説明

ジェミニ型界面活性剤

【課題】生物由来の特定有機酸であるスピクリスポール酸およびその中和塩の物性を改良し、環境負荷が少なく安全性の高い特性を保ちながら、その界面活性を改善することである。
【解決手段】下記の化7の式で示されるスピクリスポール酸誘導体またはその中和塩からなるジェミニ型界面活性剤とする。
【化7】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スピクリスポール酸をグリセリンまたはグリセリン脂肪酸エステル誘導体に取り入れた新規なジェミニ型界面活性剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ジェミニ型界面活性剤は、双子型界面活性剤または二量体界面活性剤とも呼ばれる周知な界面活性剤であり、その基本構造は、親水性頭部基と疎水性基とからなる少なくとも2個の界面活性剤単位がスペーサと呼ばれる間隔保持部により親水性基付近で相互に結合されている界面活性化合物である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなジェミニ型界面活性剤は、親水性基の性質によってアニオン性、非イオン性、カチオン性及び両性のものが存在する。
【0004】
一方、スピクリスポール酸[4、5-ジカルボキシ4-ペンタデカノリド、C17286]は、糸状菌のペニシリウム・スピキュリスポリウム(Penicilium spiculisporium,ATCC 16071)が分泌する有機酸の一種として周知であり、その分子構造は極性基として二つのカルボキシル基と分子内エステル結合のラクトン環を有し、親油基としてアルキル基を持ち、乳化剤に適当な界面活性を示すものである。また、このものは前記したラクトン環が開環すれば、3塩基酸型の界面活性剤になる。
【0005】
また、スピクリスポール酸は、アルカリ無機塩類、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムと反応して、1Na塩、2Na塩等の中和塩を形成し、安定剤、分散剤、化粧品添加剤などに使われている(特許文献2)。
【0006】
このようなスピクリスポール酸は、通常、有機合成によって得ることはできないが、Penicilium spiculisporumがTCAサイクルの2−keto glutaric acidとラウリン酸で酵素合成することで得られるものであり、安全かつ無害であることが明らかにされている。
【0007】
すなわち、スピクリスポール酸の2価ナトリウム塩の物性は、臨界micelle濃度(cmc):6.1×10-2mol/l、 cmcでの表面張力(γcmc):40.0mN/m、マウスに対するLD50:2168mg/kg、メダカに対する急性毒性LC50:8400ppm、変異原性:なし、生分解度:95%(活性泥で8日間培養)(非特許文献1)などである。
【0008】
【特許文献1】特表2003−509571号公報
【特許文献2】特公平5−10969号公報
【非特許文献1】磐田化学工業、工業技術院、ファインケミカル、 1987.8.1号、p.33
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、一般に種々の界面活性剤をジェミニ型界面活性剤に変更しても本来の界面活性を必ず改善するとはかぎらず、期待される有効性の向上がみられない場合も多く、特にこれを配合した調製品の改善に充分な効果がみられない場合も多い。
【0010】
特に、界面活性剤の基本構造内に他の構造要素を組み込むジェミニ型界面活性剤の製造コストに比べて、ジェミニ型界面活性剤の効果は常に期待されるものとはいえなかった。
【0011】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、生物由来の特定有機酸であるスピクリスポール酸およびその中和塩の物性を改良し、環境負荷が少なく安全性の高い特性を保ちながら、その界面活性を改善することである。すなわち、皮膚に対する刺激が少なく、生分解性が良好で環境負荷が少なく安全性の高い界面活性を活かしながら、乳化安定性、他の界面活性剤との相溶性を高めることである。
【0012】
具体的には、精密工業用、食器用、身体用、洗濯用などの生活用洗剤または化粧品用乳化剤、皮膚外用剤などに広く用いることができるスピクリスポール酸誘導体からなる優れた界面活性剤を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の発明者らは、スピクリスポール酸が多官能性であることに注目し、合成中間体として利用して、グリセリンエステル誘導体の化学構造を持たせるように改良してジェミニ型界面活性剤を作製したところ、界面活性が優れ、肌に対する保湿力や洗浄力、精密工業機械部品(ディスプレー用パネル)の洗浄性に優れたのもが得られることを発見し、この発明を完成させたのである。
