説明

ジシアノエチレン化合物およびテトラアザポルフィリン化合物の製造方法

【課題】ジシアノエチレン化合物の新規な製造方法、該化合物を用いるテトラアザポルフィリン化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】テトラアルコキシチタンの存在下に、一般式(1):


で表される化合物と、一般式(2):


で表される化合物を作用させることを特徴とするジシアノエチレン化合物の製造方法。さらに、該化合物を用いるテトラアザポルフィリン化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジシアノエチレン化合物およびテトラアザポルフィリン化合物 の新規な製造方法に関する。
さらに詳しくは、各種の機能性材料用途(例えば、ディスプレイ用フィルタ用途、光記録媒体用途、インク用途、熱転写用途)に有用なテトラアザポルフィリン化合物を製造する際に、原料として有用なジシアノエチレン化合物の製造方法に関する。
さらには、該ジシアノエチレン化合物を用いて成るテトラアザポルフィリン化合物の製造方法に関する。

【背景技術】
【0002】
近年、社会の高度情報化に伴って、光エレクトロニクス関連用途をはじめ、各種の機能性材料用途(例えば、ディスプレイ用フィルタ用途、光記録媒体用途、インク用途、熱転写用途)に向け、優れた機能を有する有機化合物の開発が盛んに行われている。このような有機化合物として、例えば、優れた光学特性を有するテトラアザポルフィリン化合物がある。
例えば、光記録媒体用の有機化合物として、種々のテトラアザポルフィリン化合物が提案されている(特許文献1〜3)。また、光学フィルタ用、またはディスプレイ用フィルタ(例えば、プラズマディスプレイ用フィルタ)用の化合物(光吸収化合物)として、種々のテトラアザポルフィリン化合物が提案されている(特許文献4〜8)。
これらの各種テトラアザポルフィリン化合物は、種々の置換基を有するマレオニトリル化合物を、環化する方法により製造されている(特許文献9〜10、非特許文献1、2)。
マレオニトリル化合物の製造方法としては、例えば、アシルアニリド化合物とアセトニトリル化合物を、酸性触媒および塩基性触媒の共存下で、脱水反応させることにより製造されている(特許文献10〜12)。この方法によれば、比較的良好な収率でマレオニトリル化合物、またはマレオニトリル化合物とフマロニトリル化合物の混合物を製造することができるが、現在では、更なる改良された製造方法が求められている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−268227号公報
【特許文献2】特開平9−309268号公報
【特許文献3】特開平11−11015号公報
【特許文献4】特開2000−275432号公報
【特許文献5】特開2002−40233号公報
【特許文献6】特開2002−251144号公報
【特許文献7】特開2004−361551号公報
【特許文献8】特開2008−268331号公報
【特許文献9】特開平11−100520号公報
【特許文献10】特開平11−43619号公報
【特許文献11】特開2002−129052号公報
【特許文献12】特開2007−99744号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Gen.Chem.USSR,47、1954(1977)
【非特許文献2】J.Chem.Soc.,4839(1952)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ジシアノエチレン化合物およびテトラアザポルフィリン化合物の新規な製造方法を提供することである。さらに詳しくは、高収率でジシアノエチレン化合物を製造する新規な製造方法を提供することである。
さらには、該ジシアノエチレン化合物を用いて成るテトラアザポルフィリン化合物の製造方法を提供することである。

【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ジシアノエチレン化合物の製造方法に関し、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
(i)テトラアルコキシチタンの存在下に、一般式(1):

で表される化合物と、一般式(2):

で表される化合物を作用させることを特徴とする一般式(3)または一般式(4):

で表されるジシアノエチレン化合物の製造方法に関するものであり、
〔式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のアラルキル基、直鎖、分岐または環状のハロゲノアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルコキシアルキル基、置換または未置換のアリールオキシアルキル基、置換または未置換のアラルキルオキシアルキル基、あるいは直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシアルキル基を表す(但し、RおよびRが同時に水素原子を表すことはない)〕
さらに、
(ii)(i)の製造方法にてジシアノエチレン化合物を製造し、得られたジシアノエチレン化合物に、金属または金属塩と作用させることを特徴とする一般式(5)で表されるテトラアザポルフィリン化合物の製造方法に関するものである。

〔式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のアラルキル基、直鎖、分岐または環状のハロゲノアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルコキシアルキル基、置換または未置換のアリールオキシアルキル基、置換または未置換のアラルキルオキシアルキル基、あるいは直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシアルキル基を表し(但し、RおよびRが同時に水素原子を表すことはない)、
Mは、2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、または酸化金属原子を表す〕

【発明の効果】
【0007】
本発明により、各種の機能性材料用途(例えば、ディスプレイ用フィルタ用途、光記録媒体用途、インク用途、熱転写用途)に有用なテトラアザポルフィリン化合物を製造する際の有用な原料であるジシアノエチレン化合物の新規な製造方法を提供することが可能になった。
さらには、該ジシアノエチレン化合物を用いて成るテトラアザポルフィリン化合物の製造方法を提供することが可能になった。

【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
<ジシアノエチレン化合物の製造方法>
本発明は、テトラアルコキシチタンの存在下に、一般式(1):

で表される化合物と、一般式(2):

で表される化合物を作用させることを特徴とする一般式(3)または一般式(4):

