説明

シール装置

【課題】シール装置はシール面を介して高温・高圧の被密封流体を密封可能にすると共に、シール面を取付面間の変位に追随して密接させることにある。
【解決手段】シール装置は、第1湾曲部2Bの一方側に第1弾性部2Cと、他方側に第2弾性部2Aを有する第1シール部2と、第2湾曲部12Bの一方側に第1対称弾性部12Cと他方側に第2対称弾性部12Aを有する第2シール部12と、第1シール部2の第2弾性部2Aと第2シール部12の第2対称弾性部12Aとを繋ぐ結合部3と、第1弾性部2Cの第1側面に有する第1シール面2C1と、第1対称弾性部12Cの第2側面に有する第2シール面12C1とを具備し、第1弾性部2Aの側面2A1と第2対称弾性部12Aの側面12A1とを結合部3と湾曲部2B,12Bとの間の接合面で接触させている。シール面12C1,2C1の間に力が作用して、位置を変える接合面を支点として湾曲部2B,12Bが開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板を特殊な形状に成形したシール装置に関する。特に、被密封流体圧力または振動力等の外力または温度による膨張・収縮の変形等により取付面間が変位する取付部品に設けられるシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
組立部品の取付面間にシール装置を取付けてシールする装置において、外力により取付面間が変位すると、この変位によりシール装置のシール能力が低下するために問題となっている。例えば、ガスタービンエンジンに設けられるシールリングが知られている。このシールリングは、タービンエンジンなどに於いて、高温燃焼ガスの熱膨張応力または圧縮ガス圧力或いは回転時の振動力により変形を受ける取付面間に取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。また、ガスタービン、原子力機器等の取付面間は、高温、高圧の作用を受けるので、取付面間の寸法が変位する。この取付面間に取り付けられるシールリングも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
図7は、特許文献1の図1に開示されたシールリングと類似する。図7において、シールリング120は、断面がU形状をしたリング体である。また、このU形状のシールリング120の両端は逆曲部132、132に形成されている。更に、シールリング120は内リング122と外リング126から成る二重層である。また、内リング122の内周は溝135に形成されている。
【0004】
そして、シールリング120は、ガスタービンの高圧タービンノズル110をシールするために取り付けられる。高圧タービンノズル110には、複数のノズルベーン112が設けられている。このノズルベーン112は、支持フランジ118に配置されている半径方向内側バンド116に一体に取り付けられている。高圧タービンノズル110の内側バンド116と支持フランジ118とを組み合わせるために、内側バンド116と支持フランジ118との間にシールリング120が取り付けられる。
【0005】
高圧タービンノズル110は、図示省略の上流に設けられた燃焼室から送られた高温燃焼ガス114をノズルベーン112により回転させながら加速する。この為に、内側バンド116と支持フランジ118は加熱時間と共に、熱膨張による変形を受ける。熱膨張による変形を受ける内側バンド116と支持フランジ118の間に取り付けられたシールリング120は、内側バンド116と支持フランジ118の熱膨張による変形により軸方向へ弾性変形する。このとき、シールリング120は、U形状の曲げ中心の接点125が支持フランジ118に支持されている。同時に、シールリング120は、逆曲部132、132が内側バンド116と支持フランジ118に接触すると共に、逆曲部132、132の軸方向間に溝134、135、134が3個所に設けられている。この為に、シールリング120の軸方向の弾性変形する範囲は大きくなるが、反対に、シールリング120の接点125側で弾性に支持されたシール面132A、132Bは、弾性変形が大きすぎて均一な密接力を得ることが困難になる。つまり、シール面132A、132Bの追随性が悪くてシール能力が低下する。
【0006】
また、断面がU形状をした開口側の3個の溝134、135、134のうち、内周側の大きな1個の溝135と、その溝135の両側における小さな2個の溝134の開口側が互いに逆方向となっている。この為に、例えば、流体の圧力を一方から受けた場合にシール効果が発揮されない問題が存する。 更に、シールリング120には、両方の開口端に逆曲部132、132を形成する為に、全体の曲げ加工が困難になり、加工コストが上昇する。
