12…反射部 13…導光部 14…傾斜部 20…フレキシブル配線基板 30…LED 40…シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを密封するシール構造体において、
前記ハウジングに取り付けられるシール部材と、
前記シール部材と一体成形されており、前記シール部材が前記ハウジングに取り付けられた状態において、少なくともその一部が前記ハウジング内部にある基板と、
前記基板上に設けられる光源素子と、
を備えており、
前記シール部材が透明又は半透明であって、かつ前記光源素子が前記シール部材による密封領域内に設けられていることで、前記光源素子から射出された光によって前記シール部材の少なくとも一部が発光するように構成されていることを特徴とするシール構造体。
【請求項2】
前記シール部材は、
ハウジングの外周に沿って設けられる枠形状に形成されていると共に、前記光源素子から前記シール部材内に入射した光を反射させて、前記シール部材の形状に沿ってその進行方向を変えることが可能な反射部を有していることを特徴とする請求項1に記載のシール構造体。
【請求項3】
前記シール部材には導光部が設けられており、前記光源素子から射出された光を前記導光部から前記シール部材内に取り入れるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシール構造体。
【請求項4】
前記シール部材には凹部が形成されており、前記光源素子が前記基板上であってかつ前記凹部内に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシール構造体。
【請求項5】
前記光源素子は、
前記基板上において前記シール部材に埋設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシール構造体。
【請求項6】
前記シール部材は、
自己接着性を有するゴム又はエラストマーであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシール構造体。
【請求項7】
前記自己接着性を有するゴム又はエラストマーとは、
自己接着型シリコーンゴム、液状フッ素ゴム、液状エチレンプロピレンゴム、又はウレタン系エラストマーであることを特徴とする請求項6に記載のシール構造体。
【請求項8】
前記光源素子は、
複数の色彩を発光可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシール構造体。
【請求項9】
前記基板は、フレキシブル配線基板であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシール構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−89698(P2012−89698A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235588(P2010−235588)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】