説明

ジェッティングおよび他の技術を使用して生成された多重エマルジョン

本発明は一般に、エマルジョンに関し、より具体的には多重エマルジョンに関する。一態様では、多重エマルジョンは、流体をチャネル中に押し込むことによって、例えば流体をチャネルに「ジェット」として流入させることによって形成される。その流体を周囲の流体で封入するために側部チャネルを用いることができる。いくつかの場合、多重エマルジョン液滴が形成される前に、複数の流体を、チャネルを通して共線状に流すことができる。特定の実施形態では、流体チャネルは様々な度合いの親水性または疎水性を含むこともできる。例として、流体チャネルは、交差部の上流(またはチャネル内の他の領域)で相対的に親水性であってよく、交差部の下流で相対的に疎水性であってよい。またその逆であってもよい。いくつかの場合、平均断面寸法は、例えば交差部で変化していてよい。例えば、平均断面寸法は交差部で増大してよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の財政的支援
本発明の種々の態様を導く研究は、the National Science Foundationの助成金番号DMR−0820484、DMR−0602684、DBI−0649865およびDMR−0213805により、少なくとも部分的に後援された。米国政府は本発明における一定の権利を有し得る。
【0002】
関連出願
本出願は、2009年9月2日に出願された米国仮特許出願第61/239,405号(発明の名称「Multiple Emulsions Created Using Jetting and Other Techniques」、Weitzら)および2010年6月9日に出願された米国仮特許出願第61/353,093号(発明の名称「Multiple Emulsions Created Using Jetting and Other Techniques」、Weitzら)の利益を主張する。これらの出願の各々は、本明細書において参照として援用される。
【0003】
発明の分野
本発明は一般にエマルジョン、より具体的には多重エマルジョンに関する。
【背景技術】
【0004】
背景
エマルジョンは、第1流体が、一般にその第1流体と非混和性である第2流体中に分散されている場合に存在する流体状態である。一般的なエマルジョンの例は、水中油型および油中水型のエマルジョンである。多重エマルジョンは、3つ以上の流体、または典型的な二流体エマルジョンより複雑な様式で配置された2つ以上の流体によって形成されるエマルジョンである。例えば、多重エマルジョンは、油中水中油型(「o/w/o型」)であっても水中油中水型(「w/o/w型」)であってもよい。薬剤送達、塗料、インクおよびコーティング、食品および飲料、化学的分離ならびに健康用品および化粧品などの分野における最近の潜在的な用途のため、多重エマルジョンは特に興味のあるものである。
【0005】
一般に、別の液滴の内部の液滴の多重エマルジョンは、せん断力をかけるか、または乳化過程で形成される液滴のサイズを小さくするための混合による乳化などの二段階乳化法を用いて作製される。例えば多孔質ガラス膜を用いた膜乳化法などの他の方法も、水中油中水型エマルジョンを生成するために用いられている。マイクロ流体法も、2つ以上の段階を含む手順を用いて、液滴の内部に液滴を生成するために用いられている。例えば、2004年10月28日に特許文献1として公開のLinkらによる「Formation and Control of Fluidic Species」という表題の2004年4月9日出願の国際特許出願番号PCT/US2004/010903;または2004年1月8日に特許文献2として公開のStoneらによる「Method and Apparatus for Fluid Dispersion」という表題の2003年6月30日出願の国際特許出願番号PCT/US03/20542を参照されたい。これらのそれぞれを参照により本明細書に組み込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/091763号
【特許文献2】国際公開第2004/002627号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の要旨
本発明は一般に、エマルジョン、より具体的には多重エマルジョンに関する。本発明の主題は、いくつかの場合、相互に関係のある生成物、特定の課題に対する代替溶液、および/または1つもしくは複数のシステムおよび/または物品の複数の異なる使用を含む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本発明は装置を対象とする。一連の実施形態では、その装置は、主マイクロ流体チャネルと、第1交差部で主マイクロ流体チャネルと交差する少なくとも1つの第1側部マイクロ流体チャネルと、第1交差部とは別個の第2交差部で主マイクロ流体チャネルと交差する少なくとも1つの第2側部マイクロ流体チャネルとを含む。いくつかの場合、その第2交差部は、主マイクロ流体チャネルを、第1側部の第1部分とその第2交差部の反対側の第2部分とに分離しており、その第1部分は、第1交差部と第2交差部の間の主マイクロ流体チャネルの側部上に画定されている。特定の実施形態では、主マイクロ流体チャネルの第2部分は、主マイクロ流体チャネルの第1部分の平均断面寸法に対して、主マイクロ流体チャネルの第1部分の平均断面寸法より約5%〜約20%大きい平均断面寸法を有している。いくつかの場合、主マイクロ流体チャネルの第1部分は第1親水性を有し、その主マイクロ流体チャネルの第2部分は第1親水性と異なる第2親水性を有する。
【0009】
他の態様では、本発明は方法を対象とする。一連の実施形態では、この方法は、主マイクロ流体チャネルに第1流体を提供するステップと、主マイクロ流体チャネルと第2流体を含む少なくとも1つの第1側部マイクロ流体チャネルとの第1交差部に第1流体を流して、第1流体に分離した液滴を形成させることなく、第1流体が第2流体によって取り囲まれるようにするステップと;主マイクロ流体チャネルと第3流体を含む少なくとも1つの第2側部マイクロ流体チャネルとの第2交差部に第1および第2流体を流して、第1および第2流体に分離した液滴を形成させることなく、第2流体が第3流体によって取り囲まれるようにするステップと;第1および第2流体に個別の液滴を形成させるステップとを含む動作を含み、第1流体が第2流体中に含まれ、第2流体が第3流体中に含まれる。
【0010】
一連の実施形態では、本発明は、疑似二次元マイクロ流体チャネル内の搬送流体中に多重エマルジョン液滴を生成する動作を含む。多重エマルジョンは、少なくとも搬送流体、および搬送流体に取り囲まれかつそれと物理的に接触している第1流体を含むことができる。いくつかの(しかしすべてではない)実施形態では、搬送流体と第1流体の間の第1接触面と、第1流体と第2流体の間の第2接触面との間の平均分離距離は約1μm以下である。特定の場合では、搬送流体と第1流体の間の第1接触面と、第1流体と第2流体の第2接触面との間の平均分離距離は液滴の平均寸法の約10%以下である。以下で論じるように、いくつかの場合、その多重エマルジョンは他の流体または流体のネスティング(nesting)、他の種等も含むことができる。
【0011】
他の態様では、本発明は、第2流体液滴によって取り囲まれた第1流体液滴を含む物品であって、その第2流体液滴が第3流体によって取り囲まれている物品を対象とする。一連の実施形態では、その第1流体液滴は、約40mN/m以下の25℃の空気中での表面張力を有する流体を含む。他の一連の実施形態では、その第1流体は25℃の空気中での第1表面張力を有し、その第2流体は25℃の空気中での第2表面張力を有し、その第2表面張力は第1表面張力の少なくとも2倍である。さらに他の一連の実施形態では、その第1流体は、少なくとも20mPa sの25℃での粘度を有する。
【0012】
さらに他の態様では、その物品は、第1流体の離散した液滴を含む第2流体を含み、その第1流体の離散した液滴の少なくとも約90%は、離散した液滴の約10%以下が離散した液滴の平均寸法の約10%を超える寸法を有するような直径の分布を有する。一連の実施形態では、その第1流体液滴は、約40mN/m以下の25℃の空気中での表面張力を有する流体を含む。他の一連の実施形態では、第1流体は、25℃の空気中での第1表面張力を有し、第2流体は25℃の空気中での第2表面張力を有し、その第2表面張力は、第1表面張力の少なくとも2倍である。さらに他の一連の実施形態では、第1流体は少なくとも20mPa sの25℃での粘度を有する。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、多重エマルジョンの作製方法であって、第2流体で取り囲まれた第1流体から第1液滴を形成させる動作を含むが、その第2流体は第3流体によって取り囲まれている方法を対象とする。一連の実施形態では、その第1流体液滴は、約40mN/m以下の25℃の空気中での表面張力を有する流体を含む。他の一連の実施形態では、第1流体は25℃の空気中での第1表面張力を有し、第2流体は25℃の空気中での第2表面張力を有し、その第2表面張力は第1表面張力の少なくとも2倍である。さらに他の一連の実施形態では、第1流体は、少なくとも20mPa sの25℃での粘度を有する。
【0014】
他の態様では、本発明は、本明細書で説明する実施形態の1つまたは複数、例えば多重エマルジョンを作製する方法を対象とする。他の態様では、本発明は、本明細書で説明する実施形態の1つまたは複数、例えば多重エマルジョンを使用する方法を対象とする。
【0015】
本発明の他の利点および新規な特徴は、添付の図面と合わせて考慮すれば、本発明の様々な非限定的実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになろう。本明細書と、参照により組み込まれた文献とが相反する、および/または一致しない開示を含む場合、本明細書が優先されるものとする。参照により組み込まれた2つ以上の文献が互いに相反する、および/または一致しない開示を含む場合、より遅い発効日を有する文献が優先されるものとする。
【0016】
本発明の非限定的実施形態を、略図であり、縮尺通りに描かれていない添付の図面を例として参照して説明することとする。図面において、例示されたそれぞれの同一またはほぼ同一のコンポーネントは、一般に単一の数字で表される。明確にする目的で、当業者が本発明を理解するのに例示が必要でないところでは、すべてのコンポーネントがすべての図において標識付けされているわけではなく、また、本発明のそれぞれ実施形態のすべてのコンポーネントが示されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1A〜1Bは、本発明の特定の実施形態にしたがって液滴を生成するのに有用な様々な非限定的流体チャネルを例示する図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施形態にしたがって多重エマルジョンを生成することができるデバイスを例示する図である。
【図3】図3は、本発明のさらに他の実施形態における、二重連結デバイスで形成された様々な二重エマルジョンの様々な光学顕微鏡画像を示す図である。
【図4】図4A〜4Bは、本発明の他の実施形態における、液滴形成の制御を例示するデータを示す図である。
【図5】図5A〜5Bは、本発明の特定の実施形態における、二重および三重エマルジョンの形成を例示する様々な光学顕微鏡画像を示す図である。
【図6】図6A〜6Bは、本発明の様々な態様による異なる液滴生成手法を例示する図である。
【図7】図7A〜7Bは、本発明の特定の実施形態による低い表面張力を有する流体または粘弾性の流体を含むエマルジョンの形成を例示する様々な光学顕微鏡画像を示す図である。
【図8】図8A〜8Dは、本発明のさらに他の実施形態による一段階形成プロセスの際のジェット直径を時間の関数として例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
本発明は一般に、エマルジョンに関し、より具体的には多重エマルジョンに関する。一態様では、多重エマルジョンは、流体をチャネル中に押し込むことによって、例えば流体をチャネルに「ジェット」として流入させることによって形成される。その流体を周囲の流体で封入するために側部チャネルを用いることができる。いくつかの場合、多重エマルジョン液滴が形成される前に、複数の流体を、チャネルを通して共線状に流すことができる。特定の実施形態では、流体チャネルは様々な度合いの親水性または疎水性を含むこともできる。例として、流体チャネルは、交差部の上流(またはチャネル内の他の領域)で相対的に親水性であってよく、交差部の下流で相対的に疎水性であってよい。またその逆であってもよい。いくつかの場合、平均断面寸法は、例えば交差部で変化していてよい。例えば、平均断面寸法は交差部で増大してよい。驚くべきことに、流体チャネルの親水性の変化と組み合わさった寸法の比較的小さな増大は、特定の流動条件下で共線状に流れる複数流体のストリームの液滴形成を遅延させることができる。したがって、多重エマルジョン液滴が形成されるポイントを、流体チャネル内で容易に制御することができる。いくつかの場合、複数の液滴を、流体チャネル内の単一の位置において(またはその近傍において)流体の共線状の流れから形成させることができる。さらに、予想外に、本明細書で説明するものなどのシステムは、低い表面張力を有する流体、粘性流体または粘弾性流体などの他の技術を用いて封入するのが困難かまたはそれが不可能な単一または多重のエマルジョン中に流体を封入するために用いることができる。本発明の他の態様は一般に、そうしたシステム、そうしたシステムを含むキット、そうしたシステムを用いて生成されたエマルジョンなどを作製および使用する方法を対象とする。
【0019】
したがって、特定の実施形態では、本発明は一般に、多重エマルジョンを含むエマルジョン、およびそうしたエマルジョンを作製するための方法および装置に関する。本明細書で用いる「多重エマルジョン」は、その中に1つまたは複数のより小さい液滴を含むより大きな液滴を表す。二重エマルジョンでは、より大きな液滴は、次に、より小さい液滴内の流体と同じであっても異なっていてもよい別の流体内に含まれ得る。特定の実施形態では、多重エマルジョン内でのより大きな度合いのネスティングが可能である。例えば、エマルジョンは、その中により小さい液滴を含む液滴を含むことができ、そのより小さい液滴の少なくとも一部はさらに小さい液滴をその中に含むことができる等である。多重エマルジョンは、薬剤、細胞、化学物質などの種を封入するのに有用であり得る。以下で説明するように、特定の実施形態において、多重エマルジョンをほぼ正確な再現性で形成させることができる。いくつかの場合、剤の封入は、以下で論じるように、比較的定量的に実施することができる。
【0020】
エマルジョンまたは多重エマルジョンが有用であることが分かり得る分野には、例えば、食品、飲料、健康用品および化粧品、塗料およびコーティングならびに薬物および薬物送達が含まれる。例えば、正確な量の薬物、医薬または他の剤をエマルジョン中に含めることができ、また、いくつかの場合、細胞を液滴中に含めることができ、その細胞を貯蔵および/または送達することができる。貯蔵および/または送達することができる他の種には、例えば、siRNA、RNAiおよびDNAなどの核酸、タンパク質、ペプチドまたは酵素などの生化学的種が含まれる。本発明のエマルジョン中に取り込むことができる他の種には、これらに限定されないが、ナノ粒子、量子ドット、香料、タンパク質、インジケーター、色素、蛍光種、化学物質、薬物などが含まれる。特定の場合では、エマルジョンを、化学反応を制御するため、またはインビトロでの転写および翻訳のため例えば指向性進化技術のためなどの反応容器として働くこともできる。
【0021】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明する方法およびデバイスを用いて、一貫性のある液滴のサイズおよび/または数を有するエマルジョンを生成することができ、そして/あるいは、外部液滴のサイズおよび/または数と内部液滴のそれとの一貫性のある比(または他のそうした比)を有するエマルジョンを、多重エマルジョンを含む場合に生成することができる。例えば、いくつかの場合、予測可能なサイズの外部液滴内の単一の液滴を用いて、特定量の薬物を提供することができる。さらに、化合物または薬物の組合せを、液滴中に貯蔵、輸送または送達することができる。例えば、液滴が親水性部分と疎水性部分の両方を含むことができるので、疎水性および親水性の種を、単一の多重エマルジョン液滴中に送達することができる。これらの部分のそれぞれの量および濃度は、多重エマルジョン液滴中に2つ以上の種の予測可能で一貫性のある比を提供できる本発明の特定の実施形態にしたがって一貫して制御することができる。
【0022】
