説明

ジオキサジンベースの顔料調合物

本発明は、以下を含むことを特徴とする顔料調合物に関する。
a)ベース顔料としての式(I)のジオキサジン化合物
【化1】


並びに
b)顔料分散剤としての一般式(II)のジオキサジン化合物
【化2】


式中、
Qは、式(I)のベース顔料のm価の残基を示し、
Yは、−(CR−を示し、ここで、xは1〜6であり、R及びRは互いに独立して水素又はC−C−アルキルを意味し、
Xは、C原子を介して架橋基Yと結合するイミダゾール残基を意味し、
mは、1〜4の数値を示し、
並びに、
c)アビチエン酸、デヒドロアビチエン酸、ジヒドロアビチエン酸、テトラヒドロアビチエン酸、レボピマル酸、デキストロピマル酸、イソデキストロピマル酸、ロジン樹脂、部分水素化ロジン樹脂、これらの酸の樹脂石鹸、及びこれらの混合物からなる群から選択される樹脂成分。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
顔料調合物はベース顔料と補助剤のコンビネーションである。補助剤は2つのカテゴリーに細分化することができる。すなわち特定の効果を有する基により置換された分散剤であるいわゆる顔料分散剤と、非顔料系補助剤とに分けられる。補助剤は、適用媒体、特に、コーティング、印刷インキ及び液体インキ中での分散を容易にするため並びに顔料のレオロジー特性及び色彩特性を改善するために、顔料に添加される。
【背景技術】
【0002】
印刷インキの製造において、最初の工程において、顔料から高い顔料含有量(>15%)を有するカラーコンセントレートを製造する。その後、このカラーコンセントレートを、印刷インキ濃度(6〜10%)に調整し、印刷インキを製造する。欧州特許出願公開第0321919号A明細書及び欧州特許出願公開第0504923号A明細書に記載のジオキサジン着色剤は、コンセントレートの粘性と貯蔵安定性の面で完全に満足するものではない。これにより、印刷インキの製造及びカラーコンセントレートの貯蔵において問題が生じることになる。さらに、印刷工程のために必要な印刷粘度を調整するために多くの量の溶媒又は多くの量の溶媒と結合剤が必要となる。これにより印刷インキの色強度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0321919号A明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0504923号A明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、前記の欠点を克服した、印刷インキに使用される紫色の色相を有する着色剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、当該課題は、P.V.23、樹脂酸若しくは樹脂酸誘導体、及びジオキサジン化合物ベースの特定の顔料分散剤のコンビネーションからなる顔料調合物により解決されることを見出した。
【0006】
本発明の対象は、以下のものを含むことを特徴とする顔料調合物である。
a)ベース顔料としての式(I)のジオキサジン化合物
【化1】

並びに
b)顔料分散剤としての一般式(II)のジオキサジン化合物
【化2】

式中、
Qは、式(I)のベース顔料のm価の残基を示し、
Yは、−(CR−を示し、ここで、xは1〜6であり、R及びRは互いに独立して水素又はC−C−アルキルを意味し、
Xは、C原子を介して架橋基Yと結合するイミダゾール残基を意味し、
mは、1〜4の数値を示し、
並びに、
c)アビチエン酸、デヒドロアビチエン酸、ジヒドロアビチエン酸、テトラヒドロアビチエン酸、レボピマル酸、デキストロピマル酸、イソデキストロピマル酸、ロジン樹脂、部分水素化ロジン樹脂、これらの酸の樹脂石鹸、及びこれらの混合物からなる群から選択される樹脂成分。
【0007】
式(II)において、
Yは、メチレン、エチレン又はプロピレンであり、
Xは、5位で架橋基Yと結合するイミダゾリルであり、
mは、1〜2.5の数である、
顔料分散剤が好ましい。
【0008】
本発明の目的にとりさらに特に好ましいものは、式(III)の顔料分散剤である。
【化3】

