説明

ジアリールメチリデンピペリジン誘導体、その製造およびその使用

一般式:式(I)(式中、R1、R2、R3およびR4は本明細書中に定義される)の化合物、ならびにその塩、エナンチオマーおよび当該化合物を含む医薬組成物を製造する。当該化合物は、治療、特に痛みの処置に有用である。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物、それらの製造方法、それらの使用および当該新規な化合物を含有する医薬組成物に関する。新規な化合物は治療に、そして特に痛み、不安症および機能性胃腸障害の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
この受容体は、多くの身体機能、例えば循環系および痛みの系に役割を有するとして同定された。したがって、δ受容体のリガンドは鎮痛剤としておよび/または抗高血圧剤としての潜在的な使用が見出され得る。δ受容体のリガンドはまた、免疫調節活性を有することがわかっている。
【0003】
オピオイド受容体(μ、δおよびκ)の少なくとも3つの異なる集団の同定は、今では十分に確立され、そして3つ全てがヒトを含む多くの種の中枢および末梢神経系の両方において明らかである。痛覚脱失は、これらの受容体の1またはそれ以上が活性化された場合に、種々の動物モデルで観察された。
【0004】
ほとんど例外なく、現在市販の選択的オピオイドδリガンドは、本質的にペプチド性であり、そして全身性の経路による投与に不適である。非ペプチド性のδ−アゴニストの一例はSNC80である(Bilsky E. J.他, Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, 273(1), 第359-366頁(1995))。
【0005】
先行技術において同定されている多くのδアゴニスト化合物は、それらの不十分な薬物動態のために多くの不都合を有し、そして全身経路により投与される場合、鎮痛性を有さない。また、これらのδアゴニスト化合物の多くは、全身的に投与された場合、顕著に痙攣性の作用を示すことが立証された。
【0006】
Delorme他に付与されたU.S.特許第6,187,792号には、いくつかのδ−アゴニストが記載されている。
しかし、改善されたδ−アゴニストに対する必要性はなお存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の基礎をなしている課題は、改善された鎮痛剤作用を有するだけでなく、現在のμアゴニストより改善された副作用プロフィールを伴い、ならびに改善された全身性の有効性もまた有する新規な鎮痛剤を見つけることであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、驚くべきほどに改善された特性、すなわち改善されたδアゴニスト効力、インビボ効力、薬物動態、生物学的利用能、インビトロ安定性および/またはより低い毒性を示す特定の化合物を、ここに見出した。
【0009】
したがって、改善されたδ受容体リガンドを提供することが、本発明の特定の実施形態の目的である。
【0010】
本明細書内で特定しない限り、本明細書中に用いられる命名法は、Nomenclature of Organic Chemistry, Sections A, B, C, D, E, F, and H, Pergamon Press, Oxford, 1979に明示された例および規則に従い、これは、その例示的な化学構造名および化学構造を命名する規則のために、本明細書中に参照により加入される。場合により、化合物の名称は、化学命名プログラム:ACD / ChemSketch, Version 5.09 / September 2001, Advanced Chemistry Development, Inc., Toronto, Canadaを用いて得ることができる。
【0011】
単独または接頭辞として用いられる用語「Cm-n」または「Cm-n基」は、m〜n個の炭素原子を有する任意の基を意味する。
【0012】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「炭化水素」は、炭素原子および水素原子のみを含み、炭素原子が最大14個までの任意の構造を意味する。
【0013】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「炭化水素基」または「ヒドロカルビル」は、1つまたはそれ以上の水素を炭化水素から除去する結果として生じる任意の構造を意味する。
【0014】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「アルキル」は、1〜約12個の炭素原子を含む一価の直鎖または分岐鎖の炭化水素基を意味する。特に明記しない限り、全般的に「アルキル」は、飽和アルキルおよび不飽和アルキル両方を含む。
【0015】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「アルキレン」は、1〜約12個の炭素原子を含む二価の直鎖または分岐鎖の炭化水素基を意味し、そしてこれは2つの構造を一緒に結合させる役目を果たす。
【0016】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有し、そして少なくとも2〜最大約12個の炭素原子を含む一価の直鎖または分岐鎖の炭化水素基を意味する。
【0017】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有し、そして少なくとも2〜最大約12個の炭素原子を含む一価の直鎖または分岐鎖の炭化水素基を意味する。
【0018】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「シクロアルキル」は、少なくとも3〜最大約12個の炭素原子を含む一価の環含有炭化水素基を意味する。
【0019】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「シクロアルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有し、そして少なくとも3〜最大約12個の炭素原子を含む一価の環含有炭化水素基を意味する。
【0020】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「シクロアルキニル」は、少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有し、そして少なくとも約7〜最大約12個の炭素原子を含む一価の環含有炭化水素基を意味する。
【0021】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「アリール」は、芳香族的特徴(例えば4n+2非局在化電子)を有している1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭素環を有し、そして5〜最大約14個の炭素原子を含む一価の炭化水素基を意味する。
【0022】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「アリーレン」は、芳香族的特徴(例えば4n+2非局在化電子)を有している1つまたはそれ以上のポリ不飽和炭素環を有し、そして5〜最大約14個の炭素原子を含む二価の炭化水素基を意味し、これは2つの構造を一緒に結合させる役目を果たす。
【0023】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「複素環」は、1つまたはそれ以上の多価ヘテロ原子(環構造の一部として、独立してN、OおよびSから選択される)を有し、そしてその環に少なくとも3個〜最大約20個までの原子を含む環含有構造または分子を意味する。複素環は飽和でも、または1つもしくはそれ以上の二重結合を含む不飽和でもよく、そして複素環は2個以上の環を含んでもよい。複素環が2個以上の環を含む場合、この環は縮合または非縮合であってよい。縮合環は一般に、少なくとも2個の環の間に2個の原子を共有する環を意味する。複素環は、芳香族的特徴を有してもよいし、または芳香族的特徴を有さなくてもいい。
【0024】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「ヘテロアルキル」は、N、OおよびSから選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子によりアルキルの1つまたはそれ以上の炭素原子が置換された結果として形成される基を意味する。
【0025】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「複素環式芳香族」は、環構造の一部としてN、OおよびSから独立して選択される1つまたはそれ以上の多価ヘテロ原子を有し、そして環中に少なくとも3個〜最大約20個までの原子を含む環含有構造または分子を意味し、ここで環含有構造または分子は芳香族的特徴(例えば4n+2非局在化電子)を有する。
【0026】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「複素環式基」、「複素環式部分」、「複素環の」または「ヘテロシクロ」は、1つまたはそれ以上の水素がそこから除去されることによる複素環に由来する基を意味する。
【0027】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「ヘテロシクリル」は、そこから1つの水素が除去されることによる複素環に由来する一価の基を意味する。
【0028】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「ヘテロシクリレン」は、2つの水素が除去されることによる複素環に由来する二価の基を意味し、これは2つの構造を一緒に結合させる役目を果たす。
【0029】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「ヘテロアリール」は、芳香族的特徴を有するヘテロシクリルを意味する。
【0030】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「ヘテロシクロアルキル」は、芳香族的特徴を有さないヘテロシクリルを意味する。
【0031】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「ヘテロアリーレン」は、芳香族的特徴を有するヘテロシクリレンを意味する。
【0032】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「ヘテロシクロアルキレン」は、芳香族的特徴を有さないヘテロシクリレンを意味する。
【0033】
接頭辞として用いられる用語「6員」は、6つの環原子を含む環を有する基を意味する。
【0034】
接頭辞として用いられる用語「5員」は、5つの環原子を含む環を有する基を意味する。
【0035】
5員環ヘテロアリールは、5つの環原子を有する環を伴うヘテロアリールであり、ここで1、2または3つの環原子は独立してN、OおよびSから選択される。
【0036】
例示的な5員環ヘテロアリールは、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、1,2,3−トリアゾリル、テトラゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−トリアゾリル、1,3,4−チアジアゾリルおよび1,3,4−オキサジアゾリルである。
【0037】
6員環ヘテロアリールは、6つの環原子を有する環を伴うヘテロアリールであり、ここで1、2または3つの環原子は独立してN、OおよびSから選択される。
【0038】
例示的な6員環ヘテロアリールは、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニルおよびピリダジニルである。
【0039】
接頭辞として用いられる用語「置換された」は、1つもしくはそれ以上の水素が、1つもしくはそれ以上のC1-12の炭化水素基、またはN、O、S、F、Cl、Br、IおよびPから選択される1つもしくはそれ以上のヘテロ原子を含む1つもしくはそれ以上の化学基により置換される、構造、分子または基を意味する。1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含む例示的な化学基としては、ヘテロシクリル、−NO2、−OR、−Cl、−Br、−I、−F、−CF3、−C(=O)R、−C(=O)OH、−NH2、−SH、−NHR、−NR2、−SR、−SO3H、−SO2R、−S(=O)R、−CN、−OH、−C(=O)OR、−C(=O)NR2、−NRC(=O)R、オキソ(=O)、イミノ(=NR)、チオ(=S)およびオキシイミノ(=N−OR)が挙げられ、ここで各「R」はC1-12ヒドロカルビルである。例えば、置換されたフェニルはニトロフェニル、ピリジルフェニル、メトキシフェニル、クロロフェニル、アミノフェニルなどを意味することができ、ここでニトロ、ピリジル、メトキシ、クロロおよびアミノ基は、フェニル環上の任意の適当な水素と交換されてもよい。
【0040】
化学基の1つまたはそれ以上の名称が後に続く、第一の構造、分子または基の接尾辞として用いられる用語「置換」は、第2の構造、分子または基を意味し、これは、1つまたはそれ以上の名づけられた化学基によって第一の構造、分子または基の1つまたはそれ以上の水素が置換されることの結果である。例えば「ニトロによって置換されたフェニル」はニトロフェニルを意味する。
【0041】
用語「場合により置換された」は、置換された基、構造または分子および置換されていないそれらの両方を意味する。
【0042】
例えば、複素環は、単環式複素環、例えばアジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ジオキソラン、スルホラン2,3−ジヒドロフラン、2,5−ジヒドロフランテトラヒドロフラン、チオファン、ピペリジン、1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ピラン、チオピラン、2,3−ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジヒドロピリジン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、ジオキサン、ホモピペリジン、2,3,4,7−テトラヒドロ−1H−アゼピンホモピペラジン、1,3−ジオキセパン、4,7−ジヒドロ−1,3−ジオキセピンおよびヘキサメチレン酸化物を含む。
【0043】
更に、複素環は、芳香族複素環、例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、チオフェン、フラン、フラザン、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、1,2,3−トリアゾール、テトラゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,3,4−トリアゾール、1,3,4−チアジアゾールおよび1,3,4−オキサジアゾールを含む。
【0044】
さらに、複素環は、多環式複素環、例えばインドール、インドリン、イソインドリン、キノリン、テトラヒドロキノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、1,4−ベンゾジオキサン、クマリン、ジヒドロクマリン、ベンゾフラン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、イソベンゾフラン、クロメン、クロマン、イソクロマン、キサンテン、フェノキサチイン、チアントレン、インドリジン、イソインドール、インダゾール、プリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、フェナントリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、1,2−ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、チオキサンチン、カルバゾール、カルボリン、アクリジン、ピロリジンおよびキノリジジンを含む。
【0045】
上記多環式複素環に加えて、複素環は、2つまたはそれ以上の環の間の環縮合が、両方の環に共通の2つ以上の結合および両方の環に共通の3つ以上の原子を含む多環式複素環を含む。このような架橋された複素環の例は、キヌクリジン、ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタンおよび7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタンを含む。
【0046】
ヘテロシクリルは、例えば単環式複素環、例えばアジリジニル、オキシラニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ジオキソラニル、スルホラニル、2,3−ジヒドロフラニル、2,5−ジヒドロフラニル、テトラヒドロフラニル、チオファニル、ピペリジニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、チオピラニル、2,3−ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、1,4−ジヒドロピリジニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキサニル、ジオキサニル、ホモピペリジニル、2,3,4,7−テトラヒドロ−1H−アゼピニル、ホモピペラジニル、1,3−ジオキセパニル、4,7−ジヒドロ−1,3−ジオキセピニルおよびヘキサメチレンオキシジルを含む。
【0047】
さらに、ヘテロシクリルは、芳香族複素環またはヘテロアリール、例えばピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チエニル、フリル、フラザニル、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、1,2,3−トリアゾリル、テトラゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−トリアゾリル、1,3,4−チアジアゾリルおよび1,3,4−オキサジアゾリルを含む。
【0048】
さらに、ヘテロシクリルは、多環式ヘテロシクリル(芳香族または非−芳香族の両方を含む)、例えばインドリル、インドリニル、イソインドリニル、キノリニル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、1,4−ベンゾジオキサニル、クマリニル、ジヒドロクマリニル、ベンゾフラニル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、クロマニル、イソクロマニル、キサンテニル、フェノキサチイニル、チアンスレニル、インドリジニル、イソインドリル、インダゾリル、プリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、フェナントリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、1,2−ベンゾイソキサゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、チオキサンチニル、カルバゾリル、カルボリニル、アクリジニル、ピロリジジニルおよびキノリジジニルを含む。
【0049】
上記の多環式ヘテロシクリルに加えて、ヘテロシクリルは、2つまたはそれ以上の環の間の環縮合が、両方の環に共通する2つ以上の結合および両方の環に共通する3つ以上の原子を含む多環式ヘテロシクリルを含む。このような架橋された複素環の例は、キヌクリジニル、ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプチル;および7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプチルを含む。
【0050】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「アルコキシ」は、一般式−O−Rの基を意味し、ここでRは炭化水素基から選択される。例示的なアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、イソブトキシ、シクロプロピルメトキシ、アリルオキシおよびプロパルギルオキシを含む。
【0051】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「アミン」または「アミノ」は、一般式−NRR’の基を意味し、ここでRおよびR’は水素または炭化水素基から独立して選択される。
【0052】
単独または接尾辞もしくは接頭辞として用いられる用語「アシル」は、−C(=O)−Rを意味し、ここでRは場合により置換されたヒドロカルビル、水素、アミノまたはアルコキシである。アシル基は、例えばアセチル、プロピオニル、ベンゾイル、フェニルアセチル、カルボエトキシおよびジメチルカルバモイルを含む。
【0053】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
【0054】
基の接頭辞として用いられる「ハロゲン化」は、基における1つまたはそれ以上の水素が、1つまたはそれ以上のハロゲンにより置換されることを意味する。
【0055】
「RT」または「rt」は室温を意味する。
【0056】
第二の環基と「縮合」された第一の環基は、第一の環と第二の環とがその間に少なくとも2つの原子を共有することを意味する。
【0057】
「結合する」、「結合される」、または「結合」は、特に明記しない限り、共有結合を意味する。
【0058】
一形態において、本発明は、式I:
【化1】