以下の文献、すなわち:2008年10月9日にWO2008/121342として公開のChuらによる「Emulsions and Techniques for Formation」という表題の2008年3月28日出願の国際特許出願番号PCT/US2008/004097;2006年9月14日にWO2006/096571として公開のWeitzらによる「Method and Apparatus for Forming Multiple Emulsions」という表題の2006年3月3日出願の国際特許出願番号PCT/US2006/007772およびWeitzらによる「Controlled Creation of Emulsions, Including Multiple Emulsions」という表題の2009年3月13日出願の米国仮出願番号第61/160,020号をそれぞれ参照により本明細書に組み込む。Weitzらによる「Multiple Emulsions Created Using Junctions」という表題の2009年9月22日出願の米国仮出願番号第61/239,402号およびWeitzらによる「Multiple Emulsions Created Using Jetting and Other Techniques」という表題の2009年9月22日出願の米国仮出願番号第61/239,405号も参照により本明細書に組み込む。一態様では、本発明は一般に、二重エマルジョン、三重エマルジョンおよび他のより高次のエマルジョンを含む多重エマルジョンを生成する方法を対象とする。一連の実施形態では、流体はチャネルを通して流れ、別の流体によって取り囲まれる。いくつかの場合、2つの流体は、例えば個別の液滴を生成することなく、共線状の様式で流れることができる。次いで、いくつかの実施形態では、2つの流体は、第一の2つの流体と共線状に流れることができ、および/またはその流体がチャネル内で離散した液滴を形成するようにするさらに別の流体で取り囲むことができる。いくつかの場合、多重共線状流体のストリームは、三重またはより高次のエマルジョンを形成させる、および/またはその形成を引き起こすようにすることができる。いくつかの場合、以下で論じるように、これは、単一のプロセスとして行うことができる。例えば、その多重エマルジョンは、共線状流体の様々なストリームから実質的に同時に形成される。
【0023】
ここで図1Aを参照して、このプロセスの非限定的な例を考察する。この図では、システム10は主チャネル15を含み、これはマイクロ流体チャネルであってよい。主チャネル15と交差するものは複数の側部チャネルである。図1Aの主チャネル15はほぼ直線として示されている。しかし、他の実施形態では、その主チャネルはカーブしていても、角度がついていても、曲がっていてもまた他の形状を有していてもよい。
【0024】
さらに図1Aでは、2つのセットのチャネル、すなわち、主チャネル15と交差して交差部25を画定する第1のセットのチャネル20と主チャネル15と交差して交差部35を画定する第2のセットのチャネル30が、主チャネル15と交差して示されている。しかし、他の実施形態では、異なる数の側部チャネルおよび/または異なる数の交差部が存在してよい。例えば、より多くの数の交差部を用いてより高次の多重エマルジョンを生成することができ(例えば、第1、第2および第3の交差部をもつと三重エマルジョンを生成し、4つの交差部をもつと四重エマルジョンを生成する等)、および/または異なる数の側部チャネルを主チャネルと交差させてよい。例えば、交差部は、1つの側部チャネル、3つの側部チャネル、4つの側部チャネル、5つの側部チャネル等によって画定されていてよい。そうしたシステムの他の例は、Weitzらによる「Multiple Emulsions Created Using Junctions」という表題の2009年9月22日出願の米国仮出願番号第61/239,402号およびWeitzらによる「Multiple Emulsions Created Using Jetting and Other Techniques」という表題の2009年9月22日出願の米国仮出願番号第61/239,405号に開示されている。これらのそれぞれを参照により本明細書に組み込む。
【0025】
図1Aでは、各側部チャネルはほぼ直角に主チャネルと交差している。しかし、他の実施形態では、その側部チャネルは主チャネルとほぼ直角に交差する必要はない。さらに、特定の場合では、側部チャネルの数は異なる交差部間で同じである必要はない。例えば、第1交差部は主チャネルと交差する2つの側部チャネルで画定されてよく、他方、第2交差部は、主チャネルと交差する1つまたは3つの側部チャネルで画定されてよい等である。
【0026】
一連の実施形態では、主チャネルは、第1部分および第1部分とは別個の第2部分を含むことができる。第1部分および第2部分をそれぞれ、側部チャネルの1つを有する主チャネルの交差部の1つの異なる両側部にあるように画定することができ、あるいは、第1部分および第2部分を、主チャネル内の別個のポイントで画定することができる(すなわち、必ずしも交差部によって画定される必要はない)。例えば、図1Aをもう一度参照すると、第1のチャネル15は、交差部35の周りの主チャネルの異なる両側部に画定された第1部分11および第2部分12を含む。1つまたは複数の部分は、その中に他の交差部、例えば図1Aの第1部分11のための交差部25を含むことができる。
【0027】
一連の実施形態によれば、第1部分および第2部分は異なる平均断面寸法を有することができる。その「平均断面寸法」は、チャネル内の流体の流れに対して直角方向に画定される。各部分の平均断面寸法は、主チャネルの第1および第2部分を画定する交差部に直ぐ隣接する領域で決定することができる。いくつかの場合、マイクロ流体チャネルの平均断面寸法は、マイクロ流体チャネルの断面の面積と等しい面積を有する完全な円の直径であってよい。
【0028】
特定の実施形態では、第1部分は第2部分より小さくてよい。例えば第2部分は、主流体チャネルの第1部分の平均断面寸法より少なくとも約5%大きい平均断面寸法を有することができ、いくつかの場合、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%大きい平均断面寸法等を有することができる。その百分率は、主流体チャネルの第1部分の平均断面寸法に対して決めることができる。特定の場合では、第2部分は、主流体チャネルの第1部分の平均断面寸法より約5%〜約20%、約10%〜約20%または約5%〜約10%大きい平均断面寸法を有する。しかし、他の場合、第1部分は第2部分より小さい、例えば主流体チャネルの第1部分の平均断面寸法より少なくとも約5%小さく、いくつかの場合、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%等小さいか、あるいは第2部分は、主流体チャネルの第1部分の平均断面寸法より約5%〜約20%、約10%〜約20%または約5%〜約10%小さい平均断面寸法を有することができる。第1部分と第2部分の断面寸法の差は、1つの次元の差であってよく(例えば、その部分は同じ高さと異なる幅をもっていてよく、またその逆であってもよい)、また、いくつかの場合、2つの次元の差であってもよい(例えば、その部分は高さと幅の両方とも異なる)ことに留意すべきである。
【0029】
理論に拘泥するわけではないが、特定の場合では、第1部分に対してより大きい第2部分を用いると、その流体の1つを破壊して個別の液滴を生成させることなく、主チャネル中の流体の多重ストリームの共線状の流れを容易にすることができる。これは、平均断面寸法が増大すると、流体の流れの増大を容易にすることができ、および/または、内部の流体が、流体チャネルの側部に接触するのを防止することができるので起こり得ると考えられる。例えば、チャネルに流入する流体を、その流体が個別の液滴に破壊されないような第1速度で(例えば、「ジェッティング」挙動下で)導入し、次いで流体を、例えば、その流体が個別の液滴に破壊され得るようにチャネルの平均断面寸法を増大させることによって減速させることができる。いくつかの場合、そうした流体挙動は「ウェーバー数」(We)を用いて判定することができる。このウェーバー数は、慣性効果(これはその流体を凝集した状態に保持する)と表面張力効果(これはその流体に、液滴を形成する傾向をもたせる)のバランスまたは比と考えることができる。ウェーバー数はしばしば、表面張力効果を慣性効果で除した無次元の比で表すことができる。すなわち、ウェーバー数が1より大きい場合、表面張力効果が支配的であり、ウェーバー数が1より小さい場合、慣性効果が支配的である。したがって、特定の条件下では、流体慣性力が表面張力効果を支配できるような条件下で流体が流れる場合、チャネル内の流体が液滴を形成するのを防止することができる。例えば、チャネル内の流体のウェーバー数を制御することによって、すなわち、表面張力効果が慣性効果を上回って支配し始めるポイントを制御することによって、チャネル内の流体が個別の液滴に破壊されるポイントを制御することができる。ウェーバー数は、例えば、チャネル内の流体の速度および/またはチャネルの形状またはサイズ、例えばその平均断面寸法を制御することによって制御することができる。したがって、例えば、流入する流体の組成(したがってその密度および表面張力)および所望の体積流量が分かれば(例えば、主チャネルを通しての相対的圧力変化を知ることによって)、チャネルの平均断面寸法を、チャネルの第1部分が1より小さいウェーバー数を示し、チャネルの第2部分が1より大きいウェーバー数を示すように制御することができる。流体は、適切な任意の技術を用いて、例えば正圧または負圧(真空)(すなわち、大気圧または周囲圧力より低い圧力)を用いてチャネルを通して引き込むことができる。チャネル内の流体の制御の特定の非限定的な例を実施例1で考察する。
【0030】
いくつかの(しかしすべてではない)実施形態では、第1部分の親水性と第2部分の親水性は異なっていてよい。しかし、他の実施形態では、第1部分の親水性と第2部分の親水性は同じであってよい。親水性は、例えば水接触角測定法などを用いて決定することができる。例えば、第1部分は第1親水性を有することができ、第2部分は第1親水性と実質的に異なる、例えば、より親水性かまたはより疎水性の第2親水性を有することができる。その部分の親水性は、例えば以下で論じるようにして制御することができる。親水性を制御するための他の適切な技術は、2009年10月1日にWO2009/120254として公開のAbateらによる「Surfaces, Including Microfluidic Channels, with Controlled Wetting Properties」という表題の2009年2月11日出願の国際特許出願番号PCT/US2009/000850および2009年2月12日にWO2009/020633として公開のWeitzらによる「Metal Oxide Coating on Surfaces」という表題の2008年8月7日出願の国際特許出願番号PCT/US2008/009477に見ることができる。そのそれぞれを参照により本明細書に組み込む。いくつかの場合、Weitzらによる「Multiple Emulsions Created Using Junctions」という表題の2009年9月22日出願の米国仮出願番号第61,239,402号およびWeitzらによる「Multiple Emulsions Created Using Jetting and Other Techniques」という表題の2009年9月22日出願の米国仮出願番号第61/239,405号(それぞれを参照により本明細書に組み込む)に論じられているように、チャネルの異なる部分は異なる親水性を有していてよい。
【0031】
流体チャネルの親水性の変化と一緒に、寸法を比較的小さく増大させると、特定の流動条件下で共線状に流れる複数流体のストリームの液滴形成を遅延させることができることが予想外であるだけでなく、そうしたシステムが、例えば低い表面張力を有する、高粘度を有するまたは粘弾性特性を示す流体に起因してエマルジョンを形成させることが困難または不可能である流体を用いて、エマルジョンまたは多重エマルジョンを生成できるようにすることも予想外である。
【0032】
一連の実施形態では、その「困難な」流体を内部流体として用いることができるが、水などの別の流体を、取り囲む流体すなわち外部流体として使用することができる。外部流体は、水または本明細書で開示するような流体などの容易に液滴を形成するまたは乳化するものであってよい。内部流体は、乳化して孤立した液滴を形成させるのは容易でないが、例えば本明細書で論じるような、液滴形成における外部流体の作用は、やはり内部流体に液滴の形成をもたらし、それによって、その中で内部流体の液滴が外部流体の液滴によって取り囲まれた多重エマルジョンを生成し、次いでこれは搬送流体中に含まれる。このプロセスを繰り返して、例えば高レベルの多重エマルジョンを生成するか、あるいは、外部流体が密になって連続流体となりそれによって連続した外部流体中に内部流体の液滴の単一のエマルジョンを形成することができるように搬送流体を除去することができる(例えば、ろ過により)。本明細書で論じるように、いくつかの場合、この液滴形成プロセスを、実質的に同じ形状および/またはサイズの単分散液滴が生成するように制御することもできる。したがって、本発明の様々な実施形態では、低い表面張力を有する、高粘度を有するまたは粘弾性特性を示す流体などの他の条件下では乳化させるのが困難な流体を含むエマルジョンを生成させることができる。
【0033】
例えば、理論に拘泥するわけではないが、低い表面張力を有する流体は容易に乳化しない。その理由はそうした流体は、個別の液滴に容易に解離せず、連続流体またはジェットを形成しがちであるからである。流体の表面張力は、その流体が、別の流体ではなくそれ自体と結合し易い傾向の尺度と考えることができる。したがって、体積当たりの露出表面積を最小化させるため、高い表面張力を有する流体は、球形の形状または個別の液滴を形成する傾向がある。対照的に、低い表面張力を有する流体は通常この特性を示さず(またはそれをほとんど示さず)、結果として一般に乳化に適していない。
【0034】
したがって、本発明の特定の実施形態において、エマルジョンまたは多重エマルジョンを、低い表面張力を有する流体を用いて形成させることができることは驚くべきことである。例えば、流体の表面張力(一般に、25℃および空気に対して1atmで測定する)は、約40mN/m以下、約35mN/m以下、約30mN/m以下、約25mN/m以下、約20mN/m以下または約15mN/m以下であってよい。流体の表面張力は、当業者に公知の適切な任意の技術、例えばデュヌイリング法、ウィルヘルミープレート法、スピニング液滴法、ペンダントドロップ法、気泡圧法(すなわちイェーガー法)、液滴体積法、毛管上昇法、滴数計法または液滴法を用いて決定することができる。低い表面張力を有する流体の非限定的な例には、オクタノール、ジエチルエーテル、ヘキサン、イソプロパノール、オクタン、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸などの非極性流体および/または有機流体が含まれる。いくつかの場合、表面張力は、周囲の流体の表面張力に対して測定することができる。例えば、低い表面張力を有する内部流体を、内部流体の表面張力より少なくとも約2、少なくとも約2.5、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約7、少なくとも約10等の倍数で大きい表面張力を有する外部流体で取り囲むことができる。
【0035】
他の一連の実施形態では、内部流体は比較的高い粘度を有するものであってよい。高粘度流体は急速にまたは容易には流れず、したがって急速に液滴を形成しないものである。例えば、流体の粘度は少なくとも約15mPa s、少なくとも約20mPa s、少なくとも約30mPa s、少なくとも約100mPa s、少なくとも約300mPa s、少なくとも約1,000mPa s、少なくとも約3,000mPa s、少なくとも約10mPa等であってよい。一般に、流体の粘度は、粘度計、例えばU字管型粘度計、落球式粘度計、ピストン落下式粘度計、振動ピストン式粘度計、振動式粘度計、回転式粘度計、気泡式粘度計等の当業者に公知の手法を用いて25℃で決定される。比較的高粘度を有する流体の例には、これらに限定されないが、コーンシロップ、グリセロール、はちみつ、ポリマー溶液(例えば、ポリウレタン(PU)/ポリブタジエン(PBD)コポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)などが含まれる。
【0036】
いくつかの実施形態では、高粘度を有する流体は固体に特有の弾性特性も示す。すなわちその流体は粘弾性である。弾性は、外部応力にかけたとき、ある材料がその元の形状に戻ろうとする傾向と考えることができ(これに対して、純流体は、応力がかけられても、その流体を入れた容器に関係なく、その元の形状に戻ろうとする傾向または能力をもたない);そうした流体は一般に、液滴形成というよりむしろ、この傾向のため乳化させることはできない。一般に、弾性は、25℃でヤング率を決定することによって測定される。例えば、流体は、少なくとも約0.01GPa、少なくとも約0.03GPa、少なくとも約0.1GPa、少なくとも約0.3GPa、少なくとも約1GPa、少なくとも約3GPaまたは少なくとも約10GPaのヤング率を有することができる。ヤング率は、当業者に公知の適切な任意の技術、例えばそうした流体の応力ひずみ関係を判定することによって測定することができる。
【0037】
様々な実施形態において、本明細書で論じるようにして形成される液滴は、具体的な用途に応じて、実質的に同じ形状および/またはサイズ(すなわち、「単分散」)であっても異なる形状および/またはサイズであってもよい。本明細書で用いる「流体」という用語は一般に、流動して、その容器の輪郭に適合する傾向のある物質、すなわち液体、ガス、粘弾性流体等を指す。一般に、流体は、せん断応力をかけたとき、静的せん断応力に耐えることができない物質であり、その流体は、持続的な永久歪を受ける。流体は、流動を許容する適切な任意の粘度を有することができる。2つ以上の流体が存在する場合、当業者は流体間の関係を考慮して、各流体を本質的に任意の流体(液体、ガスなど)の中から独立に選択することができる。いくつかの場合、その液滴を搬送流体、例えば液体中に含めることができる。しかし、本発明は多重エマルジョンだけに限定されないことに留意すべきである。いくつかの実施形態では、単一のエマルジョンも生成することができる。
【0038】
