説明

ジアルキルフマレート含有薬剤調合物

【課題】移植医術での器官および細胞の移植における宿主対移植片反応または移植片対宿主反応、または自己免疫疾患を治療するための薬剤調合物の提供。
【解決手段】式


(式中、RおよびRは同一かまたは異なる独立した直鎖状、枝分れ状または環式の飽和または不飽和C20アルキル基であって、この基は場合によりハロゲン(Cl、F、I、Br)、ヒドロキシ基、Cアルコキシ基、ニトロ基またはシアノ基によって置換されていてもよい)で表わされる1種またはそれ以上のジアルキルフマレートよりなる活性成分を含有する薬剤調合物。前記ジアルキルフマレート含有薬剤調合物は、移植医術において使用される通常の調合物および免疫抑制剤、特にシクロスポリンと組合せて使用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移植医術または自己免疫疾患の治療に使用するための薬剤調合物を製造するためにジアルキルフマレートを使用することおよびジアルキルフマレートを含有するミクロ錠剤またはミクロペレットの形の薬剤調合物に関するものである。
【0002】
従って本発明は、一方において、特に受給者による移植の拒絶反応、すなわち宿主対移植片反応、または移植による受給者の拒絶反応すなわち移植片対宿主反応の治療、軽減または抑制のための薬剤調合物を製造するためにジアルキルフマレートを使用することに関するものである。他方において、本発明は多発性関節炎、多発性硬化症、若年性初期糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、全身性狼瘡エリテマトーレス(SLE)、ショーグレン症候群、悪性貧血および慢性活動性(狼瘡様)肝炎のような自己免疫疾患を治療するための薬剤調合物を製造するためのジアルキルフマレートを使用することに関するものである。
【背景技術】
【0003】
移植片拒絶反応および自己免疫疾患は免疫系の医学的に望ましくない反応または調節不全に基づくものである。インターロイキンまたは腫瘍壊疽因子α(TNF−α)のようなサイトカインは免疫系に作用する実質的な媒介物質である。一般に、この両者はシクロスポリンのような免疫抑制剤の投与によって治療される。
【0004】
全般的な所見では、自己免疫疾患は内部(endogenic)物質または抗原の耐性の不足として見出される。その結果、この耐性は、抗原が免疫学的細胞と接触を保ち続けるときにだけ維持される。この耐性が失われると自己抗体が形成され、すなわち内部組織に対する体液性(humoral)免疫応答が生じる。TNF−αがどのように関与するか正確な性質はわかっていない。
【0005】
移植は組織または器官の移植、すなわち、角膜、皮膚、骨(骨片)、血管または筋膜のような組織の移植;腎臓、心臓、肝臓、肺臓、膵臓または腸のような器官の移植;または島細胞、α−細胞および肝細胞のような個々の細胞の移転であり、ここで膵臓は移植される器官として最も重要なものである。
【0006】
提供者と受給者との間の関連性の程度により自己移植(auto transplantation)(同一個体の他の部分への移転)、同一移植(iso−transplantation)(遺伝的に同一の他の個体への移転);および同種異系(allogenic)移植(同一種の他の個体への移転)に分けられる。器官および移植の部位によって更に同一場所(homotopic)移植(同一部位への移植)および異種場所(heterotopic)移植(異なる部位への移転)に分けられる。上記のような移植は現代医学の重要な役目である。
【0007】
移植医学の主たる問題は組織、器官または細胞の移植後の受給者の免疫学的防御反応による移植片拒絶である。このような移植片拒絶も宿主対移植片反応と呼ばれる。異質タンパク質に対する生物体の免疫学的防御反応はしばしば移植片の拒絶または溶解を来す。宿主対移植片反応において異なる段階が区別される。受給者と提供者との間の相違の程度によりこの反応は異なる速度で行われるので急性、亜急性または慢性反応と呼ぶ。急性拒絶過程は48時間内に動脈炎または細動脈炎の結果として移植の不可逆的損失を伴い、薬剤の投与により影響を及ぼすことができない。亜急性拒絶反応は移植片の血管障害(vasculopathy)によって起こる可逆的機能障害となって12日〜4カ月で拒絶発症として現われる。
最後に数週間または数年間にわたって進行し、薬によって止めることが出来ない、閉塞による動脈障害のような血管変化によって移植組織が機能を失う症状は慢性拒絶反応と呼ばれる。
【0008】
これとは反対に、受給者に対する移植の拒絶反応、いわゆる移植片対宿主反応は、充分な免疫作用のある組織を移植するとき、すなわち主として骨髄移植するときに起こることがある。また、この反応の厳しさが段階付けられ、宿主対移植片反応の場合と同様な複雑な問題、すなわち動脈障害(arteriopathies)および壊化を生じる。
【0009】