【0007】
図8は、断面がE形をしたシールリング216である。このシールリング216は、断面がU形状をした2個の第1環状シール部220Aと第2環状シール部220Bとを中間部225で結合した形である。そして、第1環状シール部220Aと第2環状シール部220Bの中間部225側の間に中間溝210が設けられている。また、中間部225で結合する第1弾性部224Aと第2弾性部224Bの先端には、断面が半円状に形成された第3弾性部226Aと第4弾性部226Bが設けられている。この半円状の第3弾性部226A及び第4弾性部226Bには、外周側に組立部品と接合する円弧面の第1シール面222Aと第2シール面222Bが形成されている。このシールリング216は、中間部225から、第1弾性部224Aと第2弾性部224Bを介して各第1シール面222A及び第2シール面222Bまでの距離により弾性力が発揮される。
【0008】
しかも、このシールリング216は、第1弾性部224Aと第2弾性部224Bの中間部225に対する反対の端部に第3弾性部226Aと第4弾性部226Bが半円状に形成されているために、第1シール面222A及び第2シール面222Bは組立部品に対し、密接する追随が不安定になる。つまり、中間部225を支点とする第1シール面222A及び第2シール面222Bまでの第1弾性部224Aと第2弾性部224Bの弾性変形力は、中間溝210が設けられているために、第1シール面222Aと第2シール面222Bを常に均一な力でもって組立部品に対し、押圧することが困難になる。このために、第1シール面222A及び第2シール面222Bの追随する密接力が不安定になり、第1シール面222A及び第2シール面222Bのシール能力が低下する。また、シールリング216には第5弾性部223Aと第6弾性部223Bを介して内径の外側に第3シール面221Aと第4シール面221Bが設けられている。この第3シール面221Aと第4シール面221Bは、組立部品の取付面間が傾斜した場合に密接させるものであるが、第1シール面222A及び第2シール面222Bと同様に、中間部225を支点とするために追随する密接力の範囲が小さくなる。また、シールリング216は、2つの受圧溝と中間溝210とを関連して機能するように形成しなければならないので、正確な寸法のプレス加工が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2002−523712号公報(図1)
【特許文献2】特開2002−5290号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述のような問題点に鑑み成されたものである。そして、本発明が解決しようとする課題は、流体圧力、熱応力等の外力によりシール装置を取り付ける取付面間の間隔が変位する場合でも、広い変位範囲にわたりシール能力を発揮させることにある。また、シール構造を機能的にして、加工コストを低減することにある。更に、シール装置の小型化を可能にして、狭い取付面間に取り付けられるようにすると共に、組立コストを低減することにある。更にまた、シール装置のシールする耐久能力を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述のような技術的課題を解決するために成されたものである。そして、その技術的解決手段は以下のように構成されている。
【0012】
発明のシール装置は、断面がU形状を成して第1湾曲部の一方側に第1弾性部を有すると共に他方側に第2弾性部を有する第1シール部と、第2湾曲部の一方側に第1対称弾性部と他方側に第2対称弾性部を有する第2シール部と、第1シール部の第2弾性部と第2シール部の第2対称弾性部とを連結する結合部と、第1弾性部の第1側面に有する第1シール面と、第1対称弾性部の第2側面に有する第2シール面とを具備し、第2弾性部の側面と第2対称弾性部の側面とを結合部で接触または近接させるものである。
【0013】
シール装置は、結合部は断面円形状に形成されて内部に環状空間部を有してもよい。
【0014】
シール装置は、第1シール面と第2シール面の位置が第1湾曲部及び第2湾曲部に対して結合部の位置より長い位置に形成されていてもよい。
【0015】
シール装置は、第2弾性部の側面と第2対称弾性部の側面が平面に形成されて配列されていてもよい。
【0016】
シール装置は、シール装置がニッケル基合金板または耐熱合金板で一体に折曲げて形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
