説明

ジオキサアンタントレン系化合物及び電子デバイス

【課題】高温雰囲気下にあっても特性に変化が生じ難い有機半導体材料の提供。
【解決手段】下記ジオキサアンタントレン系化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ジオキサアンタントレン系化合物、及び、係るジオキサアンタントレン系化合物を含む半導体層を備えた電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体材料から成る半導体層を備えた半導体装置等の電子デバイスが注目されている。このような電子デバイスは、無機材料から成る半導体層を備えた構成と比較して、半導体層を低温で成膜することが可能である。そのため、プラスチック等の、耐熱性は低いが、可撓性を有する基板上への形成が可能であり、多機能化と共に低コスト化も期待されている。
【0003】
現在、半導体層を構成する有機半導体材料として、例えば、下記の構造式を有するアントラセン、ナフタセン、ペンタセン等のポリアセン化合物が広く研究されている。また、本出願人は、例えば、特開2010−006794において、各種のジオキサアンタントレン系化合物、及び、係るジオキサアンタントレン系化合物を用いた半導体装置を提案している。
【0004】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−006794
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特開2010−006794に開示された各種のジオキサアンタントレン系化合物において、下記の構造式を有するジオキサアンタントレン系化合物から成る薄膜は、溶解性、分子配向性を向上させるために用いている直鎖アルキル基に起因して、高温雰囲気下にあっては、液晶性を発現し、分子配列に変化が生じる場合がある。即ち、メソフェイズ(液晶転移)が生じる場合がある。そして、このような分子配列の変化は、電子デバイス、例えば、半導体装置の特性に影響を及ぼし、移動度の低下やオン電流の低下等を引き起こす。また、電子デバイスの製造工程における高温のプロセスや電子デバイスの使用環境、使用条件等によっても影響を受けない程度に十分に高い融点を有する有機半導体材料が強く要望されている。
【0007】

【0008】
従って、本開示の目的は、高温雰囲気下にあっても特性に変化が生じ難い有機半導体材料(具体的には、ジオキサアンタントレン系化合物)、及び、係る有機半導体材料から成る半導体層を備えた電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本開示の第1の態様に係るジオキサアンタントレン系化合物は、以下の構造式(1−1)、又は、構造式(1−2)、又は、構造式(1−3)で表される。
【0010】

【0011】
ここで、
置換基Aは、以下の構造式(2−1)、又は、構造式(2−2)で表され、
1,X2,X3,Y1,Y2,Y3,Y4,Y5,Y6,Y7,Y8は、それぞれ、水素原子、又は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、芳香族複素環、複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、ハロゲン原子、フッ化炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及び、シリル基から成る群から選択された1種類の置換基である。
【0012】

【0013】
あるいは又、上記の目的を達成するための本開示の第2の態様に係るジオキサアンタントレン系化合物は、以下の構造式(3−1)、又は、構造式(3−2)で表される。
【0014】

【0015】
上記の目的を達成するための本開示の電子デバイスは、
第1電極、
第1電極と離間して設けられた第2電極、及び、
第1電極から第2電極に亙り設けられた、有機半導体材料から成る能動層、
を少なくとも備えており、
有機半導体材料は、上記の本開示の第1の態様あるいは第2の態様に係るジオキサアンタントレン系化合物を含む。
【発明の効果】
【0016】
本開示のジオキサアンタントレン系化合物、あるいは又、本開示の電子デバイスにおいて用いられるジオキサアンタントレン系化合物(以下、『PXX系化合物』と略称する場合がある)にあっては、6,12−ジオキサアンタントレン(ペリキサンテノキサンテン,6,12-dioxaanthanthrene)の3位及び9位、あるいは、2位及び8位、あるいは、1位及び7位がフェニル基で置換され、更には、フェニル基に環状アルキル基(シクロアルカン)が導入されている。そして、その結果、高温雰囲気下にあっても液晶性を発現することがなく、即ち、分子配列に変化が生じることがなく、高温雰囲気下にあっても電子デバイスの特性に変化が生じ難い。また、電子デバイスの製造工程における高温のプロセスや電子デバイスの使用環境、使用条件等によっても影響を受けない程度に十分に高い融点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1の(A)及び(B)は、実施例2の電子デバイスの製造方法の概要を説明するための基体等の模式的な一部端面図である。
【図2】図2の(A)及び(B)は、実施例3の電子デバイスの製造方法の概要を説明するための基体等の模式的な一部端面図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、実施例4の電子デバイスの製造方法の概要を説明するための基体等の模式的な一部端面図である。
【図4】図4の(A)〜(C)は、実施例5の電子デバイスの製造方法の概要を説明するための基体等の模式的な一部端面図である。
【図5】図5の(A)及び(B)は、実施例6の電子デバイスの模式的な一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示のジオキサアンタントレン系化合物及び電子デバイス、全般に関する説明
2.実施例1(本開示のジオキサアンタントレン系化合物)
3.実施例2(本開示の電子デバイス、3端子型電子デバイス)
