説明

シール用のアスファルト材打設用作業船

【課題】シール位置に対して正確な打設作業が行なえると共に作業性の向上が図れる構造簡単な作業船を提供する。
【解決手段】アスファルトクッカ7によって供給口11から直接シール用のアスファルト材が投入されるアスファルト供給部5から第1、第2回動連結部33,37を中心と甲板3の外と甲板上にそれぞれ回動可能な第1、第2シュート部29,31を延長する。延長された前記第2シュート部31を吊り下げ支持手段41によって吊り下げ支持し、その吊り下げ支持手段41によって、甲板3の外へ臨む前記第2回動連結部37を中心として第2シュート部31のシュート口39を水面下へ下降させた作業位置と、前記第1回動連結部33を中心として第1シュート部29と一緒に第2シュート部31全体を甲板3の上に臨ませる格納位置とに移動自在とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底地盤上にケーソン等を用いて護岸を構築するのに適するシール用のアスファルト材打設用作業船に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海面埋立廃棄物処理場において護岸を構築する際に、埋立側の汚水が海洋側となる外へ流れ出すことがないようにすることと、同時に外の海水が埋立側へ侵入することがないよう護岸と基礎の間はシール材によってシールされる。
【0003】
護岸のシールは、例えば、図6に示すように護岸101に沿って遮水用シート103を敷設していき、遮水用シート103の護岸101側と海底地盤105側となる上下両端にシール材となるアスファルトマスチック107,109をそれぞれ打設することでシール状態が得られる。
【0004】
アスファルトマスチックによるシール層は、図7に示す如くブロック111,113によって一定の高さと幅に作られる。ブロック111,113によって作られる護岸101側のシール層の高さは、例えば、1.25m、幅は2〜3mとなる。また、海底地盤105側のシール層の高さは例えば50cm、幅は5mとなり、これらを護岸101に沿って打設していくため大量のアスファルトマスチックを必要とする。シール材となるアスファルトマスチックは、図示の如く上下に長い投入口115を備えたホッパ117によって打設される。
【特許文献1】特公昭55−42205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クレーンによって吊り下げたホッパ117による打設は、投入口115を潜水士(図示していない)によって誘導位置決めするため正確な場所へ打設できる反面、ホッパ117による打設作業は、アスファルトクッカによってホッパ117内へアスファルトマスチックを充填した後、打設作業に入る動作の繰り返しとなる。
【0006】
このホッパ117による打設作業は、ホッパ117内へアスファルトマスチックを充填する積み込み時間が必要となるため、ホッパ1回当りの作業時間は早くても30分程度かかる。このために、1日に行われる打設回数には限界があり作業能率の面で問題を残すと共に、打設専用の潜水士を必要とする。また、クレーンを移動する専用のクレーン船を必要とする。
【0007】
そこで、本発明にあっては、潜水士を必要とすることなく目的の場所へ正確な打設が行えるようにすると共に作業能率の面でも優れた構造簡単なシール用のアスファルト材打設用作業船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明にあっては、甲板上に設けられシール用のアスファルト材が、送り込まれる供給口及び流出口を有するアスファルト材供給部と、前記アスファルト材供給部の流出口に連結され、その第1回動連結部を中心として水平方向に回動する第1シュート部と、前記第1シュート部に連結され、その第2回動連結部を中心としてシュート口が上下方向に回動する第2シュート部と、その第2シュート部を吊り下げ支持する吊り下げ支持手段とを備え、前記吊り下げ支持手段は、前記第1回動連結部を中心として第1シュート部と一緒に第2シュート部を甲板の外へ移動し、甲板の外に臨む前記第2回動連結部を中心として第2シュート部のシュート口を水面下へ下降させる作業位置と、作業位置にある前記第2シュート部のシュート口を上昇させた後、前記第1回動連結部を中心として第1シュート部と一緒に第2シュート部全体を甲板上に臨ませる格納位置とに移動自在に吊り下げ支持することを特徴とする。
【0009】
この場合、アスファルト材の連続投入が可能なように前記アスファルト材供給部の供給口は、搬送装置を備え、複数のアスファルトクッカが同時に横一列に並んだ状態でシール用のアスファルト材が投入できる長さに形成されていることが望ましい。
【0010】