本明細書で用いる「液滴」は、第2流体で取り囲まれた第1流体の孤立した部分である。液滴は必ずしも球形ではなく、例えば外部環境に応じて他の形状も想定できることに留意すべきである。一実施形態では、その液滴は、その中に液滴が位置する流体の流れと直角方向のチャネルの最大寸法と実質的に等しい最小断面寸法を有する。いくつかの場合、液滴は直径の均一な分布を有する、すなわち液滴は、液滴の約10%、約5%、約3%、約1%、約0.03%または約0.01%以下が、液滴の平均径の約10%、約5%、約3%、約1%、約0.03%または約0.01%より大きい平均径を有するような直径の分布を有することができ、したがって、出口チャネル内の液滴は同じかまたは類似した直径の分布を有することができる。そうした均一な直径の分布を生じるための手法もやはり、参照により本明細書に組み込まれている2004年10月28日にWO2004/091763として公開のLinkらによる「Formation and Control of Fluidic Species」という表題の2004年4月9日出願の国際特許出願番号PCT/US2004/010903および本明細書で説明するような他の文献に開示されている。
【0039】
一連の実施形態では、内部流体は主チャネルを通って流れるが、外部流体は1つまたは複数の側部チャネルを通って第1交差部に流れ込み、搬送流体は1つまたは複数の側部チャネルを通って第2交差部に流れ込む。いくつかの場合、外部流体は主チャネルに入ると、内部流体の分離した液滴の形成をもたらすことなく内部流体を取り囲むことができる。例えば、内部流体と外部流体は主チャネル内で共線状に流れることができる。いくつかの場合、外部流体は内部流体を取り囲み、内部流体が流体チャネルの壁と接触するのを防止することができる。例えば、いくつかの実施形態では、外部流体の流入の際にそのチャネルが拡がることができる。いくつかの場合、追加のチャネルは、液滴形成をもたらすことなく、主チャネルに追加の流体を持ち込むことができる。特定の例では、搬送流体を、主チャネル中に導入して内部および外部流体を取り囲ませることができる。いくつかの場合、搬送流体の導入によって、その流体が分離した液滴(例えば、外部流体によって取り囲まれており、次いで搬送流体で取り囲まれた内部流体の液滴)の形成を引き起こすことがあるが、他の場合、液滴形成を、例えば上記で論じたようにして搬送流体のウェーバー数を制御することによって遅延させることができる。いくつかの実施形態では、搬送流体は、内部および/または外部流体が流体チャネルの壁と接触するのを防止することができる。例えば、搬送流体の流入の際にそのチャネルが拡がることができ、また、いくつかの場合、搬送流体を、2つ以上の側部チャネルを用いる、および/または2つ以上の交差部で加えることができる。
【0040】
いくつかの場合、4つ以上流体が存在してよい。例えば本明細書で説明するものなどの手法を用いて形成され、いくつかの場合、例えば3つ、4つ、5つ、6つ等またはそれ以上の交差部、親水性および/または平均断面寸法における複数の変化などを含んで繰り返して用いられる、マイクロ流体チャネル内で共線状に流れる4つ、5つ、6つまたはそれ以上の流体が存在してよい。いくつかの場合、これらの流体の一部またはすべてはジェッティング挙動を示すことができ、例えば流体は、破壊されて個別の液滴になることなく、ジェットすることができる。例えば、流体の多重共線状ストリームをマイクロ流体チャネル内で形成させることができ、いくつかの場合、流体のストリームの1つまたは複数はジェッティング挙動を示すことができる。したがって、本発明の一実施形態は一般に、その一部またはすべてがジェッティング挙動を示すマイクロ流体チャネル内での2つ、3つ、4つまたはそれ以上の共線状流体の形成を対象とする。いくつかの場合、以下で論じるように、これらの流体の一部またはすべては硬くなって、例えば硬化したストリームまたはスレッドを生成することができる。他の実施形態では、共線状に流れる流体によって、本明細書で論じるような多重エマルジョン液滴を形成させることができる。いくつかの場合、単一段階階で、例えば多重エマルジョン液滴が生成する前に単一または二重エマルジョン液滴を生成させることなく、多重エマルジョン液滴を形成させることができる。
【0041】
3つの別個の交差部を含むシステムの非限定的な例を図1Bに示す。この図では、システム10は主チャネル15を含み、これは、様々な側部チャネル(第1チャネル20、第2チャネル30および第3チャネル40)と主チャネル15の交差によってそれぞれ形成される交差部25、35および45を有するマイクロ流体チャネルであってよい。この例では、交差部35を用いて主チャネルの第1部分11と第2部分12を画定するが、他の実施形態では、第1および第2部分は他の様式、例えば主チャネル内の別の交差部または位置で画定することができる。この例では、第2部分12は、第1部分の平均断面寸法より大きい平均断面寸法を有する。いくつかの場合、第1部分と第2部分は異なる親水性を示すこともできる。例えば、第1部分11が相対的に親水性であり、第2部分12が相対的に疎水性であってよく、様々な親水性は、本明細書で論じるものなどのゾル−ゲルコーティングを用いて制御することができる。
【0042】
一連の実施形態によれば、内部流体は、主チャネル15を通してシステム10に送ることができるが、外部流体は、交差部25で主チャネル15と出会う側部チャネル20を通して送ることができる。いくつかの実施形態では、内部および外部流体は、交差部25と交差部35との間の主チャネル25において液滴を形成することなく、共線状に流れることができる。交差部35において、側部チャネル30を介して外部流体を送ることができる。搬送流体は内部および外部流体を取り囲むことができ、いくつかの場合、内部および外部流体が多重エマルジョン液滴(ここでは外部流体が内部流体を取り囲む)を形成するようにすることができるが、他の場合、様々な流体を、液滴を形成することなく共線状に流すことができる。例えば、いくつかの場合、チャネル40も搬送流体を含むことができ、追加の搬送流体の導入は分離した液滴の形成をもたらすことができる。このプロセスの非限定的な例を、油/水/油型多重エマルジョン液滴について図2および図3に例示する。
【0043】
他の一連の実施形態では、図1Bに示した例などのシステムを用いて四重エマルジョン液滴を形成させることができる。例えば、チャネル15は、第1流体、チャネル20の第2流体、チャネル30の第3流体およびチャネル40の搬送流体を含んで、搬送流体中に包含された、第3流体で取り囲まれた第2流体で取り囲まれた第1流体の四重エマルジョン液滴を生成させることができる。
【0044】
特定の態様では、流体の比較的薄い層を含む二重または多重エマルジョンは、例えば本明細書で論じるものなどの技術を用いて形成させることができる。いくつかの場合、1つまたは複数の流体を硬化させることができる。同様の技術を用いて、流体のストリームまたはジェットを硬化させることができる(すなわち、必ずしも液滴またはエマルジョンを形成させることなく)。例えば、以下で説明するものなどの流体硬化技術を用いて、流体の共線状ストリームを硬化させて複数のネスト化した層を含むネスト化したスレッドを含むスレッドを形成させることができる。
【0045】
いくつかの場合、流体の比較的薄い層は、多重エマルジョンを形成する様々な流体の流速を制御することによって、および/または形成された多重エマルジョン液滴が他の流体と比べて比較的多量の1つの流体(例えば、最も内側の流体)を有するようにウェーバー数を制御することによって形成させることができる。驚くべきことに、本明細書で論じるように流速およびウェーバー数を制御することによって、流体の厚さが本質的に限定される他の技術と違って、非常に薄い流体の「シェル」を、液滴を取り囲んで形成させることができる。
【0046】
一連の実施形態では、液滴を取り囲む流体「シェル」は、2つの接触面、すなわち、第1流体と搬送流体の間の第1接触面と第1流体と第2流体の間の第2接触面との間に画定することができる。その接触面は、約1mm、約300μm、約100μm、約30μm、約10μm、約3μm、約1μm以下等の平均分離距離(液滴にわたる平均値(average over the droplet)として判定して)を有することができる。いくつかの場合、接触面は、液滴の平均寸法に対して画定される平均分離距離を有することができる。例えば、平均分離距離は、液滴の平均寸法の約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約3%未満、約2%未満または約1%未満であってよい。
【0047】
流体の硬化した液滴および/または硬化したストリームを形成させるのに有用な流体硬化技術の例には以下に論じるもの、ならびに2004年10月28日にWO2004/091763として公開のLinkらによる「Formation and Control of Fluidic Species」という表題の2004年4月9日出願の国際特許出願番号PCT/US2004/010903;2007年3月8日に米国特許出願公開番号第2007/0054119号として公開のGarsteckiらによる「Systems and Methods of Forming Particles」という表題の2006年3月3日出願の米国特許出願番号第11/368,263号;または2009年5月21日に米国特許出願公開番号第2009/0131543号として公開のWeitzらによる「Method and Apparatus for Forming Multiple Emulsions」という表題の2007年8月29日出願の米国特許出願番号第11/885,306号に開示されているものが含まれる。そのそれぞれを参照により本明細書に組み込む。
【0048】
したがって、本発明の一連の実施形態では、二重エマルジョン、すなわち外部流体の液滴を含み次にその中に内部流体の液滴を含む搬送流体を生成する。いくつかの場合、その搬送流体と内部流体と同じであってよい。これらの流体はしばしば、疎水性の差に起因して混和性が変化するものとなる。例えば、第1流体が水溶性であり、第2流体が油溶性であり、搬送流体が水溶性であってよい。この配置はしばしばw/o/w型多重エマルジョン(「水/油/水型」)と称される。他の多重エマルジョンは、油溶性の第1流体、水溶性の第2流体および油溶性の搬送流体を含むことができる。この種の多重エマルジョンはしばしばo/w/o型多重エマルジョン(「油/水/油型」)と称される。上記用語において「油」という用語は単に、当業界で公知であるような、概ねより疎水性であり、水に混和しない流体を指すことに留意すべきである。したがって、いくつかの実施形態ではその油は炭化水素であってよいが、他の実施形態では、その油は他の疎水性流体を含むことができる。水は純粋である必要はなく、それは水溶液、例えば緩衝液、溶解塩を含む溶液などであってもよいことも理解すべきである。
【0049】
より具体的には、本明細書で用いるように、エマルジョンが生成される温度および条件下で、一方が少なくとも10重量%のレベルで他方に溶解しないとき、2つの流体は非混和性である、すなわち互いに混和性でない。例えば、2つの流体を、流体液滴形成のタイムフレーム内で非混和性であるように選択することができる。いくつかの実施形態では、多重エマルジョンを形成させるのに用いる流体は同じであっても異なっていてもよい。例えば、いくつかの場合、2つ以上の流体を用いて多重エマルジョンを生成させることができ、特定の例では、これらの流体の一部またはすべてが非混和性であってよい。いくつかの実施形態では、多重エマルジョンを形成させるのに用いる2つの流体は相溶性であるすなわち混和性であるが、2つの流体の間に含まれる中間の流体は、これらの2つの流体と非相溶性である、すなわち非混和性である。しかし、他の実施形態では、3つすべての流体は互いに非混和性であり得、特定の場合では、その流体のすべてが必ずしもすべて水溶性でなければならないということはない。
【0050】
本発明の他の実施形態では、3つ以上の流体を使用することができる。したがって本発明の特定の実施形態は一般に、いくつかの場合、さらにその液滴の中により小さい液滴を含む等が可能である1つまたは複数のより小さい液滴をその中に含むより大きい流体液滴を含む多重エマルジョンを対象とする。任意の数のネスト化した流体を生成することができる。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、追加の第3、第4、第5、第6等の流体を加えて、液滴内にますます複雑化した液滴を生成することができる。これらの流体のすべてが必ずしも区別できる必要はないことを理解すべきである。例えば、2つの油相が同じ組成を有する、および/または2つの水相が同じ組成を有する油/水/油/水または水/油/水/油を含む四重エマルジョンを調製することができる。
【0051】
一連の実施形態では、単分散エマルジョンを、例えば上記したようにして生成することができる。流体液滴の形状および/またはサイズは、液滴の平均径または他の特徴的寸法を測定することによって決定することができる。複数または一連の液滴の「平均径」は、液滴のそれぞれの平均径の算術平均である。当業者は、例えばレーザー光散乱法、顕微鏡検査法または他の公知の技術を用いて複数または一連の液滴の平均径(または他の特徴的寸法)を決定できよう。非球形液滴状の単一液滴の平均径は、その非球形液滴と同じ体積を有する完全な球の直径である。液滴の(および/または複数または一連の液滴の)平均径は、いくつかの場合、例えば約1mm未満、約500μm未満、約200μm未満、約100μm未満、約75μm未満、約50μm未満、約25μm未満、約10μm未満または約5μm未満であってよい。平均径は、特定の場合、少なくとも約1μm、少なくとも約2μm、少なくとも約3μm、少なくとも約5μm、少なくとも約10μm、少なくとも約15μmまたは少なくとも約20μmであってもよい。
【0052】
本明細書で用いる「決定する(determining)」という用語は一般に、ある種を、例えば定量的または定性的に分析または測定すること、および/またはその種の存在または非存在を検出することを指す。「決定する」という用語は、2つ以上の種の間の相互作用を、例えば定量的もしくは定性的に、またはその相互作用の存在もしくは非存在を検出することによって分析または測定することも指す。適切な技術の例には、これらに限定されないが、赤外分光法、吸収分光法、蛍光分光法、UV/可視分光法、FTIR分光法(「フーリエ変換赤外分光法」)もしくはラマン分光法などの分光法;重量法;偏光解析法;圧電測定法;免疫学的検定法;電気化学的測定法;光学密度測定法などの光学測定法;円偏光二色性分析法;準電気的光散乱法などの光散乱測定法;偏光分析法;屈折率測定法または濁度測定法が含まれる。
【0053】
液滴の生成速度は、多くの条件下で約100Hz〜5,000Hzの間で変化し得る液滴形成周波数で判定することができる。いくつかの場合、液滴の生成速度は、少なくとも約200Hz、少なくとも約300Hz、少なくとも約500Hz、少なくとも約750Hz、少なくとも約1,000Hz、少なくとも約2,000Hz、少なくとも約3,000Hz、少なくとも約4,000Hzまたは少なくとも約5,000Hz等であってよい。さらに、大量の液滴の生成は、いくつかの場合、複数のデバイスを並行使用することによって容易にすることができる。いくつかの場合、比較的数多くのデバイスを並行して使用することができる。例えば少なくとも約10個のデバイス、少なくとも約30個のデバイス、少なくとも約50個のデバイス、少なくとも約75個のデバイス、少なくとも約100個のデバイス、少なくとも約200個のデバイス、少なくとも約300個のデバイス、少なくとも約500個のデバイス、少なくとも約750個のデバイスまたは少なくとも約1,000個もしくはそれ以上のデバイスを並行して動作させることができる。デバイスは異なるチャネル、オリフィス、マイクロ流体等を含むことができる。いくつかの場合、そうしたデバイスの配列は、デバイスを水平および/または垂直に重ねることによって形成することができる。デバイスは共通的に制御するかまたは別個に制御することができ、用途に応じて、共通的なまたは別個の流体の供給源を備えることができる。そうしたシステムの例は、Romanowskyらによる「Scale−up of Microfluidic Devices」という表題の2009年3月13日出願の米国仮出願番号第61/160,184号にも記載されている。これを参照により本明細書に組み込む。
【0054】
流体は、その周囲に対して液滴が離散した形で留まるように選択することができる。非限定的な例として、第2流体液滴を含む第1流体液滴を含む搬送流体を有する流体液滴を生成することができる。いくつかの場合、搬送流体と第2流体は同じかまたは実質的に同じであってよい。しかし、他の場合、搬送流体、第1流体および第2流体を、本質的に互いに非混和性であるように選択することができる。本質的に互いに非混和性の3つの流体を含む系の非限定的な1つの例は、シリコーン油、鉱油および水溶液(すなわち、水あるいはその中に溶解および/または懸濁されている1つもしくは複数の他の種を含む水、例えば塩溶液、生理食塩水、粒子もしくは細胞を含む水の懸濁液など)である。系の他の例は、シリコーン油、フルオロカーボン油および水溶液である。系のさらに他の例は、炭化水素油(例えば、ヘキサデカン)、フルオロカーボン油および水溶液である。適切なフルオロカーボン油の非限定的な例にはHFE7500、オクタデカフルオロデカヒドロナフタレン:
【0055】
【化1】

または1−(1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ウンデカフルオロシクロヘキシル)エタノール:
【0056】
【化2】

が含まれる。
【0057】
本明細書での説明において、多重エマルジョンはしばしば3相系、すなわち外部流体または搬送流体、第1流体および第2流体を有する系として説明される。しかし、これは例に過ぎず、他の系では、多重エマルジョン液滴内に追加の流体が存在してもよいことに留意すべきである。したがって、搬送流体、第1流体および第2流体などの説明は、プレゼンテーションを容易にするためであり、本明細書での説明は、追加の流体を含む系、例えば四重エマルジョン、五重エマルジョン、六重エマルジョン、七重エマルジョン等に容易に拡張できることを理解されたい。
