説明

シール部材

【課題】耐熱性と耐久性を向上させて、シール取付部位を確実にシールすることができるシール部材を提供する。
【解決手段】高温空間の近傍位置に配設されるシール部材2であって、金属製の薄板より形成され、平面視における略中央部が一側に凸状に湾曲形成された本体部20と、本体部20の縁部に沿って断面R状の連続面24a,24bが形成されたサイド部21とを具備してなり、シリンダブロック10に穿設された取付孔17に取り付けられる際に、本体部20の凸側面20aから押圧され、サイド部21が、押圧方向に向けて取付孔17の内壁17dに圧接されるとともに、押圧方向に対して直交する方向に向けて取付孔17の内壁17eに圧接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材の技術に関し、より詳細には、内燃機関の燃焼室等の高温空間を測定する際に用いられるシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関においては、燃焼空間である燃焼室(シリンダ筒)内の温度分布や燃焼前後の化学種濃度などを把握することは、排ガスのクリーン化・燃費向上を図る上で非常に重要である。例えば、内燃機関において、着火時期、燃焼温度及び燃焼期間等の燃焼特性を制御することで、排ガス中の有害物質を低減し、燃費が向上すると考えられており、この燃焼特性は、燃焼空間内の温度分布に依存して変化することが知られている。
【0003】
従来、燃焼空間内の温度分布・排ガス濃度分布や、燃焼室内を直接観察するための装置構成が提案されている。例えば、特許文献1には、測定空間内の温度分布を測定する装置として、測定空間に向けて赤外光を射出する赤外光射出部を有する光源装置と、測定空間を通過した後の赤外光を受光する赤外光受光部を有する受光装置等とを備え、測定空間としての内燃機関の燃焼室の外側であって対向位置に光源装置と受光装置とを配置した構成が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
このように、通常、測定空間(燃焼空間)内の温度分布等を測定するための測定装置は、燃焼室の外側に配置された光源装置等によって照射光を投受光するように構成されている。そのため、内燃機関の外壁には、光源装置からの照射光を透光して測定空間に導入するための透光性のレンズ部材が配設されている。このレンズ部材は、内燃機関の外壁と燃焼室内の排ガス等が外部に漏出しないようにシール部材を介して閉密的に密着されている。
【0005】
ところで、上述したレンズ部材を取り付ける際に使用されるシール部材は、高温となる測定空間の近傍若しくは面する位置に設けられるため、レンズ部材を損傷しない素材・形状であって、かつ、耐熱性と耐久性を備えていることが要求される。従来のシール部材としては、フッ素系樹脂により成形されたシート状部材や、例えば平板状に形成された銅などの金属薄板などが用いられていた。
【0006】
しかしながら、フッ素系樹脂で成形された部材では耐熱性に劣り長時間の使用ができなかった。特に、樹脂成形されたシール部材を用いる場合には、例えば、特許文献2に開示されるように、粘度平均分子量が100万以上の超高分子ポリエチレンを含有させた耐熱性樹脂より成形することが提案されているが、内燃機関の測定空間はその室内温度がより高温になるため、例え、かかる特許文献に開示された組成の樹脂によりシール部材が成形されても、高温状態での安定性及び信頼性に劣る。
【0007】
また、金属薄板で成形された部材では、樹脂成形された部材よりも耐熱性は高いが、長時間の使用で熱変形して、シール性が悪化してしまうという問題があった。すなわち、内燃機関の測定空間に配設されるシール部材としては、金属薄板で成形された部材の方が樹脂成形された部材よりも耐熱性の点で好ましいが、従来の部材では熱変形がシール性に及ぼす影響が大きいため、耐久性の点で問題があったのである。
【特許文献1】特開2005−164453号公報
【特許文献2】特開2002−22019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明においては、シール部材に関し、前記従来の課題を解決するもので、耐熱性と耐久性を向上させて、シール取付部位を確実にシールすることができるシール部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