また、前記吊り下げ手段は、特殊な装置ではなく上下、左右に回動可能なブームとブームに支持され繰り出し、巻取り可能な吊り下げワイヤを備えたクレーンであることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アスファルト材供給部の供給口に対して、アスファルトクッカから直接、シール用のアスファルト材を連続して投入することができる。この結果、ホッパのように1回、1回積み込む積み込み作業が不要となるため作業能率の大幅な向上が図れる。しかも、アスファルトクッカ及びクレーンを乗り入れればよいため作業船を簡単な構造にできるメリットが得られる。
【0012】
また、作業船の甲板から突出した第2回動連結部を中心として第2シュート部のシュート口を水面下へ下降させれば打設位置に正確に位置決めできると共に、その打設位置に対してシール用のアスファルト材の連続した打設作業を行なうことができる。
【0013】
また、移動可能なシュート口によって作業船をいちいち移動しなくても打設位置の位置調節を簡単に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1乃至図5の図面を参照しながら本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0015】
図1はシール用のアスファルト材打設用作業船の概要平面図を示している。作業船1は牽引される曳航タイプとなっているが動力を備えた動力船タイプであってもよい。
【0016】
作業船1は、甲板3にアスファルト材供給部5が設置された簡単な構成となっていて、アスファルトクッカ7のアスファルトクッカ待機スペース9を有している。
【0017】
アスファルト材供給部5は、図2に示す如く供給口11と流出口13とを有し、支持フレーム14によって両端支持されている。
【0018】
供給口11は図1に示す如く複数のアスファルトクッカ7が同時に横一列に並んだ状態でシール用のアスファルト材が直接投入できる長さLに形成されている。
【0019】
供給口11は上方が開放された断面U字状に形成され、内部には前記流出口13へ向けアスファルト材を搬送(図2矢印イ)する搬送装置15を備えている。
【0020】
搬送装置15は、回転軸17に送り螺旋19が設けられた構造となっていて、送り螺旋19は供給口11から投入されるシール用のアスファルト材を流出口13へ向け搬送作用する。回転軸17は軸受21によって回転自在に両端支持されモータ等の駆動部23からの回転動力が伝達ベルト25を介して伝達されるようになっている。
【0021】
流出口13は漏斗状に形成され、漏斗状に形成された流出口13には投入シュート部27が設けられている。投入シュート部27は、流出口13側から第1シュート部29及び第2シュート部31となっていて、これらは、アスファルト材が接する面を付着防止処理面としたり、二重管による断熱・保温処置がとられていることが望ましい。
【0022】
第1シュート部29は前記流出口13に連結された垂直部29aと垂直部29aから水平に屈曲された水平部29bとからなるエルボ状となっている。垂直部29aと前記流出口13の連結部分は前記流出口13の中心を通る垂直軸線Xを中心として回動する第1回動連結部33となっている。
【0023】
これにより、前記水平部29bは3箇所に配置された支持フレーム14と干渉し合うことなく垂直軸線Xを中心としてほぼ90度水平方向への回動が可能となっている。
【0024】
この場合、第1シュート部29は支持剛性の向上を図るために、第1シュート部29の垂直軸線X上に設けられたシュート支持軸35によって回転自在に支持された支持構造となっていることが望ましい。
【0025】
第2シュート部31は第1シュート部29の水平部29bと、第2回動連結部37を介して連結している。
【0026】
第2シュート部31のシュート口39は、第2回動連結部37の中心を通る水平軸線Yを中心として上下方向への回動が可能となっていて、吊り下げ支持手段41により水面下へ下降した作業位置(図3実線)と前記第1シュート部29と一緒に第2シュート部31全体が甲板3上に臨む格納位置(図1実線)とに吊り下げ支持されている。
【0027】
なお、第2シュート部31については、前記した如く二重管による断熱・保温処理されていることが望ましいが、浅い打設作業の場合には断面U字状の半割り形状であってもよい。
【0028】
一方、吊り下げ支持手段41は本実施形態にあっては特殊な装置ではなく調達が容易なクレーン43を用いている。
【0029】
クレーン43は甲板3上に直接設置された設置タイプでもよいが、走行輪45を備えた自走式タイプとなっている。
【0030】
クレーン43には機体から延長され機体と一緒に回動可能で、かつ、伸縮及び上下動が可能なブーム47と正転又は逆転可能な巻取りドラム49とを有している。巻取りドラム49から繰り出された吊り下げワイヤ51はブーム47に沿って延長された後、ブーム先端の滑車53を介して垂設され、その先端にフック55が設けられている。
【0031】
フック55には前記第2シュート部31に設けられた吊金具57が係合している。
【0032】
したがって、吊り下げワイヤ51を巻取りドラム49から繰り出すことで第2シュート部31の先端となるシュート口39は自重により前記第2回動連結部37を中心として下方へ向け回動し図3に示す如く水面下へ降下した作業位置まで位置決め可能となっている。