式中、
Qは、前記の意味を有し、
mは、1〜2.5、特に1〜2の数値を表す。
【0009】
好ましい樹脂成分としては、商業的に入手可能なロジン種、並びに樹脂石鹸とも称される前記の酸の塩であり、ここでカチオンは金属カチオンであり、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、土類金属及び遷移金属からなる群から選択され、例えば、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Agからなる群から選択される。特に好ましくは、Li、Na、K、Mg、Ca、Srであり、とりわけNa及びKである。
【0010】
好ましいものは、以下を含む顔料調合物である。
a)50重量%〜99.7重量%、特に好ましくは80重量%〜99.7重量%、最も好ましくは90重量%〜99.2重量%の式Iのベース顔料
b)0.1重量%〜30重量%、特に好ましくは0.1重量%〜10重量%、最も好ましくは0.1重量%〜5重量%の式II又はIIIの顔料分散剤
c)0.1重量%〜30重量%、特に好ましくは0.1重量%〜10重量%、最も好ましくは0.1重量%〜5重量%の樹脂成分。
なお、各々、顔料調合物の総重量を基準とする。
【0011】
前記の成分に加えて、本発明の顔料調合物は、さらに慣用の補助剤及び添加剤、例えば、界面活性剤、分散剤、フィラー、希釈剤(Stellmittel)、前記以外の樹脂、ワックス、消泡剤、防塵剤(Antistaubmittel)、エクステンダー、帯電防止剤、防腐剤、乾燥遅延剤、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、及び光安定剤などを、顔料調合物の総重量を基準として、好ましくは0.1〜10重量%、特に0.5〜5重量%の量で含むことができる。
【0012】
界面活性剤としては、アニオン性若しくはアニオン活性、カチオン性若しくはカチオン活性、及び非イオン性または両性物質、又は、これらの物質の混合物が挙げられる。
【0013】
さらに、本発明の対象としては、本発明の顔料調合物を製造するための方法であり、当該方法は、例えば、ニーディング、湿式粉砕、若しくは乾式粉砕などの微粉砕の前若しくはその間、又は、仕上げ処理の直前若しくはその間にC.I.ピグメントバイオレット23を式(II)の顔料分散剤及び樹脂成分に添加混合することを特徴とする。
【0014】
例えば、粉砕の前若しくは後に、顆粒状若しくは粉末状で乾燥成分を混合することができる;例えば、含湿のプレスケーキの形で各成分を混合することで、ある成分を湿潤若しくは乾燥状態で他の成分に添加することができる。
【0015】
混合は、例えば、乾式若しくは湿式の粉砕により、例えば、ニーディングにより、又は懸濁状態で、又はこれらの方法の組み合わせにより行うことができる。粉砕は、水、溶媒、酸、又は、塩などの粉砕助剤の添加の下で行うことができる。顔料結晶の微粉砕をもたらすニーディングとしては、特に有機溶媒の存在下でのソルトニーディングである。
【0016】
湿式粉砕の間に、又は仕上げ処理の際に、式Iのベース顔料に顔料分散剤及び樹脂成分を添加することが特に好ましい。例えば、仕上げ処理は、水及び/又は溶媒中で、通常高い温度下で、例えば200℃までの温度下で、及び場合によっては高められた圧力下に行うことができる。顔料分散剤及び樹脂成分を複数回に分けて異なる時点で添加することもできるのは自明である。
【0017】
湿った顔料調合物を乾燥させる際には、例えば、乾燥キャビネット、パドルホイール乾燥機、タンブル乾燥機、接触乾燥機、並びに、特に、スピンフラッシュ(Spinflash)乾燥機及び噴霧乾燥機などの既知の乾燥装置を使用することができる。
【0018】
さらに、前記の方法で得ることができる顔料調合物も本発明の対象である。
【0019】
本発明の顔料調合物は、プラスチック、樹脂、コーティング、ペイント、電子写真トナー及び現像剤、カラーフィルタ、並びに、液体インキ、さらにインキジェットインキなどの天然又は合成由来の高分子有機原料の着色に使用でき、特に印刷インキに使用できる。
【0020】
驚くべきことに、本発明の顔料調合物を含む印刷インキコンセントレートは、欧州特許出願公開第0321919号A明細書及び欧州特許出願公開第0504923号A明細書に記載の顔料調合物と比較した場合、明らかに良好なレオロジーを有し、貯蔵の際に濃化することもないことが判明した。
【0021】
特に、本発明の顔料調合物は、印刷インキコンセントレートの高い顔料量(例えば22%)においてでさえ、際立って良好なレオロジー特性を示す。この印刷インキコンセントレートから製造されるアルコール及びエステルベースの印刷インキは、高い透明度と高い光沢を有する印刷を与える。
【0022】
さらに、本発明の顔料調合物は、他の様々な印刷システムにおいても広い相溶性を有する。
【0023】
本発明は、また、本発明の顔料調合物を、15重量%〜25重量%、好ましくは17重量%〜24重量%、特に18重量%〜22重量%含むことを特徴とする印刷インキコンセントレートも対象とする。
【0024】
以下の実施例においては、特に記載のない限り%は重量%である。
【実施例】
【0025】
実施例1:
a)乾式粉砕による微粉砕
BIOS Final Report 960の75ページに従い製造した30gの粗結晶粗顔料(ピグメントバイオレット23)を、1400gの直径12mmのコランダム粉砕媒体が装填された円筒形の1Lのプラスチック容器に導入する。この混合物を、振動ミルの振盪下で、4時間、微粉砕する。その後、ミルベースを粉砕媒体から篩い分ける。29gのミルベースが得られる。
【0026】
b)仕上げ(Finish)
450gの水及びa)の粗顔料P.V.23からの336gのミルベースに、苛性ソーダ溶液中の部分水素化ロジン樹脂の5%濃度溶液112g及びイソブタノール(85%濃度)250gを添加する。150℃でオートクレイブ中での数時間の攪拌の後、mが1である式(III)の顔料分散体の3.8%濃度の水性懸濁液を330部添加し、そして溶媒を留去する。
【0027】
c)最終処理(Aufarbeitung)
その後、上記バッチを熱吸引濾過する。生成物は塩不含に洗浄し、そして真空下80℃で乾燥させ、そしてその後、粉末化する。
【0028】
実施例2:
350gの水及び実施例1a)の粗顔料P.V.23からの336gのミルベースに、苛性ソーダ溶液中の部分水素化ロジン樹脂の5%濃度溶液224g及びイソブタノール(85%濃度)250gを添加する。150℃でオートクレイブ中での数時間の攪拌の後、mが1である式(III)の顔料分散剤の3.8%濃度水性懸濁液を330部添加し、溶媒を留去する。その後、このバッチを熱吸引濾過する。生成物は塩不含に洗浄し、そして真空下80℃で乾燥させ、そしてその後、粉末化する。
【0029】
本発明の顔料調合物から製造した印刷インキは、試験方法PV3/20(Clariant International AG、Global Quality Assurance、2005年7月)に従い、NCグラビア印刷において、非常に良好な粘度、チキソトロピー及び貯蔵安定性を示す(表1)。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例3:
252gのピグメントバイオレット23ジオキサジン粗顔料を1125gの塩化ナトリウム(<30μm)と実験室用ニーダーで混合し、そして230mlのDMFと50℃で8時間混錬する。その後、混錬した原料に、11000gの5重量%濃度塩酸を添加混合し、吸引濾過し、脱イオン水により洗浄する。濾過ケーキを500ml中の脱イオン水中でペースト化し、60℃で、苛性ソーダ溶液中の部分水素化ロジン樹脂の5%濃度溶液85g及びmが1である式(III)の顔料分散剤の9%濃度水性懸濁液105gを添加する。その後、このバッチを熱吸引濾過する。生成物を塩不含に洗浄し、そして真空下80℃で乾燥させ、そしてその後、粉末化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むことを特徴とする顔料調合物。
a)ベース顔料としての式(I)のジオキサジン化合物
【化1】

