説明

ジェランガム含有食品用組成物の製造方法

【課題】0.002〜0.4重量%ジェランガム含有食品用組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】(1) (a)ジェランガム水溶液と(b)カチオン類含有水溶液とを、有効な温度にて、有効回転数の攪拌下、混合する工程;及び、(2) ゲル形成上有効な温度にて、ゲル形成上有効回転数の攪拌下、pHを調整する工程;を含む、0.002〜0.44重量%ジェランガム含有食品用組成物の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェランガムを0.002〜0.44重量%含有する食品用組成物の製造方法に関する。さらに、本発明は、不溶性固形分を分散させた前記組成物の製造方法及び該組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェランガムはゼリーや水ようかん、ジャム様食品等のゲル状食品に用いられるゲル化剤である。特許文献1は、ジェランガム溶液を容器に充填し、冷却してゲル化したものを消費者が容器を振ることでゲルを壊して流動性を持たせる方法を記載する。しかしながら、該方法では、輸送中に缶内部のゲルが潰れたり、消費者が最終製品を振ることによってゲルを潰すため一部分のゲルだけが潰れたり、振り方によってゲルの大きさが不均一になることから、一定した状態の流動性のあるゲルを作ることが困難である。
【0003】
また、特許文献2は、ジェランガムを含有させ加熱攪拌溶解した水溶液を攪拌しながらゲル化点以下まで冷却することにより、流動性のあるゲルを製造する方法を開示する。
【0004】
ジェランガムを溶解する際、例えば70〜90℃での加熱攪拌溶解が必要である。また、ジェランガムのゲル化点は通常は35℃前後である(これらの温度は、添加する他の成分やカルシウム、ナトリウム塩類や糖度、果汁含量にも影響を受ける)。従って、ジェランガムをゲル化剤として用いるためには、ジェランガムを含有させ加熱攪拌溶解した水溶液を攪拌しながらゲル化点以下まで冷却するという工程が必要であり、この冷却には膨大なエネルギー損失と処理時間の延長が必要であった。また、大量生産においては調合タンクの冷却が必要であるため、製造可能な設備が限られてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、流動性を有するゲルを製造する際の冷却工程を省くため、製造に関する原料を常温溶解する方法、高温溶解後に水(冷却水もしくは常温)を混合する方法等が考えられるが、これらの方法では、ジェランガムが低温、高濃度の状態で、局所的に大きなゲルを形成して、大きさが不均一になることから、一定した状態の流動性のあるゲルを作ることが困難であった。
【特許文献1】特開平5-268918
【特許文献2】特開平7-284652
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ジェランガムを0.002〜0.44重量%含有する食品用組成物の製造方法に関する。より詳細には、消費者の手元に商品が届けられた段階で、特別な処理を加えること無く、食品用、特に飲料として好ましい粘度のゲルが形成されており、かつ大量生産における特別な冷却設備を必要とせず、膨大なエネルギー損失と処理時間の延長化がない前記食品用組成物の製造方法に関し、さらに、該製造方法で製造したゲル中に不溶性固形分を均一に分散させた不溶性固形分含有飲料に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(1) (a)ジェランガム水溶液と(b)カチオン類含有水溶液とを、有効な温度にて、有効回転数の攪拌下、混合する工程;及び、(2) ゲル形成上有効な温度にて、ゲル形成上有効回転数の攪拌下、pHを調整する工程;を含む、0.002〜0.44重量%、好ましくは0.004〜0.4重量%、より好ましくは0.004〜0.2重量%、さらにより好ましくは0.02〜0.08重量%ジェランガム含有食品用組成物の製造方法を提供する。