【0033】
また、ブーム47を機体と一緒に回動させることで第2シュート部31を甲板3から外へ突出させた作業状態(図1鎖線)と、甲板3上に臨む格納位置(図1実線)とに移動させることが可能となっている。
【0034】
このように構成されたアスファルト材打設用作業船1によれば、甲板3上に多数のアスファルトクッカ7を乗り入れ、目的の場所まで曳航する。この曳航時、図1に示すように第1、第2シュート部29,31を格納位置(図1実線)とすることで第1、第2シュート部29,31が邪魔になることなく曳航できる。
【0035】
次に、図3に示す如く護岸59に沿って基礎61の上に配置された遮水用シート63の護岸59側と海底地盤65側とに作られたブロック67によるシール位置Pへ到達したら、第1、第2シュート部29,31を水平に移動させて第2シュート部31を甲板3の外へ突出させた後、第2回動連結部37を中心として第2シュート部31のシュート口39を水面下へ下降させた作業位置(図3)とする。
【0036】
この時、シュート口39は甲板3の外に突出した第2回動連結部37を中心とする回動となるため護岸59に沿って水面下の打設位置となるシール位置Pに対して潜水士に頼らなくても正確に位置決めすることができる。
【0037】
次に、供給口11にシール用のアスファルト材をアスファルトクッカ7によって直接投入することで、図4に示すように各シール位置Pにそれぞれ連続したシール層69が得られる。
【0038】
この投入作業時、アスファルト材はアスファルトクッカ7によって直接投入されるため、打設作業の大幅な向上が図れる。この時、アスファルトクッカ7を複数並べて次々に投入することで投入作業が連続して行なえる。
【0039】
なお、本実施形態ではアスファルト材はアスファルトクッカ7による供給となっているが、作業船1にアスファルトプラントを設置し、アスファルトプラントから直接アスファルト材を連続供給できるようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係るシール用のアスファルト材打設用作業船の概要平面図。
【図2】アスファルト材供給部の概要説明図。
【図3】第2シュート部をクレーンで吊り下げ支持している状態を示した概要説明図。
【図4】シール位置に対して第2シュート部を作業位置とした状態の動作説明図。
【図5】護岸に沿ってシール状態が確保された状態の概要説明図。
【図6】従来例を示した図4と同様の動作説明図。
【図7】従来例を示した図5と同様の概要説明図。
【符号の説明】
【0041】
1 作業船
3 甲板
5 アスファルト材供給部
7 アスファルトクッカ
11 供給口
13 流出口
15 搬送装置
27 搬入シュート部
29 第1シュート部
31 第2シュート部
33 第1回動連結部
37 第2回動連結部
39 シュート口
41 吊り下げ手段
43 クレーン
47 ブーム
49 巻取りドラム
51 吊り下げワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲板上に設けられシール用のアスファルト材が、送り込まれる供給口及び流出口を有するアスファルト材供給部と、前記アスファルト材供給部の流出口に連結され、その第1回動連結部を中心として水平方向に回動する第1シュート部と、前記第1シュート部に連結され、その第2回動連結部を中心としてシュート口が上下方向に回動する第2シュート部と、その第2シュート部を吊り下げ支持する吊り下げ支持手段とを備え、
前記吊り下げ支持手段は、前記第1回動連結部を中心として第1シュート部と一緒に第2シュート部を甲板の外へ移動し、甲板の外に臨む前記第2回動連結部を中心として第2シュート部のシュート口を水面下へ下降させる作業位置と、作業位置にある前記第2シュート部のシュート口を上昇させた後、前記第1回動連結部を中心として第1シュート部と一緒に第2シュート部全体を甲板上に臨ませる格納位置とに移動自在とすることを特徴とするシール用のアスファルト材打設用作業船。
【請求項2】
前記アスファルト材供給部の供給口は、搬送装置を備え、複数のアスファルトクッカが同時に横一列に並んだ状態でシール用のアスファルト材が投入できる長さに形成されていることを特徴とする請求項1記載のシール用のアスファルト材打設用作業船。
【請求項3】
前記吊り下げ支持手段は、上下、左右の回動可能なブームとブームに支持され繰り出し、巻取り可能な吊り下げワイヤを備えたクレーンであることを特徴とする請求項1記載のシール用のアスファルト材打設用作業船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−284887(P2008−284887A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128964(P2007−128964)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000232508)日本道路株式会社 (48)
【Fターム(参考)】