説明

シール用硬化性ポリウレタン組成物およびガスケット

【課題】発泡や膨れがなく接着性に優れた硬化物を形成することが可能なシール用硬化性ポリウレタン組成物を提供する。
【解決手段】本発明のシール用硬化性ポリウレタン組成物は、(A)Mw2000〜8000のポリオキシアルキレントリオールから成るポリエーテルポリオールと、(B)Mw300〜4000のポリオキシアルキレンポリオールとイソシアネート基を含有する化合物とを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーと、(C)脂肪酸または脂肪酸エステルにより表面処理された炭酸カルシウムと、(D)有機アルミニウムキレート化合物とをそれぞれ含有する。本発明のガスケットは、このようなポリウレタン組成物を硬化させて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール用硬化性ポリウレタン組成物およびガスケットに係り、特に、垂れ抵抗性(スランプ性)が良好であり、発泡や膨れがなく接着性に優れた硬化物を形成するシール用の硬化性ポリウレタン組成物と、この組成物を硬化させてなるガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータのハードディスク装置においては、高性能化、小型化が進み、複雑な回路構成を有するようになってきており、わずかなダストまたは汚染物質が混入し磁気ディスクに付着すると、誤動作の原因となる。そのため、ガスケットを使ってダストの侵入を防ぐことが一般に行なわれている。例えば、ハードディスクドライブケース(以下、HDDケースと示す。)や小型ビデオカメラ、携帯電子機器類の筺体と蓋体の気密、防湿のためのシール部位には、ガスケットが設けられている。そして、このようなガスケット自体にも、汚染物質を含有しないこと、および汚染物質となるアウトガスを発生しないことが要求されている。
【0003】
HDDケース用のガスケットの製造方法としては、2成分系ポリウレタン樹脂のような液状樹脂をディスペンサによりガスケット形状に押し出し、一体化するディスペンシング法が主流になっている。このディスペンス法においては、気密性を確保するために、ディスペンスされた樹脂の液垂れがなく変形が小さいこと、すなわちチキソトロピー性(チキソ性)が良好でスランプ(垂れ落ち)がないことが要求されている。
【0004】
従来から、2成分系ポリウレタン樹脂の液垂れを改善するために、チキソ性付与剤として、脂肪酸等で表面処理を施した炭酸カルシウムを配合することが行われている。この組成物は、過剰のイソシアネート基を有しており、空気中の湿気で硬化させることが一般的に行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、この空気中の湿気で硬化させる方式は、硬化に時間がかかり生産性が悪いため、加熱・硬化させることで生産性を向上させる試みがなされているが、加熱すると、過剰のイソシアネート基が水分および炭酸カルシウムの表面処理剤である脂肪酸と反応して二酸化炭素を発生するため、硬化物に発泡や膨れが生じるという問題があった。そして、発泡や膨れの発生を抑制するために、ポリウレタン樹脂の有するイソシアネート基の量を減少させると、接着性が低下するという問題があった。
【0006】
また、接着性を改善するためにシランカップリング剤を添加することも提案されている(例えば、特許文献2参照。)が、シロキサンが飛散しハードディスクの誤動作を引き起こしやすいため、HDDケース用などのガスケットには使用することが難しかった。さらに、チタンカップリング剤を添加することで接着性を改善する提案もなされている(例えば、特許文献3参照。)が、チタンカップリング剤である有機チタン化合物自体もウレタン化反応の触媒となるため、硬化物に発泡、膨れが発生しやすく、しかも可使時間が短くなるという問題があった。
【特許文献1】特開2004−231782号公報
【特許文献2】特開2006−111811号公報
【特許文献3】特開2000−219806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、チキソトロピー性に優れ液垂れ(スランプ)がなく、発泡や膨れがなく接着性に優れた硬化物を形成することが可能なシール用硬化性ポリウレタン組成物と、この組成物から製造されるガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシール用硬化性ポリウレタン組成物は、(A)重量平均分子量(以下、Mwと記す。)が2000〜8000のポリオキシアルキレントリオールから成るポリエーテルポリオールと、(B)Mwが300〜4000のポリオキシアルキレンポリオールとイソシアネート基を含有する化合物とを反応させて得られる、イソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーと、(C)脂肪酸または脂肪酸エステルにより表面処理された炭酸カルシウムと、(D)有機アルミニウムキレート化合物とをそれぞれ含有することを特徴とする。
【0009】