の化合物、その製薬上許容される塩、そのジアステレオマー、そのエナンチオマーおよびそれらの混合物を提供し、式中、
1は水素、C1-6アルキル−O−C(=O)−、場合により置換されたC1-6アルキル、場合により置換されたC3-6シクロアルキル、場合により置換されたC6-10アリール、場合により置換されたC2-9ヘテロシクリル、場合により置換されたC6-10アリール−C1-3アルキルおよび場合により置換されたC2-9ヘテロシクリル−C1-3アルキルから選択され;
2およびR3は、独立して、水素、場合により置換されたC1-6アルキルおよび場合により置換されたC3-6シクロアルキルから選択され; そして
4は場合により置換されたC3-6アルキル、場合により置換されたC3-8シクロアルキル、場合により置換されたC6-10アリール、場合により置換されたC2-9ヘテロシクリル、場合により置換されたC6-10アリール−C1-6アルキル、および場合により置換されたC2-9ヘテロシクリル−C1-6アルキルから選択される。
【0059】
具体的には、本発明の化合物は式Iの化合物であって、式中、
1は水素、C1-6アルキル−O−C(=O)−、場合により置換されたC1-6アルキルおよび場合により置換されたC3-6シクロアルキルから選択され;
2およひR3はエチルであり;そして
4はフェニル、C3-5ヘテロシクリル、フェニル−C1-3アルキル、C3-5ヘテロシクリル−C1-3アルキル、C3-6シクロアルキル、およびC3-6シクロアルキル−C1-3アルキルから選択され、ここでR4は場合により、C1-6アルキル、ハロゲン化C1-6アルキル、−NO2、−CF3、C1-6アルコキシ、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードから選択される1またはそれ以上の基で置換される。
【0060】
より具体的には、本発明の化合物は式Iの化合物であって、式中、
1は水素、C1-6アルキル−O−C(=O)−から選択され;
2およひR3はエチルであり;そして
4はフェニル−C1-3アルキル、C3-6シクロアルキル−C1-3アルキル、C3-6シクロアルキルおよびフェニルから選択される。
【0061】
もっとも具体的には、本発明の化合物は式Iの化合物であって、式中、
1は水素およびt−ブチル−O−C(=O)−から選択され;
2およひR3はエチルであり;そして
4はフェニル、ベンジル、フェネチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルから選択される。
【0062】
本発明の化合物が1またはそれ以上のキラル中心を含む場合、本発明の化合物は、鏡像異性形態もしくはジアステレオマー形態として、又はラセミ混合物として存在してもよいし、そして当該形態またはラセミ混合物として単離されてもよいことが理解される。本発明は、式Iの化合物の、任意の可能なエナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体またはそれらの混合物を含む。本発明の化合物の光学的活性形態は、例えば、ラセミ体のキラルクロマトグラフィー分離により、光学活性出発物質からの合成により、または以下に記載の手順に基づく不斉合成により製造することができる。
【0063】
本発明の特定の化合物が、幾何学的異性体、例えばアルケンのEおよびZ異性体として存在してもよいことがまた認められる。本発明は、式Iの化合物の任意の幾何学的異性体を含む。本発明が式Iの化合物の互変異性体を含むことがさらに理解される。
【0064】
また、本発明の特定の化合物が、溶媒和形態、例えば水和形態、および非水和形態で存在してよいことも理解される。本発明が式Iの化合物の全てのこのような溶媒和形態を含むことが、さらに理解される。
【0065】
式Iの化合物の塩もまた、本発明の範囲内にある。通常、本発明の化合物の製薬上許容される塩は、当業者に周知の標準的手順を用いて、例えば十分に塩基性の化合物、例えばアルキルアミンを、適当な酸、例えばHClまたは酢酸と反応させ、生理的に許容されるアニオンを得ることにより、得ることができる。例えばカルボン酸またはフェノールのような適当な酸性プロトンを有する本発明の化合物を、一当量のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属水酸化物もしくはアルコキシド(例えばエトキシドまたはメトキシド)、または水性媒体中の適当に塩基性の有機アミン(例えばコリンまたはメグルミン)で処理し、引き続き従来の精製技術によって、対応するアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウムもしくはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩を製造することもまた、可能であり得る。
【0066】
一実施形態において、上記の式Iの化合物は、製薬上許容される塩またはその溶媒和化合物、特に酸付加塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩または、p−トルエンスルホン酸塩に変換されてもよい。
【0067】
本発明の新規な化合物は、治療において、特に種々の痛みの状態、例えば慢性的な痛み、神経障害性の痛み、急性の痛み、癌性疼痛、関節リウマチによって生じる痛み、偏頭痛、内臓痛などの治療に有用である。しかしながら、このリストは、余すところがないとして解釈されるべきでない。
【0068】
本発明の化合物は、下痢、うつ病、不安症およびストレス関連疾患、例えば心的外傷後ストレス障害、パニック障害、全般性不安障害、対人恐怖および強迫神経症、尿失禁、早漏、種々の精神障害、咳、肺臓浮腫、種々の胃腸障害、例えば便秘、機能性胃腸障害、例えば過敏性腸症候群および機能性消化不良、パーキンソン病およびその他の運動障害、外傷性脳損傷、卒中、心筋梗塞後の心臓保護、脊髄損傷および薬物中毒(アルコール、ニコチン、オピオイドおよび他の薬物濫用を含む)の治療、ならびに交感神経系の疾患、例えば高血圧に有用である。
【0069】
本発明の化合物は、特に自己免疫疾患、例えば関節炎のため、皮膚移植、臓器移植および類似の外科的必要性のため、コラーゲン病、種々のアレルギーのため、抗−腫瘍薬剤および抗ウイルス剤としての使用のための、免疫調節薬として有用である。
【0070】
本発明の化合物は、オピオイド受容体の変性または機能不全がそのパラダイムに存在または関係する疾患状態において有用である。これは、診断技術およびポジトロン放出断層撮影(PET)のような画像診断用途における本発明の化合物の同位元素に標識されたバージョンの使用を含み得る。
【0071】
本発明の化合物は、全身麻酔およびモニターされた麻酔治療の間の使用のための鎮痛剤として有用である。異なる特性を有する薬剤の組み合わせは、麻酔状態(例えば記憶喪失、痛覚欠如、筋弛緩および鎮静状態)を維持するために必要とされる効果のバランスを達成するためにしばしば用いられる。吸入される麻酔薬、催眠薬、不安緩解剤、神経筋遮断薬およびオピオイドは、この組み合わせにおいて含まれる。
【0072】
医薬の製造のための上記の式Iの任意の化合物の使用は、本発明の範囲内にある。
【0073】
また、痛みの治療のための医薬の製造のための本発明の任意の化合物の使用も本発明の範囲内にあり、当該痛みは、これらに限定されないが、急性の痛み、慢性の痛み、神経障害性の痛み、背痛、癌性疼痛および内臓痛を含む。
【0074】
不安症の治療のための医薬の製造のための、本発明の任意の化合物の使用もまた、本発明の範囲内にある。
【0075】
上記の状態のいずれかの治療のための医薬の製造のための、本発明の任意の化合物の使用もまた、本発明の範囲内にある。
【0076】
本発明の更なる形態は、上記の状態のいずれかを患う患者の治療方法であり、ここで有効量の本発明の化合物が当該治療を必要とする患者に投与される。
【0077】
したがって、本発明は、治療における使用のために上記で定義される、式Iの化合物、またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和化合物を提供する。
【0078】
本願明細書との関連で、反対の特定の指示がない限り、用語「治療」は「予防」も含む。用語「治療的」および「治療的に」は、適宜解釈されるべきである。本発明の背景の範囲内の用語「治療」はさらに、有効量の本発明の化合物を投与し、既存の疾患状態、急性もしくは慢性の状態または繰り返される状態のいずれかを緩和することを包含する。この定義はまた、繰り返される状態の予防のための予防的治療および慢性疾患のための継続的治療を含む。
【0079】
ヒトのような温血動物の治療のための使用において、本発明の化合物は、従来の医薬組成物の形で、任意の経路によって、例えば経口的に、筋内に、皮下に、局所的に、鼻腔内に、腹膜内に、胸郭内に、静脈内に、硬膜外に、髄膜下に、脳室内に、および関節への注射によって、投与されてもよい。
【0080】
本発明の一実施形態において、投与の経路は、経口的、静脈内または筋内であってもよい。
【0081】
投薬は、特定の患者にもっとも適当な個人の処方計画および投与レベルを決定する場合、投与経路、患者の疾患の重さ、年齢および体重、ならびに主治医によって通常考慮される他の要因による。
【0082】
さらに、式Iの化合物、その溶媒和化合物、またはその製薬上許容される塩を、製薬上許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。
【0083】
特に、治療、より具体的には痛みおよび不安症の治療のための、式Iの化合物、その溶媒和化合物、またはその製薬上許容される塩を、製薬上許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。
【0084】
さらに、上記の状態のいずかにおける使用のための、式Iの化合物、その溶媒和化合物、またはその製薬上許容される塩を、製薬上許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。
【0085】
本発明の化合物から医薬組成物を製造するために、不活性の、製薬上許容される担体は、固体および液体のいずれかであることができる。固体形態の製剤は、粉剤、錠剤、分散可能な顆粒剤、カプセル、カシェ剤および坐薬を含む。
【0086】
固体担体は1つまたはそれ以上の物質であってよく、そしてそれはまた、希釈剤、香料、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤またはテーブル崩壊剤(table disintegrating agent)として作用してもよく;それはまた、封入材であってよい。
【0087】
粉剤において、担体は微粉化された固体であり、そしてそれは微粉化された本発明の化合物または活性成分との混合物である。錠剤において、活性成分は、適当な比率で必要な結合特性を有する担体と混合され、そして所望の形状およびサイズに圧縮される。
【0088】
坐薬組成物を製造するために、低融点ワックス、例えば脂肪酸グリセリドおよびカカオバターの混合物が最初に融解され、そして活性成分を例えば撹拌によりそこに分散させる。次いで、融解された均一な混合物を都合のいい大きさの型に注ぎ、そして冷やし固める。
【0089】
適当な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、乳糖、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカンタ、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバターなどである。
【0090】
組成物なる用語はまた、カプセルを提供する担体として封入材を伴う活性成分の製剤を含むことも意図され、カプセル中、活性成分(他の担体の有無にかかわらない)は担体によって囲まれ、したがって担体は活性成分と結合する。同様に、カシェ剤が含まれる。
【0091】
錠剤、粉剤、カシェ剤およびカプセルは、経口投与に適当な固体投薬形態として用いることができる。
【0092】
液状形態組成物は、液剤、懸濁剤およびエマルションを含む。例えば、活性化合物の無菌水またはプロピレングリコール水溶液は、非経口投与のために適当な液体製剤であり得る。液状組成物はまた、ポリエチレングリコール水溶液の溶液に処方されることができる。
【0093】
経口投与のための水溶液は、水に活性成分を溶解し、そして所望の適当な着色剤、香料、安定剤および増粘剤を添加することによって製造することができる。経口的使用についての水性懸濁剤は、微粉化された活性成分を、水中に、粘性物質、例えば天然の合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び医薬製剤技術で知られている他の懸濁化剤と共に分散させることによって製造することができる。
【0094】
投与様式により、医薬組成物は、好ましくは本発明の化合物の0.05%〜99%w(体重によるパーセント)、より好ましくは0.10〜50%wを含み、体重による全てのパーセンテージは合計の組成物に基づく。
【0095】
本発明の実施のための治療的に有効な量は、当業者により、公知の基準の使用、例えば個々の患者の年齢、体重および反応により決定されてもよいし、そして治療を受けているかまたは予防されている疾患の状況の範囲内で判断されてもよい。
【0096】
更なる形態において、本発明は本発明の化合物を製造する方法を提供する。
【0097】
一実施形態において、本発明は、式I
【化2】

