説明

ジイモニウム塩化合物およびその用途

アンチモンや砒素を含有せず、さらに優れた安定性、特に耐熱性、耐光性、耐湿熱性を有する近赤外線吸収化合物、さらにその近赤外線吸収化合物を用いて作製した耐性に優れた赤外線吸収フィルター、光記憶媒体および樹脂組成物を提供する。 下記構造を有することを特徴とするジイモニウム塩化合物、およびこれを用いることを特徴とする組成物。
【化1】


(式中、RからRは互いに独立に水素原子または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基をあらわし、RおよびR10は互いに独立にハロゲン原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基をあらわす。また環A及びBはさらに置換基を有していてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外領域に吸収を有するジイモニウム塩化合物およびその用途に関する。特に劇物に該当せず、耐熱性、耐光性および溶解度等に優れ、その用途が拡大されたジイモニウム塩化合物およびそれを用いた赤外線吸収フィルター、光情報記録媒体およびその樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、近赤外線吸収剤としてのジイモニウム塩化合物は、広く知られており(例えば特許文献1〜3参照)、近赤外線吸収フィルター、断熱フィルム及びサングラス等に広く利用されている。しかしながら、これらの化合物の中では対イオンが六フッ化アンチモン酸イオン、六フッ化砒素イオンなどであるものが耐熱性に優れ、中でも六フッ化アンチモン酸イオンの化合物が主に使用されていた。しかしアンチモンはそれを含有するだけで、劇物に該当する為、近年、重金属等が規制を受ける産業分野、特に電気材料分野ではこれらの金属を含まない化合物が望まれていた。これらを解決する手段として、過塩素酸イオン、六フッ化リン酸イオン、ホウフッ化イオン等を用いる方法があるが、耐熱性や耐湿熱性を考えると、これらの対イオンでは不十分である。更にナフタレンジスルホン酸などの有機対イオンとした化合物も提案されているが(例えば特許文献2参照)、モル吸光係数が低く緑味を帯びている為、実際上使用することができなかった。またトリフルオロメタンスルホン酸イオンなどを用いたものも知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平7−51555号公報(第2頁)
【特許文献2】特開平10−316633号公報(第5頁)
【特許文献3】特公昭43−25335号公報(第7−14頁)
【発明の開示】
【0003】
本発明はこの様な状況に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、アンチモンを含有せず、さらに優れた安定性、特に耐熱性、耐光性、耐湿熱性を有する近赤外線吸収化合物、さらに溶解度等に優れているため、その用途が拡大されたその近赤外線吸収化合物を用いて作製した赤外線吸収フィルター(特にプラズマディスプレーパネル用)を提供することや耐性に優れた光情報記録媒体および樹脂組成物を提供することにある。
【0004】
本発明者らは前記したような課題を解決すべく鋭意努力した結果、下記式(1)の構造を有する近赤外線吸収化合物が上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
【0005】
即ち本発明は、
(1)下記一般式(1)の構造を有することを特徴とするジイモニウム塩化合物;
【0006】
【化1】

(式中、RからRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基をあらわし、RおよびR10はそれぞれ独立にハロゲン原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基をあらわす。また環A及びBはさらに置換基を有していてもよい。)
(2)一般式(1)のRからRの置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基の置換基が互いにそれぞれ独立にハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボンアミド基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アリール基またはアルコキシル基である(1)に記載のジイモニウム塩化合物;
(3)一般式(1)のRおよびR10がフッ素原子を有する脂肪族炭化水素基である(1)または(2)に記載のジイモニウム塩化合物;
(4)一般式(1)のRおよびR10がトリフルオロメチル基である(1)から(3)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物;
(5)一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つがシアノ基を有する脂肪族炭化水素基である(1)から(4)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物;
(6)一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つがシアノ基を有する脂肪族炭化水素基であり、かつ少なくとも1つがシアノ基を有さない脂肪族炭化水素基である(1)から(4)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物;
(7)一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つがハロゲン原子を有する脂肪族炭化水素基である(1)から(4)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物;
(8)一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つがアルコキシル基を有する脂肪族炭化水素基である(1)から(4)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物;
(9)一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つがアリール基を有する脂肪族炭化水素基である(1)から(4)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物;
(10)一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つが直鎖(C1−C6)アルキル基である(1)から(4)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物;
(11)一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つが直鎖(C1−C3)アルキル基である(1)から(4)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物;
(12)一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つが分鎖のアルキル基である(1)から(4)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物;
(13)一般式(1)のRからRがすべて末端で分鎖しているアルキル基である(1)から(4)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物;
(14)一般式(1)のRからRがiso−ブチル基又はiso−アミル基である(1)から(4)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物;
(15)一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つが不飽和の脂肪族炭化水素基である(1)から(4)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物;
(16)(1)から(15)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物を含有することを特徴とする組成物;
(17)(1)から(15)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物を含有する層を有する近赤外線吸収フィルター;
(18)(1)から(15)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物を含有する層を有するプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルター;
(19)(1)から(15)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物を記録層に含有することを特徴とする光情報記録媒体;
(20)(1)から(15)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物並びにシアニン系色素、スクワリリウム系色素、インドアニリン系色素及びポリメチン系色素からなる群から選ばれた1種以上の有機色素を記録層に含有することを特徴とする光情報記録媒体;
(21)(1)から(15)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物;
(22)下記一般式(2)の化合物を酸化して得られた陽イオンと、陰イオンとの塩からなる化合物であって、該陰イオンが該陽イオンを中和させるのに必要な、下記一般式(3)のアニオンであることを特徴とする近赤外線吸収化合物;
【0007】
【化2】

(式中、RからRは互いに独立に水素原子または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基をあらわし、また環A及びBはさらに置換基を有していてもよい。)
【0008】
【化3】

(式中、RおよびR10は互いに独立にハロゲン原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基をあらわす。)
(23)下記式(5)
【0009】
【化4】

(式中、n−Buはn−ブチル基をあらわす。)
で表されるジイモニウム塩化合物;
(24)ジクロロメタン中の最大吸収波長(λmax)が1102nmである(23)に記載のジイモニウム塩化合物;
(25)下記式(6)
【0010】
【化5】

