説明

ジカルバメート化合物の合成法およびその作製における中間体

対応するマロネート化合物の還元を介して、2置換-2-ハロ-1,3-プロパンジオールを作製する方法が開示される。マロネート化合物の還元、その後のカルバモイル化を介して、2置換-2-ハロ-1,3-ジカルバメート化合物(例えば、フルオロフェルバメートを含む、フェルバメートのハロ誘導体)を作製する方法も、開示される。マロネート化合物の還元は、求電子性ヒドリド試薬を用いて実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は概して、ジオールからジカルバメート化合物を調製するプロセス、およびジオール中間体を調製するプロセスに関する。特に本発明は、フルオロフェルバメートを含む、フェルバメート誘導体のようなジカルバメート化合物を作製するプロセスを提供する。本発明の合成法により提供される化合物は、例えばてんかんのような様々な障害の治療、改善または予防において有用である。
【背景技術】
【0002】
関連技術
フェルバメートは、遺伝性または後天性の原因であり得るてんかん発作、発作性、自己持続性および自己限定性の脳性律動異常の管理において良好に使用されている(米国特許第4,978,680号(特許文献1)、第5,082,861号(特許文献2)および第5,292,772号(特許文献3)を参照のこと、これらはその全体が本明細書に参照として組入れられている)、公知の薬学的化合物である(米国特許第2,884,444号(特許文献4)および第4,868,327号(特許文献5)を参照のこと、これらはその全体が本明細書に参照として組入れられている)。抗てんかん薬は、病理学的に変化した神経細胞、または血管供給が限定された正常細胞、または神経網の神経細胞が破壊されている損傷領域に作用することにより、発作を予防または管理すると考えられている。
【0003】
現在てんかんの治療に使用される薬物は、てんかんの症状の予防薬として機能する。すなわちこれらは、治癒用とは対照的に、てんかん発作を軽減および管理するように作用する。最良の抗てんかん薬とは、無毒で非鎮静性で持続的作用性であり、かつ高い有効性を有すると特徴付けられる。そのような薬物の1つは、2-フェニル-1,3-プロパンジオールジカルバメート(I)であり、フェルバメートとして公知である。
【0004】
しかし、フェルバメートの使用は、特に再生不良性貧血および肝毒性といった副作用の重篤性および発生頻度のために制限されている。フェルバメート療法の毒性は、フェルバメートからの2-フェニルプロペナル(一般にアトロプアルデヒド)の代謝による形成に原因があると考えられている。フェルバメート誘導体、特にフルオロフェルバメートとして公知の2-フルオロ-2-フェニル-1,3-プロパンジオールジカルバメート(II)(米国特許第3,051,744号(特許文献6)を参照のこと、これらはその全体が本明細書に参照として組入れられている)は、フェルバメートに関して提唱されている特定の治療的用途における使用において、フェルバメートの代わりに用いることができる。そのような治療的用途の使用には、例えば、非限定的にてんかん性発作、急性および慢性神経変性状態、精神神経疾患および疼痛を含む、神経学的障害の治療または改善;かつ、非限定的に、心筋または脳の虚血性事象により引き起こされた細胞損傷を含む、低酸素状態から生じた、組織損傷の治療、改善または予防が含まれる(米国特許第6,538,024 B1号(特許文献7)、第6,599,935 B2号(特許文献8)および第6,759,402 B2号(特許文献9)を参照のこと、これらはその全体が本明細書に参照として組入れられている;かつ、PCT国際公開公報第02/056827 A2号(特許文献10)を参照のこと)。更にこれらのフェルバメート誘導体は、フェルバメートに類似した生物学的活性を、それらに関連した副作用を伴わずに示すことが報告されている(前掲書参照)。フェルバメート誘導体の改善された毒性プロファイルは明らかに、フェルバメートに対するそのような誘導体の代謝処理の違いの結果である。具体的には、フェルバメートの2位の水素原子が、フッ素などのハロゲン原子で置換される場合、推定毒性化学物質アトロプアルデヒドのインビボにおける形成が、明らかに妨害される。

【0005】
フルオロフェルバメートは、以下に概説されたような、水素化リチウムアルミニウムまたは水素化ナトリウムなどの求電子性ヒドリド試薬を使用する、フッ素化されたマロネート(III)の還元により、当該技術分野において公知の方法により調製することができる。

式中、RおよびR'は、アルキル基であり;M1は、金属イオン、例えばNa、K、LiまたはCaであり;M2は、BまたはAlのイオンであり;かつ、nは、M1に応じて1または2である。しかしこのような合成法は、最終的なフルオロフェルバメート生成物の収率および純度に影響を及ぼし得る副反応を生じる。
【0006】
求電子性ヒドリド試薬が使用される場合に生じる公知の副反応は、脱フッ素であり、これは化合物Vを生じる(および結果的に、所望のF-ジオール(IV)の収率をより低下させる)。例えば、LiAlH4 による還元は典型的には、10〜12%の範囲(HPLC曲線下面積)の脱フッ素化された生成物の形成を生じる。この脱フッ素化された物質は、直接の再結晶、蒸留または簡単なクロマトグラフィーなどの通常の手段により除去することが困難である。最終的には、この脱フッ素化副反応は、フルオロフェルバメート最終生成物中の不純物としてフェルバメートを生じ、この不純物は除去することが容易でも安価でもない。
【0007】
従ってフェルバメート由来の化合物を作製する方法の必要性が未だ存在する。理想的には、このような方法は、一般に当該技術分野において公知の方法により典型的に生じるものよりもより少ない脱ハロゲン化を生じる。
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,978,680号
【特許文献2】米国特許第5,082,861号
【特許文献3】米国特許第5,292,772号
【特許文献4】米国特許第2,884,444号
【特許文献5】米国特許第4,868,327号
【特許文献6】米国特許第3,051,744号
【特許文献7】米国特許第6,538,024 B1号
【特許文献8】米国特許第6,599,935 B2号
【特許文献9】米国特許第6,759,402 B2号
【特許文献10】PCT国際公開公報第02/056827 A2号
【発明の開示】
【0009】
発明の簡単な概要
1つの局面において、本発明は、対応するマロネート化合物の還元を介して、2置換-2-ハロ-1,3-プロパンジオールを作製する方法に関する。
【0010】
別の局面において、本発明は、マロネート化合物の還元、それに続くカルバモイル化を介し、2置換-2-ハロ-1,3-ジカルバメート化合物、例えばフルオロフェルバメート(II)を作製する方法に関する。
【0011】
マロネート化合物の還元は、求電子性ヒドリド試薬を用いて実行される。
【0012】
1つの局面において、本発明は、式VIIの化合物

