説明

シール用硬化性ポリウレタン組成物及びそれを用いたガスケット

【課題】垂れ抵抗性に優れ、耐汚染性に優れたシール用硬化性ポリウレタン組成物と、この組成物から製造されるガスケットを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のシール用硬化性ポリウレタン組成物は、平均分子量が1000〜8000のポリオール(A)と、BET比表面積が100〜400m/gの無機質充填材(B)と、イソシアネート基を有する化合物(C)と、フッ素置換オキシアルキレン化合物(D)とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂れ抵抗性に優れ、耐汚染性に優れたシール用硬化性ポリウレタン組成物と、この組成物から製造されるガスケットに関し、特に、電子機器としてハードディスクドライブケースや小型ビデオカメラ、形態電子機器類(以下、「HDDケース」とも称する)の筺体と蓋体の気密、防湿のためのシール部位に用いられるシール用硬化性ポリウレタン組成物と、この組成物から製造されるガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータのハードディスク装置においては、高性能化、小型化が進み複雑な回路構成を有するようになってきており、僅かなダストまたは汚染物質が混入し磁気ディスクに付着すると誤動作の原因となる。そのため、ガスケットを使ってダストの侵入を防ぐことが一般に行なわれている。さらにガスケット自身にも汚染物質を含有しないこと、さらに汚染物質となるアウトガスを発生しないことも要求されている。例えばHDDケース用のガスケットの製造方法として、2成分系ポリウレタン樹脂のような溶液状樹脂をディスペンサーによりガスケット形状に押し出し、一体化するディスペンシング法が主流となってきている。このディスペンス法においては、気密性を確保するためにディスペンスした樹脂の液垂れがなく、変形の小さいことが要求されている。すなわち樹脂にはチキソトロピー性が必要となる。
【0003】
その液垂れを改善するためにチキソ化付与剤として2成分系ポリウレタン樹脂にコロイド状シリカ、炭酸カルシウムのような無機質充填剤を添加する方法が知られている。しかしその効果を得るためには多量に添加しなければならないため粘度が高くなりすぎ作業性が悪いという課題がある。さらにこの課題を解決するためにイソシアネートとの反応性の高いアミン化合物やメルカプト化合物を添加し、硬化が始まる前にこれらの反応性の高い化合物による弱い架橋構造を形成することにより液垂れを改善しようとする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、同様に多量のアミン触媒、有機錫触媒を添加し架橋構造を形成して、液垂れを改善しようとする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−168303号、段落0003、0004
【特許文献2】国際公開第WO99/51653号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの方法では、硬化物中に微量でもアミン化合物、メルカプト化合物、触媒が残存すると、それらがブリードアウトし磁気ディスクを汚染してしまうという課題がある。さらにこれらの方法を用いると硬化反応が速いためディスペンスに必要な可使時間を確保できないという課題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、垂れ抵抗性に優れ、耐汚染性に優れたシール用硬化性ポリウレタン組成物と、この組成物から製造されるガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、平均分子量が1000〜8000のポリオール(A)と、BET比表面積が100〜400m/gの無機質充填材(B)と、イソシアネート基を有する化合物(C)と、フッ素置換オキシアルキレン化合物(D)とを配合することにより、課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、上記の課題を解決するため、本発明の一態様によるシール用硬化性ポリウレタン組成物は、平均分子量が1000〜8000のポリオール(A)と、BET比表面積が100〜400m/gの無機質充填材(B)と、イソシアネート基を有する化合物(C)と、フッ素置換オキシアルキレン化合物(D)とを含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の態様によるガスケットは、前記のシール用硬化性ポリウレタン組成物を硬化させてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、垂れ抵抗性に優れ、耐汚染性に優れたシール用硬化性ポリウレタン組成物と、この組成物から製造されるガスケットを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。本発明はこの実施の形態の記載になんら限定されるものではない。
【0011】
