説明

ジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物及びこれを利用したポリ塩化ビニル樹脂

本発明は、ジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物に関するものであって、ジエチレングリコールエステル化合物を2種以上含んで成り、本発明によるジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物は、環境ホルモン誘発物質の可塑剤の構造を持たずに、ポリ塩化ビニル樹脂の可塑剤として使用された場合、引張強度、伸び率、移行耐性、硬度、透明度、粘着性、及び樹脂との相溶性に優れたラップフィルム用ポリ塩化ビニル樹脂を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物に関するものであり、特に、ポリ塩化ビニル樹脂(polyvinyl chloride resin, PVC)の可塑剤として用いることのできるジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル樹脂及びその他高分子樹脂に添加される可塑剤は、高分子樹脂に加工性、柔軟性、電気絶縁性、粘着性などの色々な物性及び機能を付与するための必須添加剤を意味し、従来の代表的な可塑剤としては、フタレート系(phthalates)、アジペート系(adipates)などが挙げられる。その中で最も幅広く使用される可塑剤は、フタレート系のジ−2−エチルヘキシルフタレート(di-2-ethylhexylphthalate, DEHP)とアジペート系のジ−2−エチルヘキシルアジペート(di-2-ethylhexyladipate, DEHA)であり、これら可塑剤は他の可塑剤の性能を評価するための標準可塑剤の役割を果たす。
しかし、米国環境保護局及び日本国立医薬食品衛生研究所は、フタレート系及びアジペート系化合物を環境ホルモン物質に分類したことがある。
【0003】
したがって、フタレート系又はアジペート系構造を含んでいない可塑剤の開発が要求されている。このような可塑剤用化合物として、フタレート系及びアジペート系化合物の構造を有していないジエチレングリコールエステル系化合物があり、これについては下記特許文献1で、ディーゼルエンジンから放出される窒素酸化物を減少させる添加剤として記載されたことがある。
【0004】
一方、ポリ塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルのような単量体又は塩化ビニル単量体と塩化ビニル単量体と共重合できる他の単量体を重合して製造されるものであって、可塑剤を始めとして、安定剤(stabilizer)、充填剤(filler)、顔料(pigment)などの色々な添加剤を適切に混合して多様な加工物性を付与することができる汎用樹脂である。
【0005】
このような多様な加工物性を利用して、ポリ塩化ビニル樹脂は、パイプ、電線、人造皮革、壁紙、手袋、おもちゃ、ラップフィルム(wrap film)など、数多くの分野で多様な用途に使用されている。
【0006】
特に、食品包装材に使用されるラップフィルム用ポリ塩化ビニル樹脂は、引張強度、硬度、包装製品をよく包むことのできる伸び率、食品を肉眼でそのまま見られる透明度、食品包装後でも離れないようにする粘着性、移行耐性、樹脂との相溶性が優れていなければならない。
【特許文献1】米国特許第5,746,783号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、環境ホルモン誘発物質の構造を有しない可塑剤用ジエチレングリコールエステル化合物を提供することをその目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、前記ジエチレングリコールエステル化合物を含むポリ塩化ビニル樹脂の可塑剤として用いることができるジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物を提供することにある。
【0009】
本発明のまた他の目的は、前記ジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物を利用して、引張強度、伸び率、硬度、移行耐性、透明度、粘着性に優れたラップフィルム用ポリ塩化ビニル樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、下記の化学式1−1に示される可塑剤用ジエチレングリコールエステル化合物を提供する。
[化1−1]
OCO−(CH−O−(CH−OCOR
(前記式で、Rはフェニル基であり、Rは、3乃至12個の炭素数を有するアルキル基である。)
【0011】
また、本発明は、前記化学式1−1のジエチレングリコールエステル化合物を含むジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物を提供する。
前記組成物は、下記の化学式1−2に示されるジエチレングリコールエステル化合物;及び下記の化学式1−3に示されるジエチレングリコールエステル化合物をさらに含む。
[化1−2]
OCO−(CH−O−(CH−OCOR
(前記式で、R及びRは、各々3乃至12個の炭素数を有するアルキル基である。)
[化1−3]
OCO−(CH−O−(CH−OCOR
(前記式で、R及びRは各々フェニル基である。)
【0012】
さらに好ましくは、本発明の可塑剤組成物は、(a)化学式1−1のジエチレングリコールエステル化合物10乃至80重量%;(b)化学式1−2のジエチレングリコールエステル化合物5乃至80重量%;及び(c)化学式1−3のジエチレングリコールエステル化合物5乃至60重量%;を含む。