(式中、i−Buはiso−ブチル基をあらわす。)
で表されるジイモニウム塩化合物;
(26)一般式(2)
【0011】
【化6】

(式中、RからRは互いに独立に水素原子または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基をあらわし、また環A及びBはさらに置換基を有していてもよい。)
で表されるフェニレンジアミン化合物に、鉱酸の銀塩と一般式(3)
【0012】
【化7】

(式中、RおよびR10は互いに独立にハロゲン原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基をあらわす。)
で表されるアニオンのアルカリ金属塩とを添加して酸化反応を行うことを特徴とする一般式(1)
【0013】
【化8】

(式中、RからR10は前記と同じ意味を表す)
で表されるジイモニウム塩化合物の製造方法;
(27)一般式(1)のRからRがすべてエチル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、iso−アミル基、3−シアノ−n−プロピル基および4−シアノ−n−ブチル基からなる群から選ばれた同一の基であり、RおよびR10がトリフルオロメチル基である(26)に記載のジイモニウム塩化合物の製造方法;
(28)鉱酸の銀塩が硝酸銀であり、アニオンのアルカリ金属塩がカリウム塩である(26)または(27)に記載のジイモニウム塩化合物の製造方法;
(29)水溶性極性溶媒中で反応を行なう(26)から(28)のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物の製造方法;
に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のジイモニウム塩化合物はジイモニウムカチオンと、対イオンとしてのジ(アルキルスルホニル)イミドアニオンの塩を2個有するものであり、一般式(1)で表される。
【0015】
【化9】

一般式(1)においてRおよびR10は互いに独立にハロゲン原子を有していてもよい脂肪族炭化水素をあらわす。脂肪族炭化水素としては飽和及び不飽和の直鎖、分鎖及び環状のアルキル基が挙げられ、炭素数は1から36が好ましく、さらに好ましくは置換基を有していてもよい飽和の直鎖アルキル基で、炭素数は1から20であるものが挙げられ、炭素数1〜3が最も好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が好ましく、さらにはフッ素、塩素、臭素原子が好ましく、フッ素原子が最も好ましい。具体的な例を挙げるとRとR10が互いに独立にメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、モノフルオロメチル基、ジクロロメチル基、モノクロロメチル基、ジブロモメチル基、ジフルオロクロロメチル基、エチル基、ペンタフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロクロロエチル基、ジフルオロエチル基、モノフルオロエチル基、トリフルオロヨードエチル基、プロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、トリフルオロプロピル基、ジフルオロプロピル基、モノフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロオクチルエチル基などの飽和の直鎖アルキル基、アリル基、テトラフルオロアリル基、トリフルオロエチレン基、ペルフルオロブチルエチレン基などの不飽和のアルキル基、イソプロピル基、ペンタフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−3−メチルブチル基、ペルフルオロ−3−メチルヘキシル基などの分鎖のアルキル基、シクロヘキシル基などの環状アルキル基などが挙げられ、一般的にはRとR10が同じであるものが好ましい。さらにRとR10が結合し、環状のアルキル基を形成することも出来る。
【0016】
好ましくはRとR10がトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、モノフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ジフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、トリフルオロプロピル基などが挙げられ、さらに好ましくはトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基であり、最も好ましくはトリフルオロメチル基である。上記の各基において特に断りのない限りアルキル部分はノルマル(直鎖)である。
【0017】
一般式(1)において環A及びBにはそれぞれ、1,4−位以外に1〜4個の置換基を有していてもよい。結合しうる置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシル基、低級アルコキシ基、シアノ基、低級アルキル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等のC1〜C5のアルコキシ基が挙げられ、低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基等のC1〜C5のアルキル基が挙げられる。A及びBが置換基を有していないか、ハロゲン原子(特に塩素原子、臭素原子、フッ素原子)、メチル基若しくはシアノ基で置換されているものが好ましい。
【0018】
なお、Bに置換基を有する場合は、4つのB環がすべて同じであるもの、更に置換基の位置はフェニレンジアミン骨格に結合する窒素原子に対してm−位であるものが合成上好ましい。さらに環A及びBには1,4−位以外に置換基を有していないものが合成上好ましい。
【0019】
からRは互いに独立に水素原子または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基をあらわす。脂肪族炭化水素基としては飽和及び不飽和の直鎖、分鎖及び環状の脂肪族炭化水素から水素原子1個を除いた基を意味する。炭素数は1から36が好ましく、さらに好ましくは炭素数が1から20であるものが挙げられる。具体的な例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−アミル基(iso−ペンチル基)、t−ペンチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ペンチニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、イソプロペニル基、イソヘキセニル基、シクロヘキセニル基、シクロペンタジエニル基、エチニル基、プロピニル基、ヘキシニル基、イソヘキシニル基、シクロヘキシニル基等が挙げられる。この中で、さらに好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、ter−ブチル基、n−ペンチル基、iso−アミル基(iso−ペンチル基)、t−ペンチル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ペンチニル基などのC−Cの直鎖、分鎖の飽和脂肪族炭化水素基または不飽和の脂肪族炭化水素基が好ましい。またこれらはさらに置換されていてもよい。
【0020】
置換基としては、例えばハロゲン原子(例、F、Cl、Br)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基、イソブトキシ基など)、アルコキシアルコキシ基(例、メトキシエトキシ基など)、アリール基(例、フェニル基、ナフチル基などでこのアリール基はさらに置換基を有していてもよい)、アリールオキシ基(例、フェノキシ基など)、アシルオキシ基(例、アセチルオキシ基、ブチリルオキシ基、ヘキシリルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などこのアリールオキシ基はさらに置換基を有していてもよい)、アミノ基、アルキル置換アミノ基(例、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基など)、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、アミド基(例、アセトアミド基など)、スルホンアミド基(例、メタンスルホンアミド基など)、スルホ基が挙げられる。これらの置換基のうち、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボンアミド基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アリール基又はアルコキシル基等が好ましい。
【0021】
好ましいR〜Rは、無置換の直鎖アルキル基(炭素数1から6、より好ましくは炭素数1から3のアルキル基)、無置換の分鎖アルキル基(特に炭素数1から8の分鎖アルキル基)、無置換の不飽和脂肪族炭化水素基(特に炭素数1から8の不飽和脂肪族炭化水素基)、シアノ置換アルキル基(特に炭素数1から8のシアノアルキル基)、アルコキシ置換アルキル基(特に炭素数1から3のアルコキシ置換炭素数1から8のアルキル基)、ハロゲン原子置換アルキル基(特にフッ素原子置換の炭素数1から8のアルキル基)、アリール置換アルキル基(特にフェニル置換の炭素数1から5のアルキル基)である。
【0022】
特にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、iso−アミル基(イソペンチル基)、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の(C1〜C8)アルキル基、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、2−シアノプロピル基、4−シアノブチル基、3−シアノブチル基、2−シアノブチル基、5−シアノペンチル基、4−シアノペンチル基、3−シアノペンチル基、2−シアノペンチル基、3,4−ジシアノブチル基等のシアノ置換(C1〜C6)アルキル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、4−メトキシブチル基、4−エトキシブチル基、5−エトキシペンチル基、5−メトキシペンチル基等のアルコキシ置換(C1〜C6)アルキル基、トリフルオロメチル基、モノフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロブチルエチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘキシルエチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロオクチルエチル基などのフッ化(C1〜C8)アルキル基である。
【0023】
これらは混合して用いることも好ましく、例えば無置換の直鎖アルキル基とシアノ置換アルキル基を混合したものや無置換の分鎖アルキル基とシアノ置換アルキル基を混合したものや無置換の直鎖アルキル基と無置換の分鎖アルキル基を混合したものなどが好ましい。
【0024】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、例えば特許文献3に記載された方法に準じた方法で得ることができる。即ち、p−フェニレンジアミンと1−クロロ−4−ニトロベンゼンをウルマン反応させて得られた生成物を還元することにより得られる下記一般式(4)
【0025】
【化10】