【0014】
すなわち、前記した課題を解決するために本願の発明では、下記の化3の式で示されるスピクリスポール酸誘導体またはその中和塩からなるジェミニ型界面活性剤を採用したのである。
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、nは1〜10の整数である。)
【0017】
上記したように構成されるこの発明のジェミニ型界面活性剤は、スピクリスポール酸のように人体に対する刺激が少なく、生分解性が良好で環境負荷が少なく安全性の高い界面活性があり、しかも乳化安定性が優秀で保湿性および肌洗浄性がよく、他の界面活性剤との相溶性もよいことが、後述の試験結果からも明らかである。
【0018】
上記のジェミニ型界面活性剤は、中和塩として、スピクリスポール酸誘導体のカルボキシル基に、ナトリウム、アンモニウムまたはカリウムが化合した中和塩とすることにより、より界面活性に優れたものになる。
【0019】
また、このようなジェミニ型界面活性剤は、分子内に1以上のグリセリン単位を有するヒドロキシ化合物1当量に対して、0.5〜2当量のスピクリスポール酸を配合し、アルカリ条件下でのエステル化反応によりスピクリスポール酸誘導体を生成させることにより効率よく製造することができる。
【0020】
また、本願の前記同様の課題を解決するために、下記の化4の式で示されるスピクリスポール酸誘導体またはその中和塩からなるジェミニ型界面活性剤としたのである。
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、Rは炭素数12〜20の直鎖状または分枝状のアルキル基またはアルケニル基であり、nは1〜10の整数である。)
【0023】
上記したように構成されるこの発明のジェミニ型界面活性剤は、前記同様にスピクリスポール酸の人体に対する刺激が少なく、生分解性があって環境負荷が少なく安全性の高い界面活性があり、乳化安定性が優秀で保湿性および肌洗浄性がよく、他の界面活性剤との相溶性もよいことが、後述の試験結果からも明らかとなった。
【0024】
上記のジェミニ型界面活性剤は、中和塩として、スピクリスポール酸誘導体のカルボキシル基に、ナトリウム、アンモニウムまたはカリウムが化合した中和塩とすることにより、より界面活性に優れたものになる。
【0025】
また、このようなジェミニ型界面活性剤は、分子内に1以上のグリセリン単位を有するグリセリン脂肪酸エステルの1当量に対して、0.5〜2当量のスピクリスポール酸を配合し、アルカリ条件下でのエステル化反応によりスピクリスポール酸誘導体を生成させることにより、効率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明は、特定構造のスピクリスポール酸誘導体またはその中和塩からなるジェミニ型界面活性剤としたので、皮膚に対する刺激が少なく、生分解性が良好で環境負荷が少なく安全性の高い界面活性を活かしながら、乳化安定性が優秀であって化粧料に用いると保湿性および肌洗浄性がよく、他の界面活性剤との相溶性もよく界面活性組成物の調製時の利便性に優れているという利点がある。また、このものは、食器用、身体用、洗濯用などの生活用洗剤または化粧品用乳化剤、皮膚外用剤などに広く用いることができるジェミニ型界面活性剤であるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
この発明のジェミニ型界面活性剤の原材料に用いるスピクリスポール酸は、醗酵菌の中で110g/lの回収率で生産されて極めて安全性が高くて生分解度も大きいことが知られているものである。また液晶形成に伴ったゲル形成作用があり、そのために乳化分散系に対して安定化作用を示す。スピクリスポール酸は、この発明の主要物質として乳化剤で使用される時、乳化安定性を増加させて肌刺激を緩和する。
【0028】
この発明のスピクリスポール酸誘導体は、分子内に多数のヒドロキシ基を有するグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、または高級脂肪酸であるラウリン酸、ミリスティン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などを含む。
【0029】
ポリグリセリンとしては、グリセリンの重合度が4〜10のものが好ましく、市販品のポリグリセリンの例としては、ポリグリセリン#310(テトラグリセリン)、ポリグリセリン #500(ヘキサグリセリン)、ポリグリセリン#750(デカグリセリン)(以上は 坂本薬品工業社製) などを挙げることができる。なお、ポリグリセリンは、 通常単一物が得られないので、例えばテトラグリセリンの場合は、トリグリセリン、ペンタグリセリン及びその他のポリグリセリンを含んでいてもよい。