【0008】
本明細書中において、ジェランガムとは、非病原性微生物Pseudomonas elodea が発酵生産する、グルコース、グルクロン酸、グルコース、ラムノースの4つの糖の繰り返し単位から構成される、直鎖状のヘテロ多糖類を指す。脱アセチル処理の有無により、脱アシル型ジェランガムとネイティブジェランガムの、物性の異なる2種類のジェランガムが得られる。本発明の製造方法においてはいずれのジェランガムも使用することができるが、特に脱アシル型ジェランガムを用いることが好ましい。ジェランガムは人体への安全性が確認されている。ジェランガムを用いて製造したゲルは、ゲル形成が容易、透明度が高い等の利点があり、耐熱性、耐酸及びアルカリ性、耐酵素性に優れ、様々な成分を添加することが可能である。
【0009】
本発明のジェランガム含有組成物は、ジェランガムを0.002〜0.44重量%、好ましくは0.004〜0.4重量%、より好ましくは0.004〜0.2重量%、さらにより好ましくは0.02〜0.08重量%添加することが好ましい。0.002重量%以下であるとゲル化せず、一方0.44重量%以上だとゲルが固すぎ、いずれの場合も流動性のあるゲルが得られない。また、0.002重量%以下であると、固形分をゲル中に浮遊させる際には、固形分を軽くしないと沈殿してしまう。さらに、ジェランガム濃度が高いと均一なゲルの製造が困難になり、食感も、飲料というよりはゼリーに近いものとなる。本明細書中において、ジェランガムの濃度は、使用するゲル化剤中のジェランガム量に換算して重量%で表す。
【0010】
本発明において、ジェランガム0.002〜0.44重量%、好ましくは0.004〜0.4重量%、より好ましくは0.004〜0.2重量%、さらにより好ましくは0.02〜0.08重量%含有組成物とは、該組成物と同等の粘度を有する組成物をも含むものとする。従って、例えば、以下の実施例1に記載の方法を用いて測定した場合に、粘度が1.5〜480.0mPa・s、好ましくは2.0〜185.0mPa・s、より好ましくは2.0〜130.0mPa・s、さらにより好ましくは3.0〜40.0mPa・sである組成物も、ジェランガム0.002〜0.44重量%含有組成物に含まれる。後述のジェランガム以外のゲル化剤や増粘剤を含む組成物についても、上記の範囲のジェランガムを含有する及び/又は上記の粘度の範囲に含まれる限り、ジェランガム0.002〜0.44重量%含有組成物に含まれる。本発明が食品用組成物、特定すれば飲料、さらに特定すれば不溶性固形分分散飲料の製造方法に関するという観点からは、以下の実施例1に記載の方法を用いて測定した場合に、1.5〜185mPa・s、好ましくは2.0〜185.0mPa・s、より好ましくは2.0〜130.0mPa・s、さらにより好ましくは3.0〜40.0mPa・sの粘度が得られることが望ましい。粘度が低いと不溶性固形分が沈殿し、一方粘度が高いと飲んだとき重い感じで飲み辛い。
【0011】
ジェランガムのゲル化には、カルシウムやナトリウム等のカチオン及びpHが関与する。従って、ジェランガム水溶液である前記(a)と、カチオン類含有水溶液である前記(b)とを混合し、さらにpHを調整することにより、ジェランガム水溶液はゲル化する。
【0012】
前記(b)中のカチオン類は、好ましくは1価又は2価のカチオンである。従って前記(b)として、例えば、Ca、Na、K及びMgから選ばれた少なくとも1つの、食品添加物として許容される塩の水溶液を使用することが出来る。カルシウム塩としては、乳酸Ca、塩化Ca、リン酸3Ca、リン酸一水素Ca、リン酸二水素Ca、グルコン酸Ca、炭酸Ca、クエン酸Ca、水酸化Ca、パントテン酸Ca、ピロリン酸二水素Ca、硫酸Ca等を使用することができ、好ましくは、乳酸Caを使用することができる。ナトリウム塩としては、塩化Na、グルタミン酸Na、クエン酸Na、コハク酸Na等を使用することが出来る。カリウム塩としては、塩化K、クエン酸一K、クエン酸三K、L-グルタミン酸K等を使用することが出来る。マグネシウム塩としては、硫酸Mg、塩化Mg、炭酸Mg、酸化Mg等を使用することができ、好ましくは水に溶けやすい硫酸Mgや塩化Mgを使用することが出来る。ジェランガムのゲルの特性(硬さ、脆さ等)は、使用するカチオンの量によっても変化し、例えば0.2重量%のジェランガムに対しては、0.09重量%の乳酸Caを使用した場合に、ゲルの硬さが最大になる。当業者であれば、ジェランガムの使用量に応じて適宜上記のカチオン類の使用量を決定することが出来る。例えば、0.05重量%のジェランガムに対し、0.05重量%の乳酸Caを使用することが出来る。
