説明

シール箇所の決定方法並びにシール構造

【課題】導風板と自動車用部品との間の隙間を部分的にシールする際に、そのシール箇所を適正に決定し得る技術を提供する。
【解決手段】走行風を導くときの導風板10の案内面16の風圧分布を求めた後、かかる案内面16の風圧分布に基づいて、風圧最大導風板部分68や複数の風圧ピーク導風板部分66a〜66eを特定し、その後、導風板10と自動車用部品12,14,48との間の隙間54,56,58,60のうち、少なくとも、風圧最大導風板部分68や複数の風圧ピーク導風板部分66a〜66eと自動車用部品12,14,48との間の隙間部分を、シール箇所として決定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール箇所の決定方法とシール構造とに係り、特に、自動車の前部に配置されて、自動車の走行時に生ずる気流(走行風)を冷却系部品に導く導風板と、その周囲に配置される自動車用部品との間に形成される隙間を部分的にシールするシール箇所を決定する方法と、そのような隙間を部分的にシールするための構造とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の前部には、ラジエータや空調用コンデンサ等の、所謂冷却系部品の冷却効率を上げるために、導風板が、配置されている。例えば、特開2001−80371号公報(特許文献1)等に開示されるように、導風板は、走行風を冷却系部品に導く案内面を有している。そして、そのような導風板の一対が、冷却系部品とフロントバンパ(バンパカバー)との間において、案内面を車幅方向に互いに対向させた状態で、車両前後方向に延びるように配置されている。また、導風板は、案内面を車幅方向に互いに対向配置させた一対のものに加えて、かかる一対の導風板の下端部同士、或いは上端部同士を連結するように配置されることもある。
【0003】
このような導風板の設置により冷却系部品の冷却効率が高められることによって、エンジンルーム内等に無駄な空気を取り込む必要がなくなって、空力性能が高められ、またそれによる燃費の向上が有利に図られ得る。更に、ラジエータ等の冷却系部品の小型化が実現可能となって、車両重量の低減による燃費の向上も達成できる。加えて、大型の自動車から小型の自動車まで同じラジエータを汎用的に使用可能となり、それによって、量産効果による低コスト化も達成され得るのである。
【0004】
ところで、一般に、自動車において、互いに異なる別個の自動車用部品同士を近接して組み付ける際には、それらの自動車用部品同士が、自動車の走行中の入力振動等により接触して、異音を発生したり、或いは各自動車用部品が損傷したり、変形したりするのを防止するために、互いに近接する自動車用部品同士の間に、所定の間隙、所謂設計隙が形成される。このため、自動車用部品の一種である導風板を自動車の前部に配置する場合にあっても、かかる導風板とその周囲に配置される自動車用部品との間に、隙間が不可避的に形成される。
【0005】
しかしながら、導風板と、その周囲に位置する自動車用部品との間に隙間が形成されていると、導風板の案内面にて導かれた風が、かかる隙間を通じて外部に逃げてしまい、その分だけ、冷却系部品の冷却効率が低下してしまう。また、そのような隙間を通じて、エンジンの熱気が冷却系部品側に送り込まれることがあり、そうした場合にも、冷却系部品の冷却効率の低下が惹起される恐れがある。
【0006】
そこで、従来では、各種のクッション材からなるシール部が、導風板と、その周囲に位置する自動車用部品との間の隙間内に、かかる隙間を埋めるように取り付けられるか、或いは導風板の外周部に対して、例えば可撓性を有するリップ状のシール部が一体形成され、それらのシール部によって、導風板と自動車用部品との間がシールされるようになっていた。
【0007】
なお、導風板と自動車用部品との間の隙間にシール部を設ける際には、常に、隙間の全部にシール部が設けられる訳ではなく、場合によっては、導風板と自動車用部品との間の隙間の一部だけにシール部が設けられることがある。例えば、シール部の形成コストの削減を図りたいときには、導風板と自動車用部品との間の隙間が部分的にシールされる。また、冷却系部品以外で比較的に高温となるエンジンマウントやドライブシャフト、エキゾーストマニホールド等の装置や部材を走行風によって冷却する場合には、導風板と自動車用部品との間の隙間が部分的にシールされることで、シール部が設けられていない隙間部分が意図的に形成され、この隙間部分から抜ける風が、比較的に高温となる装置や部材の冷却に利用されるのである。
【0008】
なお、導風板と自動車用部品との間の隙間を部分的にシールする際には、シール部が設けられていない隙間部分を通じての風抜けにより、導風板にて導かれる風による冷却系部品の冷却効率が低下しないように、つまり、冷却系部品の冷却効率を十分に確保し得るように、隙間全体から、シール箇所(シール部が設けられる隙間部分)を適正に決定する必要がある。
【0009】
ところが、従来では、シール部の形成に際しての作業性やコストを考慮して、導風板と自動車用部品との間の隙間のうち、シール部を形成し易い部分にシール部が設けられる場合が多かった。
【0010】
例えば、特開2005−254934号公報(特許文献2)等に示されるように、冷却系部品の周囲に、それに接続される各種の配管や電気配線等が配設されているときには、導風板の外周縁部や自動車用部品の導風板との隣接部分に対して、それらの配管や電気配線等を挿通させるための切欠部等が形成され、そのために、導風板の外周縁部や自動車用部品の導風板との隣接部分が、直線や緩やかなカーブを描く単純な形状ではなく、折れ曲がった形状や楕円形状等の複雑な形状となってしまう場合がある。このような場合には、複雑な形状とされた導風板の外周縁部や自動車用部品の導風板との隣接部分との間に形成される隙間部分を避けて、単純な形状で、シール部の形成が容易な隙間部分が、シール箇所として決定されて、かかる隙間部分にシール部が設けられていた。
【0011】
このように、従来においては、導風板と自動車用部品との間の隙間を部分的にシールするときのシール箇所が、冷却系部品の冷却効率よりもシール部の形成し易さを優先して決定されていた。それ故、シール部が設けられた実際のシール箇所が、必ずしも、冷却系部品の冷却効率を十分に確保し得る適正なシール箇所となっているとは限らなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−80371号公報