4.実施例3(実施例2の変形)
5.実施例4(実施例2の別の変形)
6.実施例5(実施例2の更に別の変形)
7.実施例6(実施例2の更に別の変形、2端子型電子デバイス)、その他
【0019】
[本開示のジオキサアンタントレン系化合物及び電子デバイス、全般に関する説明]
本開示の第1の態様に係るジオキサアンタントレン系化合物において、X1,X2,X3,Y1,Y2,Y3,Y4,Y5,Y6,Y7,Y8は、それぞれ、水素原子、又は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、芳香族複素環、及び、ハロゲン原子から成る群から選択された1種類の置換基であることが好ましい。
【0020】
本開示の第1の態様に係るジオキサアンタントレン系化合物、あるいは、本開示の電子デバイスにおける能動層を構成する有機半導体材料である本開示の第1の態様に係るジオキサアンタントレン系化合物において、X1,X2,X3,Y1,Y2,Y3,Y4,Y5,Y6,Y7,Y8のそれぞれを構成するアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等を挙げることができる。尚、直鎖、分岐は問わない。また、シクロアルキル基として、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができるし;アルケニル基として、ビニル基等を挙げることができるし;アルキニル基として、エチニル基等を挙げることができるし;アリール基として、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等を挙げることができるし;アリールアルキル基として、メチルアリール基、エチルアリール基、イソプロピルアリール基、ノルマルブチルアリール基、p−トリル基、p−エチルフェニル基、p−イソプロピルフェニル基、p−イソブチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−ノニルフェニル基を挙げることができるし;芳香族複素環として、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等を挙げることができるし;複素環基として、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等を挙げることができるし;アルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等を挙げることができるし;シクロアルコキシ基として、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができるし;アリールオキシ基として、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等を挙げることができるし;アルキルチオ基として、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等を挙げることができるし;シクロアルキルチオ基として、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等を挙げることができるし;アリールチオ基として、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等を挙げることができるし;アルコキシカルボニル基として、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基等を挙げることができるし;アリールオキシカルボニル基として、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等を挙げることができるし;スルファモイル基として、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等を挙げることができるし;アシル基として、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等を挙げることができるし;アシルオキシ基として、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等を挙げることができるし;アミド基として、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等を挙げることができるし;カルバモイル基として、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等を挙げることができるし;ウレイド基として、メチルウレイド基、エチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等を挙げることができるし;スルフィニル基として、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等を挙げることができるし;アルキルスルホニル基として、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等を挙げることができるし;アリールスルホニル基として、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等を挙げることができるし;アミノ基として、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等を挙げることができるし;ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができるし;フッ化炭化水素基として、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等を挙げることができる。更には、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基を挙げることができるし、シリル基として、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等を挙げることができる。ここで、以上で例示した置換基は、上記の置換基によって更に置換されていてもよい。また、これらの置換基は、複数が互いに結合して環を形成してもよい。