で表されるジシアノエチレン化合物を製造する方法である。
〔式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のアラルキル基、直鎖、分岐または環状のハロゲノアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルコキシアルキル基、置換または未置換のアリールオキシアルキル基、置換または未置換のアラルキルオキシアルキル基、あるいは直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシアルキル基を表す(但し、RおよびRが同時に水素原子を表すことはない)〕
【0009】
一般式(1)〜一般式(4)で表される化合物におけるRおよびRの具体例としては、例えば、水素原子、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、シアノ基、例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基などのカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、
例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、2,4−ジメチルペンチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、2,5−ジメチルヘキシル基、2,5,5−トリメチルヘキシル基、n−ノニル基、2,2−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、4−エチルオクチル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、1,3,5,7−テトラメチルオクチル基、n−トリデシル基、1−ヘキシルヘプチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの直鎖、分岐または環状のアルキル基、
例えば、エチレン基、1−プロピレン基、2−プロピレン基、1−イソプレン基、2−ブチレン基、3−ブチレン基、1−イソブチレン基、1−ペンテン基、4−ペンテン基、1−ヘキセン基、5−ヘキセン基、1−オクテン基、1−デセン基、1−ドデセン基、1−テトラデセン基、1−シクロヘキセン基、4−メチル−1−シクロヘキセン基などの直鎖、分岐または環状のアルケニル基、
【0010】
例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ペンチルフェニル基、4−イソペンチルフェニル基、4−tert−ペンチルフェニル基、4−n−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−n−ヘプチルフェニル基、4−n−オクチルフェニル基、4−n−ノニルフェニル基、4−n−デシルフェニル基、4−n−ウンデシルフェニル基、4−n−ドデシルフェニル基、4−n−テトラデシルフェニル基、4−n−ヘキサデシルフェニル基、4−n−オクタデシルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、5−インダニル基、1,2,3,4−テトラヒドロ−5−ナフチル基、1,2,3,4−テトラヒドロ−6−ナフチル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−n−プロポキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、4−イソブトキシフェニル基、4−n−ペンチルオキシフェニル基、4−n−ヘキシルオキシフェニル基、4−シクロヘキシルオキシフェニル基、4−n−ヘプチルオキシフェニル基、4−n−オクチルオキシフェニル基、4−n−ノニルオキシフェニル基、4−n−デシルオキシフェニル基、4−n−ウンデシルオキシフェニル基、4−n−ドデシルオキシフェニル基、4−n−テトラデシルオキシフェニル基、4−n−ヘキサデシルオキシフェニル基、4−n−オクタデシルオキシフェニル基、2,3−ジメトキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2,5−ジメトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、3,5−ジエトキシフェニル基、2−メトキシ−4−メチルフェニル基、2−メトキシ−5−メチルフェニル基、3−メトキシ−4−メチルフェニル基、2−メチル−4−メトキシフェニル基、3−メチル−4−メトキシフェニル基、3−メチル−5−メトキシフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2−メチル−4−フルオロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−メチル−4−クロロフェニル基、2−クロロ−4−メチルフェニル基、3−クロロ−4−メチルフェニル基、2−クロロ−4−メトキシフェニル基、3−メトキシ−4−フルオロフェニル基、3−メトキシ−4−クロロフェニル基、3−フルオロ−4−メトキシフェニル基、4−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、2−フェニルフェニル基、4−(4’−メチルフェニル)フェニル基、4−(4’−メトキシフェニル)フェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−エトキシ−1−ナフチル基、6−n−ブチル−2−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、7−エトキシ−2−ナフチル基、2−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基などの置換または未置換のアリール基、
【0011】
例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α−エチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、α−フェニルベンジル基、α,α−ジフェニルベンジル基、フェネチル基、α−メチルフェネチル基、β−メチルフェネチル基、α,α−ジメチルフェネチル基、4−メチルフェネチル基、4−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、2−メチルベンジル基、4−エチルベンジル基、2−エチルベンジル基、4−イソプロピルベンジル基、4−tert−ブチルベンジル基、2−tert−ブチルベンジル基、4−tert−ペンチルベンジル基、4−シクロヘキシルベンジル基、4−n−オクチルベンジル基、4−tert−オクチルベンジル基、4−フェニルベンジル基、4−(4’−メチルフェニル)ベンジル基、4−(4’−tert−ブチルフェニル)ベンジル基、4−(4’−メトキシフェニル)ベンジル基、4−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、2−エトキシベンジル基、4−n−ブトキシベンジル基、4−n−ヘプチルオキシベンジル基、3,4−ジメトキシベンジル基、4−フルオロベンジル基、2−フルオロベンジル基、4−クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、2−クロロベンジル基、3,4−ジクロロベンジル基、2−フルフリル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基などの置換または未置換のアラルキル基、