このシール装置によれば、断面がE形に形成されて各第1及び第2シール面が第1弾性部と第1対称弾性部の外側面に設けられている。そして、結合部の弾性力により第2弾性部と第2対称弾性部が並列に配列している。この為、取付面間の取付面に接合している第1シール面と第2シール面が外力、熱応力等により互いに圧縮されると、接合面間の接合面を支点にして第2弾性部と第2対称弾性部は、接合している側面が開き角度θ1の角度で変化しながら弾性変形することが可能になる。このときに、各第2弾性部及び第2対称弾性部は、接合面間の位置を変える接合面を支点にして互いに離反または近接するように弾性変形する。この移動する接合面を支点とする作用により、第1及び第2シール面は、取付面間が大きく変位しても、取付面に追随してシール能力を発揮することができる。この為に、第1及び第2シール面は変位するシール能力範囲が大きいから、大きく変位する取付面間であっても追随してシール効果が発揮できる効果を奏する。
【0018】
更に、第1及び第2シール面は結合部が支点でU形状に曲げられた第1側面及び第2側面に形成されているから、結合部から各シール面までの長さが全体で長くなり、第2弾性部及び第2対称弾性部の長さが短くとも、各シール面の面圧方向の変位が大きい範囲で変位できる。この為に、第1及び第2シール面が、温度による変形、圧力の作用による変形、振動力による変形等に対してシール能力が発揮できる効果を奏する。更に、シール装置は、結合部を支点にして第1弾性部と第1対称弾性部の長さにより各シール面の変位を決めることができるから、全体が小型にできる。また、第2弾性部と第2対称弾性部の間の接合面間が接合または近接状態に形成されているから、シール装置の寸法精度を必要とせず、加工コストを低減できる。尚、第2弾性部と第2対称弾性部の間の接合面間が近接状態とは、各シール面を押圧して第2弾性部と第2対称弾性部が開き角度で弾性変形したときに、接合面間の側面の一部が互いに接合する近接範囲である。
【0019】
結合部が円形状に折曲げられて内部が環状空間部に形成されている場合には、第2弾性部の側面と第2対称弾性部の側面が接面または近接した状態で配列できる。更に、第2弾性部と第2対称弾性部がθ1の開き角度で弾性変形するときには、接合面間の接合面の支点を移動させて第2弾性部と第2対称弾性部がθ1の開き角度を変化させながら弾性変形することができる。このために、各第1及び第2シール面の各取付面に対するシール能力を効果的に発揮させることができる。また、第2弾性部及び第2対称弾性部の長さが短くとも環状空間部を設けた結合部により、第2弾性部及び第2対称弾性部は、θ1の開き角度の変化に応じて弾性変形することが可能になる。このために、シール装置の各弾性部の長さを小さくできるので、小さな取付面間に装着できる効果を奏する。
【0020】
第1シール面と第2シール面の位置が第1湾曲部及び第2湾曲部に対して結合部の位置より長い寸法の位置に形成されている場合には、各シール面に対する第1弾性部と第1対称弾性部の弾性変形する範囲を大きくできる。しかも、接合面間の接合面を支点とする第1シール面と第2シール面の追随範囲は、第1弾性部と第1対称弾性部の弾性変形する範囲に追随して大きくできる。このために、シール装置の各弾性部が小型にできると共に、取付面の変位に対応するシール能力も向上できる。
【0021】
第2弾性部の側面と第2対称弾性部の側面が平面に形成されて配列されている場合には、両シール面が押圧されると、第2弾性部と第2対称弾性部の両側面が弾性変形してθ1の開き角度を変化させながら、第1及び第2シール面を取付面に対して密接させることができる。このため、第1及び第2シール面は、取付面に対して密接する能力が向上する効果を奏する。
【0022】
各シール部がニッケル基合金材製板または耐熱合金材製板である場合には、プレス加工により一体に成形できると共に、耐食性と耐熱能力が向上できる。このニッケル基合金は、高温強度と耐食性に優れた析出硬化型Ni合金である。この為に、更に、高温(約700°C)でのクリープ強度に優れ、しかも、溶接性に優れ、割れも惹起しない効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施の形態に係わるシール装置の断面図である。
【図2】本発明の図1のシール装置を取り付けた液化タンクの一部を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施の形態に係わるシール装置の取付状態の断面図である。
【図4】本発明の第3実施の形態に係わるシール装置の断面図である。
【図5】本発明のシール装置と比較例1のシールリングとの荷重−変位線図である。