【0013】
本発明の製造方法は、前記(a)と前記(b)とを、有効な温度にて、有効回転数の攪拌下、混合する工程(1)を含む。該工程(1)において、(a)と(b)とを混合する際の有効な温度とは、(a)と(b)とが接触した際に、局所的に1cm3より大きいゲルを形成しない程度の高さの温度である。前記有効な温度とは、より特定すれば、(a)及び(b)の温度のうち高いほうを指す。ジェランガムのゲル化点は、添加する他の成分や塩類、糖度、果汁含量等にも影響を受けるが、通常は35℃程度である。従って、前記有効な温度は35℃よりも高いことが好ましい。
【0014】
(a)と(b)とが接触した際に、局所的に1cm3より大きいゲルを形成するか否かは、該接触時における攪拌の回転数にも左右される。回転数が大きければ、(a)及び(b)が接触して局所的に1cm3より大きいゲルを形成する速度よりも、(a)及び(b)が分散する速度が勝って局所的な1cm3より大きいゲル形成を避けることができるか、又は、形成されたゲルも攪拌で崩れるため問題ない。このような回転数での攪拌を、工程(1)における有効回転数の攪拌とする。攪拌は、攪拌対象の容積及び容器の形状、攪拌機によっても左右されるが、例えば、以下の実施例に記載の条件で攪拌を行うことが出来る。当業者であれば、以下の実施例に記載した条件を基に、様々な条件下での有効回転数の攪拌を適宜設定することが可能であろう。
【0015】
(a)ジェランガム水溶液と(b)カチオン類含有水溶液とが低温(例えば後述の実施例2において40℃の場合)で接触する場合、該接触時における攪拌回転数が小さいと:1cm3より大きいゲルが崩せない(例えば後述の実施例2において攪拌回転数40rpmの場合);1cm3より大きいゲルを崩すのに時間がかかる(例えば後述の実施例2において攪拌回転数60rpmの場合);等の不都合を生じる。一方、該接触時の攪拌回転数が大きいと、例えば後述の実施例2において攪拌回転数80rpmの場合のように、1cm3より大きいゲルは攪拌で崩れ、不都合を生じない。
【0016】
(a)ジェランガム水溶液と(b)カチオン類含有水溶液とが高温(例えば後述の実施例2において60℃の場合)で接触する場合、例えば後述の実施例2において攪拌回転数40rpm及び60rpmの場合のように、攪拌回転数が上記の低温時で接触する場合より小さくても、局所的な1cm3より大きいゲル形成等の問題は生じない。
【0017】
該工程(1)における(a)ジェランガム水溶液の量は、上記のような高温の(b)カチオン類含有水溶液と合わせた場合に、冷却工程を設けることなくジェランガムのゲル化点(35℃)以下となる程度に、(b)と比べて大量であることが好ましい。
【0018】
後述するように、本発明の製造方法において、一旦1cm3より大きくゲル化したものを細かく粉砕して得られる組成物よりも、1cm3以下、好ましくは1mm3以下の少量ずつ全体に亘ってゲル化することで得られる組成物を製造することが好ましいことを考慮すれば、上記有効回転数及び有効温度の設定において、低温+回転数大の組合せよりも、高温+回転数小〜大の組合せの方がより好ましいであろう。
【0019】
上記(a)と(b)とを混合する際の有効な温度について、加温及びその後の冷却の際に必要なエネルギー及び大量生産において必要となるであろう特別な冷却設備等を考慮すれば、(a)と(b)のうち容積の小さい方を高温にすることが好ましいであろう。例えば、(a)と(b)のうち(b)が多量であれば、(a)を高温にする。例えば後述の実施例においては、乳酸Ca溶液の方が容積が小さいため、これを有効な温度に加温する。
【0020】