本発明の実施の形態に係るシール用硬化性ポリウレタン組成物は、平均分子量(重量平均分子量(Mw))が1000〜8000のポリオール(A)と、BET比表面積が100〜400m/gの無機質充填材(B)と、イソシアネート基を有する化合物(C)と、フッ素置換オキシアルキレン化合物(D)とをそれぞれ含む。
【0012】
この実施形態に用いられるポリオール(A)は、平均分子量(重量平均分子量(Mw))が1000〜8000のポリオールであれば、いずれのものも使用することができる。ポリオール(A)は、例えば、比較的低分子量の多価アルコールの1種又は2種以上の重合体、ポリエーテル型ポリオール、あるいはこれらポリエーテル型ポリオールの変性物などが挙げられる。
【0013】
より具体的には、比較的低分子量の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,3−ブタンジオール(1,3−BD)、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシフェニルメタン等の2価アルコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,5−ヘキサントリオール等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、グルコース、シュークロース、ソルビトール等の4価以上の多価アルコールが挙げられる。
【0014】
この実施形態に用いられるポリエーテル型ポリオールとしては、例えば、比較的低分子量の多価アルコール1種または2種以上に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の1種または2種以上を付加重合して得られるポリエーテルポリオール、テトラヒドロフランを開環重合して得られるポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)等が挙げられる。また、例えば、グリセリンや1,2,5−ヘキサントリオール等を開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を開環重合して得られるポリオキシアルキレントリオール、例えば、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオール等が挙げられる。
【0015】
ポリエーテル型ポリオールの変性物としては、前記の公知のポリエーテル型ポリオールにアクリロニトリル、スチレン、メチルメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させて得たポリマーポリオール等が挙げられる。
【0016】
これらのうち、開環連鎖が規則性を有し、チキソトロピー性を得やすいため、ポリエーテル型ポリオールが好ましい。特に、ポリエーテル型ポリオールのうち、プロピレンオキサイドを開環重合して得られるポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール、テトラヒドロフランを開環重合して得られるポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)が好ましく、ポリオキシプロピレントリオールがより好ましい。
【0017】
また、この実施形態に用いられるポリオール(A)の平均分子量(重量平均分子量(Mw))は、1000〜8000の範囲である。平均分子量が1000未満又は8000を超える場合には、後述の、疎水性であるフッ素置換オキシアルキレン化合物(D)が有する親水性と疎水性との間の相互作用による、無機質充填剤(B)の凝集が不十分になり、チキソトロピー性が低下し、液垂れするおそれがある。平均分子量は、1000〜6000の範囲がより好ましく、2000〜4000の範囲がより好ましい。
【0018】
この実施形態に用いられるポリオール(A)は、1種単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0019】
この実施形態に用いられる無機質充填剤(B)としては、シリカ、炭酸カルシウムなどが挙げられるが、親水性でチキソトロピー付与性のあるコロイド状シリカ、炭酸カルシウム又はこれらを混合したものが好ましく、コロイド状シリカがより好ましい。この実施形態に用いられる無機質充填剤(B)は、BET比表面積が100〜400m/gである。BET比表面積が100m/g未満又は400m/gを超える場合には、適切なチキソトロピー性が付与されないおそれがある。BET比表面積が250〜350m/gの微粉末シリカが好ましい。また、無機質充填剤(B)、特にシリカは、表面処理を施していないものが親水性が高いため、後述の疎水性であるフッ素置換オキシアルキレン化合物(D)との間での、親水性と疎水性との間の相互作用がより大きくなるので、より好ましい。
【0020】
例えば、コロイド状シリカは、ハロゲン化ケイ素の分解による方法、あるいはケイ砂を加熱還元した後、空気により酸化する方法(アーク法)などによって製造することができる。また、市販のコロイド状シリカを使用することもできる。
【0021】
無機質充填材(B)の配合量としては、ポリオール(A)100重量部に対して5〜30重量部が好ましく、10〜20重量部がより好ましい。無機質充填材(B)の配合量がポリオール(A)100重量部に対して5重量部未満の場合には、フッ素置換オキシアルキレン化合物(D)との相互作用による、凝集体の形成が不十分となり、チキソトロピー性が低下するおそれがある。無機質充填材(B)の配合量が30重量部を超える場合には、粘度が高くなりすぎ、作業性が悪くなるおそれがある。