と求電子性ヒドリドを反応させることにより、式VIの化合物

を作製する方法に関し、式中、
Aの各存在は、陽イオンであり;
R2は、ハロであり;かつ
R1は、C1-9アルキル;C1-9アルキルで一回置換されてもよい、C3-9シクロアルキル;-(CH2)m-Hetであり、式中、
Hetは、ハロ、C1-9アルキル、ハロ(C1-9)アルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシ(C1-9)アルキル、C1-9アルコキシおよびNR4R5から独立して選択された1個または複数の置換基で任意に置換された、5-または6-員のヘテロアリール基であり、R4およびR5は、独立して水素またはC1-9アルキルであり;かつ
mは、0、1、2、もしくは3であり;または
R1

であり、式中、
nは、0、1、2、または3であり;かつ
R6、R7、R8、R9およびR10は、水素、ハロ、C1-9アルキル、ハロ(C1-9)アルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシ(C1-9)アルキル、C1-9アルコキシおよびNR4R5からなる群より独立して選択され、式中、R4およびR5は、独立して水素またはC1-9アルキルからなる群より選択される。
【0013】
別の局面において、本発明は、説明された式VIIの化合物を式VIIIの化合物

へ転換する方法に関し、式中、R1およびR2は、先に説明されたものであり;かつ
R14およびR15は、水素およびC1-4アルキルからなる群より独立して選択される。
【0014】
その他の本発明の態様は、下記の本発明の説明を考慮し、および添付の「特許請求の範囲」を考慮し、当業者には明らかになるであろう。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、ジオールからジカルバメート化合物を調製するプロセス、およびジオール中間体を調製するプロセスを提供する。特に本発明は、フルオロフェルバメートを含む、フェルバメート誘導体のようなジカルバメート化合物を作製するプロセスを提供する。本発明の合成法により提供される化合物は、様々な障害、例えばてんかんの治療、改善または予防に有用である。
【0016】
1つの局面において、本発明は、式VIIの化合物

と求電子性ヒドリドを反応させることにより、式VIの化合物

を作製する方法に関し、式中、
Aの各存在は、陽イオンであり;
R2は、ハロであり;かつ
R1は、C1-9アルキル;C1-9アルキルで一回置換されてもよい、C3-9シクロアルキル;-(CH2)m-Hetであり、式中、
Hetは、ハロ、C1-9アルキル、ハロ(C1-9)アルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシ(C1-9)アルキル、C1-9アルコキシおよびNR4R5から独立して選択された1個または複数の置換基で任意に置換された、5-または6-員のヘテロアリール基であり、R4およびR5は、独立して水素またはC1-9アルキルであり;かつ
mは、0、1、2、もしくは3であり;または
R1