の化合物を製造する方法を提供し、該方法は
式II
【化3】

の化合物をR4−Xと反応させることを含み、
式中、R1はC1-6アルキル−O−C(=O)−、場合により置換されたC1-6アルキルおよび場合により置換されたC3-6シクロアルキルから選択され;
2およひR3はエチルであり;
XはCl、I、Br、OTfおよびOTsから選択され;そして
4はフェニル、C3-5ヘテロシクリル、フェニル−C1-3アルキル、C3-5ヘテロシクリル−C1-3アルキル、C3-6シクロアルキル、およびC3-6シクロアルキル−C1-3アルキルから選択され、ここでR4は、C1-6アルキル、ハロゲン化C1-6アルキル、−NO2、-CF3、C1-6アルコキシ、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードから選択される1またはそれ以上の基で場合により置換される。
【0098】
特に、本発明は、上記の式Iの化合物を製造する方法を提供し、式中
1はC1-6アルキル−O−C(=O)−であり;
XはCl、IおよびBrから選択され;
2およひR3はエチルであり;そして
4はフェニル−C1-3アルキル、C3-6シクロアルキル−C1-3アルキルおよびC3-6シクロアルキルから選択される。
【0099】
第2の実施形態において、本発明は、式I
【化4】

の化合物を製造する方法を提供し、該方法は、
式III
【化5】

の化合物をR4−OHと反応させることを含み、
式中、
1はC1-6アルキル−O−C(=O)−、場合により置換されたC1-6アルキルおよび場合により置換されたC3-6シクロアルキルから選択され;
2およびR3はエチルであり;
Lは−S(=O)2−CF3
【化6】

【化7】

および−S(=O)2−CH3から選択され;そして
4はフェニル、C3-5ヘテロシクリル、フェニル−C1-3アルキル、C3-5ヘテロシクリル−C1-3アルキル、C3-6シクロアルキルおよびC3-6シクロアルキル−C1-3アルキルから選択され、ここでR4は場合によりC1-6アルキル、ハロゲン化C1-6アルキル、−NO2、−CF3、C1-6アルコキシ、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードから選択される1またはそれ以上の基で置換される。
【0100】
具体的には、本発明は、上記の式Iの化合物を製造する方法を提供し、ここで
1はC1-6アルキル−O−C(=O)−であり;
2およびR3はエチルであり;
Lは−S(=O)2−CF3であり;そして
4は、独立して、フェニル−C1-3アルキル、C3-6シクロアルキル−C1-3アルキル、C3-6シクロアルキル、フェニルおよびC3-6アルキルから選択される。
【0101】
より具体的には、本発明の化合物およびその製造に用いられる中間体は、スキーム1〜3に例示される合成経路に従って製造することができる。
【0102】
【化8】