【図6】本発明の各シール装置をガスタービンの一部に取り付けた断面図である。
【図7】本発明に係わる特許文献1の内容に類似する取付状態のシールリングの断面図である。
【図8】本発明に係わる特許文献2の内容に類似するシールリングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係わる実施の形態のシール装置を図面に基づいて詳述する。尚、以下に説明する各図面は、設計図を基にした正確な図面である。
【0025】
図1は、本発明に係わる好ましい第1実施の形態を示すシール装置1の半断面図である。図1に於いて、シール装置1は、内周側に二つの被密封流体の受圧溝が設けてある。このシール装置1は、1枚の板からプレス成形して断面がE形に形成された環状体である。また、シール装置1は、断面がU形状の第1シール部2と断面がU形状の第2シール部12を対称に結合してE形に形成する。第1シール部2は、第1湾曲部2Bの両側に第1弾性部2Cと第2弾性部2Aを形成する。また、第2シール部2も、第2湾曲部12Bの両側に第1対称弾性部12Cと第2対称弾性部12Aを形成する。そして、第1シール部2に於ける第2弾性部2Aの側面2A1と第2シール部3に於ける第2対称弾性部12Aの側面12A1を抱き合わせにして接合面間5を形成する。この接合面間5の第2弾性部の側面2A2と第2対称弾性部の側面12A2との対向する面間は、接触または近接状態にする。尚、この第2弾性部の側面2A2と第2対称弾性部の側面12A2との近接状態の間隔は、第1シール面2C1と第2シール面12C1とを互いに押圧したときに、第2弾性部2Aと第2対称弾性部12Aが互いに対向する側へ曲げられて接触し、この接触面で第1シール面2C1と第2シール面12C1とを支持できる寸法範囲である。また、第2弾性部2Aと第2対称弾性部12Aの連結領域は、円形状に折曲げて結合部3に形成する。この結合部3には、内部に楕円状の環状空間部4を形成すると良い。しかし、必ずしも環状空間部4を設けなければならないとは限らない。第2弾性部2Aと第2対称弾性部12Aとが、変化する開き角度θ1で弾性変形ができればよい。例えば、環状空間部4を平面状の形で近接状態にしても良い。尚、シール装置1の板厚は、0.1mmから1mmのものを実施例として用いた。また、この板厚の好ましい範囲は0.15mmから0.7mmにすると良い。この実施例では0.3mmの板厚をプレス加工してシール装置1に形成した。
【0026】
第1弾性部2Cの外周端部側は、円弧状に折曲げて第1シール面2C1に形成する。更に、第1対称弾性部12Cも円弧状に折曲げて第2シール面12C1を形成する。この第1シール面2C1と第2シール面12C1との間は間隔Hである。このシール装置1の間隔Hの寸法は、本実施例では、7mmから10.6mmのものを利用した。また、シール装置1の板厚は0.05mmから0.8mmのものを利用した。この第1シール面2C1の中央と、第2シール面12C1の中央を通る線A−Aは、結合部3の中心より内径側にすると良い。尚、図1の線A−Aは、略結合部3の中心を通る線上に第1シール面2C1と第2シール面12C1を設けたものである。この実施例では、取付面間の変位に対して第1シール面2C1と第2シール面12C1が密接して追随することができる。図1は、シール装置1の内周に2つの受圧溝と結合部3を設けた一実施例である。これに対し、図示は省略するが、シール装置1の2つの受圧溝と結合部3を外周側にして環状体に形成しても同様な効果を奏する。更に、シール装置1を直線状の取付面間(取付溝)に取り付ける場合には、一直線状の形のシール装置1にする。本発明のシール装置1は、取付面間の全体形状に応じて環状、直線状、曲線状等に形成することができる。このシール装置1はニッケル基合金材製である。その具体例としては、76%Ni−16%Cr−8%Fe合金のインコネルである。このインコネルは加工性に富み、熱間、冷間加工が可能で、しかも、耐食性に優れる。この他に、シール装置1の材質としては、ハステロイX、ヘインズアロイ25、チタン合金などが適している。また、シール装置1は、被密封流体によっては、表面処理をすると良い。表面処理材としては、銀、金、ニッケル、銅、フッ素樹脂を被密封流体の特性に応じて選択すればよい。
【0027】