例えば、フルオロメチル基、3−フルオロプロピル基、6−フルオロヘキシル基、8−フルオロオクチル基、トリフルオロメチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロエチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−プロピル基、1,1,3−トリヒドロ−パーフルオロ−n−プロピル基、2−ヒドロ−パーフルオロ−2−プロピル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−ブチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−ペンチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−ヘキシル基、6−フルオロヘキシル基、4−フルオロシクロヘキシル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−オクチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−デシル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−ドデシル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−テトラデシル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−ヘキサデシル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロ−n−ペンチル基、パーフルオロ−n−ヘキシル基、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロピル基、ジクロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、4−クロロシクロヘキシル基、7−クロロヘプチル基、8−クロロオクチル基、2,2,2−トリクロロエチル基などの直鎖、分岐または環状のハロゲノアルキル基、
【0012】
例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−ブトキシメチル基、n−ペンチルオキシメチル基、n−ヘキシルオキシメチル基、(2−エチルブチルオキシ)メチル基、n−ヘプチルオキシメチル基、n−オクチルオキシメチル基、n−デシルオキシメチル基、n−ドデシルオキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−n−プロポキシエチル基、2−イソプロポキシエチル基、2−n−ブトキシエチル基、2−n−ペンチルオキシエチル基、2−n−ヘキシルオキシエチル基、2−(2’−エチルブチルオキシ)エチル基、2−n−ヘプチルオキシエチル基、2−n−オクチルオキシエチル基、2−(2’−エチルヘキシルオキシ)エチル基、2−n−デシルオキシエチル基、2−n−ドデシルオキシエチル基、2−n−テトラデシルオキシエチル基、2−シクロヘキシルオキシエチル基、2−メトキシプロピル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−n−プロポキシプロピル基、3−イソプロポキシプロピル基、3−n−ブトキシプロピル基、3−n−ペンチルオキシプロピル基、3−n−ヘキシルオキシプロピル基、3−(2’−エチルブトキシ)プロピル基、3−n−オクチルオキシプロピル基、3−(2’−エチルヘキシルオキシ)プロピル基、3−n−デシルオキシプロピル基、3−n−ドデシルオキシプロピル基、3−n−テトラデシルオキシプロピル基、3−シクロヘキシルオキシプロピル基、4−メトキシブチル基、4−エトキシブチル基、4−n−プロポキシブチル基、4−イソプロポキシブチル基、4−n−ブトキシブチル基、4−n−ヘキシルオキシブチル基、4−n−オクチルオキシブチル基、4−n−デシルオキシブチル基、4−n−ドデシルオキシブチル基、5−メトキシペンチル基、5−エトキシペンチル基、5−n−プロポキシペンチル基、5−n−ペンチルオキシペンチル基、6−メトキシヘキシル基、6−エトキシヘキシル基、6−イソプロポキシヘキシル基、6−n−ブトキシヘキシル基、6−n−ヘキシルオキシヘキシル基、6−n−デシルオキシヘキシル基、4−メトキシシクロヘキシル基、7−メトキシヘプチル基、7−エトキシヘプチル基、7−イソプロポキシヘプチル基、8−メトキシオクチル基、8−エトキシオクチル基、9−メトキシノニル基、9−エトキシノニル基、10−メトキシデシル基、10−エトキシデシル基、10−n−ブトキシデシル基、11−メトキシウンデシル基、11−エトキシウンデシル基、12−メトキシドデシル基、12−エトキシドデシル基、12−イソプロポキシドデシル基、14−メトキシテトラデシル基、テトラヒドロフルフリル基などの直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基、
【0013】
例えば、(2−メトキシエトキシ)メチル基、(2−エトキシエトキシ)メチル基、(2−n−ブチルオキシエトキシ)メチル基、(2−n−ヘキシルオキシエトキシ)メチル基、(3−メトキシプロピルオキシ)メチル基、(3−エトキシプロピルオキシ)メチル基、(3−n−ブチルオキシプロピルオキシ)メチル基、(3−n−ペンチルオキシプロピルオキシ)メチル基、
(4−メトキシブチルオキシ)メチル基、(6−メトキシヘキシルオキシ)メチル基、(10−エトキシデシルオキシ)メチル基、2−(2’−メトキシエトキシ)エチル基、2−(2’−エトキシエトキシ)エチル基、2−(2’−n−ブトキシエトキシ)エチル基、3−(2’−エトキシエトキシ)プロピル基、
3−(2’−メトキシプロピルオキシ)プロピル基、3−(2’−イソプロピルオキシプロピルオキシ)プロピル基、3−(3’−メトキシプロピルオキシ)プロピル基、3−(3’−エトキシプロピルオキシ)プロピル基などの直鎖、分岐または環状のアルコキシアルコキシアルキル基、
【0014】
例えば、フェニルオキシメチル基、4−メチルフェニルオキシメチル基、3−メチルフェニルオキシメチル基、2−メチルフェニルオキシメチル基、4−エチルフェニルオキシメチル基、4−n−プロピルフェニルオキシメチル基、4−n−ブチルフェニルオキシメチル基、4−tert−ブチルフェニルオキシメチル基、4−n−ヘキシルフェニルオキシメチル基、4−n−オクチルフェニルオキシメチル基、4−n−デシルフェニルオキシメチル基、4−メトキシフェニルオキシメチル基、4−エトキシフェニルオキシメチル基、4−ブトキシフェニルオキシメチル基、4−n−ペンチルオキシフェニルオキシメチル基、4−フルオロフェニルオキシメチル基、3−フルオロフェニルオキシメチル基、2−フルオロフェニルオキシメチル基、3,4−ジフルオロフェニルオキシメチル基、4−クロロフェニルオキシメチル基、2−クロロフェニルオキシメチル基、4−フェニルフェニルオキシメチル基、1−ナフチルオキシメチル基、2−ナフチルオキシメチル基、2−フリルオキシメチル基、1−フェニルオキシエチル基、2−フェニルオキシエチル基、2−(4’−メチルフェニルオキシ)エチル基、2−(4’−エチルフェニルオキシ)エチル基、2−(4’−n−ヘキシルフェニルオキシ)エチル基、2−(4’−メトキシフェニルオキシ)エチル基、2−(4’−n−ブトキシフェニルオキシ)エチル基、2−(4’−フルオロフェニルオキシ)エチル基、2−(4’−クロロフェニルオキシ)エチル基、2−(4’−ブロモフェニルオキシ)エチル基、2−(1’−ナフチルオキシ)エチル基、2−(2’−ナフチルオキシ)エチル基、2−フェニルオキシプロピル基、3−フェニルオキシプロピル基、3−(4’−メチルフェニルオキシ)プロピル基、3−(2’−ナフチルオキシ)プロピル基、4−フェニルオキシブチル基、4−(2’−エチルフェニルオキシ)ブチル基、4−フェニルオキシペンチル基、5−フェニルオキシペンチル基、5−(4’−tert−ブチルフェニルオキシ)ペンチル基、6−フェニルオキシヘキシル基、6−(2’−クロロフェニルオキシ)ヘキシル基、8−フェニルオキシオクチル基、10−フェニルオキシデシル基、10−(3’−メチルフェニルオキシ)デシル基などの置換または未置換のアリールオキシアルキル基、