【特許文献2】特開2005−254934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その第一の解決課題とするところは、導風板とその周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を部分的にシールする際に、導風板にて導かれる風による冷却系部品の冷却効率を十分に確保可能な適正な箇所に、シール箇所を決定し得る方法を提供することにある。また、本発明にあっては、導風板とその周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を部分的にシールするための構造であって、かかる隙間のうちの適正な箇所を確実にシールすることにより、導風板と自動車用部品との隙間を通じての風抜けを効果的に防止して、導風板にて導かれる風による冷却系部品の冷却効率を十分に確保し得るようにしたシール構造を提供することを、その第二の解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記した第一の課題の解決のために、自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を部分的にシールする際に、該隙間のシール箇所を決定する方法であって、(a)前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときの該案内面の風圧分布を求める工程と、(b)前記案内面の風圧分布に基づいて、前記導風板のうちで該案内面の風圧が最大となる風圧最大導風板部分を特定する工程と、(c)前記隙間のうち、少なくとも、前記風圧最大導風板部分と前記自動車用部品との間の隙間部分を、前記シール箇所として決定する工程とを含むことを特徴とするシール箇所の決定方法を、その要旨とするものである。
【0015】
本発明にあっては、第一の課題の解決のために、自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を部分的にシールする際に、該隙間のシール箇所を決定する方法であって、(a)前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときの該案内面の風圧分布を求める工程と、(b)前記案内面の風圧分布に基づいて、前記導風板のうちで該案内面の風圧が他の箇所よりも高いピーク値を示す風圧ピーク導風板部分を複数特定する工程と、(c)前記隙間のうち、少なくとも、前記複数の風圧ピーク導風板部分と前記自動車用部品との間の複数の隙間部分を、それぞれ、前記シール箇所として決定する工程とを含むことを特徴とするシール箇所の決定方法をも、その要旨としている。
【0016】
本発明は、第一の解決課題を解決するために、自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面と切欠部及び/又は貫通孔(切欠部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方)を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を部分的にシールする際に、該隙間のシール箇所を決定する方法であって、(a)前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときの該案内面の風圧分布を求める工程と、(b)前記案内面の風圧分布に基づいて、前記導風板のうちで該案内面の風圧が最大となる風圧最大導風板部分を特定する工程と、(c)前記導風板のうちの前記風圧最大導風板部分とは別の導風板部分を、前記切欠部及び/又は貫通孔(切欠部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方)の形成箇所として決定する工程と、(d)前記隙間のうち、前記風圧最大導風板部分と前記自動車用部品との間に位置する部分を少なくとも含み、且つ前記切欠部及び/又は貫通孔(切欠部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方)の形成箇所となる前記導風板部分と前記自動車用部品との間に位置する部分を除いた隙間部分を、前記シール箇所として決定する工程とを含むことを特徴とするシール箇所の決定方法をも、また、その要旨とするものである。
【0017】
本発明は、第一の解決課題を解決するために、自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面と切欠部及び/又は貫通孔(切欠部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方)を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を部分的にシールする際に、該隙間のシール箇所を決定する方法であって、(a)前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときの該案内面の風圧分布を求める工程と、(b)前記案内面の風圧分布に基づいて、前記導風板のうちで該案内面の風圧が他の箇所よりも高いピーク値を示す風圧ピーク導風板部分を複数特定する工程と、(c)前記導風板のうちの前記複数の風圧ピーク導風板部分とは別の導風板部分を、前記切欠部及び/又は貫通孔(切欠部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方)の形成箇所として決定する工程と、(d)前記隙間のうち、前記複数の風圧ピーク導風板部分と前記自動車用部品との間にそれぞれ位置する複数の部分を少なくとも含み、且つ前記切欠部及び/又は貫通孔(切欠部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方)の形成箇所となる前記導風板部分と前記自動車用部品との間に位置する部分を除いた隙間部分を、前記シール箇所として決定する工程とを含むことを特徴とするシール箇所の決定方法をも、また、その要旨としている。
【0018】
そして、本発明にあっては、前記した第二の解決課題を解決するために、自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するのに該隙間を部分的にシールするための構造であって、前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときに、該導風板のうちで該案内面の風圧が最大となる風圧最大導風板部分と、前記自動車用部品との間に位置する部分を少なくとも含む前記隙間部分に対して、該隙間部分を通じての風抜けを防止するシール部を設けたことを特徴とするシール構造を、その要旨とするものである。
【0019】
本発明は、第二の解決課題の解決のために、自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するのに該隙間を部分的にシールするための構造であって、前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときに、該導風板のうちで該案内面の風圧が他の箇所よりも高いピーク値を示す複数の風圧ピーク導風板部分と、前記自動車用部品との間にそれぞれ位置する複数の部分を少なくとも含む前記隙間部分に対して、該隙間部分を通じての風抜けを防止するシール部を設けたことを特徴とするシール構造をも、その要旨としている。
【0020】