【0022】
また、無機質充填材(B)は、ポリオール(A)に予め混合しておくほうが、チキソトロピー性が向上するため、また、作業性が向上するため好ましい。また、無機質充填剤として親水性であるシリカを使用する場合には、ポリオール(A)との相溶性が高いためより好ましい。
【0023】
この実施形態に用いられるイソシアネート基を含有する化合物(C)は、例えばイソシアネート基を含有する芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、それらの混合物または有機イソシアネート化合物の変性物等が挙げられる。イソシアネート基を含有する化合物(C)は、少なくとも2個のイソシアネート基を含有する化合物が好ましい。
【0024】
これらのうち、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、特には、分子内に2個以上の分子末端イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物がより好ましい。
【0025】
このような少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、水添トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(PMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDI(H6XDI)、水添MDI(H12MDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル(NBDI)等の脂環式ポリイソシアネート、上記イソシアネートのカルボジイミド変性イソシアネート、イソシアヌレート変性体等があげられる。
【0026】
これらのうち、反応性の点から、反応性の速いTDI、MDI、カルボジイミド変性MDI(液状MDI)及びPMDIが好ましい。これらイソシアネート基を有する化合物は、1種単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0027】
イソシアネート基を有する化合物(C)は、少なくとも2個のイソシアネート基を有し、かつ平均分子量(重量平均分子量)が500〜4000のポリオールと反応してウレタンプレポリマーが形成されていることが好ましい。ウレタンプレポリマーが形成されることにより、ポリウレタン組成物のその後の硬化処理による反応制御などが容易となり、シーリングの用途に適したポリウレタン組成物を得ることができるからである。
【0028】
上記の化合物(C)が有する少なくとも2個のイソシアネート基(すなわち、少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物)と反応する、平均分子量が500〜4000のポリオールは、上記のポリオール(A)と同様のポリオール、例えば、比較的低分子量の多価アルコールの重合体、ポリエーテル型ポリオール、あるいはこれらポリエーテル型ポリオールの変性物を用いることができる。
【0029】
これらのうち、開環連鎖が規則性を有し、チキソトロピー性を得やすいため、ポリエーテル型ポリオールが好ましい。特に、ポリエーテルポリオールのうち、プロピレンオキサイドを開環重合して得られるポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール、テトラヒドロフランを開環重合して得られるポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)が好ましく、ポリオキシプロピレントリオールがより好ましい。このようなポリオールは、1種単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
また、上記の化合物(C)が有する少なくとも2個のイソシアネート基と反応するポリオールの平均分子量(重量平均分子量(Mw))は、500〜4000の範囲である。平均分子量が500未満又は4000を超える場合には、ポリウレタン組成物のその後の硬化処理による反応制御などが困難となるおそれがあるからである。平均分子量は、500〜3000の範囲が好ましい。
【0030】
このような少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物と平均分子量が500〜4000のポリオールとを反応させてウレタンプレポリマーを合成する方法は特に限定されないが、狙いのNCO%となるようにポリオールとイソシアネートを混合し、80〜90℃で、2〜4時間反応させることにより得ることができる。この反応は、この反応は、不活性ガス下、例えば、窒素ガス下、アルゴンガス下で行なうことが好ましい。
このようにして得られるウレタンプレポリマーのNCO基含有率(NCO%)は、ポリウレタン組成物のその後の硬化処理による反応制御などが容易となり、また、シーリング用途として所望の硬度が得られるため0.5〜20%が好ましく、1〜8%がより好ましい。