【0021】
本開示の電子デバイスは、所謂3端子構造を有していてもよいし、2端子構造を有していてもよい。前者の場合にあっては、電子デバイスは、絶縁層、及び、絶縁層を介して、第1電極と第2電極との間に位置する能動層の部分に対向して設けられた制御電極を更に備えている。そして、このような3端子構造を有する電子デバイスによって、例えば、電界効果トランジスタ、より具体的には、薄膜トランジスタ(TFT)が構成され、あるいは又、発光素子が構成される。即ち、制御電極、第1電極及び第2電極への電圧の印加によって能動層が発光する発光素子(有機発光素子、有機発光トランジスタ)を構成することができる。これらの電子デバイスにおいては、制御電極に印加される電圧によって、第1電極から第2電極に向かって能動層に流れる電流が制御される。ここで、発光素子において、能動層を構成する有機半導体材料は、制御電極に印加される電圧に基づく変調による電荷の蓄積や、注入された電子と正孔(ホール)との再結合に基づく発光機能を有し、発光強度は、第1電極から第2電極に流れる電流の絶対値に比例し、制御電極に印加する電圧と、第1電極及び第2電極の間に印加する電圧とによって変調することができる。尚、電子デバイスが、電界効果トランジスタとしての機能を発揮するか、発光素子として機能するかは、第1電極及び第2電極への電圧印加状態(バイアス)に依存する。先ず、第2電極からの電子注入が起こらない範囲のバイアスを加えた上で制御電極を変調することにより、第1電極から第2電極へ電流が流れる。これがトランジスタ動作である。一方、正孔が十分に蓄積された上で第1電極及び第2電極へのバイアスが増加されると電子注入が始まり、正孔との再結合によって発光が起こる。また、2端子構造を有する電子デバイスとして、能動層への光の照射によって第1電極と第2電極との間に電流が流れる光電変換素子を挙げることができる。電子デバイスから光電変換素子を構成する場合、光電変換素子によって、具体的には、太陽電池や、イメージセンサー、光センサーといった各種のセンサーを構成することができる。あるいは又、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)あるいは有機EL表示装置を構成することもできるし、化学物質センサーとして機能させることもできる。即ち、電子デバイスは、表示素子、表示装置、太陽電池又はセンサーである形態とすることができる。尚、3端子構造を有する電子デバイスからも光電変換素子を構成することができ、この場合、制御電極への電圧の印加は行わなくともよいし、行ってもよく、後者の場合、制御電極への電圧の印加によって、流れる電流の変調を行うことが可能となる。また、本開示のジオキサアンタントレン系化合物から有機EL素子の発光部を構成することもできる。
【0022】
第1電極や第2電極、能動層は、基体上に形成され、あるいは又、基体の上方に形成される。
【0023】
本開示の電子デバイスから半導体装置を構成する場合、半導体装置として、具体的には、ボトムゲート/ボトムコンタクト型の電界効果トランジスタ(FET)、ボトムゲート/トップコンタクト型のFET、トップゲート/ボトムコンタクト型のFET、トップゲート/トップコンタクト型のFETを挙げることができる。
【0024】
半導体装置を、ボトムゲート/ボトムコンタクト型の電界効果トランジスタ(FET)から構成する場合、係るボトムゲート/ボトムコンタクト型のFETは、
(A)基体上に形成されたゲート電極(制御電極)、
(B)ゲート電極及び基体上に形成されたゲート絶縁層(絶縁層)、
(C)ゲート絶縁層上に形成されたソース/ドレイン電極(第1電極及び第2電極)、並びに、
(D)ソース/ドレイン電極の間であってゲート絶縁層上に形成され、能動層によって構成されたチャネル形成領域、
を備えている。
【0025】
あるいは又、半導体装置を、ボトムゲート/トップコンタクト型のFETから構成する場合、係るボトムゲート/トップコンタクト型のFETは、
(A)基体上に形成されたゲート電極(制御電極)、
(B)ゲート電極及び基体上に形成されたゲート絶縁層(絶縁層)、
(C)ゲート絶縁層上に形成され、能動層によって構成されたチャネル形成領域及びチャネル形成領域延在部、並びに、
(D)チャネル形成領域延在部上に形成されたソース/ドレイン電極(第1電極及び第2電極)、
を備えている。
【0026】
あるいは又、半導体装置を、トップゲート/ボトムコンタクト型のFETから構成する場合、係るトップゲート/ボトムコンタクト型のFETは、
(A)基体上に形成されたソース/ドレイン電極(第1電極及び第2電極)、
(B)ソース/ドレイン電極の間の基体上に形成され、能動層によって構成されたチャネル形成領域、
(C)ソース/ドレイン電極及びチャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁層(絶縁層)、並びに、
(D)ゲート絶縁層上に形成されたゲート電極(制御電極)、
を備えている。
【0027】
あるいは又、半導体装置を、トップゲート/トップコンタクト型のFETから構成する場合、係るトップゲート/トップコンタクト型のFETは、
(A)基体上に形成され、能動層によって構成されたチャネル形成領域及びチャネル形成領域延在部、
(B)チャネル形成領域延在部上に形成されたソース/ドレイン電極(第1電極及び第2電極)、
(C)ソース/ドレイン電極及びチャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁層(絶縁層)、並びに、
(D)ゲート絶縁層上に形成されたゲート電極(制御電極)、
を備えている。
【0028】
