説明

シール

【課題】圧力が70MPa以上で水素ガスと接触してもブリスタが発生しないシールを提供する。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレンからなることを特徴とする、圧力が70MPa以上の水素ガスと接触してもブリスタが発生しないシール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧水素ガス用シールに関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスを使用した燃料電池を動力源とする車両には、ガソリン車両に対するガソリンスタンドと同様に水素ガス供給ステーションなどで水素ガスを充填することが必要となる。
【0003】
従来、燃料電池を動力源とする車両には35MPaの高圧ガスが充填できるようなタンクが搭載されてきた。しかし、航続距離の伸長を目的として、車載できる水素量の増加を図るため、70MPaタンクを搭載した燃料電池を動力源とする車両が検討されており、それに伴って、水素ガスの充填圧力も70MPaにする必要がある。
【0004】
水素ガスは分子が小さいためにもともと漏洩しやすく、特に70MPaもの高圧になれば更に漏洩の可能性が高まるため、高圧水素ガスタンク、高圧水素ガス配管、高圧ガス水素用バルブ、配管の連結部分などには、高いシール性が要求される。
【0005】
特許文献1には、高圧で水素が充填される高圧水素容器において、シール材料としてエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、及びニトリルイソプレンゴム(NIR)から選択されるエラストマーの1種以上が用いられていることを特徴とする高圧水素容器が記載されている。
【0006】
特許文献2には、燃料電池の高圧水素タンクまたは配管におけるシール構造において、第一シール部と、上記第一シール部より低圧側に配置される第二シール部とを有し、上記第一シール部のOリングにガス遮蔽性に優れた材質(EPDM)を選定し、上記第二シール部のOリングの材質として、上記第一シール部のOリングよりも低温性に優れたシリコン系ゴムを用いることを特徴とする燃料電池用シール構造が開示されている。
【0007】
特許文献3には、水素ガスのような高圧流体を扱う管継手部材において、シールリングを充分に機能させるようにして、高圧流体の漏洩が生じるのを阻止するようにした高圧流体 用管継手部材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−57711号公報
【特許文献2】特開2007−257967号公報
【特許文献3】特開2008−232361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの水素ガス用部材には、いずれも水素ガスの漏洩を防止するためのシールが設けられており、シールはエチレン−プロピレンゴムやニトリルゴムなどのゴム材料から形成されている。しかしながら、ゴム材料が70MPaもの高圧の水素ガスに晒されると、ブリスタ破壊現象が観察されることが、本発明者らの研究により見出された。
【0010】
ブリスタ破壊によりシールにき裂が生じると、き裂から水素が漏洩し、重大な事故につながる。本発明は、このような現状に鑑み、圧力が70MPa以上で水素ガスと接触してもブリスタが発生しないシールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らの知見によれば、ブリスタ破壊によるシールのき裂は、高圧水素ガスに暴露された際にゴム材料からなるシールに水素が溶解し、溶解した水素により気泡が発生することが原因で生じる。
このシールへの水素の溶解は、通常はヘンリーの法則に従って、水素ガスの圧力が高くなれば溶解量もそれに比例して増加する。図6にエチレン−プロピレン−ジエンゴム〔EPDM〕およびアクリロニトリルブタジエンゴム〔NBR〕の水素暴露圧力(p)に対する平衡水素量(CH0)を示す。
しかし、驚くべきことに、ポリテトラフルオロエチレンからなるシールは、図6に示すように、水素暴露圧力(p)が30〜50MPaで平衡水素量(CH0)が極大値を示し、50MPaを超えると平衡水素量(CH0)が低圧での平衡水素量(CH0)とほぼ同じ水準まで低下することが見出された。
本発明は、このような従来知られていなかったポリテトラフルオロエチレンからなるシールの新たな特性を見出し、完成された発明である。
