説明

シール

【課題】転がり軸受に使用されるシールにおいて、リップ部のシール接触面に対する摺接性の高いシールを提供する。
【解決手段】シール1のゴム成形体からなるリップ部13(ここでは弾性体3の全体)を、温度20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.08以上0.19以下となるように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受に使用されるシールに関する。特に、水や粉塵が多量に存在する過酷な環境下においてグリース潤滑で好適に使用されるシールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、転がり軸受には、転動体の設置部分に存在するグリースや使用時に発生したダストが外部に漏洩したり、外部に浮遊する塵芥が転動体の設置部分に進入したりするのを防ぐために、外輪と内輪との間にシールが取り付けられることがある。このようなシールの付いた転がり軸受の一例を図1に示す。
【0003】
この図の転がり軸受は両側にシールの付いた両シール軸受であり、そのシール1は、外周に鉤部を有するリング状の芯金2と、その外側に合成ゴムを一体に加硫成形してなる弾性体3とで構成されている。このシールは、その機能上から、芯金の鉤部以外とその外側の弾性体とからなる円環状の主部11と、芯金の鉤部とその外側の弾性体とからなり外輪4内面の止め溝41に係止される加締部12と、芯金の内周側の弾性体からなり内輪5外周面の受け溝51に摺接(摺り接触)されるリップ部13とに分けられる。
そして、このシール1は、リップ部13を内輪外周面の受け溝51に接触させた状態で、加締部12を弾性変形させながら外輪内周面の止め溝41に押し込むことによって、転がり軸受の外輪4と内輪5との間に配設される。
【0004】
また、図3に示すように、自動車用ハブユニット6の外周にもシール10が取り付けられており、このシール10も芯金20とゴム材料の成形体からなる弾性体30とで構成されている。このハブユニット6は、シャフトを入れるハブ61とフランジ62が一体に形成されたものである。そして、このシール10は、ハブ61に摺接される2つのリップ部31,32と、フランジ62に摺接される1つのリップ部33を有する。
なお、ハブ61とフランジ62の間にシャフトを入れるハブシャフト部を設けて、このハブシャフト部の外側に転がり軸受の内輪軌道を形成したハブユニット軸受もあり、このハブユニット軸受にもシールが取り付けられている。
【0005】
また、別のシールの例を図5に示す。このシール100も、芯金200とゴム材料の成形体からなる弾性体300とで構成されている。このシール100は、転動体70の軌道面を有する内輪相当部材50と、外輪相当部材40との間をシールするものである。内輪相当部材50は、ハブ部50aとフランジ部50bとからなる。そして、このシール100は、ハブ部50aの外周面に摺接されるラジアルシールリップ部301と、フランジ部50bのフランジ面に摺接される2つのサイドシールリップ部302,303を有する。
これらのシールの一般的な材料は、芯金としてはSPCCやSECCなどの鋼板が、リップ等を形成する弾性体としてはニトリルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等の合成ゴムが使用されている(下記の特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−161372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような転がり軸受および自動車用ハブユニットの使用環境が、多量の水分や塵埃が存在する劣悪な環境下である場合には、使用を続けているうちにシールのリップ部の弾力性が低下したり、リップ部が欠けたりすることにより、リップ部のシール接触面(シールのリップ部と接触する相手部材の面)に対する摺接力(摺り接触する力)が低下して、リップ部とシール接触面との間に微小な隙間ができると、この隙間から水分や塵埃が軸受内部に侵入することになる。その結果、グリースが劣化して軸受の寿命が低下する恐れがある。
本発明は、このような従来技術に着目してなされたものであり、転がり軸受、自動車用ハブユニット、ハブユニット軸受、リニアガイド装置、ボールねじ等の転動装置に使用されるシールにおいて、リップ部のシール接触面に対する摺接性の高いシールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、転がり軸受用のシールであって、リップ部をなすゴム成形体は、温度20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.08以上0.19以下であることを特徴とするシールを提供する。
粘弾性体に正弦波形の応力とひずみが作用する場合には、ひずみが応力よりも遅れて生じるが、この応力に対するひずみの位相の遅れ角度を損失角(δ)と言う。損失正接(tan δ)はこの損失角(δ)の正接であって、変形の間に熱として散逸されるエネルギー量の尺度となる。ゴム成形体の損失正接(tan δ)の値は、ゴム成形体に正弦振動の荷重を付与する動的粘弾性試験を行うことによって測定される。
【0008】
本発明における「温度20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値」とは、正弦振動の荷重を付与する動的粘弾性試験を行うことで測定される損失正接(tan δ)の、試験雰囲気温度20℃〜70℃での最大値を意味する。
転動装置は、通常、室温程度から120℃程度の温度範囲で使用されることが多く、自動車用ハブユニットでも、エンジン始動により10℃程度まで上昇し、120℃以下で運転されている。したがって、本発明のシールによれば、リップ部をなすゴム成形体の温度10℃〜120℃での損失正接(tan δ)の最大値を0.50以下とすることにより、転動装置の通常の使用温度範囲(10℃〜120℃)で、リップ部のシール接触面に対する摺接性が保持される。
【0009】
転動装置の使用温度範囲が20℃〜70℃である場合には、リップ部をなすゴム成形体の温度20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値を0.08以上0.19以下とすることにより、この使用温度範囲(20℃〜70℃)で、リップ部のシール接触面に対する摺接性が保持される。
本発明の転動装置用シールにおいて、リップ部の硬度は、「JIS K6301」に記載のスプリング硬さAスケールで、50〜90の範囲であることが好ましい。これにより、シールのリップ部による密封性が良好になる。
【0010】
リップ部の硬さが50未満であると、シールが回転する際にリップ部が必要以上に変形して、リップ部に発熱やトルク上昇が生じ易くなる。その結果、転動装置の運転時の摩擦抵抗が大きくなり、スムーズな回転運動が困難になる場合がある。また、90を超えると、ゴム弾性が低下してリップ部のシール接触面に対する摺接力が不十分となり、十分な密封性が得られなくなる。特に好ましいリップ部の硬度は、スプリング硬さAスケールで70〜80の範囲である。
【0011】
温度10℃〜120℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.50以下であるゴム成形体および、温度20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.40以下であるゴム成形体は、原料ゴムに、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、補強剤、可塑剤、カップリング剤等の配合剤を必要に応じて適宜配合したゴム組成物を、加硫成形することにより得られる。
このゴム組成物には、また、必要に応じて補強性充填剤、加工助剤、摩耗改良剤、潤滑油、潤滑剤等を添加することができる。なお、ゴム組成物に対する補強性充填剤、摩耗改良剤等の添加量を調整することによって、所定硬度のゴム成形体を得ることができる。
【0012】
このゴム組成物の各成分の具体例について、以下に説明する。
原料ゴムとしては、NR(天然ゴム)、IR(イソプレンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、IIR(ブチルゴム)、EDPM(エチレンプロピレンゴム)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等を使用することができる。
【0013】
アクリロニトリルブタジエンゴム(「ニトリルゴム」とも称される。)には、アクリロニトリル含有量により、低ニトリルNBR、中ニトリルNBR、中高ニトリルNBR、高ニトリルNBR、極高ニトリルNBR等がある。このうち、摺接性、耐摩耗性、耐熱性、および耐寒性の点で特に中高ニトリルNBRが好ましい。また、イソプレンを共重合させたアクリロニトリルブタジエンイソプレンゴム、水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴム、およびカルボキシ化水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム等の変性アクリロニトリルブタジエンゴムを、単独でまたは二種類以上を混合して用いてもよい。
【0014】
加硫剤(架橋剤)としては、(1) 粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、高分散性硫黄などの各種硫黄、(2) モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、N,N−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼピノン−2)−チウラムポリスルフィドなどの硫黄を排出可能な硫黄化合物、(3) ジクミルパーオキサイド・ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチルヘキサン、ベンゾイルパーオキサイト等の過酸化物等が挙げられる。これらのうち、分散性、取扱いの容易さ、および耐熱性の点で、高分散性硫黄やモルホリンジスルフィドを使用することが好ましい。
【0015】
加硫促進剤としては、硫黄系の加硫剤を用いた場合には、グアニジン系,アルデビド−アンモニア系,チアゾール系,スルフェンアミド系,チオ尿素系,チウラム系,ジチオカルバメート系,ザンテート系等を用いる必要がある。このうち高分散性硫黄を少量配合した場合には、チウラム系のテトラメチルチウラムジスルフィド等やスルフェンアミド系のN−シクロベンジル−2 −ベンゾチアジルまたはスルフェンアミドと、チアゾール系の2 −メルカプトベンゾチアゾール等とを併用することが好ましい。
【0016】
加硫促進助剤としては、酸化亜鉛等の金属酸化物、金属炭酸塩、金属水酸化物、ステアリン酸等の脂肪酸とその誘導体、及びアミン類などが挙げられる。原料ゴムとしてカルボキシル変性ニトリルゴムを用いた場合は、酸化亜鉛により早期加硫を生じやすいので、過酸化亜鉛とステアリン酸の組み合わせが好ましい。過酸化亜鉛は、ゴム組成物の混練加工時の温度ではそのままゴム組成物中に存在し、加硫成形時に酸化亜鉛を生じるため、混練加工時及び保管時に早期加硫を生じることがない。
【0017】
酸化劣化を防止する老化防止剤としては、アミン−ケトン縮合生成物、芳香族第二級アミン類、モノフェノール誘導体、ビス又はポリフェノール誘導体、ビドロキノン誘導体、硫黄系老化防止剤、リン系老化防止剤等があげられる。このうち、アミン−ケトン縮合生成物系の2 ,2 ,4 −トリメチル−1 ,2 −ジビドロキノリン重合体またはジフェニルアミンとアセトンとの縮合反応物、芳香族第二級アミン系であるN,N’−ジ−β- ナフチル−p−フェニレンジアミン、4 ,4 ’−ビス−( α,α−ジメチルベンジル) ジフェニルアミン、またはN−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2 −ビドロキシプロピル) −p−フェニレンジアミン等が好ましい。