すなわち、請求項1においては、高温空間の近傍位置に配設されるシール部材であって、金属製の薄板より形成され、平面視における略中央部が一側に凸状に湾曲形成された本体部と、前記本体部の縁部に沿って断面R状の連続面が形成されたサイド部とを具備してなり、シール取付部位に取り付けられる際に、前記本体部の凸側面から押圧され、サイド部が、押圧方向に向けてシール取付部位に圧接されるとともに、押圧方向に対して直交する方向に向けてシール取付部位に圧接されるものである。
【0011】
請求項2においては、前記サイド部は、本体部の縁部を該本体部の凹側面に向けて湾曲するように折り返して形成され、本体部の凹側面の方向に対向された第一接触面と、本体部の側方に対向された第二接触面とが形成されるものである。
【0012】
請求項3においては、前記本体部は、平面視略矩形に形成され、前記サイド部は、該本体部の対向する一対の縁部にそれぞれ設けられるものである。
【0013】
請求項4においては、前記本体部は、平面視略円形に形成され、前記サイド部は、該本体部の縁部の円周方向に沿って設けられるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1に示す構成としたので、耐熱性と耐久性を向上させて、シール取付部位を確実にシールすることができる。
【0016】
請求項2においては、シール取付部位に取り付けられた際に、本体部の凸側面から押圧されることで、第一接触面が押圧方向に対峙されるシール取付部位に圧接されるとともに、第二接触面が押圧方向に対して直交する方向に対峙するシール取付部位に圧接されるため、シール取付部位のシール効果を向上することができる。
【0017】
請求項3においては、簡易な構成でシール取付部位を確実にシールすることができる。
【0018】
請求項4においては、シール取付部位に対する応力を均等に分散させて、シール取付部位のシール効果の安定性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るシール部材を用いた内燃機関の全体的な構成を示した概略図、図2は取付孔に取り付けられたシール部材及びレンズ部材の断面図、図3はシール部材の断面図、図4はシール部材の平面図、図5はシール部材の取付状態を示す断面図、図6は同じく図5の部分拡大断面図、図7は別実施例のシール部材の断面図、図8は別実施例のシール部材の平面図である。
【0020】
まず、本実施例のシール部材2が用いられる内燃機関1の全体構成について、以下に概説する。本実施例のシール部材2は、内燃機関1のシリンダブロック10に設けられたシリンダ筒11の外側位置に穿設されたシール取付部位としての取付孔17に取り付けられる。
図1に示すように、内燃機関1は、シリンダ筒11の上部空間に形成された燃焼室12に、吸気ポート13(インテークマニホールド)と、排気ポート14(エキゾーストマニホールド)と、点火プラグ15とが接続されており、シリンダ筒11内にはピストン16がシリンダ筒11に沿って上下方向に往復動可能に配設されている。吸気ポート13には、ポート内に燃料を噴射して供給するポート噴射弁13aが接続されている。
【0021】
内燃機関1においては、ポート噴射弁13aから噴射された燃料が、吸気ポート13に供給される空気と混合気を形成し、この混合気が吸気ポート13端部の図示せぬ吸気弁を介して排気ポート14から燃焼室12内へ充填される。そして、ピストン16の上昇によって圧縮された燃焼室12内の混合気が、点火プラグ15によって点火されて燃焼し、この混合気の燃焼圧力によってピストン16が往復動するのである。燃焼後の混合気は、排ガスとして排気ポート14端部の図示せぬ排気弁を介して燃焼室12から排気ポート14へと排出される。このようにしてピストン16が往復動を繰り返すことで、ピストン16の往復動が回転運動に変換された後に、内燃機関1の出力として取り出される。
【0022】
本実施例の内燃機関1には、燃焼室12内での温度分布を測定するための空間温度測定装置3が接続されている。この空間温度測定装置3は、公知の構成を採用することができるため詳細な説明は省略するが、本実施例では、空間温度測定装置3は、シリンダ筒11の外側位置に、燃焼室12内に向けて赤外光を射出する赤外光射出部を有する光源装置30と、燃焼室12を通過した後の赤外光を受光する赤外光受光部を有する受光装置31と、赤外光の投光制御や受光信号の解析などを行う制御装置32等とで構成されている。制御装置32には上述した吸気弁や排気弁が接続されており、温度分布を測定する際に、各吸気弁・排気弁が開閉制御される。