本発明のガスケットは、前記シール用硬化性ポリウレタン組成物を硬化させてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チキソトロピー性が良好でスランプ性に優れ、かつ発泡や膨れがなく接着性に優れた硬化物を形成することが可能なシール用硬化性ポリウレタン組成物を得ることができる。また、この組成物は、汚染源となるおそれのあるアミン触媒や有機スズ触媒を添加しなくても硬化させることができるので、耐汚染性に優れている。したがって、このシール用硬化性ポリウレタン組成物を硬化させて成るガスケットにおいて、例えばHDDケースのシール部の気密性を向上させ、ダストなどの侵入を抑えることができるうえに、磁気ディスクを汚染することがないので、汚染による誤動作の発生を低減することができる。したがって、信頼性の高いハードディスク装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
本発明の実施形態に係るシール用硬化性ポリウレタン組成物は、(A)Mwが2000〜8000のポリオキシアルキレントリオールから成るポリエーテルポリオールと、(B)Mwが300〜4000のポリオキシアルキレンポリオールとイソシアネート基を含有する化合物とを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーと、(C)脂肪酸または脂肪酸エステルにより表面処理された炭酸カルシウムと、(D)有機アルミニウムキレート化合物とをそれぞれ含有する。
【0013】
本発明の実施形態において、(A)成分であるポリエーテルポリオールは、Mwが2000〜8000の3官能のポリエーテルポリオールであるポリオキシアルキレントリオールから構成される。
【0014】
そして、(A)成分であるポリオキシアルキレントリオールとしては、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオール、およびポリオキシ(プロピレン・エチレン)共重合型トリオールのようなポリオキシプロピレンと他のアルキレンとの共重合型トリオールなどを挙げることができる。特に、グリセリンなどを開始剤としてプロピレンオキサイドを開環重合して得られるポリオキシプロピレントリオールの使用が好ましい。
【0015】
実施形態において、このポリオキシアルキレントリオールのMwは、2000〜8000の範囲とし、より好ましくは2500〜5500の範囲とする。ポリオキシアルキレントリオールのMwが2000未満の場合には、十分なチキソトロピー性が得られず、スランプ性が悪くなるおそれがある。また、Mwが8000を超える場合には、後述する(C)成分の表面処理された炭酸カルシウムと混練する場合の粘度が高くなりすぎて、作業性が著しく低下する。
【0016】
本発明の実施形態において、(B)成分であるウレタンプレポリマーは、Mwが300〜4000のポリオキシアルキレンポリオールとイソシアネート基を含有する化合物とを反応させて得られるものであり、イソシアネート基を有しウレタン結合を含有するプレポリマーである。
【0017】
(B)成分であるウレタンプレポリマーの調製に用いられるポリオキシアルキレンポリオールは、多価アルコール、例えば2価のアルコールであるエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコールなどを重合したポリアルキレングリコール、あるいはアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを開環重合したポリオキシアルキレントリオールなどで、Mwが300〜4000の範囲のものが挙げられる。チキソトロピー性を得やすくスランプ性が良好なことから、ポリオキシプロピレントリオールの使用がより好ましい。
【0018】
ポリオキシアルキレンポリオールのMwを300〜4000の範囲に限定したのは、Mwが300未満であるか、あるいは4000を超える場合には、得られるポリウレタン組成物の硬化反応の制御などが困難となるおそれがあるためである。これらのポリアルキレンポリオールは、1種類のものを単独で使用することができ、またMwの異なる2種類以上のポリオキシアルキレンポリオール(例えば、ポリオキシアルキレントリオール)を併用して用いることができる。
【0019】
(B)成分であるウレタンプレポリマーの調製に用いられるイソシアネート基を含有する化合物としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、それらの混合物または有機イソシアネート化合物の変性物などが挙げられる。これらのうちで、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、特に分子内に2個以上の末端イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物の使用が好ましい。
【0020】
このようなイソシアネート基を有する化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、水添トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(PMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDI(H6XDI)、水添MDI(H12MDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル(NBDI)などの脂環式ポリイソシアネート、上記イソシアネートのカルボジイミド変性イソシアネート、イソシアヌレート変性体などが挙げられる。