【0015】
例えば、ベンジルオキシメチル基、フェネチルオキシメチル基、4−メチルベンジルオキシメチル基、3−メチルベンジルオキシメチル基、4−n−プロピルベンジルオキシメチル基、4−n−オクチルベンジルオキシメチル基、4−メトキシベンジルオキシメチル基、4−エトキシベンジルオキシメチル基、4−n−ブトキシベンジルオキシメチル基、4−フルオロベンジルオキシメチル基、3−フルオロベンジルオキシメチル基、2−フルオロベンジルオキシメチル基、4−クロロベンジルオキシメチル基、4−フェニルベンジルオキシメチル基、2−ベンジルオキシエチル基、2−フェネチルオキシエチル基、2−(4’−メチルベンジルオキシ)エチル基、2−(2’−メチルベンジルオキシ)エチル基、2−(4’−フルオロベンジルオキシ)エチル基、2−(4’−クロロベンジルオキシ)エチル基、3−ベンジルオキシプロピル基、3−(4’−メトキシベンジルオキシ)プロピル基、4−ベンジルオキシブチル基、4−(4’―フェニルベンジルオキシ)ブチル基、5−(4’―メチルベンジルオキシ)ペンチル基、6−ベンジルオキシヘキシル基、8−ベンジルオキシオクチル基などの置換または未置換のアラルキルオキシアルキル基、
【0016】
例えば、フルオロメチルオキシメチル基、3−フルオロ−n−プロピルオキシメチル基、6−フルオロ−n−ヘキシルオキシメチル基、トリフルオロメチルオキシメチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロエチルオキシメチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−プロピルオキシメチル基、2−ヒドロ−パーフルオロ−2−プロピルオキシメチル基、1,1,3−トリヒドロ−パーフルオロ−n−プロピルオキシメチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−ブチルオキシメチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−ペンチルオキシメチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−ヘキシルオキシメチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−オクチルオキシメチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−デシルオキシメチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−テトラデシルオキシメチル基、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロピルオキシメチル基、3−クロロ−n−プロピルオキシメチル基、2−(8−フルオロ−n−オクチルオキシ)エチル基、2−(1,1−ジヒドロ−パーフルオロエチルオキシ)エチル基、2−(1,1,3−トリヒドロ−パーフルオロ−n−プロピルオキシ)エチル基、2−(1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−ペンチルオキシ)エチル基、2−(6−フルオロ−n−ヘキシルオキシ)エチル基、2−(1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−オクチルオキシ)エチル基、3−(4−フルオロシクロヘキシルオキシ)プロピル基、3−(1,1−ジヒドロ−パーフルオロエチルオキシ)プロピル基、3−(1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−ドデシルオキシ)プロピル基、4−(パーフルオロ−n−ヘキシルオキシ)ブチル基、4−(1,1−ジヒドロ−パーフルオロエチルオキシ)ブチル基、6−(2−クロロエチルオキシ)ヘキシル基、6−(1,1−ジヒドロ−パーフルオロエチルオキシ)ヘキシル基などの直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシアルキル基を挙げることができる。
但し、一般式(1)〜一般式(4)で表される化合物において、RおよびRが同時に水素原子を表すことはない。
【0017】
一般式(1)〜一般式(4)で表される化合物において、より好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、炭素数2〜10のカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、炭素数1〜16の直鎖、分岐または環状のアルキル基、炭素数2〜16の直鎖、分岐または環状のアルケニル基、炭素数4〜24の置換または未置換のアリール基、
炭素数5〜24の置換または未置換のアラルキル基、炭素数1〜16の直鎖、分岐または環状のハロゲノアルキル基、炭素数2〜16の直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基、炭素数3〜16の直鎖、分岐または環状のアルコキシアルコキシアルキル基、炭素数5〜24の置換または未置換のアリールオキシアルキル基、炭素数6〜24の置換または未置換のアラルキルオキシアルキル基、あるいは炭素数2〜16の直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシアルキル基を表す。
【0018】
一般式(1)〜一般式(4)で表される化合物において、さらに好ましくは、RおよびRは、水素原子、塩素原子、シアノ基、炭素数2〜8のカルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、炭素数1〜12の直鎖、分岐または環状のアルキル基、炭素数2〜12の直鎖、分岐または環状のアルケニル基、あるいは炭素数6〜16の置換または未置換のアリール基を表し、特に好ましくは、塩素原子、シアノ基、炭素数2〜6のカルボン酸エステル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐または環状のアルキル基、あるいは炭素数6〜16の置換または未置換のアリール基を表す。
一般式(1)、一般式(3)および一般式(4)で表される化合物において、好ましくは、Rは、炭素数1〜6の直鎖、分岐または環状のアルキル基、あるいは炭素数6〜16の置換または未置換のアリール基である。
一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される化合物において、好ましくは、Rは、塩素原子、シアノ基、炭素数2〜8のカルボン酸エステル基、あるいは炭素数6〜16の置換または未置換のアリール基である。