本発明は、第二の解決課題の解決のために、自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面と切欠部及び/又は貫通孔(切欠部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方)を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するのに該隙間を部分的にシールするためのシール構造であって、前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときに、該導風板のうちで該案内面の風圧が最大となる風圧最大導風板部分とは別の導風板部分に、前記切欠部及び/又は貫通孔(切欠部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方)を設ける一方、前記隙間のうち、前記風圧最大導風板部分と前記自動車用部品との間に位置する部分を少なくとも含み、且つ前記切欠部及び/又は貫通孔(切欠部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方)が形成される導風板部分と該自動車用部品との間に位置する部分を除いた隙間部分に対して、該隙間部分を通じての風抜けを防止するシール部を設けたことを特徴とするシール構造をも、また、その要旨とするものである。
【0021】
本発明にあっては、第二の解決課題を解決するために、自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面と切欠部及び/又は貫通孔(切欠部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方)を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するのに該隙間を部分的にシールするためのシール構造であって、前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときに、該導風板のうちで該案内面の風圧が他の箇所よりも高いピーク値を示す複数の風圧ピーク導風板部分とは別の導風板部分に、前記切欠部及び/又は貫通孔(切欠部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方)を設ける一方、前記隙間のうち、前記複数の風圧ピーク導風板部分と前記自動車用部品との間にそれぞれ位置する複数の部分を少なくとも含み、且つ前記切欠部及び/又は貫通孔(切欠部と貫通孔のうちの少なくとも何れか一方)が形成される導風板部分と該自動車用部品との間に位置する部分を除いた隙間部分に対して、該隙間部分を通じての風抜けを防止するシール部を設けたことを特徴とするシール構造をも、また、その要旨としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明に従うシール箇所の決定方法によれば、自動車の前部に配置された導風板と、その周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を部分的にシールするに際して、かかる隙間のシール箇所を、導風板にて導かれる風による冷却系部品の冷却効率が十分に確保され得る適正な箇所に、容易に且つ確実に決定することができる。
【0023】
また、本発明に従うシール構造によれば、自動車の前部に配置された導風板と、その周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間のうちの適正な箇所が確実にシールされ、それにより、かかる隙間を通じての風抜けが効果的に防止されて、導風板にて導かれる風による冷却系部品の冷却効率が十分に確保され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に従うシール箇所の決定方法が適用されるべき導風板の一例を示す正面説明図である。
【図2】本発明手法に従って決定されたシール箇所をシールしつつ、図1に示された導風板を、エンジンルーム内に設置した状態を示す説明図であって、図3のII−II断面に相当する図である。
【図3】図2におけるIII−III断面説明図である。
【図4】本発明手法に従う工程の実施により求められた導風板の案内面の風圧分布を示す説明図である。
【図5】本発明手法に従って、導風板の案内面の風圧分布を求める工程に引き続いて実施される工程であって、導風板の案内面の風圧分布から、導風板と自動車用部品との間の隙間のシール箇所を決定する工程を示す説明図である。
【図6】本発明手法に従って決定されたシール箇所をシールするためのシール片が一体形成された導風板を示す、図1に対応する図である。
【図7】図6に示された導風板をエンジンルーム内に設置した状態を示す、図2に対応する図であって、図8のVII−VII断面に相当する説明図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0026】
先ず、図1には、自動車前部のエンジンルーム内に、周辺に位置する自動車用部品との間に隙間を形成しつつ、設置される導風板の一例であって、かかる隙間のシール箇所が本発明手法に従って決定されるものが、その正面形態において示されている。その図1から明らかなように、導風板10は、樹脂製の平板にて構成されている。そして、ここでは、かかる導風板10が、後述するように、自動車のエンジンルーム内に、バンパカバー(フロントバンパ)12とラジエータ14(冷却系部品)との間に立設状態で配置されるようになっている(図2及び図3参照)。なお、以下からは、導風板10の自動車への設置状態に基づいて、図1の上下方向に対応する、導風板10の長さ方向を上下方向と言い、また、図1の左右方向に対応する、導風板10の幅方向を前後方向と言うこととする。
【0027】
より具体的には、導風板10は、全体として略長手矩形の平板からなり、一方の板面が、平坦な案内面16とされている。また、前後両端において上下方向(長さ方向)に延びる前側端面18及び後側端面20と、上下両端において前後方向(幅方向)に延びる上側端面22及び下側端面24とを有している。それら四つの端面18,20,22,24のうち、後側、上側、及び下側端面20,22,24は、上下方向又は前後方向に真っ直ぐに延びる平面からなり、前側端面18だけが、バンパカバーの内面形状に対応して、前側に向かって凸となる湾曲面とされている。
【0028】
そして、かかる導風板10の前側端面18の上下方向中央部位には、矩形状を呈する前側切欠部26が設けられている。また、導風板10の案内面16とは反対側の面における前側切欠部26の周辺部には、平板状を呈する二つの取付突起28,28が、一体的に突設されている。更に、導風板10の後端部には、案内面16とは反対側の面から直角に所定高さで突出し、且つ後側端面20に沿って、その全長に連続して延びるフランジ部29が、狭幅の平板形状をもって一体形成されている。
【0029】
また、前側切欠部26の上部側の前後方向中央部位には、貫通孔30が穿設されており、更に、下側端面24の前後方向の略中央部位には、半楕円形状を呈する下側切欠部32が形成されている。貫通孔30は、導風板10のエンジンルーム内への設置状態下において、ハーネス等を挿通するためのものであり、下側切欠部32は、ラジエータ14から延びる配管34を挿通するためのものである(図2及び図3参照)。
【0030】
そして、図2及び図3に示されるように、上記の如き構造とされた導風板10は、その二つのものが、自動車の前面に設けられるバンパカバー12とエンジンルーム内に設置されるシュラウド36の二つの自動車用部品の間に、前後方向に延びるように設置される。
【0031】
