説明

シール機能付き軸受装置

【課題】
高性能化及び印刷速度向上等に伴う回転部材の高速回転化に対応し、グリースを使用せず無潤滑にてシール近傍の摩擦熱によるトナーの軟化、融着により固化凝集を抑制し、現像剤の品質を維持できるシール機能付き軸受装置を提供する。
【解決手段】
回転部材のシャフト2を回転可能に支承するとともに、内容物の漏洩を防止するためのシール機能付き軸受装置3であって、機器に装着する熱可塑性樹脂ベース複合材からなるハウジング4に、PTFEベース複合材からなるリップ型シール5と、軸受(すべり軸受部6)を一体的若しくは別部材として組み付けて一体化し、ハウジングと軸受とが熱伝導率0.60W/mK以上の熱特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール機能付き軸受装置に係わり、更に詳しくは主にガラス転移温度(Tg)が低いトナーを用いる複写機又はプリンターの現像装置に適用するシール機能付き軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機又はプリンターには、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を搬送、攪拌する回転部材を備えた現像装置又は現像剤収容容器を有し、そしてこれらの現像装置又は現像剤収容容器には、現像剤漏洩防止用及び回転部材支承用のシール、シールリテーナー、シールリテーナーハウジング、軸受及び軸受ハウジング等、複数の部材からなるシール機能付き軸受が用いられている。
【0003】
従来、シールリテーナー又はシールリテーナーハウジングには、汎用的な樹脂組成物(熱伝導率0.10〜0.40W/mK)が使用されていた。一方、現像装置の高性能化及び印刷速度向上等を目的に、上記回転部材の回転数が高くなってきている。例えば、従来の現像装置では、回転部材の回転数が300〜400rpmであるのに対し、最近の現像装置では、700rpmと大きくなっている。それにより、シール近傍では上記シールとの摩擦熱が低速時との比較で大きくなり、低いガラス転移温度を有するポリマー成分からなるトナーにおいては、その熱で軟化し始め、トナー同士あるいはトナーとキャリアとが固化凝集し、現像剤の品質低下及び画質に悪影響を及ぼすといった問題が顕著になってきた。また、上記摩擦熱を抑えるため、シール部にグリースを塗布する試みもあるが、現像剤付着によるグリース効能の低下及びグリースが現像剤に混入する問題もあり、根本的な解決手段ではなかった。
【0004】
前述の課題を改善するために、特許文献1、2には、現像剤のスクリュー攪拌部材のシャフト端部を熱伝導性の高い材質で形成し、発生した摩擦熱をシャフトの端部から本体ケーシングの外部に逃す技術が開示されているが、攪拌部材の製造コストが大幅に上昇する。また、特許文献3では、シール部材に熱伝導率が1W/mK以上の熱伝導性が高いエラストマーや熱伝導ゲルからなる樹脂材料を用いる点が開示されているが、シール性はPTFEベース複合材よりも劣る。
【0005】
尚、本出願人の先願に係る特許文献4には、合成樹脂製のハウジングにPTFE系樹脂製のリップ型シールをインサート射出成形して一体化するとともに、すべり軸受部を一体成形により形成した構造の軸受兼用シール装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−191192号公報
【特許文献2】特開2008−257075号公報
【特許文献3】特開2008−176033号公報
【特許文献4】特開2002−323139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、高性能化及び印刷速度向上等に伴う回転部材の高速回転化に対応し、グリースを使用せず無潤滑にてシール近傍の摩擦熱によるトナーの軟化、融着により固化凝集を抑制し、現像剤の品質を維持できるシール機能付き軸受装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題解決のために、回転部材のシャフトを回転可能に支承するとともに、内容物の漏洩を防止するためのシール機能付き軸受装置であって、機器に装着する熱可塑性樹脂ベース複合材からなるハウジングに、PTFEベース複合材からなるリップ型シールと、軸受を一体的若しくは別部材として組み付けて一体化し、前記ハウジングと軸受とが熱伝導率0.60W/mK以上の熱特性を有することを特徴とするシール機能付き軸受装置を構成した(請求項1)。
【0009】
具体的には、前記軸受が前記ハウジングと一体的である場合には、該ハウジングと同一材料にて該ハウジングにすべり軸受部を一体成形してなること(請求項2)、あるいは前記軸受が前記ハウジングと別部材である場合には、金属製の転がり軸受又は金属製のすべり軸受又は熱伝導率0.60W/mK以上の熱特性を有する熱可塑性樹脂ベース複合材で成形したすべり軸受を前記ハウジングに組み付けて一体化してなること(請求項3)が好ましい。
【0010】
また、前記ハウジングの成形時に前記シールをインサート射出成形にて一体化してなること(請求項4)、あるいは前記シールを、熱伝導率0.60W/mK以上の熱可塑性樹脂ベース複合材からなるシールリテーナーにインサート射出成形にて一体化し、該シールリテーナーを前記ハウジングに組み付けて一体化してなること(請求項5)が好ましい。
【0011】
そして、前記熱可塑性樹脂ベース複合材が、熱伝導率0.60W/mK〜5W/mKであるとより好ましい(請求項6)。
【0012】
また、前記シールは、厚みが0.10〜0.60mm、前記シャフトに接触するリップ幅が0.5〜2.0mmであるとより好ましい(請求項7)。
【発明の効果】
【0013】
以上にしてなる本発明のシール機能付き軸受装置によれば、ハウジングを熱伝導率が0.60W/mK以上の熱可塑性樹脂ベース複合材で形成したので、シールとシャフトとの摺動により発生する摩擦熱を、シールから直接ハウジング又は同じく熱伝導率が高いシールリテーナーを介してハウジングから機器の本体ケーシングへ効率良く逃し、温度上昇を抑制することができる。特に、金属製の転がり軸受を用いた場合には、該転がり軸受の熱伝導率は非常に高い(鉄は83.5W/mK)ので、シールの摩擦熱をハウジングに伝達して温度上昇を更に抑制することができる。また、ハウジングにすべり軸受部を一体成形した場合、あるいは熱伝導率が0.60W/mK以上の熱可塑性樹脂ベース複合材で形成したすべり軸受をハウジングに組み付けた場合には、該すべり軸受とシャフトとの摺動により発生する摩擦熱を、ハウジングから機器の本体ケーシングへ逃し、温度上昇を抑制することができる。