【0031】
このようなイソシアネート基を含有する化合物(C)の配合量は、ポリオール(A)100重量部に対して20〜100重量部が好ましく、50〜70重量部がより好ましい。イソシアネート基を含有する化合物(C)の配合量が20重量部未満の場合には、ポリウレタン組成物の硬度が低くなりすぎ、液垂れ性が改善されないおそれがあり、100重量部を超える場合には、ポリウレタン組成物の硬度が高くなり、気密性を損なうおそれがある。
【0032】
また、イソシアネート基を含有する化合物(C)が少なくとも2個のイソシアネート基を有し、かつ平均分子量が500〜4000のポリオールとの反応により得られるウレタンプレポリマーを使用する場合には、そのウレタンプレポリマーの配合量は、ポリオール(A)100重量部に対して20〜100重量部が好ましく、50〜70重量部がより好ましい。ウレタンプレポリマーの配合量が20重量部未満の場合には、ポリウレタン組成物の硬度が低くなりすぎ、液垂れ性が改善されないおそれがあり、100重量部を超える場合には、ポリウレタン組成物の硬度が高くなり、気密性を損なうおそれがある。
【0033】
この実施形態に用いられるフッ素置換オキシアルキレン化合物(D)は、疎水性であり、無機質充填剤(B)(例えば親水性のコロイダルシリカ)との間で、疎水性−親水性の間の相互作用により、無機質充填剤(B)の凝集性を高め、ポリウレタン組成物のチキソトロピー性を高めることにより、液垂れ性を改善する。
フッ素置換オキシアルキレン化合物のうち、ヘキサフルオロプロピレンエポキシドが開環重合され、末端部がフッ素で封鎖されたホモポリマー、即ち、下記の化学式(1)
【化1】

(式中、重合度(n)は、n=3〜200である)
により表されるフッ素置換オキシアルキレン化合物が好ましい。上記化学式(1)で表されるフッ素置換オキシアルキレン化合物は、末端部及び繰り返し単位中の被置換部が全てフッ素で置換されているので、化学的に安定(不活性)であり、ポリウレタン組成物のその後の加熱硬化等によっても影響を受けないからである。また、上記の化学式(1)で表されるフッ素置換オキシアルキレン化合物のうち、式中の重合度(n)は、好ましくはn=5〜100であり、より好ましくはn=7〜60である。
【0034】
このようなフッ素置換オキシアルキレン化合物(D)としては、例えば、クライトックス(登録商標)GPLオイル(デュポン株式会社製)などが挙げられる。このフッ素置換オキシアルキレン化合物(D)の配合量は、ポリオール(A)100重量部に対して5〜50重量部が好ましく、10〜30重量部がより好ましい。フッ素置換オキシアルキレン化合物(D)の配合量が5重量部未満の場合には、十分な疎水性−親水性の間の相互作用が得られず無機質充填剤(B)が十分凝集しなくなり、30重量部を超える場合には、フッ素置換オキシアルキレン化合物による疎水性が強くなり、無機質充填剤(B)が凝集しすぎるため、十分なチキソトロピー性が得られなくなるおそれがある。
なお、このフッ素置換オキシアルキレン化合物(D)は、予めポリオール(A)と混合しておくことも可能である。
【0035】
この実施形態に係るシール用硬化性ポリウレタン組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、充填剤、可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、顔料あるいは染料の着色剤、分散剤等の添加剤を任意の量で配合することにより、シーリング材として好ましく用いることができる。なお、このような添加剤は、好ましくはポリオール(A)中に配合される。
【0036】
この実施形態に係るシール用硬化性ポリウレタン組成物は、ポリオール(A)とイソシアネート基を有する化合物(C)との重合などに、必要に応じて用いられる触媒、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジマレートなどの有機錫化合物、あるいは、トリエチルアミン、テトラエチレンジアミン、N−メチルモルホリンなどのアミン系触媒等を実質的に含まないものである。そのため、このポリウレタンシール用硬化性組成物は触媒などのブリードアウトが発生せずに耐汚染性に優れ、例えばハードディスク装置ケース用ガスケットに形成しても、ハードディスク装置での汚染物の生成を抑制できる。
【0037】
この実施形態に係るシール用硬化性ポリウレタン組成物は、いわゆる二液型ポリウレタン組成物及び三液型ポリウレタン組成物のいずれであってもよい。第1の成分及び第2の成分からなる二液型ポリウレタン組成物の場合には、第1の成分は、ポリオール(A)、無機質充填剤(B)及びフッ素置換オキシアルキレン化合物(D)を含み、第2の成分は、イソシアネート基を有する化合物(C)を含む。また、第1の成分、第2の成分及び第3の成分からなる三液型ポリウレタン組成物の場合には、第1の成分は、ポリオール(A)及び無機質充填剤(B)を含み、第2の成分は、イソシアネート基を有する化合物(C)を含み、第3の成分は、フッ素置換オキシアルキレン化合物(D)を含む。
二液型ポリウレタン組成物及び三液型ポリウレタン組成物のうち、三液型ポリウレタン組成物のほうが、よりチキソトロピー性が得られやすいため好ましい。
【0038】