本発明の製造方法において、一般式(1)および一般式(2)で表される化合物の使用量に関しては特に制限されるものではないが、一般には、一般式(1)で表される化合物1モルに対して、一般式(2)で表される化合物を0.7〜1.5モル程度、より好ましくは、0.8〜1.4モル程度使用することができる。
【0019】
本発明において触媒として使用するテトラアルコキシチタンとしては、テトラアルコキシチタン、およびテトラアルコキシチタンのオリゴマーを包含するものであり、好ましくは、テトラ(炭素数1〜20のアルコキシ)チタン、またはテトラ(炭素数1〜20のアルコキシ)チタンのオリゴマーであり、より好ましくは、テトラ(炭素数1〜10のアルコキシ)チタン、またはテトラ(炭素数1〜10のアルコキシ)チタンのオリゴマーである。
テトラアルコキシチタンの具体例としては、例えば、テトラ(メトキシ)チタン、テトラ(エトキシ)チタン、テトラ(n−プロポキシ)チタン、テトラ(イソプロポキシ)チタン、テトラ(n−ブトキシ)チタン、テトラ(n−ブトキシ)チタンのテトラマー、テトラ(イソブトキシ)チタン、テトラ(n−ヘキシルオキシ)チタン、テトラ(n−オクチルオキシ)チタン、テトラ(n−デシルオキシ)チタン、テトラ(n−ドデシルオキシ)チタン、テトラ(n−テトラデシルオキシ)チタン、テトラ(n−オクタデシル)オキシチタン、テトラ(シクロヘキシルオキシ)チタンなどを挙げることができ、より好ましくは、テトラ(イソプロポキシチタン)である。
これらのテトラアルコキシチタンは、1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
【0020】
また、テトラアルコキシチタンの使用量に関しては特に制限されるものではないが、一般には、一般式(1)で表される化合物1モルに対して、テトラアルコキシチタンを0.05〜5モル程度、より好ましくは、0.2〜4モル程度、より好ましくは、0.5〜3モル程度使用することができる。
本発明の製造方法は、有機溶媒の非存在下で実施することも可能であるが、所望により有機溶媒の存在下で実施することができる。係る有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール系溶媒、
例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、メシチレン、クメン、プソイドクメン、テトラリンなどの炭化水素系溶媒、
例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、
例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、
【0021】
例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなどのエーテル系溶媒、
例えば、ジメチルスルフォキサイド、スルフォラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリルなどの非プロトン性極性溶媒などの有機溶媒を挙げることができ、より好ましくは、アルコール系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトニトリルであり、さらに好ましくは、アルコール系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒である。
これらの有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
本発明の製造方法において、所望により使用する有機溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、一般式(1)で表される化合物の濃度が、一般には、0.01〜5M程度となる量、より好ましくは、0.05〜3M程度となる量に調製する。
本発明の製造方法は、テトラアルコキシチタンの存在下で、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物を反応させるものであるが、所望により、この反応を、テトラアルコキシチタンと、例えば、酢酸、四塩化チタン、塩化亜鉛、三フッ化ホウ素などの酸性触媒との共存下で実施することもできる。
【0022】
本発明の製造方法を実施する場合、一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物、およびテトラアルコキシチタン、さらに所望により使用する有機溶媒の供給方法に関しては、特に制限されるものではないが、例えば、(ア)一般式(1)で表される化合物、および一般式(2)で表される化合物の混合物を、所望により、有機溶媒存在下、撹拌、混合し、その後、テトラアルコキシチタンを供給する方法、(イ)テトラアルコキシチタンを、所望により、有機溶媒存在下、撹拌、混合し、その後、一般式(1)で表される化合物、および一般式(2)で表される化合物を供給する方法、(ウ)一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物、およびテトラアルコキシチタンを一括で挿入し、所望により、有機溶媒存在下、撹拌、混合して反応を実施する方法、などを適用することができる。
一般式(3)および一般式(4)で表される化合物の製造方法は、大気雰囲気下で実施することができるが、一般には、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)存在下で実施することが好ましい。また、反応温度は、好ましくは、−20〜180℃程度、より好ましくは、20〜150℃程度で実施する。また、反応は、常圧下で実施してもよく、また、必要に応じ、減圧下または加圧条件下で実施することも可能である。好ましくは、常圧下で実施する。
本発明の方法により製造される一般式(3)で表される化合物、または/および一般式(4)で表される化合物は、反応終了後、例えば、必要に応じ、有機溶媒を留去した後、生成物はクロマトグラフィー法、再結晶法などの一般に公知の方法により単離精製することができる。
また、生成物の構造は、元素分析、MS(FD−MS)分析、IR分析、H−NMR、13C−NMRなどの各種分析方法により同定することができる。
また、一般式(4)で表される化合物を有機溶媒の存在下、光照射することにより、一般式(3)で表される化合物へと異性化させることができる〔例えば、Synthesis、686
(1991)に記載の方法に従って製造することができる〕。