より詳細には、バンパカバー12は、その縦断面形状が、前方に向かって凸となる湾曲形状を呈している。そして、かかるバンパカバー12は、自動車の前部に対して、車幅方向に延びるように設置されたバンパリーンホースメント38に固定されている。このバンパカバー12の車幅方向への延出方向の中間部には、空気取入口40が設けられている。
【0032】
シュラウド36は、全体として、ラジエータ14よりも一周り大きな矩形の筒状乃至は枠状形態を有している。そして、自動車の前後方向に延びるように配置されて、ラジエータ14に対して外嵌された状態で固定されている。即ち、シュラウド36は、車幅方向において互いに対向して、上下方向に真っ直ぐに延びる二つの縦壁部42a,42bと、上下方向において対向して、車幅方向に真っ直ぐに延びる二つの横壁部44a,44bとを一体的に有している。そして、それら二つの縦壁部42a,42bと二つの横壁部44a,44bとが、ラジエータ14の上下左右の四つの側面のそれぞれから上下方向や左右方向に所定距離を隔てた位置において、ラジエータ14の四つの側面をそれぞれ外側から覆うように配置されている。また、二つの縦壁部42a,42bのそれぞれの前端部には、互いの対向面とは反対側の面から直角に突出して、上下方向に連続して延びるフランジ部46が、狭幅の平板形状を有して、一体形成されている。
【0033】
また、シュラウド36は、ラジエータサポート48の内側に収容されている。このラジエータサポート48は、シュラウド36よりも更に一周り大なる大きさを有して、前後方向に延びる矩形の筒状乃至は枠状形態を呈し、上下方向に対向配置された上側及び下側金属板50a,50bと、車幅方向に対向配置された右側及び左側金属板52a,52bとが、一体的に組み付けられて、構成されている。このようなラジエータサポート48が、エンジンルーム内に位置するフレーム部分等に固定されている。
【0034】
かくして、ラジエータ14が、シュラウド36にて周りを囲繞されると共に、ラジエータサポート48にて支持された状態で、エンジンルーム内に位置固定に設置されているのである。
【0035】
一方、バンパカバー12とラジエータ14との間に配置された二つの導風板10,10は、案内面16,16を互いに対向させつつ、前後方向に延びるように配置されている。これにより、バンパカバー12の空気取入口40からエンジンルーム内に取り入れられた走行風が、二つの導風板10,10のそれぞれの案内面16,16にて、ラジエータ14側に向かってスムーズに導かれるようになっている。
【0036】
そして、かかる配置状態下で、各導風板10の前側端面18と上側端面22と下側端面24が、バンパカバー12やラジエータサポート48に対して所定の間隔を隔てて位置している。また、各導風板10は、シュラウド36の二つの縦壁部42の前方で、それら二つの縦壁部42と前後方向に一直線に並んで配置されており、それによって、各導風板10の案内面16の後側端部が、シュラウド36の内側に位置するラジエータ14の前面や側面と所定間隔を隔てて位置している。
【0037】
かくして、各導風板10の前側端面18とバンパカバー12の内面との間に、前側隙間54が形成されている。また、上側端面22とバンパカバー12の内面及びラジエータサポート48の上側金属板50aとの間に、上側隙間58が形成されており、下側端面24と、バンパカバー12の内面及びラジエータサポート48の下側金属板50bとの間に、下側隙間60が形成されている。更に、ラジエータ14の前面と車幅方向両側の側面との間に形成される角部、即ち、ラジエータ14の車幅方向両端の前側角部と、案内面16の後側端部との間には、後側隙間56が形成されている。この後側隙間56は、ラジエータ14の車幅方向両側の側面とシュラウド36の二つの縦板部42a,42bのそれぞれの内面との間に形成される隙間に連通している。
【0038】
また、上記のように配置された導風板10の下側切欠部32内には、ラジエータ14から延びる配管34が、それぞれ挿通されている。即ち、ここでは、ラジエータの14の前面の下端部における左右両端から、配管34がそれぞれ前方に向かって延び出し、且つかかる配管34が、その途中でUターンして、後方に延出している。そして、そのような配管34が、そのUターン部分において、各導風板10の下側切欠部32内に挿通されているのである。また、各導風板10の貫通孔30には、図示しないハーネス等が挿通されている。
【0039】
各導風板10の前側切欠部26内には、バンパリーンホースメント38が嵌入されている。また、各導風板10の後端部に一体形成されたフランジ部29が、シュラウド36の各縦壁部42a,42bの前端部に一体形成されたフランジ部46にそれぞれ重ね合わされている。そして、前側切欠部26の周辺に一体形成された各取付突起28が、バンパリーンホースメント38の切欠部26への挿通部分にボルト止めされる一方、各導風板10のフランジ部29が、シュラウド36の各縦壁部42a,42bのフランジ部46に樹脂クリップ62等によりクリップ止めされている。これによって、二つの導風板10,10が、バンパカバー12とラジエータ14との間に、それらと隙間54,56,58,60を形成しつつ、位置固定に設置されている。
【0040】
そして、そのようにしてエンジンルーム内に設置された各導風板10とバンパカバー12やラジエータ14やラジエータサポート48との間に形成された前側隙間54と後側隙間56と下側隙間60とが、第一前側シール部64aと第二前側シール部64bと第一後側シール部64cと第二後側シール部64dと下側シール部64eにて、それぞれ部分的にシールされている。
【0041】
それら五つのシール部64a,64b,64c,64d,64eは、何れも、弾性乃至はクッション性を有する、細長い角柱状の樹脂発泡体にて構成されている。なお、各シール部64a,64b,64c,64d,64eの形状は、何等これに限定されるものではなく、シールされるべき隙間54,56,58,60の形状や大きさ等に応じて、適宜に変更される。また、各シール部64a,64b,64c,64d,64eの形成材料も、非発泡性の樹脂材料やゴム材料、エラストマ材料等、弾性乃至はクッション性を発揮する材料が、発泡性樹脂材料に代えて、適宜に採用可能である。
【0042】
そして、第一前側シール部64aが、導風板10の前側切欠部26よりも上部側に位置する前側端面18の上部部位に固着されている一方、第二前側シール部64bが、導風板10の前側切欠部26よりも下部側に位置する前側端面18の下部部位と、下側切欠部32よりも前側に位置する下側端面24の前部部位とに対して、それらに跨って延びるように固着されている。また、下側シール部64eは、下側切欠部32よりも後側に位置する下側端面24の後部部位に固着されている。第一後側シール部64cは、導風板10の案内面16の後端側の上部部位に対して、一部を後側端面20から後方に突出させた状態で固着されている。一方、第二後側シール部64dは、案内面16の後端側の下部部位に対して、一部を後側端面20から後方に突出させた状態で固着されている。なお、それら五つのシール部64a,64b,64c,64d,64eの導風板10に対する固着は、例えば、接着や溶着等により実現される。
【0043】