このような拒絶反応、すなわち宿主対移植片反応および移植片対宿主反応を回避するために、移植医学においては免疫抑制、すなわち正常な免疫応答を弱めることを行う。この目的のために、抗リンパ球血清をコルチコステロイドおよびいわゆる抗代謝剤と組合せて、例えば6−メルカプトプリンのようなプリン同族体およびチオグアニンを使用することが多く、これらのものは核酸およびタンパク質合成に作用し、従って細胞の分裂および増殖を阻止する。このことは抗体の産生および細胞免疫応答を抑制することになる。治療に使用される免疫抑制剤は特異的または非特異的に体内での免疫反応を抑制または弱化する物質である。非特異的免疫抑制剤は例えばアルキル化剤または抗代謝剤のような細胞平衡(cytostatic)剤である。
【0010】
更に、少なくとも部分的特異性免疫抑制を起こす活性成分、例えばコルチコステロイド、抗血清、抗体FK−506、タクロリムス(tacrolimus)、マイコフェノレートモフェティル(mycophenolatemofetil)および主としてシクロスポリンAのようなシクロスポリンは公知である。現代の免疫抑制剤の最も重要な代表的なものであるシクロスポリン、特にシクロスポリンAを使用する結果として、移植の結果をここ数年にわたり相当に改善することができた。現在1年後の生存率は肝移植については約60%、心臓移植については約80%、そして腎臓移植については90%以上である

内部的(endogenic)免疫系が内部の器官、組織および細胞を攻撃する自己免疫疾患は移植片対宿主反応に匹敵するものである。これらも免疫系の医学的に望ましくない反応であり、これを免疫抑制剤で治療することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】ヨーロッパ特許第0188749号公報
【特許文献2】ドイツ特許第2530372号公報
【特許文献3】ドイツ特許第2621214号公報
【特許文献4】ヨーロッパ特許第0312697号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Hautarzt(1987)279−285(皮膚医(1987)、279〜285頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
免疫抑制剤を使用することの危険性は感染症および悪性疾患の危険の増大に対する身体の防御力を弱めることである。従って本発明の目的は、宿主対移植片反応および移植片対宿主反応を治療し、特に抑制し、弱化しそして/または緩和するのに使用することができるが前記の不利益を有しないで、移植医療に使用される薬剤調合物を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、自己免疫疾患、特に多発性関節炎、多発性硬化症、若年性初期糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、全身狼瘡エリテマトーデス(SLE)、ショーグレン症候群、悪性貧血および慢性活動性(狼瘡様)肝炎を治療することができて免疫抑制の不利益のない薬剤調合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、移植医術に使用するためまたは自己免疫疾患の治療のために或種のジアルキルフマレートを使用すること、およびこのジアルキルフマレートを含有するミクロ錠剤およびミクロペレットの形の薬剤調合物によって達成される。本発明の個々の主題は特許請求の範囲に詳細に特徴付けられている。本発明の調合物は遊離のフマル酸自体を含有していない。
【0016】
投与後の生物学的分解のときに、クエン酸回路に入るかまたはその一部をなす薬剤調合物が−特に高い投与量を与えたときに−潜在的に生じる病気を緩和または治療するので、治療上の重要性が増加する事は公知である。
【0017】
フマル酸は例えばマウスのエールリッヒ腹水腫瘍の生長を阻止し、ミトシンCおよびアフラトキシンの毒作用を減少し、抗乾癬活性および抗微生物活性を示す。注射によるか、経皮膚的そして特に経口的投与したときに、高投与量のフマル酸または例えばジヒドロキシルフマル酸、フマルアミドおよびフマロニトリルのような知られている限りのフマル酸誘導体は、大抵の場合には従来治療を放棄しなければならなかったような受容できない重大な副作用および高い毒性を持っている。
【0018】
驚くべきことに、本出願人の行った研究は、ジメチルフマレートの代謝産物であるメチル水素フマレートが末梢血のヒト単核細胞(末梢血単核細胞=PBMC細胞)中および単離した単球増加において菌体内毒素刺激されたTNF−α分泌を初期に増大させることを示した。更に、本出願人は、フマル酸が試験管内および生体内赤血球凝集反応に、シクロスポリンに匹敵する効果を持つことを示すことができた。
【0019】
驚くべきことに、ジアルキルフマレートは移植医術において使用するためおよび自己免疫疾患の治療のために使用するための薬剤調合物を製造するのに有利なことがわかった。このことは、前記のようなジアルキルフマレートを含有する組成物が宿主対移植片反応、移植片対宿主反応およびその他の自己免疫疾患における免疫系の積極的な変調を許すから生じることである。