【0021】
反応性の点から、反応の速いTDI、MDI、カルボジイミド変性MDI(液状MDI)およびPMDIが好ましく、TDIがより好ましい。これらイソシアネート基を有する化合物は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0022】
(B)成分であるウレタンプレポリマーの調製方法は特に限定されないが、前記ポリオキシアルキレンポリオールとイソシアネートを含有する化合物を、所望のイソシアネート基含有割合(NCO%)が得られるような配合比率で混合し、80〜90℃の温度で2〜4時間反応させることにより得ることができる。この反応は、不活性ガス雰囲気、例えば窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気で行なうことが好ましい。
【0023】
このようにして得られる(B)ウレタンプレポリマーのNCO%は、得られるポリウレタン組成物の硬化の際の反応制御などが容易になり、またシーリング用途として所望の硬度が得られるように、1〜4重量%とすることが好ましく、2〜3.5重量%の範囲がより好ましい。
【0024】
こうして得られる(B)成分であるウレタンプレポリマーの配合量は、(A)成分であるポリエーテルポリオール(ポリオキシアルキレントリオール)100重量部に対して、100〜180重量部が好ましく、120〜160重量部の範囲がより好ましい。(B)ウレタンプレポリマーの配合量が100重量部未満の場合には、良好なウレタン組成物が得られず、未硬化のおそれがあり、180重量部を超える場合には、硬化物の硬度が高くなり過ぎて気密性を損なうおそれがある。(B)成分であるウレタンプレポリマーを前記割合で使用することにより、得られるポリウレタン組成物の液垂れを改善することができる。
【0025】
実施形態で使用する(C)成分である脂肪酸または脂肪酸エステルにより表面処理された炭酸カルシウムは、補強性の充填剤である。
【0026】
表面処理剤である脂肪酸または脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸、ステアリン酸エステルなどを使用することができる。また、脂肪酸とともに、アニオン性界面活性剤であるスルフォン酸系の界面活性剤を使用して、表面処理を行うことができる。スルフォン酸系の界面活性剤としては、へキシルベンゼンスルフォン酸、オクチルベンゼンスルフォン酸、ドデシルベンゼンスルフォン酸、テトラデセンスルフォン酸、ヒドロキシテトラデセンスルフォン酸、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。このような脂肪酸等により表面処理された炭酸カルシウムの配合は、補強性を向上させる効果が大きい。
【0027】
チキソトロピー性が向上しかつ作業性が向上することから、(C)成分である脂肪酸等により表面処理された炭酸カルシウムを、予め(A)成分であるポリエーテルポリオールに混合しておくことが好ましい。
【0028】
(C)成分である脂肪酸等により表面処理された炭酸カルシウムの配合量は、前記(A)成分であるポリエーテルポリオール100重量部に対して80〜180重量部とすることが好ましく、110〜150重量部の範囲がより好ましい。(C)成分の配合量が80重量部未満の場合には、十分なチキソトロピー性が付与されないおそれがあり、180重量部を超える場合には、粘度が高くなりすぎて作業性が悪くなるおそれがある。
【0029】
実施形態において、(D)成分である有機アルミニウムキレート化合物は、アルミニウムなどの基材に対する接着性を組成物に付与する成分である。有機アルミニウムキレート化合物としては、以下に示す構造式を有するアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートを挙げることができる。
【化1】

【0030】
この有機アルミニウムキレート化合物は、硬化反応を促進する触媒としての働き(触媒活性)が極めて弱いため、従来からの接着性付与剤であり、ウレタン化反応の触媒となるチタンカップリング剤(有機チタン化合物)を使用した場合に比べて、硬化物に発泡、膨れが発生しにくく、しかも十分な可使時間を実現することができるという利点を有する。
【0031】
(D)成分である有機アルミニウムキレート化合物の配合量は、前記(A)成分であるポリエーテルポリオール100重量部に対して0.5〜6重量部とすることが好ましく、2〜4重量部の範囲がより好ましい。(D)成分の配合量が0.5重量部未満の場合には、接着性が十分に付与されないおそれがあり、6重量部を超える場合には、ウレタン化反応の触媒として作用し、発泡や膨れが発生するおそれがある。
【0032】
(D)成分である有機アルミニウムキレート化合物は、前記(C)脂肪酸等により表面処理された炭酸カルシウムとともに、予め(A)成分であるポリエーテルポリオールに混合しておくことが好ましい。そして、(C)成分および(D)が配合されたポリエーテルポリオール組成物と、(B)成分であるウレタンプレポリマーとを加熱・混練して硬化性組成物を得る、2液型(2成分型)の使用態様を採ることが好ましい。混合方法は特に限定されず、その後の加熱硬化により(A)成分中のポリオールの活性水素基(水酸基)と(B)ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基とが反応することを考慮し、所望の方法を採ることができる。