ここで、基体は、酸化ケイ素系材料(例えば、SiOXやスピンオンガラス(SOG)、酸窒化ケイ素(SiON));窒化ケイ素(SiNY);酸化アルミニウム(Al23)やHfO2等の金属酸化物高誘電絶縁膜;金属酸化物;金属塩から構成することができる。基体をこれらの材料から構成する場合、基体を、以下に挙げる材料から適宜選択された支持体上に(あるいは支持体の上方に)形成すればよい。即ち、支持体として、あるいは又、上述した基体以外の基体として、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミドに例示される有機ポリマー(高分子材料から構成された可撓性を有するプラスチック・フィルムやプラスチック・シート、プラスチック基板といった高分子材料の形態を有する)を挙げることができ、あるいは又、雲母等の天然鉱物系絶縁材料、金属系半導体材料、分子性半導体材料を挙げることができる。このような可撓性を有する高分子材料から構成された基体を使用すれば、例えば曲面形状を有する画像表示装置(ディスプレイ装置)や電子機器への電子デバイスの組込みあるいは一体化が可能となる。あるいは又、基体として、各種ガラス基板や、表面に絶縁膜が形成された各種ガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成されたシリコン基板、表面に絶縁膜が形成された導電性基板(金やアルミニウム、ステンレス鋼等の金属や合金から成る基板、高配向性グラファイトから成る基板)を挙げることができる。電気絶縁性の支持体としては、以上に説明した材料から適切な材料を選択すればよい。支持体として、その他、導電性基板(金やアルミニウム等の金属から成る基板、高配向性グラファイトから成る基板、ステンレス鋼基板等)を挙げることができる。また、電子デバイスの構成、構造によっては、電子デバイスが支持部材上に設けられているが、この支持部材も上述した材料から構成することができる。
【0029】
制御電極、第1電極、第2電極、ゲート電極やソース/ドレイン電極、配線(以下、これらを総称して、『制御電極等』と呼ぶ)を構成する材料として、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)、インジウム(In)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、ルテニウム(Rh)、ルビジウム(Rb)、モリブデン(Mo)等の金属、あるいは、これらの金属元素を含む合金、これらの金属から成る導電性粒子、これらの金属を含む合金の導電性粒子、不純物を含有したポリシリコン、炭素系材料等の導電性物質を挙げることができるし、これらの元素を含む層の積層構造とすることもできる。更には、制御電極等を構成する材料として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸[PEDOT/PSS]やTTF−TCNQ、ポリアニリンといった有機材料(導電性高分子)を挙げることもできる。制御電極等を構成する材料は、同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0030】
制御電極等の形成方法として、これらを構成する材料にも依るが、物理的気相成長法(PVD法);パルスレーザ堆積法(PLD)、アーク放電法;MOCVD法を含む各種の化学的気相成長法(CVD法);スピンコート法;スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、オフセット印刷法、反転オフセット印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、凸版印刷、フレキソ印刷、マイクロコンタクト法といった各種印刷法;エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、ナイフコーター法、スクイズコーター法、リバースロールコーター法、トランスファーロールコーター法、グラビアコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、スリットコーター法、スリットオリフィスコーター法、カレンダーコーター法、キャスティング法、キャピラリーコーター法、バーコーター法、浸漬法といった各種コーティング法;スタンプ法;キャスト法;ディスペンサーを用いる方法;スプレー法;リフト・オフ法;シャドウマスク法;並びに、電解メッキ法や無電解メッキ法あるいはこれらの組合せといったメッキ法の内のいずれかと、必要に応じてパターニング技術との組合せを挙げることができる。尚、PVD法として、(a)電子ビーム加熱法、抵抗加熱法、フラッシュ蒸着、ルツボを加熱する方法等の各種真空蒸着法、(b)プラズマ蒸着法、(c)2極スパッタリング法、直流スパッタリング法、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、バイアススパッタリング法等の各種スパッタリング法、(d)DC(direct current)法、RF法、多陰極法、活性化反応法、電界蒸着法、高周波イオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法等の各種イオンプレーティング法を挙げることができる。制御電極等をエッチング方法に基づき形成する場合、ドライエッチング法やウェットエッチング法を採用すればよく、ドライエッチング法として、例えば、イオンミリングや反応性イオンエッチング(RIE)を挙げることができる。また、制御電極等を、レーザアブレーション法、マスク蒸着法、レーザ転写法等に基づき形成することもできる。
【0031】