【0020】
特許文献1には乾癬治療のためのフマル酸およびフマル酸含有薬剤組成物が既に記載されている。フマル酸とその他のフマル酸誘導体との混合物を含有する乾癬治療用薬剤組成物は特許文献2から公知である。遊離フマル酸を含有することはこれらの医薬にとって必須のことである。
【0021】
特許文献3には乾癬治療のための活性成分としてフマル酸モノメチルエステルおよびその無機塩を含有している医薬が記載されている。非特許文献1にはフマル酸モノエチルエステル塩の使用が記載されている。フマル酸モノアルキルエステル塩およびフマル酸ジエスエルの混合物を含有する乾癬、乾癬性関節炎、神経皮膚炎および局限性クローン腸炎(enteritis regional Crohn)の治療のための薬剤調合物は特許文献4から公知である。
【0022】
特に、本発明の目的は、式
【化1】

(式中、RおよびRは同一かまたは異なる独立した直鎖状、分枝状または環状の飽和または不飽和C20アルキル基であって、この基は場合によりハロゲン(Cl、F、I、Br)、ヒドロキシ基、Cアルコキシ基、ニトロ基またはシアノ基によって置換されていてもよい)で表わされる1種またはそれ以上のジアルキルフマレートを、移植医術で使用するためまたは自己免疫疾患の治療のために使用することによって達成される。
【0023】
20アルキル基、好ましくはCアルキル基、特に好ましくはCアルキル基は例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第2ブチル基、第3ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、2−エチルヘキシル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ビニル基、アリル基、2−ヒドロキシエチル基、2−または3−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、メトキシメチル基または2−または3−メトキシプロピル基である。好ましくは基RまたはRのうちの少なくとも1つはCアルキル基、特にメチル基またはエチル基である。更に好ましくはRおよびRは同一かまたは異ったCアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基または第3ブチル基であり、メチル基およびエチル基が特に好ましい。最も好ましい基RおよびRは同一であり、メチル基またはエチル基である。ジメチルフマレート、メチルエチルフマレートおよびジエチルフマレートが特に好ましい。
【発明の効果】
【0024】
重大な腎不全またはリンパ球増殖系の疾患を起こすシクロスポリンのような従来技術の物質と比較して、先に列挙した使用のための本発明のフマル酸誘導体による治療には重大な副作用は殆んど起らない。
【0025】
とりわけシクロスポリンの免疫抑制作用はTh−1細胞形成の阻害によって起こる。本出願人の試験管実験が示しているように、フマレートはTh−1型のサイトカインパターンをTh−2型のサイトカインパターンに移行させる。
【0026】
特に移植片対宿主反応および宿主対移植片反応または多発性硬化症のようなその他の自己免疫疾患において常に必要な長期の治療および予防の観点から、本発明によるジアルキルフマレートの使用の予期されない効果は非常に重要である。シクロスポリンとフマル酸誘導体との組合せ治療において、先の化合物の毒性副作用は実質的に予想外に減少される。更に、本発明によるジアルキルフマレートの使用は、重大な副作用の伴うことが知られている自己免疫疾患のコルチコステロイド治療に置き換えられる点でも重要である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明により使用されるジアルキルフマレートは技術水準の公知の方法によって製造される(例えば特許文献4参照)。
【0028】
好ましくは活性成分は、場合によりカプセルまたは袋中の錠剤、ミクロ錠剤、ペレットまたは顆粒体の形の経口調合物を製造するために使用される。場合によりカプセルまたは袋の中に満たしたミクロ錠剤またはペレットの形の調合物が好ましく、また本発明の主題である。経口調合物は腸溶被覆を施されていてもよい。カプセルは軟質または硬質ゼラチンカプセルである。
【0029】
本発明によって使用されるジアルキルフマレートは単独でまたは幾つかの化合物の混合物として、場合により通常の担体および賦形と組合せて使用される。使用量は得られる調合物がフマル酸10〜300mgに相当する量の活性成分を含有するように選択される。
【0030】
本発明による好ましい調合物は全量で10〜300mgのジメチルフマレートおよび/またはジエチルフマレートを含有している。
【0031】
好ましい実施態様によれば、ペレットまたはミクロ錠剤の大きさまたは平均径はそれぞれ300〜2000μmの範囲内、特に500〜1000μmの範囲内にある。