【0030】
この発明に用いるグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、非イオン性物質で界面活性作用(乳化作用)を持つことから、非イオン性界面活性剤の1種である。また低刺激性など安全性が高い優れた非イオン性界面活性剤として周知である。
【0031】
具体的例では、グリセリン脂肪酸エステルの場合、グリセリンモノ−ラウレイト、グリセリンモノ−ミリステイト、グリセリンモノ−パルミテイト、グリセリンモノ−オルレイト、グリセリンモノ−ステアレイト、グリセリンモノ−イソステアレイト等であり、ジグリセリン脂肪酸エステルの場合ジグリセリンモノ−ラウレイト、ジグリセリンモノ−ミリステイト、ジグリセリンモノ−オルレイト、ジグリセリンモノ−ステアレイト、ジグリセリンモノ−イソステアレイト、ジグリセリンモノ−ポルリリシンオルレイト等であり、ポリグリセリンの場合テトラグリセリンモノ−ラウレイト、テトラグリセリンモノ−パルミテイト、テトラグリセリンモノ−オルレイト、テトラグリセリンモノ−ステアレイト、テトラグリセリンポリリシンオルレイト、ヘキサグリセリンモノ−ラウレイト、ヘキサグリセリンモノ−ミリステイト、ヘキサグリセリンモノ−パルミテイト、ヘキサグリセリンモノ−オルレイト、ヘキサグリセリンモノ−ステアレイト、デカグリセリンモノ−ラウレイト、デカグリセリンモノ−ミリステイト、デカグリセリンモノ−オルレイト、デカグリセリンモノ−ステアレイト、デカグリセリンモノ−イソステアレイト、デカグリセリンモノ−リノルレイト、デカグリセリンポリリシンオルレイトなどである。
【0032】
上記エステル化反応での反応温度は、80〜160℃であり、反応時間は4〜12時間、反応圧力は、常圧または100mmHg以下、窒素雰囲気下で実施する。
【0033】
グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンにエステル化反応を通じて導入するスピクリスポール酸の結合数は、ヒドロキシ化合物1当量に対して0.5〜2当量である。
【0034】
例えば、その使用目的によってグリセリン、ジグリセリンまたはポリグリセリンの重合度やこれに対するスピクリスポール酸の結合数を適切に変化させることでHLB値が異なる非イオン界面活性剤を製造することができる.
【0035】
触媒はアルカリ触媒である金属水酸化物を使用し、反応物総量の0.05〜0.5重量%を用いる。
【0036】
この発明では必要に応じて溶媒を使うこともできるが、または溶媒を使わないこともある。もし溶媒を使う場合は、反応溶媒ではメタノール、エチルアルコール、イソプロパノールなどの沸騰点が低くて分離除去の容易なアルコール類を使うことが好ましい。特に、望ましくは人体に比較的安全なエチルアルコールを用いる。反応溶媒使用量は、反応物総量の5〜100重量%が好ましい。
【0037】
この発明は、より広いHLBの適用範囲を付与するために、アルカリ化合物で中和させることでHLBを調節することができる。
【0038】
この発明は以上の方法によって1分子内にそれぞれ少なくとも二つ以上の親水性基と疎水性基を併有するジェミニ型界面活性剤を得ることができる。
【0039】
上記方法にて製造されるジェミニ型界面活性剤は、人体に刺激が少なく生分解性が優れ乳化安定性と保湿力が優秀な化粧品用組成物、キッチン用、身体用、洗濯用、毛髪洗浄用などの洗剤組成物、またはディスプレーパネル用水系洗浄剤組成物などで広く使われることができる。
【0040】
[比較例1]:スピクリスポール酸の1価塩(S-Na)
スピクリスポール酸32.8gとNaOH4g、エチルアルコール500gを1Lフラスコに加えて溶解した後、50℃から2時間中和反応させた。反応後、減圧蒸溜方法でエチルアルコールをとり除いて生成物を得た。
【0041】
[比較例2]:スピクリスポール酸の2価塩(S-2Na)
スピクリスポール酸32.8gと NaOH8g、エチルアルコール500gを1Lフラスコに加えて溶解した後、50℃から2時間中和反応させた。反応後、減圧蒸溜方法でエチルアルコールをとり除いて生成物を得た。
【実施例1】
【0042】
[モノグリセリンジスピクリスポール酸(MGDS)]
グリセリン46g(坂本薬品工業社製)とスピクリスポール酸328g (以下、 磐田化学社製)、NaOH0.19g、エチルアルコール140gをlLフラスコに加えて、窒素雰囲気下から115℃まで加熱しながらエチルアルコールを蒸溜とり除いた。115℃、50mmHg以下の条件で6時間エステル交換反応を遂行してペースト状オイルの生成物を得た(収率75%)。得られた生成物の化学構造[化5]を推定すると共に、
その構造をIR、1HNMR、13C NMRおよびFAB/MSを調べ、その結果を以下に示した。
【0043】
【化5】