本発明の製造方法は、さらに、ゲル形成上有効な温度にて、ゲル形成上有効回転数の攪拌下、pHを調整する工程(2)を含む。該工程(2)において、ジェランガムがゲル化しない程度のpHを、ゲル化するpHに調整すると、pHの変化により瞬間的にジェランガムはゲル化反応を開始する。ジェランガム溶液のpHとゲルの硬さに関して、例えばクエン酸で調整した場合に、0.2重量%ジェランガム水溶液はpH3.5付近で硬さが最大になり、0.2重量%ジェランガム+0.07重量%乳酸Ca水溶液ではpH3.7付近で硬さが最大になる。
【0021】
pHを調整することによりH+濃度が増減するため、H+をカチオンの一種と考えれば、上述の(a)と(b)との接触時と同様に、ゲル化の際のpH調整と、ゲル形成上有効な温度及びゲル形成上有効回転数の攪拌とについて考えることが出来る。
【0022】
工程(2)におけるゲル形成上有効回転数の攪拌について以下に述べる。pHを調整した際に、攪拌回転数が大きければ、pH調整により局所的に1cm3より大きいゲルを形成する速度よりも、pH調整液が分散する速度が勝って局所的な1cm3より大きいゲルの形成を避けることができるか、又は、形成された1cm3より大きいゲルも攪拌で均一に崩れるため問題ない。このような回転数での攪拌を、工程(2)におけるゲル形成上有効回転数の攪拌とする。pHが速やかに最大の硬さのゲルを与えるpH値になると固いゲルができ、これを攪拌で均一に崩すのは容易でない。一方、pHの変化が小さければ、ゲルは脆く、攪拌で容易に均一に崩れる。攪拌は、攪拌対象の容積及び容器の形状、攪拌機によっても左右されるが、当業者であれば、以下の実施例に記載した条件を基に、様々な条件下でのゲル形成上有効回転数の攪拌を適宜設定することが可能であろう。例えば、以下の実施例に記載の条件で攪拌を行うことが出来る。
【0023】
攪拌の有効回転数は、上記工程(1)及び(2)において設定を変更する労力を考え、両工程共に有効な回転数の攪拌を与えるような回転数が最も好ましいであろう。
【0024】
pHの調整は、食品のpH調整について当業者に公知の手法により行うことができる。例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、アスコルビン酸、グルコン酸、燐酸等の各種酸味料及びそれらの塩並びにレモン汁等を、単独又は混合して用いてpHを調整することができる。
【0025】
例えば、後述の実施例において酸味料投入時の攪拌回転数が40rpmの場合、攪拌では均一に崩れない1cm3より大きいゲルの塊が生じるため不都合である。一方該攪拌回転数が60rpm及び80rpmの場合、このような不都合は生じないため、これらは該実施例におけるゲル形成上有効回転数の攪拌である。
【0026】
なお、この際、酸味料の温度については、上述の工程(1)の場合と同様の理由で高温であることが望ましいが、加温に要するエネルギーを省くために高温にしなくてもよい。ただし、酸味料が高温であれば、攪拌回転数が40rpmの場合でも、高温でH+が分散し、攪拌で均一に崩れないような局所的な1cm3より大きいゲルの形成を防ぐことができる。例えば後述の実施例2において60℃の高温でpHを調整する場合、例えば後述の実施例2において攪拌回転数40rpmの場合のように、攪拌回転数が小さくても、攪拌で均一に崩れないような局所的な1cm3より大きいゲル形成等の問題は生じない。このような温度を、工程(2)における、ゲル形成上有効な温度という。
【0027】