【0023】
<テトラアザポルフィリン化合物の製造方法>
さらに本発明は、上記製造方法にてジシアノエチレン化合物を製造し、得られたジシアノエチレン化合物に、金属または金属塩と作用させることを特徴とする一般式(5)で表されるテトラアザポルフィリン化合物の製造方法に関する。

〔式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のアラルキル基、直鎖、分岐または環状のハロゲノアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルコキシアルキル基、置換または未置換のアリールオキシアルキル基、置換または未置換のアラルキルオキシアルキル基、あるいは直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシアルキル基を表し(但し、RおよびRが同時に水素原子を表すことはない)、
Mは、2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、または酸化金属原子を表す〕
一般式(5)において、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のアラルキル基、直鎖、分岐または環状のハロゲノアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルコキシアルキル基、置換または未置換のアリールオキシアルキル基、置換または未置換のアラルキルオキシアルキル基、あるいは直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシアルキル基を表し、RおよびRは、一般式(1)〜一般式(4)の場合と同じ意味を表す。
【0024】
一般式(5)において、Mは2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、または酸化金属原子を表し、好ましくは、2価の金属原子、または酸化金属原子である。
Mで表される1価の金属原子としては、例えば、Na、K、Liなどを挙げることができる。
Mで表される2価の金属原子としては、例えばCu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Mn、Mg、Ti、Be、Ca、Ba、Cd、Hg、Pb、Snなどを挙げることができる。
Mで表される3価の置換金属原子としては、例えばAl−F、Al−Cl、Al−Br、Al−I、Ga−F、Ga−Cl、Ga−Br、Ga−I、In−F、In−Cl、
In−Br、In−I、Tl−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Al−C、Al−C(CH)、In−C、In−C(CH)、Mn(OH)、Mn(OC)、Mn[OSi(CH]、Fe−Cl、Ru−Clなどを挙げることができる。
Mで表される4価の置換金属原子としては、例えばCrCl、SiCl、SiBr、SiF、SiI、ZrCl、ZrI、GeCl、GeBr、GeF、GeI、SnCl、SnF、SnBr、TiCl、TiBr、TiF、Si(OH)、Ge(OH)、Zr(OH)、Mn(OH)、Sn(OH)、TiR、CrR、SiR、SnR、GeR〔式中、Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、あるいはその誘導体を表す〕、Si(OR11)、Sn(OR11、Ge(OR11)、Ti(OR11)、Cr(OR11)〔式中、R11は、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基、あるいはその誘導体を表す〕、Sn(SR12)、Ge(SR12)〔式中、R12は、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、あるいはその誘導体を表す〕などを挙げることができる。
Mで表される酸化金属原子としては、例えば、VO、MnO、TiOなどを挙げることができる。
【0025】
一般式(5)において、Mは、より好ましくはCu、Zn、Fe、Co、Ni、Pd、Mn、Mg、VO、TiOであり、さらに好ましくは、Cu、Ni、Pd、VOであり、特に好ましくは、Cu、VOである。
尚、一般式(5)で表されるテトラアザポルフィリン化合物を製造する際には、一般式(3)で表される化合物、および一般式(4)で表される化合物はそれぞれ単独で使用することができ、さらには、一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物の混合物が使用することができる。
一般式(5)で表されるテトラアザポルフィリン化合物を製造する際に使用する金属または金属塩としては、一般式(5)においてMで表される各種の金属、または該金属の塩を挙げることができる。
金属塩としては、金属ハロゲン化合物(例えば、塩化銅、臭化銅、塩化ニッケル、塩化亜鉛、三塩化バナジウム、塩化パラジウム、塩化チタンなど)、金属カルボン酸化合物(例えば、酢酸銅、酢酸亜鉛、酢酸ニッケルなど)、金属硫酸化合物、金属硝酸化合物、金属カルボニル化合物、金属酸化合物、金属錯体化合物(例えば、アセチルアセトンバナジウム)などを挙げることができる。
金属または金属塩の使用量は、特に制限されるものではないが、一般式(3)または一般式(4)で表される化合物1モルに対して、一般に、0.05〜0.7モル程度、好ましくは、0.2〜0.5モル程度使用する。
一般式(3)または一般式(4)で表される化合物と金属または金属塩との反応においては、一般に、有機溶媒の存在下で実施することができる。係る有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール系溶媒、
【0026】
例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、メシチレン、クメン、プソイドクメン、テトラリンなどの炭化水素系溶媒、
例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、
例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなどのエーテル系溶媒、
例えば、ジメチルスルフォキサイド、スルフォラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリルなどの非プロトン性極性溶媒などの有機溶媒を挙げることができ、より好ましくは、アルコール系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒であり、さらに好ましくは、アルコール系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒である。
これらの有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
【0027】
また、有機溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、一般式(3)または一般式(4)で表される化合物の濃度が、一般には、0.01〜5M程度となる量、より好ましくは、0.05〜3M程度となる量に調製する。
一般式(3)または一般式(4)で表される化合物と、金属または金属塩との反応は、所望により、塩基の存在下で実施することができる。
係る塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの無機塩基、
例えば、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウム(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノラート)、カリウム(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノラート)、カリウム(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノラート)などの金属アルコキシド、金属ナトリウム、金属リチウム、
例えば、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、モリブデン酸アンモニウム、尿素などの有機塩基などを挙げることができる。係る塩基は、1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
塩基の使用量は特に制限されるものではないが、一般式(3)または一般式(4)で表される化合物1モルに対して、一般に、0.0001〜3モル程度であり、好ましくは、0.0005〜1.5モル程度使用する。
一般式(3)または一般式(4)で表される化合物と、金属または金属塩との反応は、大気雰囲気下で実施することができるが、一般には、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)存在下で実施することが好ましい。反応温度は、好ましくは、50〜250℃程度であり、より好ましくは、80〜220℃程度で実施することができる。反応は、常圧下で実施してもよく、必要に応じ、減圧下または加圧条件下で実施することも可能である。好ましくは、常圧下で実施する。
【0028】
一般式(5)において、MがMgである化合物は、例えば、酸(例えば、酢酸、塩化水素、トリフルオロ酢酸、リン酸など)処理することにより、一般式(5)において、Mが2個の水素原子である化合物へ誘導することができる。
さらに、一般式(5)において、MがMgである化合物は、例えば、モリブデン酸アンモニウムおよび酸(例えば、酢酸、塩化水素、トリフルオロ酢酸、リン酸など)の存在下で、各種の金属塩と処理することにより、一般式(5)において、Mが各種の金属である化合物へ誘導することができる。
また、一般式(5)において、Mが2個の水素原子である化合物は、各種の金属塩と作用させることにより、一般式(5)において、Mが各種の金属である化合物へと誘導することができる。
【0029】
さらには、一般式(3)または一般式(4)で表される化合物、さらには、または一般式(3)および一般式(4)で表される化合物から成る混合物を、例えば、アルコール中、金属ナトリウムの存在下、アンモニアを作用させて、2,5−ジイミノピロール化合物へと誘導した後に、公知の方法により、一般式(5)で表されるテトラアザポルフィリン化合物を製造することができる。
本発明の方法により製造される一般式(5)で表される化合物は、反応終了後、例えば、必要に応じ、有機溶媒を留去した後、生成物はクロマトグラフィー法、再結晶法などの一般に公知の方法により単離精製することができる。
尚、反応の進行は、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどの方法で追跡することができる。
また、生成物の構造は、元素分析、MS(FD−MS)分析、IR分析、H−NMR、13C−NMRなどの各種分析方法により同定することができる。
一般式(3)または一般式(4)で表される化合物と、例えば、金属あるいは金属塩を反応させて、一般式(5)で表される化合物を製造すると、一般には、環化の際に複数の異性体が生成する。
本明細書においては、一般式(5)で表される化合物とは、実際には、一般式(5−a)〜一般式(5−d)で表される化合物から選ばれる1種の化合物、または2種以上の化合物から成る混合物を表している〔例えば、Chemistry of Heterocyclic Compounds、24、1043(1988)〕。
このような複数の化合物から成る混合物の構造の記載に際しても、本明細書においては、便宜上、例えば、一般式(5)で表される一つの構造式を記載しているものである。
【0030】
尚、一般式(5)で表される化合物とは、結晶は勿論であるが、無定型(アモルファス体)をも包含するものである。