【0014】
本発明のシール機能付き軸受装置を現像装置に適用すれば、高性能化及び印刷速度向上等に伴う回転部材の高速回転化に際し、トナーの軟化、融着による固化凝集を抑制し、現像剤の品質を維持させること、即ち先端技術である低Tg省エネルギータイプのトナーが従来よりも使用し易くなるといった利点があり、省エネルギー化及び高画質化等に貢献できる。更に、シールをハウジングに直接インサート射出成形により一体化して保持し、あるいはシールをシールリテーナーにインサート射出成形により一体化したものをハウジングに組み込んで保持したので、組立工数の削減が可能となり、製品として部品点数の削減及びコスト低減を図ることができる。
【0015】
また、前記シールは、厚みが0.10〜0.60mm、前記シャフトに接触するリップ幅が0.5〜2.0mmであると、機械的特性を満たしつつ、摺動発熱の抑制及びシール性の両面で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るシール機能付き軸受装置の第1実施形態(タイプI)を示す簡略断面図である。
【図2】本発明に係るシール機能付き軸受装置の第2実施形態(タイプII)を示す簡略断面図である。
【図3】本発明に係るシール機能付き軸受装置の第3実施形態(タイプIII)を示す簡略断面図である。
【図4】本発明に係るシール機能付き軸受装置の第4実施形態(タイプIV)を示す簡略断面図である。
【図5】本発明に係るシール機能付き軸受装置の第5実施形態(タイプV)を示す簡略断面図である。
【図6】粉体シール試験機を示す簡略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。図1〜図5は本発明のシール機能付き軸受装置の実施形態を示し、図6は粉体シール試験機を示し、図中符号1は本体ケーシング、2はシャフト、3がシール機能付き軸受装置をそれぞれ示している。本発明のシール機能付き軸受装置3は、機器の本体ケーシング1と回転部材のシャフト2との間に設け、シャフト2を回転可能に支承するとともに、現像剤等の内容物の漏洩を防止するものである。
【0018】
第1実施形態(タイプI)のシール機能付き軸受装置3は、図1に示すように、熱伝導率0.60W/mK以上の熱特性を有する熱可塑性樹脂ベース複合材からなるハウジング4に、PTFEベース複合材からなるリップ型シール5をインサート射出成形によって一体化するとともに、該ハウジング4の一部にすべり軸受部6を一体成形にて形成した構造である。つまり、前記すべり軸受部6は、ハウジング4と同一材料にて形成されており、同様に熱伝導率が高く、シャフト2との間で発生した摩擦熱をハウジング4から本体ケーシング1に伝達して逃し、温度上昇を抑制するのである。
【0019】
第2実施形態(タイプII)のシール機能付き軸受装置3は、図2に示すように、熱伝導率0.60W/mK以上の熱特性を有する熱可塑性樹脂ベース複合材からなるハウジング7に、PTFEベース複合材からなるリップ型シール5をインサート射出成形によって一体化し、更に金属製の転がり軸受8を組み付けて一体化した構造である。ここで、金属製の転がり軸受8の熱伝導率は、0.60W/mKよりも十分に高いものである。
【0020】
第3実施形態(タイプIII)のシール機能付き軸受装置3は、図3に示すように、第2実施形態の金属製の転がり軸受8の代わりに、金属製のすべり軸受又は熱伝導率0.60W/mK以上の熱特性を有する熱可塑性樹脂ベース複合材で成形したすべり軸受9を前記ハウジング7に組み付けて一体化した構造である。その他の構成は、図2と同様であるので、同一構成には同一符号を付してその説明は省略する。
【0021】
第4実施形態(タイプIV)のシール機能付き軸受装置3は、図4に示すように、熱伝導率0.60W/mK以上の熱特性を有する熱可塑性樹脂ベース複合材からなるハウジング10に、前記シール5を、熱伝導率0.60W/mK以上の熱可塑性樹脂ベース複合材からなるシールリテーナー11にインサート射出成形にて一体化し、該シールリテーナー11を前記ハウジング10に組み付けて一体化し、更に金属製の転がり軸受8を組み付けて一体化した構造である。その他の構成は、図1と同様であるので、同一構成には同一符号を付してその説明は省略する。
【0022】
第5実施形態(タイプV)のシール機能付き軸受装置3は、図5に示すように、第4実施形態の金属製の転がり軸受8の代わりに、金属製のすべり軸受又は熱伝導率0.60W/mK以上の熱特性を有する熱可塑性樹脂ベース複合材で成形したすべり軸受9を前記ハウジング10に組み付けて一体化した構造である。その他の構成は、図4と同様であるので、同一構成には同一符号を付してその説明は省略する。
【0023】
前記リップ型シール5において、シール材質としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をベースポリマーとする複合組成体を用いるが、その中でも充填材に、ガラス繊維、炭素繊維及び有機繊維などの繊維状物質又はウィスカ状及び粒子状の無機物質を任意配合で充填し、摩擦特性及び摩耗特性を高めた組成体が、摺動を伴う本シール用途では好適である。摩擦特性は、摺動発熱に関与する特性であるため、低摩擦特性を有する組成体が好ましい。また、摩耗特性は耐久シール性に関与する特性であるため、シール性を長期にわたり維持するためには低摩耗特性を有する組成体が好ましい。
【0024】
例えば、前記複合組成体の構成成分については、一般には二硫化モリブデン、有機繊維及び炭素繊維又はモース硬度が4以下のウィスカ状及び粒子状の無機物質及び炭素繊維等を配合すると、相手金属を損傷させることなく、PTFE単独との比較で摩擦摩耗特性の向上が図れることから、これら充填材を充填した組成体が本シール用途には好ましい。また、本発明において重要特性に挙げている熱伝導率については、このシールにおいては特に制限はなく、PTFEをベースポリマーとする複合組成体の代表的な数値、即ち0.25W/mK以上であれば、何ら問題なく使用できる。つまり、前記シール5については、シール性能を優先させて設計することが可能である。
【0025】