絶縁層(ゲート絶縁層)を構成する材料として、酸化ケイ素系材料;窒化ケイ素(SiNY);酸化アルミニウム(Al23)やHfO2等の金属酸化物高誘電絶縁膜にて例示される無機系絶縁材料だけでなく、ポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリビニルフェノール(PVP);ポリビニルアルコール(PVA);ポリイミド;ポリカーボネート(PC);ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリスチレン;N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)等のシラノール誘導体(シランカップリング剤);オクタデカンチオール、ドデシルイソシアネイト等の一端に制御電極(ゲート電極)と結合可能な官能基を有する直鎖炭化水素類にて例示される有機系絶縁材料(有機ポリマー)を挙げることができるし、これらの組み合わせを用いることもできる。ここで、酸化ケイ素系材料として、酸化シリコン(SiOX)、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、酸化窒化シリコン(SiON)、SOG(スピンオングラス)、低誘電率材料[例えば、ポリアリールエーテル、シクロパーフルオロカーボンポリマー及びベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、アモルファスフッ素樹脂(例えば、旭硝子株式社製CYTOP)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、アモルファスカーボン、有機SOG]を例示することができる。
【0032】
絶縁層(ゲート絶縁層)は、上述の各種PVD法;各種CVD法;スピンコート法;上述した各種印刷法;上述した各種コーティング法;浸漬法;キャスティング法;ゾル−ゲル法;電着法;シャドウマスク法;及び、スプレー法の内のいずれかによって形成することができる。あるいは又、制御電極(ゲート電極)の表面を酸化あるいは窒化することによって形成することができるし、制御電極の表面に酸化膜や窒化膜を成膜することで得ることもできる。制御電極の表面を酸化する方法として、制御電極を構成する材料にも依るが、O2プラズマを用いた酸化法、陽極酸化法を例示することができる。また、制御電極の表面を窒化する方法として、制御電極を構成する材料にも依るが、N2プラズマを用いた窒化法を例示することができる。あるいは又、例えば、Au電極に対しては、一端をメルカプト基で修飾された直鎖状炭化水素のように、制御電極と化学的に結合を形成し得る官能基を有する絶縁性分子によって、浸漬法等の方法で自己組織的に制御電極表面を被覆することで、制御電極(ゲート電極)の表面に絶縁層(ゲート絶縁層)を形成することもできる。あるいは又、制御電極(ゲート電極)の表面をシラノール誘導体(シランカップリング剤)により修飾することで、絶縁層(ゲート絶縁層)を形成することもできる。
【0033】
能動層、あるいは、チャネル形成領域及びチャネル形成領域延在部の形成方法として、上述した各種PVD法;リフト・オフ法;シャドウマスク法を採用することができる。ジオキサアンタントレン系化合物に添加物(例えば、n型不純物やp型不純物といった、所謂ドーピング材料)を加えることもできる。
【0034】
本開示の電子デバイスを組み込む装置として、例えば、画像表示装置を例示することができる。ここで、画像表示装置として、所謂デスクトップ型のパーソナルコンピュータ、ノートブック型のパーソナルコンピュータ、モバイル型のパーソナルコンピュータ、PDA(パーソナル・デジタル・アシスト)、携帯電話、ゲーム機、電子ブック、電子新聞等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板等の掲示板、コピー機、プリンター用紙代替のリライタブルペーパー、電卓、家電製品の表示部、ポイントカード等のカード表示部、電子広告、電子POP等における各種画像表示装置(例えば、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、液晶表示装置、プラズマ表示装置、電気泳動表示装置、冷陰極電界放出表示装置等)を挙げることができる。また、各種照明装置を挙げることもできる。
【0035】
電子デバイスを、各種画像表示装置や各種電子機器に適用、使用する場合、支持部材に多数の電子デバイスを集積したモノリシック集積回路としてもよいし、各電子デバイスを切断して個別化し、ディスクリート部品として使用してもよい。また、電子デバイスを樹脂にて封止してもよい。
【実施例1】
【0036】
実施例1は、本開示の第1の態様及び第2の態様に係るジオキサアンタントレン系化合物(PXX系化合物)に関する。実施例1のPXX系化合物は、以下の構造式(1−1)、あるいは又、以下の構造式(3−1)で表される。尚、このようなPXX系化合物を、実施例−1AのPXX系化合物と呼ぶ。ここで、構造式(1−1)において、置換基Aは、前述した構造式(2−1)で表され、更には、構造式(2−1)におけるX1,X2,X3,Y1,Y2,Y3,Y4,Y5,Y6,Y7,Y8は、それぞれ、水素原子(H)であり、6,12−ジオキサアンタントレンの3位及び9位がフェニル基で置換され、更には、フェニル基の3位及び4位に環状アルキル基(シクロアルカン)が導入されている。
【0037】

【0038】

【0039】
このような実施例−1AのPXX系化合物は、ペリキサンテノキサンテンと臭素とを反応させて3,9−ジブロモペリキサンテノキサンテンを得た後、パラジウム触媒の存在下、3.5当量の5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフタレニルボロン酸との間でクロスカップリング反応させることで得ることができた。
【0040】
あるいは又、実施例1のPXX系化合物は、上記の構造式(1−1)、あるいは又、以下の構造式(3−2)で表される。尚、このようなPXX系化合物を、実施例−1BのPXX系化合物と呼ぶ。ここで、構造式(1−1)において、置換基Aは、前述した構造式(2−2)で表され、更には、構造式(2−2)におけるX1,X2,X3,Y1,Y2,Y3,Y4,Y5,Y6,Y7,Y8は、それぞれ、水素原子(H)であり、6,12−ジオキサアンタントレンの3位及び9位がフェニル基で置換され、更には、フェニル基の2位及び3位に環状アルキル基(シクロアルカン)が導入されている。
【0041】

【0042】
このような実施例−1BのPXX系化合物は、ペリキサンテノキサンテンと臭素とを反応させて3,9−ジブロモペリキサンテノキサンテンを得た後、パラジウム触媒の存在下、3.5当量の5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニルボロン酸との間でクロスカップリング反応させることで得ることができた。