図2は図1のシール装置1を航空機器の低温タンクなどの第1組立部品51Aの取付用環状溝(取付面間)50内に装着した半断面図である。そして、被密封流体はシール装置1の内周側に形成された受圧溝に作用する。このシール装置1は第1組立部品51Aの第1取付面51A1と第2組立部品52Aの第2取付面52A1により第1シール面2C1と第2シール面12C1とを圧接状態に取り付ける。このシール装置1の第1シール面2C1と第2シール面12C1とを圧接すると、第2弾性部2Aと第2対称弾性部12は弾性変形して接合面間5が第1離間面2A2と第2離間面12A2とに開く。この第1離間面2A2と第2離間面12A2との開き角度はθ1となる。第1組立部品51Aと第2組立部品52Aは、低温の被密封流体の温度により収縮する変位接合面51A4と変位取付面51A2が変位して第1接合面51A3と第1取付面51A1になる。この場合は、第1離間面2A2と第2離間面12A2との開き角度θ1は大きくなる。
【0028】
この第1接合面51A3および第1取付面51A1と、変位接合面51A4及び変位取付面51A2とは、外力や熱膨張力に応じて変位するが、この変位に応じて第1シール面2C1と第2シール面12C1は、接合面間5に於いて接合している接合面(各側面)を支点にして変位することができる。このために、第2弾性部2Aと第2対称弾性部12Aが変動して形成される接合面の支点により、第1シール面2C1と第2シール面12C1とを第1取付面51A1と第2取付面52A1の変位に応じて密接に追随することができる。そして、各組立部品51A、52Aの第1取付面51A1と第2取付面52A1が変位しても、この変位に応じて追随する第1シール面2C1と第2シール面12C1は、シール能力を発揮する。尚、説明を省略した符号は図1の符号と同じである。
【0029】
上述のように構成されたシール装置1は、各組立部品51A、52Aに取り付けられて、2つのU形の受圧面に被密封流体が作用する。このとき、シール装置1は、第1シール面2C1が第1取付面51A1に密接すると共に、第2シール面12C1が第2取付面52A1に密接して被密封流体をシールする。同時に、第1組立部品51Bと第2組立部品52Bが相対的に変位しても、第2弾性部2Aと第2対称弾性部12Aの弾性変形につれて移動する接合面間5の接合面で支持された第1シール面2C1と第2シール面12C1は、第1取付面51A1と第2取付面52A1にそれぞれ密接してシールする。このため、シール装置1は、例え、各組立部品51A、52Aが相対変位しても、被密封流体に対するシール能力を発揮する。
【0030】
図3は、本発明に係わる第2実施の形態を示す取付状態のシール装置1の半断面図である。図3のシール装置1は、図1の符号と同一であるものは、図1のシール装置1と略同一構成部品である。相違する点は、外周側に被密封流体の受圧溝を設けたものであって、図1のシール装置1とは受圧溝が反対の構成である。そして、このシール装置1をガスタービンの高温セクション30Aに於ける第1組立部品51Bの第1取付面51B1と第2組立部品52Bの第2取付面52B1との間の取付空間部50に設けられた一実施例である。
【0031】
図3において、シール装置1は仮想線のように形成されている。このシール装置1を第1組立部品51Bの第1取付面51B1と第2組立部品52Bの第2取付面52B1との間の取付空間部50に装着する。実線で示すシール装置1は、装着状態であって、第1シール部2と第2シール部12とが弾性変形して第1シール面2C1が第1取付面51B1に密接すると共に、第2シール面12C1が第2取付面52B1に密接する。同時に、第2弾性部2Aの側面2A1は第1離間面2A2のように弾性変形する。また、第2対称弾性部12Aの側面12A1は第2離間面12A2のように弾性変形する。そして、第1離間面2A2と第2離間面12A2との接合面間5は開き角度θ1(図2も参照)で開くと共に、接合面間5の接合している接合面が支点となって第1シール面2C1と第2シール面12C1の密接を支持する。この接合面間5の接合している接合面の支点は、断面が円形状の結合部3により弾性力が付与されると共に、第2弾性部2Aと第2対称弾性部12Aの弾性変形につれて移動し、第1シール面2C1と第2シール面12C1の密接を保持する。その他の構成は、図2に同一符号で示すように図2と同一構成部品である。
【0032】
上述のように構成されたシール装置1は、組立部品51B、52Bに取り付けられて、2つのU形の受圧面に被密封流体が作用する。このとき、シール装置1は、第1シール面2C1が第1取付面51B1に密接すると共に、第2シール面12C1が第2取付面52B1に密接して被密封流体をシールする。同時に、第1組立部品51Bと第2組立部品52Bが相対的に変位しても、第2弾性部2Aと第2対称弾性部12Aの弾性変形につれて移動する接合面間5の接合面で支持された第1シール面2C1と第2シール面12C1は、第1取付面51B1と第2取付面52B1とに、それぞれ密接してシールする。このため、シール装置1は、例え、組立部品51B、52Bが変位しても、被密封流体に対するシール能力を発揮する。