【0018】
また、熱分解を防止して耐熱性を向上するため、上記の老化防止剤とともに2次老化防止剤を併用することがより好ましい。2次老化防止剤としては、硫黄系の2 −メルカプトベンズイミダゾール、2 −メルカプトメチルベンズイミダゾール及びこれらの亜鉛塩等があげられる。
更に、日光あるいはオゾンの作用による亀裂を抑制させる日光亀裂防止剤として、融点が55〜70℃程度のワックス類を、原料ゴム100重量部に対して0.5〜2.0重量部程度添加してもよい。0.5重量部未満であると、オゾンの作用による亀裂を防止する効果ほとんど得られず、2重量部を超えると、不必要なワックスがゴム表面に染み出してくるため加工性に問題を生じる。
【0019】
さらに成形性を向上させる必要がある場合には、加工助剤として可塑剤が適宜添加される。成形性に問題がない場合には加工助剤を添加する必要はない。添加する場合の添加量は、原料ゴム100重量部に対して3〜20重量部とする。必要以上に添加すると、ゴム組成物が軟化するとともに、完全に混合されずにブリードアウトが生じる恐れがある。
【0020】
可塑剤の具体例としては、ジ−( 2−エチルヘキシル) フタレート等のフタル酸誘導体、イソフタル酸誘導体、テトラヒドロフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、アゼライン酸誘導体、セバシン酸誘導体、ドデカン酸誘導体、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体、トリメット酸誘導体、ピロメリット酸誘導体、クエン酸誘導体、イタコン酸誘導体、オレイン酸誘導体、リシノール酸誘導体、ステアリン酸誘導体、リン酸誘導体、グルタール酸誘導体、グリコール誘導体、グリセリン誘導体、パラフィン誘導体、エポキシ誘導体、ポリエステル系可塑剤、ポリエーテル系可塑剤、液状ゴム等が挙げられる。
【0021】
カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系、チタネート系のカップリング剤、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
補強性充填剤としては、カーボンブラックや白色系充填剤が挙げられる。具体的に、カーボンブラックとしては、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace black) 、MAF(Medium Abrasion Furnace black) 、SRF(Simi −Reinforcing Furnace black)、GPF(General Purpose Furnace black) 、FT(Fine Thermal Furnace black)、MT(Medium Thermal Furnace black)、HAF(High Abrasion Furnace black)、FEF(Fast Extruding Furnace black)等を例示することができる。これらのうち、補強性および追従性を考慮すると、HAF、FEF、およびSRFが好ましい。
【0022】
白色系充填剤としては、各種シリカ、塩基性炭酸マグネシウム、活性化炭酸カルシウム、特殊炭酸カルシウム、超微分ケイ酸マグネシウム、クレー、タルク、珪藻土、ウォラストナイト等が挙げられる。カーボンブラックと白色系充填剤を混合した補強性充填剤を用いてもよい。
補強性充填剤が添加されたゴム組成物を用いると、リップ部の耐摩耗性が高くなる。その結果、シールのリップ部による密封性能が向上する。補強性充填剤の添加量は、カーボンブラックの場合、原料ゴム100重量部に対して20〜90重量部とする。20重量部未満であると十分な補強性が発現されず、また、90重量部を超えると、ゴム組成物の硬度が高くなるとともに伸び率が低くなり、本来有するゴム弾性が低下する。
【0023】
白色系補強剤の場合、補強性充填剤の添加量は、原料ゴム100重量部に対し20〜150重量部とする。補強性充填剤の添加量が20重量部未満であると十分な補強性が発現されず、150重量部を超えると、ゴム組成物の硬度が高くなるとともに伸び率が低くなり、本来有するゴム弾性が低下する。
補強性充填剤としてカーボンブラックと白色系補強剤との混合物を用いる場合は、原料ゴム100重量部に対して、カーボンブラック10〜90重量部、白色系補強剤10〜110重量部の範囲で、合計含有量が20〜200重量部となるようにする。補強性充填剤の合計含有量が20重量部未満であると十分な補強性が発現されず、200重量部を超えると、ゴム組成物の硬度が高くなるとともに伸び率が低くなり、本来有するゴム弾性が低下する。
【0024】
摩耗改良剤としては、ポリオレフィン粒子や球状炭素微粒子等が挙げられる。ポリオレフィン粒子としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン製の粒子、好ましくは、カルボキシル変性ポリエチレン( 無水マレイン酸変性ポリエチレン) 、カルボキシル変性ポリプロピレン( 無水マレイン酸変性ポリプロピレン) 製の粒子が挙げられる。
ポリエチレン及びポリプロピレンは、カルボキシル変性されると、構造中のカルボキシル基によって各種ゴムや酸化物等に吸着しやすくなる。また、原料ゴムにカルボキシル変性ニトリルゴムを用いた場合は、ゴム中に存在するカルボキシル基も同様の効果を有するので、これらの相乗効果によって、引張強度、耐摩耗性、耐屈曲疲労性等の機械的強度がより向上すると考えられる。
【0025】
ポリオレフィン粒子の添加量は、ゴム組成物の耐摩耗性と他の物性とのバランスから、原料ゴム100重量部に対し10〜60重量部とすることが好ましい。10重量部未満であると、耐摩耗性を向上させる効果が低い。逆に60重量部を超えるとゴム組成物の硬度が上昇し且つ伸び率が低くなって、ゴム弾性が低下する。
潤滑油としては、エーテル系オイル、シリコーン系オイル、ポリα−オレフィンオイル、フッ素オイル、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。この中でもシリコーン系オイルがより好ましく、さらに、官能基を有する変性シリコーンオイルが特に好ましい。この官能基がゴムの主鎖に反応し、オイルがゴム組成物の表面に一度に染み出すことを防ぐと同時に、徐々に恒久的に染み出すようになると考えられる。潤滑油は液状であるのでゴム組成物の表面に染み出し易く、少量であっても効果がある。
【0026】
潤滑油の添加量は、原料ゴム100重量部に対して2〜30重量部とする。これにより、ゴム組成物の潤滑性が向上する。潤滑油の添加量が2重量部未満であると十分な潤滑性が発現されず、30重量部を超えるとゴムの加工時に添加物の分散不良が生じるため好ましくない。
【発明の効果】
【0027】
本発明の方法によれば、シールのリップ部を、温度20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.08以上0.19以下であるゴム成形体とすることによって、転がり軸受に使用されるシールとして、リップ部のシール接触面に対する摺接性の高いシールが得られる。
すなわち、このシールは、リップ部のシール接触面に対する摺接性に優れているため、水や塵埃が多量に存在するような過酷な環境下であっても高い密封性が維持されて、グリース漏れや水分および塵埃の侵入が防止される。
したがって、本発明のシールを水や塵埃が多量に存在するような過酷な環境下で使用される転がり軸受に取り付けることによって、この転がり軸受の寿命を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。
ゴム組成物の材料として以下のものを用意した。
☆原料ゴムA:中高ニトリルNBR(JSR 株式会社製「JSR NBR N230S 」)、アクリロニトリル単量体の比率:35%
☆原料ゴムB:カルボギシル化中高ニトリルNBR(日本ゼオン株式会社製「Nipol DN631 」)、アクリロニトリル単量体の比率:33.5%
☆原料ゴムC:高ニトリルNBR(JSR 株式会社製「JSR NBR N222S 」)、アクリロニトリル単量体の比率:43%
☆原料ゴムD:中ニトリルNBR(JSR 株式会社製「JSR NBR N241S 」)、アクリロニトリル単量体の比率:29%
☆原料ゴムE:中ニトリルNBR(JSR 株式会社製「JSR NBR N240S 」)、アクリロニトリル単量体の比率:26%
☆原料ゴムF:中ニトリルNBR(日本ゼオン株式会社製「Nipol DN2850」)、アクリロニトリル単量体の比率:28%
☆原料ゴムG:中ニトリルNBR(日本ゼオン株式会社製「Nipol DN3350」)、アクリロニトリル単量体の比率:33%
☆原料ゴムH:高ニトリルNBR(JSR 株式会社製「JSR NBR N235S 」)、アクリロニトリル単量体の比率:36%
☆原料ゴムI:高ニトリルNBR(JSR 株式会社製「JSR NBR N220S 」)、アクリロニトリル単量体の比率:41%
☆カーボンブラックA:HAF(三菱化学株式会社製「ダイアブラックH」)
☆カーボンブラックB:SRF(東海カーボン株式会社製「シーストS」)
☆シリカ:含水シリカ(日本シリカ工業株式会社製「ニップシールAQ」)
☆シラン改質クレー:白石カルシウム株式会社製「ST−301」
☆焼成クレー:土屋カオリン株式会社製「SATINTONE No. 5」
☆タルク:Pfizer社製「MP10−52」
☆ウォラストナイト:NYCO社製「NYAD10」
☆加硫剤:高分散性硫黄(鶴見化学工業株式会社製「Sulfalx PMC」)
☆加硫促進剤A:テトラメチルチウラムジスルフィド(川口化学工業株式会社製「アクセルTMT」)
☆加硫促進剤B: テトラエチルチウラムジスルフィド(大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーTET」)
☆加硫促進剤C:N−シクロヘキシル−2 −ベンゾチアジル・スルフェンアミド(川ロ化学工業株式会社製「アクセルCZ−R」)
☆加硫促進助剤A(滑剤を兼ねる):ステアリン酸(花王株式会社製「Lunac S −35」)
☆加硫促進助剤B:酸化亜鉛(堺化学株式会社製「フランス1号」)
☆加硫促進助剤C:酸化亜鉛(日本ゼオン株式会社製「ZeonetZP」)、マスターバッチ法による添加
☆活性剤:有機アミン(吉富製薬株式会社製「アクチングSL」)
☆可塑剤:アジピン酸系ポリエステル(旭電化株式会社製「PN−350 」)
☆摩耗改良剤:カルボキシル変性ポリエチレン粒子(三菱化学株式会社製「モディック−APH501 」)
☆老化防止剤A:4 ,4 −ビス−(α、α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学工業株式会社製「ノクラックCD」)
☆老化防止剤B:2−メルカプトベンズイミダゾール(大内新興化学工業株式会社製「ノクラックMB」)
☆老化防止剤C:特殊ワックス(大内新興化学工業株式会社製「サンノック」)
☆潤滑油:アミノ変性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製「KF−860 」)
☆カップリング剤:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製「KBM803 」)
【0029】
[第1実施形態]
下記の表1に示す組成のNo. 1−1〜1−5のゴム組成物を用意した。
【0030】
【表1】