【0103】
【化9】

【0104】
生物学的評価
本発明の化合物は、温血動物、例えばヒトのδ受容体に対して活性であることが見出された。特に、本発明の化合物は効果的なδ受容体リガンドであることが見出された。後述のインビトロアッセイは、特に、ラット脳機能アッセイおよび/またはヒトδ受容体機能アッセイ(低)において示されたようなアゴニスト効力および有効性に関して、これらの驚くべき活性を証明した。この特性は生体内の活性に関連すると考えられ、結合親和性に直線的に相関するものではないかも知れない。これらのインビトロアッセイにおいて、化合物をそれらのδ受容体に対する活性について試験し、IC50を得て、特定の化合物のδ受容体に対する選択的活性を決定した。本発明との関連において、一般にIC50とは、標準的放射活性δ受容体リガンドの50%置換が観察される化合物濃度を指す。
κおよびμ受容体に対する本化合物の活性もまた、同様のアッセイにおいて測定した。
【0105】
インビトロモデル
細胞培養
クローン化されたヒトκ、δおよびμ受容体、並びにネオマイシン耐性を発現するヒト293S細胞を、カルシウムを含まないDMEM10%FBS、5%BCS、0.1%Pluronic F−68、および600μg/mLゲネチシンを入れた振蕩フラスコ中で、37℃および5%CO2で懸濁培養した。
ラット脳を計量し、氷冷PBS(2.5mM EDTA、pH7.4を含む)でリンスした。脳を、氷冷リシスバッファー(50mM Tris、pH7.0、2.5mM EDTA、使用直前にフェニルメチルスルホニルフルオリドをDMSO:エタノール中の0.5Mストックから0.5mMとなるように添加)中で、ポリトロンで30秒間(ラット)ホモジナイズした。
【0106】
膜調製
細胞をペレット化して、リシスバッファー(50mM Tris、pH7.0、2.5mM EDTA、使用直前にPMSFをエタノール中の0.1Mストックから0.1mMとなるように添加)に再懸濁し、氷上で15分間インキュベートし、ポリトロンで30秒間ホモジナイズした。懸濁液を、4℃で10分間、1000g(最大)で遠心分離した。上清を氷上に保存し、ペレットを再懸濁して前と同様に遠心分離した。両方の遠心分離からの上清を一緒にして、30分間46,00
0g(最大)で遠心分離した。ペレットを冷Trisバッファー(50mM Tris/Cl、pH7.0)に再懸濁し、再び遠心分離した。最終的なペレットを、膜バッファー(50mM Tris、0.32Mスクロース、pH7.0)に再懸濁した。ポリプロピレンチューブ中のアリコート(1mL)をドライアイス/エタノール中で冷凍し、使用するまで−70℃で保存した。タンパク質濃度を、ナトリウムドデシルスルフェートを用いた改変Lowryアッセイで測定した。
【0107】
結合アッセイ
膜を、37℃で解凍し、氷上で冷却し(またはすぐに用いない場合、氷上に保持し)、25ゲージ針に3回通して、結合バッファー(50mM Tris、3mM MgCl2、1mg/mL BSA(Sigma A-7888)、pH7.4)に希釈し、これを0.22mフィルターに通して濾過した後、4℃で保存し、そしてその膜が組織に由来する場合(ラット、マウス、サル、DTTなし)、これに5μg/mLアプロチニン、10μMベスタチン、10μMジプロチンAを新たに添加した。アリコート100μLを、適当な放射性リガンド100μLおよび試験化合物100μLを様々な濃度で含む氷冷12×75mmポリプロピレンチューブに加えた。全体の(TB)および非特異的(NS)結合を、ナロキソン10μMの非存在下および存在下のそれぞれで測定した。チューブをボルテックスし、25℃で60〜75分間インキュベートした後、内容物を0.1%ポリエチレンイミンに少なくとも2時間浸したGF/Bフィルター(Whatman)に通して、迅速に吸引濾過し、氷冷洗浄バッファー(50mM Tris、pH7.0、3mM MgCl2)、約12mL/チューブで洗浄した。フィルターをシンチレーション液6〜7mLを含むミニバイアル中に少なくとも12時間浸した後に、フィルター上に残った放射活性(dpm)をベータカウンターで計測した。アッセイが96穴ディープウエルプレート(96-place deep well plates)で組み立てられている場合、濾過は96穴PEI洗浄ユニフィルター上で行い、これを洗浄バッファー3×1mlで洗浄し、オーブンで55℃、2時間乾燥する。フィルタープレートは、1ウエル当たりMS−20シンチレーション液50μlを加えた後、TopCount(Packard)でカウントする。アッセイが、96ディープウエルプレートで行われる場合、化合物のIC50は、δ受容体の場合、10点置換曲線、及びμ受容体及びκ受容体の場合、5点置換曲線から評価される。アッセイは、膜タンパク質の適切量(δ、μ及びκの場合、それぞれ、2μg、35μg及び1μg)及び適切なトレーサー(δ、μ、及びκの場合、それぞれ、125I-Deltorphin II、125I-FK33824、及び125I-DPDYN)の50000〜80000dpm/ウェルと共に300μlで行われる。総結合及び非特異的結合は、ナロキソンの10μMの存在下及び非存在下で決定される。
【0108】
機能性アッセイ
化合物のアゴニスト活性は、化合物受容体複合体が、受容体が共役するGタンパク質へのGTPの結合を活性化する程度を決定することによって測定される。GTP結合アッセイにおいて、GTP[γ]35Sは、試験化合物、及びクローン化ヒトオピオイド受容体を発現するHEK−293S細胞、又は、ホモジナイズしたラット又はマウス脳からの膜と合わせる。アゴニストは、これらの膜においてGTP[γ]35S結合を促進する。化合物のEC50及びEmax値は、用量−反応曲線から決定される。δアゴニストのナルトリンドールによる用量−反応曲線の右シフトは、アゴニスト活性がδ受容体を通して媒介されていることを実証するために行われる。ヒトδ受容体機能性アッセイのために、アッセイにおいて使用されたヒトδ受容体がEC50(高)を決めるために使用されたものと比較して低レベルで発現されたときに、EC50(低)が測定される。Emax値は、標準δアゴニストSNC80に対して相対的に決定された。即ち、100%より高い値は、SNC80よりよい効率を有する化合物である。
【0109】
ラット脳GTPのための手順
ラット脳の膜を37℃で解凍し、25ゲージの平滑端針に3回通し、GTPγS結合バッファー(50mM ヘペス、20mM NaOH、100mM NaCl、1mM EDTA、5mM MgCl2、pH7.4、新鮮な1mM DTT、0.1%BSAを添加)で希釈する。最終120μM GDPを膜希釈物に加える。化合物のEC50及びEmaxは、膜タンパク質(20μg/ウエル)の適切量及び1ウエル当たりGTPγ35S(0.11〜0.14nM)の100000〜130000dpmを用いて300μl中で行われた10点用量−反応曲線から評価される。基準及び最大刺激結合は、3μM SNC−80の存在及び非存在下で決定される。クローン化δ受容体を安定的に発現するHEK293細胞で実行されたアッセイは、少し異なったバッファー(50mM ヘペス、20mM NaOH、200mM NaCl、1mM EDTA、5mM MgCl2、pH7.4、新鮮な0.5%BSAを添加、DTTなし)及びGDP最終濃度3μMと共に行われる。
【0110】
データ解析
特異的結合(SB)はTB−NSとして計算され、そして、種々の試験化合物の存在下のSBは、対照SBのパーセントとして表現した。特異的に結合した放射性リガンドを置換するリガンドに対するIC50及びヒル係数(nH)の値は、ロジットプロット又はリガンド(Ligand)、グラフパッドプリズム(GraphPad Prism)、シグマプロット(SigmaPlot)若しくは受容体フィット(ReceptorFit)のような曲線フィッティングプログラムから計算した。Kiの値は、Cheng-Prussoffの式から計算された。IC50、Ki及びnHの平均±S.E.M値は、少なくとも三つの置換曲線において試験されたリガンドについて報告した。
上記アッセイを用いて測定した場合、本発明のほとんどの化合物のヒトδ受容体に対するIC50は、一般的に0.31nM〜1.30nMの範囲である。これらの化合物のヒトδ受容体に対するEC50および%Emaxは、一般的に、それぞれ23nM〜70nMおよび94nM〜115nMの範囲である。これらの化合物のヒトκおよびμ受容体に対するIC50は、一般的に、それぞれ846nM〜2034nMおよび87nM〜671nMの範囲である。
【0111】
受容体飽和実験
放射性リガンドKδ値は、0.2〜5倍の推定されるKδ範囲(必要な放射性リガンドの量が適当なら10倍まで)の濃度の適当な放射性リガンドを用いた細胞膜における結合アッセイを実施することにより決定される。特異的放射性リガンド結合は、pモル/mg膜タンパク質として表わされる。個々の実験からのKδ及びBmaxの値は、ワンサイトモデル(one-site model)に従って、個々のものから、特異的結合(B)対nMフリー(F)放射性リガンドの非線型回帰から得られる。
【0112】
Von Frey試験を用いた機械的アロディニア(Mechano-Allodynia)の決定
試験は、Chaplanら(1994)によって記載された方法を用いて、08:00と16:00の時刻の間に実施された。ラットを、Plexiglasケージ内、底が足に接近できるようになったワイヤーメッシュの底の上におき、10〜15分間慣らすために放置した。試験される領域は、感度が悪い脚パッドを避けた足底中間の左後足である。当該足は、対数的に増加する剛性を有する一連の8つのVon Freyヘアと接触する(0.41, 0.69, 1.20, 2.04, 3.63, 5.50, 8.51および15.14 グラム; Stoelting, Ill, USA)。Von Freyヘアは、底にあるメッシュ床から、足底表面に垂直に、足に対して少し曲がるのに十分な力を有して適用され、そしておよそ6〜8秒間保持される。足が鋭く引き寄せられたなら、陽性反応として書き留めた。ヘアを除いたら即座にしりごみするのもまた、陽性反応とした。歩行は曖昧な反応とし、そのような場合は刺激を繰り返した。
【0113】
試験プロトコル
動物は、FCA処理群について術後1日目に試験する。50%の逃避反射(withdrawal)の閾値は、Dixonのアップ−ダウン法(1980)を用いて決定した。試験は、シリーズの中間である2.04gヘアで開始した。刺激は、常に、上昇又は下降のいずれかの連続的方法で与えた。最初に選んだヘアに対する足逃避反射反応の不存在において、より強い刺激が与えられ;足逃避反射が起こった場合は、次に弱い刺激が選択された。この方法による最適な閾値計算は、50%閾値のすぐ近くの6反応が必要であり、反応において最初の変化が起こるとき、例えば閾値を初めて越えたときに、これらの6反応の計算が開始される。閾値が刺激範囲から外れる場合、15.14の値(正常な感受性)又は0.41の値(最大のアロデニア(allodynic))をそれぞれ割り当てた。陽性及び陰性反応の得られたパターンは、取り決め、即ち、X=逃避反射なし、O=逃避反射あり、を用いて表にし、そして50%逃避反射閾値は以下の式を用いて内挿された。
50%g閾値 = 10(Xf+kδ)/10,000
式中、Xf=最後に使用したvon Freyヘアの値(ログ単位)、k=陽性/陰性反応のパターンについて表にした値(Chaplanら(1994)から)、及びδ=刺激間の平均差(log単位)。ここでは、δ=0.224。
【0114】
Von Frey閾値は、Chaplanら(1994)にしたがって、最大可能効力パーセント(%MPE)に変換される。%MPEを計算するのに次式が使われる。
【数1】

