説明

ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール誘導体

式(A)および(B)の化合物、ならびにナトリウム−グルコース輸送体阻害剤(特に、SGLT2阻害剤)によって媒介される疾患、状態および/または障害の治療のためのその使用が、本明細書に記載されている。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム−グルコース共輸送体(SGLT)阻害剤としてのジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール誘導体、その医薬組成物および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満症は、高血圧症、インスリン抵抗性、糖尿病、冠動脈疾患および心不全(代謝症候群と総称されている)などの共存疾患が含まれるその深刻な合併症のために、重大な健康問題である。肥満症およびその関連する共存疾患は、先進国世界において健康上の問題を拡大させ続けており、発展途上世界にもまた影響を及ぼし始めている。肥満症は健康への悪影響によって、米国において予防可能な死の第2の主要原因となっており、社会に重大な経済的および心理社会的影響をもたらしている。McGinnis M、Foege WH.、「Actual Causes of Death in the United States」、JAMA、270、2207〜12(1993)を参照されたい。肥満症およびそれに伴う共存疾患、特に、II型(2型)糖尿病を治療および/または予防する新規な薬剤を同定および開発することが求められている。
【0003】
より最近では、ナトリウム−グルコース共輸送(SGLT)阻害剤、特にSGLT2阻害剤は、糸球体における腎臓濾過液からのグルコースの再吸収を遮断し、それによって尿中のグルコース排泄を誘発することが示された。過剰なグルコースが排泄されると、血糖値の減少、グルコースの肝臓貯蔵の減少、インスリン分泌の減少、それらに続き炭水化物の脂肪への変換の減少、最終的には蓄積された脂肪の減少が起こる。SGLT2の選択的阻害は、グルコース排泄を増強することによって血漿グルコースを正常化することが期待されている。結果的に、SGLT2阻害剤は、体重増加または低血糖の危険性を伴わずに糖尿病状態を改善するための魅力的な手段を提供する。Isaji,M.、Current Opinion Investigational Drugs、8(4)、285〜292(2007)を参照されたい。治療標的としてのSGLTの一般的な概説については、Asano,T.ら、Drugs of the Future、29(5)、461〜466(2004)をまた参照されたい。
【0004】
NIDDMおよび肥満症の治療に有用であることが示されているグリコシドの代表例は、下記の開示に見出すことができる:米国特許第6,515,117号、同第6,414,126号、同第7,101,856号、同第7,169,761号、および同第7,202,350号、米国特許出願公開第US2002/0111315号、同第US2002/0137903号、同第US2004/0138439号、同第US2005/0233988号、同第US2006/0025349号、同第US2006/0035841号、および同第US2006/0632722号、およびPCT国際公開第WO01/027128号、同第WO02/044192号、同第WO02/088157号、同第WO03/099836号、同第WO04/087727号、同第WO05/021566号、同第WO05/085267号、同第WO06/008038号、同第WO06/002912号、同第WO06/062224号、同第WO07/000445号、同第WO07/093610号、および同第WO08/002824号。

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特定のグリコシドは遺伝毒性であり、潜在的に変異原性または発癌性であるように細胞の遺伝物質に影響を及ぼす。遺伝毒性物質は、In Vitro Mammalian Cell Micronuleus Test(MNvit)、Organization for Economic Co−Operation and Development(OECD)Draft Test Guideline(Draft TG)487(2007);In vitro Mammalian Chromosomal Aberration Test、OECD TG 473(1997);Bacterial Reverse Mutation Test、OECD TG 471(1997);Mammalian Erythrocyte Micronucleus Test、OECD TG 474(1997)または同様のものなどの標準的アッセイを使用して検出することができる。結果的に、肥満症ならびにそれに伴う共存疾患、特に、2型糖尿病および関連する障害のより有効で安全な治療的処置および/または予防が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様には、式(A)または式(B)の化合物、および薬学的に許容できるその塩が含まれ、
【0007】
【化1】

式中、
Rは、−OHであり、あるいは、Rが−O−C(O)−(C〜C)アルキルまたは−O−C(O)−アリールであるとき、Rは、Rと同じ、または−OHであり、
は、−OH、F、Cl、−O−C(O)−(C〜C)アルキル、−O−C(O)−アリール、−O−C(O)−O−(C〜C)アルキルまたは−O−C(O)−O−アリールであり、
は、−OH、−O−(C〜C)アルキルまたは−O−CH−CH−O−R2aであり、
ただし、Rが−OHであり、Rが−OHであるとき、Rは、−OHまたは−O−CH−CH−O−R2aであり、
2aは、H、−C(O)−(C〜C)アルキル、−C(O)−アリール、−C(O)−O−(C〜C)アルキルまたは−C(O)−O−アリールである。
【0008】
本発明の別の態様は、(1)本発明の化合物と、(2)薬学的に許容できる添加剤、賦形剤、または担体とを含む医薬組成物である。好ましくは、組成物は、治療有効量の本発明の化合物を含む。組成物はまた、少なくとも1種の付加的な医薬品を含有し得る。好ましい薬剤には、抗肥満剤および/または抗糖尿病剤が含まれる。
【0009】
本発明のまた別の態様において、動物においてSGLT2阻害によって調節される疾患、障害、または状態を治療するための方法であって、このような治療を必要としている動物(好ましくは、ヒト)に、治療有効量の本発明の化合物(またはその医薬組成物)を投与するステップを含む方法が提供される。SGLT2阻害によって調節される疾患、状態、および/または障害には、例えば、II型糖尿病、糖尿病性腎症、インスリン抵抗性症候群、高血糖症、高インスリン血症、高脂血症、耐糖能異常、肥満症(体重管理または体重維持を含めた)、高血圧症、および血糖値の減少が含まれる。
【0010】
本発明の化合物は、他の医薬品(特に、本明細書において下記に記載されている抗肥満剤および抗糖尿病剤)と組み合わせて投与されてもよい。併用療法は、(a)本発明の化合物、本明細書に記載されている少なくとも1種の付加的な医薬品、および薬学的に許容できる添加剤、賦形剤、もしくは担体を含む単一の医薬組成物、または(b)(i)本発明の化合物と、薬学的に許容できる添加剤、賦形剤、または担体とを含む第1の組成物、および(ii)本明細書に記載されている少なくとも1種の付加的な医薬品と、薬学的に許容できる添加剤、賦形剤、または担体とを含む第2の組成物を含む2つの別々の医薬組成物として投与することができる。医薬組成物は、同時または順次に、および任意の順序で投与することができる。
【0011】
上記の概要および下記の詳細な説明は両方とも例示的および説明的なものにすぎず、特許請求している本発明を制限するものではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記の本発明の例示的実施形態の詳細な説明およびその中に含まれている実施例を参照することによって、本発明はさらにより容易に理解し得る。
【0013】
本発明の化合物、組成物および方法を開示および記載する前に、本発明は、当然ながら変化し得る作製の特定の合成法に限定されないことを理解すべきである。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のためにすぎず、限定的なものではないこともまた理解すべきである。複数形および単数形は、数が示されている場合以外は、交換可能なものとして扱うべきである。
【0014】
本明細書において使用する場合、「アルキル」という用語は、一般式C2n+1の炭化水素基を意味する。アルカン基は、直鎖状または分岐状であってよい。例えば、「(C〜C)アルキル」という用語は、1〜6個の炭素原子を含有する一価の直鎖状または分岐状の脂肪族基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、3,3−ジメチルプロピル、ヘキシル、2−メチルペンチルなど)を意味する。同様に、アルコキシ基のアルキル部分(すなわち、アルキル成分)は、上記と同じ定義を有する。「置換されていてもよい」と示されているとき、アルカン基またはアルキル成分は、非置換であるか、一覧表示した置換基の群から独立に選択される1個または複数の置換基(ペルクロロまたはペルフルオロアルキルなどのハロゲン置換基の場合を除いて、一般に1〜3個の置換基)で置換されていてもよい。
【0015】
「アリール」は、ベンゼン、フェニル、またはナフタレンなどの芳香環を意味する。
【0016】
「治療有効量」という語句は、(i)特定の疾患、状態、または障害を治療し、(ii)特定の疾患、状態、または障害の1つまたは複数の症状を軽減、緩和、もしくは解消し、または(iii)本明細書に記載されている特定の疾患、状態、または障害の1つまたは複数の症状の発症を予防もしくは遅延させる本発明の化合物の量を意味する。
【0017】
「動物」という用語は、ヒト(男性または女性)、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコおよびウマ)、食料源動物、動物園動物、海生動物、鳥および他の類似の動物種を意味する。「食用動物」とは、ウシ、ブタ、ヒツジおよび家禽などの食料源動物を意味する。
【0018】
「薬学的に許容できる」という語句は、物質または組成物が、製剤を構成する他の成分、および/またはそれによって治療を受ける哺乳動物と、化学的および/または毒物学的に適合性でなくてはならないことを示す。
【0019】
「治療すること」、「治療する」、または「治療」という用語は、防止的、すなわち、予防的および姑息的治療の両方を包含する。
【0020】
「調節される」または「調節すること」、または「調節する」という用語は、本明細書において使用する場合、他に示さない限り、本発明の化合物によってナトリウム−グルコース輸送体(特に、SGLT2)を阻害し、それによって輸送体によるグルコース輸送を部分的または完全に防止することを意味する。
【0021】
「本発明の化合物」という用語は、(特に別に特定されなければ)式(A)、式(B)の化合物、ならびに全ての純粋および混合立体異性体(ジアステレオマーおよびエナンチオマーを含めて)、互変異性体および同位体標識化合物を意味する。本発明の化合物の水和物および溶媒和物は、化合物が各々水または溶媒と会合している本発明の組成物と考えられる。化合物はまた、1種または複数の結晶状態で、すなわち、共結晶、多形として存在することもあり、またはアモルファス固体として存在することがある。全てのこのような形態は、本発明および特許請求の範囲に包含されている。
【0022】
一実施形態において、化合物は、式(A)の化合物である。
【0023】
別の実施形態において、Rは、−OHである。
【0024】
さらなる実施形態において、Rは、−OHである。
【0025】
さらに別の実施形態において、Rは、−O−CHCHOHである。
【0026】
本発明の化合物は、不斉中心またはキラル中心を含有し、したがって、異なる立体異性体の形態で存在する。他に特定しない限り、本発明の化合物の全ての立体異性体の形態、およびラセミ混合物を含めたその混合物は、本発明の一部を形成することが意図される。さらに、本発明は、全ての幾何異性体および位置異性体を包含する。例えば、本発明の化合物が二重結合または縮合環を組み込む場合、cis−およびtrans−形態の両方、ならびに混合物は、本発明の範囲内に包含される。
【0027】
ジアステレオマー混合物は、当業者には周知の方法(クロマトグラフィーおよび/または分別結晶、蒸留、昇華など)によるそれらの物理的化学的差異に基づいて、それらの個々のジアステレオマーに分離することができる。エナンチオマーは、適当な光学活性な化合物(例えば、キラルアルコールまたはモーシェル酸クロリドなどのキラル補助基)との反応によってエナンチオマー混合物をジアステレオマー混合物に変換し、ジアステレオマーを分離し、個々のジアステレオマーを相当する純粋なエナンチオマーに変換(例えば、加水分解)することによって分離することができる。また、本発明の化合物のいくつかは、アトロプ異性体(例えば、置換ビアリール)である場合があり、本発明の一部と考えられる。エナンチオマーはまた、キラルHPLC(高速液体クロマトグラフィー)カラムを使用することによって分離することができる。
【0028】
本発明の中間体および化合物は異なる互変異性型で存在する場合があることもまた考えられ、全てのこのような形態は本発明の範囲内に包含される。「互変異性体」または「互変異性型」という用語は、低いエネルギー障壁によって相互変換可能な異なるエネルギーの構造異性体を意味する。例えば、プロトン互変異性体(プロトン性互変異性体としてもまた既知である)には、プロトンの移動による相互変換(ケト−エノールおよびイミン−エナミン異性化など)が含まれる。プロトン互変異性体の具体例は、プロトンが2個の環窒素の間を移動するイミダゾール成分である。原子価互変異性体には、結合電子のいくつかの再編成による相互変換が含まれる。いくつかの中間体(および/または中間体の混合物)の閉環形態と開環形態との間の平衡状態は、当業者に既知のアルドースが関与する変旋光の過程を連想させる。
【0029】
本発明はまた、1個または複数の原子が、天然に通常見出される原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられているという事実を別にすれば、本明細書において記載したものと同一の同位体標識された化合物を包含する。本発明の化合物中に組み込むことができる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素、および塩素の同位体(各々、H、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、123I、125Iおよび36Clなど)が含まれる。
【0030】
特定の同位体標識された本発明の化合物(例えば、Hおよび14Cで標識されたもの)は、化合物および/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。それらの調製の容易さおよび検出能のために、トリチウム標識(すなわち、H)および炭素−14(すなわち、14C)同位体が特に好ましい。さらに、重水素(すなわち、H)などのより重い同位体による置換によって、より高い代謝安定性からもたらされる特定の治療上の利点(例えば、インビボ半減期の増加または投与必要量の減少)が可能となることがあり、したがって、ある状況において好ましいことがある。15O、13N、11C、および18Fなどのポジトロン放出同位体は、基質占有率を調査するためのポジトロン放出断層撮影(PET)研究のために有用である。同位体標識された本発明の化合物は一般に、同位体標識されていない試薬を同位体標識された試薬で置換することによって、スキームおよび/または本明細書における下記の実施例において開示されているものと実質的に類似の手順に従うことによって調製することができる。
【0031】
本発明の化合物のいくつかは、薬学的に許容できるカチオンまたはアニオンと共に塩を形成し得る。全てのこのような塩は本発明の範囲内であり、これらは必要に応じて、水性、非水性または部分的水性媒体中で、通常化学量論比の酸性および塩基性実体を合わせることによるなど、従来の方法によって調製することができる。塩は、必要に応じて、濾過によって、非溶媒による沈殿、それに続く濾過によって、溶媒の蒸発によって、または水溶液の場合は凍結乾燥によって回収する。化合物は、エタノール、ヘキサンまたは水/エタノールの混合物などの適当な溶媒(複数可)における溶解によるなど、当技術分野において公知の手順によって結晶形態で得られる。
【0032】
「薬学的に許容できる塩」は、化合物の実際の構造によって、「薬学的に許容できる酸付加塩」または「薬学的に許容できる塩基性付加塩」を意味することを意図する。「薬学的に許容できる酸付加塩」は、本発明の化合物の任意の無毒性の有機酸もしくは無機酸の付加塩、またはその中間体のいずれかに適用することを意図する。適切な塩を形成する例示的な無機酸には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、およびリン酸、ならびに酸性金属塩(オルトリン酸一水素ナトリウム、および硫酸水素カリウムなど)が含まれる。適切な塩を形成する例示的な有機酸には、モノ、ジ、およびトリカルボン酸が含まれる。このような酸の例示は、例えば、酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ−安息香酸、フェニル酢酸、ケイ皮酸、サリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、およびスルホン酸(メタンスルホン酸および2−ヒドロキシエタンスルホン酸など)である。このような塩は、水和形態または実質的に無水形態で存在することができる。一般に、これらの化合物の酸付加塩は、水および様々な親水性有機溶媒中で可溶性である。「薬学的に許容できる塩基性付加塩」は、本発明の化合物の任意の無毒性の有機もしくは無機の塩基性付加塩、またはその中間体のいずれかに適用することを意図する。適切な塩を形成する例示的な塩基には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物(水酸化ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、もしくはバリウムなど);アンモニア、および脂肪族、脂環式、または芳香族有機アミン(メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、およびピコリンなど)が含まれる。
【0033】
本発明の化合物は、特に本明細書に含有されている記載に照らして、化学技術分野において周知のものと類似のプロセスを含む合成経路によって合成することができる。出発物質は一般に、Aldrich Chemicals(Milwaukee、WI)などの商業的供給源から入手可能であり、または当業者には周知の方法(例えば、Louis F.FieserおよびMary Fieser、Reagents for Organic Synthesis、第1〜19巻、Wiley、New York(1967〜1999編)、もしくはBeilsteins Handbuch der organischen Chemie、4版、Aufl.編、Springer−Verlag、Berlin(追補を含めて)(Beilsteinオンラインデータベースによっても入手可能である)に一般に記載されている方法によって調製する)を使用して容易に調製される。
【0034】
例示の目的のために、下記に示す反応スキームは、本発明の化合物および重要中間体を合成するための可能な経路を提供する。個々の反応段階のより詳細な記載については、下記の実施例の項を参照されたい。他の合成経路を使用して、本発明の化合物を合成し得ることを当業者であれば理解するであろう。特定の出発物質および試薬をスキームにおいて示し、下記で議論するが、他の出発物質および試薬を容易に代用して、種々の誘導体および/または反応条件を提供することができる。さらに、下記の方法によって調製した化合物の多くは、当業者には周知の従来の化学作用を使用してこの開示に照らしさらに修飾することができる。
【0035】
本発明の化合物の調製において、中間体の遠隔官能基の保護が必要なことがある。このような保護の必要性は、遠隔官能基の性質および調製法の条件によって変化するであろう。「ヒドロキシ保護基」は、ヒドロキシ官能基を遮断または保護するヒドロキシ基の置換基を意味する。適切なヒドロキシル保護基(O−Pg)には、例えば、アリル、アセチル(Ac)、シリル(トリメチルシリル(TMS)またはtert−ブチルジメチルシリル(TBS)など)、ベンジル(Bn)、パラ−メトキシベンジル(PMB)、トリチル(Tr)、パラ−ブロモベンゾイル、パラ−ニトロベンゾイル、ベンゾイル(Bz)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、ベンジルオキシメチル(BOM)、p−メトキシベンジルオキシメチル(PMBM)、[(3,4−ジメトキシベンジル)オキシ]メチル(DMBM)、メトキシメチル(MOM)、2−メトキシエトキシメチル(MEM)、メチルチオメチル(MTM)、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEM)など(1,3−ジオールの保護のためにはベンジリデン)が含まれる。このような保護の必要性は、当業者に容易に決定される。保護基およびそれらの使用の概要については、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、New York、1991を参照されたい。
【0036】
スキーム1は、本発明の化合物を提供するために使用することができる一般手順を略述する。
【0037】
【化2】