【0058】
流体粘度は液滴形成に影響を及ぼすので、いくつかの場合、粘度調節を助けることができる希釈剤などの成分を加えるか除くことによって、流体液滴中の流体のいずれかの粘度を調節することができる。例えば、いくつかの実施形態では、第1流体の粘度と第2流体の粘度は等しいかまたは実質的に等しい。これは、例えば、第1および第2流体の中での液滴形成の周波数または速度を同等にするのに寄与し得る。他の実施形態では、第1流体の粘度は、第2流体の粘度と等しいかまたは実質的に等しくてよい、および/または第1流体の粘度は、搬送流体の粘度と等しいかまたは実質的に等しくてよい。さらに他の実施形態では、搬送流体は、第1流体とは実質的に異なった粘度を示すことができる。粘度の実質的な差は、2つの流体間の粘度の差を統計的に有意な根拠に基づいて測定できることを意味する。液滴内での流体粘度の他の分布も可能である。例えば、第2流体は、第1流体の粘度より高いかまたは低い粘度を有することができ(すなわち、2つの流体の粘度は実質的に異なっていてよい)、第1流体は、搬送流体の粘度より高いかまたは低い粘度を有することができる等である。例えば4つ、5つ、6つまたはそれ以上の流体を含むより高次の液滴では、粘度を、具体的な用途に応じて要望通り独立して選択することもできることに留意すべきである。
【0059】
本発明の特定の実施形態では、流体液滴(またはその部分)は、追加の実体または種、例えば他の化学的、生化学的または生物学的実体(例えば、流体中に溶解または懸濁されている)、細胞、粒子、ガス、分子、薬剤、薬物、DNA、RNA、タンパク質、香料、反応剤、殺生物剤、殺菌剤、防腐剤、化学物質などを含むことができる。例えば、細胞を流体エマルジョン中に懸濁させることができる。したがって、その種は、エマルジョンの任意の部分に含めることができる任意の物質であってよい。その種は、例えば内部液滴内、外部液滴内等の任意の流体液滴中に存在することができる。例えば、1つまたは複数の細胞および/または1つまたは複数の細胞種類を液滴中に含めることができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、流体液滴またはその部分を固化させることができる。例えば、いくつかの場合、固化またはゲル化することができる内部流体を取り囲む外部流体を用いることなどによって内部液滴周りに硬化したシェルを形成させることができる。このような方法で、カプセルを、一貫性があり反復性のあるサイズの内部液滴ならびに一貫性があり反復性のあるサイズの外部シェルで形成させることができる。いくつかの実施形態では、これは、外部流体内での相変化によって達成することができる。「相変化」流体は、例えば液体から固体へと相を変化させることができる流体である。相変化は、例えば温度変化によって開始させることができ、いくつかの場合、相変化は可逆的である。例えば、ワックスまたはゲルを、ワックスまたはゲルを流体として保持する温度で流体として使用することができる。冷却すると、ワックスまたはゲルは、固体または半固体状のシェルを形成し得、例えばカプセルをもたらすことができる。他の実施形態では、シェルを、外部流体液滴を重合することによって形成させることができる。これは、例えば化学的に、熱によってまたは電磁波放射(例えば、紫外線放射)によって触媒作用をさせて固体ポリマーシェルを形成できるプレポリマーまたはモノマーを用いることを含むいくつかの方法で達成することができる。
【0061】
流体液滴を固化させて固体粒子にすることができる任意の技術を用いることができる。例えば、流体液滴またはその部分を、流体液滴内で流体の融点またはガラス転移温度より低い温度に冷却することができる、流体を固化させる化学反応(例えば、重合反応、固体生成物を生成する2つの流体間の反応等)を誘発させることができる、などである。
【0062】
一実施形態では、流体液滴またはその部分を、流体液滴の温度を流体液滴のコンポーネントの少なくとも1つが固体状態になる温度に低下させることによって固化させる。例えば、流体液滴は、流体液滴のコンポーネントの融点またはガラス転移温度より低温度に流体液滴を冷却し、それによって流体液滴を固体にすることによって固化させることができる。非限定的な例として、流体液滴を高温(すなわち、室温、約25℃より高い温度)で形成させ、次いで、例えば室温または室温より低い温度に冷却することができる、流体液滴を室温で形成させ、次いで室温より低い温度に冷却することができる、などである。
【0063】
いくつかの場合、流体液滴は、ゾル状態からゲル状態への材料の転換が流体液滴の固化を引き起こすような、ゾル状態およびゲル状態を有する材料を含むことができる。流体液滴内の材料のゾル状態のゲル状態への転換は、当業者に公知の任意の技術、例えば流体液滴の冷却、液滴内での重合反応の開始等によって達成することができる。例えば、その材料がアガロースを含む場合、アガロースを含む流体液滴を、アガロースのゲル化温度より高い温度で生成させ、次いで冷却し、アガロースをゲル状態にさせることができる。別の例としては、流体液滴がアクリルアミド(例えば、流体液滴内に溶解されている)を含む場合、アクリルアミドを重合して(例えば、APSおよびテトラメチルエチレンジアミンを用いて)、ポリアクリルアミを含むポリマー粒子を生成させることができる。
【0064】
他の実施形態では、流体の固化をもたらす化学反応を用いて、流体液滴またはその部分を固化させる。例えば、流体液滴に加えられた2つ以上の流体を反応させて固体生成物を生成させ、それによって固体粒子を形成させることができる。別の例としては、流体液滴中の第1反応物を、流体液滴を取り囲む液体中の第2反応物と反応させて固体を生成させることができ、いくつかの場合、したがって、これが流体液滴を固体「シェル」内に被覆し、それによって固体シェルすなわち外部と流体コアすなわち内部を有するコア/シェル粒子を形成させることができる。さらに他の例として、流体液滴内で重合反応を開始させ、それによってポリマー粒子の形成をもたらすことができる。例えば、流体液滴は、重合して固体ポリマーを形成できる1つまたは複数のモノマーまたはオリゴマー前駆体(例えば、流体液滴に溶解および/または懸濁された)を含むことができる。重合反応は、自発的に行うことも、また、例えば流体液滴形成の際または流体液滴が形成された後に何らかの様式で開始させることができる。例えば、重合反応は、重合開始剤を流体液滴に加えることによって、流体液滴に光かまたは他の電磁エネルギーを施す(例えば、光重合反応を開始させるため)ことなどによって開始させることができる。
【0065】
固化反応の非限定的な例は、例えばジアシルクロリドおよびジアミンからのナイロン(例えば、ポリアミド)の生成を含む重合反応である。種々の適切なナイロン製造技術は当業者に公知であろう。例えば、ナイロン−6,6は、塩化アジポイルと1,6−ジアミノヘキサンを反応させることによって生成することができる。例えば、流体液滴は、連続相中の塩化アジポイルを、反応させて流体液滴の表面でナイロン−6,6を形成できる流体液滴内の1,6−ジアミノヘキサンと反応させることによって固化させることができる。反応条件に応じて、ナイロン−6,6を、流体液滴の表面で生成させるか(固体状外部および流体状内部を有する粒子を形成する)、または流体液滴内で生成させる(固体粒子を形成する)ことができる。
【0066】
論じたように、本発明の様々な態様では、多重エマルジョンを、2つ、3つまたはそれ以上の流体を様々な導管またはチャネルに通して流すことによって形成させる。チャネルの1つまたは複数(またはすべて)がマイクロ流体であってもよい。本明細書で用いる「マイクロ流体」は、約1ミリメートル(mm)未満の断面寸法、および、いくつかの場合少なくとも3:1の長さと最大断面寸法の比を有する少なくとも1つの流体チャネルを含むデバイス、装置またはシステムを指す。そのシステムの1つまたは複数のチャネルは毛細管であってよい。いくつかの場合、複数のチャネルが提供される。チャネルは、マイクロ流体サイズの範囲であってよく、例えば、約1mm未満、約300μm未満、約100μm未満、約30μm未満、約10μm未満、約3μm未満または約1μm未満の平均内径または内径を有する部分を有し得、それによって同程度の平均径を有する液滴を提供することができる。チャネルの1つまたは複数は、断面において、同じポイントで、その幅と実質的に同じ高さを有することができる(しかし必ずというわけではない)。断面において、チャネルは、長方形であっても円形または楕円形などのように実質的に非長方形であってもよい。
【0067】
マイクロ流体チャネルは、任意の適切なシステムで配置することができる。これまで論じてきたように、いくつかの実施形態では、主チャネルは比較的直線状であってよく、他の実施形態では、主チャネルはカーブしていても、角度がついていても、曲がっていてもまた他の形状を有していてもよい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チャネルは二次元パターンで配置することができる。すなわち、流体が例えば交差部で物理的に互いに接触することなくマイクロ流体チャネルが互いに交差することがないように、マイクロ流体チャネルの位置を二次元で描くことができる。もちろん、チャネルの平面配列として(すなわち、チャネルの疑似二次元配列で)表しても、そうしたチャネルは真に二次元ではないが、長さ、幅および高さを有する。対照的に、例えば「二重型管(tube−within−a−tube)」構造は疑似二次元ではない。それは、そこで2つのマイクロ流体チャネル内の流体は物理的に互いに接触しない(二次元では接触しているように見えるが)、少なくとも1つの位置が存在するためである。
【0068】
本明細書で用いる「チャネル」は、流体の流れを少なくとも部分的に導く物品(基材)上またはその中のフィーチャを意味する。そのチャネルは任意の断面形状(円形、卵形、三角形、不規則な形、正方形もしくは長方形など)を有することができ、覆われていても覆われていなくてもよい。それが完全に覆われていている複数の実施形態では、チャネルの少なくとも1つの部分は完全に取り囲まれた断面をもつことができるか、またはそのチャネル全体は、その入口および/または出口を除いてその長さ全体に沿って完全に取り囲まれていてよい。チャネルは、少なくとも2:1、より一般的には少なくとも3:1、5:1、10:1、15:1、20:1またはそれ以上の縦横比(長さ対平均断面寸法)を有することもできる。開放チャネルは一般に、流体輸送の制御を容易にする特徴、例えば構造的特徴(長いギザギザ(elongated indentation))および/または物理的または化学的性質(疎水性対親水性)または流体に対して力(例えば、封じ込め力(containing force))を及ぼすことができる他の特徴を含む。チャネル内の流体は、そのチャネルを部分的にまたは完全に満たすことができる。開放チャネルを使用するいくつかの場合、流体を、例えば表面張力(すなわち、凹形または凸形のメニスカス)を用いてチャネル内に保持することができる。
【0069】
チャネルは、例えば流体の流れに対して約5mmもしくは2mm未満または約1mm未満あるいは約500μm未満、約200μm未満、約100μm未満、約60μm未満、約50μm未満、約40μm未満、約30μm未満、約25μm未満、約10μm未満、約3μm未満、約1μm未満、約300nm未満、約100nm未満、約30nm未満または約10nm未満の垂直最大寸法を有する任意のサイズのものであってよい。いくつかの場合、流体が、物品または基材を通して自由に流れることができるようにチャネルの寸法を選択することができる。チャネルの寸法は、例えば、チャネルにおいて流体の特定の体積流速または線流速が可能になるように選択することもできる。もちろん、チャネルの数およびチャネルの形状は、当業者に公知の任意の方法で変えることができる。いくつかの場合、2つ以上のチャネルまたは毛細管を用いることができる。例えば、それらが、互いに内側に位置する、互いに隣接して位置する、互いに交差するように位置する等の場合、2つ以上のチャネルを用いることができる。
【0070】
論じたように、本明細書で説明するものなどの多重エマルジョンを、いくつかの(しかしすべてではない)実施形態したがって、多重エマルジョンを形成させるために用いられるチャネルの親水性および/または疎水性を制御することによって調製することができる。親水性および/または疎水性を制御するためにチャネル上にコーティングするのに適した材料の例には、これらに限定されないが、パリレン、フルオロポリマー、例えばViton(FKMフルオロエラストマー(fluorelastomer)、DuPont)、CYTOP809A(Sigma Aldrich)、Chemraz(ペルフルオロ化エラストマー、Fluidigm Corporationから入手可能)、Teflon AF(ポリテトラフルオロエチレン)、テトラフルオロメタン(CF)プラズマ処理物、フッ素化トリクロロシラン(例えば、F(CF(CHSiCl)などが含まれる。いくつかの場合、そうした材料は、耐薬品性(例えば、コーティングまたは処理されていないチャネルに対して)を高めることもできる。さらに、その材料の親水性および/または疎水性は、当業者に公知の慣行的な技術、例えばプラズマ酸化(例えば、酸素含有プラズマで)、酸化剤、強酸もしくは強塩基などを用いて変えることができる。
【0071】
一連の実施形態では、チャネルの親水性および/または疎水性は、チャネルの少なくとも一部にゾル−ゲルをコーティングすることによって制御することができる。例えば、一実施形態では、相対的親水性の部分および相対的疎水性の部分は、それらに相対的疎水性を付与するゾル−ゲルをチャネル表面上に塗布することによって生成することができる。ゾル−ゲルは、光開始剤などの開始剤を含むことができる。部分(例えば、チャネルおよび/またはチャネルの部分)は、親水性部分(例えば、アクリル酸)を含む溶液でチャネルを満たし、その部分を開始剤に適したトリガー(例えば、光開始剤の場合、光または紫外線)に曝すことによって、相対的親水性を付与することができる。例えば、その部分は、反応が望ましくない部分を遮へいするためのマスキングを用いることによって、反応が望ましい部分に光または熱の集束ビームを当てることなどによって曝露させることができる。曝露された部分では開始剤は親水性部分のゾル−ゲルとの反応(例えば、重合)を引き起こし、それによって、これらの部分に相対的親水性を付与することができる(例えば、上記の例におけるゾル−ゲルコーティングの表面にポリ(アクリル酸)がグラフト化されるようにすることによって)。
【0072】
当業者に公知であるように、ゾル−ゲルはゾルまたはゲル状態であることができる材料であり、一般にポリマーを含む。ゲル状態は通常液相を含むポリマーネットワークを含み、例えば乾燥または加熱技術でゾルから溶媒を除去することによってゾル状態から生成することができる。いくつかの場合、以下で論じるように、例えばゾル内でいくらか重合を起こさせることによって、使用前にゾルを前処理することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、ゾル−ゲルコーティングは、特定の特性を有する、例えば特定の疎水性を有するように選択することができる。コーティングの特性は、ゾル−ゲルの組成を制御することによって(例えば、ゾル−ゲル内で特定の材料またはポリマーを用いることによって)、および/またはそのコーティングを改変する、例えば、以下で論じるように、そのコーティングに重合反応を施してあるポリマーをゾル−ゲルコーティングに反応させることによって制御することができる。
【0074】
例えば、ゾル−ゲルコーティングは、ゾル−ゲルの中に疎水性ポリマーを取り込むことによってより疎水性にすることができる。例えば、ゾル−ゲルは、1つまたは複数のシラン、例えばヘプタデカフルオロシランなどのフルオロシラン(すなわち、少なくとも1個のフッ素原子を含むシラン)、またはメチルトリエトキシシラン(MTES)、または1つもしくは複数の脂質鎖を含むシラン、例えばオクタデシルシランまたは他のCH(CH−シラン(nは適切な任意の整数であってよい)などの他のシランを含むことができる。例えば、nは1、5または10より大きく、約20、25または30より小さくてよい。シランは、アルコキシド基などの他の基、例えば、オクタデシルトリメトキシシランも任意選択で含むことができる。一般に、大部分のシランはゾル−ゲルで用いることができ、具体的なシランは疎水性などの所望の特性をもとにして選択される。本発明の他の実施形態において、所望の相対的疎水性または親水性などの因子に応じて、他のシラン(例えば、より短いまたはより長い鎖長を有する)を選択することもできる。いくつかの場合、シランは、ゾル−ゲルをより親水性にする他の基、例えばアミンなどの基を含むことができる。非限定的な例には、ジアミンシラン、トリアミンシランまたはN−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンシランが含まれる。シランを反応させてゾル−ゲル内でオリゴマーまたはポリマーを形成させることができ、重合度(例えば、オリゴマーまたはポリマーの長さ)は、反応条件、例えば温度、存在する酸の量などを制御することによって制御することができる。いくつかの場合、2つ以上のシランがゾル−ゲル中に存在してよい。例えば、ゾル−ゲルは、得られるゾル−ゲルがより高い疎水性を示すようにするフルオロシラン、およびポリマーの生成を容易にする他のシラン(または他の化合物)を含むことができる。いくつかの場合、重合を容易にするためのSiO化合物を生成できる材料、例えばTEOS(オルトケイ酸テトラエチル)が存在していてよい。
【0075】