次に、この実施形態に係るシール用硬化性ポリウレタン組成物の調製方法及びガスケットの製造方法について説明する。このシール用硬化性ポリウレタン組成物は、二液型ポリウレタン組成物の場合には、平均分子量が1000〜8000のポリオール(A)、BET比表面積が100〜400m/gの無機質充填材(B)及びフッ素置換オキシアルキレン化合物(D)を含む第1の成分と、イソシアネート基を有する化合物(C)を含む第2の成分を混合して得ることができる。このシール用硬化性ポリウレタン組成物は、三液型ポリウレタン組成物の場合には、平均分子量が1000〜8000のポリオール(A)及びBET比表面積が100〜400m/gの無機質充填材(B)を含む第1の成分と、イソシアネート基を有する化合物(C)を含む第2の成分と、フッ素置換オキシアルキレン化合物(D)を含む第3の成分とを混合して得ることができる。これらの混合方法は特に限定されず、その後の加熱硬化により、ウレタンプレポリマー(C)中のイソシアネート基とポリオール(A)の活性水素基(水酸基)が反応し、架橋構造を形成されることを考慮し、所望に応じた方法にて混合すればよい。
【0039】
さらに、上記のようにして得られたシール用硬化性ポリウレタン組成物を脱泡した後、ハードディスクのハウジングケースの片面にディスペンスする。ディスペンスされたシール用硬化性ポリウレタン組成物を、50〜200℃、好ましくは100〜160℃の範囲で、1〜100時間加熱し、硬化させてガスケットを形成させる。シール用硬化性ポリウレタン組成物は垂れ抵抗性に優れ、また、耐汚染性に優れているので、このシール用硬化性ポリウレタン組成物から形成されたハードディスク装置ケース用ガスケットは、ガスケットが形成されたハウジングケースとハードディスクとを組み立てた後の汚染物の生成を抑制できる。
【0040】
この実施形態に係るシール用硬化性ポリウレタン組成物は、加熱硬化を施して、例えば電子機器としてハードディスクドライブケースや小型ビデオカメラ、形態電子機器類の筺体と蓋体の気密、防湿のためのシール部位に用いることができる。
【0041】
このように、本実施の形態によれば、フッ素置換オキシアルキレン化合物を配合することにより、無機質充填剤を効果的に凝集させることができるので、垂れ抵抗性に優れ、耐汚染性に優れたシール用硬化性ポリウレタン組成物を得ることができる。従って、このシール用硬化性ポリウレタン組成物を加熱硬化させて、ハードディスク装置ケース用ガスケットをディスペンス法で製造するときの液垂れを抑制できるので、ガスケットの機密性を向上させ、ダストの侵入を抑えることができる。また、このシール用硬化性ポリウレタン組成物を加熱硬化して得られるガスケットは、汚染物の発生を抑制できるので、例えば、磁気ディスクへの汚染物質の混入による誤動作を低減することができる。そのため、信頼性の高いハードディスクを得ることができる。
【実施例】
【0042】
(調製例1)ポリオール成分1の調製
エクセノール3030(重量平均分子量(Mw)3000のポリオキシエチレントリオール、旭硝子株式会社製)100重量部に、アエロジル300(コロイド状シリカ、日本アエロジル株式会社製)15重量部を添加し、室温で2時間混練りし、ポリオール成分1を調製した。
【0043】
(調製例2)イソシアネート基を含有し、ウレタン結合を有するウレタンプレポリマー1の合成
上記と同じエクセノール3030、100重量部に、トリレンジイソシアネート(2,4−異性体/2,6−異性体=80/20)24.1重量部を添加し、窒素気流下、80℃で3時間反応させてNCO%=6.0%のウレタンプレポリマー1を合成した。
【0044】
(調製例3)ポリオール成分2の調製
上記と同じエクセノール3030、100重量部に、テトラエチレンジアミン0.3重量部、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)0.05重量部、及び上記と同じアエロジル300、20重量部を添加し、室温で2時間混練りし、ポリオール成分2を調製した。
【0045】
(実施例1)
上記のポリオール成分1に、上記のウレタンプレポリマー1を、このポリオール成分1中のエクセノール3030、100重量部に対して60重量部となる量で、そして、クライトックス(登録商標)GPLオイル107(デュポン株式会社製)を、このポリオール成分1中のエクセノール3030、100重量部に対して20重量部となる量で、混合した。
このようにして得られた混合物を脱泡した後、JIS A 1439に記載の「スランプ試験」方法に従って、垂れ性(スランプ性)を評価した。但し、試験温度は25℃で行なった。その結果、垂れ試験値(スランプ試験値)は0mmであり、混合物の垂れは発生しなかった。
【0046】
また、上記のように脱泡した後の混合物を、ハードディスクのハウジングケースの片面にディスペンスし、140℃で3時間加熱し、硬化させてガスケットを形成させた。このようにガスケットを形成させたハウジングケースとハードディスクとを組み立てた後、50℃の恒温槽に7日間投入し、その後ディスクを取り出して、表面に付着物があるかどうかを光学顕微鏡(倍率100倍)で観察した。その結果、ディスクの表面に付着物は見られなかった。
【0047】
(比較例1)