【0013】
また、本発明は、ジエチレングリコール10乃至40重量%、2−エチルヘキサン酸20乃至70重量%、安息香酸10乃至60重量%、キシレン1乃至10重量%、及びテトラチタン酸イソプロピル0.01乃至1重量%を、220℃で4乃至10時間エステル化反応させる段階を含むジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物を含んで製造されたポリ塩化ビニル樹脂を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物は、環境ホルモン誘発物質の可塑剤の構造を持っておらず、ポリ塩化ビニル樹脂の可塑剤として使用された場合、引張強度、伸び率、移行耐性、硬度、透明度、粘着性、及び樹脂との相溶性に優れたラップフィルム用ポリ塩化ビニル樹脂を提供する効果のある有用な発明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、環境ホルモン物質として知られたフタレート系及びアジペート系の構造を持たずに、特に、引張強度、伸び率、硬度、移行耐性、透明度、粘着性の物性に優れた食品包装のためのラップフィルム用ポリ塩化ビニル樹脂に適用することができる可塑剤組成物を提供する。
【0016】
このような本発明のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物は、下記の化学式1のジエチレングリコールエステル化合物の中から選択された少なくとも2種以上を含むのが好ましい。
[化1]
OCO−(CH−O−(CH−OCOR
前記式で、R及びRは、各々フェニル基又は炭素数が3乃至12個の炭素数を有するアルキル基である。
【0017】
つまり、食品包装材に使用されるラップフィルムは、引張強度、硬度、移行耐性、食品を肉眼で直接観察できる透明度、製品をよく包装できる伸び率、及び包装の後でも離れないようにするための粘着性が優れていなければならない。このような物性を満足させるために、可塑剤をラップフィルムの基礎となる樹脂に添加することができるが、このような可塑剤として本発明は、前記化学式1の化合物を使用する。
【0018】
しかし、前記化学式1の化合物のみを単独に樹脂に添加する場合、前記の物性を全て充足させることができない。詳しく説明すれば、前記化学式1の化合物としてはジエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸を用いて合成した2−エチルヘキサン酸2−2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ−エチルエステル、又はジエチルグリコールと安息香酸で合成した安息香酸2−2−(ベンゾイルオキシ)−エトキシ−エチルエステルがあるが、それらはポリ塩化ビニル樹脂との相溶性が良くないため、可塑剤としての用途よりは潤滑油としての用途でさらに多く使用される。また、化学式1の化合物として、ネオペンチルグリコールに2−エチルヘキサン酸を添加して合成した2−エチルヘキサン酸3−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−2,2−ジメチルプロピルエステルは、硬度が高く、透明度と伸び率が低いために、ラップフイルムには適していない。また、トリエチレングリコールに2−エチルヘキサン酸を添加して合成した2−エチルヘキサン酸[2−2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシエトキシ]−エチルエステルは、作業性は優れているが、伸び率、粘着性、透明度などの物性が不良である。
【0019】
しかし、化学式1のジエチレングリコールエステル化合物を2種以上選択して、これらの組成比を種々変えて可塑剤を製造した場合には色々な他の物性を示す。
【0020】
したがって、本発明の可塑剤組成物は、化学式1のジエチレングリコールエステル化合物の中で選択された2種以上を一定の比率に混合して使用することによって、適用しようと思う樹脂の引張強度、伸び率、硬度、移行耐性、透明度、及び粘着性が優れているだけでなく、ポリ塩化ビニル樹脂との相溶性を含んだ加工性においても優れた物性を有するようになる。
【0021】
本発明のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物の製造方法によれば、前記化学式1の化合物の中で選択された少なくとも2種の化合物、好ましくは3種のジエチレングリコールエステル化合物が生成されるようになる。
【0022】
この中で、本発明は、前記化学式1の化合物の中で選択された下記の化学式1−1の新規な構造のジエチレングリコールエステル化合物を提供する。
[化1−1]
OCO−(CH−O−(CH−OCOR
(前記式で、Rはフェニル基であり、Rは、3乃至12個の炭素数を有するアルキル基である。)
【0023】
前記化学式1−1の化合物の場合、安定性面で最も好ましいので、これを含む可塑剤組成物の場合にもポリ塩化ビニル可塑剤としての用途で優れた物性を示す。
したがって、本発明は、前記化学式1−1の新規な構造のジエチレングリコールエステル化合物を含むポリ塩化ビニル樹脂の可塑剤組成物を提供することができる。
【0024】
このような本発明の組成物は、化学式1の化合物の中で選択された化合物であって、下記の化学式1−2及び1−3に示されるジエチレングリコールエステル化合物を含むのが好ましい。
[化1−2]
OCO−(CH−O−(CH−OCOR
(前記式で、R及びRは、各々3乃至12個の炭素数を有するアルキル基である。)