であり、式中、
nは、0、1、2、または3であり;かつ
R6、R7、R8、R9およびR10は、水素、ハロ、C1-9アルキル、ハロ(C1-9)アルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシ(C1-9)アルキル、C1-9アルコキシおよびNR4R5からなる群より独立して選択され、式中、R4およびR5は、独立して水素およびC1-9アルキルからなる群より選択される。
【0017】
本発明の方法に有用である求電子性ヒドリドは、式BHRR'およびAlHRR'の化合物を含むが、これらに限定されるわけではなく、式中、RおよびR'は独立して水素、C1-6アルキルまたはC5-6シクロアルキルを表している。有用な求電子性ヒドリドは、BH3(「ボラン」または「ジボラン」)、AlH3(「水素化アルミニウム」)、((CH3)2CH(CH3)CH)2BH、((CH3)2CH(CH3)CH)2AlHなどに加え、カテコールボラン、ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ボラン、ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9-BBN)、トリメチルアミン-カルボメトキシボランなどを含む。より有用な求電子性ヒドリドは、ジボランおよび水素化アルミニウムであり、特にジボランである。
【0018】
任意の好適なボラン複合体を、本発明の方法において使用することができる。有用なボラン複合体は、BH3・THF、BH3・OEt2、BH3・SMe2、ボラン-1,2-ビス(tert-ブチルチオ)エタン、ボラン-アンモニア、ボラン-t-ブチルアミン、ボラン-N-エチル-N-イソプロピルアニリン、ボラン-N,N-ジエチルアニリン、ボラン-N,N-ジイソプロピルエチルアミン、BH3・NHEt2、BH3・NHMe2、ボラン-ジフェニルホスフィン、ボラン-イソアミルスルフィド、ボラン-1,4-オキサチアン、ボラン-4-エチルモルホリン、ボラン-4-メチルモルホリン、ボラン-モルホリン、ボラン-ピリジン、BH3・NEt3、ボラン-トリブチルホスフィン、ボラン-トリフェニルホスフィンなどを含むが、これらに限定されるわけではない。より有用なボラン複合体は、BH3・THFを含む。
【0019】
本発明の方法においてAとして有用な陽イオンは、IA族、IIA族、IIIA族の陽イオン、例えばH+、Li+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、B3+およびAl3+などを含むが、これらに限定されるわけではない。Co2+、Cu2+、Sc2+、Ni2+およびZn2+などの遷移金属イオンも同じく有用である。より有用な陽イオンは、H+、Li+、Na+、K+、Ca2+、Zn2+およびAl3+を含み、特にH+、Na+、K+、およびCa2+である。
【0020】
式VIIの同じ事例においてAの各存在は、その他とは独立している。加えて、Aが一価の陽イオン(例えば、H+、Na+またはK+)である場合、式VIIの同じ事例においてAの2つの存在は、同じまたは異なってよい。例えば、各Aは、H+イオンを表すか、または1つのAはH+イオンを表す一方で、他方はNa+イオンを表してよい。Aが二価の陽イオン(例えば、Ca2+)である場合、式VIIの同じ事例においてAの2つの存在は、同じまたは異なってよいか、またはAの両方の一緒の存在は、同じ単独のイオンを表してもよい。例えば各Aは、Ca2+イオンを表すか、または両方のAは一緒に、Ca2+イオンを表してもよい。異なる原子価の陽イオンの組合せ(すなわち、一価および/または二価および/または三価)も含まれる。例えば、1つのAは、Na+イオンを表す一方で、他方はCa2+イオンを表すなどであってもよい。
【0021】
式VIIの同じ事例においてAの各存在に関する先の段落は、式VIの同じ場合のAの各存在に同等に適用可能である。更に式VIの化合物におけるAの同一性は、式VIIの化合物におけるAの同一性と同じである必要はない。
【0022】
本発明に従い有用である5-および6-員のヘテロアリール基の例としては、ピロリル、フラニル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニルなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの基の各々は任意に、先に説明されたように置換されてもよい。
【0023】
より有用な5-および6-員のヘテロアリール基は、環状炭素原子を介して結合したものを含む。例としては、2-フラニル、3-フラニル、2-チエニル、3-チエニル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-ピリジニル、3-ピリジニル、4-ピリジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニルおよび2-ピラジニルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。その他の例としては、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピリダジニルおよび4-ピリダジニルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0024】
より有用な置換された5-および6-員のヘテロアリール基は、置換基が結合した環状炭素原子を介して結合したものを含む。例としては、3-メチルフラン-2-イル、2-ヒドロキシフラン-3-イル、5-ブロモチエン-2-イル、2-エチルチエン-3-イル、4-クロロイミダゾール-2-イル、2-(トリフルオロメチル)イミダゾール-4-イル、5-イソプロピルオキサゾール-2-イル、2-(フルオロメチル)オキサゾール-4-イル、2-ブチルオキサゾール-5-イル、4-ヨードチアゾール-2-イル、5-メチルチアゾール-4-イル、2-ヒドロキシチアゾール-5-イル、3-クロロピリジン-2-イル、4-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピリジン-3-イル、2-ヒドロキシピリジン-4-イル、4-イソブチルピリミジン-2-イル、2-メチルピリミジン-4-イル、2-クロロピリミジン-5-イルおよび3-エチルピラジン-2-イルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。その他の例としては、4-ヒドロキシピロール-2-イル、2-エチルピロール-3-イル、4-(トリフルオロメチル)ピリダジン-3-イルおよび6-フルオロピリダジン-4-イルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0025】
本発明に従い有用であるアルキル置換基の例としては、C1-6アルキル、特にC1-4アルキルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。C1-4アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチルおよびt-ブチルが挙げられる。C1-6アルキルの例としては、C1-4アルキルについて列記されたものに加え、1-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシルおよびイソヘキシルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0026】
本発明に従い有用なハロアルキル置換基の例としては、ハロ(C1-6)アルキル、特にハロ(C1-4)アルキルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0027】
本発明に従い有用なヒドロキシアルキル置換基の例としては、ヒドロキシ(C1-6)アルキル、特にヒドロキシ(C1-4)アルキルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0028】
本発明に従い有用なアルコキシ置換基の例としては、C1-6アルコキシ、特にC1-4アルコキシが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0029】
本発明に従い有用なシクロアルキル置換基の例としては、C3-6シクロアルキル、特にC5-6シクロアルキルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。C5-6シクロアルキルの例としては、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられる。C3-6シクロアルキルの例としては、C5-6シクロアルキルについて列記されたものに加え、シクロプロピルおよびシクロブチルが挙げられる。
【0030】
ある態様において、R2は、クロロまたはフルオロ、特にフルオロである。
【0031】
前述の反応が進行するのに好適な溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレンなど、およびそれらの混合物を含むが、これらに限定されるわけではない。より有用な溶媒は、THFを含む。
【0032】
前述の反応が進行するのに好適な温度範囲は、約-10℃〜約50℃を含む。前述の反応が進行するより有用な温度範囲は、約0℃〜約25℃である。
【0033】
1つの態様において、本発明により作製される化合物は、式VIの化合物