本発明はまた、前記ジェランガム水溶液(a)が、70℃以上のジェランガム水溶液と常温の水相とを、攪拌下、で混合する工程(3)により調製され、好ましくは、混合後の温度が40℃以下である、前記の製造方法を提供する。ジェランガムが溶解する水溶液の温度は70℃以上が適当である。ジェランガム単体は90℃以上で溶解するが、例えばクエン酸Naとジェランガムの混合物であれば、より低温で溶解させることが可能であるため、70℃以上であれば溶解に適当な温度であると考えられる。該工程(3)において水相と混合する前のジェランガムは完全に分散し溶解している。該工程(3)における水相は、この水相が標準的製造方法において多量であることを考慮すれば、加温及び冷却の必要のない常温(室温)程度であることが好ましい。本発明は、このように、多量である該水相の加温及び/又は冷却が不要である上記製造方法を提供することをその目的の一つとする。工程(3)で混合した後の温度は、典型的には、70℃のジェランガム水溶液と、その4倍量程度の室温の水相を合わせた場合、ジェランガムのゲル化点(40℃程度)以下となる。なお、この段階では、ジェランガムのゲル化生成に関与する条件(カチオン、pH条件)が揃わないため、ゲルは生じない。
【0028】
該工程(3)における水相は、砂糖等を添加したものでもよい。また、その後の工程(1)における有効回転数の攪拌が必要なことを考慮して、溶液の量及び容器の大きさを適宜設定する。
【0029】
本発明はまた、前記組成物が、一旦1cm3より大きくゲル化したものを1cm3以下、好ましくは1mm3以下に細かく粉砕して得られる組成物である、前記の製造方法を提供する。さらに本発明は、前記組成物が、1cm3以下、好ましくは1mm3以下の少量ずつ全体に亘ってゲル化することで得られる組成物である、前記の製造方法を提供する。一旦1cm3より大きくゲル化したものを崩した場合、食感や粒子の大きさにばらつきが生じやすくなるため、好ましくは、本発明の組成物は、1cm3以下、好ましくは1mm3以下ずつ全体に亘ってゲル化することで得られる組成物である。
【0030】
なお、本明細書中において、「1cm3より大きい」ゲル(又はゲル化したもの)とは、食品用、特に飲料として好ましい粘度を有する所望の均一なゲルを得るために、その後攪拌等で崩すことが好ましいゲルを指す。一方、「1mm3以下」のゲルとは、目視ではゲルの存在を確認できないようなゲルを指す。本発明においては、攪拌等で崩すことが不要であるという観点からは1cm3以下のゲルを得ることが好ましく、さらに該ゲルが目視でゲルの存在を確認できないほど細かく均一で食品用組成物に適するという観点からは、1mm3以下のゲルを得ることがより好ましい。
【0031】
本発明の製造方法においては、目的の食品用組成物に応じて、ジェランガム以外のゲル化剤、例えば、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸、グアーガム、ゼラチン、マンナン、寒天、アラビアガム等の一般的に食品用組成物に用いられるゲル化剤の一種以上を併用することができる。これらのゲル化剤の使用方法、使用量等は、当業者であれば、本明細書中の記載に基づき、適宜決定できるであろう。
【0032】
本発明はまた、前記食品用組成物が糖度1〜20%の飲料組成物である、前記の製造方法を提供する。該組成物中の糖度は、当業者に公知の手法により算出及び/又は測定することができる。該組成物に配合し得る糖類としては、例えばショ糖、ブドウ糖、果糖、はちみつ、水飴等の糖質系甘味料、例えばステビア、グリチルリチン、アスパルテーム、グリチルリチン酸ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース等の非糖質系甘味料(天然甘味料及び合成甘味料を含む)が挙げられる。これらの糖類は、目的に応じて単独で、又は複数を組み合わせて使用することが出来る。
【0033】
本発明はまた、前記食品用組成物がさらに不溶性固形分を含有する、好ましくは分散して含有する、より好ましくは均一に分散して含有する、前記の製造方法を提供する。
【0034】
本明細書中において、不溶性固形分とは、例えば、ゼリー(粒)、果実(ブドウ等)、果実さのう、カット果実(イチゴ、リンゴ、キウイ等)、パルプ、野菜小片、小豆粒、果実や野菜をすりおろしたもの、ハーブの小片等、ジェランガム含有組成物に含有させること、好ましくは分散させること、より好ましくは均一に分散させることが可能な食品を指す。好ましくは、不溶性固形分として、各種機能性素材等の栄養素を閉じ込めることが出来るゼリーを用いることが出来る。透明度が高いという特徴を有するジェランガムをゲル化剤として用いた本発明の食品用組成物中に、さらに前記不溶性固形分を分散させることにより、食感に特徴を有し、味の変化を楽しむことができる組成物を提供することが可能になり、さらに、色つきの不溶性固形分を用いれば、視覚的にも消費者の購買欲を促す組成物を提供することが可能になる。該不溶性固形分の配合量及び配合方法は、飲料の目的により、当業者であれば適宜決定することが出来る。