そして、導風板10が、上記のようにしてバンパカバー12とラジエータ14との間に配置された状態下において、第一前側シール部64aが、前側隙間54の上部部位、つまり、バンパカバー12の内面の上部部位と導風板10の前側端面18の上部部位との間に位置する前側隙間54部分に対して、充填されるように、圧縮状態で配置されている。これにより、前側隙間54の上部部位が、第一前側シール部64aにて塞がれて、シールされている。
【0044】
また、第二前側シール部64bが、前側隙間54の下部部位と下側隙間60の前部部位、つまり、バンパカバー12の内面の下部部位と導風板10の前側端面18の下部部位に位置する前側隙間54部分と、バンパカバー12の内面の下部部位と導風板10の下側端面24の前部部位との間に位置する下側隙間60部分とに対して、充填されるように、圧縮状態で配置されている。これにより、前側隙間54の下部部位と下側隙間60の前部部位とが、第二前側シール部64bにて塞がれて、シールされている。
【0045】
さらに、下側シール部64eが、下側隙間60の後部部位、つまり、ラジエータサポート46の下側金属板50bの前部部位と導風板10の下側端面24の後部部位との間に位置する下側隙間60部分に対して、充填されるように、圧縮状態で配置されている。これにより、下側隙間60の後部部位が、下側シール部64eにて塞がれて、シールされている。
【0046】
更にまた、第一後側シール部64cが、後側隙間56の上部部位、つまり、ラジエータ14の車幅方向両端の前側角部の上部部位と導風板10の案内面16の後側端部の上部部位との間に位置する後側隙間56部分に対して、一部をラジエータ14の前面の車幅方向端部に接触させた状態で配置されている。これにより、後側隙間56の上部部位が、第一後側シール部64cにて塞がれて、シールされている。
【0047】
また、第二後側シール部64dが、後側隙間56の下部部位、つまり、ラジエータ14の車幅方向両端の前側角部の下部部位と導風板10の案内面16の後側端部の下部部位との間に位置する後側隙間56部分に対して、一部をラジエータ14の前面の車幅方向端部に接触させた状態で配置されている。これにより、後側隙間56の下部部位が、第二後側シール部64cにて塞がれて、シールされている。
【0048】
かくして、ここでは、二つの各導風板10,10とバンパカバー12やラジエータ14やラジエータサポート48との間に、隙間54,56,58,60が各導風板10の周りを取り囲むように形成されているにも拘わらず、それらの隙間54,56,58,60が部分的にシールされているため、各導風板10の案内面16にてラジエータ14に導かれる走行風が、それらの隙間54,56,58,60から抜け出すことが可及的に防止されるようになっている。
【0049】
そして、本実施形態では、特に、各導風板10,10とバンパカバー12やラジエータ14やラジエータサポート48との間の隙間54,56,58,60のうち、五つのシール部64a〜64eにてシールされるべきシール箇所が、特別な方法により、例えば、以下の手順に従って決定されている。
【0050】
すなわち、先ず、走行風を、導風板10の案内面16にてラジエータ14側に導くときの案内面16の風圧分布を、公知の手法により求める。
【0051】
案内面16の風圧分布の求める方法には、シミュレーションによる方法と実測による方法とがある。前者の方法としては、例えば、CFD解析を公知の手法により実施して、導風板10の案内面16の風圧分布を求める方法がある。また、後者の方法には、例えば、導風板10を用いた風洞試験を行って、そのときの案内面16の様々な箇所の風圧を公知の手法により実測することで、案内面16の風圧分布を求める方法がある。
【0052】
なお、ここでは、好ましくは、貫通孔30や下側切欠部32が未だ設けられていない導風板10を用いて、上記のシミュレーションや実測が行われる。また、案内面16の風圧分布を求める際には、シミュレーションによる方法と実測による方法の何れを採用する場合にあっても、自動車の直進時だけでなく、例えば、自動車の左折時や右折時を想定して、或いは風向きが自動車に対して斜めの向きとなっているとき等を想定して、走行風が案内面16にて前後方向に真っ直ぐに導かれるときと、走行風が様々な角度に傾斜した向きで案内面16にて案内されるときにおける案内面16の風圧分布を、それぞれ求めることが、望ましい。そうすることで、実車での走行時に、より即した案内面16の風圧分布を求めることができる。
【0053】
そして、例えば、CFD解析を行うことによって、図4に示されるような導風板10の風圧分布が得られこととなる。かかる図4では、黒く塗りつぶされた部分が、風圧が最大値となった部分を示しており、クロスハッチが施された部分が他の箇所よりも風圧が高いピーク値となった部分を示している。また、ドットが付された部分が、ピーク値よりも低い風圧となった部分を示しを示しており、破線のハッチが付された部分が、ドットが付された部分よりも更に低い風圧となった部分を示している。
【0054】
次に、上記のようにして求められた導風板10の案内面16の風圧部分に基づいて、案内面16での風圧のピーク部分と最大部分とを特定する。
【0055】
すなわち、図4に示されるように、導風板10の案内面16の前端部のうち、前側切欠部26よりも上側に位置する上部部位を第一前側風圧ピーク部分66aとして、前側切欠部26の下側周縁部に沿って延びる中間部位を、第二前側風圧ピーク部分66bとして、また、下側角部を、第三前側風圧ピーク部分66cとして、それぞれ、特定する。一方、案内面の後端部のうち、第一前側風圧ピーク部分66aと略同一の高さに位置する部分を第一後側風圧ピーク部分66dとして、また、下側角部を含む下部部位を第二後側風圧ピーク部分66eとして、それぞれ、特定する。そして、第二後側風圧ピーク部分66eの中に位置する下側角部及びその周辺部分を、風圧最大部分68として、特定する。このように、本実施形態においては、五つの風圧ピーク部分66a〜66eにて、風圧ピーク導風板部分が構成され、また、風圧最大部分68にて、風圧最大導風板部分が構成されている。
【0056】
また、ここでは、貫通孔30や下側切欠部32が未だ設けられていない導風板10を用いて、案内面16の風圧分布が求められている。そこで、案内面16での風圧のピーク部分と最大部分を特定した後、貫通孔30と下側切欠部32の形成箇所を、それぞれ決定する。
【0057】
貫通孔30は、前記したように、導風板10のエンジンルーム内への設置状態下で、ハーネス等を導風板10の上部に挿通させるものであるが、ハーネス等を挿通させた際に、ハーネスの挿通部分と貫通孔30の内周面との間に、スキが不可避的に形成され、それが、案内面16にて導かれた走行風の抜け道となる。それ故、そのような抜け道からの走行風の抜出し量を可及的に少なくする上から、貫通孔30は、導風板10の案内面16の上部うちで、風圧ができるだけ小さな部位に形成されることが望ましい。そこで、ここでは、図4に示されるように、案内面16の上部のうち、第一前側風圧ピーク部66a及び第一後側風圧ピーク部分66dと、それらの周辺に位置する風圧の比較的に高い部分、つまり、図4にドットが付された部分や破線のハッチが付された部分とは別の部分に、貫通孔30の形成箇所が設定される。即ち、図4に二点鎖線で示されるように、上記の条件を満たした部位である、案内面16の前後方向中間部分で且つ前側切欠部26の直上部分が、貫通孔形成箇所70として、決定されるのである。