ゾル−ゲルは、シランだけを含むことに限定されず、シランに加えてまたはそれに代わって他の材料が存在していてよいことを理解すべきである。例えば、コーティングは、SiO、バナジア(V)、チタニア(TiO)および/またはアルミナ(Al)などの1つまたは複数の金属酸化物を含むことができる。
【0076】
いくつかの場合、マイクロ流体チャネルは、ゾル−ゲルを受け入れるのに適した材料、例えばガラス、金属酸化物またはポリジメチルシロキサン(PDMS)および他のシロキサンポリマーなどのポリマーで存在する。例えば、いくつかの場合、マイクロ流体チャネルは、その中にケイ素原子を含むものであってよく、特定の例では、マイクロ流体チャネルを、シラノール(Si−OH)基を含むように選択することができ、あるいは改変してシラノール基を有するようにすることができる。例えば、マイクロ流体チャネルを、酸素プラズマ、酸化剤または強酸に曝してマイクロ流体チャネルにシラノール基の形成をもたらすようにすることができる。
【0077】
ゾル−ゲルはマイクロ流体チャネル上のコーティングとして存在することができ、そのコーティングは任意の適切な厚さを有することができる。例えば、そのコーティングは、約100μm以下、約30μm以下、約10μm以下、約3μm以下または約1μm以下の厚さを有することができる。いくつかの場合、例えば、より高い耐薬品性が望ましい用途では、より厚いコーティングが望ましい。しかし、他の用途、例えば比較的小さいマイクロ流体チャネル内ではより厚いコーティングが望ましい。
【0078】
一連の実施形態では、ゾル−ゲルコーティングの疎水性を、例えば、ゾル−ゲルコーティングの第1部分が相対的に疎水性になり、ゾル−ゲルコーティングの第2部分が相対的に親水性になるように制御することができる。コーティングの疎水性は、当業者に公知の技術を用いて、例えば本明細書で論じるものなどの接触角測定法を用いて決定することができる。例えば、いくつかの場合、マイクロ流体チャネルの第1部分は水より有機溶媒に好都合な疎水性を有し、他方、第2部分は有機溶媒より水に好都合な疎水性を有することができる。
【0079】
ゾル−ゲルコーティングの疎水性は、例えば、ゾル−ゲルコーティングの少なくとも一部を重合反応にかけてポリマーをゾル−ゲルコーティングと反応させることによって改変することができる。ゾル−ゲルコーティングと反応させるポリマーは適切な任意のポリマーであってよく、特定の疎水特性をもつように選択することができる。例えば、ポリマーを、マイクロ流体チャネルおよび/またはゾル−ゲルコーティングより疎水性かまたはより親水性になるように選択することができる。例として、使用できる親水性ポリマーはポリ(アクリル酸)である。
【0080】
ポリマーは、ポリマーをモノマー(またはオリゴマー)形態でゾル−ゲルコーティング(例えば、溶液で)に提供して、モノマーとゾル−ゲルの間に重合反応を起こさせることによって、ゾル−ゲルコーティングに付加させることができる。例えば、フリーラジカル重合を用いて、ポリマーのゾル−ゲルコーティングとの結合をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、フリーラジカル重合などの反応は、任意選択で、光に曝してフリーラジカルを生成できる(例えば、分子開裂によって)光開始剤の存在下で、反応物を熱および/または紫外線(UV)などの光に曝露することによって開始させることができる。当業者はそうした多くの光開始剤を認識しているであろう。Irgacur2959(Ciba Specialty Chemicals)または2−ヒドロキシ−4−(3−トリエトキシシリルプロポキシ)−ジフェニルケトン(SIH6200.0、ABCR GmbH & Co.KG)などのその多くは市販されている。
【0081】
光開始剤は、ゾル−ゲルコーティングに加えるポリマーと一緒に含めることができ、またいくつかの場合、光開始剤はゾル−ゲルコーティング中に存在していてもよい。例えば、光開始剤をゾル−ゲルコーティング中に含有させ、光に曝露して活性化させることができる。光開始剤は、ゾル−ゲルコーティングの成分、例えばシランとコンジュゲートまたは結合させることもできる。例として、Irgacur2959などの光開始剤を、ウレタン結合によってシラン−イソシアネートとコンジュゲートさせることができる。そこで、光開始剤の第一アルコールは、ウレタン結合を生成できるイソシアネート基との求核付加に関与することができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態では、ゾル−ゲルコーティングの一部だけをポリマーと反応させることができることに留意すべきである。例えば、モノマーおよび/または光開始剤を、マイクロ流体チャネルの一部だけに曝露させるか、または重合反応をマイクロ流体チャネルの一部だけにおいて開始させることができる。具体的な例として、マイクロ流体チャネルの一部を光に曝露し、他方、例えば、マスクまたはフィルターを用いるかまたは光の集束ビームを用いることによって他の部分を光への曝露から保護することができる。したがって、マイクロ流体チャネルのあらゆるところで重合が起こるわけではないので、マイクロ流体チャネルの異なる部分が異なる疎水性を示すことができる。別の例として、マイクロ流体チャネルを、露出パターンの縮小画像をマイクロ流体チャネル上に投影することによってUV光に曝露することができる。いくつかの場合、投影法によって小さい分解能(例えば、1μmまたはそれ以下)を達成することができる。
【0083】
本発明の他の態様は、そうしたゾル−ゲルを、マイクロ流体チャネルの少なくとも一部にコーティングするためのシステムおよび方法を対象とする。一連の実施形態では、マイクロ流体チャネルをゾルに曝露し、次いでこれを処理してゾル−ゲルコーティングを形成させる。いくつかの場合、ゾルを前処理して部分重合をもたらすこともできる。余分なゾル−ゲルコーティングは任意選択でマイクロ流体チャネルから取り除くことができる。いくつかの場合、論じたように、例えば、そのコーティングをモノマーおよび/またはオリゴマーを含む溶液に曝露することによってコーティングの一部を処理してその疎水性(または他の特性)を変え、モノマーおよび/またはオリゴマーとそのコーティングの重合が起こるようにすることができる。
【0084】
ゾルを、上記したものを含む光開始剤などの他の化合物も含む溶媒中に含めることができる。いくつかの場合、そのゾルは、1つまたは複数のシラン化合物を含むこともできる。適切な任意の技術を用いて、例えば、熱などの化学的または物理的手法を用いて溶媒を除去することによって、ゾルを処理してゲルを形成させることができる。例えば、ゾルを、溶媒の少なくとも一部を追い出すまたは蒸発させるのに用いることができる、少なくとも約150℃、少なくとも約200℃または少なくとも約250℃の温度に曝すことができる。具体的な例として、ゾルを、少なくとも約200℃または少なくとも約250℃の温度に達するように設定したホットプレートにかけ、ゾルをホットプレートにかけることによって溶媒の少なくとも一部を追い出すまたは蒸発させるようにすることができる。しかし、いくつかの場合、ゾル−ゲル反応は、熱をかけないで、例えば室温で進行させることもできる。したがって、例えば、ゾルをしばらく(例えば、約1時間、約1日等)を放置する、および/または空気または他のガスをゾル上に通してゾル−ゲル反応を進行させることができる。
【0085】
いくつかの場合、依然として存在するゲル化されていないゾルを、マイクロ流体チャネルから除去することができる。ゲル化されていないゾルを、例えば物理的にマイクロ流体チャネルに圧力をかけるかまたは化合物を添加する等によって能動的に除去するか、または、いくつかの場合、ゲル化されていないゾルを受動的に除去することができる。例えば、いくつかの実施形態では、マイクロ流体チャネル内に存在するゾルを加熱して溶媒を蒸発させ、マイクロ流体チャネル内に気体状態をもたらし、それによってマイクロ流体チャネル内の圧力を上昇させることができる。いくつかの場合、圧力は、ゲル化されていないゾルの少なくとも一部をマイクロ流体チャネルから除去する、すなわち「放出」するのに十分な圧力にすることができる。
【0086】
特定の実施形態では、マイクロ流体チャネルに曝露させる前にゾルを前処理して部分重合を起こさせることができる。例えば、ゾルを、ゾル内で部分重合が起こるように処理することができる。ゾルは、例えばゾルを少なくとも一部のゲル化を起こさせるのに十分な酸または温度に曝露することによって処理できる。いくつかの場合、その温度は、マイクロ流体チャネルに加えられたときゾルが曝露される温度より低くてよい。ゾルの重合がいくらか起こる可能性があるが、例えば温度を下げることによって重合が完了する前に重合を停止させことができる。したがって、ゾル内で、オリゴマーが一部形成される(これは、長さに関して必ずしも十分特性評価されていない)が、完全な重合はまだ起こっていない。次いで部分処理したゾルを、上記で論じたように、マイクロ流体チャネルに加えることができる。
【0087】
特定の実施形態では、コーティングがマイクロ流体チャネルに導入された後に、コーティングの一部を処理してその疎水性(または他の特性)を変えることができる。いくつかの場合、そのコーティングをモノマーおよび/またはオリゴマーを含む溶液に曝露し、次いでこれを、上記で論じたようにして重合してそのコーティングと結合させる。例えば、コーティングの一部を、フリーラジカル重合反応を開始して重合を起こさせるのに用いることができる熱、または紫外線(ultraviolet right)などの光に曝露することができる。任意選択で、光開始剤を、例えばゾル−ゲルコーティング内に含めてこの反応を容易にすることができる。
【0088】
そうしたコーティングおよび他のシステムのさらなる詳細は、Abateらによる「Surfaces, Including Microfluidic Channels, With Controlled Wetting Properties」という表題の2008年3月28日出願の米国仮出願番号第61/040,442号および2009年10月1日にWO2009/120254として公開のAbateらによる「Surfaces, Including Microfluidic Channels, With Controlled Wetting Properties」という表題の2009年2月11日出願の国際特許出願番号PCT/US2009/000850に見ることができる。そのそれぞれを参照により本明細書に組み込む。
【0089】
本発明の特定の態様による様々な材料および方法を用いて、本明細書で説明する多重液滴を生成することができるシステム(上記したものなど)を形成させることができる。いくつかの場合、選択された様々な材料はそれ自体様々な方法に役に立つ。例えば、本発明の様々なコンポーネントは、チャネルをマイクロマシニング、スピンコーティングおよび化学蒸着などの膜蒸着プロセス、レーザー加工、フォトリソグラフィー技術、湿式化学プロセスまたはプラズマプロセスを含むエッチング法などによって形成される固体材料から形成させることができる。例えば、Scientific American、248巻:44〜55頁、1983年(Angellら)を参照されたい。一実施形態では、流体システムの少なくとも一部は、シリコン(silicon)チップにフィーチャをエッチングすることによりシリコンで形成される。シリコンからの本発明の様々な流体システムおよびデバイスの正確で効率的な加工技術は公知である。他の実施形態では、本発明のシステムおよびデバイスの様々なコンポーネントは、例えばポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」またはTeflon(登録商標))などの弾性ポリマーなどのポリマーで形成させることができる。
【0090】
異なるコンポーネントを、異なる材料で組み立てることができる。例えば、底壁および側壁を含む底部をシリコンまたはPDMSなどの不透明材料で組み立てることができ、流体プロセスを観察および/または制御するために、頂部を、ガラスまたは透明なポリマーなどの透明または少なくとも部分的に透明な材料で組み立てることができる。ベース支持材料が正確な所望の官能性を有さない内側のチャネル壁と接触する流体に、所望の化学官能基を曝すようにコンポーネントをコーティングすることができる。例えば、コンポーネントを、例示したように、別の材料でコーティングされた内側のチャネル壁で組み立てることができる。本発明のシステムおよびデバイスの様々なコンポーネントを組み立てるために使用する材料、例えば流体チャネルの内壁をコーティングするために使用する材料は、流体システムを通って流れる流体に悪影響を及ぼさない、またはそれによって影響を受けない材料、例えばデバイス内で使用される流体の存在下で化学的に不活性な材料の中から選択することが望ましい。そうしたコーティングの非限定的な例はすでに論じたところである。
【0091】
一実施形態では、本発明の様々なコンポーネントを、ポリマー材料および/または可撓性のある材料および/またはエラストマー材料で組み立て、硬化性流体で好都合に形成させ、成形法(例えば、レプリカ成形法、射出成形法、注型成形法等)による加工を容易にすることができる。硬化性流体は、固化するように誘発させるかまたは自発的に固化させて、流体ネットワークにおいて使用しかつそれを用いて使用することを考慮した、流体を含む、および/または輸送することができる固体にすることができる、本質的に任意の流体であってよい。一実施形態では、硬化性流体は、ポリマー液体または液体ポリマー前駆体(すなわち、「プレポリマー」)を含む。適切なポリマー液体は、例えば、その融点を超えて加熱した熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマーまたはそうしたポリマーの混合物を含むことができる。別の例としては、適切なポリマー液体は、適切な溶媒中に、例えば蒸発によって溶媒を除去すると固体ポリマー材料を形成する1つまたは複数のポリマー溶液を含むことができる。例えば溶融状態から固化させるまたは溶媒蒸発によって固化させることができるそうしたポリマー材料は当業者に周知である。その多くがエラストマーである様々なポリマー材料が適しており、それらはまた、モールドマスターの一方または両方がエラストマー材料でできている実施形態のためにモールドまたはモールドマスターを形成させるのにも適している。そうしたポリマーの例の非限定的リストには、シリコーンポリマー、エポキシポリマーおよびアクリレートポリマーの一般部類のポリマーが含まれる。エポキシポリマーは、エポキシ基、1,2−エポキシドまたはオキシランと一般に称される三員環状エーテル基の存在を特徴とする。例えば、芳香族アミン、トリアジンおよび脂環式主鎖をベースとした化合物に加えて、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを使用することができる。他の例には周知のNovolacポリマーが含まれる。本発明にしたがって使用するのに適したシリコーンエラストマーの非限定的な例には、メチルクロロシラン、エチルクロロシラン、フェニルクロロシラン等のクロロシランを含む前駆体から形成されるものが含まれる。
【0092】
一連の実施形態においてシリコーンポリマー、例えばシリコーンエラストマーポリジメチルシロキサンが好ましい。PDMSポリマーの非限定的な例には、Dow Chemical Co.、Midland、MIからSylgard、特にSylgard182、Sylgard184およびSylgard186という商標で販売されているものが含まれる。PDMSを含むシリコーンポリマーは、本発明のマイクロ流体構造の加工を容易にするいくつかの有益な特性を有している。例えば、そうした材料は、安価で容易に入手することができ、熱による硬化によってプレポリマー液体から固化させることができる。例えば、PDMSは一般に、プレポリマー液体を、例えば約1時間の曝露時間、例えば約65℃〜約75℃の温度にかけることによって硬化させることができる。また、PDMSなどのシリコーンポリマーは弾性があり、したがって、本発明の特定の実施形態において必要な比較的高い縦横比を有する非常に小さいフィーチャを形成させるのに有用であり得る。可撓性のある(例えば、弾性がある)モールドまたはマスターはこの関連で有利である可能性がある。
【0093】
PDMSなどのシリコーンポリマーから本発明のマイクロ流体構造などの構造を形成させることの1つの利点は、そうしたポリマーを、例えば空気プラズマなどの酸素含有プラズマに曝露させることによって酸化させることができ、その結果、その酸化された構造がその表面に、他の酸化シリコーンポリマー表面または様々な他のポリマーおよび非ポリマー材料の酸化表面と架橋できる化学基を含むことである。したがって、コンポーネントを、加工し次いで酸化し、別個の接着剤または他の密閉手段を必要とすることなく、他のシリコーンポリマー表面または酸化されたシリコーンポリマー表面と反応性のある他の基材の表面に本質的に不可逆的にシールすることができる。大抵の場合、シーリングは、酸化されたシリコーン表面を単に別の表面に接触させることによって、補助的な圧力をかけてシールを形成させる必要なく、完了させることができる。すなわち、予め酸化されたシリコーン表面は、適切なあわせ面に対して接触接着剤として作用する。具体的には、それ自体に不可逆的にシール可能であることに加えて、酸化されたPDMSなどの酸化されたシリコーンは、PDMS表面と同様の様式で酸化されている(例えば、酸素含有プラズマに曝露することによって)、例えばガラス、シリコン、酸化ケイ素、石英、窒化ケイ素、ポリエチレン、ポリスチレン、ガラス状炭素およびエポキシポリマーを含むそれ自体以外のある範囲の酸化された材料に不可逆的にシールすることもできる。本発明の関連で有用な酸化およびシーリング方法ならびに全般的な成形技術は、当技術分野で、例えば表題「Rapid Prototyping of Microfluidic Systems and Polydimethylsiloxane」、Anal. Chem.、70巻:474〜480頁、1998年(Duffyら)(これを参照により本明細書に組み込む)という論文に記載されている。