【0032】
移植片対宿主反応(前記参照)の外に、処理するべき次の自己免疫疾患が挙げられる:
多発性関節炎、多発性硬化症、移植片対宿主反応、若年性初期糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、全身性狼瘡エリテマトーデス(SCE)ショーグレン症候群、悪性貧血および慢性活動性(狼瘡様)肝炎。広義における自己免疫疾患には乾癬、乾癬性関節炎、神経皮膚炎および局限性クローン腸炎が含まれる。
【0033】
前記のようなミクロペレット、ミクロ錠剤、カプセル(例えば軟質および硬質ゼラチンカプセル)、顆粒体および錠剤の形の経口投与用調合物の外に、適している薬剤調合物は軟膏、プラスター、ローションまたはシャワー調合物の形の皮膚および経皮膚投与のための調合物、および生薬またはミクロ浣腸のような直腸投与のための水性ミクロ分散物、水中油型エマルジョンまたは油状溶液の形の経腸投与のための調合物である。ミクロ錠剤またはミクロペレットの形の薬剤調合物は、乾癬、乾癬性関節炎、神経皮膚炎および局限性クローン腸炎を含む前記したすべての自己免疫疾患の治療に好ましいものであり、また本発明の主題である。
【0034】
本発明によれば、ジアルキルフマレートによる治療は器官移植において通常使用される三重薬(triple drug)治療の第1種またはそれ以上の調合物またはシクロスポリンA単独と組合せて行うこともできる。この目的のために、投与される調合物はそれぞれ公知の投与量または全量で活性成分の組合せを含有することができる。同様に治療の組合せは別個の調合物を同一かまたは異なる経路で平行投与することからなる。場合により、本発明によって投与されたフマル酸誘導体以外に含有されている活性成分の投与量を減少できる利点もある。
【0035】
本発明によるジアルキルフマレートの使用の他の実施態様においては、前記ジアルキルフマレートの適用に続いてシクロスポリンのような免疫抑制剤による薬剤治療を行うことである。このことは前記フマル酸誘導体の1週間またはそれ以上にわたる適用に1週間またはそれ以上のシクロスポリン治療が続くことを意味する。このことによりシクロスポリンAの投与量が減少され、長期治療における副作用の発生率が相当に減少されることになる。
【0036】
好ましいミクロ錠剤の形でのジアルキルフマレートの投与により、通常の錠剤を投与したときに既に減少されるがなお観測される胃腸管刺激および副作用はフマル酸誘導体および塩によって更に減少される。
【0037】
通常の錠剤を投与すると、錠剤の成分が高すぎる濃度で腸内に放出され腸粘膜の局部的刺激を起こすと思われる。この局部的刺激は胃腸副作用に答えることのできる非常に高い濃度のTNF−αを短期間放出する。他方において、カプセル中の腸溶被覆したミクロ錠剤を適用したときに、腸内上皮細胞内で活性成分の局部的濃度を非常に低下させることができる。ミクロ錠剤は胃によって放出量を増加し、蠕動運動によって小腸内を通過するので活性成分の分配が改善される。
【0038】
このことは同じ投与量の腸溶被覆ミクロ錠剤が胃の中では既に分散されており、それが腸に向けて少量部ずつ通過し、そこで活性成分が少量宛放出されることを意味する。このことは腸上皮細胞の局部的刺激およびTNF−αの放出を回避するものである。こうして通常の錠剤に比較して胃腸管系内でのミクロ錠剤の耐性が改善される。
【0039】
更に、本発明によって使用されるジアルキルフマレートはそれ自体は活性成分ではなく、体内で活性成分に転化されるいわゆる前薬剤(prodrug) であるので、吸収が向上する。
【実施例】
【0040】
本発明によるジアルキルフマレートの使用を説明するために、好ましい薬剤の種々の実施例を以下に記載する。
【0041】
製造例
原則として、本発明による錠剤またはミクロ錠剤の形の経口調合物は従来の錠剤化法によって製造することができる。このような従来の錠剤化法の代りに、直接錠剤化法や溶融法および噴霧乾燥法による固体分散物を作る方法のようなその他の錠剤製造方法が使用できる。
【0042】
錠剤には腸溶被覆を施すことができる。腸溶被覆は従来の被覆パン内で施されまたは噴霧されまたは流動床装置内で施される。錠剤はフィルム被覆を施すこともできる。
【0043】
実施例1
フマル酸96mgに相当するジメチルフマレート120.0mgを含有するカプセル中の腸溶被覆を施したミクロ錠剤の製造
【0044】
必要な予防対策(呼吸マスク、手袋、保護衣など)をして、ジメチルフマレート12.000kgを粉砕し、混合し、ふるい800により均一化する。次いで次の組成の賦形剤混合物を作る:
デンプン誘導体(STA−RX1500)17.50kg、
微結晶セルロース(AvicelPH101) 0.30kg、
PVP(Kollidon120)0.75kg、
Primogel4.00kg、
コロイド状ケイ酸(Aerosil)0.25kg。