(式(4)中、環A及びBは前記で定義された通りである。)
で表される化合物を有機溶媒中、好ましくはDMF(ジメチルホルムアミド)、DMI(ジメチルイミダゾリジノン)又はNMP(N−メチルピロリドン)等の水溶性極性溶媒中、30〜160℃、好ましくは50〜140℃で、所望のR〜Rに対応するハロゲン化化合物(例えば、R〜Rがn−Cのときはn−CBr)と反応させて、全ての置換基(R〜R)が同一である化合物(以下、全置換体と記す)(一般式(2))を得ることができる。また、RからRのすべてが同じ置換基である化合物以外の下記一般式(2)を合成する場合(例えば下記化合物例No.34の化合物の前駆体)には、先に所定のモル数(上記一般式(4)1モル当たり4モル)の試薬(n−CBr)と反応させてR〜Rのうち4つにn−ブチル基を導入した後、残りの置換基(iso−ブチル基)を導入するのに必要なモル数(上記式(4)のアミン体1モル当たり4モル)の対応する試薬(iso−CBr)と反応させることによっても一般式(2)の化合物は合成できる。例示したNo.34の化合物の製造方法と同様の方法により、全置換体以外の任意の化合物を得ることができる。
【0026】
【化11】

その後、上記で合成した一般式(2)の化合物を、有機溶媒中、好ましくはDMF、DMI、NMP等の水溶性極性溶媒中、0〜100℃、好ましくは5〜70℃で下記一般式(3)に対応する酸化剤(例えば銀塩)を2当量添加して酸化反応を行う。または、上記で合成した一般式(2)の化合物を硝酸銀、過塩素酸銀、塩化第二銅等の酸化剤で酸化した後、その反応液に、一般式(3)のアニオンの酸もしくは塩を添加する。或いは、上記で合成した一般式(2)の化合物に上記硝酸銀、過塩素酸銀等の鉱酸の銀塩と一般式(3)のアニオンの酸もしくはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ塩とを添加して酸化反応を行なう方法によっても一般式(1)で表される化合物を合成することが出来る。
【0027】
【化12】

次に、本発明の一般式(1)で示される近赤外線吸収化合物の具体例を表1に示す。表中、R〜Rに関し、i−は「iso−」のように分鎖の状態を表し、PHはフェニル基を表す。A及びBに関し、1,4−位以外が無置換の場合は「4H」と表記し、置換位置はフェニレンジアミン骨格に結合する窒素原子に対しての置換位置である。また、R〜Rに関し、R〜Rが全てブチル基である場合には「4(n−C,n−C)」と略記し、また例えば、1つがiso−ペンチル基で残りがn−ブチル基である場合、即ち、4組の置換基の組み合わせの一つにiso−ペンチル基が含まれ、残りの3組が全てn−ブチル基である場合には「3(n−C,n−C)(n−C,i−C11)」と略記する。また、窒素原子と隣接する2つのRが結合しピペリジン環を形成したものを「(ピペリジン環)」と記す。さらに、cyはシクロを意味する。また、R及びR10で、炭素原子数3以上のアルキル部分は何れもノルマル(直鎖)である。
【0028】
【表1】