【0038】
アリル2,3,4−トリ−O−ベンジル−D−グルコピラノシド(I−a、Pgはベンジル基である)は、Shinya Hanashimaら、Bioorganic & Medicinal Chemistry、9、367(2001);Patricia A.Gentら、Journal of the Chemical Society、Perkin 1、1835(1974);Hans Peter Wessel、Journal of Carbohydrate Chemistry、7、263、(1988);またはYoko Yuasaら、Organic Process Research & Development、8、405〜407(2004)によって記載された手順によって調製することができる。スキーム1のステップ1において、ヒドロキシメチレン基は、スワーン酸化、続いてアルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)の存在下でホルムアルデヒドによる処理によって、グリコシド上に導入することができる。これはアルドール−カニッツァロ反応と称される。スワーン酸化は、Kanji OmuraおよびDaniel SwernによってTetrahedron、34、1651(1978)に記載されている。当業者には既知のこの方法の変更形態もまた使用し得る。例えば、Ozanne,A.ら、Organic Letters、5、2903(2003)によって記載された安定化した2−ヨードキシ安息香酸などの他の酸化剤、および当業者が既知の他の酸化剤もまた使用することができる。アルドールカニッツァロの連続した処理は、Robert Schaffer、Journal of The American Chemical Society、81、5452(1959)およびAmigues,E.J.ら、Tetrahedron、63、10042(2007)に記載されている。
【0039】
スキーム1のステップ2において、保護基(Pg)は、中間体(I−b)を所望の特定の保護基のための適当な試薬および手順で処理することによって付加することができる。例えば、p−メトキシベンジル(PMB)基は、水素化ナトリウム、水素化カリウム、カリウムtert−ブトキシドの存在下で、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンまたはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などの溶媒中、中間体(I−b)をp−メトキシベンジルブロミドまたはp−メトキシベンジルクロリドで処理することによって導入することができる。触媒量の酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、またはカンファースルホン酸)の存在下で、ジクロロメタン、ヘプタンまたはヘキサンなどの溶媒中、パラ−メトキシベンジルトリクロロアセトイミデートを伴う条件もまた使用することができる。ベンジル(Bn)基は、水素化ナトリウム、水素化カリウム、カリウムtert−ブトキシドの存在下で、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンまたはN,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒中、中間体(I−b)を臭化ベンジルまたは塩化ベンジルで処理することによって導入することができる。触媒量の酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、またはカンファースルホン酸)の存在下で、ジクロロメタン、ヘプタンまたはヘキサンなどの溶媒中、ベンジルトリクロロアセトイミデートを伴う条件もまた使用することができる。
【0040】
スキーム1のステップ3において、アリル保護基を除去して(例えば、メタノール中の塩化パラジウムによる処理によって、ジクロロメタンなどの共溶媒もまた使用し得る、当業者には既知の他の条件もまた使用することができる、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、New York、1991を参照されたい)、ラクトール(I−d)が形成される。
【0041】
スキーム1のステップ4において、次いで保護されていないヒドロキシル基のオキソ基への酸化(例えば、スワーン酸化)によって、ラクトン(I−e)が形成される。
【0042】
スキーム1のステップ5において、ラクトン(I−e)は、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩と反応して、相当するワインレブアミドが形成され、これは閉環/開環形態(I−f/I−g)の平衡状態で存在し得る。「ワインレブアミド」(I−g)は、当業者には周知の手順を使用して作製することができる。Nahm,S.およびS.M.Weinreb、Tetrahedron Letters、22(39)、3815〜1818(1981)を参照されたい。例えば、中間体(I−f/I−g)は、市販のN,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩および活性化剤(例えば、トリメチルアルミニウム)から調製することができる。
【0043】
スキーム1のステップ6において、アリールベンジル基(Ar、RはOEt、OTBSまたはクレームされたRへの任意の適切に保護された前駆体である)は、約−78℃〜約20℃の範囲の温度でテトラヒドロフラン(THF)中、所望の有機金属試薬(例えば、有機リチウム化合物(ArLi)または有機マグネシウム化合物(ArMgX))を使用して導入され、続いて(プロトン性条件に静置すると)相当するラクトール(I−i)に加水分解され、これは相当するケトン(I−h)と平衡状態で存在し得る。(A)および(B)に見出される架橋ケタールモチーフは、用いる保護基に適当な試薬を使用して保護基(Pg)を除去することによって調製することができる。例えば、PMB保護基は、アニソールおよびジクロロメタン(DCM)の存在下で約0℃〜約23℃(室温)にてトリフルオロ酢酸で処理することによって除去することができる。次いで、残った保護基(Pg)は、特定の保護基に適当な化学作用を使用して除去することができる。例えば、ベンジル保護基は、パラジウム(Pd黒)の存在下で、プロトン性溶媒(例えば、エタノール/THF)中、約室温にてギ酸で処理することによって除去され、化合物(S−A)および(S−B)を生成し得る。Rによって、このように得られた化合物は、次いで、当業者に公知である周知の保護基および官能基処理順序を使用して、本発明から構造(A)および(B)の他の化合物に容易に官能化することができる。さらなる詳細については、実施例の項を参照されたい。
【0044】
本発明の化合物または中間体は、任意の適切な方法を使用して共結晶として調製し得る。このような共結晶を調製するための代表的なスキームを、スキーム2に記載する。
【0045】
【化3】

【0046】
スキーム2(Meはメチルであり、Etはエチルである)のステップ1において、1−(5−ブロモ−2−クロロベンジル)−4−エトキシベンゼンを3:1のトルエン:テトラヒドロフランに溶解し、続いて得られた溶液を−70℃未満に冷却する。この溶液に、ヘキシルリチウムを添加し、その間に反応物を−65℃以下に維持し、続いて1時間撹拌する。(3R,4S,5R,6R)−3,4,5−トリス(トリメチルシリルオキシ)−6−((トリメチルシリルオキシ)メチル)−テトラヒドロピラン−2−オン(II−a)をトルエンに溶解し、得られた溶液を−15℃に冷却する。次いで、この溶液を−70℃のアリールリチウム溶液に添加し、続いて1時間撹拌する。次いで、メタンスルホン酸のメタノール溶液を添加し、続いて室温に温め、16〜24時間撹拌する。α−アノマーのレベルが3%以下であるとき、反応は完了していると見なす。次いで、5Mの水酸化ナトリウム水溶液を添加することによって反応物を塩基性化する。得られた塩を濾過して除去し、続いて粗生成物溶液を濃縮する。2−メチルテトラヒドロフランを共溶媒として添加し、有機相を水で2度抽出する。次いで、有機相をトルエン中4容量に濃縮する。次いで、この濃縮物を5:1のヘプタン:トルエン溶液に添加し、沈殿物を形成させる。固体を集め、真空下で乾燥させ、固体を得る。
【0047】
スキーム2のステップ2において、塩化メチレン中の(II−b)にイミダゾールを添加し、続いて0℃に冷却し、次いでトリメチルシリルクロリドを添加し、ペルシリル化生成物を得る。反応物を室温に温め、水を添加することによってクエンチし、有機相を水で洗浄する。(II−c)のこの粗塩化メチレン溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで粗製物を次のステップにかける。
【0048】
スキーム2のステップ3において、塩化メチレン中の(II−c)の粗溶液を低容量に濃縮し、次いで溶媒をメタノールに交換する。(II−c)のメタノール溶液を0℃に冷却し、次いで1mol%の炭酸カリウムをメタノール中の溶液として添加し、続いて5時間撹拌する。次いで、メタノール中の1mol%酢酸を添加することによって反応物をクエンチし、続いて室温に温め、溶媒を酢酸エチルに交換し、次いで少量の無機固体の濾過を行う。(II−d)の粗酢酸エチル溶液を、次のステップに直接かける。
【0049】
スキーム2のステップ4において、(II−d)の粗溶液を低容量に濃縮し、次いで塩化メチレンおよびジメチルスルホキシドで希釈する。トリエチルアミンを添加し、続いて10℃に冷却し、次いで三酸化硫黄ピリジン錯体を10分間隔にて3分割で固体として添加する。反応物を10℃でさらに3時間撹拌し、その後水でクエンチし、室温に温める。相を分離し、続いて塩化メチレン層を塩化アンモニウム水溶液で洗浄する。(II−e)の粗塩化メチレン溶液を、次のステップに直接かける。
【0050】
スキーム2のステップ5において、(II−e)の粗溶液を低容量に濃縮し、次いで溶媒をエタノールに交換する。30当量のホルムアルデヒド水溶液を添加し、続いて55℃に温める。2当量の三塩基性リン酸カリウムの水溶液を添加し、続いて55℃で24時間撹拌する。次いで、反応温度を70℃にさらに12時間上げる。反応物を室温に冷却し、tert−ブチルメチルエーテルおよびブラインで希釈する。相を分離し、続いて有機相の溶媒を酢酸エチルへ交換する。酢酸エチル相をブラインで洗浄し、低容量に濃縮する。次いで、粗濃縮物を、5%メタノール、95%トルエンで溶出するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。生成物含有画分を合わせ、低容量に濃縮する。メタノールを添加し、続いて沈殿が起こるまで撹拌する。懸濁液を冷却し、固体を集め、ヘプタンですすぎ、続いて乾燥させる。生成物(II−f)を固体として単離する。
【0051】
スキーム2のステップ6において、化合物(II−f)を5容量の塩化メチレンに溶解し、続いて1mol%SiliaBond(登録商標)トシル酸を添加し、18時間室温で撹拌する。酸触媒を濾過して除去し、(II−g)の塩化メチレン溶液を、次のステップである共結晶化手順に直接かける。
【0052】
スキーム2のステップ7において、(II−g)の塩化メチレン溶液を濃縮し、次いで溶媒を2−プロパノールに交換する。水を添加し、続いて55℃に温める。L−ピログルタミン酸の水溶液を添加し、続いて得られた溶液を室温に冷却する。次いで、溶液に種晶添加し、18時間造粒する。冷却後、固体を集め、ヘプタンですすぎ、続いて乾燥させる。生成物(II−h)を固体として単離する。
【0053】
化合物(S1−A)のための代替合成経路をスキーム3において示し、下記に記載する。
【0054】
【化4】

【0055】
(III−a)(Rは、アルキルまたはフルオロ置換アルキルである(酸素原子に隣接した炭素を除いて))の合成は、スキーム2のステップ1に記載されているのと同様の方法で調製することができる。スキーム3のステップ1において、第一級ヒドロキシル基は、適当な保護基によって選択的に保護される。例えば、トリチル基(Pg=Tr)は、ピリジンなどの塩基の存在下で、トルエン、テトラヒドロフランまたはジクロロメタンなどの溶媒中、摂氏約0度〜約室温の範囲の温度で、中間体(III−a)をクロロトリフェニルメタンで処理することによって導入することができる。このような保護基および実験条件のさらなる例は当業者に既知であり、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、New York、1991に見出すことができる。
【0056】
スキーム3のステップ2において、第二級ヒドロキシル基は、適当な保護基によって保護することができる。例えば、ベンジル基(PgはBnである)は、水素化ナトリウム、水素化カリウム、カリウムtert−ブトキシドの存在下で、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンまたはN,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒中、摂氏約0度〜摂氏約80度の範囲の温度にて、中間体(III−b)を臭化ベンジルまたは塩化ベンジルで処理することによって導入することができる。アセチルまたはベンゾイル基(Pg=AcまたはBzである)は、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンまたは4−(ジメチルアミノ)ピリジンなどの塩基の存在下で、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンまたはジクロロメタンなどの溶媒中、摂氏約0度〜摂氏約80度の範囲の温度にて、中間体(III−b)を塩化アセチル、臭化アセチルまたは無水酢酸または塩化ベンゾイルまたは無水安息香酸で処理することによって導入し得る。
【0057】
スキーム3のステップ3において、第一級ヒドロキシル基が脱保護され、中間体(III−d)がもたらされる。PgがTrであるとき、摂氏約−20度〜約室温の範囲の温度にて、パラ−トルエンスルホン酸など酸の存在下、メタノールなどのアルコール性溶媒中で中間体(III−c)を処理し、中間体(III−d)が提供される。クロロホルムのような共溶媒を使用し得る。
【0058】
スキーム3のステップ4において、ヒドロキシメチレン基は、スキーム1(ステップ1)およびスキーム2(ステップ4および5)に既に記載されているものと同様の方法によって導入される。エタノールなどの溶媒中、約室温〜摂氏約70度の範囲の温度にて、アルカリ金属アルコキシドの存在下で、パラホルムアルデヒドのような他のホルムアルデヒド源をまた、このステップにおいて使用することができる。PgがBnであるとき、このステップは、中間体(III−e)を提供し、PgがAcまたはBzであるとき、このステップは、中間体(III−f)を提供する。
【0059】
スキーム3のステップ5において、中間体(III−e)を、ジクロロメタンなどの溶媒中、摂氏約−10度〜約室温の範囲の温度にて、トリフルオロ酢酸または酸性樹脂などの酸で処理して、中間体(III−g)が生成される。
【0060】
スキーム3のステップ6において、次いで、残った保護基(Pg)を、特定の保護基に適当な化学作用を使用して除去することができる。例えば、ベンジル保護基は、パラジウム(Pd黒)の存在下で、プロトン性溶媒(例えば、エタノール/THF)中、約室温にてギ酸で処理することによって除去され、化合物(S1−A)を生成し得る。
【0061】
スキーム3のステップ7において、中間体(III−f)を、ジクロロメタンなどの溶媒中、摂氏約−10度〜約室温の範囲の温度にて、トリフルオロ酢酸または酸性樹脂などの酸で処理して、生成物(S1−A)が生成される。
【0062】
によって、このように得られた化合物は、次いで、当業者に公知である周知の保護基および官能基処理順序を使用して、構造(A)の本発明から他の化合物に容易に官能化することができる。さらなる詳細については、実施例の項を参照されたい。
【0063】
生成物(A)を合成するための別の代替スキームを、スキーム4に示し、下記に記載する。
【0064】
【化5】

【0065】
スキーム4のステップ1において、中間体(III−a)を、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下で、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの溶媒中、摂氏約−20度〜約室温の範囲の温度にて、適当なアリールスルホニルクロリドRSOClまたはアリールスルホン酸無水物RS(O)OS(O)(式中、Rは、アリールスルホニルクロリド、4−メチル−ベンゼンスルホニルクロリド、4−ニトロ−ベンゼンスルホニルクロリド、4−フルオロ−ベンゼンスルホニルクロリド、2,6−ジクロロ−ベンゼンスルホニルクロリド、4−フルオロ−2−メチル−ベンゼンスルホニルクロリド、および2,4,6−トリクロロ−ベンゼンスルホニルクロリドにおいて、およびアリールスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸無水物において見出されるものなどの、置換されていてもよいアリール基である)で処理する。臭化亜鉛(II)などのいくつかのルイス酸を、添加物として使用してもよい。
【0066】
スキーム4のステップ2において、中間体(IV−a)をコーンブルム型酸化(Kornblum,N.ら、Journal of The American Chemical Society、81、4113(1959)を参照されたい)に供して、相当する水和物および/またはヘミアセタール形態と平衡状態で存在し得る相当するアルデヒドを生成する。例えば、ピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、4−(ジメチルアミノ)ピリジンなどの塩基の存在下で、ジメチルスルホキシドなどの溶媒中、約室温〜摂氏約150度の範囲の温度で、中間体(IV−a)を処理する。次いで、生成されたアルデヒド中間体を、ステップ1(スキーム1)およびステップ5(スキーム2)について記載したアルドール/カニッツァロ条件に供して、中間体(IV−b)を生成する。
【0067】
スキーム4のステップ3において、中間体(IV−b)を、ジクロロメタンなどの溶媒中、摂氏約−10度〜約室温の範囲の温度にて、トリフルオロ酢酸または酸性樹脂などの酸で処理して、(S1−A)が生成される。Rによって、このように得られた化合物は、次いで、当業者に公知である周知の保護基および官能基処理順序を使用して、本発明から構造(A)の他のクレームされた化合物に容易に官能化することができる。さらなる詳細については、実施例の項を参照されたい。
【0068】
本発明の化合物(A)および(B)はまた、スキーム5に記載されている方法によってアクセスすることができる。
【0069】
【化6】