【0031】
これらのゴム組成物を用いて以下の方法により、硬さ試験用の試験片を作製した。
先ず、加硫剤および加硫促進剤を除いた各材料をバンバリーミキサーに投入し、ミキサー温度80℃で混練を行った(第1混練工程)。次に、この混練された材料をバンバリーミキサーから取り出して、2本ロールのゴム用練りロール機に投入した。次に、ロール温度を50℃に制御しながら、このロール機内に加硫剤および加硫促進剤を投入して、均一になるまで切り返し操作を行った(第二混練工程)後、シート状に形成した。
【0032】
次に、170℃に加熱したホットプレス機に、厚さ2mmのシート用の加硫金型を装着し、この金型内に第二混練工程で得られた前記シートを載置した。そして、15分間加熱及び加圧して、縦150mm、横150mm、厚さ2mmの加硫ゴムシートを得た。このゴムシートをJIS3号試験片の形状に打ち抜くことにより、硬さ試験用の試験片を得た。
【0033】
この試験片を3枚重ねて用い、「JIS K6301」に基づいて、スプリング硬さAスケールによる硬さ測定を行った。
また、後述の方法で作製した図3のハブユニット用のシール10から、動的粘弾性試験用の試験片を切り出した。この試験片は、実効測定寸法:10mm×2.7mm×厚さ0.5mmに対応させて切り出した。
【0034】
この試験片を用い、「JIS K 7244−4」に基づいて、雰囲気温度10℃〜120℃で、正弦振動の荷重を付与する動的粘弾性試験を行って、前記温度範囲の各温度での損失正接(tan δ)を求めた。試験機としては、レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製の粘弾性測定装置「RSA−II」を用い、測定モード:引張モード、測定周波数:10Hz、初期歪み:2.0%、動的歪み:0.1%の条件で試験を行った。
これらの試験結果を下記の表2に示す。tan δについては、雰囲気温度10℃〜120℃での最大値を表2に示した。
【0035】
【表2】