本発明の樹脂組成物は、樹脂中に本発明のジイモニウム塩化合物を含有するものである。
【0029】
用いうる樹脂の具体例として、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル等のビニル化合物、及びそれらのビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリシアン化ビニリデン、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、シアン化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体、等のビニル化合物又はフッ素系化合物の共重合体、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素を含む樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリペプチド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0030】
本発明の樹脂組成物を作製する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば次のような、それ自体公知の方法が利用できる。例えば、(1)樹脂に本発明のジイモニウム塩化合物を混練し、加熱成形して樹脂板又はフィルムを作製する方法、(2)本発明のジイモニウム塩化合物と樹脂モノマー又は樹脂モノマーの予備重合体を重合触媒の存在下にキャスト重合し、樹脂板又はフィルムを作製する方法、(3)本発明のジイモニウム塩化合物を含有する塗料を作製し、透明樹脂板、透明フィルム、又は透明ガラス板にコーティングする方法、及び、(4)本発明のジイモニウム塩化合物を接着剤に含有させて、合わせ樹脂板、合わせ樹脂フィルム、又は合わせガラス板を作製する方法等である。
【0031】
上記(1)の作製方法としては、用いる樹脂によって加工温度、フィルム化(樹脂板化)条件等が多少異なるが、通常、本発明のジイモニウム塩化合物を基材樹脂の粉体又はペレットに添加し、150〜350℃に加熱、溶解させた後、成形して樹脂板を作製する方法、押し出し機によりフィルム化(樹脂板化)する方法等が挙げられる。本発明のジイモニウム塩化合物の添加量は、作製する樹脂板又はフィルムの厚み、吸収強度、可視光透過率等によって異なるが、一般的にバインダー樹脂の重量に対して、0.01〜30重量%、好ましくは0.03〜15重量%の量で使用される。
【0032】
上記の化合物と樹脂モノマー又は樹脂モノマーの予備重合体を重合触媒の存在下にキャスト重合し、作製する上記(2)の方法において、それらの混合物を型内に注入し、反応させて硬化させるか、又は金型に流し込んで型内で硬い製品となるまで固化させて成形する。多くの樹脂がこの過程で成形可能であり、その様な樹脂の具体例としてアクリル樹脂、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコン樹脂、等が挙げられる。その中でも、硬度、耐熱性、耐薬品性に優れたアクリルシートが得られるメタクリル酸メチルの塊状重合によるキャスティング法が好ましい。
【0033】
重合触媒としては公知のラジカル熱重合開始剤が利用でき、例えばベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。その使用量は混合物の総量に対して、一般的に0.01〜5重量%である。熱重合における加熱温度は、一般的に40〜200℃であり、重合時間は一般的に30分〜8時間程度である。また熱重合以外に、光重合開始剤や増感剤を添加して光重合する方法も利用できる。
【0034】
上記(3)の方法としては、本発明のジイモニウム塩化合物をバインダー樹脂及び有機溶媒に溶解させて塗料化する方法、上記化合物を微粒子化して分散して、水系塗料とする方法等がある。前者の方法では例えば、脂肪族エステル樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、芳香族エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル変性樹脂等、又はそれらの共重合樹脂をバインダーとして用いることができる。
【0035】
溶媒としては、ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系の溶媒、又はそれらの混合物の溶媒を用いることができる。本発明のジイモニウム塩化合物の濃度は、作製するコーティングの厚み、吸収強度、可視光透過率によって異なるが、バインダー樹脂に対して、一般的に0.1〜30重量%である。
【0036】
このように作製した塗料を用いて透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明ガラス等の上にスピンコーター、バーコーター、ロールコーター、スプレー等でコーティングして近赤外線吸収フィルターを得ることができる。
【0037】
上記(4)の方法において、接着剤としては、一般的なシリコン系、ウレタン系、アクリル系等の樹脂用、又は合わせガラス用のポリビニルブチラール接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤等の合わせガラス用の公知の透明接着剤が使用できる。本発明のジイモニウム塩化合物を0.1〜30重量%添加した接着剤を用いて透明な樹脂板同士、樹脂板と樹脂フィルム、樹脂板とガラス、樹脂フィルム同士、樹脂フィルムとガラス、ガラス同士を接着して、フィルターを作製する。
【0038】
なお、それぞれの方法で混練、混合の際、紫外線吸収剤、可塑剤等、樹脂成形に用いる通常の添加剤を加えてもよい。
【0039】
本発明の近赤外線吸収フィルターにつき説明する。これは本発明のジイモニウム塩化合物を含有する層を基材上に設けたものでもよく、また基材自体が近赤外線吸収化合物を含有する樹脂組成物(又その硬化物)からなる層であってもよい。基材としては、一般に近赤外線吸収フィルターに使用し得るものであれば特に制限されないが、通常、樹脂製の基材が使用される。近赤外線吸収化合物含有層の厚みは一般に0.1μm〜10mm程度であるが、近赤外線カット率等の目的に応じて適宜決定される。また、近赤外線吸収化合物の含有量も目的とする近赤外線カット率に応じて、適宜決定される。用いうる樹脂としては、上記樹脂組成物と同様な樹脂が挙げられ、樹脂板又は樹脂フィルムに成形した場合、できるだけ透明性の高いものが好ましい。近赤外線吸収フィルターを作製する方法としては、上記樹脂組成物の作製と同様の方法が挙げられる。
【0040】
本発明の赤外線吸収フィルターは赤外線吸収化合物として本発明のジイモニウム塩化合物の1種のみを含有してもよいが、本発明に含まれる2種類以上のジイモニウム塩化合物を併用することも、さらにこれらの化合物と、他の種類の近赤外線吸収化合物を併用して作製してもよい。併用し得る他の近赤外線吸収化合物としては、例えばフタロシアニン系色素、シアニン系色素、ジチオールニッケル錯体等があげられる。また、使用しうる無機金属の近赤外線吸収化合物としては、例えば金属銅又は硫化銅、酸化銅等の銅化合物、酸化亜鉛を主成分とする金属混合物、タングステン化合物、ITO、ATO等が挙げられる。
【0041】
また、フィルターの色調を変えるために、可視領域に吸収を持つ色素(調色用色素)を、本発明の効果を阻害しない範囲で加えてもよい。また、調色用色素のみを含有するフィルターを作製し、後で本発明の近赤外線吸収フィルターを貼り合わせることもできる。
【0042】
この様な近赤外線吸収フィルターは、プラズマディスプレーの前面板に用いられる場合には、可視光の透過率は高いほどよく、少なくとも40%以上、好ましくは50%以上の透過率が必要である。近赤外線のカット領域は、好ましくは750〜1200nm、より好ましくは800〜1000nmであり、その領域の近赤外線の平均透過率が50%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下になることが望ましい。
【0043】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、ディスプレーの前面板の様な用途に限らず、赤外線をカットする必要があるフィルターやフィルム、例えば断熱フィルム、光学製品、サングラス等にも使用することが出来る。
【0044】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、可視光領域は非常に高い透過率でありアンチモンや砒素を含有せず、環境に優しく、近赤外領域は幅広く吸収する優れた近赤外線吸収フィルターである。また従来のアンチモンを含有しない過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ホウフッ化イオンからなる近赤外線吸収フィルターに比べ安定性に優れている。さらに溶解度も十分であり加工性にも優れている。特に、本発明の近赤外線吸収フィルターは耐熱、耐湿熱、耐光性において非常に優れており、熱による分解などの反応を起こしにくいため、可視部の着色がほとんど起こらない近赤外線吸収フィルターを得る事ができる。更にこの様な特徴を有していることから、近赤外線吸収フィルターや例えば断熱フィルム及びサングラスのような近赤外線吸収フィルムに好適に用いることができ、特にプラズマディスプレー用の近赤外線吸収フィルターに好適である。
【0045】
次に本発明の光情報記録媒体につき説明する。
【0046】
本発明の光情報記録媒体は、基板上に記録層を有するもので、該記録層は本発明のジイモニウム塩化合物を含有することを特徴とする。この記録層は、ジイモニウム塩化合物のみで構成されていてもよく、またバインダー等の各種添加剤と混合して含有されていてもよい。この場合、本発明のジイモニウム塩化合物により情報が記録される。
【0047】
また、本発明のジイモニウム塩化合物の混合物を、有機色素により情報が記録される光情報記録媒体の記録層に含有させることによって、該光情報記録媒体の耐光性を向上させることができる。このような光情報記録媒体も本発明の光情報記録媒体の一種である。
【0048】
光情報記録媒体において、本発明のジイモニウム塩化合物と併用しうる有機色素としては、一般的に知られている色素、例えばシアニン系色素、スクワリリウム系色素、インドアニリン系色素、フタロシアニン系色素、アゾ系色素、メロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素等が挙げられる。これら併用しうる有機色素のうちでシアニン系色素、スクワリリウム系色素、インドアニリン系色素、ポリメチン系色素が好ましい。
【0049】
これらの有機色素1モルに対して、ジイモニウム塩化合物の混合物は、一般的に0.01〜10モル、好ましくは0.03〜3モル使用される。
【0050】