【0070】
中間体(V−i)を提供するスキーム5のステップ1において、有機金属の添加ステップを、(V−a)(Pgは、ヒドロキシル基のための適切な保護基である)に由来する有機金属試薬を使用して、スキーム1、ステップ6に記載したものと同様の方法で行う。例えば、Pgは、tert−ブチルジメチルシリル基(TBS)とすることができる(例えば{4−[(5−ブロモ−2−クロロ−フェニル)−メチル]−フェノキシ}−tert−ブチル−ジメチル−シランの調製については、US2007/0054867を参照されたい)。
【0071】
スキーム5のステップ2において、Pg=PMBのとき、中間体(V−i)を、アニソールの存在下で、ジクロロメタンなどの溶媒中、摂氏約−10度〜約室温の範囲の温度で、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸または酸性樹脂などの酸で処理して、中間体(V−j)を生成する。
【0072】
スキーム5のステップ3において、保護基(Pg)および(Pg)を除去して、(V−k)を提供することができる。典型的には、(Pg)はTBSであり、PgはBnである。この状況において、(V−j)を、1)テトラヒドロフランまたは2−メチルテトラヒドロフランのような溶媒中、摂氏0度〜摂氏約40度の範囲の温度にて、フッ化テトラブチルアンモニウム、および2)パラジウム(Pd黒)の存在下で、プロトン性溶媒(例えば、エタノール/THF)中、約室温にてギ酸によって連続的に処理することによって、保護基を除去する。この連続した処理において、2つの反応の順序は交換可能である。
【0073】
スキーム5のステップ4において、中間体(V−k)を、例えば、古典的条件下で一般に好まれるアルキル化剤で処理し、フェノール基を選択的にアルキル化することができる。さらに、このように得られた化合物は、次いで、当業者に公知である周知の保護基および官能基処理順序を使用して、本発明から構造(A)および(B)の他のクレームされた化合物に容易に官能化することができる。さらなる詳細については実施例の項を参照されたい。
【0074】
スキーム1〜5において上記の化学反応は、中間体(V−k)にアクセスする異なる方法を表すことを当業者であればまた理解するであろう。
【0075】
本発明の化合物は、ナトリウム−グルコース輸送体(特に、SGLT2)の阻害によって調節される疾患、状態および/または障害を治療するのに有用である。したがって、本発明の別の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物、および薬学的に許容できる添加剤、賦形剤または担体を含む医薬組成物である。本発明の化合物(組成物およびそこで使用されている方法を含めて)はまた、本明細書に記載されている治療用途のための医薬の製造において使用することができる。
【0076】
典型的な製剤は、本発明の化合物および担体、賦形剤または添加剤を混合することによって調製する。適切な担体、賦形剤および添加剤は当業者には周知であり、炭水化物、ワックス、水溶性および/または膨潤性ポリマー、親水性または疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水などの材料が含まれる。使用される特定の担体、賦形剤または添加剤は、本発明の化合物を適用する手段および目的によって決まる。溶媒は一般に、哺乳動物に投与されても安全であると当業者に認められる(GRAS)溶媒に基づいて選択される。一般に、安全な溶媒は、水、および水中で可溶性または混和性の他の無毒性溶媒などの無毒性水性溶媒である。適切な水性溶媒には、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG300)など、およびこれらの混合物が含まれる。製剤にはまた、1種または複数の緩衝液、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、抗酸化剤、不透明化剤、流動促進剤、加工助剤、着色剤、甘味剤、香料剤、香味剤、および薬物(すなわち、本発明の化合物またはその医薬組成物)の洗練された外観をもたらし、または医薬品(すなわち、医薬)の製造に役立つ他の既知の添加物が含まれることがある。
【0077】
製剤は、従来の溶解および混合手順を使用して調製し得る。例えば、原薬(すなわち、本発明の化合物、または化合物の安定化した形態(例えば、シクロデキストリン誘導体または他の既知の複合体形成剤との複合体))を、上記の添加剤の1種または複数の存在下で適切な溶媒に溶解する。本発明の化合物は典型的には、医薬品剤形に製剤されて、容易に管理可能な薬物の投与量を提供し、洗練された容易に取り扱うことができる製品を患者に与える。
【0078】
医薬組成物にはまた、本発明の化合物の溶媒和物および水和物が含まれる。「溶媒和物」という用語は、1個または複数の溶媒分子を有する本発明の分子複合体(薬学的に許容できるその塩を含めて)を意味する。このような溶媒分子は、製薬技術において通常使用されるものであり、レシピエントにとって無害であることが知られている(例えば、水、エタノール、エチレングリコールなど)。「水和物」という用語は、溶媒分子が水である複合体を意味する。溶媒和物および/または水和物は好ましくは、結晶形態で存在する。他の溶媒を、より望ましい溶媒和物の調製における中間体溶媒和物として使用してもよい(メタノール、メチルt−ブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸メチル、(S)−プロピレングリコール、(R)−プロピレングリコール、1,4−ブチン−ジオールなど)。結晶形態はまた、他の無害な小分子(L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−ピログルタミン酸など)との複合体として、共結晶、または溶媒和物もしくは水和物の共結晶性材料としても存在し得る。溶媒和物、水和物および共結晶化合物は、参照により本明細書中に組み込まれているPCT国際公開第WO08/002824号に記載されている手順、または当業者には周知の他の手順を使用して調製することができる。
【0079】
適用するための医薬組成物(または製剤)は、薬物を投与するために使用される方法によって種々の方法でパッケージし得る。一般に、分配するための物品には、その中に適当な形態の医薬製剤を入れた容器が含まれる。適切な容器は当業者には周知であり、ボトル(プラスチックおよびガラス)、小袋、アンプル、ビニール袋、金属製円筒などの材料が含まれる。容器にはまた、パッケージの内容物への不注意による接触を防止するための誤使用防止アセンブリが含まれることがある。さらに、容器には、容器の内容について記載したラベルがその上に貼ってある。ラベルにはまた、適当な警告が含まれることがある。
【0080】
本発明は、動物においてナトリウム−グルコース輸送体の阻害によって調節される疾患、状態および/または障害を治療する方法であって、このような治療を必要としている動物に、治療有効量の本発明の化合物、または有効量の本発明の化合物を含む医薬組成物、および薬学的に許容できる添加剤、賦形剤、または担体を投与するステップを含む、方法をさらに提供する。この方法は、SGLT2の阻害が有益である疾患、状態および/または障害を治療するのに特に有用である。
【0081】
本発明の一態様は、肥満症、および肥満症に関連する障害(例えば、過体重、体重増加、または体重維持)の治療である。
【0082】
肥満症および過体重は一般に肥満度指数(BMI)によって定義され、これは総体脂肪と相関し、疾患の相対危険度を推定する。BMIは、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割ることによって計算する(kg/m)。過体重は典型的には、25〜29.9kg/mのBMIとして定義され、肥満症は典型的には、30kg/mのBMIとして定義される。例えば、National Heart,Lung,and Blood Institute、Clinical Guidelines on the Identification,Evaluation,and Treatment of Overweight and Obesity in Adults、The Evidence Report、Washington,DC:U.S. Department of Health and Human Services、NIH出版番号98−4083(1998)を参照されたい。
【0083】
本発明の別の態様は、糖尿病、または糖尿病に関連する障害(1型(インスリン依存性糖尿病、「IDDM」とも称される)および2型(非インスリン依存性糖尿病、「NIDDM」とも称される)糖尿病、耐糖能異常、創傷治癒の遅延、高インスリン血症、脂肪酸の血中濃度の上昇、高脂血症、高トリグリセリド血症、X症候群、高密度リポタンパク質レベルの上昇、インスリン抵抗性、高血糖症、ならびに糖尿病性合併症(アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、腎症、高血圧症、ニューロパシー、および網膜症など)を含めた)の治療、または進行もしくは発症を遅延させることである。
【0084】
本発明のまた別の態様は、代謝症候群などの肥満症の共存疾患の治療である。代謝症候群には、異脂肪血症、高血圧症、インスリン抵抗性、糖尿病(例えば、2型糖尿病)、冠動脈疾患および心不全などの疾患、状態または障害が含まれる。代謝症候群についてのさらなる詳細な情報については、例えば、Zimmet,P.Z.ら、「The Metabolic Syndrome:Perhaps an Etiologic Mystery but Far From a Myth−Where Does the International Diabetes Federation Stand?」、Diabetes & Endocrinology、7(2)、(2005)、およびAlberti,K.G.ら、「The Metabolic Syndrome−A New Worldwide Definition」、Lancet、366、1059〜62(2005)を参照されたい。
【0085】
好ましくは、本発明の化合物の投与は、薬物を含有しないビヒクル対照と比較して、血漿レプチン、C反応性タンパク質(CRP)および/またはコレステロールの減少などの、少なくとも1つの心血管疾患の危険因子の統計的に有意な(p<0.05)低下をもたらす。本発明の化合物の投与はまた、血清グルコースレベルの統計的に有意な(p<0.05)低下をもたらし得る。
【0086】
約100kgの体重を有する正常な成人のヒトについて、体重1キログラム当たり約0.001mg〜約10mg、好ましくは約0.01mg/kg〜約5.0mg/kg、さらに好ましくは約0.01mg/kg〜約1mg/kgの範囲の投与量が典型的には十分である。しかし、一般の投与量範囲におけるいくらかの変動は、治療を受ける対象の年齢および体重、意図される投与経路、投与される特定の化合物などに応じて必要とされることがある。特定の患者についての投与量範囲および最適な投与量を決定することは、本開示の利益を有する当業者の能力の十分に範囲内である。本発明の化合物は、それらの形態もまた当業者に周知である持続放出、制御放出、および遅延放出製剤において使用できることもまた留意される。
【0087】
本発明の化合物はまた、本明細書に記載されている疾患、状態および/または障害の治療のために他の医薬品と併せて使用し得る。したがって、他の医薬品と組み合わせて本発明の化合物を投与することを含む治療方法もまた提供される。本発明の化合物と組み合わせて使用し得る適切な医薬品には、抗肥満剤(食欲抑制剤を含めて)、抗糖尿病剤、抗高血糖剤、脂質低下剤、抗炎症剤および降圧剤が含まれる。
【0088】
適切な抗肥満剤には、カンナビノイド−1(CB−1)アンタゴニスト(リモナバンなど)、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ−1(11β−HSD1型)阻害剤、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD−1)阻害剤、MCR−4アゴニスト、コレシストキニン−A(CCK−A)アゴニスト、モノアミン再取込み阻害剤(シブトラミンなど)、交感神経様作用剤、βアドレナリン作動性アゴニスト、ドーパミンアゴニスト(ブロモクリプチンなど)、メラニン細胞刺激ホルモン類似体、5HT2cアゴニスト、メラニン凝集ホルモンアンタゴニスト、レプチン(OBタンパク質)、レプチン類似体、レプチンアゴニスト、ガラニンアンタゴニスト、リパーゼ阻害剤(テトラヒドロリプスタチン、すなわち、オルリスタットなど)、食欲抑制剤(ボンベシンアゴニストなど)、ニューロペプチド−Yアンタゴニスト(例えば、NPY Y5アンタゴニスト)、PYY3−36(その類似体を含めて)、甲状腺模倣剤、デヒドロエピアンドロステロンまたはその類似体、グルココルチコイドアゴニストまたはアンタゴニスト、オレキシンアンタゴニスト、グルカゴン様ペプチド−1アゴニスト、繊毛様神経栄養因子(Regeneron Pharmaceuticals、Inc.、Tarrytown、NYおよびProcter & Gamble Company、Cincinnati、OHから入手可能なAxokine(商標)など)、ヒトアグーチ関連タンパク質(AGRP)阻害剤、グレリンアンタゴニスト、ヒスタミン3アンタゴニストまたはインバースアゴニスト、ニューロメジンUアゴニスト、MTP/ApoB阻害剤(例えば、ジルロタピドなどの消化管選択的MTP阻害剤)、オピオイドアンタゴニスト、オレキシンアンタゴニストなどが含まれる。
【0089】
本発明の組合せの態様において使用するための好ましい抗肥満剤には、CB−1アンタゴニスト(例えば、リモナバント、タラナバント、スリナバント、オテナバント、SLV319(CAS番号464213−10−3)およびAVE1625(CAS番号358970−97−5))、消化管選択的MTP阻害剤(例えば、ジルロタピド、ミトラタピドおよびインプリタピド、R56918(CAS番号403987)およびCAS番号913541−47−6)、CCKaアゴニスト(例えば、PCT国際公開第WO2005/116034号または米国特許出願公開第2005−0267100A1号に記載されているN−ベンジル−2−[4−(1H−インドール−3−イルメチル)−5−オキソ−1−フェニル−4,5−ジヒドロ−2,3,6,10b−テトラアザ−ベンゾ[e]アズレン−6−イル]−N−イソプロピル−アセトアミド)、5HT2cアゴニスト(例えば、ロルカセリン)、MCR4アゴニスト(例えば、US6,818,658に記載されている化合物)、リパーゼ阻害剤(例えば、セチリスタット)、PYY3−36(本明細書において使用する場合、「PYY3−36」には、ペグ化PYY3−36、例えば、米国特許出願公開第2006/0178501号に記載されているものなどの類似体が含まれる)、オピオイドアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソン)、オレオイル−エストロン(CAS番号180003−17−2)、オビネピチド(TM30338)、プラムリンチド(Symlin(登録商標))、テソフェンシン(NS2330)、レプチン、リラグルチド、ブロモクリプチン、オルリスタット、エキセナチド(Byetta(登録商標))、AOD−9604(CAS番号221231−10−3)およびシブトラミンが含まれる。好ましくは、本発明の化合物および併用療法は、運動および分別のある食事と併せて投与する。
【0090】
適切な抗糖尿病剤には、アセチル−CoAカルボキシラーゼ−2(ACC−2)阻害剤、ホスホジエステラーゼ(PDE)−10阻害剤、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)1または2阻害剤、スルホニル尿素(例えば、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、ジアビネス、グリベンクラミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリド、グリクラジド、グリペンチド、グリキドン、グリソラミド、トラザミド、およびトルブタミド)、メグリチニド、α−アミラーゼ阻害剤(例えば、テンダミスタット、トレスタチンおよびAL−3688)、α−グルコシドヒドロラーゼ阻害剤(例えば、アカルボース)、α−グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アジポシン、カミグリボース、エミグリタート、ミグリトール、ボグリボース、プラジミシン−Q、およびサルボスタチン)、PPARγアゴニスト(例えば、バラグリタゾン、シグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、イサグリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾンおよびトログリタゾン)、PPARα/γアゴニスト(例えば、CLX−0940、GW−1536、GW−1929、GW−2433、KRP−297、L−796449、LR−90、MK−0767およびSB−219994)、ビグアニド(例えば、メトホルミン)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)アゴニスト(例えば、エキセンディン−3、エキセンディン−4およびリラグルチド)、タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤(例えば、トロズスクエミン、ヒルチオサール抽出物、およびZhang,S.ら、Drug Discovery Today、12(9/10)、373〜381(2007)によって開示されている化合物)、SIRT−1阻害剤(例えば、レセルバトロール)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)阻害剤(例えば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチンおよびサクサグリプチン)、インスリン分泌促進物質、脂肪酸酸化阻害剤、A2アンタゴニスト、c−junアミノ末端キナーゼ(JNK)阻害剤、インスリン、インスリン模倣物、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、VPAC2受容体アゴニストおよびグルコキナーゼ活性化剤が含まれる。好ましい抗糖尿病剤は、メトホルミンおよびDPP−IV阻害剤(例えば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチンおよびサクサグリプチン)である。
【0091】
適切な抗炎症剤には、生殖管/尿路感染症の予防薬および治療薬が含まれる。例示的な薬剤には、クランベリー(すなわち、オオミノツルコケモモ(Vaccinium macrocarpon))およびクランベリー誘導体(クランベリージュース、クランベリー抽出物またはクランベリーのフラボノールなど)が含まれる。クランベリー抽出物には、1種もしくは複数のフラボノール(すなわち、アントシアニンおよびプロアントシアニジン)、または精製されたクランベリーフラボノール化合物(ミリセチン−3−β−キシロピラノシド、ケルセチン−3−β−グルコシド、ケルセチン−3−α−アラビノピラノシド、3’−メトキシケルセチン−3−α−キシロピラノシド、ケルセチン−3−O−(6’’−p−クマロイル)−β−ガラクトシド、ケルセチン−3−O−(6’’−ベンゾイル)−β−ガラクトシド、および/もしくはケルセチン−3−α−アラビノフラノシドを含めた)が含まれ得る。
【0092】
本発明の実施形態を、下記の実施例によってさらに例示する。しかし、他のその変形形態が当業者には既知であり、または本開示に照らし合わせて明らかであるため、本発明の実施形態は、これらの実施例の特定の詳細に限定されないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0093】
他に特定しない限り、出発物質は一般に、Aldrich Chemicals Co.(Milwaukee、WI)、Lancaster Synthesis、Inc.(Windham、NH)、Acros Organics(Fairlawn、NJ)、Maybridge Chemical Company、Ltd.(Cornwall、英国)、Tyger Scientific(Princeton、NJ)、AstraZeneca Pharmaceuticals(London、英国)、およびAccela ChemBio(San Diego、CA)などの商業的供給源から入手可能である。
【0094】
全般的な実験手順
NMRスペクトルは、Varian Unity(商標)400(Varian Inc.、Palo Alto、CAから入手可能)で室温にてプロトンについて400MHzで記録した。化学シフトは、内部参照として残留溶媒に対する百万分率(δ)で表す。ピーク形状は下記のように表す。s、一重線;d、二重線;dd、二重線の二重線;t、三重線;q、四重線;m、多重線;bsまたはbr.s.、幅広い一重線;2s、2本の一重線;br.d.、幅広い二重線。エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(ES)は、Waters(商標)ZMD機器(キャリアガス:窒素;溶媒A:水/0.01%ギ酸、溶媒B:アセトニトリル/0.005%ギ酸;Waters Corp.、Milford、MAから入手可能)で得た。高分解能質量スペクトル(HRMS)は、Agilent(商標)Model6210または6220A(飛行時間型)で得た。単一の塩素または単一の臭素を含有するイオンの強度が記載されている場合、予想される強度比が観察された(35Cl/37Cl含有イオンについて概ね3:1、および79Br/81Br含有イオンについて1:1)。より低い質量のイオンのみの強度を示す。場合によっては、代表的なH NMRピークのみを示す。
【0095】
カラムクロマトグラフィーは、ガラス製カラムまたはFlash40Biotage(商標)カラム(ISC、Inc.、Shelton、CT)中の、Baker(商標)シリカゲル(40μm;J.T.Baker、Phillipsburg、NJ)またはSilica Gel50(EM Sciences(商標)、Gibbstown、NJ)で行った。MPLC(中圧液体クロマトグラフィー)は、Biotage(商標)SP精製システムまたはTeledyne(商標)Isco(商標)からのCombiflash(登録商標)Companion(登録商標)を使用して行った。低窒素圧力下でBiotage(商標)SNAPカートリッジKPsilまたはRedisep Rfシリカ(Teledyne(商標)Isco(商標)から)を使用した。HPLC(高速液体クロマトグラフィー)は、Shimadzu(商標)10A LC−UVまたはAgilent(商標)1100分取HPLCを使用して行った。特に断りのない限り、全ての反応は、無水溶媒中窒素ガスの不活性雰囲気下で行った。また、特に断りのない限り、全ての反応は、室温で(約23℃)行った。TLC(薄層クロマトグラフィー)を行うとき、Rは、化合物が移動する距離を溶離液が移動する距離で割った比として定義する。R(保持時間)。
【0096】
出発物質
一般に、下記の出発物質のいずれかは、米国特許出願公開第2008/0132563号のスキーム7もしくは8、または代替的には、米国特許出願公開第2007/0259821号のスキーム2、3もしくは8に記載されている手順を使用して調製することができる。さらに具体的には、下記の実施例において使用される下記の出発物質は、相当する参考文献に記載されている手順を使用して調製することができ、または相当する販売業者から購入することができる。
【0097】
4−(5−ブロモ−2−クロロ−ベンジル)−フェノールは、EP1828216B1の実施例IIIに記載されている手順によって調製することができる。
【0098】
4−ブロモ−1−クロロ−2−(4−エトキシ−ベンジル)−ベンゼンおよび(5−ブロモ−2−クロロフェニル)(4−エトキシフェニル)−メタノンは、Shanghai Haoyuan Chemexpress Co.、Ltd.、Shanghai、中華人民共和国から購入し得る。
【0099】
下記の出発物質は、下記のように調製した。
【0100】
4−(5−ブロモ−2−クロロ−ベンジル)−フェノール
窒素下で摂氏0度に冷却した4−ブロモ−1−クロロ−2−(4−エトキシ−ベンジル)−ベンゼン(5.0g、15.35mmol)のジクロロメタン(20.0mL)溶液に、30分に亘り三臭化ホウ素のジクロロメタン(17.0mL、17.0mmol)溶液(1M)を滴下で添加した。添加が完了した後、反応物を室温に一晩(約16時間)温めた。反応物を摂氏0度に冷却し、1Nの塩酸の水溶液でクエンチした。このように得られた混合物を30分間撹拌し、ジクロロメタンを使用して抽出した。有機層を分離し、水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。反応物を、ISCO自動化クロマトグラフィーユニット(120gシリカゲルカラム)を使用し、かつヘプタン中の0〜100%酢酸エチルの勾配で溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。3.53gの所望の生成物が得られた(77%収率)。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ
ppm 3.94 (s, 2 H), 6.70 (d, J=8.6 Hz, 2 H), 6.98 (d, J=8.4 Hz, 2 H), 7.23 -
7.34 (m, 3 H).
【0101】
代わりの手順:
窒素下で摂氏0度に冷却した4−ブロモ−1−クロロ−2−(4−エトキシ−ベンジル)−ベンゼン(10.0g、30.71mmol)のジクロロメタン(40.0mL)溶液に、30分に亘り三塩化ホウ素のジクロロメタン(34mL、34.0mmol)溶液(1M)を滴下で添加した。添加が完了した後、反応物を室温に一晩(約16時間)温めた。反応混合物を摂氏0度に冷却し、1Nの塩酸の水溶液を加えた。このように得られた混合物を30分間撹拌し、次いで、ジクロロメタンを使用して抽出した。有機層を分離し、水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。TLCは、50%のみの変換を示した。粗材料をジクロロメタン(40mL)に再溶解し、摂氏0度に冷却し、三臭化ホウ素のジクロロメタン(31mL、31mmol)溶液(1M)を滴下で添加した。反応混合物を週末(約55時間)に亘り室温に温めた。反応混合物を摂氏0度に冷却し、1Nの塩酸の水溶液を滴下で添加した。このように得られた混合物を30分間撹拌し、次いでジクロロメタンを使用して抽出した。有機層を分離し、水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。反応物を、ISCO自動化クロマトグラフィーユニット(120gシリカゲルカラム)を使用し、かつヘプタン中の0〜100%酢酸エチルの勾配で溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。9g(98%収率)の所望の生成物が、白色の固体として得られた。
【0102】
[4−(5−ブロモ−2−クロロ−ベンジル)−フェノキシ]−tert−ブチル−ジメチル−シラン
N,N−ジメチルホルムアミド(100mL)に溶解し、かつ摂氏0度(氷浴)に冷却した4−(5−ブロモ−2−クロロ−ベンジル)−フェノール(9.01g、30.28mmol)の溶液に、イミダゾール(4.53g、66.6mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(370mg、3.03mmol)を加えた。tert−ブチルクロロジメチルシラン(6.85g、45.4mmol)を加え、氷浴を取り除いた。反応混合物を室温で一晩(約16時間)撹拌し、水(400mL)を加え、このように得られた混合物を酢酸エチル(200mL)で抽出した。水層を酢酸エチル(200mL)でさらに2回抽出した。合わせた有機層を水(200mL)、ブライン(200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗材料を、ISCO自動化クロマトグラフィーユニット(120gシリカゲルカラム)を使用し、かつヘプタン中の0〜50%酢酸エチルの勾配で溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。12.4g(99%収率)の生成物が、透明な油として得られた。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.18 (s, 6 H), 0.97 (s, 9 H), 3.96 (s, 2 H), 6.77 (d, J=8.4 Hz,
2 H), 7.01 (d, J=8.4 Hz, 2 H), 7.17 - 7.30 (m, 3 H).
【0103】
中間体の調製
中間体((2R,3R,4S,5R)−6−アリルオキシ−3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−メタノール(I−1a)の調製:
【0104】
【化7】

D−グルコース(1.2kg、6.6mol)、トリフルオロメタンスルホン酸(12mL)およびアリルアルコール(5L)の懸濁液を、80℃で3日間加熱した。混合物を室温に冷却し、揮発性物質を真空中で除去し、残渣をN,N−ジメチルホルムアミド(8L)に溶解した。これを4つの等しい反応物に分割し、各々に塩化トリチル(463g、1.67mol)およびトリエチルアミン(231mL、1.67mol)を添加した。トリエチルアミンを添加する間に、僅かな発熱量が観察された。反応混合物を30℃で2日間撹拌し、次いで各反応物を半分に分け、8つの等しい反応物を得た。これらの反応物の各々に、塩化ベンジル(300mL、2.60mol)を添加し、続いて水素化ナトリウム(102.5g、2.60mol)を少しずつ添加し、反応温度を40〜50℃に維持した。完全に添加した後、反応混合物を室温で20時間撹拌した。次いで、各反応物を氷/水(2L)上に注ぎ、酢酸エチル(2.5L)で抽出した。各々の有機相を飽和ブライン/水(1:1、2×2L)で洗浄し、合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥させた(3:1のヘキサン/酢酸エチル中の生成物R0.85)。濾過および蒸発後、残渣をジクロロメタン(16L)およびメタノール(4L)の混合物に溶解した。混合物を5つの等しい部分に分割し、各々に硫酸(32mL)を添加した。反応物を3時間撹拌し、ブライン/2Mの水酸化ナトリウム水溶液(1:1、2×2L)で洗浄し、合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。濾過および真空濃縮後、残渣をトルエン中の30%酢酸エチルで溶出するシリカゲル上でさらに精製し、中間化合物(I−1a)をアノマーの混合物として得た(1.77kg、D−グルコースから54%収率)。3:1のヘキサン/酢酸エチル中R0.15。
【0105】
中間体((3S,4S,5R)−6−アリルオキシ−3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−メタノール(I−1b)の調製:
【0106】
【化8】