であり、式中、
AおよびR2は、先に定義されたものであり;かつ
R1は、C1-9アルキル;C1-9アルキルで一回置換されてもよいC3-9シクロアルキル;

であり、式中、
mは、0、1、2または3であり;
nは、0、1、2または3であり;かつ
R11、R12およびR13は、水素、ハロ、C1-4アルキル、ハロ(C1-4)アルキルおよびヒドロキシルからなる群より独立して選択される。
【0034】
この態様において、有用なR2は、フルオロおよびクロロ、特にフルオロである。
【0035】
この態様において、有用なR11、R12およびR13は、水素を含む。
【0036】
この態様の有用な化合物の1つの基は、
R2がフルオロであり;mが0であり;かつ、
R11、R12またはR13の1つは、水素、ハロ、C1-4アルキル、ハロ(C1-4)アルキルまたはヒドロキシルであり、他の2つは、水素である;特に、R11、R12およびR13が各々水素である
基を含む。
【0037】
この態様の有用な化合物の1つの基は、mが0であり;かつ、nが0である基を含む。
【0038】
この態様の有用な化合物の1つの基は、
R2がフルオロであり;かつ、
R1は、C3-9シクロアルキル、

であり、式中、
mは、0であり;
nは、0であり;かつ
R11、R12およびR13は、各々水素である基を含む。
【0039】
1つの態様において、本発明の方法により作製される化合物は、式VI

のものであり、式中、
AおよびR2は、先に定義されたものであり;かつ、
R1

であり、式中、
nは0であり;かつ
R6、R7、R8、R9およびR10は、水素、ハロ、C1-4アルキル、ハロ(C1-4)アルキルおよびヒドロキシルからなる群より独立して選択される。
【0040】
この態様において、有用なR2は、フルオロおよびクロロ、特にフルオロである。
【0041】
この態様において有用な化合物の1つの基は、R8、R9およびR10が各々水素である基を含む。
【0042】
この態様において有用な化合物の1つの基は、R7、R9およびR10が各々水素である基を含む。
【0043】
この態様において有用な化合物の1つの基は、R7、R8、R9およびR10が各々水素である基を含む。R7、R8、R9およびR10が各々水素であり、R2がフルオロである基がより有用である。
【0044】
この態様において有用な化合物の1つの基は、R6、R7、R8、R9およびR10が各々水素である、すなわち、R1はフェニルである基を含む。R1がフェニルでありかつR2がフルオロである化合物がより有用である。
【0045】
別の局面において、本発明は、説明された式VIIの化合物を式VIIIの化合物

へ転換する方法に関し、式中、R1およびR2は、先に説明されたものであり;かつ
R14およびR15は、水素およびC1-4アルキルからなる群より独立して選択される。特に好ましい態様において、R14もしくはR15、またはR14およびR15の両方は、水素である。
【0046】
本発明の方法により作製される特に好ましい化合物は、フェルバメート(I)の誘導体であり、フルオロフェルバメート(II)および他のハロ置換フェルバメート誘導体を含む。
【0047】
この転換を実現する方法は、当該技術分野において公知であり、任意の適当な方法を使用することができる。例えば、アンモニア供給源およびカップリング剤による、式VIIの化合物の処理は、R14およびR15が各々水素である式VIIIの化合物をもたらす。好適なアンモニア供給源は、アンモニア、およびインサイチューでアンモニアを提供することが可能である化合物、例えば炭酸アンモニウムを含むが、これらに限定されるわけではない。好適なカップリング剤は、1,1'-カルボニルジイミダゾール(CDI)を含むが、これに限定されるわけではない。この転換を実現する有用な方法は、CDIおよび炭酸アンモニウムによる、特に分子篩の存在下での処理;CDIおよび液体アンモニアによる処理;かつ、ホスゲンおよびNH4OHによる処理を含むが、これらに限定されるわけではない。より有用な方法は、CDIおよび炭酸アンモニウムによる、特に分子篩の存在下での処理を含む。
【0048】
本明細書に説明された化合物の一部は、1個または複数の不斉中心を含んでよく、従ってエナンチオマー、ジアステレオマー、および他の立体異性体型を生じる。本発明は、そのような可能な形全てに加え、それらのラセミ体および分割された形およびそれらの混合物の作製を包含することも意味している。本明細書に説明された化合物が、オレフィン系二重結合または他の幾何学的不斉中心を含む場合、特に指定しない限りは、これは、EおよびZの両方の幾何異性体を含むことが意図されている。全ての互変異性体、およびそれらの作製法も、本発明により包含されることが意図されている。
【0049】
本発明の方法により作製される化合物は、非限定的にてんかん性発作、急性および慢性神経変性状態、精神神経疾患および疼痛を含む、様々な神経障害または状態の治療、改善および/または予防;かつ、非限定的に、心筋または脳の虚血性事象により引き起こされた細胞損傷を含む、低酸素状態から生じた、組織損傷の治療、改善および/または予防における使用に適している。(公開されたPCT国際公開公報第02/056827 A2号を参照のこと。)従って別の局面において、本発明は、本発明の方法により作製された化合物、ならびにそのような化合物およびそれらのための1種または複数の薬学的に許容できる担体または賦形剤を含有する薬学的組成物を提供する。本発明に従い使用することができる好適な薬学的に許容できる担体または賦形剤は、当業者には熟知されているであろう。
【0050】
任意の構成要素または式に2回以上なんらかの変数が生じる場合、各存在においてその定義は、他の存在毎のその定義とは無関係である。同じく置換基および/または変数の組合せも、そのような組合せが安定した化合物を生じる場合にのみ許される。
【0051】
定義
本明細書においてそれ自身または他の基の一部として使用される「アルキル」という用語は、最大10個の炭素の直鎖および分枝鎖の両方のラジカルを意味し、特に鎖長を限定しない限りは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4-ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4-トリメチルペンチル、ノニルおよびデシルを意味する。
【0052】
本明細書においてそれ自身または他の基の一部として使用される「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。
【0053】
本明細書において使用される「ハロアルキル」という用語は、それらの1個または複数の水素が、1個または複数のハロ部分により置換されたアルキル基を意味する。典型例には、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロエチル、トリフルオロエチル、フルオロプロピル、およびブロモブチルが含まれる。
【0054】
本明細書においてそれ自身または他の基の一部として使用される「シクロアルキル」という用語は、3〜9個の炭素原子を含むシクロアルキル基を意味する。典型例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルおよびシクロノニルが含まれる。
【0055】
本明細書において使用される「ヘテロアリール」という用語は、5〜14個の環原子;環状の配置において共有された6、10または14個のπ電子を有し;かつ、炭素原子および1、2、3または4個の酸素、窒素または硫黄ヘテロ原子を含む基を意味する(式中、ヘテロアリール基の例としてはチエニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3-b]チエニル、チアントレニル、フリル、ピラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチイニル、2H-ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、4H-キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4αH-カルバゾリル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソオキサゾリル、フラザニル、フェノキサジニルおよびテトラゾリル基が挙げられる)。
【0056】
「ヒドロキシ」および「ヒドロキシル」という用語は、本明細書において互換的に使用され、ラジカル-OHを意味する。
【0057】
本明細書において使用される「ヒドロキシアルキル」という用語は、それらの1個または複数の水素が、1個または複数のヒドロキシル部分により置換されたアルキル基を意味する。
【0058】
「アルコキシ」、「アルキルオキシ」および「アルコキシル」という用語は、本明細書において互換的に使用され、ラジカル-ORを意味し、式中、Rはアルキルである。典型例には、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、sec-ブチルオキシおよびt-ブチルオキシが含まれる。
【0059】
環の中心から伸びる1個または複数の結合を有する環構造は、結合点が環の炭素原子のいずれかであることを示している。例えば、下記構造