【0035】
本発明はまた、(1) (a) ジェランガム水溶液と(b)カチオン類含有水溶液とを、有効な温度にて、有効回転数の攪拌下、混合する工程;(2) ゲル形成上有効な温度にて、ゲル形成上有効回転数の攪拌下、pHを調整する工程;及び、不溶性固形分を含有させる工程;を含む製造方法により得られた、0.002〜0.44重量%、好ましくは0.004〜0.4重量%、より好ましくは0.004〜0.2重量%、さらにより好ましくは0.02〜0.08重量%ジェランガム含有不溶性固形分分散飲料を提供する。
【0036】
上記の不溶性固形分を含有させる工程について、不溶性固形分は、工程(1)の段階で(a)ジェランガム水溶液、(b)カチオン類水溶液及び/又はそれらの混合溶液に加えてもよく、工程(2)の前に加えてもよく、工程(2)の後にジェランガム含有食品用組成物と混合してもよい。工程(1)及び(2)における攪拌条件の決定の際に、混合させる不溶性固形分の影響を考慮しなくてもよいという観点や、工程(1)及び(2)における攪拌の不溶性固形分への影響を少なくするという観点からは、工程(1)及び(2)を経て得られたジェランガム含有組成物に不溶性固形分を混合することが好ましいであろう。粘度の高い不溶性固形分分散飲料を得る場合には、不溶性固形分を均一に分散させるという観点からは、ジェランガム含有組成物を得る前の工程で不溶性固形分を加えるのが好ましいであろう。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、消費者に手元に商品が届けられた段階で、特別な処理無しに、流動性のあるゲルが形成されており、かつ大量生産における特別な冷却設備を必要とせず、膨大なエネルギー損失と処理時間の延長化がない0.002〜0.44重量%ジェランガム含有食品用組成物の製造方法が提供される。また、そのようにして製造されたジェランガム含有食品用組成物中に不溶性固形分を均一に分散させた不溶性固形分含有飲料が提供される。
【実施例】
【0038】
以下に示す実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
実施例1
表1の処方で、下記の手順によりゲルを作成し、ジェランガム量を変化させた場合のゲルの特性を調べた。下記手順の1)は半径18.5cmのステンレスタンク中で行った(その後のステップでも引き続き使用)。攪拌は4枚羽のパルであって各羽の大きさが20mm x 100mmであり、各羽が支柱に対し45°の角度で取り付けられたものをステンレスタンク底面から4.9cmの高さに固定して行った。各ステップにおける攪拌は、可能な最大の回転数(液がステンレスタンクから飛び散らない最大の回転数)で行った。各溶液は、少量ずつではなく一気に投入した。なお、ジェランガムと乳酸Caの配合比は一定にし(ジェランガム:乳酸Ca = 1:1.05重量比)、クエン酸量は、表1中No.1〜No.10において同じpH(pH3.5)が得られるよう適宜決定した。
1) 常温(約20〜30℃)の水にグラニュー糖を溶解した。液量は、ステンレスタンク底面から18.5cm程度(約20kg)とした。
2) 別容器中で、温水(60〜80℃)約5kgにジェランガムを溶解した。
3) 攪拌下、1)に2)を一気に投入し、ジェランガムのゲル化点以下程度(40℃以下)となることを確認した。
4) 別容器中で、温水(60〜80℃)約3kgに乳酸Caを溶解し、攪拌下、3)で得た液に投入した。
5) 別容器中で、常温(約20〜30℃)の水約6kgにクエン酸、クエン酸3Na及びビタミンCを溶解し、攪拌下、4)で得た液に投入した。その後、香料を添加し、加水し40kgに仕上げた。