【0043】
PXX系化合物の融点及びメソフェイズ転移温度は、TG−DTA(示差熱-熱重量同時測定)及びDSC(示差走査熱量測定)に基づき求めることができる。
【0044】
比較例−1Aとして以下の構造式(A)を有する化合物(C4Ph−PXX)についても、融点及びメソフェイズ転移温度を測定した。測定結果を、以下の表1に示す。
【0045】

【0046】
実施例−1AのPXX系化合物にあっては、比較例−1Aの化合物よりも高い融点を示した。また、実施例−1A及び実施例−1BのPXX系化合物にあっては、メソフェイズ転移温度を測定できなかった。即ち、メソフェイズ転移が生じなかった。
【0047】
[表1]
融点 転移温度
実施例−1A 349゜C 認められず
実施例−1B 認められず
比較例−1A 231゜C 220゜C付近
【0048】
以上のとおり、実施例1のジオキサアンタントレン系化合物にあっては、6,12−ジオキサアンタントレンの3位及び9位がフェニル基で置換され、更には、フェニル基に環状アルキル基(シクロアルカン)が導入されているが故に、高温雰囲気下にあっても液晶性を発現することがない。即ち、分子配列に変化が生じることがない。また、高い融点を有している。
【実施例2】
【0049】
実施例2は、本開示のジオキサアンタントレン系化合物を含む半導体層を備えた電子デバイスに関する。実施例2あるいは後述する実施例3〜実施例6の電子デバイスは、
第1電極、
第1電極と離間して設けられた第2電極、及び、
第1電極から第2電極に亙り設けられた、有機半導体材料から成る能動層、
を少なくとも備えており、
有機半導体材料は本開示のジオキサアンタントレン系化合物を含む。具体的には、実施例2あるいは後述する実施例3〜実施例5の電子デバイスは、
(A)制御電極、
(B)第1電極及び第2電極、並びに、
(C)第1電極と第2電極の間であって、絶縁層を介して制御電極と対向して設けられ、金属酸化物半導体から成る能動層、
を備えた3端子型電子デバイスである。
【0050】
より具体的には、実施例2あるいは後述する実施例3〜実施例5の3端子型電子デバイスは、制御電極に印加される電圧によって、第1電極から第2電極に向かって能動層に流れる電流が制御される電界効果トランジスタ(FET)であり、制御電極がゲート電極に相当し、第1電極及び第2電極がソース/ドレイン電極に相当し、絶縁層がゲート絶縁膜に相当し、能動層がチャネル形成領域に相当する。
【0051】
即ち、図1の(B)に模式的な一部断面図を示すように、実施例2の電子デバイスは、半導体装置、具体的には、ボトムゲート/ボトムコンタクト型の電界効果トランジスタ[より具体的には、薄膜トランジスタ(TFT)]であり、
(A)基体10上に形成されたゲート電極14(制御電極に相当する)、
(B)ゲート電極14及び基体10上に形成されたゲート絶縁層15(絶縁層に相当する)、
(C)ゲート絶縁層15上に形成されたソース/ドレイン電極16(第1電極及び第2電極に相当する)、並びに、
(D)ソース/ドレイン電極16の間であってゲート絶縁層15上に形成され、能動層20によって構成されたチャネル形成領域17、
を備えている。
【0052】
以下、基体等の模式的な一部端面図である図1の(A)及び(B)を参照して、実施例2の電子デバイス(電界効果トランジスタ)の製造方法の概要を説明する。
【0053】
[工程−200]
先ず、基体10上にゲート電極14を形成する。具体的には、ガラス基板11の表面に形成されたSiO2から成る絶縁膜12上に、ゲート電極14を形成すべき部分が除去されたレジスト層(図示せず)を、リソグラフィ技術に基づき形成する。その後、密着層としてのチタン(Ti)層(図示せず)、及び、ゲート電極14としての金(Au)層を、順次、真空蒸着法にて全面に成膜し、その後、レジスト層を除去する。こうして、所謂リフト・オフ法に基づき、ゲート電極14を得ることができる。尚、ガラス基板11の表面に形成されたSiO2から成る絶縁膜12上に、印刷法に基づきゲート電極14を形成することもできる。
【0054】
[工程−210]
次に、ゲート電極14を含む基体10(より具体的には、ガラス基板11の表面に形成された絶縁膜12)上に、絶縁層に相当するゲート絶縁層15を形成する。具体的には、SiO2から成るゲート絶縁層15を、スパッタリング法に基づきゲート電極14及び絶縁膜12上に形成する。ゲート絶縁層15の成膜を行う際、ゲート電極14の一部をハードマスクで覆うことによって、ゲート電極14の取出部(図示せず)をフォトリソグラフィ・プロセス無しで形成することができる。
【0055】
[工程−220]
その後、ゲート絶縁層15の上に、密着層としての厚さ1nmのクロム(Cr)層(図示せず)、及び、厚さ25nmの金(Au)層から成るソース/ドレイン電極16を、順次、真空蒸着法に基づき形成する(図1の(A)参照)。これらの層の成膜を行う際、ゲート絶縁層15の一部をハードマスクで覆うことによって、ソース/ドレイン電極16をフォトリソグラフィ・プロセス無しで形成することができる。尚、ゲート絶縁層15の上に、印刷法に基づきソース/ドレイン電極16を形成することもできる。
【0056】
[工程−230]
次いで、チャネル形成領域17(能動層20)をPVD法に基づきゲート絶縁層15及びソース/ドレイン電極16上に形成する。具体的には、実施例−1Aあるいは実施例−1BのPXX系化合物を真空蒸着法により全面に成膜することで、チャネル形成領域17をゲート絶縁層15及びソース/ドレイン電極16上に形成することができる(図1の(B)参照)。尚、所望に応じて、チャネル形成領域17をパターニングしてもよい。
【0057】
例えば、画像表示装置の製造にあっては、この工程に引き続き、こうして得られたTFTの上あるいは上方に、画像表示部(具体的には、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子あるいは電気泳動ディスプレイ素子、半導体発光素子等から成る画像表示部)を、周知の方法に基づき形成すればよい。以下に説明する各実施例においても、電子デバイス(TFT)の製造の完了後、同様の工程を経ることで画像表示部を得ることができる。