【0036】
表2の結果から分かるように、No. 1−1〜1−5のゴム組成物を加硫成形して得られたゴム成形体は、スプリング硬さAスケールによる硬さが70以上となっている。また、No. 1−1〜1−4のゴム組成物を加硫成形して得られたゴム成形体(No. 1−1〜1−4の成形体)は、10℃〜120℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.50以下となっているが、No. 1−5のゴム組成物を加硫成形して得られたゴム成形体(No. 1−5の成形体)は、前記最大値が0.50を超えている。
【0037】
次に、図1に示す転がり軸受のシール1を以下の方法で作製した。SPCC製の芯金2とNo. 1−1〜1−5のゴム組成物をシール形成用の加硫金型内に入れ、加熱加圧成形することによって、各ゴム組成物からなる加硫成形体を、弾性体3として芯金2の外側に一体に成形した。なお、弾性体3のリップ部13は図2に示す形状とした。
【0038】
得られた各シール(弾性体3がNo. 1−1〜1−5の各成形体からなるシール)1を、日本精工(株) 製の6203(呼び番号) 単列深溝玉軸受(図1の転がり軸受)の内輪5と外輪4の間に組み込んだ。この軸受を日本精工(株) 製の軸受回転試験機にかけて、封入グリース:エーテル系グリース、雰囲気温度:80℃、回転速度:10000rpm、回転時間:1000時間の条件で回転させた後に、グリース漏れとリップ部の切損の有無を調べた。
これらの試験結果を下記の表3に示す。グリース漏れおよびリップ部の切損が生じた場合を「×」、生じなかった場合を「○」とした。
【0039】
【表3】

【0040】
表3の結果から分かるように、弾性体3がNo. 1−1〜1−4の成形体からなるNo. 1−1〜1−4のシールを組み込んだ軸受では、前記回転試験によってもグリース漏れおよびシールの切損が生じなかったのに対して、弾性体3がNo. 1−5の成形体からなるNo. 1−5のシールを組み込んだ軸受では、前記回転試験によってグリース漏れおよびシールの切損が生じた。
【0041】
次に、図3に示すハブユニット6のシール10を以下の方法で作製した。SPCC製の芯金20とNo. 1−1〜1−5のゴム組成物をシール形成用の加硫金型内に入れ、加熱加圧成形することによって、各ゴム組成物からなる加硫成形体を、弾性体30として芯金20に一体に成形した。なお、弾性体30のリップ部31〜33は図3に示す形状とした。
【0042】
得られた各シール(弾性体30がNo. 1−1〜1−5の各成形体からなるシール)10をそれぞれ、図3に示す、ハブ61の内径が60mmであるハブユニット6に取り付けた状態で、日本精工(株) 製のハブユニット回転試験機に取り付けた。そして、軸偏心を0〜0.7mmTIR (Total Indicator Reading )の各値に設定し、泥水をハブユニット6およびシール10に向けてかけながら、以下の条件でハブユニットを回転させた。泥水の供給条件:毎分2リットルの泥水を10秒間かけた後、20秒間泥水をかけるのを停止することを繰り返す、ハブユニット6とシール10との間への封入グリース:鉱油系グリース、雰囲気温度:室温、回転速度:1000rpm、回転時間:50時間。
【0043】
この回転試験後に、各試験体の封入グリースに含まれる水分量を測定し、この水分量(質量)のグリース質量に対する含有率により、シール10のリップ部31〜33のハブユニット6に対する摺接性を評価した。
前記含有率が1.0%以下であれば、シール10のリップ部31〜33のハブユニット6に対する摺接性が良好「○」とし、2.0〜5.0%の場合はやや不良「△」とし、5.0%以上の場合は不良「×」とした。この試験結果を下記の表4に示す。
また、シール10のリップ部(主リップ)32の内部に熱電対を挿入して、軸偏心を0として回転させ、安定回転時(30時間以上回転させた時)にリップ部(主リップ)32の温度を測定した。この結果を下記の表5に示す。
【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
表4の結果から分かるように、軸偏心が0である場合は、No. 1−1〜1−5のいずれのシールを組み込んだ場合でも、前記回転試験におけるリップ部のハブユニットに対する摺接性は良好であった。しかし、No. 1−5のシール(弾性体の10℃〜120℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.54であるシール)を組み込んだ場合には、軸偏心が0.05〜0.15mmTIR であると、前記回転試験におけるリップ部のハブユニットに対する摺接性はやや不良となり、0.20mmTIR 以上となると不良となった。
【0047】
これに対して、No. 1−1,1−3,1−4のシール(弾性体の10℃〜120℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.32以下であるシール)を組み込んだ場合には、軸偏心が0.70mmTIR であっても前記回転試験におけるリップ部のハブユニットに対する摺接性は良好であった。また、No. 1−2のシール(弾性体の10℃〜120℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.50であるシール)を組み込んだ場合の前記回転試験におけるリップ部のハブユニットに対する摺接性は、軸偏心が0〜0.60mmTIR では良好であり、軸偏心が0.65〜0.70mmTIR であるとやや不良となった。
【0048】
また、表5の結果から分かるように、主リップの温度は、No. 1−5のシール(弾性体の10℃〜120℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.54であるシール)を組み込んだ場合に89℃であり、No. 1−1〜1−4のシール(弾性体の10℃〜120℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.26〜0.50であるシール)を組み込んだ場合の主リップの温度45〜75℃よりも高くなった。
【0049】
No. 1−5のシールの主リップの温度が89℃まで上昇した理由は、主リップのハブユニットに対する摺接性が悪く、主リップがハブ(軸)を押す力が軸の周方向で不均一になって発熱したためと推測される。また、No. 1−4のシールの弾性体は、シリコーンオイルを含有するゴム成形体からなることから、主リップの潤滑性が高いため、主リップの温度が45℃と特に低かった。
【0050】
[第2実施形態]
下記の表6に示す組成のNo. 2−1〜2−11のゴム組成物を用意した。
【0051】
【表6】