【0023】
上述した空間温度測定装置3は、シリンダ筒11の外側位置であって対抗する位置に光源装置30及び受光装置31が配置され、光源装置30から燃焼室12内に照射した赤外光を受光装置31にて受光することで、受光装置31で受光された信号から燃焼室12内の温度分布が検出される。そのため、本実施例の内燃機関1のシリンダブロック10の外壁には、上述した光源装置30からの照射光を透光して燃焼室12に導入し、また燃焼室12を透過した透過光を燃焼室12外に導出するための透光性のレンズ部材4・4がそれぞれ取り付けられている。
【0024】
図1及び図2に示すように、レンズ部材4は、赤外光を透過させる素材、例えば、石英ガラスやサファイアガラス等で形成され、シリンダ筒11の外側位置であってシリンダブロック10の外壁の所定位置に取り付けられる。本実施例では、レンズ部材4は、シリンダブロック10の外壁に穿設された取付孔17に、シリンダ筒11や燃焼室12内の排ガス等が外部に漏出しないようにシール部材2を介して閉密的に密着状態で取り付けられる。
【0025】
取付孔17は、シリンダブロック10の外側方向からシリンダ筒11の内径方向に向けて、シリンダ筒11の内部空間と外部空間とを貫通するようにして穿設されている。取付孔17の内部空間側の開口部17aには、リブ部17cが縮径方向に突出されており、取付孔17においては、シリンダ筒11の内部空間側の開口部17aが、シリンダ筒11の外部空間側の開口部17bと比べて口径が小さくなるように形成されている。
【0026】
レンズ部材4は、取付孔17の円周方向の内壁17dに密着可能な形状に形成され、取付孔17の外部空間側の開口部17bより挿入される。そして、レンズ部材4は、シリンダ筒11の内部空間側に向けた一方の端面4aが上述したリブ部17cに(シール部材2を介して)当接することで位置決めされる。また、レンズ部材4は、取付孔17に挿入された状態で、シリンダブロック10の外方から平板状の押圧部材18によって、他方の端面4bが挿入方向に押圧され、押圧部材18がシリンダブロック10の外壁に固定ボルト19・19によって締結されることで固定される。
【0027】
本実施例のレンズ部材4は、端面4aに突起部40が形成されており、取付孔17に固定された状態で、内部空間側の開口部17aに突起部40が嵌合される。このように、レンズ部材4は、突起部40が開口部17aに嵌合されることでシリンダ筒11内に対面するようにして配設されることで、上述した空間温度測定装置3に光源装置30から燃焼室12内に照射した赤外光を受光装置31にて確実に受光することができる。
【0028】
次に、本実施例のシール部材2の構成について、以下に詳述する。
図2乃至図4に示すように、シール部材2は、シリンダブロック10に穿設された取付孔17内でレンズ部材4との間に介設されることで、取付孔17が閉密的にシールされて、シリンダ筒11の内部空間が外部空間と遮断される。
【0029】
本実施例のシール部材2は、金属製の薄板より形成されており、平面視略矩形に形成され、平面視における略中央部が一側に凸状となるように湾曲形成された本体部20と、本体部20の縁部22・23に沿って形成されたサイド部21等とで構成されている。
【0030】
シール部材2の素材としては、アルミや銅等の金属素材が用いられ、好ましくは、比較的硬度が低い銅素材が用いられる。このように、金属製の素材が用いられることで、耐熱性を確保できるとともに、後述するように、レンズ部材4によってシール部材2が押圧された際であっても、適度な弾性力によってレンズ部材4への損傷を防ぎつつ、シール性を担保することができる。
【0031】
本体部20は、平面視略矩形に形成され、かつ略中央部が一側に凸状に湾曲するように形成され、具体的には、対向する一対の縁部22・22及び縁部23・23(サイド部21・21)がそれぞれ近接する方向に湾曲されて、略中央部が一方向に突出されるようにして形成されている。また、本体部20は、前記縁部22・23に対して平面視における略中央部が突出された凸側面20aと、同じく前記縁部22・23に対して略中央部が退出された凹側面20bとが形成されている。