【0058】
[工程−240]
あるいは又、全面にパッシベーション膜(図示せず)を形成することで、ボトムゲート/ボトムコンタクト型のFET(具体的には、TFT)を得ることができる。
【0059】
実施例2の電子デバイスにあっては、実施例1において説明したPXX系化合物をチャネル形成領域に用いており、高温雰囲気下にあっても液晶性を発現することがなく、即ち、分子配列に変化が生じることがなく、高温雰囲気下にあっても電子デバイスの特性に変化が生じ難い。また、電子デバイスの製造工程における高温のプロセスや電子デバイスの使用環境、使用条件等によっても影響を受けない程度に十分に高い融点を有している。例えば、TFTを液晶表示装置に組み込み、液晶表示素子の駆動に用いた場合、液晶表示装置の背面に配設された所謂バックライトの発する熱によってTFTの温度上昇が生じ得るが、実施例2のTFTにあっては、高温雰囲気下にあってもTFTの特性に変化が生じ難い。
【実施例3】
【0060】
実施例3は実施例2の変形である。実施例3にあっては、3端子型電子デバイスを、ボトムゲート/トップコンタクト型のFET(具体的には、TFT)とした。実施例3の電界効果トランジスタは、図2の(B)に模式的な一部断面図を示すように、
(A)基体10上に形成されたゲート電極14(制御電極に相当する)、
(B)ゲート電極14及び基体10上に形成されたゲート絶縁層15(絶縁層に相当する)、
(C)ゲート絶縁層15上に形成され、能動層20によって構成されたチャネル形成領域17及びチャネル形成領域延在部18、並びに、
(D)チャネル形成領域延在部18上に形成されたソース/ドレイン電極16(第1電極及び第2電極に相当する)、
を備えている。
【0061】
以下、基体等の模式的な一部端面図である図2の(A)及び(B)を参照して、実施例3の電子デバイス(電界効果トランジスタ)の製造方法の概要を説明する。
【0062】
[工程−300]
先ず、実施例2の[工程−200]と同様にして、基体10上にゲート電極14を形成した後、実施例2の[工程−210]と同様にして、ゲート電極14を含む基体(より具体的には絶縁膜12)上にゲート絶縁層15を形成する。
【0063】
[工程−310]
次いで、実施例2の[工程−230]と同様にして、能動層20をゲート絶縁層15の上に形成する(図2の(A)参照)。こうして、チャネル形成領域17及びチャネル形成領域延在部18を得ることができる。
【0064】
[工程−320]
その後、チャネル形成領域延在部18の上に、チャネル形成領域17を挟むようにソース/ドレイン電極16を形成する(図2の(B)参照)。具体的には、実施例2の[工程−220]と同様にして、ソース/ドレイン電極16としての金(Au)層を真空蒸着法に基づき形成する。成膜を行う際、チャネル形成領域延在部18の一部をハードマスクで覆うことによって、ソース/ドレイン電極16をフォトリソグラフィ・プロセス無しで形成することができる。尚、印刷法に基づきソース/ドレイン電極16を形成することもできる。
【0065】
[工程−330]
次に、全面にパッシベーション膜(図示せず)を形成することで、実施例3の電子デバイスを完成させることができる。
【実施例4】
【0066】
実施例4も実施例2の変形である。実施例4にあっては、3端子型電子デバイスを、トップゲート/ボトムコンタクト型のFET(具体的には、TFT)とした。実施例4の電界効果トランジスタは、図3の(B)に模式的な一部断面図を示すように、
(A)基体10上に形成されたソース/ドレイン電極16(第1電極及び第2電極に相当する)、
(B)ソース/ドレイン電極16の間の基体10上に形成され、能動層20によって構成されたチャネル形成領域17、
(C)ソース/ドレイン電極16及びチャネル形成領域17上に形成されたゲート絶縁層15(絶縁層に相当する)、並びに、
(D)ゲート絶縁層15上に形成されたゲート電極14(制御電極に相当する)、
を備えている。
【0067】
以下、基体等の模式的な一部端面図である図3の(A)及び(B)を参照して、実施例4の電子デバイス(電界効果トランジスタ)の製造方法の概要を説明する。
【0068】
[工程−400]
先ず、実施例2の[工程−220]と同様の方法で、基体に相当する絶縁膜12上にソース/ドレイン電極16を形成した後、実施例2の[工程−230]と同様にして、ソース/ドレイン電極16を含む絶縁膜12上に、チャネル形成領域17(能動層20)を形成する(図3の(A)参照)。
【0069】
[工程−410]
次いで、ゲート絶縁層15を、実施例2の[工程−210]と同様の方法で形成する。その後、チャネル形成領域17の上のゲート絶縁層15の部分に、実施例2の[工程−200]と同様の方法でゲート電極14を形成する(図3の(B)参照)。
【0070】
[工程−420]
その後、全面にパッシベーション膜(図示せず)を形成することで、実施例4の電子デバイスを完成させることができる。
【実施例5】
【0071】
実施例5も実施例2の変形である。実施例5にあっては、3端子型電子デバイスを、トップゲート/トップコンタクト型のFET(具体的には、TFT)とした。実施例5の電界効果トランジスタは、図4の(C)に模式的な一部断面図を示すように、
(A)基体10上に形成され、能動層20によって構成されたチャネル形成領域17及びチャネル形成領域延在部18、
(B)チャネル形成領域延在部18上に形成されたソース/ドレイン電極16(第1電極及び第2電極に相当する)、
(C)ソース/ドレイン電極16及びチャネル形成領域17上に形成されたゲート絶縁層15(絶縁層に相当する)、並びに、
(D)ゲート絶縁層15上に形成されたゲート電極14(制御電極に相当する)、
を備えている。
【0072】
以下、基体等の模式的な一部端面図である図4の(A)〜(C)を参照して、実施例5の電子デバイス(電界効果トランジスタ)の製造方法の概要を説明する。
【0073】
[工程−500]
先ず、実施例2の[工程−230]と同様にして、基体10(より具体的には絶縁膜12)上に能動層20を形成することで、チャネル形成領域17及びチャネル形成領域延在部18を得ることができる(図4の(A)参照)。