は、チエニル基が、その環状炭素原子のいずれかを介して結合されてよく、およびR置換基は、残りの環状炭素原子の1つでチエニル基に結合されていることを示す。
【0060】
本明細書において使用される「立体異性体」という用語は、空間におけるそれらの原子の配向のみが異なる個々の分子の全ての異性体に関する一般的用語である。これは、エナンチオマーおよび互いに鏡像ではない1個よりも多いキラル中心を伴う化合物の異性体(ジアステレオマー)を含む。
【0061】
「キラル中心」という用語は、4個の異なる基が結合されている炭素原子、または3個の異なる基が結合した硫黄原子を意味し、式中、硫黄原子およびその結合した基は、スルホキシド、スルフィン酸エステル、スルホニウム塩または亜硫酸塩を形成する。
【0062】
「エナンチオマー」または「エナンチオ性」という用語は、その鏡像が重ならない、従って光学活性のある分子を意味し、式中、エナンチオマーは、偏光面で1つの方向へ回転し、その鏡像は、偏光面で反対方向へ回転する。
【0063】
「ラセミ体」という用語は、エナンチオマーの同等の部分の混合物を意味し、これは光学的に不活性である。
【0064】
「分割」という用語は、分子の2つのエナンチオ型の一方の分離または濃縮または枯渇を意味する。語句「エナンチオマー過剰」は、1つのエナンチオマーが、その鏡像分子よりもより大きい濃度で存在する混合物を意味する。
【0065】
数値に関して、本明細書において使用される「約」または「およそ」という用語は、言及された値の±10%の値を意味することが意図されている。例えば、「約50℃」(または「およそ50℃」)は、温度範囲45℃以上55℃以下を包含している。同様に「約100mM」(または「およそ100mM」)は、90mM以上110mM以下の濃度範囲を包含している。
【0066】
以下に本発明を詳細に説明するが、これは、本発明の例証のみを目的として本明細書に含まれかつ本発明を限定することは意図しない下記実施例を参照して、より明確に理解されるであろう。
【0067】
実施例
下記実施例において、「部(part)」という用語は、固形物が使用される場合には質量/質量を、液体が使用される場合には容量/容量を意味する。脱フッ素化された生成物および他の副産物の量は、HPLCにより決定し、%AUC(曲線下面積)で報告した。
【0068】
実施例1
2-フルオロ-2-フェニル-マロン酸ジエチルエステル(F-PMADE)
窒素大気下で、95%水素化ナトリウム0.14部を、反応容器に入れた。テトラヒドロフラン(THF)(4.21部)を慎重に添加し、この混合物を攪拌し、外部から氷水により冷却した。エタノール(0.03部)を添加し、引き続きTHF 1.17部中の2-フェニル-マロン酸ジエチルエステル(PMADE)1.00部を、その温度を-10℃〜5℃で維持する速度でゆっくり添加した。この間に、水素ガスの大量の蒸発が認められた。このエステルの添加後、混合物を、およそ2時間、5℃未満で攪拌した。Selectfluor(登録商標)(1-(クロロメチル)-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロ-ボレート)(1.98部)を、一気に添加し、温度を10℃以下に維持した。この混合物を、ゆっくり温め、8時間〜18時間攪拌した。少量のメタノール(0.06部)を添加し、過剰量の水素化ナトリウムが破壊されたことを確実にし、この懸濁液を吸引濾過し、フィルターケーキを、THF 2.69部で洗浄した。その後得られる濾液を、再度シリカゲル60の0.19部を通して、吸引濾過し、真空で濃縮した。暗色の残渣を、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)2.15部中に溶解し、水2.15部、引き続きブライン溶液1.08部で洗浄した。その後有機相を、硫酸ナトリウム0.27部上で乾燥し、濾過し、濃縮し、油状物を得、これを更に精製することなく次工程で使用した。この粗生成物のNMR分析は、約4%のPMADE出発材料と共に、モノ脱カルボキシル化されフッ素化された種である2-フルオロ-2-フェニル酢酸エチルエステル0.2%および未知の不純物5〜9%の各々の存在を示した。F-PMADEの全般的純度は、87〜91%と推定された。
【0069】