【0033】
本発明の実施形態に係るシール用硬化性ポリウレタン組成物は、充填剤、可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、顔料あるいは染料の着色剤、分散剤などの添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。なおこれらの添加剤は、(A)成分であるポリエーテルポリオールに配合するか、あるいは(A)〜(D)の各成分を混合した後の組成物に配合することができる。
【0034】
実施形態に係るシール用硬化性ポリウレタン組成物は、(A)成分であるポリエーテルポリオールと(B)成分であるウレタンプレポリマーとの反応の際に必要に応じて用いられる触媒、例えばジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジマレートなどの有機スズ化合物、あるいはトリエチルアミン、テトラエチレンジアミン、N−メチルモルホリンなどのアミン系触媒を、実質的に含まないものである。そのため、実施形態のポリウレタン組成物では、触媒などのブリードアウトが発生することがなく、耐汚染性に優れており、例えばHDDケース用ガスケットを形成しても、ハードディスク装置の汚染が生じることがない。なお、実施形態の硬化性ポリウレタン組成物を用いてガスケットを形成するには、例えば、得られた組成物を脱泡した後ハードディスクのハウジングケースの片面にディスペンスし、所望のガスケット形状を形成し、50〜200℃好ましくは100〜160℃の温度で1〜10時間加熱し硬化させる方法を採ることができる。こうして得られたHDDケース用ガスケットにおいては、ガスケットが形成されたハウジングケースとハードディスクとを組み立てた後の汚染物の生成が抑制される。
【0035】
このように、本発明の実施形態によれば、スランプ性(垂れ抵抗性)および耐汚染性に優れた硬化性ポリウレタン組成物を得ることができる。しかも、この硬化性ポリウレタン組成物から得られる硬化物は発泡や膨れがなく、接着性に優れている。したがって、この硬化性ポリウレタン組成物から形成されるHDDケース用などのガスケットにおいては、スランプ(液垂れ)が抑制されるので、ガスケットとしての気密性が向上し、ダストの侵入を抑えることができる。また、この硬化性ポリウレタン組成物を加熱硬化して得られるガスケットは、汚染物の発生が抑制されているので、例えば磁気ディスクへの汚染物質の混入による誤動作を低減することができ、信頼性の高いハードディスク装置を得ることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(調製例1)(ポリエーテルポリオール組成物1の調製)
エクセノール3030(Mw3000のポリオキシプロピレントリオール、旭硝子株式会社製)100重量部に、MS2000(表面処理炭酸カルシウム、丸尾カルシウム株式会社製)130重量部を以下に示すように添加し混合した。すなわち、まずエクセノール3030を74.3重量部に対して、MS2000を130重量部添加し、100℃で4時間加熱混練した後、室温に冷却してから、エクセノール3030を25.7重量部加えて混合した。
【0038】
次いで、この混合物に、プレンアクトAL−M(アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、味の素ファインテクノ株式会社製)3重量部を添加、混合しポリエーテルポリオール組成物1を得た。
【0039】
(調製例2)(ポリエーテルポリオール組成物2の調製)
エクセノール3030を74.3重量部に対して、MS2000を130重量部添加し、100℃で4時間加熱混練した後、室温に冷却してから、エクセノール3030を25.7重量部加えて混合し、ポリエーテルポリオール組成物2を得た。
【0040】
(調製例3)(ポリエーテルポリオール組成物3の調製)
プレンアクトAL−Mを3重量部添加する代わりに、チタコートS−181((2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキチタン、日本化曹達株式会社製)を3重量部添加した。それ以外は調製例1と同様にして、ポリエーテルポリオール組成物3を得た。
【0041】
(調製例4)(ウレタンプレポリマーの調製)
エクセノール3030を92.9重量部とエクセノール430(Mw420のポリオキシプロピレントリオール、旭硝子株式会社製)を7.1重量部の混合物に対して、トリレンジイソシアネート(2,4−異性体/2,6−異性体=80/20)19.9重量部を添加し、窒素気流下、80℃で3時間反応させ、NCO%が3.0重量%のウレタンプレポリマーを得た。
【0042】
実施例
調製例1で得られたポリエーテルポリオール組成物1と、調製例4で得られたウレタンプレポリマーとを、表1に示すように、ウレタンプレポリマーの配合量がエクセノール3030の100重量部に対して140.2重量部となるように配合し、混合した。
【0043】
比較例1
調製例2で得られたポリエーテルポリオール組成物2と、調製例4で得られたウレタンプレポリマーとを、表1に示す割合で配合し、実施例と同様に混合した。