[化1−3]
OCO−(CH−O−(CH−OCOR
(前記式で、R及びRは各々フェニル基である。)
【0025】
このような本発明の可塑剤組成物は、
(a)化学式1−1のジエチレングリコールエステル化合物10乃至80重量%;
(b)式学式2−1のジエチレングリコールエステル化合物5乃至80重量%;及び
(c)式学式3−1のジエチレングリコールエステル化合物5乃至60重量%;を含むのが好ましい。
【0026】
この時、前記(a)の化学式1−1の化合物は、安息香酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステルであるのが好ましい。
前記(b)の化学式1−2の化合物は、2−エチルヘキサン酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステルであるのが好ましい。
また、前記(c)の化学式1−3の化合物は、安息香酸2−{2−(ベンゾイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステルであるのが好ましい。
【0027】
好ましい本発明のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物の一例を挙げれば、安息香酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステル10乃至80重量%;2−エチルヘキサン酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステル5乃至80重量%;及び安息香酸2−{2−(ベンゾイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステル5乃至60重量%を含む例である。
【0028】
また、より好ましい本発明のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物は、安息香酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステル30乃至60重量%;2−エチルヘキサン酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステル10乃至60重量%;及び安息香酸2−{2−(ベンゾイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステル5乃至50重量%;を含む。
【0029】
最も好ましくは、本発明の組成物は、前記(a)、(b)、及び(c)の化合物が40:40:20の重量比で含まれるのが好ましい。
【0030】
以下では、このようなジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物の製造方法をより具体的に説明する。
前記(a)の新規な化合物である安息香酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステルは、ジエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸及び安息香酸を出発物質として、エステル反応によって製造されることができる。
【0031】
前記(b)の化合物である2−エチルヘキサン酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステルは、ジエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸を出発物質として、エステル反応によって製造することができる。
【0032】
また、前記(c)の化合物である安息香酸2−{2−(ベンゾイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステルは、ジエチレングリコールと安息香酸を出発物質として、エステル反応によって製造することができる。
【0033】
結果的に、本発明のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物は、ジエチレングリコール、安息香酸、及び2−エチルヘキサン酸を出発物質にし、これにその他の添加剤をさらに添加して合成されることができる。
【0034】
このような本発明のジエチレングリコールエステル可塑剤組成物の一例を挙げれば、下記のような方法によって製造されるのが好ましい。
撹拌機と凝縮機付きフラスコにジエチレングリコール10乃至40重量%、2−エチルヘキサン酸20乃至70重量%、安息香酸10乃至60重量%、添加溶剤であるキシレン(xylene)1乃至10重量%、及び触媒のチタン酸テトライソプロピル0.01乃至1重量%を投入した後、220℃まで昇温して4乃至10時間エステル化反応させる。エステル化反応の後、未反応の酸は真空ポンプで減圧して除去し、除去されていない残りの酸は水酸化ナトリウム5乃至15重量%で中和させた後、水洗、脱水、及び濾過して、最終的な安息香酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}エチルエステル30乃至60重量%、2−エチルヘキサン酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステル10乃至60重量%、及び安息香酸2−{2−(ベンゾイルオキシ)−エトキシ}エチルエステル5乃至40重量%のジエチレングリコールエステル可塑剤組成物を得る。
【0035】