部分的1H-NMRデータ:2-フルオロ-2-フェニル酢酸エチルエステル:6.16, 6.06 (d, CHFPh), 4.22-4.12 (m, 4H, CH2);PMADE: 4.93 (s, 1H, CHPh) 、および未知の不純物:4.22-4.12 (m, 2-4H)および4.10 (q, 2-4H)。
【0070】
実施例2
2-フルオロ-2-フェニル-マロン酸二カリウム塩(F-K2PMA)
エタノール15.47部中のF-PMADE 1.00部の氷冷した溶液を、エタノール3.02部中の水酸化カリウム0.77部の溶液で、温度が-10〜10℃に維持されるようにゆっくり処理した。この添加時に、反応液は非常に粘稠になり始め、これを更に2時間攪拌し、その後吸引濾過により単離した。湿った粗固形物を次に、メタノール3.23部中でおよそ2時間かけてスラリー化し、吸引濾過により単離した。これらの固形物を、メタノール1.04部で洗浄した。その後湿った固形物を再度メタノール3.23部中に懸濁し、およそ2時間攪拌し、濾過し、メタノール1.04部で洗浄し、真空において30〜40℃で乾燥した。F-K2PMAの収率は、典型的には理論値の65〜72%であった。1H-NMR (D2O, 500MHz) δ 7.40 (m)。HPLC分析は、純度99.91%AUCを示した。下記HPLC条件下で、保持時間はK2PMA(すなわち脱フッ素化された)(15.5分)、F-K2PMA(22.2分)であった。
カラム:ES Industries FluoroSep-RPフェニル、3μm、25cmx4.6mm
移動相:CH3CN/H2O/TFA=20/80/0.1(v/v)
流量:0.75mL/分
検出器:UV 210nm
注入容積:20μL(公称)
カラム温度:25±1℃
試行時間:20分間
【0071】
実施例3
2-フルオロ-2-フェニル-1,3-プロパンジオール(F-ジオール)
THF溶液(1.15L, 4当量)中の1Mジボラン溶液14.4部へ、F-K2PMA 1.00部をゆっくり周囲温度で添加した。添加時に、気体の蒸発が認められた。この反応混合物を、周囲温度で一晩攪拌した。反応混合物をその後外部から氷浴により冷却し(典型的には、この反応混合物は、2〜5℃の温度で12〜6時間維持される。)、および慎重にメタノール6.25部で処理した。溶媒を、減圧下で除去し、白色ペーストが残留し、これを10%HCl水溶液3.12部、引き続き水6.88部で処理した。この水性混合物を、ヘキサン、次に飽和NH4Clで洗浄し、その後酢酸エチル(EtOAc)で抽出した。一緒にしたEtOAc溶液を、ブライン、飽和NaHCO3水溶液、ブラインで洗浄し、無水MgSO4上で乾燥した。溶媒の除去後、粗F-ジオールを、淡黄色固形物として、収率74質量%で得た。NMR分析は、約2〜3%の脱フッ素化された物質(2-フェニル-1,3-プロパンジオール(「ジオール」))を伴う、F-ジオールの構造と一致した。下記HPLC条件下で、保持時間はF-ジオール(5.8分)、ジオール(6.2分)であった。
カラム:Kromasil C4, 5μm, 25cmx4.6mm
移動相:THF/MeOH/H2O=3.5/20.0/76.5 (v/v)
流量:1.5mL/分(公称)
検出器:UV 210nm
注入容積:20μL(公称)
カラム温度:35±1℃
試行時間:20分間
【0072】
実施例4
2-フルオロ-2-フェニル-1,3-プロパンジオール(F-ジオール)
フラスコに、F-K2PMA 1.00部およびTHF 2.50部を充填した。粘稠なスラリーを、外部から氷により冷却し、ジオキサン中4N HCl溶液1.83部を滴下し処理し、温度を2.5〜10℃で維持した。添加の完了後、このスラリーを、更に0.5時間攪拌し、THF中の1Mジボラン溶液14.59部を添加し、温度2.5℃〜12℃で維持した。最初の発熱は、気体の蒸発を伴った。添加が完了した後、冷却浴を取り外し、この混合物を、周囲温度で18〜24時間攪拌した。その後混合物を、外部から氷により冷却し、1N HCl水溶液2.50部で慎重に処理したが、この間に最初の発熱は、気体の蒸発を伴って認められた。添加時に、その温度は、-5℃から9℃に上昇し、この時点で水3.75部および酢酸エチル3.75部を添加した。これらの相を、激しく混合し、分離した。水相を除去し、酢酸エチル1.25部で抽出した。有機相を一緒にし、ブライン2.50部で洗浄した。その後有機相を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液2.50部、その後ブライン1.25部で洗浄した。有機相を次に、硫酸ナトリウム0.6部上で乾燥し、濾過し、真空で濃縮し粘稠な残渣とした。その後残渣を、各々メタノール1.90部で3回濃縮した。得られる半固形物質を、その後温トルエン3.5部に溶解し、50〜80℃に温めながら濃縮し、トルエン2〜3部を除去した。得られるトルエン溶液をその後、加熱濾過し、周囲温度で18〜48時間、その後0〜4℃で12〜24時間攪拌し、結晶化させた。この白色結晶性物質を、吸引濾過により単離した。乾燥後、2-フルオロ-2-フェニル-1,3-プロパンジオールの収率は、理論値の85〜90%であった。HPLC分析は、典型的には>98%(AUC)のF-ジオールを、0.5〜1.1%の脱フッ素化された物質(2-フェニル-1,3-プロパンジオール(「ジオール」))と共に示した。1H-NMR (d6-DMSO, 500MHz) δ 7.40-7.20 (m, 5H, PhH), 5.0 (t, 2H, OH), 3.83-3.70 (m, 4H, CH2)。実施例2において説明されたHPLC条件下で、保持時間は、ジオール(8.1分)、F-ジオール(8.5分)であった。
【0073】
実施例5
2-フルオロ-2-フェニル-1,3-プロパンジオールジカルバメート(フルオロフェルバメート)
フラスコに、F-ジオール1.00部およびTHF 9.50部を充填した。得られる溶液を、1,1'-カルボニルジイミダゾール(CDI)2.39部により一回で処理した。数時間後、重たい沈殿が形成され、これを更に18〜24時間攪拌した。次に粉末の活性化された分子篩(4Å, 25μ)1.00部を、その後に炭酸アンモニウム3.4部を添加した。このスラリーを、18〜24時間攪拌し、その後追加の炭酸アンモニウム3.4部で処理した。更に18〜24時間後、反応混合物を、2〜24時間沈降させ、上清を除去した。残存するスラリーを、酢酸エチル(5部)で処理し、攪拌し、濾過し、固形物を除去した。フィルターケーキを、酢酸エチル各2.5部で3回洗浄した。有機相を一緒にし、油状物へ濃縮し、その後酢酸エチル5部に溶解し、水2.5部で、次に6N塩酸3部で洗浄した。(この水性酸洗浄液のpHがpH濾紙により依然塩基性である場合は、追加の洗浄が必要である。)次に酢酸エチル相を、ブライン溶液3部、引き続き炭酸水素ナトリウム3部で洗浄した。有機相を、硫酸ナトリウム1.0部上で乾燥し、濾過し、真空で濃縮しながら、浴温度を60〜80℃に維持し、明るいシロップ状(およそ1〜2部の酢酸エチルが残存)とした。この溶液に次に、MTBE 5部を攪拌しながら添加したが、この時点で結晶化が始まった。得られる白色スラリーを、14〜24時間攪拌し、固形物を濾過により単離し、真空で60℃で乾燥した。粗2-フルオロ-2-フェニル-1,3-プロパンジオールジカルバメートの収率は、典型的には理論値の78〜85%であった。HPLC分析は、>98〜99%(AUC)の純度を示し、0.5%の2-フェニル-1,3-プロパンジオールおよび0.3〜0.5%2-フルオロ-2-フェニル-1,3-プロパンジオールモノカルバメート(「F-モノカルバメート」)を伴った。この粗生成物を、フルオロフェルバメート1.00部を、温メタノール-水(1:4)10部中に溶解することにより、更に精製した。周囲温度への冷却および一晩の攪拌、それに続く濾過によって、標題化合物を白色結晶性固形物として得た。結晶化プロセスの収率は、典型的には93〜97%であった。HPLC分析は、>99.5%AUCのフルオロフェルバメートを示した。典型的には、0.35%未満のフェルバメートが、HPLCにより存在した。