〔式中、R、RおよびMは、一般式(5)の場合と同じ意味を表す〕
本発明の製造方法を実施するに際して、使用する反応装置の種類、形態に関しては特に限定するものではないが、一般には、槽型、管型、塔型の反応装置を用いることができる。また、製造工程を、回分式(バッチ式)で実施することができ、さらには、連続的に実施することも可能である。
【0031】
また、製造に使用する反応装置は、様々な撹拌装置を備えることができる。係る撹拌装置としては、例えば、パドル型撹拌機、プロペラ型撹拌機、タービン型撹拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー、ラインミキサー、ラインホモミキサーなどの高速撹拌機、さらにはスタティックミキサー、コロイドミル、オリフィスミキサー、フロージェットミキサーなどを挙げることができる。
【0032】
本発明により、各種の機能性材料用途(例えば、ディスプレイ用フィルタ用途、光記録媒体用途、インク用途、熱転写用途)に有用なテトラアザポルフィリン化合物を製造する際の原料として有用なジシアノエチレン化合物の新規な製造方法を提供することが可能になった。
さらには、該ジシアノエチレン化合物を用いて、テトラアザポルフィリン化合物を製造することが可能になった。

【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
窒素雰囲気下、イソプロパノール(120ml)、ベンゾイルシアニド13g(0.1モル)、およびシアノ酢酸−n−ブチルエステル14.1g(0.1モル)から成る混合物に、20℃でテトラ(イソプロポキシ)チタン28.4g(0.1モル)を加え、その後、40℃で12時間撹拌した。その後、反応混合物を室温にまで冷却後、1規定の塩酸(300ml)に注ぎ、5℃で20分間撹拌した。
混合物に、クロロホルム(300ml)を加え、抽出操作を行った。クロロホルム層を分離し、クロロホルム溶液を、硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。
濾液からクロロホルムを減圧下で留去し、残渣にトルエンを加えた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン)にて精製し、式(3−a)で表される化合物20.0g(収率79%)を淡緑色結晶として得た。

【0035】
(実施例2)
窒素雰囲気下、イソプロパノール(150ml)、4−tert−ブチルベンゾイルシアニド14.9g(0.1モル)、およびイソバレロニトリル9.2g(0.11モル)から成る混合物に、20℃でテトラ(イソプロポキシ)チタン42.6g(0.15モル)を加え、その後、70℃で25時間撹拌した。その後、反応混合物を室温にまで冷却後、1規定の塩酸(300ml)に注ぎ、5℃で20分間撹拌した。
混合物に、クロロホルム(300ml)を加え、抽出操作を行った。
クロロホルム層を分離し、クロロホルム溶液を、硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。
濾液からクロロホルムを減圧下で留去し、残渣にトルエンを加えた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン)にて精製し、式(3−b)で表される化合物6.4g、および式(4−b)で表される化合物14.9gを、それぞれ無色結晶として得た(収率85%)。

【0036】
(実施例3)
窒素雰囲気下、ジクロロメタン(300ml)、ベンゾイルシアニド13g(0.1モル)、およびマロノニトリル8g(0.12モル)から成る混合物に、20℃でテトラ(イソプロポキシ)チタン14.2g(0.05モル)を加え、その後、30℃で20時間撹拌した。
その後、反応混合物を室温にまで冷却後、1規定の塩酸(300ml)に注ぎ、5℃で20分間撹拌した。
ジクロロメタン層を分離した後、ジクロロメタン溶液を、硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。
濾液からジクロロメタンを減圧下で留去し、残渣にトルエンを加えた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン)にて精製し、式(3−c)で表される化合物15.6g(収率88%)を無色結晶として得た。

【0037】
(実施例4)
窒素雰囲気下、イソプロパノール(300ml)、ピバロイルシアニド11.1g(0.1モル)、および2−フルオロベンジルシアニド13.5g(0.1モル)から成る混合物に、20℃でテトラ(イソプロポキシ)チタン56.8g(0.2モル)を加え、その後、70℃で20時間撹拌した。
その後、反応混合物を室温にまで冷却後、1規定の塩酸(300ml)に注ぎ、5℃で20分間撹拌した。
混合物に、クロロホルム(300ml)を加え、抽出操作を行った。クロロホルム層を分離し、クロロホルム溶液を、硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。
濾液からクロロホルムを減圧下で留去し、残渣にトルエンを加えた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン)にて精製し、式(3−d)で表される化合物16.2g、および式(4−d)で表される化合物3.1gをそれぞれ得た(収率85%)。

【0038】
(実施例5)
実施例4において、2−フルオロベンジルシアニドを使用する代わりに、2−メチルベンジルシアニド13.1g(0.1モル)を使用した以外は、実施例4に記載の操作に従い、式(3−e)で表される化合物11.1gを無色結晶として、および式(4−e)で表される化合物7.5gを無色液体としてそれぞれ得た(収率83%)。

【0039】
(実施例6)
実施例4において、2−フルオロベンジルシアニドを使用する代わりに、1−ナフチルアセトニトリル16.7g(0.1モル)を使用した以外は、実施例4に記載の操作に従い、式(3−f)で表される化合物19.7g、および式(4−f)で表される化合物3.9gをそれぞれ得た(収率91%)。

【0040】
(実施例7)
窒素雰囲気下、イソプロパノール(150ml)、ピバロイルシアニド11.1g(0.1モル)、およびクロロアセトニトリル7.6g(0.1モル)から成る混合物に、20℃でテトラ(イソプロポキシ)チタン22.8g(0.08モル)を加え、その後、70℃で20時間撹拌した。
その後、反応混合物を室温にまで冷却後、1規定の塩酸(250ml)に注ぎ、5℃で20分間撹拌した。
混合物に、クロロホルム(300ml)を加え、抽出操作を行った。クロロホルム層を分離し、クロロホルム溶液を、硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。
濾液からクロロホルムを減圧下で留去し、残渣にトルエンを加えた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン)にて精製し、式(3−g)で表される化合物、および式(4−g)で表される化合物から成る混合物11.6gを得た(収率69%)。
この混合物は、ガスクロマトグラフィーの分析の結果、式(3−g)と式(4−g)のピーク面積比は、25:75の混合物であった。