本発明の光情報記録媒体は、基板上に本発明のジイモニウム塩化合物及び所望により色素を含有する記録層を設けたもので、必要に応じ、反射層、保護層が設けられる。基板としては既知のものを任意に使用することが出来る。例えば、ガラス板、金属板又はプラスチック板もしくはフィルムが挙げられ、これらを製造するためのプラスチックとしてはアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、非晶質ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等があげられる。基板の形状については、ディスク状、カード状、シート状、ロールフィルム状等種々のものがあげられる。
【0051】
ガラスまたはプラスチック基板上には記録時のトラッキングを容易にするために案内溝を形成させてもよい。また、ガラスまたはプラスチック基板にはプラスチックバインダーまたは無機酸化物、無機硫化物等の下引き層を設けてもよく、下引層は基板より熱伝導率の低いものが好ましい。
【0052】
本発明の光情報記録媒体における記録層は、例えば、本発明のジイモニウム塩化合物および、より好ましくは本発明のジイモニウム塩化合物と他の有機色素を公知の有機溶剤、例えばテトラフルオロプロパノール(TFP)、オクタフルオロペンタノール(OFP)、ジアセトンアルコール、メタノール、エタノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジクロロエタン、イソホロン、シクロヘキサノン等に溶解し、必要に応じて、適当なバインダーを加え、その溶液をスピンコーター、バーコーター、ロールコーター等により基板上に塗布することにより得ることが出来る。その他の方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法もしくは基板を溶液中に漬けるディッピング法によっても得ることができる。ここにおいてバインダ−としてはアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が使用されうる。
【0053】
記録層の膜厚は、記録感度や反射率を考慮すると、好ましくは0.01μm〜5μm、より好ましくは0.02μm〜3μmである。
【0054】
本発明の光情報記録媒体には、必要により記録層の下に下引層を、また記録層上に保護層を設けることが出来、さらに記録層と保護層の間に反射層を設けることが出来る。反射層を設ける場合、反射層は金、銀、銅、アルミニウム等、好ましくは金、銀、もしくはアルミニウムの金属で構成され、これらの金属は単独で使用してもよく、2種以上の合金としてもよい。このものは真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等で成膜される。このような反射層の厚さは、0.02〜2μmである。反射層の上に設けられることのある保護層は、一般に、紫外線硬化樹脂をスピンコート法により塗装した後、紫外線を照射し、塗膜を硬化させて形成されるものである。その他、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等も保護膜の形成材料に用いられる。このような保護膜の厚さは、通常、0.01〜100μmである。
【0055】
本発明の光情報記録媒体における情報の記録、あるいは画像の形成はレーザー、例えば、半導体レーザー、ヘリウム−ネオンレーザー、He−Cdレーザー、YAGレーザー、Arレーザー等の集光したスポット状の高エネルギービームを基板を通して、もしくは基板と反対側から記録層に照射することにより行われ、情報あるいは画像の読み出しは、低出力のレーザービームを照射することにより、ピット部とピットが形成されていない部分の反射光量もしくは透過光量の差を検出することにより行われる。
本発明のジイモニウム塩化合物は最大吸収波長が900nm以上にあり、モル吸光係数も数万から十数万と大きい吸収ピークを有している。また耐熱性、耐光性、耐湿熱性などの安定性試験の結果より、従来のものに比べ変色が少なく、安定性に優れており、また溶解性試験より十分な溶剤溶解性を有しており、加工性の良い赤外線吸収剤として使用することが出来る。
【0056】
本発明の組成物、特に赤外線吸収フィルターは、従来のジイモニウム塩化合物からなる近赤外吸収フィルターに比べ、溶解度も高く加工性に優れており、更に耐熱性、耐湿熱性、耐光性などの安定性に優れている。特にこれらの安定性試験における分解などの反応が起こりにくく、可視部の着色がほとんど起こらない耐熱、耐湿熱、耐光性に優れた近赤外線吸収フィルターである。このような特徴を有していることから、近赤外線吸収フィルターや、例えば断熱フィルム及びサングラスのような近赤外線吸収フィルムに好適に用いる事が出来、特にプラズマディスプレー用の近赤外吸収フィルターに好適である。
【0057】
本発明の光情報記録媒体は従来のジイモニウム塩化合物からなる光情報記録媒体に比べ、式(1)の化合物を含有させることによって耐光安定性を大幅に向上させることが出来る。またこれらの化合物は溶解度も十分であり加工性も優れている。また例えば光情報記録媒体の記録層に当たる有機色素薄膜に、これらの化合物を光安定化材として含有させた場合、繰り返し再生における耐久性、耐光安定性を著しく向上させた光情報記録媒体を提供することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中、「部」、「%」は特に特定しない限り重量基準である。
実施例1
【0059】
(合成例1)
(表1におけるNo.1の化合物の合成)
DMF16.5部中にN,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミン3部を加え、60℃に加熱溶解した後、DMF16.5部に溶解した硝酸銀1.16部とビストリフルオロメタンスルホン酸イミドカリウム塩2.19部を加え、30分間加熱撹拌した。不溶解分を濾別した後、反応液に水を加え、析出した結晶を濾過、水洗、乾燥し、目的の化合物No.1を4.3部得た。
λmax 1102nm(ジクロロメタン)
融点170℃付近:熱分解点(重量減少開始温度)280℃付近(TG−DTA測定)
実施例2
【0060】
(合成例2)
(表1におけるNo.2の化合物の合成)
前記実施例1でN,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンの代わりにN,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(i−ブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンに代えた以外は同様に反応させ、No.2の化合物を4.3部得た。
λmax 1104nm(ジクロロメタン)
融点165℃付近:熱分解点(重量減少開始温度)282℃付近(TG−DTA測定)
実施例3
【0061】
(合成例3)
(表1におけるNo.3の化合物の合成)
硝酸ナトリウム0.58部を水3部に溶解した溶液に、N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(シアノプロピル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミン3.28部とDMF16.5部を加えた。反応液を60℃まで加熱した後、DMF16.5部に溶解した硝酸銀1.16部を加え、30分間撹拌した。不溶解分を濾別した後、反応液にビストリフルオロメタンスルフォン酸イミドカリウム塩2.19部を加え3時間撹拌、水を加えた。析出した結晶を、濾過、水洗、乾燥し目的の化合物No.3を4.5部得た。
λmax 1064nm(ジクロロメタン)
融点180℃付近:熱分解点(重量減少開始温度)282℃付近(TG−DTA測定)
実施例4
【0062】
(合成例4)
(表1におけるNo.4の化合物の合成)
前記実施例1でN,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンの代わりにN,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(i−アミル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンに代えた以外は同様に反応させ、No.4の化合物を3.7部得た。
λmax 1102nm(ジクロロメタン)
融点175℃付近:熱分解点(重量減少開始温度)280℃付近(TG−DTA測定)
実施例5
【0063】
(合成例5)
(表1におけるNo.9の化合物の合成)
前記実施例1でN,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンの代わりにN,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(シアノブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンに代えた以外は同様に反応させ、No.9の化合物を4.1部得た。
λmax 1086nm(ジクロロメタン)
融点145℃付近:熱分解点(重量減少開始温度)277℃付近(TG−DTA測定)
実施例6
【0064】
(合成例6)
(表1におけるNo.12の化合物の合成)
前記実施例1でN,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンの代わりにN,N,N’,N’−テトラキス{p−ジエチルアミノフェニル}−p−フェニレンジアミンに代えた以外は同様に反応させ、No.12の化合物を2.1部得た。
λmax 1084nm(ジクロロメタン)
融点186℃付近:熱分解点(重量減少開始温度)278℃付近(TG−DTA測定)
実施例7
【0065】
(合成例7)
(表1におけるNo.35の化合物の合成)
前記実施例1でN,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンの代わりにN,N,N’,N’−テトラキス{p−アミノフェニル}−p−フェニレンジアミンのn−ブチル誘導体と3−シアノプロピル誘導体の混合物に代えた以外は同様に反応させ、No.35の化合物を2.6部得た。
λmax 1090nm(ジクロロメタン)
融点135℃付近:熱分解点(重量減少開始温度)256℃付近(TG−DTA測定)
その他の化合物例についても上記合成例1〜合成例7と同様に対応するフェニレンジアミン誘導体を酸化剤で酸化した後、対応するアニオンと反応させることにより、合成することができる。
実施例8
【0066】
前記実施例で得られた化合物について、ジクロロメタン中でのモル吸光係数(ε)を測定した。この結果を表2に示す。
【0067】
(比較例1、2)
特許文献2に記載の化合物であるN,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル}フェニレンジイモニウムの1,5−ナフタレンジスルホン酸塩(特許文献2、実施例1に記載の化合物)(比較例1:化合物No.151)及び1−ヒドロキシ−2,5−ナフタレンジスルホン酸塩(比較例2:化合物No.152)を用いた以外は同様にしてジクロロメタン中でのモル吸光係数(ε)を測定した。この結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