【0094】
いくつかの実施形態では、本発明の特定のマイクロ流体構造(または内側の流体接触表面)は、特定の酸化シリコーンポリマーから形成させることができる。そうした表面は弾性ポリマーの表面より親水性であってよい。したがって、そうした親水性チャネル表面は、水溶液でより簡単に満たし、かつ湿潤させることができる。
【0095】
一実施形態では、本発明のマイクロ流体デバイスの底壁は、1つもしくは複数の側壁または頂部壁あるいは他のコンポーネントと異なる材料で形成されている。例えば、底壁の内面は、シリコンウエハーもしくはマイクロチップまたは他の基材の表面を含むことができる。上記したように、他のコンポーネントをそうした代替の基材にシールすることができる。シリコーンポリマー(例えば、PDMS)を含むコンポーネントを、異なる材料でできた基材(底壁)にシールするのが望まれる場合、その基材は、それに酸化されたシリコーンポリマーを不可逆的にシールできる材料の群(例えば酸化されている、ガラス、シリコン、酸化ケイ素、石英、窒化ケイ素、ポリエチレン、ポリスチレン、エポキシポリマーおよびガラス状炭素表面)から選択することができる。あるいは、これらに限定されないが、別個の接着剤の使用、ボンディング、溶媒ボンディング、超音波溶着等を含む当業者に明らかな他のシーリング技術を用いることができる。
【0096】
以下の出願をそれぞれ参照により本明細書に組み込む:Kumarらによる「Formation of Microstamped Patterns on Surfaces and Derivative Articles」という表題の1993年10月4日出願の米国特許出願番号第08/131,841号(現在は1996年4月30日発行の米国特許第5,512,131号である);Kimらによる「Method of Forming Articles including Waveguides via Capillary Micromolding and Microtransfer Molding」という表題の1998年1月8日出願の米国特許出願番号第09/004,583号(現在は2002年3月12日発行の米国特許第6,355,198号である);1996年6月26日にWO96/29629として公開のWhitesidesらによる「Microcontact Printing on Surfaces and Derivative Articles」という表題の1996年3月1日出願の国際特許出願番号PCT/US96/03073;2001年11月29日にWO01/89787として公開のAndersonらによる「Microfluidic Systems including Three−Dimensionally Arrayed Channel Networks」という表題の2001年5月25日出願の国際特許出願番号:PCT/US01/16973;2006年7月27日に米国特許出願公開番号第2006/0163385号として公開のLinkらによる「Formation and Control of Fluidic Species」という表題の2005年10月7日出願の米国特許出願番号第11/246,911号;2005年8月11日に米国特許出願公開番号第2005/0172476号として公開のStoneらによる「Method and Apparatus for Fluid Dispersion」という表題の2004年12月28日出願の米国特許出願番号第11/024,228号;2006年9月14日にWO2006/096571として公開のWeitzらによる「Method and Apparatus for Forming Multiple Emulsions」という表題の2006年3月3日出願の国際特許出願番号PCT/US2006/007772;2007年1月4日に米国特許出願公開番号第2007/000342号として公開のLinkらによる「Electronic Control of Fluidic Species」という表題の2006年2月23日出願の米国特許出願番号第11/360,845号およびGarsteckiらによる「Systems and Methods of Forming Particles」という表題の2006年3月3日出願の米国特許出願番号第11/368,263号。Chuらによる「Multiple Emulsions and Techniques for Formation」という表題の2007年3月28日出願の米国仮出願番号第60/920,574号も参照により本明細書に組み込む。Weitzらによる「Multiple Emulsions Created Using Junctions」という表題の2009年9月22日出願の米国仮出願番号第61/239,402号;Weitzらによる「Multiple Emulsions Created Using Jetting and Other Techniques」という表題の2009年9月22日出願の米国仮出願番号第61/239,405号およびWeitzらによる「Multiple Emulsions Created Using Jetting and Other Techniques」という表題の2010年6月9日出願の米国仮出願番号第61/353,093号も参照により本明細書に組み込む。
【0097】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示しようとするものであるが、本発明の全範囲を例示するものではない。
【実施例】
【0098】
(実施例1)
この実施例は、リソグラフィー的に加工されたデバイスにおいて一段階プロセスで二重エマルジョンを形成させるための技術を示すものである。これらのデバイスは、中間相の内側の第1活性相の安定なネスト化したジェットの形成を可能にする。このネスト化したジェットは、第2のジャンクションへ送られ、そこではチャネルが拡がり、連続相が加えられる。これは、ジャンクションの入口での不安定性を生じ、ドリッピングプロセスにおいてジェットが単分散の二重エマルジョンへと破壊されるようにする。このプロセスは二重エマルジョンを生成し、いくつかの場合、これは比較的薄くシェル化される。
【0099】
この実施例では、ソフトリソグラフィーの技術を使用してマイクロ流体デバイスをPDMS中で加工した。二重エマルジョンの形成を可能にするために、チャネルを、光反応性ゾル−ゲルコーティングを用いて空間的にパターン化した。湿潤性をパターン化するために、デバイスをゾル−ゲルでコーティングし、アクリル酸モノマー溶液で満たし、パターン化されたUV光に曝露した。デバイスがUV光に曝露されたところはどこも、ポリアクリル酸鎖を接触面にグラフト化してそれらを親水性にした。ゾル−ゲルのデフォルト特性によりデバイスの残りの部分は疎水性になった。詳細については、例えば、Abateらによる「Surfaces, Including Microfluidic Channels, with Controlled Wetting Properties」という表題の2009年2月11日出願の国際特許出願番号PCT/US2009/000850および2009年2月12日にWO2009/020633として公開のWeitzらによる「Metal Oxide Coating on Surfaces」という表題の2008年8月7日出願の国際特許出願番号PCT/US2008/009477を参照されたい。そのそれぞれを全体として参照により本明細書に組み込む。二重エマルジョン用の溶液として、0.5%の界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む蒸留水と1.8%の界面活性剤R22を含むHFE−7500フルオロカーボン油を用いた。この実施例で使用したすべての二重エマルジョンは、フルオロカーボン油連続相中に分散されたフルオロカーボン油内部液滴および水シェルを含むものであった。図2は、この実施例で使用したデバイスの概略図を示す。
【0100】
この実施例で使用したデバイスは、連続して連結されたクロスチャネルジャンクションを含むものであった。第1のジャンクションをジェッティングジャンクションとして使用し、第2または第3のジャンクションをドリッピングジャンクションとして使用した。この実施例では、デバイスを、中間相の内側にネスト化した内相の同心状のジェットをまず形成させるのに使用し、次いで、一段階ドリッピングプロセスでそのジェットを二重エマルジョンに破壊するのに使用した。これは、2つのジャンクションにおけるウェーバー数を制御することによって達成された。ウェーバー数はWe=ρu/γlと定義される。ここで、ρ(ロー)=1614kg/mは流体の密度であり、uは流体の体積流量であり、wはチャネルの幅であり、γ(ガンマ)=1.5mN/mは分散相と連続相との間の表面張力である。この式は、同軸流(co−flowing)層流ストリームについてのドリッピングからジェッティングへの移行を規定するものであり、We<1で系はドリップし、We>1で系はジェットする。したがって、第1ジャンクションにおいて制御されたジェットの形成を可能にするために、短くて狭いノズルを使用してwが小さく保たれるように(この場合40μm)した。これらの寸法のため、内相流速が1600μL/時間へ増大するのにしたがってウェーバー数は下から1に近づいてきた。この流速より上で、系はジェッティングを示した。ネスト化したジェットの制御された一段階ドリッピングを可能にするために、第2のジャンクションのノズルを拡げた。これによって流速は低下し、Weは小さくなり、その結果、系がドリッピングを示すようになった。これは、uin+umid=3200μL/時間まで、ネスト化したジェットが単分散二重エマルジョンに破壊されるようにし、様々な厚さを有する二重エマルジョンの形成を可能にした。
【0101】
したがって、We数はドリッピングからジェッティングへの移行を規定するだけでなく、このデバイスにおいて、二重乳化が一段階プロセスで起こるかまたは二段階プロセスで起こるかも規定する。これを例示するため、図3に示すように、第1ジャンクションにおいてWeを変化させて、2つのレジーム間で移動させた。この図は、ある範囲のウェーバー数について、二重連結デバイスにおいて形成された二重エマルジョンの光学顕微鏡画像を示す。流速を内相について600μL/時間に設定してWeを小さくスタートさせ、中間相について1000μL/時間、連続相について1800および200μL/時間と設定した。これらの流速で、第1ジャンクションについてWe=0.37であり、したがって図3に示すように系はドリッピングを示している。図3に示すように、これらの液滴は、二段階プロセスで第2ジャンクションに流れ込み、そこで外部液滴に封入されて二重エマルジョンを生成する。Weが徐々に増大していっても系はドリッピングレジームに留まり、二段階プロセスで二重エマルジョンを生成するが、図3の中ほどに示すように、より速い速度では比較的薄いシェルを有している。図3に示すように、Weがさらに増大すると、Weが約1になるまで(ここで第1液滴メーカーはジェッティングを示し始める)二重エマルジョンはさらに速く生成され、シェルはさらに薄くなる。図3の右側に示すように、この時点で、液滴形成は二段階プロセスから一段階プロセスへ移行して、非常に薄いシェル型二重エマルジョンを形成している。しかし、移行の近くでは、二重エマルジョンは完全に単分散となっているようには見えない。その理由は、内相ジェットは完全に安定であるように見えず、対流による不安定性がジェットを変形させ、場所によって厚くなったり薄くなったりしているからである。単分散二重エマルジョンの増加を達成するために、Weを増大させて、ドリッピング/ジェッティング移行からさらに遠く移動させた。これらの流速で、対流による不安定性を、ジェットの干渉を迅速に避けるのに十分速く下流で取り除くことができ、時不変(time invariant)の形状を有する滑らかで安定したジェットが得られる。図3に示すように、これは、第2ノズルの入口での不安定性を可能にして、ジェットを相対的に単分散の二重エマルジョンへとピンチオフしている。いくつかの場合、Weをさらに増大させると、流速が十分に大きくなり第2ジャンクションもジェッティング挙動を示し始めるので、多分散型二重エマルジョンの形成がもたらされる。
【0102】
二段二重乳化から一段階二重乳化への移行を定量化するために、図4Aに示すように、Weの関数として、内部および外部液滴のピンチオフ位置を決定した。小さいWeでは、内部液滴形成と外部液滴形成の間に大きな分離距離があった。これは、図4Aに示すようにこのプロセスが二段階であったからである。Weが増加すると、図4Aに示すように、内相が第2ジャンクションにジェッティングして、内部液滴のピンチオフ位置に、比較的突然の不連続ジャンプが見られる。図4Aに示すように、これらの流速で、内部液滴と外部液滴はほとんど同じ場所で同時にピンチオフされ、一段階液滴形成がもたらされる。二重エマルジョンシェルの厚さもこの範囲にわたって徐々に減少する。それは、図4Bに、シェル厚さについて理論曲線と比較して示すように(得られた二重エマルジョンシェルの厚さを、内相ウェーバー数の関数として示している)、内相と中間相の流速比が増大するためである。低い内相流速で厚いシェル型二重エマルジョンが形成され、高い内相流速で薄いシェル型二重エマルジョンが形成された。これは、流速を調節することによって二重エマルジョンの構造を制御できるようにする。具体的にはWe約1で、第1ジャンクションはドリッピングからジェッティング挙動へ移行し、その結果、内部液滴のピンチオフ位置において不連続ジャンプが起こる。これも、低いWeでの二段階形成から高いWeでの一段階形成への移行を設定する。シェル厚さは、図4Bに挿入した式で示されるように、Weの関数としてモデル化することができる。
【0103】
一段階二重乳化の連続ダイナミックスを観察するために、その過程の画像を高速度カメラで記録した。デバイスの流速を、内相で1900μL/時間、中間相で1000μL/時間、連続相で1800および200μL/時間に設定した。これらの流速では、約3kHzの速度で二重エマルジョンが形成された。そこで、連続ダイナミックスを分解できるように画像を16kHzで記録した。図5Aのt=0および62マイクロ秒に示すように、閉じ込め(confining)マイクロチャネルでの単相流体の乳化と同時に、ジェットの先頭部分がノズル中に伸び、それを封鎖する。これは、連続相において圧力を増加させ、ジェットを押しつぶし(squeeze on)始める。t=125および187マイクロ秒で示されるように、これはジェットを狭くする。t=250マイクロ秒で示されるように、連続相が中間相を押しつぶすと同時に、中間相も内相を押しつぶす。t=312マイクロ秒で、これは内部液滴をピンチオフするが、中間相はさらに300マイクロ秒間連結されたままとなる。t=625マイクロ秒で、中間相もピンチオフして二重エマルジョンの形成を完了する。このプロセスを周期的に繰り返し、薄いシェルを有する相対的に単分散の二重エマルジョンを生成させる。したがって、一段階二重乳化は実際に2つのピンチオフ事象によって起こるが、この実施例のデバイスでは、それらは時間で300マイクロ秒、空間で80μm離れている。
【0104】
(実施例2)
この実施例は、広範囲のシェル厚さを有する多重エマルジョンを生成させる簡単な方法を例示するものである。非混和性流体の多重ジェットを生成させるためにマイクロ流体デバイスを使用し、ドリッピング不安定性を用いてそのジェットを破壊して多重エマルジョンにした。ジェットの厚さを制御することによって、多重エマルジョン中のシェルの厚さを制御することができる。この例で示すように、一段階形成は、粘弾性流体などの他では制御的に乳化することができない流体から、単分散エマルジョンを生成させる効果的な方法である。
【0105】
この実施例では、広範囲のシェル厚さを有する多重エマルジョンを形成させるための簡単な手法を示す。一連の流れ集束型ジャンクションを有するマイクロ流体デバイスを使用した。最後のジャンクションを除いてすべてのジャンクションがジェッティングレジーム内にあるように流速を設定することによって、異なる流体の多重ジェットを生成させることができる。ドリッピング不安定性を用いて、最後のジャンクションにおいて多重ジェットを破壊して多重エマルジョンにした。これは、すべてのジャンクションがドリッピングレジームにあるように流速を設定する必要がないので、より広い範囲にわたって動作させることができ、広範囲のシェル厚さを有する多重エマルジョンの生成が可能になる。これは、粘弾性流体などのマイクロ流体デバイスでは通常乳化させることができない流体から単分散液滴を生成させる効果的な方法でもある。この実施例では、これは、乳化させるのがより簡単な流体中に「困難な」流体を包み、二重ジェットを形成させることによって達成された。外部ジェットが液滴中にピンチするように誘発させることによって、内部ジェットも液滴中にピンチさせることができる。二重エマルジョンを破壊することによって、内部液滴が放出され、困難な流体の単分散エマルジョンが得られる。
【0106】
この実施例では、マイクロ流体の流れ集束を用いてエマルジョンを生成させた。4方向交差を形成させるために、直角に交差する2つのチャネルを有する流れ集束デバイスを使用した。分散相を中央入口に注入し、連続相を両側の入口に注入した。2つの流体はノズルの中で出会った。流体がノズルを通して流れるにしたがってずれが生じてきた。これは、連続相によって取り囲まれたジェットを分散相が形成することを引き起こした。流動条件に応じて、ジェットは安定しているすなわち破壊されて液滴となることはないか、または不安定であるすなわち破壊されて液滴となる。液滴形成をもたらす流動条件は、2つの無次元数で説明することができる。分散された流体のウェーバー数、Wein=ρvl/γは、その表面張力に対するジェットの慣性の大きさと関係する。ρ(ロー)およびvは内相の密度および速度であり、lはチャネルの直径であり、γ(ガンマ)はジェットの表面張力である。外相のキャピラリー数、Caout=μv/γは、その表面張力に対する、連続相に起因するジェット上のずれの大きさと関係する。μおよびvは外相の粘度および速度であり、γはジェットの表面張力である。{Wein、Caout}>1では、分散相は、単分散液滴へと破壊されないジェットを形成した。{5Caout}<1では、ドリッピング不安定性が見られ、分散相は単分散液滴へと破壊された。