また、シールの形状については、本発明においては、前記複合組成体の機械的特性から、シール厚み0.10〜0.60mm(好ましくは0.20〜0.50mm)、前記シャフト2に接触するシールリップ幅0.5〜2.0mm(好ましくは0.75〜1.75mm)の範囲内が、摺動発熱及びシール性の両面で好ましく、使用環境及び要求耐久に応じて、前記範囲内において任意に設定することができる。
【0026】
本発明における摺動を伴わない樹脂製のシールリテーナー11、シールリテーナー兼軸受ハウジング7及びシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジング10において、ベースポリマーは、特に限定されることはなく、射出成形可能な任意の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、結晶性ポリマーであれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリエステル及びポリフェニレンサルファイドが使用でき、非結晶性ポリマーであれば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリカーボネート/アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体及びポリカーボネート及び変性ポリフェニレンエーテルが使用温度域及びコスト的な見地からは望ましく、前記シール5を保持するためのインサート射出成形材として、前記射出成形可能な熱可塑性樹脂を用いる際は、基本的に加工温度が、シール材質のベースポリマーであるポリテトラフルオロエチレンの融点を超えないものを選択する。
【0027】
本発明では、熱可塑性樹脂ベース複合材の熱伝導率は0.60W/mK以上であることが好ましく、更に熱伝導率0.60W/mK〜5W/mKがより好ましい。熱可塑性樹脂ベース複合材の熱伝導率の範囲を0.60W/mK〜5W/mKとするには、前記射出成形可能な任意の熱可塑性樹脂に熱伝導性の高い充填材を充填し、複合組成体とする必要があるが、この際の充填材としては、混練押出及び射出成形の工程に、大きな支障が出ない範囲で、炭素系物質、金属物質及び無機物質を適宜、適量充填することができる。
【0028】
例えば、繊維状の炭素系物質として代表的な炭素繊維を充填する場合においては、汎用的広範囲に用いられている以下2タイプ、即ちポリアクリロニトリル系炭素繊維(以下、PAN系炭素繊維)及びコールタール又は石油重質分を原料として得られるピッチ系炭素繊維のどちらを使用しても良い。また必要であれば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維を適度な比率での混合によっても使用でき、また混練押出時における作業性、射出成形時の流動性及び成形品の機械的特性を損なわない範囲で、チョップドストランド品及びミルド品あるいはこの両品を併用使用もできる。更に、前記、炭素繊維の平均繊維径については、5〜15μmのものが望ましく、これも上記と同様に性状、形状、ハンドリング性、計量性、ミキシング性、混練性、射出成形時の流動性、射出成形品としての機械的特性、寸法安定性及び熱伝導性のバランスにより、銘柄を選定することが好ましい。
【0029】
粒子状の炭素系物質として、代表的な黒鉛を充填する場合においては、人造物及び天然物のどちらでも使用できるが、熱伝導特性の面で、結晶化割合の高い鱗片黒鉛及び鱗状黒鉛が望ましく、もちろん両者併用での使用も可能である。また、この黒鉛の平均粒径については10〜150μmの範囲が好ましく、この範囲内であれば銘柄は複数使用であっても良く、前述の炭素繊維との併用使用で、作業性、加工性及び種々の特性バランスを図っても良い。
【0030】
また、金属を充填する場合においても、繊維状、粒状問わず、単独使用又は複数の種別、銘柄を併用して使用することができ、無機物質の場合も同様に、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム及び窒化硼素など、単独使用又は複数の種別、銘柄を併用して使用することができる。
【0031】
熱伝導性向上のため、上記炭素系物質、金属物質及び無機物質を充填材として使用するにしても、基本的には上記熱伝導率の範囲を満たし、射出成形における成形性を損なわずに、所望の機械的特性を満たし、寸法精度を保持できれば、どのような種別のものを用いても良く、炭素系物質、金属物質及び無機物質のすべてを組み合わせて使用した複合組成体であっても良く、充填材の種別、充填量など、特に限定されるものではない。
【0032】
本発明における摺動を伴う樹脂製のハウジング4(シールリテーナー兼軸受)及びすべり軸受9において、炭素系物質、金属物質及び無機物質と併用して、軸受特性付与のため、PTFE、二硫化モリブデンなどの固体潤滑材及びワックス類、オイル状物質を適宜添加する必要があり、例えば、PTFEを充填する場合においては、基本的に未焼成タイプ、焼成タイプのどちらでも使用でき、両者、適宜比率での併用も可能である。また使用するPTFEの平均粒径については5〜100μmの範囲が好ましく、更には10〜50μmであるとより好ましい。すべり軸受9は摺動を伴うこと及び適宜、グリース塗布がなされる可能性から、前記射出成形可能な熱可塑性樹脂のベースポリマーについては、ベースポリマーのみである程度の良好な摩擦摩耗特性を有したもの、及びある程度、耐グリース性を有しているものが望ましく、前記ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリエステル及びポリフェニレンサルファイド等の結晶性ポリマーを使用することが好適である。また、この射出成形可能な熱可塑性樹脂のベースポリマー量は、60容積%以上とすることが望ましく、ベースポリマー量70容積%以上であるとより好ましい。
【0033】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。尚、実施例及び比較例の記載に先立ち、実施したシール機能付き軸受装置の評価方法を記載する。
【0034】
(熱伝導率測定)
各々の射出成形可能な熱可塑性樹脂ベース複合材を射出成形にて、板状のテストピースを作製し、非定常細線加熱法を利用した熱伝導率計(京都電子工業(株)製、迅速熱伝導率計QTM-500)により、各々、熱伝導率を測定した。
【0035】
(温度上昇値(ΔT)の測定、現像剤の品質合否判定)