【0052】
これらのゴム組成物を用いて以下の方法により、硬さ試験用の試験片を作製した。
先ず、加硫剤および加硫促進剤を除いた各材料をバンバリーミキサーに投入し、ミキサー温度80℃で混練を行った(第1混練工程)。次に、この混練された材料をバンバリーミキサーから取り出して、2本ロールのゴム用練りロール機に投入した。次に、ロール温度を50℃に制御しながら、このロール機内に加硫剤および加硫促進剤を投入して、均一になるまで切り返し操作を行った(第二混練工程)後、シート状に形成した。
【0053】
次に、170℃に加熱したホットプレス機に、厚さ2mmのシート用の加硫金型を装着し、この金型内に第二混練工程で得られた前記シートを載置した。そして、15分間加熱及び加圧して、縦150mm、横150mm、厚さ2mmの加硫ゴムシートを得た。このゴムシートをJIS3号試験片の形状に打ち抜くことにより、硬さ試験用の試験片を得た。
【0054】
この試験片を3枚重ねて用い、「JIS K6301」に基づいて、スプリング硬さAスケールによる硬さ測定を行った。
また、後述の方法で作製した図1の転がり軸受用のシール1および図3のハブユニット用のシール10から、それぞれ動的粘弾性試験用の試験片を切り出した。シール1用の試験片は、実効測定寸法:4mm×20mm×厚さ0.8mmに対応させて、シール10用の試験片は、実効測定寸法:10mm×2.7mm×厚さ0.5mmに対応させて切り出した。
【0055】
この試験片を用い、「JIS K 7244−4」に基づいて、雰囲気温度20℃〜70℃で正弦振動の荷重を付与する動的粘弾性試験を行い、前記温度範囲の各温度での損失正接(tan δ)を求めた。試験機としては、レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製の粘弾性測定装置「RSA−III 」を用い、測定モード:引張モード、測定周波数:10Hz、初期歪み:2.0%、動的歪み:0.1%の条件で試験を行った。
これらの試験結果を下記の表7に示す。tan δについては、雰囲気温度20℃〜70℃での最大値を表7に示した。
【0056】
【表7】

【0057】
表7の結果から分かるように、No. 2−1〜2−11のゴム組成物を加硫成形して得られたゴム成形体は、スプリング硬さAスケールによる硬さが70以上となっている。また、No. 2−1〜2−5,2−7〜2−10のゴム組成物を加硫成形して得られたゴム成形体(No. 2−1〜2−5,2−7〜2−10の成形体)は、軸受用シールおよびハブユニット用シールのいずれについても、20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.40以下となっているが、No. 2−6,2−11のゴム組成物を加硫成形して得られたゴム成形体(No. 2−6,2−11の成形体)は、軸受用シールおよびハブユニット用シールのいずれについても、前記最大値が0.40を超えている。
【0058】
次に、図1に示す転がり軸受のシール1を以下の方法で作製した。SPCC製の芯金2とNo. 2−1〜2−11のゴム組成物をシール形成用の加硫金型内に入れ、加熱加圧成形することによって、各ゴム組成物からなる加硫成形体を、弾性体3として芯金2の外側に一体に成形した。なお、弾性体3のリップ部13は図2に示す形状とした。
【0059】
得られた各シール(弾性体3がNo. 2−1〜2−11の各成形体からなるシール)1を、日本精工(株) 製の6203(呼び番号) 単列深溝玉軸受(図1の転がり軸受)の内輪5と外輪4の間に組み込んだ。この軸受を日本精工(株) 製の軸受回転試験機にかけて、封入グリース:エーテル系グリース、雰囲気温度:80℃、回転速度:10000rpm、回転時間:1000時間の条件で回転させた後に、グリース漏れとリップ部の切損の有無を調べた。
これらの試験結果を下記の表8に示す。グリース漏れおよびリップ部の切損が生じた場合を「×」、生じなかった場合を「○」とした。
【0060】
【表8】

【0061】
表8の結果から分かるように、弾性体3がNo. 2−1〜2−5,2−7〜2−10の成形体からなるNo. 2−1〜2−5,2−7〜2−10のシールを組み込んだ軸受では、前記回転試験によってもグリース漏れおよびシールの切損が生じなかったのに対して、弾性体3がNo. 2−6,2−11の成形体からなるNo. 2−6,2−11のシールを組み込んだ軸受では、前記回転試験によってグリース漏れおよびシールの切損が生じた。
【0062】
次に、図3に示すハブユニット6のシール10を以下の方法で作製した。SPCC製の芯金20とNo. 2−1〜2−11のゴム組成物をシール形成用の加硫金型内に入れ、加熱加圧成形することによって、各ゴム組成物からなる加硫成形体を、弾性体30として芯金20に一体に成形した。なお、弾性体30のリップ部31〜33は図3に示す形状とした。
【0063】
得られた各シール(弾性体30がNo. 2−1〜2−11の各成形体からなるシール)10をそれぞれ、図3に示す、ハブ61の内径が60mmであるハブユニット6に取り付けた状態で、日本精工(株) 製のハブユニット回転試験機に取り付けた。そして、軸偏心を0〜0.7mmTIR (Total Indicator Reading )の各値に設定し、泥水をハブユニット6およびシール10に向けてかけながら、以下の条件でハブユニットを回転させた。泥水の供給条件:毎分2リットルの泥水を10秒間かけた後、20秒間泥水をかけるのを停止することを繰り返す、ハブユニット6とシール10との間への封入グリース:鉱油系グリース、雰囲気温度:室温、回転速度:1000rpm、回転時間:50時間。
【0064】
この回転試験後に、各試験体の封入グリースに含まれる水分量を測定し、この水分量(質量)のグリース質量に対する含有率により、シール10のリップ部31〜33のハブユニット6に対する摺接性を評価した。
前記含有率が1.0%以下であれば、シール10のリップ部31〜33のハブユニット6に対する摺接性が良好「○」とし、2.0〜5.0%の場合はやや不良「△」とし、5.0%以上の場合は不良「×」とした。この試験結果を下記の表9に示す。
また、シール10のリップ部(主リップ)32の内部に熱電対を挿入して、軸偏心を0として回転させ、安定回転時(30時間以上回転させた時)にリップ部(主リップ)32の温度を測定した。この結果を下記の表10に示す。
【0065】
【表9】

