説明

ジェットファン

【目的】 旋回成分の少ない空気流を発生させることができ、両吹き出し方向に対して同性能を有する高推力、高効率のジェットファンを提供することを目的とする。
【構成】 筒状ケーシング1に羽根車3,3’2台をブレード5(翼型断面を有する)の取付角度が180°異なるように内装し、補助羽根車3’(3)(ブレード後縁より空気が流入する羽根車)の回転方向と回転数を、各々主羽根車3(3’)(ブレード前縁より空気が流入する羽根車)の回転方向と同方向、回転数を低く設定することにより、補助羽根車3’(3)が主羽根車3(3’)に対し、見かけ上静翼として働く機能をもたせた両吹き出し方向に同性能を有する高推力、高効率なジェットファンとする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、道路トンネル等の天井部に設置され、その吹き出し噴流によって、トンネル換気を行い、両吹き出し方向に同性能を有する軸流送風機(通称ジェットファン、以下ジェットファンと呼ぶ)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、道路トンネル等に設置されるジェットファンは、トンネル内の交通量の増加、電気使用料の増加等に伴い、高推力化、高効率化が求められている。
【0003】従来、この種のジェットファンは、図4に示すような構成が一般的であった。以下、その構成について図4を参照しながら説明する。
【0004】図に示すように、筒状ケーシング101は電動機102を内装し、電動機102の両軸に羽根車103,103’を直結し、羽根車103,103’により発生する騒音を吸音するために両側に消音筒104を備えていた。羽根車103,103’は同一形状のブレード105およびハブ106より構成されており、ブレード105が適当な取付角度αにセットされていた。そして、羽根車103,103’は各々取付角度が180°異なるように取り付けられていた。
【0005】上記構成において、電動機102がA方向より見て反時計方向に回転すると、主羽根車103により昇圧され、さらに補助羽根車103’により若干昇圧されB方向に空気流を発生させることとなる。このときの空気の流れを速度三角形で示すと図5のようになる。図中、Cは絶対速度、Wは羽根車103,103’から見た相対速度、Uは羽根車103,103’の周速度、ΔCuは絶対速度の旋回成分の増加量を示し、添字1は羽根車103の入口の状態、添字2は羽根車103の出口および羽根車103’の入口の状態、添字3は羽根車103’の出口の状態を示す。また、逆に電動機102が時計方向に回転すると主羽根車が103’、補助羽根車が103となり、反時計方向回転時と同様にC方向に空気流を発生させることとなる。すなわち、電動機102の回転方向を変えることにより両方向に同性能を有することとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このような従来のジェットファンでは、たとえば、電動機102が反時計方向に回転すると、空気は主羽根車103により昇圧され、ΔCu2なる旋回成分が発生し、補助羽根車103’によりさらに昇圧され、ΔCu3なる旋回成分が発生することとなる。ここで、ジェットファン入口直後の静圧をPs1、出口直前の静圧をPs2とすると、Ps1=−γC12/(2g)となり、ジェットファンは無静圧ファンであるため、吐出空気流が旋回成分を持たなければPs2は大気圧となる(摩擦損失、消音筒の内筒は無視する)。しかし、従来のジェットファンは旋回成分を持つため、C22=C12+(ΔCu2+ΔCu32なる関係があり、Ps2はPs2=−γ(ΔCu2+ΔCu32/(2g)となり、大気圧に対して負圧となる。従って、ジェットファン内の負圧領域から大気圧に向かって空気を吹き出すこととなるため推力が低く、送風機効率が低いという問題があった。
【0007】本発明は上記課題を解決するもので、2台の羽根車の回転数を機械的に制御することにより、旋回成分の少ない空気流を発生させ、かつ両吹き出し方向に対して同性能を有する高推力、高効率のジェットファンを提供することを第1の目的とする。
【0008】第2の目的は、2台の羽根車の回転数を電気的に制御することにより、旋回成分の少ない空気流を発生させ、かつ両吹き出し方向に対して同性能を有する高推力、高効率のジェットファンを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の目的を達成するための第1の手段は、筒状ケーシングに両軸電動機を内装し、羽根車2台をブレード(翼型断面を有する)の取付角度が180°異なるように前記両軸電動機の両軸端に各々変速機を介して取り付け、補助羽根車(ブレード後縁より空気が流入する羽根車)の回転方向を主羽根車(ブレード前縁より空気が流入する羽根車)の回転方向と同一とし、補助羽根車の回転数を主羽根車の回転数より低く設定することにより、補助羽根車が主羽根車に対し、見かけ上静翼として働く機能をもたせた両吹き出し方向に同性能を有するジェットファンの構成としたものである。
【0010】また、第2の目的を達成するための第2の手段は、前記ジェットファンの羽根車2台を各々電動機2台に直結し、インバータ等により各々の電動機の回転数を設定可能にしたジェットファンの構成としたものである。
【0011】
【作用】本発明は上記した第1の手段の構成により、2台の羽根車の回転数を機械的に制御することにより、補助羽根車が主羽根車に対し、見かけ上静翼として働き、旋回成分の少ない空気流を発生させることができるものである。
【0012】また、第2の手段の構成により、2台の羽根車の回転数を電気的に制御することにより、補助羽根車が主羽根車に対し、見かけ上静翼として働き、旋回成分の少ない空気流を発生させることができるものである。
【0013】
【実施例】以下、本発明の第1実施例について、図1を参照しながら説明する。