【0058】
また、下側切欠部32も、前記したように、導風板10のエンジンルーム内への設置状態下で、配管34を導風板10の下端部に挿通させるものであるが、配管34を挿通させた際に、配管34の挿通部分と下側切欠部32の内周面との間に、スキが不可避的に形成され、それが、案内面16にて導かれた走行風の抜け道となる。それ故、そのような抜け道からの走行風の抜出し量を可及的に少なくする上から、下側切欠部32は、導風板10の案内面16の下端部うちで、風圧ができるだけ小さな部位に形成されることが望ましい。そこで、ここでは、図4に示されるように、案内面16の下端部のうち、第三前側風圧ピーク部66c、最大風圧部分68、及び第二後側風圧ピーク部分66eとは別の部分であって、且つそれらの周辺に位置する風圧の比較的に高い部分、つまり、図4にドットが付された部分や破線のハッチが付された部分をできるだけ避けた部分に、下側切欠部32の形成箇所が設定される。かくして、図4に二点鎖線で示されるように、上記の条件を満たした部位である、案内面16の下端部の前後方向中間部分が、下側切欠部形成箇所72として、決定されるのである。
【0059】
そして、貫通孔形成箇所70と下側切欠部形成箇所72とが決定したら、貫通孔形成箇所70に貫通孔30形成する一方、下側切欠部形成箇所72に下側切欠部32を形成する。なお、導風板10は、通常、射出成形等の金型成形によって製造されるものである。従って、実際には、シミュレーションや導風板10のモデルを用いた実測により得られる案内面16の風圧分布に基づいて、貫通孔形成箇所70と下側切欠部形成箇所72とを、導風板10の製造前に、予め決定しておき、導風板10の金型成形による製造と同時に、貫通孔30や下側切欠部32が、導風板10に対して形成されることとなる。勿論、実車に使用される導風板10を用いて、貫通孔形成箇所70と下側切欠部形成箇所72とを決定し、その後、かかる導風板10の貫通孔形成箇所70と下側切欠部形成箇所72とに対して、貫通孔30を下側切欠部32とを形成することも可能である。
【0060】
次いで、図5に示されるように、貫通孔30と下側切欠部32が形成されると共に、五つの風圧ピーク部分66a〜66eと最大風圧部分68とが特定された二つの導風板10,10(図5には、一つの導風板10のみを示す)を、実際に、エンジンルーム内のバンパカバー12とラジエータ14との間に、案内面16同士を互いに対向させて、前後方向に延びるように配置すると共に、前記のようにして、バンパリーンホースメント38やシュラウド36に固定する。このとき、二つの導風板10,10とバンパカバー12やラジエータ14やラジエータサポート48との間に、前側隙間54と後側隙間56と上側隙間58と下側隙間60とが、各導風板10の周りを取り囲むように形成される。
【0061】
その後、二つの導風板10,10とバンパカバー12やラジエータ14やラジエータサポート48との間に形成される隙間54,56,58,60のうちから、シールすべき箇所を決定する。それらの隙間54,56,58,60のうちのシール箇所は、案内面16の五つの風圧ピーク部分66a〜66eや最大風圧部分68をそれぞれ含む導風板10部分と、バンパカバー12やラジエータ14やラジエータサポート48との間に位置する部分となる。
【0062】
すなわち、図5から明らかなように、案内面16の第一前側風圧ピーク部分66aとその周辺部を含む案内面16部分に連続する(隣り合って位置する)、導風板10の前側端面18の上部部位と、バンパカバー12の内面の上部部位との間に位置する前側隙間54部分を、第一前側シール箇所74aとして、決定する。
【0063】
また、案内面16の第三前側風圧ピーク部分66cとその周辺部を含む案内面16部分に連続する(隣り合って位置する)、導風板10の前側端面18の下部部位及び下側端面24の前部部位と、バンパカバー12の内面の下部部位との間に位置する前側隙間54部分及び下側隙間60部分を、第二前側シール箇所74bとして、決定する。
【0064】
さらに、案内面16の第一後側風圧ピーク部分66dとその周辺部と、ラジエータ14の車幅方向両端の前側角部の上部部位との間に位置する後側隙間56部分を、第一後側シール箇所74cとして、決定する。
【0065】
また、案内面16の最大風圧部分68及び第二後側風圧ピーク部分66eとそれらの周辺部と、ラジエータ14の車幅方向両端の前側角部の下部部位との間に位置する後側隙間56部分を、第二後側シール箇所74dとして、決定する。
【0066】
また、案内面16の最大風圧部分68及び第二後側風圧ピーク部分66eとそれらの周辺部を含む案内面16部分に連続する(隣り合って位置する)、導風板10の下側端面24の後部部位との間に位置する下側隙間60部分を、下側シール箇所74eとして、決定する。
【0067】
なお、案内面16の第二前側風圧ピーク部分66bとその周辺部を含む案内面16部分に連続する(隣り合って位置する)、導風板10の前側端面18の中間部位は、バンパリーンホースメント38に接触しており、かかる中間部位の周囲には隙間が何等形成されていない。このため、第二前側風圧ピーク部分66bの周辺部には、シール箇所が設定されない。
【0068】
かくして、前側隙間54と後側隙間56と下側隙間60とに、五つのシール箇所74a〜74eを決定した後、図2に示されるように、第一前側シール箇所74aに対して、第一前側シール部64aを、第二前側シール箇所74bに対して、第二前側シール部64bを、下側シール箇所74eに対して、下側シール部64eを、それぞれ、導風板10の前側端面18や下側端面24とバンパカバー12の内面との間に充填され、且つ前側端面18や下側端面24に固着された状態で、設置する。また、第一後側シール箇所74cに対して、第一後側シール部64cを、第二後側シール箇所74dに対して、第二後側シール部64dを、それぞれ、ラジエータ14の前面の車幅方向端部に接触され、且つ案内面16の後端部に固着された状態で、設置する。
【0069】
このように、本実施形態では、導風板10の案内面16が、バンパカバー12の空気取入口40から取り入れられた走行風をラジエータ14に導くときに、案内面16が受ける風圧の最大箇所や、他の部位に比して高いピーク値を示す箇所をそれぞれ含む導風板10部分と、バンパカバー12やラジエータ14やラジエータサポート48との間に位置する前側隙間54部分や後側隙間56部分、下側隙間60部分が、シール箇所74a〜74eとしてそれぞれ決定されて、それら五つのシール箇所74a〜74eに、五つのシール部64a〜64eが、それぞれ設けられている。即ち、前側隙間54と後側隙間56と上側隙間58と下側隙間60のうちのシールが必要とされるべき箇所に必要な分だけ、シール部64a〜64eが、部分的に設置されているのである。しかも、シール部64a〜64eが設置される導風板10部分が、直線的に延びる箇所や緩やかなカーブを描く形状とされている。
【0070】