【0032】
なお、レンズ部材4との圧接面となる本体部20の凸側面20aの表面粗さは、レンズ部材4が損傷しない程度となるように調整される。好ましくは、本体部20は、凸側面20aの表面粗さが5μm以下となるように調整された素材が用いられる。
【0033】
また、本体部20は、略中央部に貫通孔20cが穿設されており、レンズ部材4が取付孔17に取り付けられた状態で、レンズ部材4の突起部40がこの貫通孔20cに挿入される。したがって、貫通孔20cの内径は、レンズ部材4の突起部40の大きさよりも僅かに大きくなるように調整される。このように、本体部20に貫通孔20cが設けられることで、取付孔17に取り付けられた際であっても、レンズ部材4へのレーザ光の導出が妨げられることがない。
【0034】
サイド部21は、上述した本体部20の各縁部22・23の全周に渡って連続して形成されており、かかる各縁部22・23に沿って断面R状の連続面24が形成されている。具体的には、本実施例のサイド部21は、本体部20の縁部22・23の端面が凹側面20bに向けて湾曲するように折り返されて(カールされて)形成されている。シール部材2が取付孔17に取り付けられた状態では、サイド部21は、取付孔17の内壁17d・17eとレンズ部材4とによって弾性変形された状態で圧接されている。
また、サイド部21は、平面視において本体部20の隅部に該当する箇所がR状に面取りされており、シール部材2が押圧された際に本体部20及びサイド部21が弾性変形して取付孔17(の内壁17d・17e)に確実に圧接可能な形状に構成されている。
【0035】
サイド部21の連続面24は、断面視において、サイド部21の先端部であって本体部20の凹側面20bの方向に対向された第一接触面24aと、本体部20の側方に対向された第二接触面24bとが形成されている。すなわち、連続面24は、サイド部21の外側面を構成し、本体部20の凸側面20aと凹側面20bとに連続されている。
【0036】
次に、シール部材2の取付孔17への取付状態について、以下に詳述する。
図2、図5及び図6に示すように、本実施例のシール部材2は、シリンダブロック10の外壁を貫通するようにして穿設された取付孔17に、取付孔17の内壁17d・17eとレンズ部材4とによって圧接された状態で取り付けられる。このように取り付けられることで、取付孔17が閉密的にシールされて、シリンダ筒11内の排ガス等が外部に漏出するのを防止することができる。
【0037】
取付孔17にシール部材2が取り付けられる際には、まず、シール部材2が、取付孔17の奥部に前方を対向させた状態、すなわち凹側面20bを対向させた状態で取付孔17に挿入される。取付孔17に挿入されたシール部材2は、取付孔17に形成されたリブ部17cに当接された状態で位置決めされる。ここで、取付孔17の内部には、開口部17aから開口部17bにかけて円周方向に形成された内壁17dと、リブ部17cの内側面に形成された内壁17eとが形成されており、シール部材2は、サイド部21の第一接触面24aが内壁17eに接点P1で線接触にて当接された状態で位置決めされている。
【0038】
次いで、レンズ部材4が、シール部材2が挿入された取付孔17に、取付孔17の奥部に端面4aの突起部40を対向させた状態で挿入される。取付孔17に挿入されたレンズ部材4は、やがて突起部40が取付孔17の最奥部に位置決めされたシール部材2の貫通孔20cに挿通され、端面4aが本体部20の凸側面20aと接点P2で線接触にて当接される。シール部材2は、レンズ部材4が取付孔17に挿入されていくにつれて、本体部20の凸側面20aからレンズ部材4(の端面4a)によって徐々に押圧される。なお、このレンズ部材4によるシール部材2の押圧方向を、以下「押圧方向」とする(図5及び図6における矢印方向)。
【0039】
シール部材2は、レンズ部材4によって押圧されると、徐々に、本体部20及びサイド部21に荷重が付与されて弾性変形していく。すなわち、シール部材2は、本体部20が凸側面20aからレンズ部材4の押圧方向に向けて押圧され、側面視で略平板状となるように略中央部から徐々に弾性変形され、やがて端面4aと凸側面20aとが面接される。また、シール部材2は、サイド部21がレンズ部材4の押圧方向に対して直交する方向に向けて外側に広がるようにして徐々に弾性変形され、第二接触面24bにおいて取付孔17の内壁17dと接点P3で線接触にて当接される。