活性成分を全粉末混合物に添加し、混合し、ふるい200により均一化し、ポリビニルピロリドン(Kollidonk25)の2%水溶液を用い常法により加工して結合顆粒体を得、次いで乾燥状態で他の相と混合する。この他の相はステアリン酸マグネシウム0.50kgおよびタルク 1.50kgからなる。
【0045】
次にこの粉末混合物を常法によりプレスして総重量 10.0mgおよび径 2.0mmの凸型錠剤を得る。
【0046】
胃酸に対する抵抗を得る一例として、ヒドロキシプロピルメチルセルロールフタレート(HPMC, Pharmacoat HP50) 2.250kgの溶液を次の溶剤混合物に少量宛溶解する:
アセトン 13.00 l、
エタノール(94重量%、2%ケトンで変性)13.50 l
脱ミネラル水 1.50 l 。
可塑剤としてヒマシ油(0.240kg) を仕上溶液に添加し、常法により錠剤芯に少量宛施す:
【0047】
乾燥終了後、同じ装置の中でフィルム被覆として次の組成物を施す:
タルク 0.340kg、
酸化チタン(VI) Cronus RN 56 0.400kg、
着色ラッカー L−Rot−lack 86837 0.324kg、
EudragitE 12.5% 4.800kg、
下記組成の溶剤に混合したポリエチレングリコール 6000、pH 11 XI:
2−プロパノール 8.170kg、
脱ミネラル水 0.200kg、
グリセリントリアセテート(トリアセチン) 0.600kg。
【0048】
この後、腸溶被覆を施したミクロ錠剤は正味重量400mgの硬質ゼラチンカプセルに充填し、シールされる。
【0049】
実施例2
フマル酸96mgに相当するジメチルフマレート120.0mgを含有するカプセル中の腸溶被覆を施されたミクロ錠剤の製造
【0050】
ジメチルフマレート12.000kgを粉砕し、上記と同様にして均一化する。次いで次のような組成の賦形剤混合物を作る:
微結晶セルロース(AvicelPH200) 23.20kg、
Croscarmellose ナトリウム(AC−Di−SOL−SP−711) 3.00kg、
タルク 2.50kg、
無水シリカ(Aerosil 200) 0.10kg、
ステアリン酸マグネシウム 1.00kg。
次に活性成分を全粉末混合物に添加し、均一に混合する。直接錠剤化により、この粉末混合物を次いで総重量 10.0mgおよび径 2.00mmの凸型錠剤にプレスする。
【0051】
この後、Eudragit L 0.94gを含むイソプロパノールの溶液を作る。この溶液はジブチルフタレート 0.07kgを含有している。この溶液を錠剤芯に噴霧する。この後、Eudragit LD−55 17.32kgおよびミクロタルク 2.80kg、Macrogol 6000 2.00kgおよびジメチコン(dimeticon) 0.07kgの混合物を水中に分散させた液を作り、錠剤芯に噴霧する。
【0052】
次いで、腸溶被覆を施されたミクロ錠剤を正味重量 650mgの硬質ゼラチンカプセルに充填し、シールする。
【0053】
実施例3
フマル酸 40mgに相当するジメチルフマレート 50.0mgを含有するカプセル中のミクロペレットの製造。
【0054】
ジメチルフマレート 5.000kgを粉砕し、前記のように均一化する。更に、エタノール中のポリビニルピロリドン(Kollidon K30)の2%(m/v)溶液2lを作る。被覆パン中の微小ペレット 7.250kgを僅かに温まるまで一部のKollidon K−30溶液を噴霧する。次にペレットが乾燥するまで活性成分を少量宛添加する。この湿潤/乾燥工程はすべての活性成分が添加されるまで続けられる。次にペレットを完全に乾燥するまで動かし続ける。
【0055】
この後、ペレットを硬質ゼラチンカプセルに充填する(126.5mg ペレット/カプセル)。
【0056】
実施例4
フマル酸 88mgに相当するジメチルフマレート 110.0mgを含有する腸溶被覆されたカプセルの製造。
【0057】
ジメチルフマレート 11.000kgを、デンプン 14.00kg、ラクトース 5.65kg、微結晶セルロース(Avicel) 2.00kg、ポリビニルピロリドン(Kollidon25) 1.00kgおよび Primogel2.443kgからなる混合物中で激しく混合し、必要な予防対策(呼吸マスク、手袋、保護衣)をしてふるい800により均一化する。
【0058】
ポリビニルピロリドン(KollidonK25)の2%水溶液を使用して、全粉末混合物を常法により結合顆粒体中で処理し、乾燥したときに外側相と混合する。この外側の相はコロイド状ケイ酸(Aerosil) 0.350kg、ステアリン酸マグネシウム 0.500kgおよびタルク 1.500kgからなる。この均一な混合物を 400mgの適当なカプセルに少量宛充填し、次いでカプセルにはヒドロキシプロピルメチルセルロースステアレートおよび可塑剤としてのヒマシ油からなる腸溶被覆を常法により施す。硬質ゼラチンカプセルを使用する代りにセルロースアセテートフタレート(CAP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)の混合物からなる適当な腸溶被覆を施されたカプセルに充填することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