【0115】
試験物質の投与
ラットに、von Frey試験に先だって試験物質を投与(皮下、腹腔内、静脈内又は経口)し、試験化合物の投与とvon Frey試験の間の時間は、試験化合物の性質によって変化する。
【0116】
ライジング(writhing)反応試験
酢酸は、マウス腹腔内に投与したとき異常な収縮を起こす。次いで、これらのマウスは典型的なパターンで体を伸ばす。鎮痛薬を投与すると、観察される上記の動きの頻度は減り、潜在的に優れた候補として薬物が選択される。
完全で典型的なライジング反射は、以下の要素が存在するときにのみみなされる:動物が動いていない;後背が僅かに押し下げられている;両足の足底形状が観察される。このアッセイにおいて、本発明の化合物は、1〜100μモル/kgの経口投与後に、ライジング反応の有意な阻害を示した。
(i)溶液の調製
酢酸(AcOH):最終濃度0.6%のAcOHを含む最終容積20mlを得るために、酢酸120μlを蒸留水19.88mlに加え、次いで溶液を混合し(ボルテックスで)、注射に使用した。
化合物(薬物):各化合物を、標準的操作に従って最も適した容器中で調製し溶解した。(ii)溶液の投与
化合物(薬物)を、経口、腹腔内(i.p.)、皮下(s.c.)又は静注(i.v.)で、10ml/kg(マウスの平均体重を考慮して)、試験前、20、30又は40分に(化合物のクラス及びその特徴に従って)投与した。化合物が中枢:脳室内(i.c.v.)又はクモ膜下(i.t.)に送達される場合は、5μlの容積が投与される。
AcOHは、試験直前に、10ml/kg(マウスの平均体重を考慮して)を2部位に、腹腔内投与(i.p.)される。
(iii)試験
動物(マウス)を20分間観察し、発作(ライジング反射)の回数を記録し、実験の最後に収集した。マウスを、接触床(contact bedding)を有する個々の「シューボックス(shoe box)」ケージに保持した。合計4匹のマウスを通常同時に観察し、1匹は対照、3匹は薬物投与群である。
不安及び不安様の徴候に関しては、ラットにおけるGeller-Seifterのコンフリクトテストにおいて効果を決定した。
機能性胃腸障害の徴候に関しては、ラットにおける、Coutinho SVらによって記載されたアッセイにおいて効果を決定することができる(Coutinho SV他. American Journal of Physiology-Gastrointestinal & Liver Physiology, 282(2):G307-16, 2002 Feb.)。
【0117】
更なる生体内試験プロトコル
被検動物および収容場所
ナイーブな(naive)雄Sprague Dawleyラット(175〜200g)を、温度制御された室内(22℃、湿度40〜70%、12時間明/暗)に、5個体の群で収容した。サイクルの明期に実験を行った。動物には食物および水を自由に摂取させ、データ収集後すぐに屠殺した。
【0118】
試料
化合物(薬物)試験は、まったく処理を受けないラット群、およびその他の、E.coliリポ多糖(LPS)処理群を含む。LPS処理実験について、4群にLPSを注射し、次いで4群のうちの1群をビヒクル処理し、一方他の3群は薬物およびそのビヒクルを注射した。実験の第2のセットは、5群のラットで行い;全ての郡でLPS処理を行わなかった。ナイーブな群は化合物(薬物)またはビヒクルをまったく投与しなかった;その他の4群は薬物と共にまたはこれを含まずに、ビヒクルで処理した。これらは、USVの低減に寄与し得る薬物の抗不安効果または鎮静効果を決定するために行った。
【0119】
LPSの投与
ラットを処理の前15〜20分間実験室に馴化させた。炎症をLPS(グラム陰性E.coli細菌抗原型のエンドトキシン0111:B4, Sigma)の投与によって誘導した。LPS(2.4μg)をイソフルラン麻酔下で、標準的定位外科技術を用いて、10μLの容量で脳室内(i.c.v.)に注射した。耳の間の皮膚を頭側に(rostrally)押し、縦に約1cm切開して頭蓋表面を露出させた。穿孔部位は、座標:ブレグマの後方0.8mm、ラムダに対して側方(左)1.5mm(矢状縫合)および側部脳室内の頭蓋表面下5mm(垂直)によって決定した。LPSをポリエチレンチューブ(PE20; 10〜15cm)により100μL Hamiltonシリンジに連結させた5mm長の滅菌ステンレス鋼の注射針(26-G 3/8)により注射した。切断した注射針(20-G)で作った4mmのストッパーで覆い、シリコン接着剤で26−G注射針に固定して所望の深さ5mmにした。
LPSの注射後、さらに10秒間注射針をそのままにして化合物を拡散させ、次いで取り除いた。切開部を閉じてラットを元のケージに戻し、試験まで最低3.5時間休ませた。
【0120】
エアパフ刺激のための実験のセットアップ
ラットを、LPS注射および化合物(薬物)投与の後、実験室に残した。試験時にすべてのラットを取り出して実験室の外に置いた。一度に一匹のラットを試験室に入れ、透明なボックス(9×9×18cm)内に置き、ついでこれを、音を減弱し、換気口を設けたサイズ62(w)×35(d)×46(h)cmの小部屋(BRS/LVE, Div. Tech-Serv Inc)に置いた。空気パフは、0.32cmの空気送出ノズルに通して送達し、10秒に1回のパフ頻度で、一定期間(0.2秒)および一定強度で空気パフを送達できるシステム(AirStim,San Diego Instruments)により制御した。最大10回のパフを与えるかまたは最初の鳴声が始まるまで与えた(これを優先する)。最初の空気パフを記録開始の印とした。
【0121】
超音波記録の実験の設定
鳴声は各小部屋の内側に置いたマイクロフォン(G.R.A.S. sound and vibration, Vedbaek, Denmark)を用いて10分間記録し、LMS(LMS CADA-X 3.5B, Data Acqusition Monitor, Troy, Michigan)ソフトウエアによって制御した。0〜32000Hzの振動数を記録し、保存し、同じソフトウエア(LMS CADA-X 3.5B, Time Data Processing Monitor and UPA(User Programming and Analysis))により解析した。
【0122】
化合物(薬物)
全ての化合物(薬物)は、6.5〜7.5にpH調節し、4mL/kgで投与した。化合物(薬物)の投与に続いて、動物を試験時まで元のケージに戻した。
【0123】
分析
記録は、一連の統計的分析およびフーリエ分析によって行い、フィルター処理(20〜24kHz)して、所望のパラメータを計算した。データは平均±SEMで表した。統計的有意性は、ナイーブなラットとLPS処理ラットとを比較するためにT試験を用いて、および薬物有効性に関して一元配置ANOVA続けてDunnett's多重比較試験(post-hoc)を用いて評価した。群間の差は、最小p値≦0.05を有意とした。実験を最低2回繰り返した。
【0124】
Hargreaves足底試験を用いた熱痛覚過敏の測定
FCA又はカラギーナンの投与
完全フロイントアジュバント(FCA):SIGMA cat.#F5881, Mycobacterium tuberculosis
(H37Ra, ATCC 25177)、1mg/ml、熱殺菌した乾燥パラフィン0.85ml、マンニドモノオレエート0.15ml、又は、NaCl中カラギーナン・ラムダタイプIV(Cg):SIGMA cat. #C-3889、(ゼラチン、植物:アイリッシュ・モス)(1.0%溶液)。
注射は、滅菌針サイズ26G5/8”のハミルトンシリンジで行われる。ラットを取り出し、イソフルランで麻酔するために箱に入れる。所望の効果に達したならば、ラットを移動し腹側臥位(胸骨位)に置く。左後足をつかみ、針を足の中間(中足骨領域)に達するように、第二指と第三指の足蹠間の、皮下、腹側面に導入する。最後に、FCA 100μl容量、又はカラギーナン溶液100μlを、ゆっくりと足に注射し、針を抜いた後3〜4秒間小圧力を加える。
もし、動物が処置中起きだすならば、所望の効果が得られるまでそれらを吸入箱に戻す。足底内注射後、動物が覚醒するまでケージ内で観察する。
FCA処置について、ラットの炎症過程の発症には48時間が見込まれる。カラギーナン処置について、ラットの炎症過程の発症には3時間が見込まれる。試験の朝、ラットを実験室に置く(ケージ内)。少なくとも30分間は室に慣れさせる。
【0125】
試験部位
熱刺激を、足蹠の間の足底表面の中心に加える。試験部位は、ガラスから皮膚への正確な熱伝導性を維持するため、ガラスに接触していなければならず、その間に尿又は糞があってはならない。
足底装置はガラストップ/プラットホームのある箱からなっており、ガラス表面は、内部フィードバック機構によって30℃に保持されている。このガラスプラットホームの下側には、可動式アームに取りつけられた電球があり、光がラットの足下に位置するように、鏡が下に置かれている。ライトを点灯すると、直径約2mmの開口を通して照らされる。実験者は、ライトを点灯し、足が離れると自動センサーがライトを消す;20.48秒の中断は、仮にラットがその足を離し損なっても、組織の損傷が起こらないことを確実にする。実験者は、どんな時点でライトを消してもよい。タイマーが、ライトがついている時間を記録する。
フラックスメーター:ライトが点灯しているとき、フラックス/cm2を測定する。これは、約97−98に維持されなければならない。フラックスは足底装置を調節することによって変更することができるが、実験中には変更してはならない。
【0126】
時間的経過
実験は、炎症の導入後の、時間の長さを変更した後に実施することができる。痛覚過敏は、FCA注射後48時間又はカラギーナン注射後3時間に測定される。
【0127】
試験手順
ナイーブなラット:用量−反応曲線を決定する手順のために、ラット7匹の1群を対照群として用い、残りのラット28匹と共に麻酔するが注射はしない。ナイーブなラットの試験は、実験の始まる前か、実験後直ぐのいずれかで行ってストレスが最小となるようにし、ラットを、個々のプレキシグラス(Plexiglas)ボックス(14×21×9cm)内において、足底装置の上に置き;30分間慣らせる。動物の試験の準備ができたら、ライトを試験部位の直下に置き、点灯し、逃避の潜伏時間を記録する。5〜8分後、皮膚温度を正常に戻し、2回目のリーディングを行い、そしてラットを移動してケージに入れる。
【0128】
ベースラインの値:FCA(又はカラギーナン)を注射された、残りの28匹のラット(4群に分けてある)を機械の上の個々の箱内に置き、30分間慣らした。実験者は足の炎症の程度を検査し、変色をチェックすべきである。熱刺激を試験部位の下に与え、逃避の潜伏期間を記録し、上記のようにして2回読む。痛覚過敏が存在するかどうかを確かめるには、これらのベースラインの値を、ナイーブな動物のその値と比較する。
【0129】
薬物投与後試験:一旦痛覚過敏が確かめられたら、ラットに目的とする化合物を注射する。各化合物は、標準的手順に従って最も適切なビヒクルで調製し、溶解させる。投与経路、投与量、容積及び注射後の試験時間は、化合物(又は化合物のクラス)に特異的である。注射後、例えばi.v.又はs.c.注射後20〜30分で化合物を試験する場合、ラットを足底装置に置き、慣らすが、その間に薬物がその効果を生じる。注射後60分又はそれ以上で化合物を試験する場合、ラットを常に、同じケージの仲間と一緒に元のケージに戻し、ラットの群内の社会構造を再構築するストレスを最小にする。30分後、ラットを足底装置に置き、足底機械に30分間慣らす。試験を上記のように実施する。2回のリーディングを行う。
【0130】
試験の判断基準:
動物は平静かつ静かであるが、機敏であり、そして正確な位置に置かれ、足の皮膚と機械のガラス表面の間に、尿又は糞があってはならない。動物は、以下の場合、試験に用いてはならない:
−動物が、においを嗅ぎ回る、毛づくろいをする及び探索行動をすることを含む動きをしている;
−動物が、睡眠中である;
−動物が、化合物の副作用の可能性のある結果であり、そして避けることができない場合を除いて、ストレスの明確な徴候(強直性不動、鳴声、耳を平らにする)を示している;
−動物が、足がガラスと直接接触しないような位置にいる(足が尾の先端上にのっている);
−動物の足が、不適当な注射の結果として青色を呈している。この場合、動物を実験から完全に除く(開始時に)。
尿又は糞があるとき、動物を除き、ガラス表面を清潔に拭い、そして動物を再び置く。動物が眠っている場合、又は強直性不動を示している場合は、実験者は、短期間の注意挙動を引き出すために、箱を穏やかに動かしてもよいし、または箱の前で実験者の手を動かしてもよい。動物の挙動の綿密な観察を試験中を通して行うべきである。
【0131】
再試験
実験中のいつでも、もし実験者が、足の逃避反応が熱刺激に対する反応ではなかったと確信しないならば、その動物を5〜8分後に再試験してよい。これは、刺激を与えている間に、動物が突然動くかまたは排尿もしくは排便することによる。
【0132】
許容される反応
以下のいずれも、熱刺激への反応と考えられる。
−足がガラスを離れる逃避運動(しばしば、足をなめることが続く);
−身体の横方向への動き(刺激された足と反対側に起こる);
−つま先がガラスから離れる;
−炎症を起こした足の中心平面(中足)面がガラスから離れる。
【0133】
解析
データは、平均値±SEMとして表す。統計的有意性は、ナイーブラットと 炎症を起こしたラットとの間の比較を、T検定を用いて評価し、そして薬物の 効果については、一元配置ANOVA、次いでDunnett's多重比較検 定(ポスト−ホック)を用いて評価した。群間の差は、最小p値≦0.05で有意とする。
【実施例】
【0134】
本発明をさらに以下の実施例によって詳細に記載する。当該実施例は、本発明の化合物を製造し、精製し、分析し、そして生物学的に試験する方法を記載するが、本発明を限定するものとして解釈するべきではない。
【0135】
中間体1
4-(ブロモメチル)安息香酸、メチルエステル(11.2 g, 49 mmol)および亜リン酸トリメチル(25 mL)の混合物を、N2下で5時間還流した。過剰の亜リン酸トリメチルをトルエンを用いた共蒸留により除去し、定量的収率で中間体1を得た。1H NMR (CDCl3) δ3.20 (d, 2H, J=22 Hz, CH2), 3.68 (d, 3H 10.8 Hz, OCH3), 3.78 (d, 3H, 11.2 Hz, OCH3), 3.91 (s, 3H, OCH3), 7.38 (m, 2H, Ar-H), 8.00 (d, 2H, J=8 Hz, Ar-H).
【0136】
中間体2: 4-(4-メトキシカルボニル-ベンジリデン)-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルエステル
乾燥THF(200 mL)中の中間体1の溶液に、-78℃のリチウムジイソプロピルアミド(32.7 mL ヘキサン中の1.5 M, 49 mmol)を滴加した。次いで、反応混合物を室温に温め、N-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリドン(9.76 g, 乾燥THF(100 mL)中の49 mmol)を添加した。12時間後、反応混合物を水(300 mL)でクエンチし、そして酢酸エチル(3 x 300 mL)で抽出した。合わせた有機相をMgSO4により乾燥させ、そして蒸発させて、粗製生成物を得て、これをフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、白色固体として中間体2(5.64 g, 35%)を得た。IR (NaC1) 3424, 2974, 2855, 1718, 1688, 1606, 1427, 1362, 1276 cm-1;
1H NMR (CDCl3) δ1.44 (s, 9H), 2.31 (t, J=5.5 Hz, 2H), 2.42 (t, J=5.5 Hz, 2H), 3.37 (t, J=5.5 Hz, 2H), 3.48 (t, J=5.5 Hz, 2H), 3.87 (s, 3H, OCH3), 6.33 (s, 1H, CH), 7.20 (d J=6.7 Hz, 2H, Ar-H), 7.94 (d, J,=6.7 Hz, 2H, Ar-H); 13C NMR (CDCl3) δ28.3, 29.2, 36.19, 51.9, 123.7, 127.8, 128.7, 129.4, 140.5, 142.1, 154.6, 166.8.
【0137】
中間体3: 4-ブロモ-4-[ブロモ-(4-メトキシカルボニル-フェニル)-メチル]-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルエステル
乾燥ジクロロメタン(200 mL)中の中間体2(5.2 g, 16 mmol)およびK2CO3(1.0 g)の混合物に、0℃のCH2Cl2(30 mL)中の臭素(2.9 g, 18 mmol)の溶液を添加した。室温で1.5時間後、K2CO3の濾過後の溶液を濃縮した。次いで、残留物を酢酸エチル(200 mL)中に溶解し、水(200 mL)、0.5 M HC1(200 mL)およびブライン(200 mL)で洗浄し、そしてMgSO4により乾燥させた。溶媒の除去により、粗製生成物を得て、これをメタノールから再結晶化し、白色固体として中間体3(6.07 g, 78%)を得た。IR (NaC1) 3425, 2969, 1725, 1669, 1426, 1365, 1279, 1243 cm-1; 1H NMR (CDCl3) δ1.28 (s, 9H), 1.75 (m, 1H), 1.90 (m, 1H), 2.1 (m, 2H), 3.08 (br, 2H), 3.90 (s, 3H, OCH3), 4.08 (br, 3H), 7.57 (d, J=8.4 Hz, 2H, Ar-H) 7.98 (d, J=8.4 Hz, 2H, Ar-H); 13C NMR (CDCl3) δ 28.3, 36.6, 38.3, 40.3, 52.1, 63.2, 72.9, 129.0, 130.3, 130.4, 141.9, 154.4, 166.3.
【0138】
中間体4: 4-[ブロモ-(4-カルボキシ-フェニル)-メチレン]-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
メタノール(300 mL)および2.0 M NaOH(100 mL)中の中間体3(5.4 g,11 mmol)の溶液を40℃で3時間加熱した。固体を濾過により回収し、そして一晩、真空乾燥させた。乾燥した塩を40%アセトニトリル/水中に溶解し、そして濃HClを用いてpH 2に調整した。中間体4(3.8 g, 87%)を白色粉末として濾過により単離した。1H NMR (CDCl3) δ1.45 (s, 9H, tBu), 2.22 (dd, J=5.5 Hz, 6.1 Hz, 2H), 2.64 (dd, J=5.5 Hz, 6.1 Hz, 2H), 3.34 (dd, J=5.5 Hz, 6.1 Hz, 2H), 3.54 (dd, J=5.5 Hz, 6.1 Hz, 2H), 7.35 (d, J=6.7 Hz, 2H, Ar-H), 8.08 (d, J=6.7 Hz, 2H, Ar-H); 13C NMR (CDCl3) δ28.3, 31.5, 34.2, 44.0, 115.3, 128.7, 129.4, 130.2, 137.7, 145.2, 154.6, 170.3.
【0139】
中間体5: 4-[ブロモ-(4-ジエチルカルバモイル-フェニル)-メチレン]-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
-20℃の乾燥ジクロロメタン(10 mL)中の中間体4(1.0 g, 2.5 mmol)の溶液に、イソブチルクロロホルメート(450 mg, 3.3 mmol)を添加した。-20℃で20分後、ジエチルアミン(4 mL)を添加し、そしてこの反応物を室温に温めた。1.5時間後、溶媒を蒸発させ、そして残留物を酢酸エチルと水との間に分配した。この有機相をブラインで洗浄し、そしてMgSO4により乾燥させた。溶媒の除去により、粗製生成物を得て、これをフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、白色の針状晶として中間体5(800 mg, 73%)を得た。IR (NaCl) 3051, 2975, 1694, 1633, 1416, 1281, 1168, 1115 cm-1; 1H NMR (CDCl3) δ1.13 (br, 3H, CH3), 1.22 (br, 3H, CH3), 1.44 (s, 9H, tBu), 2.22 (t, J=5.5 Hz, 2H), 2.62 (t, J=5.5 Hz, 2H), 3.33 (m, 4H), 3.55 (m, 4H), 7.31 (d, J=8.0 Hz, 2H, Ar-H), 7.36 (d, J=8.0 Hz, 2H, Ar-H); 13C NMR (CDCl3) δ12.71, 14.13, 28.3, 31.5, 34.2, 39.1, 43.2, 79.7, 115.9, 126.3, 129.3, 136.8, 137.1, 140.6, 154.6, 170.5.
【0140】
中間体6: tert-ブチル 4-[{4-[(ジエチルアミノ)カルボニル]フェニル}(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ピペリジン-1-カルボキシレート
中間体5(4.08 g, 9.04 mmol)を含むフラスコに、トルエン(100 mL)、エタノール(100 mL)、3-ヒドロキシフェニルボロン酸(1.97 g, 14.3 mmol)、および水溶性2N 炭酸ナトリウム(11.3 mL, 22.6 mmol)を添加した。この溶液を20分間脱気し、次いでパラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(1.05 g, 0.909 mmol)を添加した。反応混合物を窒素でパージし、そして90℃まで加熱した。5時間後、この反応物を室温に冷却し、そして飽和水溶性塩化アンモニウムを添加した。混合物を2回、酢酸エチルで抽出し、そして合わせた有機抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、そして濃縮した。残留物をヘキサン中の0%〜100%酢酸エチルで溶出させるフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、無色固体として中間体6(4.24 g, 100%)を得た。1H NMR(400MHz, CDCl3) δ1.10 (t, J = 7.42 Hz, 3H), 1.20 (t, J = 7.03 Hz, 3H), 1.42 (s, 9H), 2.25-2.33 (m, 4H), 3.23-3.31 (m, 2H), 3.39-3.46 (m, 4H), 3.46-3.54 (m, 2H), 6.51 (dd, J = 2.15, 1.56 Hz, 1H), 6.57 (ddd, J = 7.62, 1.56, 0.98 Hz, 1H), 6.62 (ddd, J = 8.20, 2.54, 0.98 Hz, 1H), 7.06-7.12 (m, 1H), 7.19 (d, J = 8.40 Hz, 2H), 7.29 (d, J = 8.40 Hz, 2H).
【0141】
化合物1: 4-[[3-(ベンジルオキシ)フェニル](ピペリジン-4-イリデン)メチル]-N,N-ジエチルベンズアミド
【化10】