並びに
b)顔料分散剤としての一般式(II)のジオキサジン化合物
【化2】

式中、
Qは、式(I)のベース顔料のm価の残基を示し、
Yは、−(CR−を示し、ここで、xは1〜6であり、R及びRは互いに独立して水素又はC−C−アルキルを意味し、
Xは、C原子を介して架橋基Yと結合するイミダゾール残基を意味し、
mは、1〜4の数値を示し、
並びに、
c)アビチエン酸、デヒドロアビチエン酸、ジヒドロアビチエン酸、テトラヒドロアビチエン酸、レボピマル酸、デキストロピマル酸、イソデキストロピマル酸、ロジン樹脂、部分水素化ロジン樹脂、これらの酸の樹脂石鹸、及びこれらの混合物からなる群から選択される樹脂成分。
【請求項2】
Yは、メチレン、エチレン又はプロピレンであり、
Xは、5位で架橋基Yと結合するイミダゾリルであり、
mは、1〜2.5の数であることを特徴とする請求項1に記載の顔料調合物。
【請求項3】
顔料分散剤が以下の式(III)の顔料分散剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の顔料調合物。
【化3】

式中、
Qは、請求項1に記載の意味を有し、
mは、1〜2.5の数値である。
【請求項4】
各々、顔料調合物の総重量を基準とし、
a)50重量%〜99.7重量%の式Iのベース顔料
b)0.1重量%〜30重量%の式II又はIIIの顔料分散剤
c)0.1重量%〜30重量%の樹脂成分
を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の顔料調合物。
【請求項5】
各々、顔料調合物の総重量を基準とし、
a)80重量%〜99.7重量%の式Iのベース顔料
b)0.1重量%〜10重量%の式II又はIIIの顔料分散剤
c)0.1重量%〜10重量%の樹脂成分
を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の顔料調合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の顔料調合物を製造するための方法であって、微粉砕の前若しくはその間、又は、仕上げ処理の直前若しくはその間に式(I)のC.I.ピグメントバイオレット23を式(II)の顔料分散剤と樹脂成分に添加混合することを特徴とする前記方法。
【請求項7】
天然又は人工由来の高分子有機材料の着色への請求項1〜5のいずれか一項に記載の顔料調合物の使用。
【請求項8】
材料が、プラスチック、樹脂、コーティング、ペイント、電子写真トナー及び現像剤、カラーフィルタ、並びに液体インキであることを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
インキジェットインキ及び印刷インキへの請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の顔料調合物を、15重量%〜25重量%含むことを特徴とする印刷インキコンセントレート。

【公表番号】特表2010−532398(P2010−532398A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513700(P2010−513700)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004522
【国際公開番号】WO2009/003568
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】