【0066】
【表10】

【0067】
表9の結果から分かるように、軸偏心が0である場合は、No. 2−1〜2−11のいずれのシールを組み込んだ場合でも、前記回転試験におけるリップ部のハブユニットに対する摺接性は良好であった。しかし、No. 2−6のシール(弾性体の20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.44であるシール)を組み込んだ場合には、軸偏心が0.05〜0.15mmTIR であると、前記回転試験におけるリップ部のハブユニットに対する摺接性はやや不良となり、0.20mmTIR 以上となると不良となった。
また、No. 2−11のシール(弾性体の20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.42であるシール)を組み込んだ場合には、軸偏心が0.15〜0.25mmTIR であると、前記回転試験におけるリップ部のハブユニットに対する摺接性はやや不良となり、0.30mmTIR 以上となると不良となった。
【0068】
これに対して、No. 2−1,2−2,2−4,2−5,2−7〜2−10のシール(弾性体の20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.11〜0.26であるシール)を組み込んだ場合には、軸偏心が0.70mmTIR であっても前記回転試験におけるリップ部のハブユニットに対する摺接性は良好であった。また、No. 2−3のシール(弾性体の20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.40であるシール)を組み込んだ場合の前記回転試験におけるリップ部のハブユニットに対する摺接性は、軸偏心が0〜0.55mmTIR では良好であり、軸偏心が0.60〜0.70mmTIR であるとやや不良となった。
【0069】
また、表10の結果から分かるように、主リップの温度は、No. 2−6,2−11のシール(弾性体の20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.44,0.42であるシール)を組み込んだ場合に78℃,77℃であり、No. 2−1〜2−5,2−6〜2−10のシール(弾性体の20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.11〜0.40であるシール)を組み込んだ場合の主リップの温度45〜75℃よりも高くなった。
【0070】
主リップの温度が高くなった理由は、主リップのハブユニットに対する摺接性が悪く、主リップがハブ(軸)を押す力が軸の周方向で不均一になって発熱したためと推測される。また、No. 2−5のシールの弾性体は、シリコーンオイルを含有するゴム成形体からなることから、主リップの潤滑性が高いため、主リップの温度が45℃と特に低かった。
さらに、この実施形態では、上述のように、原料ゴムとしてアクリロニトリル含有率の異なる各種ニトリルゴム(NBR)を用いている。そこで、各サンプルの原料NBR中のアクリロニトリル含有率と、ハブユニット用シールから切り出した試験片で測定したtan δ最大値(雰囲気温度20℃〜70℃での最大値)との関係を、図4にグラフで示した。
【0071】
ここで、No. 2−2,2−3,2−5の原料NBR中のアクリロニトリル含有率は同じ値(35%)であるが、No. 2−3は、カーボンブラックを含有せずシリカを含有し、さらにカップリング剤を含有している点で、No. 2−1,2−6〜2−11と大きく異なる。また、No. 2−5は、潤滑油を含有している点で他のサンプルと大きく異なる。そのため、他のサンプルとの比較対象とする「アクリロニトリル含有率=35%」のサンプルとしてはNo. 2−2を使用する。
【0072】
したがって、図4のグラフから、原料NBR中のアクリロニトリル含有率が多いほど、tan δ最大値(雰囲気温度20℃〜70℃での最大値)が大きくなることが分かる。
また、tan δ最大値が0.40より大きいサンプルNo. 2−6と2−11のシールは、密封性が不良となっている(前述の各試験で、グリース漏れやシール切損が生じたり、比較的小さな軸偏心でも摺接性が悪いという結果であった。)ことから、原料ゴムとしてニトリルゴムを用いた場合には、アクリロニトリル含有率が小さいほど、密封性の高いシールが得られると考えられる。
【0073】
また、原料ゴムとしてニトリルゴムを用いた場合のアクリロニトリル含有率は26%以上36%以下であることが好ましい。前記含有率が26%未満であるニトリルゴム成形体は、芯金との接着性が不十分となり、前記含有率が36%を超えると、ニトリルゴム成形体のtan δ最大値が急激に大きくなって、リップ部のシール接触面に対する摺接性が不十分となる。
【0074】
[第3実施形態]
下記の表11に示す組成のNo. 3−1〜3−12のゴム組成物を用意した。
【0075】
【表11】

【0076】
これらのゴム組成物を用いて、前記第2実施形態と同じ方法により、硬さ試験用の試験片(JIS3号試験片)を作製した。この試験片を3枚重ねて用い、「JIS K6301」に基づいて、スプリング硬さAスケールによる硬さ測定を行った。
また、後述の方法で作製した図1の転がり軸受用のシール1および図3のハブユニット用のシール10から、それぞれ動的粘弾性試験用の試験片を切り出した。シール1用の試験片は、実効測定寸法:4mm×20mm×厚さ0.8mmに対応させて、シール10用の試験片は、実効測定寸法:10mm×2.7mm×厚さ0.5mmに対応させて切り出した。
【0077】
この試験片を用い、「JIS K 7244−4」に基づいて、雰囲気温度20℃〜70℃で正弦振動の荷重を付与する動的粘弾性試験を行い、前記温度範囲の各温度での損失正接(tan δ)を求めた。試験機としては、レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製の粘弾性測定装置「RSA−III 」を用い、測定モード:引張モード、測定周波数:10Hz、初期歪み:2.0%、動的歪み:0.1%の条件で試験を行った。
これらの試験結果を下記の表12に示す。tan δについては、雰囲気温度20℃〜70℃での最大値を表12に示した。
【0078】
【表12】

【0079】
表12の結果から分かるように、No. 3−1〜3−12のゴム組成物を加硫成形して得られたゴム成形体は全て、スプリング硬さAスケールによる硬さが70以上となっており、軸受用シールおよびハブユニット用シールのいずれについても、20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.40以下となっている。
【0080】
次に、図1に示す転がり軸受のシール1を以下の方法で作製した。SPCC製の芯金2とNo. 3−1〜3−12のゴム組成物をシール形成用の加硫金型内に入れ、加熱加圧成形することによって、各ゴム組成物からなる加硫成形体を、弾性体3として芯金2の外側に一体に成形した。なお、弾性体3のリップ部13は図2に示す形状とした。
【0081】
得られた各シール(弾性体3がNo. 3−1〜3−12の各成形体からなるシール)1を、日本精工(株) 製の6203(呼び番号) 単列深溝玉軸受(図1の転がり軸受)の内輪5と外輪4の間に組み込んだ。この軸受を日本精工(株) 製の軸受回転試験機にかけて、封入グリース:エーテル系グリース、雰囲気温度:80℃、回転速度:10000rpm、回転時間:1000時間の条件で回転させた後に、グリース漏れとリップ部の切損の有無を調べた。
これらの試験結果を下記の表13に示す。グリース漏れおよびリップ部の切損が生じた場合を「×」、生じなかった場合を「○」とした。
【0082】
【表13】

【0083】
表13の結果から分かるように、弾性体3がNo. 3−1〜3−12の各成形体からなる全てのシールを組み込んだ軸受で、前記回転試験によってもグリース漏れおよびシールの切損が生じなかった。
【0084】
次に、図3に示すハブユニット6のシール10を以下の方法で作製した。SPCC製の芯金20とNo. 3−1〜3−12のゴム組成物をシール形成用の加硫金型内に入れ、加熱加圧成形することによって、各ゴム組成物からなる加硫成形体を、弾性体30として芯金20に一体に成形した。なお、弾性体30のリップ部31〜33は図3に示す形状とした。
【0085】
得られた各シール(弾性体30がNo. 3−1〜3−12の各成形体からなるシール)10をそれぞれ、図3に示す、ハブ61の内径が60mmであるハブユニット6に取り付けた状態で、日本精工(株) 製のハブユニット回転試験機に取り付けた。そして、軸偏心を0〜0.7mmTIR (Total Indicator Reading )の各値に設定し、泥水をハブユニット6およびシール10に向けてかけながら、以下の条件でハブユニットを回転させた。泥水の供給条件:毎分2リットルの泥水を10秒間かけた後、20秒間泥水をかけるのを停止することを繰り返す、ハブユニット6とシール10との間への封入グリース:鉱油系グリース、雰囲気温度:室温、回転速度:1000rpm、回転時間:50時間。
【0086】
この回転試験後に、各試験体の封入グリースに含まれる水分量を測定し、この水分量(質量)のグリース質量に対する含有率により、シール10のリップ部31〜33のハブユニット6に対する摺接性を評価した。
前記含有率が1.0%以下であれば、シール10のリップ部31〜33のハブユニット6に対する摺接性が良好「○」とし、2.0〜5.0%の場合はやや不良「△」とし、5.0%以上の場合は不良「×」とした。この試験結果を下記の表14に示す。
また、シール10のリップ部(主リップ)32の内部に熱電対を挿入して、軸偏心を0として回転させ、安定回転時(30時間以上回転させた時)にリップ部(主リップ)32の温度を測定した。この結果を下記の表15に示す。
【0087】
【表14】