乾燥DMF中の中間体6(0.100 g, 0.215 mmol)の溶液に、ベンジルブロミド(50μL, 0.42 mmol)および炭酸カリウム(0.150 g, 1.09 mmol)を添加した。この反応物を80℃まで加熱し、そして24時間撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、そして1M HClで2回、次いでブラインで洗浄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、そして濃縮した。残留物をCH2Cl2中に溶解し、そしてトリフルオロ酢酸(1 mL)を添加した。2時間後、この反応物を濃縮し、そして残留物を0.1%トリフルオロ酢酸を含む水中の10%〜45%アセトニトリルで溶出させる逆相クロマトグラフィーにより精製した。生成物をトリフルオロ酢酸塩として得て、そして凍結乾燥し、無色固体として化合物1(62 mg, 51%)を得た。純度(HPLC): >99%(215 nm), >99%(254 nm), >99%(280 nm); 1H NMR(400MHz, CD3OD) δ1.12 (br t, J = 7.03 Hz, 3H), 1.24 (br t, J = 7.03 Hz, 3H), 2.49-2.60 (m, 4H), 3.15-3.21 (m, 2H), 3.20-3.26 (m, 2H), 3.25-3.35 (m, 2H), 3.48-3.59 (m, 2H), 5.06 (s, 2H), 6.70-6.77 (m, 2H), 6.90-6.96 (m, 1H), 7.24 (d, J = 8.40 Hz, 2H), 7.26-7.41 (m, 8 H). 実測値: C, 59.06; H, 5.54; N, 8.25%.
【0142】
化合物2: N,N-ジエチル-4-[[3-(2-フェニルエトキシ)フェニル](ピペリジン-4-イリデン)メチル]ベンズアミド
【化11】