各タイプI〜Vのシール機能付き軸受装置を、図6に示す以下の粉体シール試験機(自社製)に装着し、下記に示す試験条件にて評価をおこなった。この粉体シール試験機は、試験容器20の底部に上下貫通した装着孔を設け、該装着孔に本発明に係るシール機能付き軸受装置3を組み込んでシャフト21へ垂直に挿入させるとともに、試験容器20に粉体22を充填し、前記シャフト21を所定の回転数で回転させてシール部の温度上昇値を熱電対温度計で測定し、また粉体22の様子を観察する。
【0036】
ここで、粉体22としては、ガラス転移温度48〜52℃の2成分現像剤を用いた。また、シャフト21の材質/径/表面粗さは、ステンレス鋼SUS303/φ6mm/算術平均粗さ0.8μmである。シャフト回転数は、700rpmと1000rpmであり、試験機雰囲気温度は23℃、試験時間は1時間である。
【0037】
以下の表1〜6には、タイプI〜Vのシール機能付き軸受装置における評価結果を示す
。尚、表中の温度上昇値ΔTは、室温とシールリップ近傍との温度差を示し、「○」、「△」及び「×」試験後の現像剤の様子を示す。この「○」、「△」及び「×」については、以下の現像剤品質判定の基準を設けた。
「○」については、現像剤の固化凝集及び試験前との比較で外観変化がなく、合格とした。「△」については、現像剤の小さな固化凝集がわずかに見られ、合格か不合格かの判断が分かれるボーダーラインとした。「×」については、現像剤の固化凝集が明らかに見られ、その凝集体が3mm径以上に成長しているものも存在し、現像剤の品質低下とみなし不合格とした。
【実施例】
【0038】
タイプI〜Vのシール機能付き軸受装置の具体的な実施例と比較例を以下に示し、粉体
シール試験機による評価も合わせて表に示す。
【0039】
[タイプIのシール機能付き軸受装置]
(実施例1)
圧縮成形したPTFE複合材からなる素材を機械加工により内径φ3.5mm、外径φ9mm、厚み0.30mmの円板状のφ6mmシャフト用シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率1.2W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し、タイプIのシール機能
付き軸受装置を作製した。
【0040】
(実施例2)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.85W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し、タイプIのシール機能付き軸受を作製した。
【0041】
(比較例1)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.40W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し、タイプIのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0042】
(比較例2)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.25W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し、タイプIのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0043】
【表1】

【0044】
表1のタイプIのシール機能付き軸受装置において、実施例1、2は、回転数700r
pm、1000rpmともに温度上昇値ΔTが20℃以下で、現像剤品質判定(以下、判定)「○」の良好な結果を示した。一方、比較例1、2では、回転数700rpmにおいて判定「△」あるいは判定「×」であるが、回転数1000rpmにおいては、温度上昇値ΔTが30℃を超え、判定「×」であった。
【0045】
[タイプIIのシール機能付き軸受装置]
(実施例3)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率1.2W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し、この成形体に金属製転がり軸受を圧入し、タイプIIのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0046】
(実施例4)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.85W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し、この成形体に金属製転がり軸受を圧入し、タイプIIのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0047】
(比較例3)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.40W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し、この成形体に金属製転がり軸受を圧入し、タイプIIのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0048】
(比較例4)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.25W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し、この成形体に金属製転がり軸受を圧入し、タイプIIのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0049】
【表2】

【0050】
表2のタイプIIのシール機能付き軸受装置において、実施例3、4は、回転数700rpm、1000rpmともに温度上昇値ΔTが20℃以下で、判定「○」の良好な結果を示した。一方、比較例3、4では、回転数700rpmにおいて、判定「△」であるが、回転数1000rpmにおいては、温度上昇値ΔTが30℃に達し、判定「×」であった。
【0051】
[タイプIIIのシール機能付き軸受装置]
(実施例5)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率1.2W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し、この成形体にポリフェニレンサルファイドをベースポリマーとする熱伝導率1.1W/mKの複合組成体で形成した樹脂製すべり軸受を圧入し、タイプIIIのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0052】