ジメチルスルホキシド(87mL、1.22mol)のジクロロメタン(160mL)溶液を、塩化オキサリル(64.7mL、0.76mol)のジクロロメタン(2.5L)溶液に−78℃にて滴下で添加した。完全に添加した後、中間体(I−1a)(287g、0.59mol)のジクロロメタン(500mL)溶液を、−78℃にて滴下で添加した。完全に添加した後、反応混合物を30分間撹拌し、トリエチルアミン(417mL、2.9mol)を滴下で添加した。完全に添加した後、反応混合物は、室温にそれ自体で温まった。次いで、反応物を1Mの塩酸水溶液(2L)および水(2L)で洗浄し、次いで硫酸マグネシウム上で乾燥させた。この反応手順を6つの等しい反応物で繰返し、乾燥させた後それらを合わせ、蒸発させ、アルデヒドを黄色の油(1.71kg)として得た。この油をイソプロパノール(2.57L)に溶解し、7つの等しい反応物に分割した。これらの各々に、37%ホルムアルデヒド水溶液(0.79L、10mol)を添加し、続いて水酸化ナトリウム(32g、0.8mol)の水(130mL)溶液を滴下で添加した。完全に添加した後、反応混合物を室温で2日間撹拌した。反応混合物をブライン(2L)で希釈し、酢酸エチル(2L)で抽出した。有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2L)、ブライン(2L)でさらに洗浄し、次いで硫酸マグネシウム上で乾燥させた。7回の反応からの有機相を合わせ、蒸発させ、残渣をシリカゲル(4対1から1対1までの酢酸エチル中のヘキサンで溶出する)上で精製し、中間化合物(I−1b)をアノマーの混合物(980g、2ステップに亘り53%収率)として得た。1:1のヘキサン/酢酸エチル中R0.57および0.60。
【0107】
(3S,4S,5R)−6−アリルオキシ−3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−2,2−ビス−(4−メトキシ−ベンジルオキシメチル)−テトラヒドロ−ピラン(I−1c):
【0108】
【化9】

出発物質のジオール[((3S,4S,5R)−6−アリルオキシ−3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−メタノール(I−1b:10g、19.208mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(70mL)に溶解し、0℃に冷却した。水素化ナトリウム(鉱油中60%分散物、1.69g、42.3mmol)を添加し、反応物を0℃で1時間撹拌し、その後1−ブロモメチル−4−メトキシ−ベンゼン(5.96mL、40.3mmol)を添加した。次いで、反応物を60℃に一晩加熱した。混合物を室温に冷却し、反応物を水でクエンチし、酢酸エチル(2度)で抽出した。合わせた有機層を水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下濃縮した。次いで、反応物をシリカゲル(ヘプタン中の0〜80%酢酸エチルの勾配で溶出)上でクロマトグラフィーにかけ、7.55g(52%収率)の生成物(I−1c)を得た。MS 778.8 (M+NH4+; ポジティブモード).
【0109】
(3R,4S,5S)−3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−6,6−ビス−(4−メトキシ−ベンジルオキシメチル)−テトラヒドロ−ピラン−2−オール(I−1d):
【0110】
【化10】

出発物質((3S,4S,5R)−6−アリルオキシ−3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−2,2−ビス−(4−メトキシ−ベンジルオキシメチル)−テトラヒドロ−ピラン(I−1c:7.55g、9.92mmol)のメタノール(60mL)およびジクロロメタン(20mL)溶液に、室温で塩化パラジウム(II)(528mg、2.98mmol)を添加し、得られた混合物をこの温度で4時間撹拌した。TLCは、より極性の生成物の明らかな形成を示した。反応物をCelite(登録商標)を通して濾過し、減圧下で濃縮した。粗材料を、ヘプタン中の0〜80%酢酸エチルの勾配で溶出するシリカゲル上のクロマトグラフィーにかけ、5.6g(78%収率)の生成物(I−1d)を得た。MS 738.8 (M+NH4+; ポジティブモード).
【0111】
(3R,4S,5S)−3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−6,6−ビス−(4−メトキシ−ベンジルオキシメチル)−テトラヒドロ−ピラン−2−オン(I−1e):
【0112】
【化11】

二塩化オキサリル(1.9mL、23mmol)のジクロロメタン(65mL)溶液に、−78℃でジメチルスルホキシド(3.3mL、47mmol)のジクロロメタン(5mL)溶液を添加し、得られた溶液をこの温度で30分間撹拌した。出発物質((3R,4S,5S)−3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−6,6−ビス−(4−メトキシ−ベンジルオキシメチル)−テトラヒドロ−ピラン−2−オール(I−1d、5.6g、7.7mmol)のジクロロメタン(15.0mL)溶液を、次いで滴下で添加し、得られた混合物を30分間撹拌し、温度を−60℃に上げた。トリエチルアミン(9.7mL、69.5mmol)を滴下で添加し、混合物を1時間に亘り0℃に温めた。反応物を飽和塩化アンモニウム水溶液の添加によってクエンチし、有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下濃縮した。粗材料は、ヘプタン中の0〜60%酢酸エチルの勾配で溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、生成物(I−1e)(4g、72%収率)を生成した。
1H NMR
(400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 3.24
(d, J=10 Hz, 1 H), 3.40 - 3.47 (m, 2 H), 3.74 (s, 3 H), 3.77 (s, 3 H), 3.86 (d,
J=10 Hz, 1 H), 4.07 (d, J=8.6 Hz, 1 H), 4.15 (d, J=9.6 Hz, 1 H), 4.35 - 4.55
(m, 6 H), 4.65 - 4.72 (m, 2 H), 4.82 (d, J=11 Hz,1 H), 4.87 (d, J=11.2 Hz, 1
H), 5.10 (d, J=11.1 Hz, 1 H), 6.74 - 6.79 (m, 2 H), 6.81 - 6.85 (m, 2 H), 7.11
(dd, J=7.0, 2.5 Hz, 2 H), 7.17 - 7.41 (m, 17 H).
【0113】
(2R,3S,4S)−2,3,4−トリス−ベンジルオキシ−5−ヒドロキシ−6−(4−メトキシ−ベンジルオキシ)−5−(4−メトキシ−ベンジルオキシメチル)−ヘキサン酸メトキシ−メチル−アミド(I−1g)および/または(3R,4S,5S)−3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−6,6−ビス−(4−メトキシ−ベンジルオキシメチル)−2−(メトキシ−メチル−アミノ)−テトラヒドロ−ピラン−2−オール(I−1f):
【0114】
【化12】

ラクトン((3R,4S,5S)−3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−6,6−ビス−(4−メトキシ−ベンジルオキシメチル)−テトラヒドロ−ピラン−2−オン(I−1e:10.4g、14.5mmol)およびN,O−ジメチル−ヒドロキシルアミン塩酸塩(1.77g、29.0mmol)のジクロロメタン(100mL)溶液に、0℃でトリメチルアルミニウムのヘキサン(14.5mL、29.0mmol)溶液(2.0M)を滴下で添加し、得られた溶液を室温で16時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、1Nの塩酸水溶液をゆっくり添加することによってクエンチした。得られた混合物を1時間撹拌した。有機相を分離し、1Nの塩酸水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗材料を中圧クロマトグラフィー(ヘプタン中の5〜40%酢酸エチルの勾配)によって精製し、6.5g(58%)の生成物を得た。
1H NMR
(400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 2.62
(br. s, 1 H), 2.94 (br. s., 3 H), 3.23 (br. s., 3 H), 3.42 (d, J=9.4 Hz, 1 H),
3.50 - 3.60 (m, 3 H), 3.75 (s, 3 H), 3.77 (s, 3 H), 4.03 (d, J=6.9 Hz, 1 H),
4.20 (dd, J=6.9, 3.3 Hz, 1 H), 4.31 - 4.44 (m, 5 H), 4.46 - 4.51 (m , 2H), 4.53
(d, J=12 Hz, 1 H), 4.66 (d, J=12 Hz, 1 H), 4.80 (br. d, J=11.5 Hz, 1 H), 4.87
(d, J=11.4 Hz, 1 H), 6.77 - 6.83 (m, 4 H), 7.15 - 7.35 (m, 19 H). ([M+H+]
780.8, ポジティブモード; [M+HCO2-] 824.7,
ネガティブモード). HRMS: C46H54NO10
(M+H+)の計算値780.3742, 実測値780.3708.
【0115】
(4S,5S)−3,4,5−トリス−ベンジルオキシ−2−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−6,6−ビス−(4−メトキシ−ベンジルオキシメチル)−テトラヒドロ−ピラン−2−オール(I−1i):
【0116】
【化13】

n−ブチルリチウム(1.0mL、2.5M/ヘキサン、3.25当量)を、酸素脱気した(そのキャップで密封した事前に乾燥させたBiotage(商標)マイクロ波バイアル(10〜20mL)中に入れ、窒素ガスの正流下に置く)4−ブロモ−1−クロロ−2−(4−エトキシ−ベンジル)−ベンゼン(815mg、3.25当量)の無水テトラヒドロフラン(2.9mL)溶液に−78℃にて滴下で添加し(5秒毎に1滴)、得られた溶液をこの温度でさらに1時間撹拌した。(2R,3S,4S)−2,3,4−トリス−ベンジルオキシ−5−ヒドロキシ−6−(4−メトキシ−ベンジルオキシ)−5−(4−メトキシ−ベンジルオキシメチル)−ヘキサン酸メトキシ−メチル−アミド(I−1g)(600mg)の無水テトラヒドロフラン(1.45mL)溶液を、次いでシリンジポンプを使用して1.3時間に亘り滴下で添加し、得られた混合物を−78℃で1時間撹拌し、その後14時間に亘り−25℃に温めた(アルミ箔で覆われた深いデュワー中に入れ、低温を維持する。デュワーのサイズ:外径10cm、内径8cm、高さ9cm)。ジエチルエーテルを添加し、1Mの塩酸水溶液を滴下で添加することによって反応物をクエンチした。得られた二相性混合物を室温で15分間撹拌した。有機相を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。ヘプタン中の10〜40%酢酸エチルの勾配を使用したシリカゲル上のクロマトグラフィーによって、生成物を異性体の混合物(280mg、38%収率)として得た。
HRMS: C59H61O10ClNa
(M+Na+)の計算値987.3845, 実測値987.3840.
【0117】
{(2S,3S)−2,3,4−トリス−ベンジルオキシ−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクト−1−イル}−メタノール(I−1k):
【0118】
【化14】

中間体I−1i(1.46g)のジクロロメタン(31mL)溶液に、アニソール(900μL、約5当量)、続いて20%トリフルオロ酢酸のジクロロメタン溶液(31mL)を添加し、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を濃縮し、粗製物を、ヘプタン中の10〜30%酢酸エチルの勾配を使用したシリカゲル上のクロマトグラフィーにかけ、生成物を異性体の混合物として得た(670mg、63%収率)。
HRMS: C43H44O7Cl
(M+H+)の計算値707.2770, 実測値707.2765.
【0119】
(1S,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール(1A)および(1S,2S,3S,4S,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール(1B):
【0120】
【化15】

{(2S,3S)−2,3,4−トリス−ベンジルオキシ−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクト−1−イル}−メタノール(I−1k:335mg)のエタノール/テトラヒドロフラン(10mL、4/1容)溶液に、ギ酸(420μL、22当量)およびパラジウム黒(208mg、4当量)を連続的に添加し、得られた混合物を室温で撹拌した。1時間後、さらなるギ酸(420マイクロL、22当量)およびパラジウム黒(208mg、4当量)を加え、混合物を室温でさらに1時間撹拌した。パラジウムを濾過し、溶媒の蒸発の後に得られた粗混合物を分取HPLCによって精製した。
【0121】
分取HPLC:逆相C18Geminiカラム、5マイクロメーター、30×100mm、40mL/分、18分に亘りアセトニトリル/0.1%ギ酸:水/0.1%ギ酸;25〜50%のアセトニトリル/0.1%ギ酸の勾配。UV検出:220nm。HPLCは、1.1:1(1A:1B)のジアステレオマー比を示した。
【0122】
(1A):(60mg、29%収率);R=12.4分。生成物含有画分を減圧下で濃縮した。粗材料を酢酸エチルおよびヘプタンから沈殿させた。得られた白色の固体をヘプタンで2度洗浄し、減圧下で乾燥させた。
MS (LCMS) 437.3 (M+H+; ポジティブモード); 481.3 (M+HCO2-;
ネガティブモード). 1H NMR
(400 MHz, メタノール-d4) δ 7.43 (d, 1H, J = 1.9 Hz), 7.36 (dd, 1H, J
= 8.3および2 Hz), 7.32 (d, 1H, J =
8.3 Hz), 7.08-7.04 (m, 2H), 6.79-6.75 (m, 2H), 4.12 (d, 1H, J = 7.5 Hz), 4.00
(s, 2H), 3.96 (q, 2H, J = 7.0 Hz), 3.81 (d, 1H, J = 12.5 Hz), 3.75 (dd, 1H, J =
8.3および1.3 Hz), 3.65 (d, 1H, J =
12.5 Hz), 3.63 (t, 1H, J = 8.2 Hz), 3.57 (dd, 1H, J = 7.5および1.3 Hz), 3.52 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 1.33
(t, 3H, J = 6.9 Hz). HRMS: C22H26O7Cl
(M+H+)の計算値437.1361, 実測値437.1360.
【0123】
(1B):(30mg、15%収率);R=13.2分。生成物含有画分を減圧下で濃縮した。粗材料を酢酸エチルおよびヘプタンから沈殿させた。得られた白色の固体をヘプタンで2度洗浄し、減圧下で乾燥させた。
MS (LCMS) 437.3 (M+H+; ポジティブモード) 481.3 (M+HCO2-,
ネガティブモード). 1H NMR
(400 MHz, メタノール-d4) δ 7.48 (d, 1H, J = 1.9 Hz) 7.40 (dd, 1H, J =
8.1および1.9 Hz), 7.32 (d, 1H, J =
8.3 Hz), 7.08-7.03 (m, 2H), 6.80-6.74 (m, 2H), 4.04-3.99 (m, 3H), 3.95 (q, 2H,
J = 7 Hz), 3.89-3.81 (m, 4H), 3.73 (d, 1H, J = 12.5 Hz), 3.49 (d, 1H, J = 7.3
Hz), 1.32 (t, 3H, J = 7 Hz). HRMS: C22H26O7Cl
(M+H+)の計算値437.1361, 実測値437.1358.
【0124】
(2S,3R,4S,5S,6R)−2−[4−クロロ−3−(4−ヒドロキシ−ベンジル)−フェニル]−6−ヒドロキシメチル−2−メトキシ−テトラヒドロ−ピラン−3,4,5−トリオール
【0125】
【化16】

n−ブチルリチウムのヘキサン(15mL、37.5mmol)溶液(2.5M)を、摂氏−78度に冷却した75mLの乾燥THF(25mL)およびトルエン(50mL)溶液中の[4−(5−ブロモ−2−クロロ−ベンジル)−フェノキシ]−tert−ブチル−ジメチル−シラン(12.6g、30.6mmol)の撹拌した溶液に窒素下でゆっくり加えた。添加の後に30分間撹拌した後、溶液を、撹拌した(3R,4S,5R,6R)−3,4,5−トリス−トリメチルシラニルオキシ−6−トリメチルシラニルオキシメチル−テトラヒドロ−ピラン−2−オン(18.6g、40mmol)のトルエン溶液(50mL)に摂氏−78度でカニューレによって移した。添加の後1.5時間後に、メタンスルホン酸(0.5mL)を含有する5mLのメタノールを滴下で添加することによって、反応物を摂氏−78度でクエンチし、このように得られた混合物を室温に一晩(約16時間)温めた。50mLのメタノール中のさらなる4.5mLのメチルスルホン酸を、室温にて滴下で添加し、反応混合物を室温でさらに24時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(300mL)および酢酸エチル(100mL)の溶液を加え、このように得られた混合物を1時間撹拌した。層を分離し、水層を酢酸エチル(100mL)でさらに2回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗材料を、ISCO自動化クロマトグラフィーユニット(2つの120gシリカゲルカラム)を使用し、かつジクロロメタン中の0〜30%メタノールの勾配で溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。4.2g(33%収率)の生成物が、オフホワイトの固体として得られた。LCMS 433 (M+Na+, ポジティブモード). 1H NMR (500 MHz, メタノール-d4) δ
ppm 3.08 (s, 3 H), 3.10 (d, J=9.5 Hz, 1 H), 3.43 (t, J=9.3 Hz, 1 H), 3.60 (ddd,
J=9.9, 5.7, 2.0 Hz, 1 H), 3.76 (t, J=9.1 Hz, 1 H), 3.82 (dd, J=12.0, 5.6 Hz, 1
H), 3.94 (dd, J=12.1, 1.8 Hz, 1 H), 3.96 - 4.10 (m, 2 H), 6.69 (d, J=8.3 Hz, 2
H), 7.02 (d, J=8.3 Hz, 2 H), 7.37 (d, J=8.3 Hz, 1 H), 7.46 (dd, J=8.3, 2.0 Hz,
1 H), 7.54 (d, J=1.7 Hz, 1 H).
【0126】
メチル1−C−[4−クロロ−3−(4−{[(2,6−ジクロロフェニル)スルホニル]オキシ}ベンジル)フェニル]−6−O−[(2,6−ジクロロフェニル)スルホニル]−α−D−グルコピラノシド
【0127】
【化17】

2−メチルテトラヒドロフラン(40mL)に溶解し、かつ摂氏0度に冷却した[(2S,3R,4S,5S,6R)−2−[4−クロロ−3−(4−ヒドロキシ−ベンジル)−フェニル]−6−ヒドロキシメチル−2−メトキシ−テトラヒドロ−ピラン−3,4,5−トリオール(4.2g、10.22mmol)の溶液に、トリエチルアミン(4.27mL、30.7mmol)、臭化亜鉛(6.53g、26.6mmol)を加え、続いて2,6−ジクロロベンゼンスルホニルクロリド(0.610g、2.48mmol)を少しずつ加えた。反応混合物を室温に温め、一晩(約16時間)撹拌した。反応物を、1Nの塩酸の水溶液(100mL)および水(100mL)を加えることによってクエンチした。酢酸エチル(100mL)を使用して反応混合物を抽出し、水層を酢酸エチル(100mL)でさらに抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。5.6g(66%収率)の所望の生成物が、オフホワイトの固体として得られた。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ ppm 3.00 (s, 3 H), 3.03 (d, J=9.4 Hz, 1
H), 3.38 (t, J=9.5 Hz, 1 H), 3.71 (t, J=9.2 Hz, 1 H), 3.79 (ddd, J=10.1, 5.9,
1.5 Hz, 1 H), 4.00 - 4.14 (m, 2 H), 4.43 (dd, J=10.7, 5.9 Hz, 1 H), 4.55 (dd,
J=10.8, 1.5 Hz, 1 H), 7.01 (d, J=8.6 Hz, 2 H), 7.16 (d, J=8.6 Hz, 2 H), 7.24 -
7.30 (m, 1 H), 7.31 - 7.36 (m, 1 H), 7.44 - 7.61 (m, 7 H).
【0128】
(2S,3R,4S,5S)−2−[4−クロロ−3−(4−ヒドロキシ−ベンジル)−フェニル]−6,6−ビス−ヒドロキシメチル−2−メトキシ−テトラヒドロ−ピラン−3,4,5−トリオール
【0129】
【化18】