このようなジエチレングリコールエステル可塑剤組成物はポリ塩化ビニル樹脂の可塑剤に応用されて、最終樹脂の引張強度、伸び率、硬度、移行耐性、透明度、粘着性だけでなく、特に、ラップフィルム用ポリ塩化ビニル樹脂との相溶性を向上させる。
【0036】
つまり、本発明のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂の可塑剤としてだけでなく、引張強度、伸び率、移行耐性、硬度、透明度、及び粘着性を向上させようとするその他の樹脂にも適用することができ、特に、食品包装材に使用されるラップフィルム用ポリ塩化ビニル樹脂に適合する。また、ポリエチレン系発砲シートにも適用可能である。
【0037】
したがって、本発明は、前述のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物を利用したポリ塩化ビニル樹脂を提供する。
【0038】
前記のポリ塩化ビニル樹脂の製造方法は特には限定されず、前記可塑剤組成物を利用して、塩化ビニルのような単量体又は塩化ビニル単量体及びこれらと共重合可能な単量体を共重合して、通常の方法によって製造されることができる。
【0039】
以下、下記の実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるわけではない。
【0040】
[実施例1]
(1)ジエチレングリコールエステル可塑剤組成物の製造
撹拌機と凝縮機付き4口2リットルの丸いフラスコに、ジエチレングリコール3mol、2−エチルヘキサン酸5.4mol、安息香酸2.4mol、添加溶剤のキシレン60g、及び触媒のチタン酸テトライソプロピル2gを投入した後、220℃まで昇温して、10時間エステル化反応を行った。
エステル化反応の後、未反応の酸は、220℃で真空ポンプで2mmHgまで減圧して除去し、除去できない酸は10重量%の水酸化ナトリウムで中和した後、水洗及び脱水過程を進行した。その後、吸着剤を添加し濾過して、ジエチレングリコールエステル組成物を得た。
前記ジエチレングリコールエステル組成物の組成比は、安息香酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}エチルエステル45重量%、2−エチルヘキサン酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステル42重量%、安息香酸2−{2−(ベンゾイルオキシ)−エトキシ}エチルエステル12重量%、その他の未反応物質1重量%であり、前記成分及び含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析器(Gas Chromatography Mass Spectrometer, GC-MS)で確認した。前記GC−MS結果は図(FIG)1に示した。
【0041】
(2)ジエチレングリコールエステル可塑剤組成物を利用したポリ塩化ビニル樹脂の製造
ポリ塩化ビニル樹脂((株)LG化学、製品名LS100S)100重量部に対し、可塑剤として前記(1)で製造されたジエチレングリコールエステル組成物36重量部、カルシウム−亜鉛安定剤((株)KOLON、製品名KCZ−08)1.3重量部、及びエポキシ大豆油((株)新東邦)12重量部を配合した後、ロールミル(roll mill)を利用して165℃の温度で3分間作業して、5mmのシートを製作した。5mmシートをプレス作業して1mmシートを製造したが、プレス作業の条件は、185℃の温度で予熱3分、加熱3分、冷却3分にした。製造された1mmシートから、C型(cype C)である複数の亜鈴型試験片を作成した。
【0042】
(3)ジエチレングリコールエステル可塑剤組成物を利用したポリ塩化ビニル樹脂の物性評価試験
前記(2)で製造されたジエチレングリコールエステル可塑剤組成物を利用したポリ塩化ビニル樹脂の試験片として、下記のような方法で引張強度、伸び率、硬度、移行耐性、透明度、及び粘着性を評価した後、その結果を表1に示した。
* 引張強度:ASTM D638方法に準拠して、テスト機器のU.T.Mを利用して、クロスヘッドスピード(cross head speed)を500mm/minで引っ張った後、試験片が切断される位置を測定し、下記式によって、引張強度を計算した。
[数式1]
引張強度(kgf/mm=負荷値(kgf)/(厚さ(mm)×幅(mm))
* 伸び率:ASTM D638方法によって、テスト機器のU.T.Mを利用して、クロスヘッドスピードを500mm/minで引っ張り、試験片が切断される位置を測定し、下記式によって、伸び率を計算した。
[数式2]
伸び率(%)=(伸張量(extension)/初期の長さ)×100
* 硬度:硬度試験器(C type)針を完全に下ろした後、10秒後の硬度値を読み、各々の試片に対して5ケ所を試験した後、その平均値を算出した。
* 移行耐性:試験片に対して少数点4桁まで初期重量(Wi)を測定し、80℃のオーブンにポリスチレン(PS)板の間に試験片シート(3cm×3cm)を入れた後、1kgの荷重を加えた状態で48時間放置し、試験片を取り出して恒温槽で4時間以上保管した後、試験片の重量(Wo)を測定して、下記式によって、移行量を計算した。
[数式3]
移行量(%)=(Wi−Wo)/Wi×100
* 透明度:肉眼で観察して、透明程度が、標準可塑剤のジ−2−エチルヘキシルアジペートに比べて透明である場合には優秀と評価し、DEHAに同等に透明である場合には同等であると評価し、DEHAに比べて不透明である場合には不良であると評価した。
* 粘着性:手で直接接触して、粘着の程度がDEHAに比べて良い場合には優秀と評価し、DEHAに同等な場合は同等であると評価し、DEHAに比べて粘着性が悪い場合には不良であると評価した。