(実施例6)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率1.2W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し、この成形体に10W/mKより高い熱伝導率を有する金属製すべり軸受を圧入し、タイプIIIのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0053】
(実施例7)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.85W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し、この成形体にポリフェニレンサルファイドをベースポリマーとする熱伝導率1.1W/mKの複合組成体で形成した樹脂製すべり軸受を圧入し、タイプIIIのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0054】
(実施例8)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.85W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し、この成形体に10W/mKより高い熱伝導率を有する金属製すべり軸受を圧入し、タイプIIIのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0055】
(比較例5)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.40W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し、この成形体にポリフェニレンサルファイドをベースポリマーとする熱伝導率0.30W/mKの複合組成体で形成した樹脂製すべり軸受を圧入し、タイプIIIのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0056】
(比較例6)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.25W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し、この成形体にポリフェニレンサルファイドをベースポリマーとする熱伝導率0.30W/mKの複合組成体で形成した樹脂製すべり軸受を圧入し、タイプIIIのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0057】
【表3】

【0058】
表3のタイプIIIのシール機能付き軸受装置において、実施例5〜8は、回転数700rpm、1000rpmともに温度上昇値ΔTが20℃以下で、判定「○」の良好な結果を示した。一方、比較例5、6では、回転数700rpmにおいて判定「△」あるいは判定「×」であるが、回転数1000rpmにおいては、温度上昇値ΔTが30℃を超え、判定「×」であった。
【0059】
[タイプIVのシール機能付き軸受装置]
(実施例9)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率1.5W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーと金属製転がり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率1.2W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプIVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0060】
(実施例10)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率1.3W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーと金属製転がり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率1.2W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプIVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0061】
(実施例11)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率1.5W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーと金属製転がり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.85W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプIVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0062】
(実施例12)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率1.3W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーと金属製転がり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.85W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプIVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0063】
(比較例7)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率0.20W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーと金属製転がり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.40W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプIVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0064】