【0041】
(実施例8)
窒素雰囲気下、ジクロロメタン(200ml)、ピバロイルシアニド11.1g(0.1モル)、および4−フルオロベンジルシアニド13.5g(0.1モル)から成る混合物に、10℃でテトラ(イソプロポキシ)チタン71.0g(0.25モル)を加え、その後、40℃で30時間撹拌した。
その後、反応混合物を室温にまで冷却後、1規定の塩酸(250ml)に注ぎ、5℃で20分間撹拌した。
混合物に、さらにジクロロメタン(100ml)を加え、抽出操作を行った。
ジクロロメタン層を分離し、ジクロロメタン溶液を、硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。
濾液からジクロロメタンを減圧下で留去し、残渣にトルエンを加えた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン)にて精製し、式(3−h)で表される化合物、および式(4−h)で表される化合物から成る混合物17.6gを得た(収率78%)。

【0042】
(実施例9)
実施例8において、4−フルオロベンジルシアニドを使用する代わりに、2,4−ジフルオロベンジルシアニド15.3g(0.1モル)を使用した以外は、実施例8に記載の操作に従い、式(3−i)で表される化合物、および式(4−i)で表される化合物から成る混合物18.5gを得た(収率75%)。

【0043】
(比較例1)
窒素雰囲気下、ジクロロメタン(300ml)、と四塩化チタン28.4g(0.15モル)の混合物を、−5〜0℃に冷却し、この混合物に、ピバロイルシアニド11.1g(0.1モル)を、0℃以下で滴下し、その後2−フルオロベンジルシアニド13.5g(0.1モル)を0℃以下で滴下した。次いで、N−メチルモルフォリン30.3g(0.3モル)を0℃以下で滴下した。その後反応混合物を、20℃で15時間撹拌した。
その後、反応混合物を、氷水(350ml)に注ぎ、5℃で30分間撹拌した。ジクロロメタン層を分離し、ジクロロメタン溶液を、硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。
濾液からジクロロメタンを減圧下で留去し、残渣にトルエンを加えた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン)にて精製し、式(3−d)で表される化合物12.6g、および式(4−d)で表される化合物4.1gをそれぞれ得た(収率73%)。

【0044】
(比較例2)
窒素雰囲気下、ジクロロメタン(300ml)、ピバロイルシアニド11.1g(0.1モル)、およびクロロアセトニトリル7.6g(0.1モル)から成る混合物を0℃に冷却し、この混合物に、−5℃〜0℃で四塩化チタン56g(0.3モル)を90分間で滴下した。5分後、−10〜0℃でN−メチルモルフォリン60g(0.6モル)を3時間で滴下した。反応混合物を30分間、0℃で撹拌した後、20℃でさらに3時間撹拌した。
その後、反応混合物を、氷水(600ml)に注ぎ、5℃で20分間撹拌した。混合物に、さらにジクロロメタン(100ml)を加え、抽出操作を行った。ジクロロメタン層を分離し、ジクロロメタン溶液を、硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。
濾液からジクロロメタンを減圧下で留去し、残渣にトルエンを加えた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン)にて精製し、式(3−g)で表される化合物、および式(4−g)で表される化合物から成る混合物9.8gを得た(収率58%)。
この混合物は、ガスクロマトグラフィーの分析の結果、式(3−g)と式(4−g)のピーク面積比は、12:88の混合物であった。

【0045】
(実施例10)
窒素雰囲気下、2−tert−ブチル−3−(2’−フルオロフェニル)マレオニトリル〔実施例2で製造した式(3−d)の化合物〕2.28gとn−ペンタノール30mlおよび塩化第一銅0.33gの混合物を、90℃加熱後、混合物に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)1.52gを30分かけて滴下した。滴下後、混合物を125℃で8時間撹拌した。反応混合物を室温にまで冷却後、メタノール100mlを加えた後、さらに水50mlを滴下した。析出した固体を濾別した。この固体をトルエンに溶解した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー〔展開液:トルエン/n−ヘキサン(体積比:2/1)〕にて精製し、式(A)〜式(D)で表される化合物から成る混合物1.4gを青色の固体として得た。
この混合物は、トルエン中、モル吸光係数129000で、594nmに吸収極大を示した。


【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明により安定的に、効率よく、ジシアノエチレン化合物の製造方法を提供することが可能になった。
また、該ジシアノエチレン化合物を用いて成るテトラアザポルフィリンリン化合物を提供することが可能になった。

本発明の方法により製造されるジシアノエチレン化合物は、各種の機能性材料用途(例えば、ディスプレイ用フィルタ用途、光記録媒体用途、インク用途、熱転写用途)に有用なテトラアザポルフィリン化合物を製造する際の原料として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラアルコキシチタンの存在下に、一般式(1):

で表される化合物と、一般式(2):


で表される化合物を作用させることを特徴とする一般式(3)または一般式(4):


で表されるジシアノエチレン化合物の製造方法。

〔式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のアラルキル基、直鎖、分岐または環状のハロゲノアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルコキシアルキル基、置換または未置換のアリールオキシアルキル基、置換または未置換のアラルキルオキシアルキル基、あるいは直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシアルキル基を表す(但し、RおよびRが同時に水素原子を表すことはない)〕

【請求項2】
請求項1の製造方法にてジシアノエチレン化合物を製造し、得られたジシアノエチレン化合物に、金属または金属塩と作用させることを特徴とする一般式(5)で表されるテトラアザポルフィリン化合物の製造方法。

〔式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルケニル基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のアラルキル基、直鎖、分岐または環状のハロゲノアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルコキシアルキル基、置換または未置換のアリールオキシアルキル基、置換または未置換のアラルキルオキシアルキル基、あるいは直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシアルキル基を表し(但し、RおよびRが同時に水素原子を表すことはない)、
Mは、2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、または酸化金属原子を表す〕


【公開番号】特開2012−121821(P2012−121821A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271841(P2010−271841)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000179904)山本化成株式会社 (70)
【Fターム(参考)】