【0033】
図4は、本発明に係わる第3実施の形態を示すシール装置1の半断面図である。図4に於いて、シール装置1は、内周側に被密封流体の受圧溝が設けてある。このシール装置1において、図1と相違する点は、第1弾性部2Cと第1対称弾性部12Cが互いに対向する側へ半径Rの円弧状に曲げられている。更に、第1シール面2C1と第2シール面12C1が結合部3より内径側に設けている。その他の構成は、図1に示す符号と同じものは同一構成部品である。
【0034】
上述のように構成されたシール装置1は、第1弾性部2Cと第1対称弾性部12Cの断面が弾性を有する円弧状に曲げられているので、被密封流体の高低の圧力変動に対して第1シール面2C1と第2シール面12C1の面圧を略均一にすることが可能である。また、第1シール面2C1と第2シール面12C1が結合部3より内径側にあって、第1湾曲部2Bと第2湾曲部12Bから第1弾性部2Cと第1対称弾性部12Cを介して結合部3より長い寸法の位置に設けられているので、シール装置1が取り付けられる図示省略した両組立部品の取付面間の変位に対して追随する能力が優れる。このために、シール装置1は、被密封流体のシール能力の向上と共に、取付面間の変位に対して追随し、シール能力を発揮する。
【0035】
図5は、本発明の図1のシール装置1と比較例の図8のシールリングについて組立部品が高温で相対変位する場合の実験したデータである。尚、各組立部品が低温により収縮する場合も同様な結果となる。図5の符号1と2と3は、本発明のシール装置1を組立部品の取付面間に取り付けた状態での荷重と変位の関係を示す実験データである。また、符号11と12と13は、比較例のシールリングを組立部品の取付面間に取り付けた状態での荷重と変位の関係を示す実験データである。
【0036】
図5の符号1,2,3は、図1のシール装置1に於いて、第1シール面2C1と第2シール面12C1の間隔Hが7.1mmに形成されている。このシール装置1を図3に示すように取り付けてH1=4.6mmにセットする。そして、取付面間を4.6mmから7.1mmまで変位させて実施状況のように繰り返す。このとき、符号1は最初に変位させた状態の荷重と変位の初期変化である。次に、符号2と符号3は取付面間を繰り返し変位させて第1シール面2C1と第2シール面12C1のスプリングバックが安定した状態の荷重と変位の状態図である。本発明のシール装置1では、取付面間が約1.9mmの範囲で変位しても対応できることが認められる。つまり、スプリングバック(約1.9mm)が優れていると共に、接合面間5の接合面で支持されるために耐久能力も優れている。
【0037】
一方、図5の符号11,12,13は、比較例のシールリング216の両シール面間を7.1mmの長さに形成し、発明と同一の4.6mmの組立部品の取付面間にセットして発明と同様に実験したものである。その荷重と変位の状態は、図5の符号11,12,13のように変化する。符号11は荷重と変位の初期の変化である。次に、符号2と符号3は取付面間を実際のように繰り返し変位させて第1シール面222Aと第2シール面222Bの間隔が安定した状態の荷重と変位の状態図である。比較例のシールリング216では、約0.9mmの変位の繰り返しに対応できるが、それ以上の変位に対しては、無理である。つまり、スプリングバックは、約0.9mmまでになる。また、シールリング216は、発明のシール装置1よりも早く塑性変形するので、耐久能力を小さくする傾向がある。
【0038】
図6は、本発明のシール装置1をガスタービンのタービンノズルアッセンブリ付近で各組立部品51、52の取付面間に取り付けた断面図である。図6に於いて、回転軸60に取り付けられた回転ディスク61にはブレード62が設けられている。また、流体通路55には、他のブレード71が設けられている。そして、図示省略の燃焼室から送られた高温ガスDがブレード62、71を介して回転させられながら加速する。このような構造に於いて、流体通路55を形成する各組立部品51、52をシールするために、各組立部品51、52の取付空間部(取付溝)50にシール装置1が取り付けられる。シール装置1を取り付ける取付空間部50はプレートである第1組立部品51の取付面と第2組立部品52の取付面との間に形成される。この第1組立部品51と第2組立部品52は、高温ガスDの熱による変形や回転軸60の回転時の振動力を受ける場合には、取付空間部50が変形するように間隙を設けた構成にされている。この流体通路55では、各組立部品51、52の取付空間部50を遮断するシール装置1が、3個所に設けられている。このシール装置1は、図1または図3に示す構成のものである。この為に、図1に於いて説明したように、第1組立部品51と第2組立部品52が互いに変位しても、シール装置1は、大きな変位の寸法範囲で追随しながら確実に高温ガスDをシールすることが可能になる。