器官および細胞の移植において宿主対移植片反応または移植片対宿主反応を治療するための薬剤調合物の製造のために1種またはそれ以上のジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項2】
若年性初期糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、全身性狼瘡エリテマトーデス(SLE)、ショーグレン症候群、悪性貧血および慢性活動性(狼瘡様)肝炎からなる群から選択された自己免疫病を治療するための薬剤調合物の製造のために1種またはそれ以上のジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項3】
移植医術で使用するためまたは若年性初期糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、全身性狼瘡エリテマトーデス(SLE)、ショーグレン症候群、悪性貧血および慢性活動性(狼瘡様)肝炎からなる群から選択された自己免疫病を治療するための薬剤調合物の製造のために、式
【化1】

(式中、RおよびRは同一かまたは異なる独立した直鎖状、枝分れ状または環式の飽和または不飽和C1〜20アルキル基であって、この基は場合によりハロゲン(Cl、F、I、Br)、ヒドロキシ基、C1〜4アルコキシ基、ニトロ基またはシアノ基によって置換されていてもよい)で表わされる1種またはそれ以上のジアルキルフマレートを請求項1または2に記載のように使用すること。
【請求項4】
基RおよびRがメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第2−ブチル基、第3−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、2−エチルヘキシル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ビニル基、アリル基、2−ヒドロキシエチル基、2−および/または3−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、メトキシエチル基または2−または3−メトキシプロピル基であることを特徴とする請求項3に記載のようにジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項5】
およびRが同一であってメチル基またはエチル基であることを特徴とする請求項3または4に記載のようにジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項6】
活性成分を、場合によりカプセルまたは袋(sachet)中の、錠剤、ミクロ錠剤、ペレットまたは顆粒体の形の経口調合物に処方する請求項1〜5の何れかに記載のようにジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項7】
ペレットまたはミクロ錠剤の平均粒径がそれぞれ300〜2000μmの範囲内にあることを特徴とする請求項6に記載のようにジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項8】
調合物が軟質または硬質ゼラチンカプセルの形で存在することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のようにジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項9】
調合物がフマル酸10〜300mgに相当する量の活性成分を含有する請求項1〜8の何れかに記載のように使用すること。
【請求項10】
投与単位の薬剤が腸溶皮を施こされている請求項6〜9の何れか1項に記載のようにジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項11】
薬剤が、皮膚および経皮投与のための調合物、経腸投与のための調合物または直腸投与のための調合物の形で使用されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のようにジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項12】

【化1】

(式中、RおよびRは同一かまたは異なる独立した直鎖状、枝分れ状または環式の飽和または不飽和C1〜20アルキル基であって、この基は場合によりハロゲン(Cl、F、I、Br)、ヒドロキシ基、C1〜4アルコキシ基、ニトロ基またはシアノ基によって置換されていてもよい)で表わされる1種またはそれ以上のジアルキルフマレート、および場合により適当な担体および賦形剤からなり、移植医術において使用するため、または多発性関節炎、多発性硬化症、若年性初期糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、全身狼瘡エリテマトーデス(SLE)、ショーグレン症候群、悪性貧血、慢性活動性(狼瘡様)肝炎、乾癬、乾癬性関節炎、神経皮膚炎および局限性クローン腸炎のような自己免疫疾患の治療のために使用するミクロ錠剤またはペレットの形の薬剤調合物。