【0044】
[FAB-MS (3-NBA)]
866([M+]+3-NBA)、 713([M+])、 695([M+]-H2O)、 677([M+]-2H2O)、 650([M+]-2H2O-CH2-CH)、 632([M+]-2H2O-CH2-CH- H2O)、 385
【0045】
[IR KBr (cm-1)]
3410(OH)、 2926(CH2)、 2855(CH)、 1794(C=O)、 1767(C=O)、 1736(C=O)、 1271(OH)、
1179(C-O-C)、 1054(CH)、 912(CH2)
【0046】
[1H NMR (δppm、 TMS-CDCl3)]
0.88ppm(CH3-17、 17’、 t、 J=6.5、 6H)、 1.26ppm(CH2-9〜16、 9’〜16’、 bs、 32H)、
1.57ppm(CH2-8a、 8’、 m、 3H)、 1.81ppm(CH2-8b、 1H)、 2.50ppm(CH2-2、 2’、 m、 4H)、2.77ppm(CH2-3、 3’、 m、 4H)、 3.60ppm(CH-6、 m、 1H)、 3.70ppm(CH2-6’、 m、 1H)、4.15ppm(CH-18、 dd、 J=7.5、 11.6、 2H)、 4.20ppm(CH2-20、 dd、 J=7.5、 11.6、 2H)、4.27ppm(CH-19、 dd、 J=7.5、 13.9、 1H)
【実施例2】
【0047】
[ジグリセリンジスピクリスポール酸(DGDS)]
ジグリセリン80g(坂本薬品工業社製)とスピクリスポール酸316g、NaOH0.2g、エチルアルコール150gを1Lフラスコに加えて、実施例1と全く同様な方法でエステル交換反応を行ないペースト状オイルの生成物を得た(収率79%)。得られた生成物の化学構造[化6]を推定すると共に、IR、1HNMR、13C NMRおよびFAB/MSを調べ、その結果を以下に示した。
【0048】
【化6】