従って、かくの如き本実施形態によれば、各隙間54,56,58,60のシール箇所74a〜74eが適正に決定され、それによって、各隙間54,56,58,60からの走行風の抜け出しを確実且つ効率的に防止可能なシール設計が、可及的に低いコストと容易な作業とによって有利に実現できるのである。また、各隙間54,56,58,60のうちのシール部64a〜64eの設置部分以外から抜け出した走行風を、エンジンルーム内に設置されるエンジンマウントやドライブシャフト、エキゾーストマニホールド等の比較的に高温となる装置や部材の冷却風として、有効に利用することが可能となる。
【0071】
さらに、本実施形態では、導風板10に対する貫通孔30の形成箇所と下側切欠部32の形成箇所が、導風板10の案内面16により走行風をラジエータ14に導くときに案内面16が受ける風圧の最大箇所や、他の部位に比して高いピーク値を示す箇所とは別の箇所に設定されて、そのような箇所に、貫通孔30と下側切欠部32とが形成されている。
【0072】
従って、貫通孔30や下側切欠部32からの風抜けも可及的に抑制され、以て、更に優れたシール効果が発揮され得るのである。
【0073】
しかも、案内面16が受ける風圧の最大箇所や、他の部位に比して高いピーク値を示す箇所に貫通孔30や下側切欠部32が形成される場合とは異なって、それら貫通孔30や下側切欠部32の形成によって、直線や緩やかなカーブを描いて延びるような単純な形状ではなく、複雑な形状となった部分に、シール部64a〜64eを設けなくてはならない事態が生ずることが、効果的に回避され得る。その結果、シール部64a〜64eの形成作業の簡略化が、有利に達成され得る。そして、そのような容易なシール作業により、ラジエータ14の冷却効率の向上が、極めて効果的に図られ得ることとなるのである。
【0074】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0075】
例えば、前記実施形態では、シール部64a〜64eが、導風板10とは別部材にて構成されていたが、それらを導風板10に対して一体形成しても良い。その場合には、前記した方法で決定された、前側、後側、及び下側隙間54,56,60の五つのシール箇所74a〜74eを、バンパカバー12やラジエータ14やラジエータサポート48との間で形成する導風板10部分に対して、シール片76a〜76eが、それぞれ一体形成される。
【0076】
すなわち、図6乃至図8に示されるように、案内面16の第一前側風圧ピーク部分66aや第三前側風圧ピーク部分66cに連続する、導風板10の前側端面18部分に対して、第一前側シール片76aや第二前側シール片76bを、それぞれ一体的に突設する。また、第一後側風圧ピーク部分66dや、第二後側風圧ピーク部分66e及び最大風圧部分68に対して、第一後側シール片76cや第二後側シール片76dを、それぞれ一体的に突設する。更に、第二後側風圧ピーク部分66e及び最大風圧部分68に連続する、導風板10の下側端面24部分に、下側シール片76eを一体的に突設するのである。ここでは、五つのシール片76a〜76eが、それぞれ、導風板10の本体部分よりも薄肉で、全体として、長手の狭幅矩形状のリップ形態を呈し、可撓性を有する平板にて構成されている。
【0077】
そして、それら五つのシール片76a〜76eが、五つのシール箇所74a〜74eのそれぞれに、撓み変形させられて、バンパカバー12やラジエータ14やラジエータサポート48に対して先端部を接触させた状態で配置されている。かくして、前側隙間54と後側隙間56と下側隙間60が、必要な箇所に、必要な分だけ、部分的にシールされている。そして、それによって、本実施形態にあっても、前記した第一の実施形態において奏される作用・効果と実質的に同一の作用・効果が、有効に享受され得ることとなる。
【0078】
また、前記実施形態では、CFD解析を1回だけ行うことによって、シール箇所74a〜74eと貫通孔形成箇所70と下側切欠部形成箇所72が決定されていた。しかしながら、必要に応じて、CFD解析を複数回実施してから、或いは風洞試験による案内面16の風圧分布の実測を複数回繰り返してから、それによって得られる案内面16の風圧分布に基づいて、シール箇所74a〜74eと貫通孔形成箇所70と下側切欠部形成箇所72を、それぞれ決定しても良い。それによって、導風板10の設置よる導風効果が、更に一段と高められることとなる。
【0079】
すなわち、例えば、1回目のCFD解析や風洞試験等の実施によって決定されたシール箇所にシール部を設置してから、2回目のCFD解析や風洞試験等を実施して、新たに案内面の風圧分布を求める。そこで求められた案内面の風圧分布において、新たに風圧最大導風板部分や風圧ピーク導風板部分の存在が認められたら、それに基づいて、新たなシール箇所を決定しても良い。
【0080】
また、例えば、1回目のCFD解析や風洞試験等にて求められた案内面の風圧分布に基づいて決定されたシール箇所にシール部を設けたときの条件で、2回目のCFD解析や風洞試験等を実施して求められた案内面の風圧部分から、貫通孔形成箇所や下側切欠部形成箇所を、風圧最大導風板部分や風圧ピーク導風板部分とは別の部分の最適箇所に決定しても良い。
【0081】
そして、上記のようなCFD解析や風洞試験等を3回以上繰り返し実施して、シール箇所の新たな追加や修正、或いは貫通孔形成箇所や下側切欠部形成箇所の追加や修正を行っても良いのである。
【0082】
また、前記実施形態では、案内面16の最大風圧部分68を含む導風板10部分、及び風圧ピーク部分66a〜66eを含む導風板10部分と、バンパカバー12やラジエータ14やラジエータサポート48との間に形成される隙間54,56,60に対して、シール箇所74a〜74eが設定されていた。しかしながら、例えば、風圧ピーク部分66a〜66eの風圧が然程高くない場合や、特に高い導風効果が要求されない場合等においては、案内面16の最大風圧部分68を含む導風板10部分と、バンパカバー12やラジエータ14やラジエータサポート48との間に形成される隙間54,56,60に対してのみに、シール箇所を設定し、そこにシール部を設けるようにしても良い。
【0083】
加えて、前記実施形態では、本発明を、走行風をラジエータに導く導風板と、その周囲に配置されたバンパカバーやシュラウド、ラジエータサポートとの間に形成される隙間を部分的にシールする際に、その隙間のシール箇所を決定する方法と、かかる隙間のシール構造に適用した例が示されていたが、本発明は、ラジエータ以外の冷却系部品に走行風を導く導風板と、その周囲に配置された各種の自動車用部品との間に形成される隙間を部分的にシールする際に、その隙間のシール箇所を決定する方法と、かかる隙間のシール構造の何れに対しても有利に適用され得ることは勿論である。
【0084】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0085】
10 導風板 12 バンパカバー
14 ラジエータ 16 案内面
30 貫通孔 32 下側切欠部
36 シュラウド 48 ラジエータサポート
54 前側隙間 56 後側隙間
58 上側隙間 60 下側隙間
64 シール部 66 風圧ピーク部分
68 風圧最大部分 70 貫通孔形成箇所
72 下側切欠部形成箇所 74 シール箇所
76 シール片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を部分的にシールする際に、該隙間のシール箇所を決定する方法であって、