【0107】
二重エマルジョンを形成させる場合、2つの流れ集束ジャンクションを連続して用いた。図6Aに示すように、第1ジャンクションの出口を次の入口に送り込んだ。通常は、ドリッピング不安定性が両方のジャンクションにおいて見られた。これは、二段階プロセスで二重エマルジョンを形成した。内部液滴が第1ジャンクションにおいて形成され、第2ジャンクションで外部液滴中に封入された。二重エマルジョンは、第1ジャンクションにおける流速を増大させて第1ドリッピング不安定性を除くことによって、一段階プロセスでも形成させることができる。これは、第2ジャンクション中に延びる安定した内相のジェットをもたらした。図6Bに示すように、そこで、これは中間相の層によって取り囲まれ、二重ジェットを生成した。第2ジャンクションにおける流速を、ドリッピング不安定性が存在するように設定した場合、図6Bに示すようにその二重ジェットは二重エマルジョン中にピンチされる。
【0108】
形成プロセスをドリッピング不安定性で制御するこの能力を実証するため、二重流れ集束マイクロ流体デバイスを構築した。デバイスを、50μmの一定チャネル高さで組み立てた。二重エマルジョン用の流体として、SDSを0.5重量%含む蒸留水およびKrytox157FSLのカルボン酸アンモニウムを1.8重量%含むHFE−7500フルオロカーボン油を使用した。O/W/O二重エマルジョンを形成させるため、第1ジャンクションが親水性となり、第2ジャンクションが疎水性となるようにデバイスの湿潤性をパターン化した。湿潤性をパターン化するため、簡単な流れ閉じ込め法(flow−confinement technique)を用いた。
【0109】
二重エマルジョンを二段階プロセスで形成させた。これは、各ジャンクションに1つずつ、2つのドリッピング不安定性を必要とした。流速を、内相で600μL/時間、中間相で1000μL/時間、連続相で2500μL/時間に設定し、両方のジャンクションにおいて確実に{Wein、Caout}<1となるようにした。図3のWein=0.2で示すように、これは、内相が第1ジャンクションでドリップし、中間相が第2ジャンクションでドリップするようにして、二段階プロセスで二重エマルジョンを形成させた。図3のWein=0.8に示すように、Weinが増大するにしたがって、第1流れ集束ジャンクションは、ジェッティングレジームに近づいてきたが、このプロセスは二段階に留まった。図3のWein=1.1に示すように、Weinが1を超えると内相は突然ジェット化する。これは第2ジャンクションで二重ジェットを生成する。図3に示すように、第2ジャンクションにおいて{Wein、Caout}<1であるため、ドリッピング不安定性はそのまま保持され、二重ジェットを二重エマルジョンへと破壊した。図3では低いWeinで、ドリッピング不安定性が両方の流れ集束ジャンクションにおいて見られ、二段階プロセスで二重エマルジョンを形成した。しかし、Weinが1を超えて増大すると、第1不安定性は除かれた。これは、内相を第2ジャンクション中へジェット化させ、一段階プロセスで二重エマルジョンへと破壊される二重ジェットを形成した。図3のスケールバーは50μmを表す。
【0110】
二段階形成プロセスと一段階形成プロセスとの間の移行を定量化するため、内部および外部液滴のピンチオフ位置を決定した。図4Aに示すように、低いWeinでは、空間的に隔てられた2つのドリッピング不安定性が存在しているので、内相と中間相は異なる位置でピンチオフされた。図4Aに示すように、Weinが増大するにしたがって、より速い流速によって発生したより大きいずれのため両方のピンチオフ位置は下流へと移動したが、そのプロセスは二段階のままであった。図4Aに示すように、Weinが1を超えて増大すると内相はジェット化し、内相と中間相はほぼ同じ所でピンチオフされた。これらのレジーム間の移行は突然であり、これは多分、ドリッピングからジェッティングへの移行の突発的な特性によるものである。図4Bに示すように、内相対中間相の割合が増加したため、このWeinの範囲にわたって、二重エマルジョンのシェル厚さは減少した。二段階形成プロセスにおいて、7μmより薄いシェルが常に形成されるわけではない。なぜなら、そうするためには通常液滴を生成しない流速を必要とするからである。しかし、一段階レジームで操作するようにデバイスを設計することによって、そのデバイスはこうした流速を利用することができる。図4Bに示すように、これは、内相対中間相の体積分率がほとんど任意に増大できるようにし、極めて薄いシェル型二重エマルジョンが生成されるようになる。
【0111】
図4Aでは、低いWeinで、両方の流れ集束ジャンクションでドリッピング不安定性が存在し、その結果内部および外部ジェットは異なる位置で破壊される。しかし、Weinが1を超えて増大すると、内相は第2ジャンクション中にジェット化し、これは、内相および外相が同じ所でピンチオフされる二重ジェットを生成する。図4Bは、二重エマルジョンシェルの厚さがこの範囲にわたって減少していることを示している。これは多分、内相対中間相の割合が増大したためである。したがって、一段階形成が、第1流れ集束ジャンクションがドリッピングレジームにある流速に限定されないので、一段階形成を使用して多段階形成よりずっと薄いシェルを有する二重エマルジョンを生成させることができる。
【0112】
二重エマルジョンの一段階形成のダイナミックスを視覚化するために、その過程を、高速度カメラを用いて映像として記録した。図5Aのt=0マイクロ秒に示すように、液滴形成サイクルの初期に、二重ジェットは、ドリッピング不安定性が見られる流れ集束ジャンクションへ延びる。サイクルが進行するにしたがって、ドリッピング不安定性は二重ジェットを狭くする。内部ジェットは外部ジェットより薄いので、より早く不安定な幅に達する。t=375マイクロ秒で示すように、これは、それを液滴中にピンチさせるが、外部ジェットは連結されたままである。サイクルが進行するにしたがって、外部ジェットは、これもやはり不安定な幅に達して破壊され、二重エマルジョンを生成するt=625マイクロ秒のポイントまで狭くなり続ける。
【0113】
より高次の多重エマルジョンを生成させるために、一段階形成も用いることができる。これを例示するため、流れ集束ジャンクションを連続して用いて、三重エマルジョンデバイスを構築した。W/O/W/O型三重エマルジョンを形成させるために第1ジャンクションが疎水性となり、第2ジャンクションが親水性となり、第3ジャンクションが疎水性となるようにデバイス湿潤性をパターン化した。すべて界面活性剤を含む、水、HFE−7500、水およびHFE−7500を、それぞれ、内相で4000μL/時間、第1中間相で3000μL/時間、第2中間相で3000μL/時間、連続相で7500μL/時間の流速で、第1、第2、第3および第4の入口からデバイスに注入した。これによって、最初の2つのジャンクションについて{Wein、Caout}>1が、第2について{Wein、Caout}<1が確実となり、その結果1つのドリッピング不安定性だけが存在した。図5Bに示すように、これは第3ジャンクションにおいて三重ジェットを生成し、その中で水ジェットは油ジェットによって取り囲まれ、その油ジェットは他の水ジェットによって取り囲まれ、その水ジェットは油連続相によって取り囲まれている。二重ジェットと同様に、ジャンクションに入ると三重ジェットは狭くなる。図5Bに示すように、これは内部ジェットを破壊し(t=250マイクロ秒)、次いで中間ジェットを破壊し(t=625マイクロ秒)、次いで外部ジェットを破壊して(t=750マイクロ秒)、三重エマルジョンを生成させる。したがって、この種の一段階形成は、それらが不安定な幅に達したときのジェットのそれぞれについての一連のピンチング事象を含む。
【0114】
(実施例3)
内部ジェットが外部ジェットより安定している場合、異なる種類の一段階形成が起こることが分かった。これは、内相が、非常に安定したジェットを形成している流体を含む場合に起こった。これは、非常に粘性であるか、粘弾性であるか、または低い表面張力を有しているためである。この種の一段階形成を例示するため、この実施例では、二重ジェットの内相をオクタノールで置き換えた。オクタノールは空気に対して、非常に低い水との表面張力を有し、それが非常に安定したジェットを形成できるようにしており、他のマイクロ流体技術で乳化させるのを非常に困難にしている。内相としてそれを二重流れ集束デバイスに注入することによって、その中で内部ジェットが外部ジェットより安定している二重ジェットが生成された(図7A)。外部ジェットが液滴中にピンチし始めると、これは内部ジェットを押しつぶし、それによって、液滴中にピンチされるようにする。図7Aに示すように、そのコアにオクタノール液滴を有する二重エマルジョンを生成する。
【0115】
二重ジェットを破壊するためにドリッピング不安定性を使用したので、そのコアでのオクタノール液滴と同様に、二重エマルジョンは単分散であった。これは基本的に、オクタノールのような「困難な」流体の制御的な乳化をより乳化させ易い流体で包むことによって可能にする。これは、粘弾性ポリマー流体などの他の困難な流体にも適用することができる。これらの流体は、マイクロ流体デバイスで形成されたエマルジョンから粒子またはカプセルをテンプレートする場合に必要である。しかし、その粘弾性特性のためこれらは制御的に乳化させるのが困難である。その理由は、粘弾性ジェットにせん断がかけられて液滴を破壊し、その粘度が増大し、液滴形成に抵抗するからである。しかし、粘弾性ジェットを水ジェットに包み込むことによって、これも制御的に乳化させることができる。
【0116】
これを、水に10重量%の濃度のポリエチレングリコール(PEG)(Mw=5000g/mol)を使用して実験的に実証した。図7Bに示すように、水ジェットが液滴中にピンチされると、粘弾性ジェットは液滴中にピンチされた。これは、そのコアで粘弾性液滴を有する二重エマルジョンを生成した。二重エマルジョンもやはり破壊されてそのコアを放出して、粘弾性液滴の単分散集団を得ることができる。
【0117】
これらの異なる一段階ピンチングプロセスのダイナミックスを定量化するため、ジェット幅を、ピンチオフの際の時間の関数として測定した。図8Aに示すように、ピンチングプロセスの初期では、内部および外部ジェットはそろって幅が狭い。内部ジェットが不安定な幅に達するとそれは破壊され、急速に狭くなり、液滴を形成する。興味深いことに、これは外部ジェットのわずかな拡大と一致しており、図8Aに示すように、追加の中間相が、内部ジェットの崩壊によって残された空隙中に急速に入りこむことを示している。
【0118】
結局、外部ジェットも崩壊し、二重エマルジョンを形成する。図8Bに示すように、三重エマルジョンの場合、これに第3ジェットのさらなる拡大が続き、次いで崩壊が続く。内部および外部ジェットについての崩壊の関数形は同じであり、1/2の指数を有するべき法則に当てはまるようである。これは、レイリープラトー(Rayleigh Plateau)の不安定性に起因する単一ジェットの破壊と一致しており、この種の多重ジェット破壊が、一連の独立したピンチオフで起こることを示唆している。
【0119】
内部ジェットが外部ジェットより安定している場合、そのピンチングダイナミックスは異なっていた。オクタノールジェットの場合、図8Cに示すように、両方のジェットの長い狭まりが存在し、それに突然の崩壊が続く。これらのジェットの崩壊の関数形はやはりべき法則に当てはまるが、その指数は2/5である。これは、ピンチングダイナミックスがより複雑であり、内部ジェットと外部ジェットの間の相互作用が関わっている可能性があることを示している。粘弾性ジェットの場合、崩壊はずっと緩慢である。やはり長い狭まりが存在するが、図8Dに示すように、今回は内部ジェットの粘弾性応答のため、非常に遅い崩壊が後続する。これらの崩壊もやはりべき法則に当てはまるが、今回はその指数は1より大であった。図8Dに示すように、他のジェットとは対照的に、これらのジェットの崩壊はピンチオフに近づくにつれて減速した。これは、一段階形成は、様々な流体で単分散の二重エマルジョンを生成することができるが、ピンチオフプロセスのダイナミックスは流体特性に依存することを示している。内相が非常に安定したジェットを形成する流体を含む場合、内部ジェットが低い表面張力を有する場合(図8C)または粘弾性である場合(図8D)にそうであるように、内相と外相は同時に破壊される。図8のすべての崩壊は、示した指数β(ベータ)でべき法則に当てはまる。
【0120】
したがって、これらの実施例は、ドリッピング不安定性を制御することによって、多重エマルジョンを、異なるプロセスでマイクロ流体デバイス中に形成できることを示している。複数の不安定性が存在する場合、エマルジョンは多段階プロセスで形成され、他方、1つの不安定性が存在する場合、それらは一段階プロセスで形成される。一段階プロセスの1つの利点は、それが、多重エマルジョンのシェル厚さを広い範囲にわたって制御できるようにすることである。これは、粒子またはカプセルの合成などの用途に有用であるはずである。一段階形成は、単分散液滴を、粘弾性流体などの通常は乳化させるのが非常に困難な流体から形成できるようにもする。これは、マイクロ流体、例えば、粘弾性であることが多い、乳化を要する長鎖ポリマー流体で新しい種類の粒子を形成させるのに有用であるはずである。
【0121】
本発明の複数の実施形態を本明細書で説明し、例示してきたが、当業者は、機能を実行する、および/または本明細書で説明する結果および/または利点の1つもしくは複数を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に想定されよう。そうした変更形態および/または改変形態のそれぞれは本発明の範囲内にあるものとする。より一般的には、当業者は、本明細書で説明するすべてのパラメーター、寸法、材料および構造は例示のためのものであり、実際のパラメーター、寸法、材料および/または構造は、そのために本発明の教示が用いられる具体的な1つまたは複数の用途に依存することになることを容易に理解されよう。当業者は、若干の慣行的な実験、本明細書で説明する本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を用いて認識する、または確認することができよう。したがって、上記実施形態は例として示したのに過ぎず、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明を具体的に説明し特許請求したのと別の様式で実施できることを理解されたい。本発明は、本明細書で説明するそれぞれの個別のフィーチャ、システム、物品、材料、キットおよび/または方法を対象とする。さらに、2つ以上のそうしたフィーチャ、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組合せは、そうしたフィーチャ、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が互いに矛盾していない場合、本発明の範囲内に包含される。
【0122】
本明細書で定義され使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により本明細書に組み込まれた文献の定義および/または定義された用語の通常の意味より優先されるものと理解すべきである。
【0123】
本明細書および特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」および「an」は、それとは反対に明確に指示されていない限り、「少なくとも1つ(at least one)」と理解されるべきである。
【0124】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「および/または(and/or)」という語句は、そのように等位結合された要素、すなわち、ある場合は接続法的に存在し、他の場合は離接的に存在する要素の「一方かまたは両方」を意味することを理解すべきである。「および/または」で挙げられた複数の要素は、同じ様式で、すなわち、そのように等位結合された要素の「1つまたは複数」と解釈されるべきである。「および/または」の節で具体的に特定された要素以外の他の要素も、具体的に特定されている要素に関係しても関係しなくても、任意選択で存在してよい。したがって、非限定的な例として、「含む(comprising)」などの非限定的(open−ended)用語と一緒に使用される場合、「Aおよび/またはB」への言及は、一実施形態ではAだけ(任意選択でB以外の要素を含む);他の実施形態ではBだけ(任意選択でA以外の要素を含む);さらに他の実施形態ではAとBの両方(任意選択で他の要素を含む)等を指すことができる。
【0125】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、「または」は、上記定義の「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リストにおいて項目を分ける場合、「または」または「および/または」は、包含的である、すなわち、少なくとも1つを含むが、また、ある数またはリストの要素および任意選択でリストに挙げられていない追加の項目の2つ以上も含むと解釈されるべきである。それとは反対に「のうちの1つだけ(only one of)」もしくは「のうちの正確に1つ(exactly one of)」などの明確に指示されている、だけ(Only)という用語、または特許請求の範囲で使用される場合の「からなる(consisting of)」は、ある数またはリストの要素のうちの正確に1つの要素を含むことを指すものとする。一般に、「のいずれか(either)」、「のうちの1つ(one of)」、「のうちの1つだけ(only one of)」または「のうちの正確に1つ(exactly one of)」などの排他性の用語によって先行されている場合、本明細書で用いる「または」という用語は、排他的代替物(exclusive alternative)(すなわち、「一方または他方であって両方ではない(one or the other but not both)」)だけを指すと解釈されるべきである。特許請求の範囲で使用される場合、「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」は、特許法の分野で用いられるその通常の意味を有するものとする。