【0040】
かかる状態では、シール部材2は、接点P1においてサイド部21の第一接触面24aが押圧方向の反対方向に向けて内壁17eからの応力F1が作用され、接点P3において第二接触面24bが押圧方向に対して直交する方向に向けて内壁17dからの応力F3が作用される。また、シール部材2は、レンズ部材4の端面4aからの面圧によって本体部20の凸側面20aが押圧方向に向けて応力F2が作用される。そして、本実施例のシール部材2は、本体部20及びサイド部21において、各応力F1〜F3を打ち消す方向に弾性力が作用することによって、各接点P1〜P3において取付孔17の内壁17d・17e及びレンズ部材4の端面4aに圧接されて、取付孔17が閉密的にシールされる。
【0041】
なお、取付孔17に挿入されたレンズ部材4は、上述した押圧部材18によって押圧方向に押圧された状態で、突起部40がリブ部17cに開口された開口部17bに挿入されて位置決め固定される。
【0042】
以上のように、本実施例のシール部材2は、高温空間の近傍位置に配設されるシール部材2であって、金属製の薄板より形成され、平面視で略中央部が凸状に湾曲形成された本体部20と、本体部20の縁部22・23に沿って断面R状の連続面24が形成されたサイド部21とを具備してなり、シリンダブロック10に穿設された取付孔17に取り付けられる際に、本体部20の凸側面20aから押圧され、サイド部21が、押圧方向に向けて取付孔17の内壁17dに圧接されるとともに、押圧方向に対して直交する方向に向けて取付孔17の内壁17eに圧接されるように構成されているため、耐熱性と耐久性を向上させて、取付孔17を確実にシールすることができる。
【0043】
すなわち、本実施例のシール部材2は、本体部20が金属製の薄板を用いて平面視における略中央部が一側に凸状に湾曲するように形成されているため、耐熱性と耐久性を備えており、高温空間であるシリンダ筒11の近傍位置に用いることができる。
また、シール部材2において、本体部20を平面視で略中央部を凸状に湾曲形成させるのに加えて、本体部20の縁部22・23に沿って断面R状の連続面24が形成されたサイド部21を設けることで、取付孔17に取り付けた際にレンズ部材4によって押圧されると、本体部20及びサイド部21が弾性変形されて、取付孔17の内壁17d・17eに圧接されるため、取付孔17の閉密的にシールすることができ、取付孔17を確実にシールすることができる。また、本実施例のシール部材2は、弾性変形することで取付孔17の内壁17d・17eに圧接されるため、熱変形がシール性に及ぼす影響を低減することができ、従来のシール部材と比べて耐久性の点で特に優れている。
【0044】
特に、本実施例のシール部材2は、サイド部21が、本体部20の縁部22・23を凹側面20bに向けて湾曲するように折り返して形成され、本体部20の凹側面20bの方向に対向された第一接触面24aと、本体部20の側方に対向された第二接触面24bとが形成されるため、取付孔17に取り付けられた際に、本体部20の凸側面20aから押圧されることで、第一接触面24aが押圧方向に対峙される取付孔17の内壁17eに圧接されるとともに、第二接触面が押圧方向に対して直交する方向に対峙する取付孔17の内壁17dに圧接されるため、取付孔17のシール効果をさらに向上することができる。
【0045】
なお、本実施例のシール部材2の構成としては、上述した実施例に限定されない。
【0046】
すなわち、上述した実施例のシール部材2は、平面視略矩形に形成された本体部20と、本体部20の対向する縁部22・23に形成されたサイド部21等とで構成されているが、シール部材2の形状としては、これに限定されない。
例えば、図7及び図8に示す実施例のシール部材102は、平面視略円形に形成された本体部120と、本体部120の縁部122の円周方向に沿って設けられたサイド部121等とで構成される。本体部120は、平面視略円形に形成された金属製の薄板が、平面視における略中央部が一側に凸状に湾曲形成されており、サイド部121は、本体部120の外周縁部122に沿って断面R状の連続面124が形成される。また、連続面124は、第一接触面124aと第二接触面124bとで構成される。なお、本実施例のシール部材102が用いられる場合には、取付孔17は断面略円形状となるように穿設される。
【0047】