【0049】
[FAB-MS (3-NBA)]
787([M+])、 769([M+]-H2O)、 751([M+]-2H2O)、 733([M+]-3H2O)、 515、 497、 441、 385、 367、 339、 293、 265、 237、 205
【0050】
[IR KBr (cm-1)]
3442(OH)、 2926(CH2)、 2855(CH)、 1794(C=O)、 1768(C=O)、 1737(C=O)、 1179(C-O-C)、
912(CH2)
【0051】
[1H NMR (δppm、 TMS-CDCl3)]
0.88ppm(CH3-17、 17’、 t、 J=6.8、 6H)、 1.26ppm(CH2-9〜16、 9’〜16’、 bs、 32H)、
1.44ppm(CH2-8a、 m、 1H)、 1.57ppm(CH2-8’、 m、 2H)、 1.79ppm(CH2-8b、 1H)、
2.50ppm(CH2-2、 2’、 m、 4H)、 2.75ppm(CH2-3、 3’、 m、 4H)、 3.52ppm(CH2-20、 21、 m、 4H)、3.64ppm(CH-6、 m、 1H)、 3.74ppm(CH2-6’、 m、 1H)、 4.14ppm(CH-19、 22、 m、 2H)、4.23ppm(CH2-18、 23、 m、 4H)
【実施例3】
【0052】
[モノグリセリンジスピクリスポール酸の1価塩(MGDS-Na)]
実施例1で得たMGDS71.2gとNaOH4g、エチルアルコール500gを1Lフラスコに加えて溶解した後、50℃から2時間中和反応させた。反応後、減圧蒸溜方法でエチルアルコールをとり除いて生成物を得た(収率85%)。
【実施例4】
【0053】
[モノグリセリンジスピクリスポール酸の2価塩(MGDS-2Na)]
実施例3と同様な方法でMGDS71.2gとNaOH8g、エチルアルコール500gを1Lフラスコに加えて溶解した後、50℃から2時間反応させて生成物を得た(収率89%)。
【実施例5】
【0054】
[ジグリセリンジスピクリスポール酸の1価塩(DGDS-Na)]
実施例3と等しい方法でDGDS78.6gとNaOH4g、エチルアルコール500gを1Lフラスコに加えて溶解した後、50℃から2時間反応させて生成物を得た(収率92%)。
【実施例6】
【0055】
[ジグリセリンジスピクリスポール酸の2価塩(DGDS-2Na)]
実施例3と同様な方法でDGDS78.6gとNaOH8g、エチルアルコール500gを1Lフラスコに加えて溶解した後、50℃から2時間反応させて生成物を得た(収率94%)。
【実施例7】
【0056】
[モノグリセリンモノオレートであるジスピクリスポール酸(MGMODS)]
グリセリンモノオレート140g(一身油絵社製)とスピクリスポール酸262.42g、水酸化ナトリウム1.54gを500mLフラスコに加えて、窒素雰囲気下で140℃、常圧の条件で8時間エステル交換反応を行なってペースト状のオイル生成物を得た(収率78%)。
【実施例8】
【0057】
[ジグリセリンモノオレートであるジスピクリスポール酸(DGMODS)]
ジグリセリンモノオレート140g(一身油絵社製)とスピクリスポール酸214g、水酸化ナトリウム0.49gを500mLフラスコに加えて、窒素雰囲気下で140℃、常圧の条件で4時間エステル交換反応を行なってペースト状のオイル生成物を得た(収率80%)。
【実施例9】
【0058】
[モノグリセリンモノミリスチルジスピクリスポール酸(MGMMDS)]
グリセリンモノミリステート120g(日光化学社製)とスピクリスポール酸260g、水酸化ナトリウム0.5gを500mLフラスコに加えて、窒素雰囲気下で140℃、常圧の条件で6時間エステル交換反応を行なってペースト状のオイル生成物を得た(収率 67%)。
【実施例10】
【0059】
[ジグリセリンモノミリスチルジスピクリスポール酸(DGMMDS)]
ジグリセリンモノミリステート125g(ダニス社製)とスピクリスポール酸218g、水酸化ナトリウム0.47gを500mLフラスコに加えて、窒素雰囲気下で1400℃、常圧の条件で6時間エステル交換反応を遂行してペースト状のオイル生成物を得た(収率72%)。
【実施例11】
【0060】
[モノグリセリンモノイソステアリルジスピクリスポール酸(MGMIDS)]
グリセリンモノイソステアレート140g(日光化学社製)とスピクリスポール酸256g、水酸化ナトリウム00.54gを500mLフラスコに加えて、窒素雰囲気下で140℃、常圧の条件で6時間エステル交換反応を行なってペースト状のオイル生成物を得た(収率69%)。
【実施例12】
【0061】
[ジグリセリンモノイソステアリルジスピクリスポール酸(DGMIDS)]
ジグリセリンモノイソステアレート145g(日光化学社製)とスピクリスポール酸220g、水酸化ナトリウム0.51gを500mLフラスコに加えて、窒素雰囲気下で140℃、常圧の条件で 6時間エステル交換反応を行なってペースト状のオイル生成物を得た(収率72%)。
【実施例13】
【0062】
[テトラグリセリンモノオレートであるジスピクリスポール酸(TGMODS)]
テトラグリセリンモノオレート165g(坂本薬品工業社製)とスピクリスポール酸187g、水酸化ナトリウム0.52gを500mLフラスコに加えて、窒素雰囲気下で140℃、常圧の条件で6時間のエステル交換反応を行なってペースト状のオイル生成物を得た(収率78%)。
【実施例14】
【0063】
[ヘキサグリセリンモノオレートであるジスピクリスポール酸(HGMODS)]
ヘキサグリセリンモノオレート185g(坂本薬品工業製)とスピクリスポール酸187g、水酸化ナトリウム0.54gを500mLフラスコに加えて、窒素雰囲気下で140℃、常圧の条件で6時間のエステル交換反応を行なってペースト状のオイル生成物を得た(収率71%)。
【実施例15】
【0064】
[デカグリセリンモノオレートであるジスピクリスポール酸(DeGMODS)]
デカグリセリンモノオレート200g(坂本薬品工業社製)とスピクリスポール酸128.4g、水酸化ナトリウム0.53gを500mLフラスコに加えて、窒素雰囲気下で140℃、常圧の条件で6時間のエステル交換反応を行なってペースト状のオイル生成物を得た(収率76%)。
【0065】
以上のようして得られた比較例と実施例のジェミニ型界面活性剤による表面張力、気泡安定性、肌に対する保湿力、肌に対する洗浄力、ディスプレーパネル用ガラス基板に対する洗浄力などを下記基準によって評価し、その結果を表1〜4に示した。
【0066】
1.乳化剤としての肌保湿力評価
【表1】