【0044】
比較例2
調製例3で得られたポリエーテルポリオール組成物3と、調製例4で得られたウレタンプレポリマーとを、表1に示す割合で配合し、実施例と同様にプラネタリーミキサーを用いて加熱・混練した。
【0045】
次に、実施例および比較例1,2で得られたポリウレタン組成物をそれぞれ脱泡した後、アルミニウム板に塗布し、80℃で1時間加熱しさらに140℃で1時間加熱し硬化させた。そして、硬化物の発泡の有無を肉眼で調べた。また、被着体としてアルミニウムを用いて以下に示すようにしてせん断接着強度を測定した。すなわち、幅25mmの2枚のアルミニウム板の一方の端部を、実施例1、比較例1および2で得られた組成物の層(厚さ1mm)を間に挟んで長さ10mmに亘って重ね、80℃で1時間次いで140℃で1時間加熱して組成物層を硬化させた。このようにして作製した試験体の両端を引っ張り試験機で引っ張ることにより、剪断接着強度を測定した。発泡の有無およびせん断接着強度の測定結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1からわかるように、実施例で得られたポリウレタン組成物は、発泡がなくかつアルミニウム板に対する接着性に優れた硬化物を形成することができる。これに対して、有機アルミニウムキレート化合物であるプレンアクトAL−Mを配合していない比較例1のポリウレタン組成物から得られた硬化物は、アルミニウム板に対する接着強度が著しく低くなっている。また、プレンアクトAL−Mの代わりにチタン系のシランカップリング剤であるチタコートS−181を配合した比較例2のポリウレタン組成物から得られた硬化物は、アルミニウム板に対する接着強度は良好であるが、肉眼で発泡や膨れが見られ好ましくない。
【0048】
さらに、実施例で得られたポリウレタン組成物を、ハードディスクのハウジングケースの片面にディスペンスし、140℃で3時間加熱し硬化させてガスケットを形成した。そして、このようにガスケットを形成したハウジングケースとハードディスクとを組み立てた後、50℃の恒温槽に7日間投入し、その後ディスクを取り出して、表面に付着物があるかどうかを光学顕微鏡(倍率100倍)で観察したところ、いずれもディスクの表面に付着物は見られず、耐汚染性が良好であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重量平均分子量(Mw)が2000〜8000のポリオキシアルキレントリオールから成るポリエーテルポリオールと、
(B)重量平均分子量(Mw)が300〜4000のポリオキシアルキレンポリオールとイソシアネート基を含有する化合物とを反応させて得られる、イソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーと、
(C)脂肪酸または脂肪酸エステルにより表面処理された炭酸カルシウムと、
(D)有機アルミニウムキレート化合物と
をそれぞれ含有することを特徴とするシール用硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項2】
前記(B)成分であるウレタンプレポリマーは、イソシアネート基の含有率が1〜4重量%であることを特徴とする請求項1記載のシール用硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記(C)成分は、脂肪酸とスルフォン酸系の界面活性剤により表面処理された炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1または2記載のシール用硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項4】
前記(C)成分である表面処理された炭酸カルシウムの配合量は、前記(A)成分であるポリエーテルポリオール100重量部に対して80〜180重量部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のシール用硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項5】
前記(D)成分である有機アルミニウムキレート化合物は、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のシール用硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項6】
前記(D)成分である有機アルミニウムキレート化合物の配合量は、前記(A)成分であるポリエーテルポリオール100重量部に対して0.5〜6重量部であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のシール用硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載のシール用硬化性ポリウレタン組成物を硬化させてなることを特徴とするガスケット。

【公開番号】特開2009−249524(P2009−249524A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100105(P2008−100105)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】