【0126】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、1つまたは複数の要素のリストに関連した「少なくとも1つ」という語句は、要素のリストの中の要素の任意の1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリストの中に具体的に挙げられている要素の1つ1つ(each and every)の少なくとも1つを必ずしも含むものではなく、また、要素のリスト中の要素の任意の組合せを排除するものでもないことを理解すべきである。この定義はまた、語句「少なくとも1つ」が指す要素のリストの中で具体的に特定されている要素以外の要素が、具体的に特定されている要素に関係しても関係しなくても、任意選択で存在することも可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または等価的に「AまたはBの少なくとも1つ」または等価的に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在しない、任意選択で2つ以上を含む少なくとも1つのA(および任意選択でB以外の要素を含む)を指し;他の実施形態では、Aが存在しない、任意選択で2つ以上を含む少なくとも1つのB(および任意選択でA以外の要素を含む)を指し;さらに他の実施形態では、任意選択で2つ以上を含む少なくとも1つのAおよび任意選択で2つ以上を含む少なくとも1つのB(および任意選択で他の要素を含む)等を指すことができる。
【0127】
それとは反対に明確に指示されていない限り、2つ以上のステップまたは動作を含む本明細書で特許請求される任意の方法において、その方法のステップまたは動作の順序は、その方法のステップまたは動作が言及されている順序に必ずしも限定されないことも理解すべきである。
【0128】
特許請求の範囲ならびに上記明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「担持する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「含む(composed of)」などのすべての移行句は非限定的である、すなわち、それを含むがそれに限定されないものと理解すべきである。「からなる(consisting of)」および「本質的に〜からなる」という移行句だけは、米国特許局の特許審査手続便覧(United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)、セクション2111.03に示されているように、それぞれ閉鎖型(closed)または半閉鎖型移行句であるものとする。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主マイクロ流体チャネルと;
第1交差部で前記主マイクロ流体チャネルと交差する少なくとも1つの第1側部マイクロ流体チャネルと;
前記第1交差部とは別個の第2交差部で前記主マイクロ流体チャネルと交差する少なくとも1つの第2側部マイクロ流体チャネルと
を含む装置であって、
前記第2交差部が、前記主マイクロ流体チャネルを、第1側部の第1部分と前記第2交差部の反対側の第2部分とに分離しており、前記第1部分は、前記第1交差部と前記第2交差部の間の前記主マイクロ流体チャネルの側部上に画定されており、
前記主マイクロ流体チャネルの前記第2部分が、前記主マイクロ流体チャネルの前記第1部分の平均断面寸法に対して、前記主マイクロ流体チャネルの前記第1部分の平均断面寸法より約5%〜約20%大きい平均断面寸法を有しており、
前記主マイクロ流体チャネルの前記第1部分が第1親水性を有し、前記主マイクロ流体チャネルの前記第2部分が前記第1親水性と異なる第2親水性を有する装置。
【請求項2】
前記第1交差部で前記主マイクロ流体チャネルと交差する2つの第1側部マイクロ流体チャネルからなる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記2つの第1側部マイクロ流体チャネルがそれぞれ、前記主マイクロ流体チャネルとほぼ直角に前記主マイクロ流体チャネルと交差する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1交差部で前記主マイクロ流体チャネルと交差する2つの第2側部マイクロ流体チャネルからなる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記2つの第2側部マイクロ流体チャネルがそれぞれ、前記主マイクロ流体チャネルとほぼ直角に前記主マイクロ流体チャネルと交差する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記主マイクロ流体チャネルの前記第1部分が相対的に親水性であり、前記主マイクロ流体チャネルの前記第2部分が相対的に疎水性である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記主マイクロ流体チャネルの前記第1部分が相対的に親水性であり、前記主マイクロ流体チャネルの前記第2部分が相対的に疎水性である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1および第2交差部とは別個の第3交差部で前記主マイクロ流体チャネルと交差している少なくとも1つの第3側部マイクロ流体チャネルをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第3側部マイクロ流体チャネルと前記少なくとも1つの第2側部マイクロ流体チャネルが実質的に同じ親水性を有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第3側部マイクロ流体チャネルと前記少なくとも1つの第2側部マイクロ流体チャネルが実質的に同じ平均断面寸法を有する、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
主マイクロ流体チャネル中に第1流体を提供するステップと;
前記主マイクロ流体チャネルと第2流体を含む少なくとも1つの第1側部マイクロ流体チャネルとの第1交差部に前記第1流体を流して、前記第1流体に分離した液滴を形成させることなく、前記第1流体が前記第2流体によって取り囲まれるようにするステップと;
前記主マイクロ流体チャネルと第3流体を含む少なくとも1つの第2側部マイクロ流体チャネルとの第2交差部に前記第1および第2流体を流して、前記第1および第2流体に分離した液滴を形成させることなく、前記第2流体が前記第3流体によって取り囲まれるようにするステップと;
前記第1および第2流体に個別の液滴を形成させるステップと
を含む方法であって、前記第1流体が前記第2流体中に含まれ、前記第2流体が前記第3流体中に含まれる方法。
【請求項12】
前記第1および第2流体に個別の液滴を形成させる動作が、前記第1、第2および第3流体を、前記主マイクロ流体チャネルと第4流体を含む少なくとも1つの第3側部マイクロ流体チャネルとの第3交差部に流すステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第3流体と前記第4流体が実質的に同じである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1および第2流体に個別の液滴を形成させる動作が、前記第1、第2および第3流体を、ジェッティング条件下で前記第2交差部を通り過ぎるようにするステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1および第2流体に個別の液滴を形成させる動作が、前記第1、第2および第3流体を、流体のウェーバー数が1を超えるような条件下で前記第2交差部を通り過ぎるようにするステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第2交差部の下流の前記主マイクロ流体チャネルが、前記第2交差部の上流の前記主マイクロ流体チャネルの平均断面寸法より、前記第2交差部の上流の前記主マイクロ流体チャネルの平均断面寸法に対して約5%〜約20%大きい平均断面寸法を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記第2交差部の上流の前記主マイクロ流体チャネルが第1親水性を有し、そして前記第2交差部の下流の前記主マイクロ流体チャネルが前記第1親水性とは異なる第2親水性を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記第1流体が前記第3流体と接触しない、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記第2流体が、前記第3流体で取り囲まれた後、チャネル壁と接触しない、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記第1流体と前記第2流体が実質的に非混和性である、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記第2流体と前記第3流体が実質的に非混和性である、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記第1および第2流体が、前記第3流体と接触する前に、実質的に共線状に流れる、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
前記個別の液滴のほぼすべてがそれぞれ約1mm以下の平均径を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
前記第1、第2または第3の流体の少なくとも1つがその中にある種を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項25】
前記マイクロ流体チャネルが約1mm以下の平均断面寸法を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項26】
前記マイクロ流体チャネルが約300μm以下の平均断面寸法を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項27】
前記マイクロ流体チャネルが約100μm以下の平均断面寸法を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項28】
前記マイクロ流体チャネルが約30μm以下の平均断面寸法を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項29】
前記第1流体を、前記マイクロ流体チャネルを通して引き込む圧力が大気圧より低い、請求項11に記載の方法。
【請求項30】
前記個別の液滴が、液滴の約10%以下が平均寸法の約10%を超える寸法を有するような直径の分布を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項31】
第2流体液滴によって取り囲まれた第1流体液滴を含む物品であって、前記第2流体液滴が第3流体によって取り囲まれており、前記第1流体液滴が約40mN/m以下の25℃の空気中での表面張力を有する流体を含む物品。
【請求項32】
前記第2流体液滴が、直径で約1mm未満の特性寸法を有する、請求項31に記載の物品。
【請求項33】
前記第2流体液滴が、直径で約100μm未満の特性寸法を有する、請求項31に記載の物品。
【請求項34】
前記第2流体液滴が、直径で約10μm未満の特性寸法を有する、請求項31に記載の物品。
【請求項35】
前記第2流体液滴が、直径で約1μm未満の特性寸法を有する、請求項31に記載の物品。
【請求項36】
前記第2流体液滴が本質的に界面活性剤を含まない、請求項31に記載の物品。
【請求項37】
前記第1流体液滴がオクタノールを含む、請求項31に記載の物品。
【請求項38】
前記表面張力が約30mN/m以下である、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記表面張力が約25mN/m以下である、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
第2流体で取り囲まれた第1流体を含む物品であって、前記第2流体が第3流体によって取り囲まれており、前記第1流体が25℃の空気中での第1表面張力を有し、そして前記第2流体が25℃の空気中での第2表面張力を有し、前記第2表面張力が前記第1表面張力の少なくとも2倍である物品。
【請求項41】
前記第2流体液滴が、直径で約1mm未満の特性寸法を有する、請求項40に記載の物品。
【請求項42】
前記第2流体液滴が本質的に界面活性剤を含まない、請求項40に記載の物品。
【請求項43】
前記第2表面張力が、前記第1表面張力の少なくとも2.5倍である、請求項40に記載の物品。
【請求項44】
前記第2表面張力が、前記第1表面張力の少なくとも3倍である、請求項40に記載の物品。
【請求項45】
第2流体で取り囲まれた第1流体を含む物品であって、前記第2流体が第3流体によって取り囲まれており、前記第1流体が少なくとも20mPa sの25℃での粘度を有する物品。
【請求項46】
前記第2流体液滴が、直径で約1mm未満の特性寸法を有する、請求項45に記載の物品。
【請求項47】
前記第2流体液滴が本質的に界面活性剤を含まない、請求項45に記載の物品。
【請求項48】
前記第1流体が少なくとも100mPa sの25℃での粘度を有する、請求項45に記載の物品。
【請求項49】
前記第1流体が少なくとも10mPa sの25℃での粘度を有する、請求項45に記載の物品。
【請求項50】
前記第1流体が粘弾性である、請求項45に記載の物品。
【請求項51】
前記第1流体が少なくとも0.01GPaの25℃でのヤング率を有する、請求項45に記載の物品。
【請求項52】
前記第1流体が少なくとも0.1GPaのヤング率を有する、請求項45に記載の物品。
【請求項53】
前記第1流体が少なくとも1GPaのヤング率を有する、請求項45に記載の物品。
【請求項54】
前記第1流体が少なくとも10GPaのヤング率を有する、請求項45に記載の物品。
【請求項55】
第2流体で取り囲まれた第1流体から第1液滴を形成させるステップを含む多重エマルジョンを作製する方法であって、前記第2流体が第3流体によって取り囲まれており、前記第1流体が約40mN/m以下の25℃の空気中での表面張力を有する方法。
【請求項56】
第2流体で取り囲まれた第1流体から第1液滴を形成させるステップを含む多重エマルジョンを作製する方法であって、前記第2流体が第3流体によって取り囲まれており、前記第1流体が25℃の空気中での第1表面張力を有し、そして前記第2流体が25℃の空気中での第2表面張力を有し、前記第2表面張力が前記第1表面張力の少なくとも2倍である方法。
【請求項57】
第2流体で取り囲まれた第1流体から第1液滴を形成させるステップを含む多重エマルジョンを作製する方法であって、前記第2流体が第3流体によって取り囲まれており、前記第1流体が、少なくとも20mPa sの25℃での粘度および少なくとも0.01GPaの25℃でのヤング率を有する方法。
【請求項58】
第1流体の離散した液滴を含む第2流体を含む物品であって、前記第1流体の離散した液滴の少なくとも約90%が、離散した液滴の約10%以下が離散した液滴の平均寸法の約10%を超える寸法を有するような直径の分布を有し、前記第1流体が約40mN/m以下の25℃の空気中での表面張力を有する物品。
【請求項59】
第1流体の離散した液滴を含む第2流体を含む物品であって、前記第1流体の離散した液滴の少なくとも約90%が、離散した液滴の約10%以下が離散した液滴の平均寸法の約10%を超える寸法を有するような直径の分布を有し、前記第1流体が25℃の空気中での第1表面張力を有し、そして前記第2流体が25℃の空気中での第2表面張力を有し、前記第2表面張力が前記第1表面張力の少なくとも2倍である物品。
【請求項60】
第1流体の離散した液滴を含む第2流体を含む物品であって、前記第1流体の離散した液滴の少なくとも約90%が、離散した液滴の約10%以下が離散した液滴の平均寸法の約10%を超える寸法を有するような直径の分布を有し、前記第1流体が少なくとも20mPa sの25℃での粘度および少なくとも0.01GPaの25℃でのヤング率を有する物品。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−503743(P2013−503743A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527995(P2012−527995)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/047467
【国際公開番号】WO2011/028764
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】