実施例3において説明されたHPLC条件下で、保持時間は、F-ジオール(5.8分)、ジオール(6.2分)、モノカルバメート(8.8分)、F-モノカルバメート(9.3分)、フェルバメート(12.3分)、フルオロフェルバメート(15.8分)であった。
【0074】
ここで本発明は完全に説明されているが、本発明の範囲または任意のその態様に影響を及ぼすことなく、広範かつ同等の条件、式およびその他のパラメータの範囲内で同様に行うことができることは当業者には理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式VIの化合物

を作製する方法であって、式VIIの化合物

を求電子性ヒドリドと反応させる工程を含む、方法:
式中、Aの各存在は、陽イオンであり;
R2は、ハロであり;かつ
R1は、C1-9アルキル;C1-9アルキルで一回置換されてもよいC3-9シクロアルキル;または、-(CH2)m-Hetであり、式中、
Hetは、ハロ、C1-9アルキル、ハロ(C1-9)アルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシ(C1-9)アルキル、C1-9アルコキシおよびNR4R5から独立して選択された、1個または複数の置換基で置換されてもよい5-または6-員のヘテロアリール基であり、R4およびR5は、独立して水素またはC1-9アルキルであり;かつ、
mは、0、1、2もしくは3である、または
R1

であり、式中、
nは、0、1、2または3であり;かつ
R6、R7、R8、R9およびR10は、水素、ハロ、C1-9アルキル、ハロ(C1-9)アルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシ(C1-9)アルキル、C1-9アルコキシおよびNR4R5からなる群より独立して選択され、式中、R4およびR5は、独立して水素またはC1-9アルキルからなる群より選択される。
【請求項2】
R1が、C1-9アルキル;C1-9アルキルで一回置換されてもよいC3-9シクロアルキル;