6) ゲル化の様子を観察し記録した。全体が均一になるまで攪拌後、攪拌を止め、粘度計(B型粘度計、BL形、(株)トキメック)を用いて、表1に記載の条件で粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
ゲルを形成するジェランガムの濃度は0.004〜0.4重量%であった。ただし、0.002重量%の濃度であっても、粘性はあるため、非常に軽い不溶性固形分であれば浮遊させることができると考えられた。濃度が0.44重量%の場合は、攪拌条件等によっては所望のゲルが得られる可能性はあると考えられた。飲料としては、0.02〜0.08重量%の範囲の濃度が最適であった。
【0042】
実施例2
以下の表2に示す処方で、下記手順によって容器入り飲料を製造した。下記手順の1)は半径18.5cmのステンレスタンク中で行った(その後のステップでも引き続き使用)。攪拌は4枚羽のパルであって各羽の大きさが20mm x 100mmであり、各羽が支柱に対し45°の角度で取り付けられたものをステンレスタンク底面から4.9cmの高さに固定して行った。全てのステップは、40、60又は80rpmの攪拌回転数(表3参照)で攪拌下行った。各溶液は、少量ずつではなく一気に投入した。
【0043】
【表2】

【0044】
1) 常温(約20〜30℃)の水約18kgにグラニュー糖を溶解した。
2) 別容器中で、温水(80℃前後)約4kgにジェランガムを溶解した。
3)攪拌下、1)に2)を一気に投入し、ジェランガムのゲル化点以下程度(40℃以下)となることを確認した。
4) 別容器中で、40又は60℃の温水約2kgに乳酸Caを溶解し、攪拌下、3)で得た液に投入した。この時点でのゲル化の有無を観察した。
5) 別容器中で、35℃前後又は60℃の水約2kgにクエン酸、クエン酸3Naを溶解した。
6) 攪拌下、5)で得た液、レモン果汁、香料を4)で得た液に投入し、40kgまで加水した。酸味料を投入した際のゲル化の様子を観察した。
7) 完成した中味液を容器に充填し、95℃30秒の殺菌を行った。殺菌後冷却し、本飲料を完成させた。
【0045】
製造条件及びゲルの詳細な様子を、表3に示す。
【0046】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) (a)ジェランガム水溶液と(b)カチオン類含有水溶液とを、有効な温度にて、有効回転数の攪拌下、混合する工程;及び
(2) ゲル形成上有効な温度にて、ゲル形成上有効回転数の攪拌下、pHを調整する工程;
を含む、
0.002〜0.44重量%ジェランガム含有食品用組成物の製造方法。
【請求項2】
前記(a)が、(3) 70℃以上のジェランガム水溶液と常温の水相とを、攪拌下、混合する工程により調製される、請求項1の製造方法。
【請求項3】
前記組成物が、一旦1cm3より大きくゲル化したものを粉砕して得られる組成物又は、1cm3以下ずつ全体に亘ってゲル化することで得られる組成物である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記食品用組成物が糖度1〜20%の飲料組成物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記食品用組成物がさらに不溶性固形分を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
(1) (a) ジェランガム水溶液と(b)カチオン類含有水溶液とを、有効な温度にて、有効回転数の攪拌下、混合する工程;(2) ゲル形成上有効な温度にて、ゲル形成上有効回転数の攪拌下、pHを調整する工程;及び、不溶性固形分を含有させる工程;を含む製造方法により得られる、0.002〜0.44重量%ジェランガム含有不溶性固形分分散飲料。

【公開番号】特開2007−222035(P2007−222035A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44673(P2006−44673)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】