【0012】
すなわち、本発明は、ポリテトラフルオロエチレンからなることを特徴とする、圧力が70MPa以上の水素ガスと接触してもブリスタが発生しないシールである。本発明のシールは、圧力が70MPa以上の水素ガスと接触させて使用するものであることが好ましい。本発明のシールは、圧力が70MPa以上の水素ガスの漏洩を防止するためのシールとして好適に利用できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシールは、上記の構成よりなるので、高いシール性を有しており、圧力が70MPa以上の水素ガスの漏洩を長期間にわたって防ぐことができる。
しかも、本発明のシールは、大気圧〜90MPaの圧力差による繰り返し応力が負荷されてもブリスタが発生しないし、−40〜90℃の温度差による繰り返し熱応力が負荷されてもブリスタが発生しない。従って、圧力が70MPa以上の水素ガスを供給するための水素ガス供給システムのあらゆる箇所に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】水素ステーションの構成を示す概略図である。
【図2】水素ステーションの構成を示す概略図である。
【図3】本発明の高圧水素ガス用管継手部材を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の高圧水素ガス用管継手部材を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の高圧水素容器を模式的に示す断面図である。
【図6】ポリテトラフルオロエチレン、EPDMおよびNBRの水素暴露圧力(p)に対する平衡水素量(CH0)を示すグラフである。
【図7】水素暴露後のEPDM(カーボンブラック入り)の表面の顕微鏡写真である。
【図8】水素暴露後のポリテトラフルオロエチレンの表面の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレンからなることを特徴とする、圧力が70MPa以上の水素ガスと接触してもブリスタが発生しないシールである。ポリテトラフルオロエチレンとしては、非溶融加工性のポリテトラフルオロエチレンであれば特に限定されず、テトラフルオロエチレンの単独重合体であっても、微量のモノマー(但しテトラフルロオエチレンを除く)を共重合させた変性ポリテトラフルオロエチレンであってもよい。ポリテトラフルオロエチレンとしては、融点が327℃以上であるものが好ましい。本発明のシールは充填材を含むものであってもよい。本発明のシールは、実質的にポリテトラフルオロエチレンのみからなることが好ましく、全体の97質量%以上がポリテトラフルオロエチレンからなることがより好ましく、99質量%以上がポリテトラフルオロエチレンからなることが更に好ましい。
【0016】
本発明のシールは、ガスケット又はパッキンのいずれであってもよく、形状も問わない。本発明のシールは、Oリングであってもよく、該Oリングを従来知られた方法によって高圧水素容器や配管機器に用いることができる。
本発明のシールは、圧力が70MPa以上の水素ガスと接触する箇所であれば、あらゆる箇所に使用することができ、水素ガスを供給するためのシステムおよび水素ガスを使用した燃料電池を動力源とする車両のあらゆる箇所のシールとして使用可能である。
【0017】
なお、本発明のシールは、30〜50MPaの水素ガスと接触しつづけると一定量の水素ガスが溶解してブリスタ破壊が生じる可能性があるため、圧力が70MPaを大きく下回る高圧の水素ガスを供給したり、保管したりする用途には適切でない。30〜50MPaの水素ガスと接触しつづける箇所に設置すると充分な性能を発揮できないおそれがあるので、圧力が70MPa以上の水素ガスの漏洩を防止したり、密封したりするために使用することが好ましい。
【0018】
図1および図2に水素ガスを供給するためのシステム(水素供給システム)の一例を示す。但し、これらに限定されるものではない。当該水素供給システムは、燃料電池を動力源とする車両の水素タンクに70MPa程度の圧力で水素を充填するためのものである。
【0019】