ジメチルスルホキシド(35.3mL)に溶解したメチル1−C−[4−クロロ−3−(4−{[(2,6−ジクロロフェニル)スルホニル]オキシ}ベンジル)フェニル]−6−O−[(2,6−ジクロロフェニル)スルホニル]−α−D−グルコピラノシド(7g、8.44mmol)の溶液を、内部温度をモニターするための温度計を備えた事前に乾燥させた250mLの三つ口丸底フラスコ中に入れた。この溶液に、2,4,6−コリジン(5.6mL、42.2mmol)を加え、反応混合物を摂氏127度で加熱した。20分後に内部温度は摂氏123度に達し、この時点で加熱ブロックをオフにし、さらに20分後、フラスコを加熱ブロックから取り出し、反応混合物を室温に冷却し、次のステップで、さらに後処理または精製することなく使用した。
【0130】
上記の粗溶液に、エタノール(70mL)を加え、このように得られた混合物を摂氏55度で加熱した。パラホルムアルデヒド(5090mg、169mmol)を加え、続いて変性エタノール(15.8mL、42.4mmol)中の21%ナトリウムエトキシド溶液を加え、このように得られた混合物を摂氏55度で16時間撹拌し、その後室温に冷却した。18当量のNaHSOを含有する水(125mL)を加えることによって反応物をクエンチし、このように得られた混合物を90分間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去した。水(625mL)を加え、このように得られた混合物を酢酸エチル(250mL)で抽出した。水層を、酢酸エチルで4回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。反応物を、ISCO自動化クロマトグラフィーユニット(2つの120gシリカゲルカラム)を使用し、かつジクロロメタン中の5〜25%メタノールの勾配で溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。粗材料を、28mL/分の流量;移動相A:ヘプタン、およびB:エタノールで溶出するPhenomenex HILIC(Diol)250×21.2mm5マイクロメーターカラム上の分取HPLCによって精製した。1.5分間の5%エタノールの勾配を使用し、8.5分に亘り100%エタノールへ直線勾配で増加させ、生成物を溶出し、生成物(586mg、16%収率、保持時間=9.8分)を得た。UV検出:220nm。LCMS 439 (M-H+; ネガティブモード) 1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ
ppm 3.03 (d, J=9.6 Hz, 1 H), 3.09 (s, 3 H), 3.74 (d, J=10.0 Hz, 1 H), 3.80 (d,
J=11.9 Hz, 1 H), 3.87 - 3.97 (m, 4 H), 4.00 - 4.07 (m, 1 H), 4.14 (d, J=11.5
Hz, 1 H), 6.65 (d, J=8.4 Hz, 2 H), 6.98 (d, J=8.4 Hz, 2 H), 7.31 (d, J=8.4 Hz,
1 H), 7.45 (dd, J=8.4, 2.0 Hz, 1 H), 7.50 (d, J=1.8 Hz, 1 H).
【0131】
(5−ブロモ−2−クロロフェニル)(4−エトキシフェニル)メタノール
【0132】
【化19】

適切な反応フラスコに、(5−ブロモ−2−クロロフェニル)(4−エトキシフェニル)メタノン(103.06ミリモル、35.00g)およびアセトニトリル(6.68モル、350.00mL、274.15g)を充填して、透明な溶液を得た。溶液を摂氏0度に冷却し、水酸化ホウ素ナトリウム(128.82ミリモル、4.87g)を少しずつ加えた。完了するまで(HPLC分析によって決定して)、反応物を摂氏0度で概ね30分間、次いで室温で撹拌した。
【0133】
次いで、反応混合物に、水(40mL)、続いてブライン(50mL)を加えた。層を一緒に振盪し、沈殿させ、次いで分離した。有機相を油に濃縮した。メチルtert−ブチルエーテル(200mL)を加え、続いて1Nの塩酸をゆっくりと加えた。激しいガス発生が観察された。層を一緒に振盪し、沈殿させ、次いで分離した。有機相をブライン(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、粗生成物を淡黄色の固体(35.38g、100%収率)として得た。
1H-NMR
(400 MHz, ジメチルスルホキシド-d6) δ 7.84 (d, 1H, J = 2.5 Hz), 7.47 (dd, 1H, J
= 8.5, 2.5 Hz), 7.33 (d, 1H, 8.5 Hz), 7.21 (d, 2H, 8.5 Hz), 6.85 (d, 2H, 8.5
Hz), 5.88 (s, 1H), 3.97 (q, 2H, 7 Hz), 1.29 (t, 3H, 7 Hz).
【0134】
2−(ベンジルオキシ(4−エトキシフェニル)メチル)−4−ブロモ−1−クロロベンゼン
【0135】
【化20】

適切な反応フラスコに、(5−ブロモ−2−クロロフェニル)(4−エトキシフェニル)メタノール(5.85ミリモル;2.00g)およびテトラヒドロフラン(245.77ミリモル;20.00mL;17.72g)を充填し、透明な溶液を得た。次いで、水素化ナトリウム(8.78ミリモル;351.22mg)を少量ずつ加え、水素ガス発生速度を最小限にした。反応物を室温で概ね30分間撹拌し、次いで、臭化ベンジル(8.78ミリモル;1.05mL;1.50g)をゆっくりと加えた。完了するまで(HPLC分析によって決定して)、反応物を室温で撹拌した。
【0136】
次いで、反応混合物に、1Nの塩酸(10mL)および酢酸エチル(30mL)を加えた。層を一緒に振盪し、沈殿させ、次いで分離した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄し、次いで硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、粗生成物(3.12g)を得た。
【0137】
粗油状物を、ヘキサン中の0〜5%酢酸エチルの勾配で溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、1.98gの生成物を透明な油(78%収率)として得た。
1H-NMR
(400 MHz, ジメチルスルホキシド-d6) δ 7.78 (d, 1H, J = 2.5 Hz), 7.53 (dd, 1H, J
= 8.5, 2.5 Hz), 7.39 (d, 1H, 8.5 Hz), 7.36 - 7.25 (m, 7H), 6.90 (m, 2H), 5.72
(s, 1H), 4.48 (m, 2H), 3.99 (q, 2H, 7 Hz), 1.30 (t, 3H, 7 Hz).
13C-NMR
(100 MHz, ジメチルスルホキシド-d6) δ 158.2, 142.0, 137.8, 131.8, 131.5, 131.2,
131.0, 130.2, 128.7, 128.3, 127.6, 127.6, 120.5, 114.3, 77.8, 70.1, 63.0, 14.6.
【0138】
2−(アリルオキシ(4−エトキシフェニル)メチル)−4−ブロモ−1−クロロベンゼン
【0139】
【化21】

適切な反応フラスコに、(5−ブロモ−2−クロロフェニル)(4−エトキシフェニル)メタノール(2.93ミリモル;1.00g)およびテトラヒドロフラン(122.89ミリモル;10.00mL;8.86g)を充填し、透明な溶液を得た。次いで、水素化ナトリウム(8.14ミリモル;325.61mg)を少量ずつ加え、水素ガス発生速度を最小限とした。反応物を室温で概ね30分間撹拌し、次いで、臭化アリル(8.55ミリモル;0.740mL;1.03g)をゆっくりと加えた。完了するまで(GCMS分析によって決定して)、反応物を室温で撹拌した。
【0140】
次いで反応混合物に、1Nの塩酸(10mL)および酢酸エチル(20mL)を加えた。層を一緒に振盪し、沈殿させ、次いで分離した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄し、次いで硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、粗生成物(1.07g)を得た。
【0141】
粗油状物を、ヘキサン中の0〜5%酢酸エチルの勾配で溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、858mgの生成物を透明な油(77%収率)として得た。
1H-NMR
(400 MHz, ジメチルスルホキシド-d6) δ 7.75 (d, 1H, J = 2.5 Hz), 7.51 (dd, 1H, J
= 8.5, 2.5 Hz), 7.38 (d, 1H, 8.5 Hz), 7.23 (m, 2H), 6.88 (m, 2H), 5.92
(m, 1H), 5.65 (s, 1H), 5.26 (m, 1H), 5.18 (m, 1H), 4.01 - 3.93 (m, 4H),
1.30 (t, 3H, 7 Hz).
13C-NMR
(100 MHz, ジメチルスルホキシド-d6) δ 158.6, 142.5, 135.1, 132.2, 131.9, 131.6,
131.3, 130.4, 129.1, 120.8, 117.3, 114.7, 77.9, 69.4, 63.4, 15.0.
【0142】
((5−ブロモ−2−クロロフェニル)(4−エトキシフェニル)メトキシ)(tert−ブチル)ジメチルシラン
【0143】
【化22】

適切な反応フラスコに、(5−ブロモ−2−クロロフェニル)(4−エトキシフェニル)メタノール(2.93ミリモル;1.00g)およびテトラヒドロフラン(122.89ミリモル;10.00mL;8.86g)を充填し、透明な溶液を得た。次いで、トリエチルアミン(3.81ミリモル;0.530mL;385.06mg)をシリンジによって加え、続いてtert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(3.81ミリモル;0.875mL;1.01g)を室温で加えた。完了するまで(GCMS分析によって決定して)、反応物を室温で撹拌した。
【0144】
次いで、反応混合物に、脱イオン水(10mL)および酢酸エチル(20mL)を加えた。層を一緒に振盪し、沈殿させ、次いで分離した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄し、次いで硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、粗生成物(1.45g)を得た。
【0145】
粗油状物を、ヘキサン中の0〜5%酢酸エチルの勾配で溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、1.00gの生成物を透明な油(75%収率)として得た。
1H-NMR
(400 MHz, ジメチルスルホキシド-d6) δ 7.81 (d, 1H, J = 2.5 Hz), 7.46 (dd, 1H, J
= 8.5, 2.5 Hz), 7.34 (d, 1H, 8.3 Hz), 7.24 (m, 2H), 6.85 (m, 2H), 6.00
(s, 1H), 3.95 (q, 2H, 7 Hz), 1.28 (t, 3H, 7 Hz), 0.85 (s, 9H), -0.02 (s,
3H), -0.06 (s, 3H) .
13C-NMR
(100 MHz, ジメチルスルホキシド-d6) δ 157.8, 144.5, 134.0, 131.5, 131.2, 130.3,
129.7, 127.6, 120.3, 114.1, 71.7, 62.9, 25.5, 17.8, 14.6, -5.0, -5.2.
【0146】
(実施例1)
(1S,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−ヒドロキシ−ベンジル)−フェニル]−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール
【0147】
【化23】

ジクロロメタン(5mL)および2−メチル−テトラヒドロフラン(5mL)の混合物中の(2S,3R,4S,5S)−2−[4−クロロ−3−(4−ヒドロキシ−ベンジル)−フェニル]−6,6−ビス−ヒドロキシメチル−2−メトキシ−テトラヒドロ−ピラン−3,4,5−トリオール(580mg、1.32mmol)の溶液に、Silicycle(登録商標)Si−トシル酸誘導体化シリカゲル(40〜63マイクロメーター、0.68mmol/g)を加えた。シリカゲル結合トルエンスルホン酸(1g)および反応混合物を、室温で一晩(約16時間)撹拌した。混合物をCelite(登録商標)のプラグを通して濾過し、プラグをジクロロメタン:2−メチル−テトラヒドロフラン(40mL;1:1容量)ですすいだ。粗材料を、28mL/分の流量;移動相A:1%水酸化アンモニウム調節剤を有する水およびB:1%水酸化アンモニウム調節剤を有するメタノールで溶出するPhenomenex Gemini NX150×21.2 5mmカラム上の分取HPLCによって精製した。1.5分間の1%水酸化アンモニウム調節剤を有する5%メタノールの勾配を使用し、8.5分に亘り1%水酸化アンモニウム調節剤を有する100%メタノールへ直線勾配を増加させ、生成物を溶出し、生成物を得た(375mg;69.7%収率、保持時間=9.8分)。LCMS 407 (M-H+, ネガティブモード). 1H NMR (500 MHz, メタノール-d4) δ ppm 3.56 (d,
J=7.8 Hz, 1 H), 3.61 (d, J=7.3 Hz, 1 H), 3.66 (t, J=8.2 Hz, 1 H), 3.69 (d,
J=12.4 Hz, 1 H), 3.79 (d, J=8.3 Hz, 1 H), 3.85 (d, J=12.4 Hz, 1 H), 4.01 (s, 2
H), 4.16 (d, J=7.3 Hz, 1 H), 6.69 (d, J=8.3 Hz, 2 H), 7.02 (d, J=8.3 Hz, 2 H),
7.34 - 7.37 (m, 1 H), 7.37 - 7.41 (m, 1 H), 7.45 (d, J=1.5 Hz, 1 H).
【0148】
(実施例2)
酢酸(1R,2S,3S,4R,5S)−3,4−ジアセトキシ−1−アセトキシメチル−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステル
【0149】
【化24】

摂氏0度に冷却した(1S,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール(1A、1.22g、2.792mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(3.5mL、20mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(0.25g、2.0mmol)を加えた。温度が摂氏10度を超えないように無水酢酸(1.58mL、16.8mmol)をゆっくりと加え、このように得られた溶液を室温に温め、一晩(約16時間)撹拌した。酢酸エチル、および1Nの塩酸の水溶液を加え、有機相を分離し、水相を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を、biotage自動化クロマトグラフィーユニット(50gシリカゲルカラム)を使用し、かつヘプタン中の0〜100%酢酸エチルで溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。温かいメタノール(30mL)を使用し、材料を冷却し、小さな白色の破片状物質を形成させて、生成物を再結晶化させた。白色の固体を濾過し、50mLの冷たいメタノールで洗浄し、590mg(35%収率)の白色の結晶性固体を得た(mp摂氏134.3度)。(LCMS) 622.4 (M+NH4+; ポジティブモード). 1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.39 (t,
J=7.03 Hz, 3 H), 1.69 (s, 3 H), 1.98 (s, 3 H), 2.04 (s, 3 H), 2.09 (s, 3 H),
3.70 (dd, J=8.10, 1.46 Hz, 1 H), 3.93 - 4.02 (m, 2 H), 3.99 (d, J=7.03 Hz, 2
H), 4.08 (d, J=15.20 Hz,1 H), 4.42 (d, J=8.20 Hz, 1 H), 4.53 (d, J=12.50 Hz, 1
H), 5.28 (d, J=8.01 Hz, 1 H), 5.39 (t, J=8.30 Hz, 1 H), 5.48 (dd, J=8.6, 1 Hz,
1 H), 6.80 (d, J=8.79 Hz, 2 H), 7.06 (d, J=8.79 Hz, 2 H), 7.30 - 7.37 (m, 3 H).
【0150】
濾液を減圧下で濃縮した。固体にメタノール(約15mL)を加え、固体が溶解するまで混合物を加熱した。溶液を冷却し、この溶液に種結晶を加えた。このように得られた白色の結晶性破片状物質を濾過し、集め、さらなる577mg(34%収率)の白色の結晶性固体を得た。
【0151】
(実施例3)
酢酸(1R,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−2,3,4−トリヒドロキシ−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−1−イルメチルエステル
【0152】
【化25】

摂氏−35度に冷却した激しく撹拌した(1S,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール(1A、0.481g、1.1mmol)のコリジン(2.5mL)溶液に、10分に亘り塩化アセチル(0.149mL、2.1mmol)を滴下で添加した。1時間後、メタノール(0.5mL)を加え、反応混合物を室温に温めた。粗混合物を減圧下で濃縮し、トルエンと共に3回同時蒸留した。粗材料を、biotage自動化クロマトグラフィーユニット(50gシリカゲルカラム)を使用し、かつジクロロメタン中の0〜15%メタノールの勾配で溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。456mg(87%収率)の生成物を、白色の固体として得た。
(LCMS) 523.3 (M+HCOO-: ネガティブモード). 1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ ppm 1.35 (t, J=6.93 Hz, 3 H), 2.05 (s, 3
H), 3.52 (d, J=7.81 Hz, 1 H), 3.59 (dd, J=7.71, 1.46 Hz, 1 H), 3.63 (t, J=8.10
Hz, 1 H), 3.76 (dd, J=8.30, 1.27 Hz, 1 H), 3.98 (q, J=6.96 Hz, 2 H), 4.03 (s, 2
H), 4.17 (d, J=12.7 Hz, 1H), 4.19 (d, J=8 Hz, 1H), 4.41 (d, J=12.30 Hz, 1 H),
6.80 (d, J=8.79 Hz, 2 H), 7.08 (d, J=8.79 Hz, 2 H), 7.34 - 7.36 (m, 2 H), 7.40
(s, 1 H).
【0153】
(実施例4)
炭酸(1R,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−2,3,4−トリヒドロキシ−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−1−イルメチルエステルエチルエステル
【0154】
【化26】

摂氏−35度に冷却した激しく撹拌した(1S,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール(1A、288mg、0.659mmol)のコリジン(6.6mL)溶液に、10分に亘りクロロギ酸エチル(0.112mL、1.19mmol)を滴下で添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応物を飽和クエン酸の水溶液でクエンチし、酢酸エチル(2回)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗材料を、biotage自動化クロマトグラフィーユニット(50gシリカゲルカラム)を使用し、かつジクロロメタン中の0〜20%メタノールの勾配で溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。白色の固体として134mg(40%収率)の所望の生成物。
(LCMS) 526 (M+NH4+: ポジティブモード). 1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ ppm 1.25 (t, J=7.1 Hz, 3 H), 1.35 (t,
J=7.0 Hz, 3 H), 3.52 (d, J=7.8 Hz, 1 H), 3.59 (d, J=7.8 Hz, 1 H), 3.61 - 3.66
(m, 1 H), 3.76 (d, J=8.2 Hz, 1 H), 3.98 (q, J=7.0 Hz, 2 H), 4.03 (s, 2 H), 4.15
(q, 2 H), 4.19 (d, J=7.8 Hz, 1 H), 4.23 (d, J=11.9 Hz, 1 H), 4.46 (d, J=12.1
Hz, 1 H), 6.79 (d, J=8.6 Hz, 2 H), 7.08 (d, J=8.4 Hz, 2 H), 7.35 (s, 2 H), 7.42
(s, 1 H).
【0155】
(実施例5)
[D]−(1S,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール
【0156】
【化27】

(1S,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−ヒドロキシ−ベンジル)−フェニル]−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール(54mg、0.13mmol)のアセトニトリル(0.5mL)溶液に、炭酸カリウム(55mg、0.40mmol)を加え、続いてヨードエタン−d5(0.016mL、0.198mmol)を加えた。反応混合物を室温で4時間撹拌し、次いで摂氏50度に16時間加熱した。反応物を水(20mL)でクエンチし、このように得られた混合物を酢酸エチル(20mL)で3回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗材料を、ジクロロメタン中の0〜23%メタノールの勾配で溶出するISCO自動化クロマトグラフィーユニット(4gシリカゲルカラム)を使用したフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。28.3mg(48%収率)の所望の生成物を、白色の固体として得た。LCMS 486 (M+HCO2-, ネガティブモード). 1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ ppm 3.52 (d,
J=7.8 Hz, 1 H), 3.57 (dd, J=7.4, 1.0 Hz, 1 H), 3.62 (t, J=8.2 Hz, 1 H), 3.66
(d, J=12.3 Hz, 1 H), 3.75 (d, J=8.2 Hz, 1 H), 3.81 (d, J=12.5 Hz, 1 H), 4.01
(s, 2 H), 4.12 (d, J=7.4 Hz, 1 H), 6.77 (d, J=8.8 Hz, 2 H), 7.06 (d, J=8.6 Hz,
2 H), 7.31 - 7.34 (m, 1 H), 7.34 - 7.39 (m, 1 H), 7.43 (d, J=1.8 Hz,1H).
【0157】
(実施例6)
酢酸2−{4−[2−クロロ−5−((1S,2S,3S,4R,5S)−2,3,4−トリヒドロキシ−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−5−イル)−ベンジル]−フェノキシ}−エチルエステル
【0158】
【化28】

(1S,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−ヒドロキシ−ベンジル)−フェニル]−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール(38mg、0.093mmol)のアセトニトリル(0.9mL)溶液に、炭酸カリウム(40mg、0.28mmol)を加え、続いて酢酸2−ブロモ−エチルエステル(0.012mL、0.112mmol)を加え、このように得られた混合物を摂氏50度に72時間加熱した。反応はいくらかの生成物の形成を示したが、出発物質の大部分が残った。さらなる2当量の酢酸2−ブロモ−エチルエステルを加え、混合物を摂氏50度でさらに24時間加熱した。水(20mL)および酢酸エチルを加え、2相を分離し、水相を酢酸エチル(20mL)で3回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗材料を、ISCO自動化クロマトグラフィーユニット(4gシリカゲルカラム)を使用し、かつジクロロメタン中の0〜30%メタノールの勾配で溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。10mg(22%収率)の、いくらかの未同定の化合物で汚染されている所望の生成物の約2:1混合物を得た。LCMS 53 9M+HCOO-, ネガティブモード).
【0159】
化合物は、28mL/分の流量および移動相A:ヘプタンおよびB:エタノールで溶出するPhenomenex Lux Cellulose−2 5uカラム上のHPLCによって精製した。2分間の5%エタノールの勾配を使用し、10.0分において100%エタノールに増加させて、生成物を溶出させ、1.1mgの所望の生成物を得た。
(LCMS ポジティブモード M+Na+ = 517)
1H NMR
(500 MHz, メタノール-d4) δ ppm 2.07 (s, 3 H), 3.56 (d, J=7.8 Hz, 1
H), 3.58 - 3.63 (m, 1 H), 3.64 - 3.72 (m, 2 H), 3.79 (d, 1 H), 3.85 (d, J=12.4
Hz, 1 H), 4.06 (s, 2 H), 4.13 - 4.19 (m, 3 H), 4.36 - 4.41 (m, 2 H), 6.82 -
6.88 (m, 2 H), 7.09 - 7.15 (m, 2 H), 7.35 - 7.43 (m, 2 H), 7.47 (d, J=2.2 Hz, 1
H). LCMS (ES+): 495.4 (M+H+).
【0160】
(実施例7)
(1S,2S,3S,4R,5S)−5−{4−クロロ−3−[4−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−ベンジル]−フェニル}−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール
【0161】
【化29】