【0014】図に示すように、筒状ケーシング1は両軸電動機2を内装し、羽根車3,3’を両軸電動機2の両軸端に各々変速機7,7’を介して取り付けたものである。そして、羽根車3,3’により発生する騒音を吸音するために両側に消音筒4を備えている。羽根車3,3’は同一形状のブレード5およびハブ6より構成されており、ブレード5が適当な取付角度αにセットされ、羽根車3,3’は各々取付角度が180°異なるように取りつけられている。
【0015】上記構成において、両軸電動機2がA方向より見て反時計方向に回転すると、羽根車3,3’が回転しB方向に空気流を発生させる。この時、補助羽根車3’の回転数を、主羽根車3より低い値(翼形状、ブレード取り付け角度、ブレード取り付け間隔、羽根車3の回転数等により定まる値)となるように変速機7’を設定することにより、補助羽根車3’が主羽根車3に対し、見かけ上静翼として働くこととなる。つまり、空気流の旋回成分をより少なくすることができる。このときの空気の流れを速度三角形で示すと図2のようになる。図中、Cは絶対速度、Wは羽根車3から見た相対速度、W’は羽根車3’から見た相対速度、Uは羽根車3の周速度、U’は羽根車3’の周速度、ΔCuは絶対速度の旋回成分の増加量を示し、添字1は羽根車3の入口の状態、添字2は羽根車3の出口および羽根車3’の入口の状態、添字3は羽根車3’の出口の状態を示す。このとき、空気は主羽根車3により昇圧され、ΔCu2なる旋回成分が発生し、次に補助羽根車3’が静翼として働きΔCu3なる旋回成分が静圧に変換され、ジェットファン出口直前の静圧Ps2(負圧)は大気圧に近くなる。従ってジェットファン内の大気圧にほぼ近い領域から大気圧に向かって空気を吹き出すこととなるため、従来のジェットファンより推力が高くなる。逆に両軸電動機2が時計方向に回転すると主羽根車が3’、補助羽根車が3となり、反時計方向回転時と同様にC方向に空気流を発生させ、補助羽根車3が主羽根車3’に対し、見かけ上静翼として働くこととなる。
【0016】このように本発明の第1実施例のジェットファンによれば、2台の羽根車の回転数を機械的に制御することにより、旋回成分の少ない空気流を発生させ、かつ両吹き出し方向に対して同性能を有する高推力、高効率のジェットファンを提供することができる。
【0017】次に、本発明の第2実施例について、図3を参照しながら説明する。図に示すように、前記ジェットファンの両軸電動機2を2台の電動機(片軸)8,8’とし、羽根車3を電動機8に直結し、羽根車3’を電動機8’に直結したものであり、電動機8はインバータ9を介して、電動機8’はインバータ9’を介して電源(図示せず)に接続される。
【0018】上記構成において、電動機8,8’をA方向より見て反時計方向に回転させると、羽根車3,3’が回転しB方向に空気流を発生させる。このとき、主羽根車3の回転数をインバータ9により任意の値に設定し、補助羽根車3’の回転数を、羽根車3より低い値(翼形状、ブレード取り付け角度、ブレード取り付け間隔、羽根車3の回転数等により定まる値)となるようにインバータ9’を設定することにより、羽根車3’が羽根車3に対し、見かけ上静翼として働くこととなる。つまり、任意の設定風速に対して空気流の旋回成分をより少なくすることができる。このときの速度三角形は、図2R>2と同様である。逆に電動機8,8’が時計方向に回転すると主羽根車が3’、補助羽根車が3となり、C方向に空気流を発生させ、同様に、補助羽根車3が主羽根車3’に対し、見かけ上静翼として働くこととなる。
【0019】このように本発明の第2実施例のジェットファンによれば、2台の羽根車の回転数を電気的に制御することにより、旋回成分の少ない空気流を発生させ、かつ両吹き出し方向に対して同性能を有する高推力、高効率のジェットファンを提供することができる。
【0020】
【発明の効果】以上の実施例から明らかなように、本発明によれば2台の羽根車の回転数を機械的あるいは電気的に制御することにより、旋回成分の少ない空気流を発生させ、かつ両吹き出し方向に対して同性能を有する高推力、高効率のジェットファンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例のジェットファンの断面図
【図2】同第1実施例のジェットファンの速度三角形
【図3】同第2実施例のジェットファンの断面図
【図4】従来のジェットファンの断面図
【図5】同速度三角形
【符号の説明】
1 筒状ケーシング
2 両軸電動機
3 羽根車
3’ 羽根車
5 ブレード
7 変速機
7’ 変速機
8 電動機
8’ 電動機
9 インバータ
9’ インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 筒状ケーシングに両軸電動機を内装し、羽根車2台をブレード(翼型断面を有する)の取付角度が180°異なるように前記両軸電動機の両軸端に各々変速機を介して取り付け、補助羽根車(ブレード後縁より空気が流入する羽根車)の回転方向を主羽根車(ブレード前縁より空気が流入する羽根車)の回転方向と同一とし、補助羽根車の回転数を主羽根車の回転数より低く設定することにより、補助羽根車が主羽根車に対し、見かけ上静翼として働く機能をもたせた両吹き出し方向に同性能を有するジェットファン。
【請求項2】 羽根車2台を各々電動機2台に直結し、インバータ等により電気的に各々の電動機の回転数を設定可能にした請求項1記載のジェットファン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平6−336993
【公開日】平成6年(1994)12月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−126934
【出願日】平成5年(1993)5月28日
【出願人】(000006242)松下精工株式会社 (36)