(比較例8)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率0.20W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーと金属製転がり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.25W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプIVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0065】
【表4】

【0066】
表4のタイプIVのシール機能付き軸受装置において、実施例9〜12は、回転数700rpm、1000rpmともに温度上昇値ΔTが20℃以下で、判定「○」の良好な結果を示した。一方、比較例7、8では、回転数700rpmにおいて、判定「△」であるが、回転数1000rpmにおいては、温度上昇値ΔTが30℃を超え、判定「×」であった。
【0067】
[タイプVのシール機能付き軸受装置]
(実施例13)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率1.5W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーとポリフェニレンサルファイドをベースポリマーとする熱伝導率1.1W/mKの複合組成体で形成した樹脂製すべり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率1.2W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0068】
(実施例14)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率1.5W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーと10W/mKより高い熱伝導率を有する金属製すべり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率1.2W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0069】
(実施例15)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率1.3W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーとポリフェニレンサルファイドをベースポリマーとする熱伝導率1.1W/mKの複合組成体で形成した樹脂製すべり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率1.2W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0070】
(実施例16)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率1.3W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーと10W/mKより高い熱伝導率を有する金属製すべり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率1.2W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0071】
(実施例17)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率1.5W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーとポリフェニレンサルファイドをベースポリマーとする熱伝導率1.1W/mKの複合組成体で形成した樹脂製すべり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.85W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0072】
(実施例18)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率1.5W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーと10W/mKより高い熱伝導率を有する金属製すべり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.85W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0073】
(実施例19)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率1.3W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーとポリフェニレンサルファイドをベースポリマーとする熱伝導率1.1W/mKの複合組成体で形成した樹脂製すべり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.85W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0074】
(実施例20)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率1.3W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーと10W/mKより高い熱伝導率を有する金属製すべり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.85W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0075】