化合物1について記載される手順を用いて、中間体6(0.146 g, 0.314 mmol)および2-ブロモエチルベンゼン(86μL, 0.63 mmol)から無色固体として化合物2(60 mg, 36%)を得た。純度(HPLC): >99%(215 nm), >99%(254 nm), >99%(280 nm); 1H NMR(400MHz, CD3OD) δ1.10 (br t, J = 6.83 Hz, 3H), 1.23 (br t, J = 6.83 Hz, 3H), 2.54-2.60 (m, 4H), 3.02 (t, J = 6.83 Hz, 2H), 3.20-3.33 (m, 6H), 3.48-3.58 (m, 2H), 4.13 (t, J = 6.93 Hz, 2H), 6.65 (dd, J = 2.34, 1.56 Hz, 1H), 6.74 (ddd, J = 7.62, 1.56, 0.98 Hz, 1H), 6.84 (ddd, J = 8.20, 2.54, 0.59 Hz, 1H), 7.16-7.30 (m, 8H), 7.35 (d, J = 8.40 Hz, 2H).
【0143】
化合物3: 4-[[3-(シクロペンチルオキシ)フェニル](ピペリジン-4-イリデン)メチル]-N,N-ジエチルベンズアミド
【化12】

化合物1について記載される手順を用いて、中間体6(0.200 g, 0.430 mmol)およびシクロペンチルブロミド(92μL, 0.86 mmol)から無色固体として化合物3(78 mg, 33%)を得た。純度(HPLC): >99%(215 nm), >99%(254 nm), >99%(280 nm); 1H NMR(400MHz, CD3OD) δ1.12 (br t, J = 7.23 Hz, 3H), 1.23 (br t, J = 7.23 Hz, 3H), 1.53-1.67 (m, 2H), 1.68-1.81 (m, 4H), 1.80-1.95 (m, 2H), 2.54-2.63 (m, 4H), 3.21-3.35 (m, 6H), 3.48-3.58 (m, 2H), 4.71-4.78 (m, 1H), 6.62 (dd, J = 2.34, 1.76 Hz, 1H), 6.71 (ddd, J = 7.42, 1.37, 0.98 Hz, 1H), 6.80 (ddd, J = 8.40, 2.34, 0.78 Hz, 1H), 7.19-7.29 (m, 3H), 7.36 (d, J = 8.40 Hz, 2H). 実測値: C, 62.54; H, 6.54; N, 4.73%. C28H36N2O2 x 1.3 CF3CO2H x 0.4 H2OはC, 62.50; H, 6.53; N, 4.76%を有する。
【0144】
化合物4: 4-[[3-(シクロヘキシルオキシ)フェニル](ピペリジン-4-イリデン)メチル]-N,N-ジエチルベンズアミド
【化13】