本発明のジイモニウム塩化合物はモル吸光係数が9.6万以上と高いことが判る。
実施例9
【0069】
(ジイモニウム塩化合物の溶解度)
前記実施例で得られた化合物について、メチルエチルケトン(MEK)およびトルエン中での室温での溶解度を測定した。この結果を表3に示す。
【0070】
(比較例3,4)
比較のために特許文献3に記載の化合物であるN,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル}フェニレンジイモニウムの六フッ化アンチモン酸塩(比較例3:化合物No153)及びN,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(3−シアノプロピル)アミノフェニル}フェニレンジイモニウムの六フッ化アンチモン酸塩(比較例4:化合物No154)も同時に溶解度測定を行った。この結果を表3に示す。
【0071】
【表3】

結果より明らかなように同じ置換基を持つ誘導体に比べ、本発明のジイモニウム塩化合物はMEK、トルエンなど汎用に用いられる溶剤への溶解度が向上したことがわかる。
実施例10
【0072】
(近赤外線吸収フィルター及び耐湿熱安定性試験)
MEK18.8部に、前記各実施例で得られた各化合物1.2部をそれぞれ溶解させた。この溶解液に、MEK75部中にアクリル系樹脂(ダイヤナールBR−80、三菱レイヨン社製)25部を加え溶解させた樹脂液を80部を混合し、塗工用溶液を得た。これをポリエステルフィルムに厚さ2〜4μmになるように塗工し、80℃で乾燥させて本発明の近赤外線吸収フィルターを得た。
【0073】
得られた近赤外線吸収フィルターを60℃、95%RHの条件の恒温恒湿機中で14日間、耐湿熱安定性試験を行った。試験前後のフィルターを分光光度計にて測色し、L、a、b値を算出した。b値の+の値が高いと色相は黄味を帯び、b値が0に近いと黄味が低くフィルターとして良好であることを示すので、b値の値及びその変化から色相評価及び安定性評価を行った。得られた耐熱試験の結果を表4に示す。
【0074】
(比較例5、6)
比較のために上記化合物の代わりに特許文献1に記載の化合物であるN,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル}フェニレンジイモニウムの六フッ化リン酸塩(比較例5:化合物No.155)、N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル}フェニレンジイモニウムのホウフッ化塩(比較例6:化合物No.156)を用いた以外は実施例10と同様にしてフィルターを作製し、同様に評価して、結果を表4に示した。
【0075】
【表4】