上述した実施例(図図3及び図4参照)のように、本体部20を平面視略矩形に形成するとともに、サイド部21を少なくとも本体部20の対向する一対の縁部22・23にそれぞれ設けることで、簡易な構成で取付孔17を確実にシールすることができる。一方で、上述した別実施例(図7及び図8参照)のように、本体部120を平面視略円形に形成するとともに、サイド部121を本体部120の縁部122の円周方向に沿って設けることで、各接触面124a・124bによる取付孔17の内壁17d・17eに対する応力を均等に分散させて、取付孔17のシール効果の安定性を向上することができる。
【0048】
また、本実施例のシール部材2は、高温空間の近傍位置であれば、例えば、上述したシリンダブロック10に取り付けられる他に、その他の光学系を用いての内燃機関(エンジン)の測定や、かかる内燃機関内部を観察する際に、適宜所定の場所に取り付けることができる。その際、シール取付部位は、内燃機関のシリンダヘッドの所定位置や内燃機関に接続された排気経路の所定位置などに設けることができる。
【0049】
また、上述した実施例では、レンズ部材4を押圧部材18によって固定する構成を示したが(図2参照)、レンズ部材4の固定方法はこれに限定されず、例えば、取付孔17に固定ボルトを螺合することで直接固定するようにしてもよい。また、レンズ部材4の形状等も特に限定されない。
【0050】
また、上述した実施例では、取付孔17にシール部材2を取り付ける際に、まず取付孔17内にシール部材2を挿入した状態で次いでレンズ部材4を挿入するものであったが(図5参照)、シール部材2の取付方法としては、これに限定されない。例えば、レンズ部材4の突起部40にシール部材2の貫通孔20cを挿入させて、シール部材2とレンズ部材4とを一体に組み付けた状態で、シール部材2を取付孔17に取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施例に係るシール部材を用いた内燃機関の全体的な構成を示した概略図。
【図2】取付孔に取り付けられたシール部材及びレンズ部材の断面図。
【図3】シール部材の断面図。
【図4】シール部材の平面図。
【図5】シール部材の取付状態を示す断面図。
【図6】同じく図5の部分拡大断面図。
【図7】別実施例のシール部材の断面図。
【図8】別実施例のシール部材の平面図。
【符号の説明】
【0052】
2 シール部材
4 レンズ部材
10 シリンダブロック
11 シリンダ筒
17 取付孔(シール取付部位)
17d 内壁
17e 内壁
20 本体部
20a 凸側面
20b 凹側面
21 サイド部
22 縁部
23 縁部
24 連続面
24a 第一接触面
24b 第二接触面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温空間の近傍位置に配設されるシール部材であって、
金属製の薄板より形成され、平面視における略中央部が一側に凸状に湾曲形成された本体部と、
前記本体部の縁部に沿って断面R状の連続面が形成されたサイド部とを具備してなり、
シール取付部位に取り付けられる際に、前記本体部の凸側面から押圧され、サイド部が、押圧方向に向けてシール取付部位に圧接されるとともに、押圧方向に対して直交する方向に向けてシール取付部位に圧接されることを特徴とするシール部材。
【請求項2】
前記サイド部は、本体部の縁部を該本体部の凹側面に向けて湾曲するように折り返して形成され、本体部の凹側面の方向に対向された第一接触面と、本体部の側方に対向された第二接触面とが形成されることを特徴とする請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記本体部は、平面視略矩形に形成され、前記サイド部は、該本体部の対向する一対の縁部にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシール部材。
【請求項4】
前記本体部は、平面視略円形に形成され、前記サイド部は、該本体部の縁部の円周方向に沿って設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシール部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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