【0043】
[実施例2]
下記表1のように組成と含有量を変更したことを除いては、実施例1と同様な方法でジエチレングリコールエステル組成物を製造した。その後、前記組成物を可塑剤としてポリ塩化ビニル樹脂を製造して、前記方法で引張強度、伸び率、硬度、移行耐性、透明度、及び粘着性を評価した後、その結果を表1に示した。
前記ジエチレングリコールエステル組成物の組成比は、安息香酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステル50重量%、2−エチルヘキサン酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステル24重量%、安息香酸2−{2−(ベンゾイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステル24重量%、その他の未反応物質2重量%であり、前記成分及び含有量はガスクロマトグラフィー質量分析器で確認した。前記GC−MS結果は図(FIG)2に示した。
【0044】
[実施例3]
下記表1のように組成と含有量を変更したことを除いては、実施例1と同様な方法でジエチレングリコールエステル組成物を製造した。その後、前記組成物を可塑剤としてポリ塩化ビニル樹脂を製造して、前記方法で引張強度、伸び率、硬度、移行耐性、透明度、及び粘着性を評価して、その結果を表1に示した。
前記ジエチレングリコールエステル組成物の組成比は、安息香酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステル42重量%、2−エチルヘキサン酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステル12重量%、及び安息香酸2−{2−(ベンゾイルオキシ)−エトキシ}エチルエステル44重量%、その他の未反応物質2重量%であり、前記成分及び含有量はガスクロマトグラフィー質量分析器で確認した。前記GC−MS結果は図(FIG)3に示した。
【0045】
[比較例1]
可塑剤としてジエチレングリコールエステルの代わりに、ジ−2−エチルヘキシルアジペート((株)LG化学、商品名:DOA)を使用したことを除いては、実施例1と同様にポリ塩化ビニル樹脂を製造して、引張強度、伸び率、硬度、移行耐性、透明度、及び粘着性を評価し、その結果を表1に示した。
【0046】
[比較例2]
可塑剤としてジエチレングリコールエステルの代わりに、下記表1のようにネオペンチルグリコールと2−エチルヘキサン酸から製造したエステル系可塑剤を使用した他は実施例1と同様な方法でポリ塩化ビニル樹脂を製造して、引張強度、伸び率、硬度、移行耐性、透明度、及び粘着性を評価し、その結果を表1に示した。
【0047】
[比較例3]
可塑剤としてジエチレングリコールエステルの代わりに、下記表1のようにトリエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸から製造したエステル系可塑剤を使用した他は実施例1と同様な方法でポリ塩化ビニル樹脂を製造して、引張強度、伸び率、硬度、移行耐性、透明度、及び粘着性を評価し、その結果を表1に示した。
【0048】
[比較例4]
可塑剤としてジエチレングリコールエステルの代わりに、ジイソノニルアジペート(diisonoyladipate、(株)LG化学、商品名:DINA)を使用したことを除いては、実施例1と同様な方法でポリ塩化ビニル樹脂を製造して、引張強度、伸び率、硬度、移行耐性、透明度、及び粘着性を評価し、その結果を表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
前記表1で示された通り、本発明の実施例1のジエチレングリコールエステル組成物を可塑剤に利用したポリエステル樹脂は、食品包装用ラップフィルムとして最も広い範囲で使用される従来の可塑剤であるDOA(比較例1)、標準可塑剤であるDEHAと類似した構造を有するDINA(比較例4)、ネオペンチルグリコールと2−エチルヘキサン酸とより合成した単一成分の可塑剤(比較例2)、及びトリエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸とより合成した単一成分の可塑剤(比較例3)をそれぞれ利用して製造したポリエステル樹脂に比べて、引張強度、伸び率、透明性、及び粘着性が優れており、同等な硬度を示した。このような物性値が実施例1の可塑剤をラップフィルム用樹脂の可塑剤として適用できることを示す。また、ラップフィルムの加工において、移行耐性が低すぎたり高すぎることは好ましくないが、実施例1の場合は移行耐性がラップフィルム用樹脂として好適である。
【0051】
また、実施例2及び3のジエチレングリコールエステル組成物を可塑剤として利用したポリエステル樹脂は、比較例に比べて大きく優れた物性は示していないが、同等な値の物性を有し、このような物性値もラップフィルム用樹脂として好適である。さらに重要であるのは、環境ホルモン誘発物質として知られたフタレート系、アジペート系、及びトリメリテート系化合物の構造を有しないということである。
【0052】
以上、本発明を具体的な例を中心に詳しく説明したが、本発明の技術思想範囲内で多様に変形及び修正可能であるのは当業者にとっては明白なことであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然なことである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例1のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物に対するGC−MS結果である。