化合物1について記載される手順を用いて、中間体6(0.332 g, 0.715 mmol)およびシクロヘキシルブロミド(0.10 mL, 0.81 mmol)から無色固体として化合物4(168 mg, 42%)を得た。純度(HPLC): >96%(215 nm), >99%(254 nm), >99%(280 nm); 1H NMR(400MHz, CD3OD) δ1.12 (t, J = 6.83 Hz, 3H), 1.23 (t, J = 6.83 Hz, 3H), 1.28-1.52 (m, 5H), 1.52-1.61 (m, 1H), 1.71-1.81 (m, 2H), 1.87-1.96 (m, 2H), 2.55-2.63 (m, 4H), 3.21-3.34 (m, 6H), 3.49-3.58 (m, 2H), 4.21-4.31 (m, 1H), 6.65 (dd, J = 2.34, 1.76 Hz, 1H), 6.72 (ddd, J = 7.62, 1.37, 0.98 Hz, 1H), 6.83 (ddd, J = 8.40, 2.54, 0.78 Hz, 1H), 7.20-7.29 (m, 3H), 7.36 (d, J = 8.40 Hz, 2H).
【0145】
中間体7: tert-ブチル 4-[{4-[(ジエチルアミノ)カルボニル]フェニル}(3-{[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ}フェニル)メチレン]ピペリジン-1-カルボキシレート
ジクロロメタン(15 mL)中の中間体6(1.95 g, 4.20 mmol)およびトリエチルアミン(3.00 mL, 21.5 mmol)の溶液に、0℃のトリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.95 mL, 5.65 mmol)を滴加した。この反応物を室温に温め、そして15時間撹拌した。この溶液をジクロロメタンで希釈し、そして2回、飽和水溶性塩化アンモニウムで洗浄し、次いで乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、そして濃縮した。残留物をヘキサン中の20%〜50%酢酸エチルで溶出させるフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、黄色泡状物として中間体7(2.00 g, 80%)を得た。1H NMR(400MHz, CDCl3) δ1.08-1.18 (m, 3H), 1.20-1.29 (m, 3H), 1.47 (s, 9H), 2.29-2.38 (m, 4H), 3.23-3.34 (m, 2H), 3.44-3.50 (m, 4H), 3.50-3.60 (m, 2H), 7.02-7.05 (m, 1H), 7.09-7.18 (m, 4H), 7.34 (d, J = 8.01 Hz, 2H), 7.36-7.41 (m, 1H).
【0146】
化合物5: N,N-ジエチル-4-[(3-フェノキシフェニル)(ピペリジン-4-イリデン)メチル]ベンズアミド
【化14】

還流コンデンサーを備えたオーブン乾燥した2-頚丸底フラスコに、Pd2(dba)3(7.5 mg, 0.008 mmol)、2-(ジ-t-ブチルホスフィノ)ビフェニル(5.5 mg, 0.018 mmol)、K3PO4(77 mg, 0.36 mmol)、およびフェノール(19 mg, 0.20 mmol)を充填した。フラスコにゴム製の隔膜を取り付け、窒素でパージし、次いで脱気したトルエン(2 mL)中の中間体7(100 mg, 0.168 mmol)の溶液を隔膜に通して添加した。この反応物を80℃まで加熱し、そして22時間撹拌した。フラスコを室温に冷却し、そして混合物をシリカゲルに吸着させた。ヘキサン中の20%〜50%酢酸エチルで溶出させるフラッシュクロマトグラフィーにより、黄色油状物としてBOC-保護された誘導体(50 mg, 0.093 mmol)を得た。この油状物をジクロロメタン(5 mL)中に溶解し、そしてトリフルオロ酢酸(0.5 mL)を添加した。4時間後、溶液を濃縮し、そして0.1%トリフルオロ酢酸を含む水中の10%〜45%アセトニトリルで溶出させる逆相クロマトグラフィーにより精製した。生成物をトリフルオロ酢酸塩として得て、そして凍結乾燥し、白色固体として化合物5(44 mg, 47%)を得た。純度(HPLC): >99%(215 nm), >99%(254 nm), >99%(280 nm); 1H NMR(400MHz, CD3OD) δ1.12 (br t, J = 7.03 Hz, 3H), 1.23 (br t, J = 6.83 Hz, 3H), 2.54-2.63 (m, 4H), 3.20-3.26 (m, 4H), 3.26-3.34 (m, 2H), 3.49-3.58 (m, 2H), 6.75-6.78 (m, 1H), 6.86-6.99 (m, 4H), 7.07-7.14 (m, 1H), 7.25 (d, J = 8.40 Hz, 2H), 7.30-7.38 (m, 5H). 実測値: C, 62.49; H, 5.74%; N, 4.59. C29H32N2O2 x 1.4 CF3CO2H x 0.6 H2OはC, 62.51; H, 5.71; N, 4.58%を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
1は水素、C1-6アルキル−O−C(=O)−、場合により置換されたC1-6アルキル、場合により置換されたC3-6シクロアルキル、場合により置換されたC6-10アリール、場合により置換されたC2-9ヘテロシクリル、場合により置換されたC6-10アリール−C1-3アルキルおよび場合により置換されたC2-9ヘテロシクリル−C1-3アルキルから選択され;
2およびR3は、独立して、水素、場合により置換されたC1-6アルキルおよび場合により置換されたC3-6シクロアルキルから選択され; そして
4は場合により置換されたC3-6アルキル、場合により置換されたC3-8シクロアルキル、場合により置換されたC6-10アリール、場合により置換されたC2-9ヘテロシクリル、場合により置換されたC6-10アリール−C1-6アルキル、および場合により置換されたC2-9ヘテロシクリル−C1-6アルキルから選択される]
の化合物、その製薬上許容される塩、そのジアステレオマー、そのエナンチオマー、またはそれらの混合物。
【請求項2】
1が水素、C1-6アルキル−O−C(=O)−、場合により置換されたC1-6アルキル、および場合により置換されたC3-6シクロアルキルから選択され;
2およひR3がエチルであり;そして
4がフェニル、C3-5ヘテロシクリル、フェニル−C1-3アルキル、C3-5ヘテロシクリル−C1-3アルキル、C3-6シクロアルキル、およびC3-6シクロアルキル−C1-3アルキルから選択され、ここでR4は場合により、C1-6アルキル、ハロゲン化C1-6アルキル、−NO2、−CF3、C1-6アルコキシ、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードから選択される1またはそれ以上の基で置換される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1が水素、C1-6アルキル−O−C(=O)−から選択され;
2およひR3がエチルであり;そして
4がフェニル−C1-3アルキル、C3-6シクロアルキル−C1-3アルキル、C3-6シクロアルキルおよびフェニルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
1が水素およびt−ブチル−O−C(=O)−から選択され;
2およひR3がエチルであり;そして
4がフェニル、ベンジル、フェネチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
以下から選択される化合物およびその製薬上許容される塩:
4−[[3−(ベンジルオキシ)フェニル](ピペリジン−4−イリデン)メチル]−N,N−ジエチルベンズアミド;
N,N−ジエチル−4−[[3−(2−フェニルエトキシ)フェニル](ピペリジン−4−イリデン)メチル]ベンズアミド;
4−[[3−(シクロペンチルオキシ)フェニル](ピペリジン−4−イリデン)メチル]−N,N−ジエチルベンズアミド;
4−[[3−(シクロヘキシルオキシ)フェニル](ピペリジン−4−イリデン)メチル]−N,N−ジエチルベンズアミド;
N,N−ジエチル−4−[(3−フェノキシフェニル)(ピペリジン−4−イリデン)メチル]ベンズアミド。
【請求項6】
医薬として使用するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
痛み、不安症または機能性胃腸障害の治療のための医薬の製造における、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物および製薬上許容される担体を含有する医薬組成物。
【請求項9】
治療的有効量の請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物を、痛みの治療を必要とする温血動物に投与する段階を含む、該動物における痛みの治療方法。
【請求項10】
治療的有効量の請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物を、機能性胃腸障害の治療を必要とする温血動物に投与する段階を含む、該動物における機能性胃腸障害の治療方法。
【請求項11】
式II
【化2】

の化合物をR4−Xと反応させることを含む、式I
【化3】

の化合物の製造方法。
上記式中、
1はC1-6アルキル−O−C(=O)−、場合により置換されたC1-6アルキルおよび場合により置換されたC3-6シクロアルキルから選択され;
2およひR3はエチルであり;
XはCl、I、Br、OTfおよびOTsから選択され;そして
4はフェニル、C3-5ヘテロシクリル、フェニル−C1-3アルキル、C3-5ヘテロシクリル−C1-3アルキル、C3-6シクロアルキル、およびC3-6シクロアルキル−C1-3アルキルから選択され、ここでR4は、C1-6アルキル、ハロゲン化C1-6アルキル、−NO2、−CF3、C1-6アルコキシ、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードから選択される1またはそれ以上の基で場合により置換される。
【請求項12】
式III
【化4】

の化合物をR4−OHと反応させることを含む、
式I
【化5】

の化合物の製造方法。
上記式中、
1はC1-6アルキル−O−C(=O)−、場合により置換されたC1-6アルキルおよび場合により置換されたC3-6シクロアルキルから選択され;
2およびR3はエチルであり;
Lは−S(=O)2−CF3
【化6】

【化7】

および−S(=O)2−CH3から選択され;そして
4はフェニル、C3-5ヘテロシクリル、フェニル−C1-3アルキル、C3-5ヘテロシクリル−C1-3アルキル、C3-6シクロアルキルおよびC3-6シクロアルキル−C1-3アルキルから選択され、ここでR4は場合によりC1-6アルキル、ハロゲン化C1-6アルキル、−NO2、−CF3、C1-6アルコキシ、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードから選択される1またはそれ以上の基で置換される。

【公表番号】特表2007−500740(P2007−500740A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530499(P2006−530499)
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002073
【国際公開番号】WO2004/101521
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】