(1S,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−ヒドロキシ−ベンジル)−フェニル]−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール(14mg、0.034mmol)のアセトニトリル(0.5mL)溶液に、炭酸カリウム(14mg、0.1mmol)を加え、続いて(2−ブロモ−エトキシメチル)−ベンゼン(0.010mL、0.063mmol)を加え、反応混合物を摂氏50度に24時間加熱した。反応はいくらかの生成物の形成を示したが、出発物質の大部分は残った。さらなる3当量の炭酸カリウムを加え、温度を摂氏83度に上昇させ、反応混合物をさらに5時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、水(20mL)および酢酸エチルを加え、有機相を分離し、水相を酢酸エチル(20mL)で3回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗材料は、ISCO自動化クロマトグラフィーユニット(4gシリカゲルカラム)を使用し、かつジクロロメタン中の0〜23%メタノールの勾配で溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。4mgの所望の化合物(1S,2S,3S,4R,5S)−5−(3−(4−(2−(ベンジルオキシ)エトキシ)ベンジル)−4−クロロフェニル)−1−(ヒドロキシメチル)−6,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオールを得た。LCMS 587 (M+HCO2-, ネガティブモード). 1H NMR (500 MHz, メタノール-d4) δ ppm 3.56 (d,
J=8.1 Hz, 1 H), 3.60 (d, J=7.6 Hz, 1 H), 3.63 - 3.67 (m, 1 H), 3.69 (d, J=12.7
Hz, 2 H), 3.79 (d, J=8.3 Hz, 1 H), 3.82 (d, J=4.6 Hz, 1 H), 3.83 - 3.87 (m, 1
H), 4.05 (s, 2 H), 4.11 - 4.14 (m, 2 H), 4.16 (d, J=7.3 Hz, 1 H), 4.62 (s, 2
H), 6.86 (d, J=8.5 Hz, 2 H), 7.12 (d, J=8.5 Hz, 2 H), 7.29 (d, J=7.1 Hz, 1 H),
7.31 - 7.43 (m, 6 H), 7.47 (s, 1 H).
【0162】
中間体(1S,2S,3S,4R,5S)−5−(3−(4−(2−(ベンジルオキシ)エトキシ)ベンジル)−4−クロロフェニル)−1−(ヒドロキシメチル)−6,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール(4mg、0.007mmol)のエタノールおよびテトラヒドロフランの混合物(1mL、容量で4対1)溶液に、ギ酸(12マイクロL、0.30mmol)およびパラジウム黒(7.5mg、0.07mmol)を連続的に加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、パラジウムをCelite(登録商標)のパッドを通して濾過し、濾液を蒸発させ、残渣を高真空下にて乾燥させ、2.6mg(80%収率)の所望の生成物を得た。LCMS 453.5 (M+H+; ポジティブモード). 1H NMR (500 MHz, メタノール-d4) δ
ppm 3.56 (d, J=7.8 Hz, 1 H), 3.58 - 3.72 (m, 4 H), 3.79 (d, J=7.8 Hz, 1 H),
3.82 - 3.88 (m, 2 H), 4.02 (t, J=4.9 Hz, 2 H), 4.05 (s, 2 H), 4.16 (d, J=7.6
Hz, 1 H), 6.84 - 6.89 (m, 2 H), 7.11 (d, J=8.5 Hz, 2 H), 7.35 - 7.42 (m, 2 H),
7.47 (d, J=2.0 Hz, 1 H).
【0163】
(実施例8)
(1S,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−フルオロメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール
【0164】
【化30】

{(1S,2S,3S,4R,5S)−2,3,4−トリス−ベンジルオキシ−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−1−イル}−メタノール(616mg、0.871mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液に、摂氏0度でジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(170マイクロL、1.3mmol)を加え、このように得られた混合物を室温にゆっくりと温め、この温度で16時間撹拌した。混合物をジクロロメタンで希釈し、炭酸水素ナトリウム水溶液の飽和溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残渣を、40gのredisepシリカカートリッジ(ヘプタン中の0〜20%酢酸エチルの勾配で溶出)を使用したシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、(1S,2S,3S,4R,5S)−2,3,4−トリス−ベンジルオキシ−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−フルオロメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタンを無色の油(40mg、7%収率)として得た。(LCMS) 753.4 (M+HCOO-: ネガティブモード).
【0165】
(1S,2S,3S,4R,5S)−2,3,4−トリス−ベンジルオキシ−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−フルオロメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(40mg、0.06mmol)およびパラジウム黒(40mg、0.38mmol、Aldrich(登録商標)大きな表面積)のエタノール(0.5mL)およびテトラヒドロフラン(0.1mL)懸濁液に、ギ酸(0.085mL、2.24mmol)を加え、このように得られた混合物を室温で1.5時間撹拌した。酢酸エチルを加え、混合物をCelite(登録商標)の短いパッドを通して濾過し、真空中で濃縮した。粗材料を、4gのredisepシリカカートリッジ(ヘプタン中の50〜100%酢酸エチルの勾配で溶出)を使用したシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物を固体(15.6mg、63%収率)として得た。(LCMS) 483.0 (M+HCOO-: ネガティブモード). 1H NMR (500 MHz, メタノール-d4) δ
ppm 7.44 (s, 1 H), 7.38 (s, 1 H), 7.37 (s, 1 H), 7.09 - 7.12 (m, 2 H), 6.80 -
6.83 (m, 2 H), 4.71 (dd, J=46.59, 10.49 Hz, 1 H), 4.50 (dd, J=48.30, 10.73 Hz,
1 H), 4.19 (dd, J=7.56, 0.98 Hz, 1 H), 4.04 (d, J=0.98 Hz, 2 H), 4.00 (q,
J=6.99 Hz, 2 H), 3.80 (dd, J=8.29, 0.98 Hz, 1 H), 3.67 (t, J=8.17 Hz, 1 H), 3.54
- 3.57 (m, 2 H), 1.37 (t, 3 H).
【0166】
(実施例9)
(1S,2S,3S,4R,5S)−5−{4−クロロ−3−[(4−エトキシ−フェニル)−ヒドロキシ−メチル]−フェニル}−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール
【0167】
【化31】

酢酸(1R,2S,3S,4R,5S)−3,4−ジアセトキシ−1−アセトキシメチル−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンゾイル)−フェニル]−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステル(調製については、実施例11を参照されたい;85mg、0.14mmol)のメタノール(3mL)溶液に、水酸化ホウ素ナトリウム(25mg、0.66mmol)を室温で加えた。1時間後、水(20mL)を加えることによって反応物をクエンチし、このように得られた混合物を減圧下で濃縮した。このように得られた水層を、酢酸エチル(15mL)で3回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。この粗材料のメタノール(5mL)溶液に、pH12が得られるまでメタノール(25%wt)中のナトリウムメトキシドを加え、このように得られた混合物を室温で撹拌した。16時間後、反応混合物を、溶液のpHが<7となるまで、Dowex Monosphere650C(H)カチオン交換樹脂(使用前に、樹脂をメタノールで3回洗浄)を加えることによって中和した。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮した。このように得られた材料を、酢酸エチルおよびヘプタンから沈殿させた。このように得られた固体をヘプタンで2回洗浄し、減圧下で乾燥させ、所望の生成物(58.9mg、93%収率)を白色の固体として得た。MS (LCMS) 497.3 (M+HCOO-, ネガティブモード) 1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ
ppm 1.33 (t, J=6.9 Hz, 6 H), 3.56 (d, J=8.0 Hz, 1 H), 3.59 - 3.64 (m, 3 H),
3.64 - 3.69 (m, 2 H), 3.68 (d, J=12.5 Hz, 2 H), 3.78 (d, J=8.2 Hz, 2 H), 3.84
(d, J=12.5 Hz, 2 H), 3.98 (q, J=7.0 Hz, 4 H), 4.15 (d, J=7.4 Hz, 1 H), 4.16 (d,
J=7.4 Hz, 1 H), 6.04 (s, 1 H), 6.05 (s, 1 H), 6.80 (d, J=8.4 Hz, 4 H), 7.21 (d,
J=8.6 Hz, 2 H), 7.22 (d, J=8.6 Hz, 2 H), 7.29 (d, J=8.2 Hz, 2 H), 7.40-7.42 (m,
2 H), 7.91 (d, J=2.0 Hz, 1 H), 7.93 (d, J=2.0 Hz, 1 H).
【0168】
分析法:カラム:Chiralpak AD−H(4.6mm×25cm)、流量:2.5mL/分、移動相:65/35CO/プロパノール;UV検出:210nm。ピーク1(R=2.80分、45.5%面積)、ピーク2(R=5.51分、54.5%面積)。
【0169】
スキーム6に示されているように、実施例9はまた、適当な有機金属試薬(IX−1)(Mは、Liまたはmgであり、X’は、Cl、BrまたはIであり、pは、0〜2である)(Rは、OPMB、OBn、OTBS、OTMS、OTES、OTIPS、OAllyl、OBOM、OPMBM、ODMBM、OMOM、OMEM、OMTM、OSEM、OM(X’)またはクレームされた化合物である実施例9への任意の適切に保護された前駆体である)を使用して、スキーム2のステップ1〜6に記載した手順に従って調製することができた。
【0170】
【化32】

【0171】
によって(Rは、OPMB、OBn、OTBS、OTMS、OTES、OTIPS、OAllyl、OBOM、OPMBM、ODMBM、OMOM、OMEM、OMTM、OSEM、OHまたはクレームされた化合物である実施例9への任意の適切に保護された前駆体である)、スキーム2(ステップ1〜6)において例示した合成経路から得られた一般構造(IX−1a)の化合物は、当業者に公知である周知の保護基処理順序を使用して、本発明から実施例9に容易に変換することができた。保護基およびそれらの使用の概要については、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、New York、1991を参照されたい。化合物(IX−1a)が水素化分解条件に置かれる場合(このような条件は、これに限定されないが、ギ酸の存在下の、アルコール性溶媒(エタノールなど)中、共溶媒(テトラヒドロフランなど)の任意選択の存在を伴う、摂氏約0〜約50度の範囲の温度での、Pd黒であってもよい。代わりの条件は、水素ガス雰囲気下で、アルコール性溶媒(エタノールなど)中、共溶媒(テトラヒドロフランなど)の任意選択の存在を伴う、摂氏約0〜約50度の範囲の温度で、酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸またはギ酸など)の任意選択の存在を伴う、触媒としてPd−CまたはPd(OH)の使用が関与してもよい)、実施例9の代わりに化合物1Aを得ることができた。代替的には、化合物1Aは、酸(トリフルオロ酢酸、ギ酸または三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートなど)の存在下で、摂氏約−30度〜約23度の範囲の温度での、水素化ケイ素誘導体(トリエチルシランなど)による溶媒(ジクロロメタンなど)中の(IX−1a)の溶液の処理によって得ることができた(一般のプロトコルについては、PCT公開番号第WO06/089872号の実施例VIIに記載された手順を参照されたい)。このように得られた化合物1Aは、実験の項に記載されている手順に従って、実施例2を介して実施例9に変換することができた。
【0172】
ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタンモチーフ上のヒドロキシル基を保護することはまた有利であり得る。化合物(IX−1b)は、スキーム3のステップ1および2に記載されているように選択した特定の保護基についての同様の手順に従って、適切な保護基(Pg)による第一級ヒドロキシル基の選択的保護、それに続く適切な保護基(Pg)による残りの第二級ヒドロキシル基の保護によって、(IX−1a)からアクセスすることができたことを当業者であれば認識するであろう。ヒドロキシル保護基および化学合成におけるそれらの使用の概要については、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、New York、1991を参照されたい。Pg=Pgである場合、保護は、1つのステップで行うことができた。(IX−1b)に適用された(IX−1a)について記載されたような官能基処置、それに続く特定の保護基についての適当な化学反応を使用した残りの保護基(Pg)および(Pg)の除去によって、1Aをもたらすことができた。
【0173】
有機金属試薬(IX−1)は、当業者に公知のハロゲン−金属交換のプロトコルを使用して、相当するハロゲン化アリール(IX−2)または(IX−3)から合成することができた(実験の項を参照されたい;ハロゲン−金属交換、それに続くベンズアルデヒド誘導体への求核付加反応の一例として、PCT公開番号第WO06/089872号の実施例VIを参照されたい)。出発物質であるハロゲン化アリールは、下記のように合成することができる(スキーム7を参照されたい)。5−ブロモ−2−クロロベンズアルデヒド(Apollo Scientific Ltd.)への4−エトキシフェニルマグネシウムブロミド(Rieke Metals,Inc)または4−エトキシフェニルリチウム(1−エトキシ−4−ヨードベンゼン(TCI America)または1−ブロモ−4−エトキシベンゼン(TCI America)から出発して、リチウム−ハロゲン交換によって容易に利用可能である)の求核付加反応(ベンズアルデヒド誘導体への有機金属試薬の求核付加反応の一例については、PCT公開番号第WO06/089872号の実施例VIを参照されたい)によって、(5−ブロモ−2−クロロフェニル)(4−エトキシフェニル)メタノールをもたらすことができ、これはこのように得られたヒドロキシル基の保護(当業者に公知のプロトコルに従って;さらなる詳細については実施例の項、ならびにT.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、New York、1991を参照されたい)の後に、ハロゲン化アリール(IX−2)を得ることができた。同様の様式で、ハロゲン化アリール(IX−3)は、2−クロロ−5−ヨードベンズアルデヒド(Aldlab Chemicals,LLC)および4−エトキシフェニルマグネシウムブロミドまたは4−エトキシフェニルリチウムから出発して、(2−クロロ−5−ヨードフェニル)(4−エトキシフェニル)メタノールから生成することができる。
【0174】
【化33】

【0175】
代替的には、実施例9は、相当する1,3−ジチアン中間体(IX−4)(Rは、OPMB、OBn、OTBS、OTMS、OTES、OTIPS、OAllyl、OBOM、OPMBM、ODMBM、OMOM、OMEM、OMTM、OSEM、OHまたはクレームされた実施例9への任意の適切に保護された前駆体である)を使用して、Mascitti,V.ら、Organic Letters 12、2940(2010)によって報告された手順を使用して、(IX−1a)を介して合成することができた。
【0176】
【化34】

【0177】
スキーム8に示されているように、中間体(IX−4)は、古典的条件(例えば、PCT公開番号第WO06/129237号における3−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシメチル)−4−クロロ−ベンズアルデヒドの合成のための手順を参照されたい)下での、ハロゲン−金属交換、それに続くN,N−ジメチルホルムアミドまたはN−ホルミルモルホリンによるトラッピングによって、化合物(IX−2)または(IX−3)からアクセスし、相当するアルデヒド(IX−5)を生成することができた。次いで、アルデヒド(IX−5)を、当業者に公知の条件下で(例えば、Samas,B.ら、Acta Crystallographica E66,o1386(2010)における化合物1の形成、およびOuyang,Y.ら、Synthesis、3801(2006)における一般手順を参照されたい)、相当する1,3−ジチアン誘導体(IX−4)に変換することができた。
【0178】
【化35】

【0179】
スキーム1における一般構造(S1−A)の化合物はまた、Mascitti,V.ら、Organic Letters 12、2940(2010)によって報告された手順を使用して調製することができた。所望の1,3−ジチアン出発物質は、相当するハロゲン化アリールから出発して、同様の様式で(IX−4)にアクセスすることができる(RがOTBSである場合、{4−[(5−ブロモ−2−クロロ−フェニル)−メチル]−フェノキシ}−tert−ブチル−ジメチル−シランの調製について、US2007/0054867を参照されたい)。Rによって、このように得られた化合物は、次いで、当業者に公知である周知の保護基および官能基処理順序を使用して、本発明から構造(A)の他の化合物に容易に官能化することができる。さらなる詳細については、実施例の項を参照されたい。
【0180】
適当な有機金属試薬(X−1)(Mは、LiまたはMgであり、X’は、Cl、BrまたはIであり、pは、0〜2である)(Rは、H、OPMB、OTBS、OTES、OTIPS、OAllyl、OPh、OBOM、OPMBM、ODMBM、OMOM、OMEM、OMTM、OSEMである)を使用するとき、スキーム2のステップ1〜6に記載されている手順によって、一般構造(X−2)の中間体へのアクセスが可能となる(スキーム9)。
【0181】
【化36】

【0182】
有機金属試薬(X−1)は、当業者に公知のハロゲン−金属交換の一般のプロトコル(例えば、PCT公開番号第WO07/031548号の実施例XIIを参照されたい)を使用して、相当するハロゲン化アリール(X−3)(R10は、Cl、BrまたはIである)からアクセス可能である。
【0183】
【化37】

【0184】
一般に、ハロゲン化アリール(X−3)(R10は、BrまたはIである)は、市販であるか(4−ブロモ−1−クロロ−2−メチルベンゼンは、TCI Americaから入手可能であり、1−クロロ−4−ヨード−2−メチルベンゼンは、Best Pharma Tech Inc.から入手可能である)、あるいは当業者に公知の実験プロトコルに従ったヒドロキシル基の適切な保護によって、容易に入手可能な出発物質(Sigma−Aldrichから入手可能な(5−ブロモ−2−クロロフェニル)メタノール、またはPCT公開番号第WO08/077009号の実施例27によって調製することができる(2−クロロ−5−ヨードフェニル)メタノールなど)から調製することができる。保護基およびそれらの使用の概要については、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、New York、1991を参照されたい。さらに具体的には、下記の出発物質は、相当する参照文献において記載されている手順を使用して調製することができる。
4−ブロモ−1−クロロ−2−((メトキシメトキシ)メチル)ベンゼンは、PCT公開番号第WO04/093544号に記載されている手順によって調製することができる。
4−ブロモ−1−クロロ−2−(((2−メトキシエトキシ)メトキシ)メチル)ベンゼンは、US特許第US5043142号の実施例12に記載されている手順によって調製することができる。
(5−ブロモ−2−クロロベンジルオキシ)(tert−ブチル)ジメチルシランは、PCT公開番号第WO06/005914号の実施例14に記載されている手順によって調製することができる。
(5−ブロモ−2−クロロベンジルオキシ)トリイソプロピルシランは、下記の参照文献:Lee,Jら、Bioorganic and Medicinal Chemistry 18、2178(2010)の化合物17を生成するために記載された手順によって調製することができる。
4−ブロモ−1−クロロ−2−(フェノキシメチル)ベンゼンは、PCT公開番号第WO07/031548号の実施例VIIに記載されている手順によって調製することができる。
【0185】
スキーム10の合成経路に従って、一般構造(X−2)の化合物は、中間体に変換することができ、それによって本発明においてクレームされた化合物へのアクセスが可能となる。
【0186】
【化38】