図1に示すように、水素供給システム1は、液体水素が貯蔵される液体水素保存タンク11と、該液体水素保存タンク11から取り出した水素ガスの圧力を車両100の水素タンク(図示せず)への充填圧力よりも高い圧力(約70〜90MPa)まで昇圧するための圧縮機12と、圧縮機12により昇圧された水素ガスを一時的に蓄えるための蓄圧器13と、蓄圧器13に蓄えられた水素ガスを車両100に供給するためのディスペンサー14とを備える。ディスペンサー14には車両100の水素タンクに水素ガスを供給するための水素供給ホース15が備えられており、水素供給ホース15には車両100のレセプタクル101に着脱自在に接続される水素供給ノズル16が取り付けられている。水素供給システム1は、プレクーラ(図示せず)を備えており、ディスペンサー14から送り出される水素ガスが−20〜−30℃程度に冷却される。各設備は水素ガス供給管(図示せず)により接続されており、該水素ガス供給管の途中には必要に応じてバルブや継手などの配管機器(図示せず)が配設される。
【0020】
水素供給システムの他の実施例を図2に示す。図2に示すように、水素供給システム2は、液体水素保存タンク11から取り出された水素ガスの圧力を所望の圧力に圧縮する圧縮機12と、圧縮機12により昇圧された水素ガスの一部を一時的に蓄えるための蓄圧器13と、圧縮機12により昇圧された水素ガスの残りの一部を車両100の水素タンク(図示せず)への充填圧力よりも高い圧力まで昇圧するための直接充填圧縮機27と、を備える他は、図1に示す水素供給システム1と同様の構成を有する。
【0021】
水素供給システム1及び2は、いずれの構成においても、液体水素保存タンク11から車両100のレセプタクル101まで水素ガスを供給するために、圧力が70MPa以上の水素ガスが通過する流路(図示せず)が備えられており、当該流路から高圧の水素ガスが漏洩することを防ぐために、シールを必要な箇所に配設する必要があるが、本発明のシールはいずれの箇所にも使用することが可能である。
【0022】
本発明のシールは、圧力が70MPa以上の水素ガスと接触してもブリスタ破壊を生じず、圧力が70MPa以上の水素ガスとの接触が長期間継続しても、水素ガスが漏洩することがない。
【0023】
また、ノズルと、上記ノズルから高圧の水素ガスを受け入れるレセプタクルと、圧力が70MPa以上の水素ガスが通過する流路と、上記ノズル及び上記レセプタクルの一方又は両方に設置された、上記流路からの水素ガスの漏洩を防ぐためのシールと、を備え、上記シールがポリテトラフルオロエチレンからなることを特徴とする高圧水素ガス用管継手部材も本発明の1つである。
【0024】
本発明の高圧水素ガス用管継手部材は、車両に備えられた高圧水素容器に水素ガスを充填するために、高圧の水素ガスを供給するためのノズルと、上記ノズルから水素ガスを受け入れるためのレセプタクルとを備える。
【0025】
図3および図4に本発明の高圧水素ガス用管継手部材の実施の一形態を示す。
【0026】
図3に示すように、高圧水素ガス用管継手部材3は、ノズル30と、ノズル30が挿入接続される差込口35を有するレセプタクル34とからなり、レセプタクル34は、差込口35の近傍に設けられたガスシールのための第1のOリング31と、第1のOリング31よりガス供給の下流側に設けられたガスシールのための第2のOリング33とを備え、第2のOリング33は、接合材(バックアップリング)32によってその一部がレセプタクル34の凹部に接合されている。圧力が70MPa以上の水素ガスは、ノズル30から供給され、レセプタクル34の流路36を通過して、車両に備えられた高圧水素容器に水素ガスが充填される。Oリング31及びOリング33はポリテトラフルオロエチレンからなり、高圧の水素ガスが継手部分から漏洩することを防止する。
【0027】
また、図4に高圧水素ガス用管継手部材の他の実施の一形態を示す。図4に示すように、高圧水素ガス用管継手部材4は、ノズル40と、ノズル40が挿入接続される差込口45を有するレセプタクル44とからなり、レセプタクル44には、差込口45の近傍に設けられガスシールのためのOリング43が設けられ、一方ノズル40の先端には、ガスシールのためのOリング42が設けられ、Oリング42は、接合材(バックアップリング)41によってその一部がノズル40の先端付近に設けられた凹部に接合されている。圧力が70MPa以上の水素ガスは、ノズル40から供給され、レセプタクル44の流路46を通過して、車両に備えられた高圧水素容器に水素ガスが充填される。Oリング42及びOリング43はポリテトラフルオロエチレンからなり、高圧の水素ガスが継手部分から漏洩することを防止する。
【0028】
いずれの形状を有する高圧水素ガス用管継手部材であっても、水素ガスを供給するための水素供給ホースの出口に取り付けられたノズルを、車両に取り付けられたレセプタブルに連結して、その供給が行われる。