【図2】本発明の実施例2のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物に対するGC−MS結果である。
【図3】本発明の実施例3のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物に対するGC−MS結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1−1に示される可塑剤用ジエチレングリコールエステル化合物。
[化1−1]
OCO−(CH−O−(CH−OCOR
(前記式で、Rはフェニル基であり、Rは、3乃至12個の炭素数を有するアルキル基である。)
【請求項2】
前記ジエチレングリコールエステル化合物が、安息香酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステルを含む、請求項1に記載の可塑剤用ジエチレングリコールエステル化合物。
【請求項3】
前記安息香酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステルは、ジエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸及び安息香酸を出発物質として、エステル反応によって得られたものである、請求項2に記載の 可塑剤用ジエチレングリコールエステル化合物。
【請求項4】
化学式1−1に示されるジエチレングリコールエステル化合物を含むジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物。
[化1−1]
OCO−(CH−O−(CH−OCOR
(前記式で、Rはフェニル基であり、Rは、3乃至12個の炭素数を有するアルキル基である。)
【請求項5】
前記組成物は、
下記の化学式1−2に示されるジエチレングリコールエステル化合物;及び
下記の化学式1−3に示されるジエチレングリコールエステル化合物;
をさらに含む、請求項4に記載のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物。
[化1−2]
OCO−(CH−O−(CH−OCOR
(前記式で、R及びRは、各々3乃至12個の炭素数を有するアルキル基である。)
[化1−3]
OCO−(CH−O−(CH−OCOR
(前記式で、R及びRは各々フェニル基である。)
【請求項6】
前記組成物は、
(a)化学式1−1のジエチレングリコールエステル化合物10乃至80重量%;
(b)化学式1−2のジエチレングリコールエステル化合物5乃至80重量%;及び
(c)化学式1−3のジエチレングリコールエステル化合物5乃至60重量%;
を含む、請求項4に記載のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物。
【請求項7】
前記(a)の化学式1−1の化合物が、安息香酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステルであり、
前記(b)の化学式1−2の化合物が、2−エチルヘキサン酸2−{2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステルであり、
前記(c)の化学式1−3の化合物が、安息香酸2−{2−(ベンゾイルオキシ)−エトキシ}−エチルエステルである、請求項6に記載のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物。
【請求項8】
ジエチレングリコール10乃至40重量%、2−エチルヘキサン酸20乃至70重量%、安息香酸10乃至60重量%、キシレン1乃至10重量%、及びチタン酸テトライソプロピル0.01乃至1重量%を、220℃で4乃至10時間エステル化反応させる段階を含む、ジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物の製造方法。
【請求項9】
前記組成物は、
(a)化学式1−1のジエチレングリコールエステル化合物10乃至80重量%;
(b)化学式1−2のジエチレングリコールエステル化合物5乃至80重量%;及び
(c)化学式1−3のジエチレングリコールエステル化合物5乃至60重量%;
を含む、請求項8に記載のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物の製造方法。
[化1−1]
OCO−(CH−O−(CH−OCOR
(前記式で、Rはフェニル基であり、Rは、3乃至12個の炭素数を有するアルキル基である)
[化1−2]
OCO−(CH−O−(CH−OCOR
(前記式で、R及びRは、各々3乃至12個の炭素数を有するアルキル基である)
[化1−3]
OCO−(CH−O−(CH−OCOR
【請求項10】
請求項4乃至7のうちのいずれか一項に記載のジエチレングリコールエステル系可塑剤組成物を含んで製造されたポリ塩化ビニル樹脂。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−504126(P2007−504126A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524588(P2006−524588)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002307
【国際公開番号】WO2005/023926
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】