上記のクライトックス(登録商標)GPLオイル107を混合しない以外は、実施例1と同様に、即ち、上記のポリオール成分1に、上記のウレタンプレポリマー1を、ポリオール成分1中のエクセノール3030、100重量部に対して60重量部となる量で混合した。
このようにして得られた混合物を脱泡した後、上記と同様の「スランプ試験」方法に従って、垂れ性(スランプ性)を評価した。但し、試験温度は25℃で行なった。その結果、垂れ試験値(スランプ試験値)は9mmであり、混合物の垂れが発生した。
【0048】
また、上記のように脱泡した後の混合物を、ハードディスクのハウジングケースの片面にディスペンスし、140℃で3時間加熱し、硬化させてガスケットを形成させた。このようにガスケットを形成させたハウジングケースとハードディスクとを組み立てた後、実施例1と同様に、50℃の恒温槽に7日間投入し、その後ディスクを取り出して、表面に付着物があるかどうかを光学顕微鏡(倍率100倍)で観察した。その結果、ディスクの表面に付着物は見られなかった。
【0049】
(比較例2)
上記のポリオール成分2に、上記のウレタンプレポリマー1を、ポリオール成分2中のエクセノール3030、100重量部に対して60重量部となる量で混合した。
このようにして得られた混合物を脱泡した後、上記と同様の「スランプ試験」方法に従って、垂れ性(スランプ性)を評価した。但し、試験温度は25℃で行なった。その結果、垂れ試験値(スランプ試験値)は1mmであった。
【0050】
また、上記のように脱泡した後の混合物を、ハードディスクのハウジングケースの片面にディスペンスし、140℃で3時間加熱し、硬化させてガスケットを形成させた。このようにガスケットを形成させたハウジングケースとハードディスクとを組み立てた後、実施例1と同様に、50℃の恒温槽に7日間投入し、その後ディスクを取り出して、表面に付着物があるかどうかを光学顕微鏡(倍率100倍)で観察した。その結果、ディスクの表面に付着物が見られた。
これらの実施例1、比較例1及び比較例2の物性の評価結果を表1に示す。
【表1】

【0051】
表1から理解されるように、実施例1のシール用硬化性ポリウレタン組成物は、液垂れ性(スランプ性)が改善され、また、硬化処理によりガスケットを形成させたハウジングケースとハードディスクとを組み立てた後のディスクの表面に付着物は見られず、汚染性が改善されることが確認された。
また、触媒としてのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を含有しない場合には、ディスクの表面に付着物は見られず、ディスク表面の汚染性が改善された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均分子量が1000〜8000のポリオール(A)と、
BET比表面積が100〜400m/gの無機質充填材(B)と、
イソシアネート基を有する化合物(C)と、
フッ素置換オキシアルキレン化合物(D)と
を含むことを特徴とするシール用硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項2】
前記無機質充填材(B)の配合量は、前記ポリオール(A)100重量部に対して5〜30重量部であり、
前記イソシアネート基を有する化合物(C)の配合量は、前記ポリオール(A)100重量部に対して20〜100重量部であり、
前記フッ素置換オキシアルキレン化合物(D)の配合量は、前記ポリオール(A)100重量部に対して5〜50重量部である
ことを特徴とする請求項1記載のシール用硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記フッ素置換オキシアルキレン化合物(D)が、
下記化学式(1)
【化1】

(式中、重合度(n)は、n=3〜200である)
により表されることを特徴とする請求項1記載のシール用硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項4】
前記無機質充填剤(B)は、コロイド状シリカであることを特徴とする請求項1記載のシール用硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項5】
前記イソシアネート基を有する化合物(C)が少なくとも2個のイソシアネート基を有し、かつ平均分子量が500〜4000のポリオールと反応してウレタンプレポリマーが形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のシール用硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項6】
前記ポリオール(A)は、ポリオキシプロピレントリオールであることを特徴とする請求項1記載のシール用硬化性ポリウレタン組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6に記載のシール用硬化性ポリウレタン組成物を硬化させてなることを特徴とするガスケット。

【公開番号】特開2008−260857(P2008−260857A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104807(P2007−104807)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】