【0088】
【表15】

【0089】
表14の結果から分かるように、軸偏心が0.55mmTIR 以下である場合は、No. 3−1〜3−12のいずれのシールを組み込んだ場合でも、前記回転試験におけるリップ部のハブユニットに対する摺接性は良好であった。また、No. 3−1,3−2,No. 3−5〜3−12のシール(弾性体の20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.08以上0.31以下であるシール)を組み込んだ場合には、軸偏心が0.70mmTIR であっても、前記回転試験におけるリップ部のハブユニットに対する摺接性は良好であった。
【0090】
これに対して、No. 3−2のシール(弾性体の20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.36であるシール)を組み込んだ場合には、軸偏心が0.70mmTIR になると、前記回転試験におけるリップ部のハブユニットに対する摺接性はやや不良となった。また、No. 3−3のシール(弾性体の20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.40であるシール)を組み込んだ場合には、軸偏心が0.60mmTIR 以上になると、前記回転試験におけるリップ部のハブユニットに対する摺接性はやや不良となった。
【0091】
この結果から、リップ部をなすゴム成形体(弾性体)の20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値の好ましい範囲として、0.08以上0.31以下を挙げることができる。
また、表15の結果から分かるように、主リップの温度は全てのシールで73℃以下となり、良好な値であった。
【0092】
[泥水耐久試験]
図6に示す日本精工(株)製の泥水耐久試験装置を用いて、図3に示すシール付きハブユニットの泥水耐久試験を行った。
この装置は、回転軸110と、ハウジング120と、回転軸110にボルトで固定される軸側環状部材130と、ハウジング120に固定されたハウジング側環状部材140と、漏水センサ150と、図示されない回転駆動装置とで構成されている。また、ハウジング120内の回転軸先端側の空間121に泥水115が溜めてある。この装置にシール付きハブユニット160を取り付ける際には、そのハブ61を軸側環状部材130に取り付けた状態で、回転軸110とハウジング側環状部材140との間に挿入し、軸側環状部材130を回転軸110にボルトで固定する。
【0093】
この試験は、シール10を構成する弾性体30が、第1実施形態で作製したNo. 1−1〜1−4の各成形体、第2実施形態で作製したNo. 2−1、No. 2−4、No. 2−7〜2−10の各成形体、および第3実施形態で作製したNo. 3−1〜3−12の各成形体からなるものについて行った。これらのシール10は、前述の摺接性評価試験で、軸偏心が0.70mmTIR のときの結果が「良好(○)」あるいは「やや不良(△)」となっている。
これらの各シール10を図6の試験装置に組み込み、軸偏心0.50mmTIR として、以下の条件でハブユニットを回転させ、シール10から水が漏れるまでの時間(泥水耐久時間)を調べた。回転条件は、ハブユニット6とシール10との間への封入グリース:鉱油系グリース、雰囲気温度:室温、回転速度:1000rpmとした。
【0094】
次に、各シールで得られた泥水耐久時間から、No. 1−2の値を「1」とした相対値を算出した。その結果を、各シールをなす弾性体30の雰囲気温度20℃〜70℃でのtan δの最大値とともに、下記の表16に示す。
【0095】
【表16】