【0067】
上記製造したエマルジョンを下腕内側部の肌に塗布した。Corneometer CM 825 (Courage+Khazaka electric GmbH、 germany)を利用して肌の水気含量の変化を6時間の一定時間間隔で測定して保湿位を次の評価基準により5段階で表記した。
5:20(以上)
4:15(以上)〜20(未満)
3:10(以上)〜15(未満)
2: 5(以上)〜10(未満)
1: 5(未満)
【0068】
2.洗浄剤としての肌洗浄力評価
【表2】

【0069】
上記製造した洗浄剤を下腕内側部の肌を 10分の間洗浄してCorneometer CM 825 (Courage+Khazaka electric GmbH、 germany)を利用して肌の水気含量の変化を6時間の一定時間間隔で測定して保湿位を次の評価基準で5段階で表記した。
【0070】
5:20(以上)
4:15(以上)〜20(未満)
3:10(以上)〜15(未満)
2: 5(以上)〜10(未満)
1: 5(未満)
【0071】
3.ディスプレーパネル用 Glass 基板の洗浄力評価
【表3】

【0072】
上記製造した洗浄剤を5倍希薄してディスプレーパネル用ガラス基板の異物に対する洗浄力を評価した。容量250mlのビーカーに100mlの洗浄剤を入れてディスプレーパネル用ガラス基板(5×5×0.7cm)をダムジシキン直後から1分間超音波(40kHz、20℃)洗浄をした。所定時間洗浄後、上記基板を取り出して水勢してリンスを実施した。窒素ガスで基板表面の液体をとり除いた後引き継いでオーブンで5分間乾燥を実施した。上記の基板を注射電子燎微鏡(SEM:日立社製モデルS-4700)で検査して基板の表面に残っている異物の粒子数を測定して次のように5段階で表記した。
【0073】
5: 10(未満)
4: 10(以上)〜 50(未満)
3: 50(以上)〜100(未満)
2:100(以上)〜150(未満)
1:150(以上)
【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

【0077】
【表7】

【0078】
このように実施例のジェミニ型界面活性剤は、スピクリスポール酸のように人体に対する刺激が少なく、安全性の高い界面活性があり、しかも乳化安定性が優秀であり、保湿性も肌洗浄性もよく、他の界面活性剤との相溶性もよいことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化1の式で示されるスピクリスポール酸誘導体またはその中和塩からなるジェミニ型界面活性剤。
【化1】

(式中、nは1〜10の整数である。)
【請求項2】
中和塩が、スピクリスポール酸誘導体のカルボキシル基に、ナトリウム、アンモニウムまたはカリウムが化合した中和塩である請求項1に記載のジェミニ型界面活性剤。
【請求項3】
分子内に1以上のグリセリン単位を有するヒドロキシ化合物1当量に対して、0.5〜2当量のスピクリスポール酸を配合し、アルカリ条件下でのエステル化反応によりスピクリスポール酸誘導体を生成させる請求項1に記載のジェミニ型界面活性剤の製造方法。
【請求項4】
下記の化2の式で示されるスピクリスポール酸誘導体またはその中和塩からなるジェミニ型界面活性剤。
【化2】

(式中、Rは炭素数12〜20の直鎖状または分枝状のアルキル基またはアルケニル基であり、nは1〜10の整数である。)
【請求項5】
中和塩が、スピクリスポール酸誘導体のカルボキシル基に、ナトリウム、アンモニウムまたはカリウムが化合した中和塩である請求項4に記載のジェミニ型界面活性剤。
【請求項6】
分子内に1以上のグリセリン単位を有するグリセリン脂肪酸エステルの1当量に対して、0.5〜2当量のスピクリスポール酸を配合し、アルカリ条件下でのエステル化反応によりスピクリスポール酸誘導体を生成させる請求項4に記載のジェミニ型界面活性剤の製造方法。

【公開番号】特開2006−298864(P2006−298864A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125485(P2005−125485)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 第43回日本油化学会年会 主催者名 社団法人日本油化学会 開催日 平成16年11月1日(月)〜2日(火)
【出願人】(592215011)東洋ビューティ株式会社 (13)
【出願人】(501341451)東友ファインケム株式会社 (17)
【氏名又は名称原語表記】Dongwoo Fine−Chem Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】740−30 Sinheung−dong,Iksan−si,Jeollabuk−do,Korea
【Fターム(参考)】