【0187】
スキーム10のステップ1において、(X−2)のヒドロキシル基は、適当な保護基(Pg)によって保護することができた。例えば、ベンジル基(Pgは、Bnである)を、水素化ナトリウム、水素化カリウム、カリウムtert−ブトキシドの存在下で、溶媒(テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンまたはN,N−ジメチルホルムアミドなど)中、摂氏約0度〜摂氏約80度の範囲の温度で、臭化ベンジルまたは塩化ベンジルによる中間体(X−2)の処理によって導入することができた。溶媒(ジクロロメタン、ヘプタンまたはヘキサンなど)中の触媒量の酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、またはカンファースルホン酸)の存在下のベンジルトリクロロアセトイミデートが関与する条件をまた使用することができた。アセチルまたはベンゾイル基(Pg=AcまたはBzである)は、塩基(トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンまたは4−(ジメチルアミノ)ピリジンなど)の存在下で、溶媒(テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンまたはジクロロメタンなど)中で、摂氏約0度〜摂氏約80度の範囲の温度で、塩化アセチル、臭化アセチルまたは無水酢酸または塩化ベンゾイルまたは無水安息香酸による中間体(X−2)の処理によって導入し得る。
【0188】
スキーム10のステップ2において、RがHであるとき、還流させながらのCCl中のN−ブロモスクシンイミドおよび過酸化ジベンゾイルによる化合物(X−2a)の臭素化(代表的な実験手順については、EP0151529の実施例2を参照されたい)を使用して、(X−4)を得ることができた。RがOPhである場合、HBrの存在下で摂氏約0度〜摂氏約80度の範囲の温度(優先的に概ね室温)での(X−2a)の酢酸溶液の処理によって、(X−4)をもたらすことができた(代表的な実験手順については、PCT公開番号第WO07/031548号の実施例XIVを参照されたい)。
【0189】
スキーム10のステップ3において、RがOPMB、OTBS、OTES、OTIPS、OAllyl、OBOM、OPMBM、ODMBM、OMOM、OMEM、OMTM、またはOSEMであるとき、化合物(X−2a)においてベンジルアルコール官能基をマスクする保護基を、当業者に公知の手順に従った特定の保護基についての適当な化学反応を使用して除去し、中間体(X−5)を生成し得る。保護基およびそれらの使用の概要については、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、New York、1991を参照されたい。
【0190】
スキーム10のステップ4において、中間体(X−4)は、溶媒(テトラヒドロフランまたは2−メチルテトラヒドロフランなど)中で、トリフェニルホスフィンおよびN−ブロモスクシンイミド(または四臭化炭素)の存在下で、摂氏約0度〜摂氏約40度の範囲の温度で、中間体(X−5)の溶液の処理によって生成することができた(代表的な実験手順については、PCT公開番号第WO07/031548号の実施例IIを参照されたい)。
【0191】
PgがAcまたはBzでないとき、スキーム10のステップ5において、中間体(X−4)は、(1)当業者に公知の条件下での相当する酢酸ベンジルへの(X−4)の変換、それに続く(2)当業者に公知の条件下でのアセテート保護基の加水分解によって、中間体(X−5)に変換することができた。代表的な手順については、Samas,B.ら、Acta Crystallographica E66,o1386(2010)における4からの化合物5の形成についてのプロトコルを参照されたい。
【0192】
スキーム10のステップ6において、中間体(X−6)は、中間体(X−5)のベンジル位の酸化によって生成することができた。Kanji OmuraおよびDaniel Swern、Tetrahedron、34、1651(1978)によって記載されたスワーン酸化、またはParikh,J.ら、Journal of the American Chemical Society 89、5505(1967)に記載されたParikh−Doering酸化を使用することができた。当業者には公知のこの方法の変形形態をまた使用し得る。例えば、Ozanne,A.ら、Organic Letters、5、2903(2003)によって記載された安定化した2−ヨードキシ安息香酸などの他のオキシダント、または同様のものをまた使用し得る。中間体(X−6)はまた、中間体(X−4)のKornblum酸化を介してアクセスすることができた(スキーム10のステップ7)(Kornblum,N.,ら、Journal of The American Chemical Society、81、4113(1959);代表的な手順については、またSamas,B.ら、Acta Crystallographica E66,o1386(2010)における化合物6の形成を参照されたい;試薬としてN−メチルモルホリン−N−オキシドを使用した手順については、PCT公開番号第WO08/034859号の実施例VIIを参照されたい)。化合物(X−6)は、スキーム4のステップ1および2について上記で記載したものと同様の手順に従って、(X−5)からアクセスすることができた。
【0193】
スキーム11のステップ1において、一般構造(X−4)のブロモベンジル誘導体の活性化または官能化は、中間体(X−7)をもたらすことができた。
【0194】
【化39】

【0195】
ブロモベンジル誘導体から出発するジアリールメタンモチーフを形成するための当業者に公知の様々な方法を使用することができた(Liegault,B.ら、Chemical Society Reviews 37、290(2008)を参照されたい)。
【0196】
スキーム11のステップ1において、当業者に公知の条件下での化合物(X−4)と、4−エトキシフェニルボロン酸(Matrix ScientificまたはFrontier Scientific Inc.から入手可能)との間の鈴木タイプのカップリング(鈴木カップリングの古典的プロトコルについては、例えば、PCT公開番号第WO07/031548号の実施例XV;Nobre,S.M.ら、Tetrahedron Letters 45、8225(2004);Bandgar,B.P.ら、Tetrahedron Letters 45、6959(2004);ならびに表1およびLiegault,B.ら、Chemical Society Reviews 37、290(2008)において引用されている参照文献を参照されたい)によって、化合物(X−7)を生成することができた。カリウム(4−エトキシフェニル)トリフルオロボレート(Combi−Blocksから入手可能)はまた、(X−4)との鈴木タイプのカップリングにおいて使用することができた。カリウムアリールトリフルオロボレートを使用した鈴木−宮浦クロスカップリングについての一般手順については、Molander,G.A.ら、Journal of Organic Chemistry 71、9198(2006)および本明細書において引用した参照文献を参照されたい。鈴木カップリングについてのさらなるプロトコルをまた使用することができた(例えば、Srimani,D.ら、Tetrahedron Letters 49、6304(2008);Fairlamb,I.J.S.ら、Synthesis 508(2009);Singh,R.ら、Organic Letters 7、1829、(2005)における表1エントリー7を参照されたい)。4−エトキシフェニルボロン酸エステル誘導体(2−(4−エトキシフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランなど)(PCT公開番号第WO06/108695号を参照されたい)をまた、上記の鈴木カップリングにおいて試薬として使用し得る。
【0197】
スキーム11のステップ1において、当業者に公知のプロトコルに従った、(X−4)と、トリブチル(4−エトキシフェニル)スタンナンとの間のスティルタイプのカップリング(この試薬の合成および特性決定については、Wardell,J.L.ら、Journal of Organometallic Chemistry 78、395 (1974)を参照されたい)を使用して、(X−7)を生成することができた。スティルカップリングプロトコルの代表例については、Crawforth C.M.ら、Tetrahedron 61、9736(2005)における表2エントリー6、およびKuribayashi,T.ら、Synlett 737(1999)を参照されたい。
【0198】
代替的には、PgがAcまたはBzでないとき、スキーム11のステップ1において、(X−4)と、4−エトキシフェニルマグネシウムブロミド(Rieke Metals、Inc)との間の熊田タイプのカップリングを使用して、当業者に公知の熊田タイプのカップリングのための手順に従って(X−7)を生成し得る(例えば、Lopez−Perez,A.ら、Organic Letters 11、5514(2009)の脚注14を参照されたい)。
【0199】
代わりに、PgがAcまたはBzでないとき、スキーム11のステップ1において、1−エトキシ−4−ヨードベンゼン(TCI America)を、低温(摂氏約−78度〜摂氏約0度)にて、溶媒(テトラヒドロフランまたは同様のものなど)中、塩化イソプロピルマグネシウムの溶液で処理し、それに続いて同じ温度でテトラヒドロフランまたは同様のもの中のCuCN2LiClを添加してもよい。次いで、このようにして形成された反応種は、摂氏約−20度〜摂氏約23度の範囲の温度で(X−4)のテトラヒドロフラン溶液と反応し、後処理後に化合物(X−7)を生成し得る(PCT公開番号第WO06/089872号の実施例Xに記載されている手順を参照されたい)。
【0200】
代わりに、スキーム11のステップ1において、(X−4)とブロモ(4−エトキシフェニル)−亜鉛、ヨード(4−エトキシフェニル)−亜鉛またはクロロ(4−エトキシフェニル)−亜鉛(当業者に公知のプロトコルに従って、相当するハロゲン化アリールから調製)との間の根岸タイプのカップリングによって、当業者に公知の根岸タイプのカップリングについてのプロトコルに従って、(X−7)を生成することができた(表1エントリー4、およびde Lang,R−J.ら、Tetrahedron 54、2953(1998)における典型的なクロスカップリング手順を参照されたい)。
【0201】
代替的には、スキーム11のステップ1において、インジウム有機金属試薬であるトリス(4−エトキシフェニル)インジウムの反応物(相当するグリニャール試薬または有機リチウム試薬から調製)を(X−4)と反応させ、Perez,I.ら、Journal of The American Chemical Society 123、4155(2001)(表4エントリー1)に記載されている一般手順に従って、(X−7)を生成することができた。
【0202】
スキーム11のステップ1において、(X−4)は、相当するベンジル亜鉛試薬に変換し(これに限定されないが、Utas,J.E.ら、Synlett 1965(2006);Knochel,P.ら、Organic Letters 10、1107(2008)において見出されるものなどの当業者に公知の様々なプロトコルに従って)、1−エトキシ−4−ヨードベンゼン(TCI America)または1−ブロモ−4−エトキシベンゼン(TCI America)と反応させ、(X−7)を生成することができた。一般のプロトコルについては、Negishi,E.ら、Journal of Organic Chemistry 42、1821(1977);Utas,J.E.ら、Synlett 1965(2006);Stefko,M.ら、European Journal of Organic Chemistry 1689(2008)における表2エントリー3;Knochel,P.ら、Organic Letters 10、1107(2008)における表1エントリー3;Sato,M.ら、Journal of Medicinal Chemistry 52、4869(2009)における化合物16の形成ステップ2;Knochel,P.ら、Journal of Organic Chemistry 73、7380(2008)における表2エントリー7および8を参照されたい。
【0203】
スキーム11のステップ2において、次いで、残りの保護基(Pg)は、特定の保護基についての適当な化学反応を使用して除去し得る。例えば、ベンジル保護基は、概ね室温で、パラジウム(Pd黒)の存在下で、プロトン性溶媒(例えば、エタノール/THF)中、ギ酸で処理することによって除去し、化合物1Aを生成してもよく、これは次いで、当業者に公知である周知の保護基および官能基処理順序を使用して、本発明から構造(A)の他の化合物に容易に官能化することができる。さらなる詳細については、実施例の項を参照されたい。ベンジル保護基の除去について公知の他の条件をまた使用し得る。PgがAcまたはBzである場合、アセテートおよびベンゾエート保護基を、アルコール性溶媒(メタノールなど)(テトラヒドロフランなどの共溶媒をまた加えてもよい)中、ナトリウムメトキシドの存在下で、摂氏約0度〜摂氏約70度の範囲の温度での(X−7)の溶液の処理によって除去し、化合物1Aを生成し得る。アセテートおよびベンゾエート保護基の除去について公知の他の条件をまた使用し得る。
【0204】
化合物(X−7)の代替合成は、スキーム12に示されている。スキーム12のステップ1において、化合物(X−5)は、当業者に公知であり、かつ各々、Kuwano,R.ら、Chemical Communications 5899(2005)、Kuwano,R.ら、Organic Letters 7、945(2005)、McLaughlin,M.、Organic Letters 7、4875(2005)に報告されている一般のプロトコルに従って、相当する酢酸ベンジル、炭酸ベンジルまたはリン酸ベンジルに変換し、続いて4−エトキシフェニルボロン酸(Matrix ScientificまたはFrontier Scientific Incから入手可能)と反応させてもよい。次いで、このように得られた化合物(X−7)は、スキーム11のステップ2に従って化合物1Aに容易に変換することができた。
【0205】
【化40】

【0206】
スキーム13に記載されているように、化合物(X−6)をまた使用して、実施例9、または構造1Aの化合物にアクセスすることができた。
【0207】
【化41】

【0208】
スキーム13のステップ1において、化合物(X−6)を、有機金属試薬(4−エトキシフェニルマグネシウムブロミドまたは4−エトキシフェニルリチウムなど)で処理し、(X−8)を生成し得る(ベンズアルデヒド誘導体へのグリニャールまたは有機リチウム試薬の求核付加反応についての当業者に公知のプロトコルに従って;(IX−2)および(IX−3)の形成、またはPCT公開番号第WO06/089872号の実施例VIに記載されている手順を参照されたい)。PgがAcまたはBzである特定の場合、過剰な有機金属試薬(4−エトキシフェニルマグネシウムブロミドまたは4−エトキシフェニルリチウム)を使用して(PCT公開番号第WO08/034859号の実施例1の有機金属の添加ステップについて記載されている手順を参照されたい)、このような有機金属の求核付加反応のための水性後処理、およびアルコール性溶媒(メタノールなど)中(任意選択の共溶媒(テトラヒドロフランなど)の存在下で)、摂氏約0度〜摂氏約60度の範囲の温度でのナトリウムメトキシドの溶液(または水酸化カリウムもしくは水酸化ナトリウムの水溶液)によるこのように得られた粗混合物の処理後に実施例9を生成し、残りのAcまたはBz保護基を除去しなくてはならない。
【0209】
スキーム13のステップ2において、当業者に公知のプロトコルを使用した特定の保護基についての適当な化学反応を使用し、残りの保護基(Pg)の除去によって、実施例9を生成し得る。保護基およびそれらの使用の概要については、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、New York、1991を参照されたい。
【0210】
水素化分解条件が使用される場合には(例えば、PgがBnである場合;このような条件は、これに限定されないが、アルコール性溶媒(エタノールなど)中のギ酸の存在下の、共溶媒(テトラヒドロフランなど)の任意選択の存在を伴う、摂氏約0度〜摂氏約50度の範囲の温度でのPd黒でよく、代わりの条件は、水素ガス雰囲気下で、アルコール性溶媒(エタノールなど)中、共溶媒(テトラヒドロフランなど)の任意選択の存在を伴う、摂氏約0度〜摂氏約50度の範囲の温度で、酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸またはギ酸など)の任意選択の存在を伴う、触媒としてPd−CまたはPd(OH)の使用が関与する)、実施例9の代わりに化合物1Aが得られる(スキーム13のステップ3)。このように得られた化合物1Aは、実験の項に記載されている手順に従って、実施例2を介して実施例9に変換することができた。同様に、スキーム13のステップ4において、水素化分解条件下での実施例9の処理(例えば、これに限定されないが、上記の条件)によって、化合物1Aを提供することができた。代替的には、スキーム13のステップ4において、化合物1Aは、酸(トリフルオロ酢酸、ギ酸または三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートなど)の存在下で、摂氏約−30度〜摂氏約23度の範囲の温度で、水素化ケイ素誘導体(トリエチルシランなど)による溶媒(ジクロロメタンなど)中の実施例9の溶液の処理によって得てもよい(一般のプロトコルについては、PCT公開番号第WO06/089872号の実施例VIIに記載されている手順を参照されたい)。
【0211】
代替的には、スキーム13のステップ3において、化合物1Aは、(1)水素化分解条件(例えば、これに限定されないが、上記の条件)下での処理、または酸性条件(例えば、これに限定されないが、上記の条件)下での水素化ケイ素誘導体による処理、および(2)特定の保護基についての適当な化学反応を使用した残りの保護基(Pg)の除去によって、中間体(X−8)からアクセスし得る。
【0212】
(X−2)から出発して、ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタンモチーフ上のヒドロキシル基を選択的に保護することはまた有利であり得る(スキーム14)。当業者であれば、化合物(X−2b)は、スキーム3のステップ1および2において記載されている選択した特定の保護基についての同様の手順に従った、適切な保護基(Pg)による第一級ヒドロキシル基の選択的保護、それに続く適切な保護基(Pg)による残りの第二級ヒドロキシル基の保護によって、(X−2)からアクセスすることができたことを認識するであろう。(X−2a)について記載した同様の方法で、化合物(X−2b)は、中間体(X−4a)、(X−5a)、および(X−6a)をもたらすことができた(スキーム14)。そして次に、(X−4a)、(X−5a)、および(X−6a)は、スキーム11、12および13に記載されているプロトコルに従って、保護基(Pg)の脱保護ステップを、特定の保護基についての適当な化学反応を使用した残りの保護基(Pg)および(Pg)の除去と置き換えることによって、実施例9および/または1Aに変換することができた。
【0213】
【化42】

【0214】
(実施例10)
(1S,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−クロロメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール
【0215】
【化43】

{(1S,2S,3S,4R,5S)−2,3,4−トリス−ベンジルオキシ−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−1−イル}−メタノール(200mg、0.28mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液に、摂氏0度でジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(40マイクロL、0.30mmol)を加え、このように得られた混合物を室温にゆっくりと温め、この温度で16時間撹拌した。混合物をジクロロメタンで希釈し、炭酸水素ナトリウム水溶液の飽和溶液、およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残渣を、12gのredisepシリカカートリッジ(ヘプタン中の0〜20%酢酸エチルの勾配で溶出)を使用してシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、(1S,2S,3S,4R,5S)−2,3,4−トリス−ベンジルオキシ−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−フルオロメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタンおよび(1S,2S,3S,4R,5S)−2,3,4−トリス−ベンジルオキシ−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−クロロメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタンの混合物を無色の油(50mg)として得た。(MS) 725 (M+H+, ポジティブモード).
【0216】
(1S,2S,3S,4R,5S)−2,3,4−トリス−ベンジルオキシ−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−フルオロメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタンおよび(1S,2S,3S,4R,5S)−2,3,4−トリス−ベンジルオキシ−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−クロロメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン(50mg、0.07mmol)およびパラジウム黒(50mg、0.38mmol、Aldrich(登録商標)大きな表面積)の混合物のエタノール(0.5mL)およびテトラヒドロフラン(0.1mL)懸濁液に、ギ酸(0.10mL、2.80mmol)を加え、このように得られた混合物を室温で1.5時間撹拌した。酢酸エチルを加え、混合物をCelite(登録商標)の短いパッドを通して濾過し、真空中で濃縮した。粗材料を、4gのredisepシリカカートリッジ(ヘプタン中の50〜100%酢酸エチルの勾配で溶出)を使用したシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物を固体として得た(8.6mg;約80%純度、いくらかの実施例8で汚染されている)。
(LCMS) 455.2 (M+H+: ポジティブモード). 1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ ppm 7.40 (t, J=1.17 Hz, 1 H), 7.34 (s, 1
H), 7.34 (s, 1 H), 7.05 - 7.09 (m, 2 H), 6.76 - 6.80 (m, 2 H), 4.18 (d, J=7.61
Hz, 1 H), 4.01 (s, 2 H), 3.97 (q, J=7.03 Hz, 2 H), 3.90 (d, J=12.30 Hz, 1 H),
3.83 (dd, J=8.20, 1.56 Hz, 1 H), 3.72 (d, J=12.30 Hz, 1 H), 3.60 - 3.65 (m, 2
H), 3.50 - 3.54 (m, 1 H), 1.33 (t, J=7.03 Hz, 3 H).
【0217】
(実施例11)
(1S,2S,3S,4R,5S)−5−{4−クロロ−3−[(R)−(4−エトキシ−フェニル)−ヒドロキシ−メチル]−フェニル}−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール(9A−1)および(1S,2S,3S,4R,5S)−5−{4−クロロ−3−[(S)−(4−エトキシ−フェニル)−ヒドロキシ−メチル]−フェニル}−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール(9A−2)
【0218】
【化44】