【0039】
本発明のシール装置1は、高温、高圧流体または低温ガスが作用する取付空間50に取り付けられてシール能力を発揮すると共に、耐久能力を発揮する。更に、シール装置1の形状が簡単な構造にできるために、複雑な取付空間部50の構造であっても、シール装置1が容易に取り付けられて取付作業のコストを低減できる。更に、図6に示すように、組立部品51,52の取付空間部50が微小に変位する構造であっても、このシール装置1により確実にシールすることが可能になる。また、シール装置1は第1シール部2と第2シール部12との中間を折曲げて結合部3に構成したために、加工精度を下げることができ、シール装置1の加工コストが低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明のシール装置は、高温・高圧流体または低温ガスをシールすると共に、各組立部品の取付面間が変位する装置に用いて有用である。特に、タービンエンジン、原子力機器、航空機のタンク等の高温・高圧流体、低温ガスを取付面間に設けてシールするシール装置として有用である。また、小さな寸法の取付面間でもシール能力を発揮するシール装置として有用である。更に、加工コストを低減できるシール装置として有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 シール装置
2 第1シール部
2A 第2弾性部
2A1 側面
2A2 第1離間面
2B 第1湾曲部
2C 第1弾性部
2C1 第1シール面
3 結合部
4 環状空間部
5 接合面間
12 第2シール部
12A 第2対称弾性部
12A1 側面
12A2 第2離間面
12B 第2湾曲部
12C 第1対称弾性部
12C1 第2シール面
θ1 開き角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立部品の取付面間に密接してシールするシール装置であって、
第1湾曲部の一方側に第1弾性部を有すると共に他方側に第2弾性部を有する第1シール部と、
第2湾曲部の一方側に第1対称弾性部と他方側に第2対称弾性部を有する第2シール部と、
前記第1シール部の第2弾性部と前記第2シール部の第2対称弾性部とを並列に連結するように折曲げられた結合部と、
前記第1弾性部の第1側面に有する第1シール面と、
前記第1対称弾性部の第2側面に有する第2シール面とを具備し、
前記第1シール面と前記第2シール面が押圧され、前記第1シール面と前記第2シール面との間が狭くなるにつれて開き角度が大きくなるように、取付前の状態で、前記第2弾性部の側面と前記第2対称弾性部の側面とを並列に接合面で接触させており、前記接合面間の接合面を支点にして第2弾性部と第2対称弾性部は、接合している側面が前記開き角度で変化しながら弾性変形し、前記第2弾性部及び第2対称弾性部は、前記接合面間で位置を変える接合面を支点にして互いに離反または近接するように弾性変形することを特徴とするシール装置。
【請求項2】
前記第1シール面と前記第2シール面の位置が、前記第1湾曲部及び前記第2湾曲部に対して、位置を変える前記接合面の支点の位置より、前記第1シール面の中央と前記第2シール面の中央とを通る線に垂直な方向に沿って長い位置に形成されている請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記第1シール面と前記第2シール面とを通る線上に前記結合部が設けられている請求項1または2に記載のシール装置。
【請求項4】
前記結合部は断面円形状に形成されて内部に環状空間部を有することを特徴とする請求項1に記載のシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−249322(P2010−249322A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137605(P2010−137605)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【分割の表示】特願2004−44107(P2004−44107)の分割
【原出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【出願人】(591092453)イーグル・エンジニアリング・エアロスペース株式会社 (3)
【Fターム(参考)】