【0029】
燃料電池を動力源とする車両に70MPa以上の圧力で水素ガスを充填する際には、ノズルとレセプタブルには大気圧から90MPaの圧力差による繰り返し応力がかかる。その上、水素の急速充填時の過熱対策のため、プレクーラを設置すると重点開始時には−40℃の水素に曝され、重点開始後しばらくすると温度は90℃近くまで上昇する。このような条件下で長期に渡って水素の供給を繰り返すと、ブリスタ破壊の可能性が一層高まる。
【0030】
従って、高圧水素ガス用管継手部材には、温度が−40〜90℃、圧力が大気圧〜90MPaで繰り返し水素ガスと接触してもブリスタが発生しないことが要求される。
【0031】
本発明の高圧水素ガス用管継手部材は、上記のような繰り返し応力が負荷される過酷な用途に使用できるものであり、ポリテトラフルオロエチレンからなるシールを備えることからこのような過酷な用途で使用してもブリスタ破壊によるき裂が生じることがない。
【0032】
本発明のシールは以下のような方法においても好適に使用できる。
すなわち、水素供給システムを準備するステップと、水素供給ホースの出口に設けられたノズル及び車両に設けられたレセプタクルの少なくとも一方にポリテトラフルオロエチレンからなるシールを設置するステップと、上記ノズル及び上記レセプタクルを接続するステップと、水素ガス供給システムにおける液体水素保存タンクから水素ガスを取り出すステップと、上記水素ガスを圧力70〜90MPa程度に昇圧するステップと、上記水素ガスを車両の水素タンクに圧力70〜90MPaで供給するステップと、からなることを特徴とする高圧水素ガスの充填方法である。上記充填方法は、圧力70〜90MPaの水素ガスが漏洩する可能性がある箇所(ノズル及びレセプタクルを除く)にポリテトラフルオロエチレンからなるシールを設置するステップを含むことも好ましい。
【0033】
本発明のシールは以下のような使用にも好適である。
すなわち、ノズルと、上記ノズルから水素ガスを受け入れるレセプタクルと、を備える高圧水素ガスを供給するための管継手部材において、温度−40〜90℃、圧力70〜90MPaで水素ガスを供給するためのポリテトラフルオロエチレンからなるシールの使用である。
【0034】
次に本発明の高圧水素容器の実施形態について説明する。
【0035】
圧力が70MPa以上の水素が充填される高圧水素容器において、ポリテトラフルオロエチレンからなるシールを備えることを特徴とする高圧水素容器も本発明の一つである。
図5は、本発明の高圧水素容器の一例を示す。高圧水素容器5は、燃料電池を動力源とする車両(図示せず)の水素タンクとして好適であり、全体として円筒形とされ、容器本体であるライナー53と外装54とを備え、ライナー53と外装54とを貫通する貫通孔には水素ガスを流出入させるためのバルブ51が装着されている。ライナー53は、好ましくはアルミニウムや高密度ポリエチレン等の樹脂などのライニング材で形成されており、外装54は、好ましくはクロムモリブデン鋼などの金属又は炭素繊維で強化したプラスチック(CFRP)からなる。本発明の高圧水素容器は、特にバルブ51にポリテトラフルオロエチレンからなるシール52が配設されていることが好適である。
【0036】
また、高圧水素容器5としては、高圧で水素を貯蔵するもの、水素の貯蔵と放出が可能な水素吸着剤を収容したもの、又は水素の吸着と放出が可能な水素吸着材、例えば錯体、活性炭、カーボンナノチューブ、アモルファスカーボン、グラファイトカーボン、ゼオライト若しくはメソポーラスシリケート等を収容したもの等、水素の貯蔵が可能なものであれば何れであってもよい。
【0037】
高圧水素容器にはバルブ51を介して水素ガスが充填される。バルブ51を介して水素ガスを充填していくと、断熱圧縮により高圧水素容器内部のガス温が次第に上昇していくので、シール52には高い圧力が掛かると同時に温度差による応力も負荷される。このため、シール52には、高圧の水素ガスによるブリスタ破壊が生じにくい特性に加えて、ガスの充填が繰り返されることによる圧力差および温度差による負荷にも耐える特性が求められる。本発明の高圧水素容器は、シール材料としてポリテトラフルオロエチレンが用いられていることを特徴とするので、圧力差および温度差による負荷によりシールが劣化することがなく、ブリスタ破壊によるき裂が生じることもない。
【0038】