これらの化合物を含有する本発明の近赤外線吸収フィルターは比較試料に対してb値の変化が小さいことから、高温高湿の条件での安定性に優れていることが判る。また、上記一般式(1)のRからRがすべて末端で分鎖しているアルキル基であるものが、初期値〜14日後に旦ってb値が低いので、黄味が低く、近赤外線吸収フィルターとして優れていることが判る。
実施例11
【0076】
(光情報記録媒体例)
前記合成例1で得られたNo.1の化合物0.02部とシアニン色素(OM−57、富士写真フィルム社製)0.10部をテトラフルオロプロパノール10部に溶解し、0.2μmのフィルターを通過させて塗布液を得た。この溶液1mlをグルーブ付5インチポリカーボネート樹脂基板上にピペットにて滴下し、スピンコーターにて塗布、乾燥し、有機薄膜記録層を形成した。塗布膜の最大吸収波長は719nmであった。得られた塗布膜に金をスッパッタリング法で製膜し、反射層として、光情報記録媒体を作製した。得られた光情報記録媒体をCD−R用記録再生機で評価したところ、記録、再生が可能であった。
【0077】
この様に加工性も優れた光情報記録媒体を得ることができ、記録再生にも問題はなかった。
実施例12
【0078】
(シアニン色素膜の耐光安定性試験)
テトラフルオロプロパノール15部にシアニン色素(OM−57)0.3部を溶解し、その溶液に、No.3の化合物0.04部を添加し、塗液を作成した。得られた塗液をポリカーボネート基板にスピンコートし、色素膜を作成した。得られた色素膜をウエザオメータ(アトラス社製Ci4000)中で、光源出力:0.36W/m、槽内温度:24℃、ブッラクパネル温度:40℃、湿度:30%RHの条件で、基板側から光を照射し、50時間で耐光安定性試験を行った。その後、シアニン色素の残存率を分光光度計にて測定した。結果を表5に示す。
【0079】
(比較例7)
比較の為にNo.1の化合物の代わりに特許文献3に記載の化合物であるテトラキス{p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル}フェニレンジイモニウムの六フッ化アンチモン酸塩(比較例7:化合物No153)を用いた以外は同様にして色素膜を作成し、評価し、結果を表5に示した。
【0080】
【表5】

結果より明らかなように本願の化合物を含有させることによってシアニン色素の耐光性を大幅に向上することができる。
実施例13
【0081】
(ジイモニウム塩化合物薄膜の耐光安定性試験)
テトラフルオロプロパノール10部にNo.3の化合物0.1部を添加し、塗液を作成した。得られた塗液をポリカーボネート基板にでスピンコートし、ジイモニウム塩化合物の薄膜を作成した。得られた薄膜をウエザオメータ(アトラス社製Ci4000)中で、光源出力:0.36W/m、槽内温度:24℃、ブッラクパネル温度:40℃、湿度:30%RHの条件で、基板側から光を照射し、50時間で耐光安定性試験を行った。その後、シアニン色素の残存率を分光光度計にて測定した。結果を表6に示す。
【0082】
(比較例8)
比較の為にNo.1の化合物の代わりに特許文献3に記載の化合物であるテトラキス{p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル}フェニレンジイモニウムの六フッ化アンチモン酸塩(比較例8:化合物No.153)を用いた以外は同様にして色素膜を作成し、評価し、結果を表6に示した。
【0083】
【表6】

結果より明らかなように本願の化合物は薄膜にした時の耐光性が優れている。
実施例14
【0084】
(近赤外線吸収フィルター及び耐熱安定性試験)
実施例10と同様にしてフィルターを作製し、得られた近赤外線吸収フィルターを80℃の条件のオーブン中で21日間放置した。その後、そのフィルターを分光光度計にて測色し、L、a、b値を算出し、b値の変化から安定性評価を行った。b値が低い、すなわち可視部における吸収が低いほど近赤外線吸収フィルターとして好ましい。得られた耐熱試験の結果を表7に示す。
【0085】
(比較例9)
比較のために上記化合物の代わりにN,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル}フェニレンジイモニウムの六フッ化アンチモン酸塩(比較例9:化合物No.153)、を用いた以外は実施例4と同様にしてフィルターを作製し、同様に評価して、結果を表7に示した。
【0086】
【表7】