であり、式中、
mは、0、1、2または3であり;
nは、0、1、2または3であり;かつ
R11、R12およびR13は、水素、ハロ、C1-4アルキル、ハロ(C1-4)アルキルおよびヒドロキシルからなる群より独立して選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
R2は、フルオロまたはクロロである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
R2は、フルオロである、請求項2記載の方法。
【請求項5】
R11、R12およびR13が、各々水素である、請求項2記載の方法。
【請求項6】
R2は、フルオロであり;かつ
R11、R12およびR13は、各々水素である、請求項2記載の方法。
【請求項7】
R2は、フルオロであり;
mは、0であり;かつ
R11、R12またはR13の1つは、水素、ハロ、C1-4アルキル、ハロ(C1-4)アルキルまたはヒドロキシルであり、他の2つは、水素である、請求項2記載の方法。
【請求項8】
R11、R12およびR13は、各々水素である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
mは0であり;かつ
nは0である、請求項2記載の方法。
【請求項10】
R2は、フルオロであり;かつ
R1は、C3-9シクロアルキル、

であり、式中、
mは、0であり;
nは、0であり;かつ
R11、R12およびR13は、各々水素である、請求項2記載の方法。
【請求項11】
R1は、

であり、式中
nは、0であり;かつ
R6、R7、R8、R9およびR10は、水素、ハロ、C1-4アルキル、ハロ(C1-4)アルキルおよびヒドロキシルからなる群より独立して選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
R2は、フルオロまたはクロロである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
R2は、フルオロである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
R8、R9およびR10は、各々水素である、請求項11記載の方法。
【請求項15】
R7、R9およびR10は、各々水素である、請求項11記載の方法。
【請求項16】
R7、R8、R9およびR10は、各々水素である、請求項11記載の方法。
【請求項17】
R2は、フルオロである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
R2は、フルオロであり;かつ
R1は、フェニルである、請求項1記載の方法。
【請求項19】
求電子性ヒドリドが、カテコールボラン、ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ボラン、ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、トリメチルアミン-カルボメトキシボラン、または式BHRR1 もしくはAlHRR'の化合物であり、RおよびR'は独立して水素、C1-6アルキルまたはC5-6シクロアルキルを表す、請求項1記載の方法。
【請求項20】
求電子性ヒドリドが、ジボラン、水素化アルミニウム、((CH3)2CH(CH3)CH)2BH、((CH3)2CH(CH3)CH)2AlH、カテコールボラン、ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ボラン、ボラビシクロ[3.3.1]ノナンまたはトリメチルアミン-カルボメトキシボランである、請求項1記載の方法。
【請求項21】
求電子性ヒドリドが、ジボランまたは水素化アルミニウムである、請求項1記載の方法。
【請求項22】
求電子性ヒドリドが、ジボランである、請求項1記載の方法。
【請求項23】
Aの各存在が、IA族陽イオン、IIA族陽イオン、IIIA族陽イオン、Co2+、Cu2+、Sc2+、Ni2+およびZn2+からなる群より独立して選択される、請求項1記載の方法。
【請求項24】
Aの各存在が、H+、Li+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、B3+およびAl3+からなる群より独立して選択される、請求項1記載の方法。
【請求項25】
Aの各存在が、H+、Li+、Na+、K+、Ca2+、Zn2+およびAl3+からなる群より独立して選択される、請求項1記載の方法。
【請求項26】
Aの各存在が、H+、Na+、K+およびCa2+からなる群より独立して選択される、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記反応が、THF、エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびそれらの混合物から選択された溶媒中で進行する、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記反応が、THF中で進行する、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記反応が、約-10℃〜約50℃の範囲の温度において進行する、請求項1記載の方法。
【請求項30】
前記反応が、約0℃〜約25℃の範囲の温度において進行する、請求項1記載の方法。
【請求項31】
式VIIの化合物を式VIIIの化合物

へ転換する工程をさらに含む方法であって、式中、
R14およびR15は、水素およびC1-4アルキルからなる群より独立して選択される、請求項1〜30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
R14およびR15は、各々水素である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
式VIIIの化合物が、フルオロフェルバメートである、請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記転換が、式VIIの化合物をアンモニア供給源およびカップリング剤で処理する工程を含む、請求項32記載の方法。
【請求項35】
アンモニア供給源が炭酸アンモニウムであり、カップリング剤が1,1'-カルボニルジイミダゾールである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
アンモニア供給源が炭酸アンモニウムであり、カップリング剤が1,1'-カルボニルジイミダゾールであり、該転換が分子篩の存在下で進行する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
求電子性ヒドリドがジボランであり;
Aの各存在が、H+、Na+、K+およびCa2+からなる群より独立して選択され;
R2がフルオロであり;かつ、
R1がフェニルである、請求項1記載の方法。
【請求項38】
前記反応が、THF中で進行する、請求項37記載の方法。
【請求項39】
式VIIの化合物を、式IIの化合物

へ転換する工程を更に含む、請求項37または38記載の方法。
【請求項40】
前記転換が、式VIIの化合物を、炭酸アンモニウムおよび1,1'-カルボニルジイミダゾールで処理する工程を含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記転換が、分子篩の存在下で進行する、請求項40記載の方法。

【公表番号】特表2008−538565(P2008−538565A)
【公表日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507885(P2008−507885)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/014965
【国際公開番号】WO2006/116007
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(507169646)メドポイント ヘルスケア インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】