【0074】
[工程−510]
次いで、実施例2の[工程−220]と同様の方法で、チャネル形成領域延在部18上にソース/ドレイン電極16を形成する(図4の(B)参照)。
【0075】
[工程−520]
その後、ゲート絶縁層15を実施例2の[工程−210]と同様の方法で形成する。次いで、チャネル形成領域17の上のゲート絶縁層15の部分に、実施例2の[工程−200]と同様の方法でゲート電極14を形成する(図4の(C)参照)。
【0076】
[工程−530]
次に、全面にパッシベーション膜(図示せず)を形成することで、実施例5の電子デバイスを完成させることができる。
【実施例6】
【0077】
実施例6も実施例2の変形であるが、実施例6において、電子デバイスは、具体的には2端子型の電子デバイスから成り、より具体的には、模式的な一部断面図を図5の(A)あるいは図5の(B)に示すように、
第1電極31及び第2電極32、並びに、
第1電極31と第2電極32との間に形成された能動層33、
を備えている。尚、能動層33は、実施例−1Aあるいは実施例−1Bにおいて説明したPXX系化合物を含む。そして、能動層33への光の照射によって電力が生成する。即ち、実施例6の電子デバイスは、光電変換素子あるいは太陽電池として機能する。あるいは又、第1電極31及び第2電極32への電圧の印加によって能動層33が発光する発光素子として機能する。
【0078】
あるいは又、実施例6の電子デバイスは、2端子型電子デバイスから成る化学物質センサーとして機能させることもできる。具体的には、検出すべき化学物質が能動層33に吸着すると、第1電極31と第2電極32との間の電気抵抗値が変化する。従って、第1電極31と第2電極32との間に電流を流し、あるいは又、第1電極31と第2電極32との間に適切な電圧を印加し、能動層33の電気抵抗値を測定することで、能動層33に吸着した化学物質の量(濃度)を測定することができる。尚、化学物質は能動層33において吸着平衡状態となるので、時間が経過し、能動層33が置かれた雰囲気における化学物質の量(濃度)が変化すると、平衡状態も変化する。
【0079】
以上の点を除き、実施例6の電子デバイスの構成、構造は、基本的に、制御電極及び絶縁層を設けない点を除き、実施例2あるいは実施例3において説明した電子デバイスの構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。実施例6の電子デバイスは、実施例2の[工程−220]〜[工程−230]と同様の工程を実行し、あるいは又、実施例3の[工程−310]〜[工程−320]と同様の工程を実行することで得ることができる。
【0080】
実施例6の電子デバイスを太陽電池として機能させた場合、太陽光の集光によって能動層の温度が上昇する虞があるが、能動層を構成する本開示のPXX系化合物は、高温雰囲気下にあっても液晶性を発現することがなく、即ち、分子配列に変化が生じることがなく、また、高い融点を有しており、高温雰囲気下にあっても太陽電池の特性に変化が生じ難い。また、化学物質センサーとして機能させた場合にあっても、雰囲気の温度に影響を受け難い。
【0081】
以上、本開示を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。ジオキサアンタントレン系化合物の具体的な構造(X1,X2,X3,Y1,Y2,Y3,Y4,Y5,Y6,Y7,Y8等)は実施例に限定されるものでないし、電子デバイスの構造や構成、形成条件、製造条件も例示であり、適宜変更することができる。本開示の電子デバイスを、例えば、各種画像表示装置や各種電子機器に適用、使用する場合、支持部材に多数の電子デバイスを集積したモノリシック集積回路としてもよいし、各電子デバイスを切断して個別化し、ディスクリート部品として使用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
10・・・基体、11・・・ガラス基板、12・・・絶縁膜、14・・・ゲート電極(制御電極)、15・・・ゲート絶縁層(絶縁層)、16・・・ソース/ドレイン電極(第1電極及び第2電極)、17・・・チャネル形成領域、18・・・チャネル形成領域延在部、20,33・・・能動層、31・・・第1電極、32・・・第2電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式(1−1)、又は、構造式(1−2)、又は、構造式(1−3)で表されるジオキサアンタントレン系化合物。

ここで、
置換基Aは、以下の構造式(2−1)、又は、構造式(2−2)で表され、
1,X2,X3,Y1,Y2,Y3,Y4,Y5,Y6,Y7,Y8は、それぞれ、水素原子、又は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、芳香族複素環、複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、ハロゲン原子、フッ化炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、及び、シリル基から成る群から選択された1種類の置換基である。

【請求項2】
以下の構造式(3−1)、又は、構造式(3−2)で表されるジオキサアンタントレン系化合物。

【請求項3】
第1電極、
第1電極と離間して設けられた第2電極、及び、
第1電極から第2電極に亙り設けられた、有機半導体材料から成る能動層、
を少なくとも備えており、
有機半導体材料は、請求項1又は請求項2に記載のジオキサアンタントレン系化合物を含む電子デバイス。
【請求項4】
表示素子、表示装置、太陽電池又はセンサーである請求項3に記載の電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87071(P2013−87071A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227839(P2011−227839)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】