本発明の近赤外線吸収フィルターは比較試料に対してbの変化が小さいことから、高温条件下での安定性に優れていることが判る。中でも、本発明のジイモニウム化合物(1)におけるRからRがすべて末端で分鎖しているアルキル基であるものが、直鎖アルキル基のものに比べてbの変化が小さく近赤外線吸収フィルターとしてより優れていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の近赤外線吸収化合物は、アンチモン及び砒素などを含まず、劇物に該当せず、モル吸光係数が9万以上と高く、耐熱性、耐光性および溶解度等に優れた化合物である。また従来のアンチモン等を含まない六フッ化リン酸イオン、過塩素酸イオン、ホウフッ化イオンを有するジイモニウム塩に比べ、特に耐熱性、耐湿熱性に優れている。これを用いた近赤外線吸収フィルターは、アンチモン等を含有せず耐熱性に極めて優れた近赤外線吸収フィルターであり、熱による分解などの反応を起こしにくく、可視部の着色がほとんど認められない。この様な特徴を有していることから、本発明の近赤外線吸収化合物は、近赤外線吸収フィルターや、例えば断熱フィルム及びサングラスのような近赤外吸収フィルムに好適に用いることができ、特に、プラズマディスプレー用の近赤外線吸収フィルターに好適である。また本発明の光情報記録媒体は、従来のジイモニウム塩化合物からなる光情報記録媒体に比べ、耐光性を大幅に向上することができる。またこれらの化合物は溶解度も十分であり加工性も優れている。また、例えば光情報記録媒体の記録層に当たる有機色素薄膜に、この化合物を含有させた場合、繰り返し再生における耐久性、耐光安定性を著しく向上させた光情報記録媒体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)の構造を有することを特徴とするジイモニウム塩化合物。
【化1】

(式中、RからRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基をあらわし、RおよびR10はそれぞれ独立にハロゲン原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基をあらわす。また環A及びBはさらに置換基を有していてもよい。)
【請求項2】
一般式(1)のRからRの置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基の置換基が互いにそれぞれ独立にハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボンアミド基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アリール基またはアルコキシル基である請求項1に記載のジイモニウム塩化合物。
【請求項3】
一般式(1)のRおよびR10がフッ素原子を有する脂肪族炭化水素基である請求項1または2に記載のジイモニウム塩化合物。
【請求項4】
一般式(1)のRおよびR10がトリフルオロメチル基である請求項1から3のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物。
【請求項5】
一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つがシアノ基を有する脂肪族炭化水素基である請求項1から4のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物。
【請求項6】
一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つがシアノ基を有する脂肪族炭化水素基であり、かつ少なくとも1つがシアノ基を有さない脂肪族炭化水素基である請求項1から4のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物。
【請求項7】
一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つがハロゲン原子を有する脂肪族炭化水素基である請求項1から4のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物。
【請求項8】
一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つがアルコキシル基を有する脂肪族炭化水素基である請求項1から4のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物。
【請求項9】
一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つがアリール基を有する脂肪族炭化水素基である請求項1から4のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物。
【請求項10】
一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つが直鎖(C1−C6)アルキル基である請求項1から4のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物。
【請求項11】
一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つが直鎖(C1−C3)アルキル基である請求項1から4のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物。
【請求項12】
一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つが分鎖のアルキル基である請求項1から4のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物。
【請求項13】
一般式(1)のRからRがすべて末端で分鎖しているアルキル基である請求項1から4のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物。
【請求項14】
一般式(1)のRからRがiso−ブチル基又はiso−アミル基である請求項1から4のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物。
【請求項15】
一般式(1)のRからRのうち少なくとも1つが不飽和の脂肪族炭化水素基である請求項1から4のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物を含有することを特徴とする組成物。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物を含有する層を有する近赤外線吸収フィルター。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物を含有する層を有するプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルター。
【請求項19】
請求項1から15のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物を記録層に含有することを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項20】
請求項1から15のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物並びにシアニン系色素、スクワリリウム系色素、インドアニリン系色素及びポリメチン系色素からなる群から選ばれた1種以上の有機色素を記録層に含有することを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項21】
請求項1から15のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項22】
下記一般式(2)の化合物を酸化して得られた陽イオンと、陰イオンとの塩からなる化合物であって、該陰イオンが該陽イオンを中和させるのに必要な、下記一般式(3)のアニオンであることを特徴とする近赤外線吸収化合物。
【化2】

(式中、RからRは互いに独立に水素原子または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基をあらわし、また環A及びBはさらに置換基を有していてもよい。)
【化3】

(式中、RおよびR10は互いに独立にハロゲン原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基をあらわす。)
【請求項23】
下記式(5)
【化4】

(式中、n−Buはn−ブチル基をあらわす。)
で表されるジイモニウム塩化合物。
【請求項24】
ジクロロメタン中の最大吸収波長(λmax)が1102nmである請求項23に記載のジイモニウム塩化合物。
【請求項25】
下記式(6)
【化5】

(式中、i−Buはiso−ブチル基をあらわす。)
で表されるジイモニウム塩化合物。
【請求項26】
一般式(2)
【化6】

(式中、RからRは互いに独立に水素原子または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基をあらわし、また環A及びBはさらに置換基を有していてもよい。)
で表されるフェニレンジアミン化合物に、鉱酸の銀塩と一般式(3)
【化7】

(式中、RおよびR10は互いに独立にハロゲン原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基をあらわす。)
で表されるアニオンのアルカリ金属塩とを添加して酸化反応を行うことを特徴とする一般式(1)
【化8】

(式中、RからR10は前記と同じ意味を表す)
で表されるジイモニウム塩化合物の製造方法。
【請求項27】
一般式(1)のRからRがすべてエチル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、iso−アミル基、3−シアノ−n−プロピル基および4−シアノ−n−ブチル基からなる群から選ばれた同一の基であり、RおよびR10がトリフルオロメチル基である請求項26に記載のジイモニウム塩化合物の製造方法。
【請求項28】
鉱酸の銀塩が硝酸銀であり、アニオンのアルカリ金属塩がカリウム塩である請求項26または27に記載のジイモニウム塩化合物の製造方法。
【請求項29】
水溶性極性溶媒中で反応を行なう請求項26から28のいずれか一項に記載のジイモニウム塩化合物の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/044782
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515235(P2005−515235)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013347
【国際出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】