(比較例9)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率0.35W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーとポリフェニレンサルファイドをベースポリマーとする熱伝導率0.30W/mKの複合組成体で形成した樹脂製すべり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.40W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0076】
(比較例10)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率0.20W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーとポリフェニレンサルファイドをベースポリマーとする熱伝導率0.30W/mKの複合組成体で形成した樹脂製すべり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.40W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0077】
(比較例11)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率0.35W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーとポリフェニレンサルファイドをベースポリマーとする熱伝導率0.30W/mKの複合組成体で形成した樹脂製すべり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.25W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0078】
(比較例12)
実施例1と同工程で前記シールを作製し、これを射出成形金型に静置後、ポリプロピレンをベースポリマーとする熱伝導率0.20W/mKの複合組成体でインサート成形することにより、該シールを保持し一体化したシール及びシールリテーナーとポリフェニレンサルファイドをベースポリマーとする熱伝導率0.30W/mKの複合組成体で形成した樹脂製すべり軸受とを、ポリオキシメチレンをベースポリマーとする熱伝導率0.25W/mKの複合組成体で別途、射出成形したシールリテーナーハウジング兼軸受ハウジングに圧入し、タイプVのシール機能付き軸受装置を作製した。
【0079】
【表5】

【表6】

【0080】
表5のタイプVのシール機能付き軸受装置において、実施例13〜20は、回転数70
0rpm、1000rpmともに温度上昇値ΔTが20℃以下で、判定「○」の良好な結果を示した。一方、表6のタイプVのシール機能付き軸受装置において、比較例9〜12
では、回転数700rpmにおいて判定「△」あるいは判定「×」であるが、回転数1000rpmにおいては、温度上昇値ΔTが30℃を超え、判定「×」であった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、現像装置に限らず、粉体を扱う各種産業機器に適用し、粉体を搬送、攪拌するためのスクリューやインペラー等の回転部材を支承するとともに、粉体の漏洩を防止するために用いることができ、更にシールとシャフトとの摩擦熱による内容物の温度上昇を嫌う食品機器、医療機器に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 本体ケーシング
2 シャフト(回転部材)
3 シール機能付き軸受装置
4 ハウジング(シールリテーナー兼軸受)
5 シール
6 すべり軸受部
7 ハウジング(シールリテーナー兼軸受ハウジング)
8 転がり軸受
9 すべり軸受
10 ハウジング(シールリテーナーハウジング兼軸受ハウジング)
11 シールリテーナー
20 試験容器
21 シャフト
22 粉体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材のシャフトを回転可能に支承するとともに、内容物の漏洩を防止するためのシール機能付き軸受装置であって、機器に装着する熱可塑性樹脂ベース複合材からなるハウジングに、PTFEベース複合材からなるリップ型シールと、軸受を一体的若しくは別部材として組み付けて一体化し、前記ハウジングと軸受とが熱伝導率0.60W/mK以上の熱特性を有することを特徴とするシール機能付き軸受装置。
【請求項2】
前記軸受が前記ハウジングと一体的である場合には、該ハウジングと同一材料にて該ハウジングにすべり軸受部を一体成形してなる請求項1記載のシール機能付き軸受装置。
【請求項3】
前記軸受が前記ハウジングと別部材である場合には、金属製の転がり軸受又は金属製のすべり軸受又は熱伝導率0.60W/mK以上の熱特性を有する熱可塑性樹脂ベース複合材で成形したすべり軸受を前記ハウジングに組み付けて一体化してなる請求項1記載のシール機能付き軸受装置。
【請求項4】
前記ハウジングの成形時に前記シールをインサート射出成形にて一体化してなる請求項1〜3何れかに記載のシール機能付き軸受装置。
【請求項5】
前記シールを、熱伝導率0.60W/mK以上の熱可塑性樹脂ベース複合材からなるシールリテーナーにインサート射出成形にて一体化し、該シールリテーナーを前記ハウジングに組み付けて一体化してなる請求項1〜3何れかに記載のシール機能付き軸受装置。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂ベース複合材が、熱伝導率0.60W/mK〜5W/mKである請求項1〜5何れかに記載のシール機能付き軸受装置。
【請求項7】
前記シールは、厚みが0.10〜0.60mm、前記シャフトに接触するリップ幅が0.5〜2.0mmである請求項1〜6何れかに記載のシール機能付き軸受装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−175020(P2010−175020A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20170(P2009−20170)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000107619)スターライト工業株式会社 (62)
【Fターム(参考)】