圧力が70MPa以上の水素を流通させるための配管機器において、ポリテトラフルオロエチレンからなるシールを備えることを特徴とする配管機器も本発明の1つである。当該配管機器はバルブまたは継手であることが好適である。
【0039】
次にポリテトラフルオロエチレンからなるシールの水素暴露実験の結果を説明する。
【0040】
〔平衡水素量の測定〕
ダイキン工業製ポリテトラフルオロエチレンを用い、φ13.0mm×2.0mmの円板状試験片を作製し、作製した円板状試験片を圧力0.7〜100MPa、30℃の水素ガスに24時間暴露した。この暴露時間は、試験片中の水素量が平衡状態に達するのに充分な時間である。暴露後、試験片から放出される水素を温度30℃に保ったガスクロマトグラフ式水素昇温脱離分析装置(TDA)で測定した。平衡水素量(CH0)は、International Journal of Hydrogen Energy Volume 34, February 2009, Pages 1977−1989に記載の方法で算出した。
【0041】
次に、EPDMおよびNBRの平衡水素量についても同様に測定した。これらの結果を図6に示す。
【0042】
EPDMおよびNBRの水素量はともに水素暴露圧力(p)が10MPa以下ではヘンリーの法則に従い、平衡水素量(CH0)は水素暴露圧力(p)に比例する。これに対し、ポリテトラフルオロエチレンは、水素暴露圧力(p)が20MPa以下の範囲ではヘンリーの法則に従い、水素暴露圧力(p)が30〜50MPaで平衡水素量(CH0)が極大値を示した。更に、水素暴露圧力(p)が50MPaを超えると、平衡水素量(CH0)は20MPa以下の範囲での平衡水素量(CH0)と同等の値を示した。
【0043】
〔水素暴露後のブリスタ観察〕
ダイキン工業製ポリテトラフルオロエチレンを用い、φ29.0mm×12.5mmの円板状試験片を作製し、圧力100MPa、30℃の水素ガスに65時間暴露した。暴露後の表面状態を顕微鏡により観察した。同様にEPDMから試験片を作製し、圧力100MPa、30℃の水素ガスに65時間暴露し、暴露後の表面状態を顕微鏡により観察した。結果を図7及び図8に示す。
【符号の説明】
【0044】
1,2 高圧ガス供給システム
11 液体水素保存タンク
12 圧縮機
13 蓄圧器
14 ディスペンサー
15 水素供給ホース
16 ノズル
27 直接充填圧縮機
100 車両
101 レセプタクル
3,4 管継手部材
30,40 ノズル
34,44 レセプタクル
35,45 差込口
36,46 流路
31,33,42,43 シール(Oリング)
32,41 バックアップリング
5 高圧水素容器
51 バルブ
52 シール
53 ライナー
54 外装

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレンからなることを特徴とする、圧力が70MPa以上の水素ガスと接触してもブリスタが発生しないシール。
【請求項2】
Oリングである請求項1記載のシール。
【請求項3】
ノズルと、
前記ノズルから高圧の水素ガスを受け入れるレセプタクルと、
圧力が70MPa以上の水素ガスが通過する流路と、
前記ノズル及び前記レセプタクルの一方又は両方に設置された、前記流路からの水素ガスの漏洩を防ぐためのシールと、を備え、
前記シールがポリテトラフルオロエチレンからなる
ことを特徴とする高圧水素ガス用管継手部材。
【請求項4】
ポリテトラフルオロエチレンからなるシールを備えることを特徴とする、圧力70MPa以上の水素を供給するためのノズル。
【請求項5】
ポリテトラフルオロエチレンからなるシールを備えることを特徴とする、圧力70MPa以上の水素を受け入れるためのレセプタクル。
【請求項6】
圧力が70MPa以上の水素ガスが充填される高圧水素容器であって、ポリテトラフルオロエチレンからなるシールを備えることを特徴とする高圧水素容器。
【請求項7】
圧力が70MPa以上の水素ガスを流通させるための配管機器であって、ポリテトラフルオロエチレンからなるシールを備えることを特徴とする配管機器。
【請求項8】
バルブまたは継手である請求項7記載の配管機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−47306(P2012−47306A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191381(P2010−191381)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】