酢酸(1R,2S,3S,4R,5S)−3,4−ジアセトキシ−1−アセトキシメチル−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステル(実施例2;344mg、0.569mmol)の四塩化炭素(8mL)溶液に、N−ブロモスクシンイミド(159mg、0.893mmol)を加え、続いて2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、8mg、0.05mmol)を加え、反応混合物を窒素下で加熱還流させた。16時間後、反応混合物を室温に冷却し、水(50mL)およびジクロロメタン(25mL)を加え、このように得られた混合物を室温で24時間撹拌した。層を分離し、水層をジクロロメタン(25mL)でさらに2回抽出した。合わせた有機層をブライン(20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、Celiteのパッドを通して濾過し、減圧下で濃縮した。粗材料を、ヘプタン中の0〜80%酢酸エチルの勾配で溶出するBiotage SP4自動化クロマトグラフィーユニット(SNAP25gシリカゲルカラム)でクロマトグラフにかけ、316mg(89%収率)の酢酸(1R,2S,3S,4R,5S)−3,4−ジアセトキシ−1−アセトキシメチル−5−{4−クロロ−3−[(4−エトキシ−フェニル)−ヒドロキシ−メチル]−フェニル}6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステルをビス−ベンジル位におけるジアステレオ異性体の混合物として生成した。
【0219】
酢酸(1R,2S,3S,4R,5S)−3,4−ジアセトキシ−1−アセトキシメチル−5−{4−クロロ−3−[(4−エトキシ−フェニル)−ヒドロキシ−メチル]−フェニル}6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステル(400mg、0.644mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、摂氏0度でDess−Martinペルヨージナン試薬(609mg、1.0mmol)を加え、反応混合物をこの温度で1.5時間撹拌した。次いで、反応混合物をジクロロメタン(20mL)で希釈し、続いて炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(20mL)およびチオ硫酸ナトリウムの飽和水溶液(20mL)を加えた。混合物を30分間激しく撹拌し、その後、層を分離した。水層をジクロロメタン(2×20mL)で洗浄し、合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗材料を、Biotage SP4自動化クロマトグラフィーユニット(SNAP25gシリカゲルカラム)を使用し、かつヘプタン中の0〜80%酢酸エチルの勾配で溶出するクロマトグラフにかけ、178mg(44.7%収率)の酢酸(1R,2S,3S,4R,5S)−3,4−ジアセトキシ−1−アセトキシメチル−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンゾイル)−フェニル]−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステル、および145mgの酢酸(1R,2S,3S,4R,5S)−3,4−ジアセトキシ−1−アセトキシメチル−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンゾイル)−フェニル]−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステル/酢酸(1R,2S,3S,4R,5S)−3,4−ジアセトキシ−1−アセトキシメチル−5−{4−クロロ−3−[(4−エトキシ−フェニル)−ヒドロキシ−メチル]−フェニル}6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステルの4/1混合物を生成した。酢酸(1R,2S,3S,4R,5S)−3,4−ジアセトキシ−1−アセトキシメチル−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンゾイル)−フェニル]−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステルについてのデータ:MS (LCMS) 619 (M+H+; ポジティブモード) 1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ
ppm 1.40 (t, J=7.0 Hz, 3 H), 1.81 (s, 3 H), 1.94 (s, 3 H), 2.01 (s, 3 H), 2.03
(s, 3 H), 3.78 (d, J=8.2 Hz, 1 H), 4.01 (d, J=12.7 Hz, 1 H), 4.12 (q, J=6.9 Hz,
2 H), 4.43 (d, J=8.4 Hz, 1 H), 4.59 (d, J=12.9 Hz, 1 H), 5.25 (d, J=8.0 Hz, 1
H), 5.38 (t, J=8.0 Hz, 1 H), 5.44 (d, J=8.2 Hz, 1 H), 6.98 (d, J=8.8 Hz, 2 H),
7.44 (d, J=2.0 Hz, 1 H), 7.52 (d, J=8.4 Hz, 1 H), 7.62 (dd, J=8.4, 2.0 Hz, 1
H), 7.68 (d, J=8.8 Hz, 2 H).
【0220】
酢酸(1R,2S,3S,4R,5S)−3,4−ジアセトキシ−1−アセトキシメチル−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンゾイル)−フェニル]−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステル/酢酸(1R,2S,3S,4R,5S)−3,4−ジアセトキシ−1−アセトキシメチル−5−{4−クロロ−3−[(4−エトキシ−フェニル)−ヒドロキシ−メチル]−フェニル}6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステルの上記の4/1混合物(145mg)のメタノール(2.5mL)溶液に、水酸化ホウ素ナトリウム(35mg、0.92mmol)を室温で加えた。1時間後、反応混合物を、水(20mL)を加えることによってクエンチし、このように得られた混合物を減圧下で濃縮した。このように得られた水層を、酢酸エチル(15mL)で3回抽出した。合わせた有機層をブライン(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。
【0221】
粗材料のメタノール(5mL)溶液に、pH12が得られるまでメタノール中のナトリウムメトキシド(25%wt)を加え、このように得られた混合物を室温で撹拌した。16時間後、溶液のpHが<7となるまでDowex Monosphere650C(H)カチオン交換樹脂を加えることによって反応混合物を中和した。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮し、100mgの所望の生成物をジアステレオ異性体の混合物として得た(実施例9を参照されたい)。このように得られた混合物を、キラルHPLCによって分離した。精製法:カラム:Chiralpak AD−H(10×250)、流量:10.0mL/分、逆圧:120バール、移動相:65/35のCO/プロパノール;UV検出:210nm。
【0222】
化合物9A−1および9A−2中のビス−ベンジル位における炭素の配置は、各々、RおよびSに任意に割り当てた。
【0223】
(9A−1):(17.5mg、16.5%収率);R=4.68分;生成物含有画分を減圧下で濃縮した。このように得られた材料を、酢酸エチルおよびヘプタンから沈殿させた。このように得られた白色の固体をヘプタンで2回洗浄し、減圧下で乾燥させた。
MS (LCMS) 451.2 (M-H+, ネガティブモード) 1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ ppm 1.33 (t, J=6.9 Hz, 3 H), 3.62 (d, J=7.6 Hz, 2 H), 3.67 (t,
J=8.0 Hz, 1 H), 3.68 (d, J=11.9 Hz, 1 H), 3.79 (d, J=8.0 Hz, 1 H), 3.83 (d,
J=12.5 Hz, 1 H), 3.97 (q, J=6.9 Hz, 2 H), 4.16 (d, J=7.4 Hz, 1 H), 6.04 (s, 1
H), 6.80 (d, J=8.8 Hz, 2 H), 7.22 (d, J=8.6 Hz, 2 H), 7.29 (d, J=8.4 Hz, 1 H),
7.42 (dd, J=8.2, 2.0 Hz, 1 H), 7.93 (d, J=2.0 Hz, 1 H). HRMS: C22H25O8Cl (M)の計算値452.1238, 実測値452.1237.
【0224】
(9A−2):(25.9mg、24.4%収率);R=10.26分;生成物含有画分を減圧下で濃縮した。このように得られた材料を、酢酸エチルおよびヘプタンから沈殿させた。このように得られた白色の固体をヘプタンで2回洗浄し、減圧下で乾燥させた。
MS (LCMS) 497.2 (M+HCOO-, ネガティブモード) 1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ ppm 1.33 (t, J=6.9 Hz, 3 H), 3.56 (d, J=7.8 Hz, 1 H), 3.61 (d,
J=7.2 Hz, 1 H), 3.66 (t, J=8.0 Hz, 1 H), 3.68 (d, J=12.8, 1 H), 3.79 (d, J=8.2
Hz, 1 H), 3.84 (d, J=12.5 Hz, 1 H), 3.97 (q, J=7.0 Hz, 2 H), 4.15 (d, J=7.4 Hz,
1 H), 6.05 (s, 1 H), 6.80 (d, J=8.4 Hz, 2 H), 7.21 (d, J=8.4 Hz, 2 H), 7.29 (d,
J=8.4 Hz, 1 H), 7.41 (dd, J=8.2, 1.6 Hz, 1 H), 7.91 (d, J=1.6 Hz, 1 H). HRMS: C22H25O8Cl (M)の計算値452.1238, 実測値452.1235.
【0225】
(実施例12)
[2−クロロ−5−((1S,2S,3S,4R,5S)−2,3,4−トリヒドロキシ−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−5−イル)−フェニル]−(4−エトキシ−フェニル)−メタノン
【0226】
【化45】

酢酸(1R,2S,3S,4R,5S)−3,4−ジアセトキシ−1−アセトキシメチル−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンゾイル)−フェニル]−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステル(調製については、実施例11を参照されたい;65mg、0.10mmol)のメタノール(3mL)およびテトラヒドロフラン(2mL)溶液に、pH12が得られるまでメタノール(25%wt)中のナトリウムメトキシドを加え、このように得られた混合物を室温で撹拌した。16時間後、反応混合物を、溶液のpHが<7となるまでDowex Monosphere650C(H)カチオン交換樹脂を加えることによって中和し、濾過し、減圧下で濃縮した。このように得られた材料を、酢酸エチルおよびヘプタンから沈殿させ、このように得られた白色の固体をヘプタンで2回洗浄し、減圧下で乾燥させ、所望の生成物(44.5mg、94%収率)を得た。MS (LCMS) 451.1 (M+H+; ポジティブモード) 1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ
ppm 1.40 (t, J=6.9 Hz, 3 H), 3.55 (d, J=8.0 Hz, 1 H), 3.60 (d, J=7.4 Hz, 1 H),
3.65 (t, J=8.1 Hz, 1 H), 3.67 (d, J=12.5 Hz, 1 H), 3.77 (d, J=8.0 Hz, 1 H),
3.83 (d, J=12.5 Hz, 1 H), 4.12 (q, J=7.0 Hz, 2 H), 4.14 (d, J=7.6 Hz, 1 H),
6.98 (d, J=8.8 Hz, 2 H), 7.48 (d, J=8.4 Hz, 1 H), 7.52 (d, J=2.0 Hz, 1 H), 7.65
(dd, J=8.4, 2.0 Hz, 1 H), 7.73 (d, J=8.8 Hz, 2 H). HRMS:
C22H23O8Cl (M)の計算値450.1081, 実測値450.1079.
【0227】
薬理試験
SGLT2の阻害によって調節される疾患の治療のための本発明の実施は、本明細書において下記に記載されているプロトコルの少なくとも1つにおける活性によって証明することができる。
【0228】
生物学的アッセイ
インビトロアッセイ
SGLT2機能アッセイは、SGLT2輸送体によるメチル−α−Dグルコピラノシド(AMG−グルコースの代謝可能でない形態)取込みの阻害を検出するために設計した。SGLT2輸送体は、腎臓の近位尿細管からのグルコースを回収する。その阻害によって、糖が尿中に廃棄されることをもたらす。陽性対照化合物であるフロリジンは、SGLT2についてのグルコース取込みの既知の阻害剤である。それを試験化合物のSGLT2阻害の高率の作用を比較するために使用した。
【0229】
ヒトSGLT2(pcDNA5/FRT)を安定的に発現しているCHO−FlpIn(Invitrogen、Carlsbad、CA)細胞を、100μLの増殖培地(1:1のF−12/DMEM培地(Gibco、Carlsbad、CA)、10%FBS(Sigma、St.Louis MO)、1×Pen/Strep(Gibco、Carlsbad、CA)、600μg/mLのハイグロマイシン(Invitrogen、Carlsbad、CA))中で、100,000個の細胞/ウェルの密度で、Iso−TC96ウェルプレート(Perkin Elmer、Waltham、MA)に蒔いた。試験化合物で処理する前に、コンフルエントな細胞を、1:1のF−12/DMEM培地(1時間後、新鮮なF−12/DMEM培地と交換)中で37℃にて2時間、血清飢餓培養を行った。ジメチルスルホキシド(Sigma、St.Louis、MO)中の試験化合物は、取込み緩衝液で予めすすいだ細胞プレートに、取込み緩衝液(140mMのNaCl(Promega、Madison、WI)、2mMのKCl(Teknova、Hollister、CA)、1mMのCaCl(Teknova、Hollister、CA)、1mMのMgCl(Teknova、Hollister、CA)、および10mMのHEPES(Gibco、Carlsbad、CA))中で100倍に希釈した。ウェル毎に50μLのAMG(非標識AMG(Aldrich、St.Louis、MO)中の40nCi AMG[U−14C](Perkin Elmer、Waltham、MA))を添加(11.33μMのAMGの最終濃度を生じさせた)する前に、細胞を試験化合物と共に15分間プレインキュベートした。**次いで、細胞プレートを、AMG取込みのために37℃にて3時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を氷冷の洗浄緩衝液(200μMのフロリジン(Sigma)を含有する取込み緩衝液)で2度洗浄し、空気乾燥させ、オービタルシェーカーで30μLのNaOH(200mM)および1%SDS緩衝液に溶解させた。Microscint40(Perkin Elmer、Waltham、MA)を溶解した細胞(200μLの最終容量とする)に添加し、30分間オービタルシェーカーにかけることによって混合した。プレートを暗所で一晩保管し、14C検出のための正規化されたプロトコルを使用して1540Microbeta Trilux(Wallac、Waltham、MA)中で定量化した。AMG取込みを阻害する試験化合物の作用割合は、下記の計算を使用して計算した。
[作用%=((ZPE−T)/(ZPE−HPE))×100%]
式中、「ZPE」は、0.5%DMSOを含有する対照ウェル中の毎分補正計数(CCPM)であり、「T」は、様々な濃度の標準曲線における試験化合物を含有するウェル中のCCPMであり、「HPE」は、10μMのフロリジンを含有する対照ウェル中のCCPMに関する高率作用である。IC50値は用量反応式を使用して計算した。表1において試験した化合物について要約する。
【0230】
インビトロ試験の記載において使用された略語には、以下が含まれる。
SGLT2 ナトリウム/グルコース共輸送体2型
AMG メチル−α−Dグルコピラノシド
DMEM ダルベッコ改変イーグル培地
IC50 50%阻害濃度
FBS ウシ胎児血清
DMSO ジメチルスルホキシド
SDS ドデシル硫酸ナトリウム
CHO−FlpIn FRT部位を含有するチャイニーズハムスター卵巣細胞
**試験化合物1について、細胞を試験化合物1と共に15分間プレインキュベートし、その後ウェル毎に非標識AMG(Aldrich、St.Louis、MO))中の適当な量のAMG(40nCi AMG[U−14C](Perkin Elmer、Waltham、MA)を加え、200マイクロMのAMGの最終濃度を得た。
【0231】
【表1】

【0232】
本出願に亘って、様々な公開資料を参照する。これらの公開資料の開示はその全体が、全ての目的のために参照により本出願に組み込まれている。
【0233】
本発明の範囲または趣旨を逸脱することなく、本発明において様々な改変および変形を行えることは当業者であれば明らかであろう。本発明の他の実施形態は、ここにおいて開示されている本発明の明細書および実施を考慮すると当業者であれば明らかであろう。実施例を含めた明細書は例示のみとして考えられ、本発明の本当の範囲および精神は下記の特許請求の範囲によって示されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)または式(B)の化合物、および薬学的に許容できるその塩
【化1】

[式中、
Rは、−OHであり、あるいは、Rが−O−C(O)−(C〜C)アルキルまたは−O−C(O)−アリールであるとき、Rは、Rと同じ、または−OHであり、
は、−OH、F、Cl、−O−C(O)−(C〜C)アルキル、−O−C(O)−アリール、−O−C(O)−O−(C〜C)アルキルまたは−O−C(O)−O−アリールであり、
は、−OH、−O−(C〜C)アルキルまたは−O−CH−CH−O−R2aであり、
ただし、Rが−OHであり、Rが−OHであるとき、Rは、−OHまたは−O−CH−CH−O−R2aであり、
2aは、H、−C(O)−(C〜C)アルキル、−C(O)−アリール、−C(O)−O−(C〜C)アルキルまたは−C(O)−O−アリールである]。
【請求項2】
前記化合物が、式(A)の化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、−OHである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
が、−OHである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、−O−CHCHOHである、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
酢酸(1R,2S,3S,4R,5S)−3,4−ジアセトキシ−1−アセトキシメチル−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステル;
酢酸(1R,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−2,3,4−トリヒドロキシ−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−1−イルメチルエステル;
炭酸(1R,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−2,3,4−トリヒドロキシ−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−1−イルメチルエステルエチルエステル;
[D]−(1S,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール;
酢酸2−{4−[2−クロロ−5−((1S,2S,3S,4R,5S)−2,3,4−トリヒドロキシ−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−5−イル)−ベンジル]−フェノキシ}−エチルエステル;
(1S,2S,3S,4R,5S)−5−{4−クロロ−3−[4−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−ベンジル]−フェニル}−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール;および
(1S,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−エトキシ−ベンジル)−フェニル]−1−フルオロメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール
からなる群から選択される化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項7】
化合物(1S,2S,3S,4R,5S)−5−[4−クロロ−3−(4−ヒドロキシ−ベンジル)−フェニル]−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール。
【請求項8】
(1S,2S,3S,4R,5S)−5−{4−クロロ−3−[(4−エトキシ−フェニル)−ヒドロキシ−メチル]−フェニル}−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール;
(1S,2S,3S,4R,5S)−5−{4−クロロ−3−[(R)−(4−エトキシ−フェニル)−ヒドロキシ−メチル]−フェニル}−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール;および
(1S,2S,3S,4R,5S)−5−{4−クロロ−3−[(S)−(4−エトキシ−フェニル)−ヒドロキシ−メチル]−フェニル}−1−ヒドロキシメチル−6,8−ジオキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオールからなる群から選択される化合物。
【請求項9】
(i)請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩と、(ii)薬学的に許容できる添加剤、賦形剤、または担体とを含む医薬組成物。
【請求項10】
前記化合物またはその前記治療的に許容できる塩が、治療有効量で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
抗肥満剤および抗糖尿病剤からなる群から選択される少なくとも1種の付加的な薬剤をさらに含む、請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗肥満剤が、リモナバント、タラナバント、スリナバント、オテナバント、SLV319(CAS番号464213−10−3)、AVE1625(CAS番号358970−97−5))、ジルロタピド、ミトラタピド、インプリタピド、R56918(CAS番号403987)、CAS番号913541−47−6、ロルカセリン、セチリスタット、PYY3−36、ナルトレキソン、オレオイル−エストロン、オビネピチド、プラムリンチド、テソフェンシン、レプチン、リラグルチド、ブロモクリプチン、オルリスタット、エキセナチド、AOD−9604(CAS番号221231−10−3)およびシブトラミンからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗糖尿病剤が、メトホルミン、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、ジアビネス、グリベンクラミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリド、グリクラジド、グリペンチド、グリキドン、グリソラミド、トラザミド、トルブタミド、テンダミスタット、トレスタチン、アカルボース、アジポシン、カミグリボース、エミグリタート、ミグリトール、ボグリボース、プラジミシン−Q、サルボスタチン、バラグリタゾン、シグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、イサグリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、エキセンディン−3、エキセンディン−4、リラグルチド、トロズスクエミン、レスベラトロール、ヒルチオサール抽出物、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチンおよびサクサグリプチンからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
動物において肥満および肥満に関連する障害を治療する方法であって、このような治療を必要としている動物に、治療有効量の請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩を投与するステップを含む、方法。
【請求項15】
動物において2型糖尿病および糖尿病に関連する障害を治療、または進行もしくは発症を遅延させる方法であって、このような治療を必要としている動物に、治療有効量の請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩を投与するステップを含む、方法。
【請求項16】
動物において肥満症および肥満症に関連する障害を治療する方法であって、このような治療を必要としている動物に、請求項9から13のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項17】
動物において2型糖尿病および糖尿病に関連する障害を治療、または進行もしくは発症を遅延させる方法であって、このような治療を必要としている動物に、請求項9から13のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項18】
動物においてSGLT2の阻害によって調節される疾患、状態または障害を治療する方法であって、このような治療を必要としている動物に、
(i)請求項1から8に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる添加剤、賦形剤、または担体を含む第1の組成物と、
(ii)抗肥満剤および抗糖尿病剤からなる群から選択される少なくとも1種の付加的な薬剤、ならびに薬学的に許容できる添加剤、賦形剤、または担体を含む第2の組成物と
を含む2種の別々の医薬組成物を投与するステップを含み、
SGLT2の阻害によってモジュレートされる前記疾患、状態または障害が、肥満症、肥満症が関連する障害、2型糖尿病、および糖尿病が関連する障害からなる群から選択される、方法。
【請求項19】
前記抗肥満剤が、リモナバント、タラナバント、スリナバント、オテナバント、SLV319(CAS番号464213−10−3)、AVE1625(CAS番号358970−97−5))、ジルロタピド、ミトラタピド、インプリタピド、R56918(CAS番号403987)、CAS番号913541−47−6、ロルカセリン、セチリスタット、PYY3−36、ナルトレキソン、オレオイル−エストロン、オビネピチド、プラムリンチド、テソフェンシン、レプチン、リラグルチド、ブロモクリプチン、オルリスタット、エキセナチド、AOD−9604(CAS番号221231−10−3)およびシブトラミンからなる群から選択され、前記抗糖尿病剤が、メトホルミン、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、ジアビネス、グリベンクラミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリド、グリクラジド、グリペンチド、グリキドン、グリソラミド、トラザミド、トルブタミド、テンダミスタット、トレスタチン、アカルボース、アジポシン、カミグリボース、エミグリタート、ミグリトール、ボグリボース、プラジミシン−Q、サルボスタチン、バラグリタゾン、シグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、イサグリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、エキセンディン−3、エキセンディン−4、リラグルチド、トロズスクエミン、レスベラトロール、ヒルチオサール抽出物、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチンおよびサクサグリプチンからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の組成物および前記第2の組成物が、同時に投与される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の組成物および前記第2の組成物が、順次および任意の順序で投与される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項22】
ナトリウム−グルコース輸送体2の阻害によってモジュレートされる疾患、状態または障害を治療するための医薬の製造における、請求項1から8に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩の使用。

【公表番号】特表2013−509393(P2013−509393A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535982(P2012−535982)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054775
【国際公開番号】WO2011/051864
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】