【請求項13】
ジメチルフマレート、ジエチルフマレートまたはメチルエチルフマレートを含む請求項12に記載の調合物。
【請求項14】
フマル酸10〜300mgに相当する量の活性成分を含む請求項12または13に記載の調合物。
【請求項15】
多発性関節炎、多発性硬化症、若年性初期糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、全身狼瘡エリテマトーデス(SLE)、ショーグレン症候群、悪性貧血および慢性活動性(狼瘡様)肝炎からなる群から選択された自己免疫疾患を治療するためのミクロ錠剤またはペレットの形の薬剤調合物の製造のために1種またはそれ以上のジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項16】

【化1】

(式中、RおよびRは同一かまたは異なる独立した直鎖状、枝分れ状または環式の飽和または不飽和C1〜20アルキル基であって、この基は場合によりハロゲン(Cl、F、I、Br)、ヒドロキシ基、C1〜4アルコキシ基、ニトロ基またはシアノ基によって置換されていてもよい)で表わされる1種またはそれ以上のアルキルフマレートを、多発性関節炎、多発性硬化症、若年性初期糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、全身狼瘡エリテマトーデス(SLE)、ショーグレン症候群、悪性貧血および慢性活動性(狼瘡様)肝炎からなる群から選択された自己免疫疾患を治療するための薬剤調合物製造のために請求項15に記載のように使用すること。
【請求項17】
基RおよびRがメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第2−ブチル基、第3−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、2−エチルヘキシル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ビニル基、アリル基、2−ヒドロキシエチル基、2−および/または3−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、メトキシエチル基または2−または3−メトキシプロピル基であることを特徴とする請求項16に記載のようにジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項18】
およびRが同一であってメチル基またはエチル基であることを特徴とする請求項15または16に記載のようにジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項19】
活性成分を錠剤、ミクロ錠剤、カプセル中のペレットまたは顆粒体の形の経口調合物に処方する請求項15〜18の何れかに記載したようにジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項20】
ペレットまたはミクロ錠剤の平均粒径がそれぞれ300〜2000μmの範囲内にあることを特徴とする請求項15〜19の何れか1項に記載したようにジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項21】
調合物が軟質または硬質ゼラチンカプセルの形で存在することを特徴とする請求項19に記載のようにジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項22】
調合物がフマル酸10〜300mgに相当する量の活性成分を含有する請求項15〜21の何れかに記載したようにジアルキルフマレートを使用すること。
【請求項23】
投与単位の薬剤が腸溶皮を施こされている請求項19〜22の何れかに記載したようにジアルキルフマレートを使用すること。

【公開番号】特開2012−255020(P2012−255020A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−185136(P2012−185136)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2009−185402(P2009−185402)の分割
【原出願日】平成11年10月29日(1999.10.29)
【出願人】(500295405)フーマファーム アーゲー (5)
【住所又は居所原語表記】Haldenstrasse 24a 6006 Luzern SWITZERLAND
【Fターム(参考)】