【0096】
また、この結果から得られた、各シールをなす弾性体30の雰囲気温度20℃〜70℃でのtan δの最大値と、泥水耐久時間(相対値)との関係を示すグラフを図7に示す。
このグラフから、前記tan δの最大値が小さくなるほど泥水耐久時間が長くなっていることが分かる。特に前記tan δの最大値が0.19以下になると、泥水耐久時間が急激に長くなり、0.10付近で飽和することが分かる。すなわち、雰囲気温度20℃〜70℃でのtan δの最大値が0.19以下(あるいは0.08以上0.19以下、あるいは0.10以上0.19以下)であるゴム成形体を使用することにより、シールの泥水耐久性能(密封性能)を特に高くすることができる。また、このグラフから、シールの泥水耐久性能(密封性能)の点で特に好ましい「前記tan δの最大値」の値は、0.15以下(あるいは0.08以上0.15以下、あるいは0.10以上0.15以下)であることが分かる。
【0097】
前記表16に示す結果のうち、原料ゴムGを使用したサンプルについての結果を、図8にグラフで示す。このグラフも、各シールをなす弾性体30の雰囲気温度20℃〜70℃でのtan δの最大値と、泥水耐久時間(相対値)との関係を示す。
このグラフにおいて「○」は、補強性充填剤としてカーボンブラックとクレーとの2種類を用いているサンプル(No. 3−6〜3−12)のプロットであり、「△」は、補強性充填剤としてカーボンブラック、クレー、タルク、およびウォラストナイトのいずれか1種類のみを用いているサンプル(No. 2−9、No. 3−1〜3−5)のプロットである。
【0098】
このグラフから分かるように、補強性充填剤としてカーボンブラックと白色系充填剤(クレー、タルク、およびウォラストナイト等)との混合物を用いた方が、いずれかを単独で用いる場合よりも、弾性体30の雰囲気温度20℃〜70℃でのtan δの最大値を大きくすることができ、その結果、シールの泥水耐久性能(密封性能)を特に高くすることができる。
【0099】
なお、補強性充填剤の含有量は、前述のように、原料ゴム100重量部に対して、カーボンブラック10〜90重量部、白色系補強剤10〜110重量部の範囲で、合計含有量が20〜200重量部となるようにするが、原料ゴム100重量部に対して、カーボンブラック20〜100重量部、白色系補強剤20〜100重量部の範囲で、合計含有量が50〜150重量部となるようにすることが好ましい。さらに、全補強性充填剤に占めるカーボンブラックの割合を0.31以上0.75以下にすることが好ましい。
なお、上記各実施形態では、転がり軸受用とハブユニット用のシールについて述べられているが、本発明のシールは、これら以外の転動装置(例えば、ハブユニット軸受、リニアガイド装置、ボールねじ等)用としても好適である。
【0100】
[ハブユニット軸受の例]
ここで、自動車用ハブユニット軸受の一例を図9に示す。
この自動車用ハブユニット軸受は、内輪部材410と、外輪部材420と、玉70と、保持器71と、シール431,432とからなる。内輪部材410は、シャフトを入れるハブ411と、その外周の軸方向一端に一体化されたフランジ412と、他端に取り付けられた軌道部材413とで構成されている。符号411aは、シャフト取り付け用のスプライン溝を示す。ハブ411の外周と軌道部材413の外周に、それぞれ内輪軌道411a,413aが形成されている。
【0101】
外輪部材420は、略円筒状の外輪421の外周にフランジ422が一体化されたものであり、内輪軌道411a,413aに対応させた外輪軌道421aが形成されている。
ハブユニット軸受は内輪回転タイプであり、内輪部材410のスプライン溝411aにシャフト(駆動軸)が挿入され、内輪部材410のフランジ412には車輪が取り付けられ、外輪部材420のフランジ422には懸架装置が取り付けられる。
このハブユニット軸受の外輪部材420の軸方向両端において、内輪部材410と外輪部材420との間が、シール431,432により密封されている。内輪部材410のフランジ412側に配置されたシール432は、例えば前述の図5に示す構造とし、もう一方のシール431の構造は例えば図3に示す構造とする。
【0102】
[シール形状の例]
本発明のシールは、リップ部をなすゴム成形体の所定温度範囲における損失正接(tan δ)の最大値が特定されたものであり、シール形状については特に限定されないが、好適なシール形状について以下に説明する。
図10は、図3のシール付きハブユニットの変形例であり、フランジ62の外周端部に屈曲部62aを設け、この屈曲部62aにリップ部33aを摺接させている。これにより、摺接面が、ハブユニットの中心を中心とした半径Rの球面またはこの球面に接触する円錐面に形成される。このように、ハブユニットの中心を中心とした半径Rの球面またはこの球面に接触する円錐面に、シールの摺接面を設けることにより、以下の作用が得られる。
【0103】
図10のシールを図9のシール431として使用した場合を考える。この場合、図10のシールを使用することで、内輪と外輪とが同軸状態にあるときの「しめしろ」を小さくすることができる。その理由は、図10のシールは「しめしろ」の変化が小さいからである。これにより、このハブユニット軸受にモーメント荷重が作用すること等に起因して、内輪と外輪との間に相対傾きが発生した場合でも、漏水が生じることを防止できる。したがって、図10の構造とすることにより、密封性向上と低トルク化の両方が同時に得られる。
【0104】
図11のシールは、弾性体として2つの弾性体30A,30Bを備えていることである。図11(b)では、図10と同じように、摺接面を、ハブユニットの中心を中心とした半径Rの球面に設けている。そのために、芯金20に屈曲部20aを設けている。図11(b)のシールは図10のシールと同じ作用が得られる。
図12のシールは、図11(b)のシールの弾性体30A,30B間にラビリンス空間tを設けた形状である。ラビリンスのシール効果よりさらに密封性が向上する。また、密封性が同一であればリップの「しめしろ」を小さくできるので、低トルク化の効果が得られる。
【0105】
図13および14は図5の変形例であって、これらの場合も図10と同じように、摺接面を、ハブユニットの中心を中心とした半径Rの球面に設けている。そのため、図10のシールと同じ作用が得られる。
図15は、二枚のシール10A,10Bからなるシール構造であり、図15(b)では、図10と同じように、摺接面を、ハブユニットの中心を中心とした半径Rの球面に設けている。そのために、芯金21に屈曲部21aを設けている。図15(b)のシールは図10のシールと同じ作用が得られる。
【0106】
図16のシールは、図15(b)のシール構造で、二枚のシール10A,10Bの間にラビリンス空間tを設けた形状である。ラビリンスのシール効果よりさらに密封性が向上する。また、密封性が同一であればリップの「しめしろ」を小さくできるので、低トルク化の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】シールの付いた転がり軸受の一例を示す断面図である。
【図2】実施形態において作製した転がり軸受用シールのリップ部の形状を示す断面図である。
【図3】シールの付いたハブユニットの一例を示す断面図である。
【図4】実施形態において作製した各サンプルの原料NBR中のアクリロニトリル含有率と、ハブユニット用シールから切り出した試験片で測定したtan δ最大値(雰囲気温度20℃〜70℃での最大値)との関係を示すグラフである。
【図5】シールの付いたハブユニットの別の例を示す断面図である。
【図6】実施形態で使用した泥水耐久試験装置を示す概略構成図である。
【図7】実施形態で得られた、各シールをなす弾性体の雰囲気温度20℃〜70℃でのtan δの最大値と、泥水耐久時間(相対値)との関係を示すグラフである。
【図8】実施形態で得られた、原料ゴムGを使用したサンプルについての、各シールをなす弾性体の雰囲気温度20℃〜70℃でのtan δの最大値と、泥水耐久時間(相対値)との関係を示すグラフである。
【図9】自動車用ハブユニット軸受の一例を示す断面図である。
【図10】シール構造の例を示す断面図である。
【図11】シール構造の例を示す断面図である。
【図12】シール構造の例を示す断面図である。
【図13】シール構造の例を示す断面図である。
【図14】シール構造の例を示す断面図である。
【図15】シール構造の例を示す断面図である。
【図16】シール構造の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0108】
1 シール
10 シール
11 主部
12 加締部
13 リップ部
2 芯金
20 芯金
3 弾性体
30 弾性体
31 リップ部
32 リップ部(主リップ)
33 リップ部
4 外輪
40 外輪相当部材
41 止め溝
5 内輪
50 内輪相当部材
50a ハブ部
50b フランジ部
51 受け溝
6 ハブユニット
61 ハブ
62 フランジ
70 転動体
100 シール
200 芯金
300 弾性体
301 ラジアルシールリップ部
302 サイドシールリップ部
303 サイドシールリップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受用のシールであって、
リップ部をなすゴム成形体は、温度20℃〜70℃での損失正接(tan δ)の最大値が0.08以上0.19以下であることを特徴とするシール。
【請求項2】
ゴム成形体は、原料ゴムがアクリロニトリルブタジエンゴムであるゴム組成物を、加硫成形して得られたものである請求項1記載のシール。
【請求項3】
アクリロニトリルブタジエンゴムのアクリロニトリル含有率が26%以上36%以下である請求項1または2記載のシール。
【請求項4】
アクリロニトリル含有率が26%以上36%以下であるアクリロニトリルブタジエンゴムからなる原料ゴム100重量部に対して、補強性充填剤としてカーボンブラック20〜90重量部を含有するゴム組成物を、加硫成形して得られたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のシール。
【請求項5】
アクリロニトリル含有率が26%以上36%以下であるアクリロニトリルブタジエンゴムからなる原料ゴム100重量部に対して、補強性充填剤として、カーボンブラックを20〜100重量部、白色系補強剤を20〜100重量部の範囲で、これらの合計含有量が50〜150重量部となるように、且つ、全補強性充填剤に占めるカーボンブラックの割合が0.31以上0.75以下となるように含有するゴム組成物を、加硫成形して得られたものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−211983(P2007−211983A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96737(P2007−96737)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【分割の表示】特願2002−160440(P2002−160440)の分割
【原出願日】平成14年5月31日(2002.5.31)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】