前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときの該案内面の風圧分布を求める工程と、
前記案内面の風圧分布に基づいて、前記導風板のうちで該案内面の風圧が最大となる風圧最大導風板部分を特定する工程と、
前記隙間のうち、少なくとも、前記風圧最大導風板部分と前記自動車用部品との間の隙間部分を、前記シール箇所として決定する工程と、
を含むことを特徴とするシール箇所の決定方法。
【請求項2】
自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を部分的にシールする際に、該隙間のシール箇所を決定する方法であって、
前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときの該案内面の風圧分布を求める工程と、
前記案内面の風圧分布に基づいて、前記導風板のうちで該案内面の風圧が他の箇所よりも高いピーク値を示す風圧ピーク導風板部分を複数特定する工程と、
前記隙間のうち、少なくとも、前記複数の風圧ピーク導風板部分と前記自動車用部品との間の複数の隙間部分を、それぞれ、前記シール箇所として決定する工程と、
を含むことを特徴とするシール箇所の決定方法。
【請求項3】
自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面と切欠部及び/又は貫通孔を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を部分的にシールする際に、該隙間のシール箇所を決定する方法であって、
前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときの該案内面の風圧分布を求める工程と、
前記案内面の風圧分布に基づいて、前記導風板のうちで該案内面の風圧が最大となる風圧最大導風板部分を特定する工程と、
前記導風板のうちの前記風圧最大導風板部分とは別の導風板部分を、前記切欠部及び/又は貫通孔の形成箇所として決定する工程と、
前記隙間のうち、前記風圧最大導風板部分と前記自動車用部品との間に位置する部分を少なくとも含み、且つ前記切欠部及び/又は貫通孔の形成箇所となる前記導風板部分と前記自動車用部品との間に位置する部分を除いた隙間部分を、前記シール箇所として決定する工程と、
を含むことを特徴とするシール箇所の決定方法。
【請求項4】
自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面と切欠部及び/又は貫通孔を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を部分的にシールする際に、該隙間のシール箇所を決定する方法であって、
前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときの該案内面の風圧分布を求める工程と、
前記案内面の風圧分布に基づいて、前記導風板のうちで該案内面の風圧が他の箇所よりも高いピーク値を示す風圧ピーク導風板部分を複数特定する工程と、
前記導風板のうちの前記複数の風圧ピーク導風板部分とは別の導風板部分を、前記切欠部及び/又は貫通孔の形成箇所として決定する工程と、
前記隙間のうち、前記複数の風圧ピーク導風板部分と前記自動車用部品との間にそれぞれ位置する複数の部分を少なくとも含み、且つ前記切欠部及び/又は貫通孔の形成箇所となる前記導風板部分と前記自動車用部品との間に位置する部分を除いた隙間部分を、前記シール箇所として決定する工程と、
を含むことを特徴とするシール箇所の決定方法。
【請求項5】
自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するのに該隙間を部分的にシールするための構造であって、
前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときに、該導風板のうちで該案内面の風圧が最大となる風圧最大導風板部分と、前記自動車用部品との間に位置する部分を少なくとも含む前記隙間部分に対して、該隙間部分を通じての風抜けを防止するシール部を設けたことを特徴とするシール構造。
【請求項6】
自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するのに該隙間を部分的にシールするための構造であって、
前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときに、該導風板のうちで該案内面の風圧が他の箇所よりも高いピーク値を示す複数の風圧ピーク導風板部分と、前記自動車用部品との間にそれぞれ位置する複数の部分を少なくとも含む前記隙間部分に対して、該隙間部分を通じての風抜けを防止するシール部を設けたことを特徴とするシール構造。
【請求項7】
自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面と切欠部及び/又は貫通孔を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するのに該隙間を部分的にシールするためのシール構造であって、
前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときに、該導風板のうちで該案内面の風圧が最大となる風圧最大導風板部分とは別の導風板部分に、前記切欠部及び/又は貫通孔を設ける一方、前記隙間のうち、前記風圧最大導風板部分と前記自動車用部品との間に位置する部分を少なくとも含み、且つ前記切欠部及び/又は貫通孔が形成される導風板部分と該自動車用部品との間に位置する部分を除いた隙間部分に対して、該隙間部分を通じての風抜けを防止するシール部を設けたことを特徴とするシール構造。
【請求項8】
自動車の前部に前後方向に延びるように配置されて、走行風を冷却系部品に導く案内面と切欠部及び/又は貫通孔を有する導風板と、該導風板の周囲に配置された自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するのに該隙間を部分的にシールするためのシール構造であって、
前記導風板の案内面にて前記走行風を前記冷却系部品に導くときに、該導風板のうちで該案内面の風圧が他の箇所よりも高いピーク値を示す複数の風圧ピーク導風板部分とは別の導風板部分に、前記切欠部及び/又は貫通孔を設ける一方、前記隙間のうち、前記複数の風圧ピーク導風板部分と前記自動車用部品との間にそれぞれ位置する複数の部分を少なくとも含み、且つ前記切欠部及び/又は貫通孔が形成される導風板部分と該自動車用部品との間に位置する部分を除いた隙間部分に対して、該隙間部分を通じての風抜けを防止するシール部を設けたことを特徴とするシール構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−250637(P2012−250637A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125412(P2011−125412)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】